使い捨てカイロ用外袋
【課題】バリア性及び加工性に優れた使い捨てカイロ用外袋を提供する。
【解決手段】基材フィルム１として二軸延伸ポリプロピレンを用いることにより、酸素透過度及び透湿度のバリア性能が高くなるとともに衝撃強度及び突刺強度が強くなって、加圧しながらヒートシールする際にピンホールなどのエアリークが発生しない。バリアフィルム２の樹脂フィルム２ａの外面に化学気相成長法で蒸着膜２ｂを蒸着させることにより、樹脂フィルム２ａの外面に沿って平板状の蒸着膜２ｂが層状に積み重なるように蒸着されるため、バリアフィルム２にテンションが作用して樹脂フィルム２ａが伸びでも平板状の蒸着膜２ｂが位置ズレするだけでクラックが発生しない。基材フィルム１の内面と蒸着膜２ｂとの間に溶融樹脂層４を挟み込み、押出しラミネーションで貼り合わせることにより、一工程で基材フィルム１とバリアフィルム２が積層される。
【解決手段】基材フィルム１として二軸延伸ポリプロピレンを用いることにより、酸素透過度及び透湿度のバリア性能が高くなるとともに衝撃強度及び突刺強度が強くなって、加圧しながらヒートシールする際にピンホールなどのエアリークが発生しない。バリアフィルム２の樹脂フィルム２ａの外面に化学気相成長法で蒸着膜２ｂを蒸着させることにより、樹脂フィルム２ａの外面に沿って平板状の蒸着膜２ｂが層状に積み重なるように蒸着されるため、バリアフィルム２にテンションが作用して樹脂フィルム２ａが伸びでも平板状の蒸着膜２ｂが位置ズレするだけでクラックが発生しない。基材フィルム１の内面と蒸着膜２ｂとの間に溶融樹脂層４を挟み込み、押出しラミネーションで貼り合わせることにより、一工程で基材フィルム１とバリアフィルム２が積層される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、内袋に鉄粉などを含む発熱材が直接収納され、該内袋内で酸化反応させることにより発熱する使い捨ての化学カイロを更に包装するために用いられる使い捨てカイロ用外袋に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、この種の使い捨てカイロ用外袋として、包材の最外層を構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの耐熱性樹脂フィルム層と、該樹脂フィルム層の内側に位置して二軸延伸ポリプロピレン（ＯＰＰ）などのフィルムにアルミニウムなどを蒸着した第１の金属蒸着フィルム層と、耐熱性樹脂フィルム層に遠い内側に位置して未延伸ポリプロピレン（ＣＰＰ）などのフィルムにアルミニウムなどを蒸着した第２の金属蒸着フィルム層とを、それぞれドライラミネートで接着することにより、包材を構成する積層フィルムが形成されるものがある。そして、同形の２枚の包材（積層フィルム）をそれらの最内層どうしが対向するように重ね合わせ、次いで、それらの三辺の周縁部をヒートシールすると共に、残りの一辺の部分が開口した三方シール型の袋に形成し、この袋の開口部を通じて、フィルムからなる袋状の収容体に発熱部が収容された水蒸気発生体を袋内に入れ、開口部をヒートシールすることで、水蒸気発生体が密封収納されている（例えば、特許文献１参照）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開２００６−３４７５８２号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかし乍ら、このような従来の使い捨てカイロ用外袋では、外層側のＯＰＰフィルムにアルミニウムなどの金属を緻密に蒸着させることが難しく、さらに内層側のＣＰＰフィルムは、延伸したＯＰＰフィルムに比べて引っ張り強度、引き裂き強度に劣って伸び易いため、製造工程中にＯＰＰフィルムとＣＰＰフィルムを積層する前の時点で、ＣＰＰフィルムにテンション（張力）が作用すると、アルミニウムなどの蒸着膜にクラックが入ってしまい、一度、蒸着膜にクラックが生じてしまうと、酸素透過度、透湿度において高いバリア性を担保できなくなるおそれがあった。
それによって、使い捨てカイロ用外袋に収容されるカイロの商品寿命が短くなるという問題があった
【０００５】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものであり、バリア性及び加工性に優れた使い捨てカイロ用外袋を提供することなどを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
このような目的を達成するために本発明は、使い捨てカイロが収納された内袋を更に包装する使い捨てカイロ用外袋であって、該外袋の外側に設けられて耐熱性樹脂からなる基材フィルムと、この基材フィルムの内面に沿って設けられ、樹脂フィルム及び無機酸化物の蒸着膜を有するバリアフィルムと、前記外袋の内側で互いに対向して設けられるシーラント樹脂層とを備え、前記基材フィルムが二軸延伸ポリプロピレンであり、前記バリアフィルムの前記樹脂フィルムの外面に化学気相成長法で前記蒸着膜を蒸着させており、前記基材フィルムの内面と前記蒸着膜との間に溶融樹脂層を挟み込み、押出しラミネーションで貼り合わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【０００７】
前述した特徴を有する本発明は、基材フィルムとして二軸延伸ポリプロピレンを用いることにより、酸素透過度及び透湿度のバリア性能が高くなるとともに衝撃強度及び突刺強度が強くなって、加圧しながらヒートシールする際にピンホールなどのエアリークが発生せず、さらにバリアフィルムの樹脂フィルムの外面に化学気相成長法で蒸着膜を蒸着させることにより、樹脂フィルムの外面に沿って平板状の蒸着膜が層状に積み重なるように蒸着されるため、バリアフィルムにテンションが作用して樹脂フィルムが伸びでも平板状の蒸着膜が位置ズレするだけでクラックが発生せず、また基材フィルムの内面と蒸着膜との間に溶融樹脂層を挟み込み、押出しラミネーションで貼り合わせることにより、一工程で基材フィルムとバリアフィルムが積層されるので、バリア性及び加工性に優れた使い捨てカイロ用外袋を提供することができる。
その結果、樹脂フィルム層と、ＯＰＰフィルムにアルミニウムが蒸着された第１の金属蒸着フィルム層と、ＣＰＰフィルムにアルミニウムが蒸着された第２の金属蒸着フィルム層とをドライラミネートで接着した従来のものに比べ、高い密封性を保持できて、使い捨てカイロを長期に亘り保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【０００８】
【図１】本発明の実施形態に係る使い捨てカイロ用外袋を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【０００９】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る使い捨てカイロ用外袋Ａは、使い捨てカイロ（図示しない）が収納された内袋（図示しない）を更に包装するものであり、図１に示すように、外袋Ａの外側に設けられて耐熱性樹脂からなる基材フィルム１と、この基材フィルム１の内面に沿って設けられるバリアフィルム２と、外袋Ａの内側で互いに対向して設けられるシーラント樹脂層３を、主要な構成要素として備えている。
【００１０】
基材フィルム１の具体例としては、例えば二軸延伸ポリプロピレン（ＯＰＰ）などが挙げられる。着色材などが添加されない素材の透明状態で使用するか、又は適量の着色材が添加された半透明状態として使用する。
さらに必要に応じて、基材フィルム１の内面には、印刷などの表示層を設けることも可能である。
【００１１】
バリアフィルム２は、樹脂フィルム２ａと無機酸化物の蒸着膜２ｂを有している。
樹脂フィルム２ａの具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）などが挙げられる。蒸着膜２ｂの具体例としては、例えば酸化アルミニウムやシリカなどが挙げられる。
蒸着膜２ｂの蒸着法としては、化学気相成長（ＣＶＤ）法を用い、樹脂フィルム２ａの外面に沿って平板状の蒸着膜２ｂが層状に積み重なるような構造を取りながら蒸着されるようにしている。
さらに必要に応じて、樹脂フィルム２ａの蒸着面は、オゾン処理により清浄化して蒸着膜２ｂとの密接着性等を向上させることが好ましい。
【００１２】
シーラント樹脂層３の具体例としては、例えば直鎖状低密度ポリエチレン（ＬＬＤＰＥ）やエチレン−酢酸ビニル共重合体（ＥＶＡ）などが挙げられる。
【００１３】
そして、基材フィルム１とバリアフィルム２の接着方法は、基材フィルム１の内面と蒸着膜２ｂとの間に溶融樹脂層４を挟み込み、押出しラミネーションで貼り合わせている。
その具体例としては、基材フィルム１の内面にアンカーコート剤５をコーティングし、このアンカーコート剤５と蒸着膜２ｂとの間に、溶融樹脂層４としてポリエチレン（ＰＥ）を溶融押出しさせ、押出しラミネーションで貼り合わせている。
【００１４】
さらに、バリアフィルム２とシーラント樹脂層３の接着方法は、樹脂フィルム２ａの内面にアンカーコート剤などをコーティングし、押出しラミネーションで貼り合わせることが好ましい。
また、その他の例として図示しないが、バリアフィルム２とシーラント樹脂層３をドライラミネーションなどで貼り合わせることも可能である。
【００１５】
このような本発明の実施形態に係る使い捨てカイロ用外袋Ａによると、基材フィルム１として二軸延伸ポリプロピレン（ＯＰＰ）を用いたので、酸素透過度及び透湿度のバリア性能が高くなるとともに衝撃強度及び突刺強度が強くなって、加圧しながらヒートシールする際にピンホールなどのエアリークが発生しない。さらに、バリアフィルム２の樹脂フィルム２ａの外面に化学気相成長（ＣＶＤ）法で蒸着膜２ｂを蒸着させたので、樹脂フィルム２ａの外面に沿って平板状の蒸着膜２ｂが層状に積み重なるように蒸着されるため、バリアフィルム２にテンションが作用して樹脂フィルム２ａが伸びでも平板状の蒸着膜２ｂが位置ズレするだけでクラックが発生しない。また、基材フィルム１の内面と蒸着膜２ｂとの間に溶融樹脂層４を挟み込み、押出しラミネーションで貼り合わせるため、一工程（１パス）で基材フィルム１とバリアフィルム２が積層される。
それにより、バリア性と加工性を向上させることができ、高い密封性を保持できるから、使い捨てカイロを長期に亘り保存することができる。
【００１６】
さらに、バリアフィルム２の樹脂フィルム２ａとして、引っ張り強度に優れたポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）を用い、その外面に蒸着膜２ｂとして酸化アルミニウムを蒸着させる場合には、蒸着膜２ｂとしてシリカなどを蒸着したものに比べて、屈曲性能に優れるとともに、透明性に優れてヒートシールする際の噛み込みを検出できる。また、基材フィルム１の内面にコーティングされるアンカーコート剤５と蒸着膜２ｂとの間に溶融樹脂層４としてポリエチレン（ＰＥ）を挟むことで、基材フィルム１とバリアフィルム２が確実に積層される。
それにより、屈曲性能と密封性能を更に向上させることができる。
次に、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【００１７】
この実施例は、図１に示すように、基材フィルム１となる透明な二軸延伸ポリプロピレン（ＯＰＰ）の内面に、例えば文字、図形、記号、絵柄などからなる表示層６を印刷などで設け、この表示層６を覆うようにアンカーコート剤５をコーティングしている。
【００１８】
図１に示される例では、基材フィルム１の内面全体に沿って表示層６が全面印刷されており、この表示層６を覆うようにアンカーコート剤５をコーティングしている。
また、その他の例として図示しないが、基材フィルム１の内面の一部に表示層６を部分印刷し、これら部分印刷された表示層６と、印刷が無い基材フィルム１の内面に亘ってアンカーコート剤５をコーティングすることも可能である。
【００１９】
さらに、図１に示される例では、バリアフィルム２とシーラント樹脂層３の接着方法として、樹脂フィルム２ａの内面にアンカーコート剤７をコーティングし、押出しラミネーションで貼り合わせている。
また、その他の例として図示しないが、アンカーコート剤７に代えて、樹脂フィルム２ａの内面とシーラント樹脂層３のいずれか一方又は両方に、例えばオゾン処理、酸化処理、コロナ処理、ブラスト処理などを施してから熱圧着などにより、これら樹脂フィルム２ａの内面とシーラント樹脂層３を接着するか、或いは必要に応じて両者間に接着剤を挟み込んで接着することも可能である。
その具体例としては、シーラント樹脂層３にオゾン処理などを施した後に、樹脂フィルム２ａの内面と熱圧着して接着させることが好ましい。
【００２０】
このような本発明の実施例に係る使い捨てカイロ用外袋Ａによると、透明な二軸延伸ポリプロピレン（ＯＰＰ）を透過して表示層６が外袋Ａの外から目視可能となる。
それにより、外袋Ａの外から表示層６を明確に目視することができるという利点がある。
【００２１】
さらに、下記の条件で本発明の実施例に係る使い捨てカイロ用外袋Ａを作製するとともに比較例の使い捨てカイロ用外袋を作製し、これらの中に使い捨てカイロ（図示しない）を収納して密閉させたものを複数用意した。このような使い捨てカイロを使用し、その保存期間の経過に対応する発熱体の劣化について実験を行った。
［本発明の実施例に係る使い捨てカイロ用外袋Ａ］
・基材フィルム１：二軸延伸ポリプロピレン（ＯＰＰ）；厚さ寸法が２０μｍ
・バリアフィルム２：ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）の樹脂フィルム２ａに酸化アルミニウムの蒸着膜２ｂを化学気相成長（ＣＶＤ）法で蒸着したＣＶＭ−ＰＥＴ；厚さ寸法が１２μｍ
・溶融樹脂層４：ポリエチレン（ＰＥ）；厚さ寸法が１５μｍ
・シーラント樹脂層３：直鎖状低密度ポリエチレン（ＬＬＤＰＥ）；厚さ寸法が２５μｍ
【００２２】
［比較例の使い捨てカイロ用外袋］
・基材フィルム：Ｋコート延伸ポリプロピレン（ＫＯＰ）；厚さ寸法が３０μｍ
・溶融樹脂層：ポリエチレン（ＰＥ）；厚さ寸法が１５μｍ
・シーラント樹脂層３：直鎖状低密度ポリエチレン（ＬＬＤＰＥ）；厚さ寸法が２０μｍ
【００２３】
・実験の結果
本発明の実施例に係る使い捨てカイロ用外袋Ａを一般的な生活温度で維持保存したところ、約２年経過しても、発熱体の劣化が見られなかった。
これに対し、比較例の使い捨てカイロ用外袋を同じ温度環境で維持保存したが、約１年４ヶ月経過した時点で、発熱体の劣化が見られた。
したがって、本発明の実施例に係る使い捨てカイロ用外袋Ａで包装された使い捨てカイロは、比較例の使い捨てカイロ用外袋で包装された使い捨てカイロに比べて、使い捨てカイロの商品寿命を約１．５まで延長できたと云える。
従来の使い捨てカイロ用外袋は、使用期限の間に生ずる僅かなバリア不良により、カイロの発熱体から徐々に水分が抜けて劣化していくことを考慮し、製造時においては、表示持続時間に相当する量の発熱体に、劣化補充用の持続時間に相当する量の発熱体を予め増量充填しておくことで、実際に使用した際に表示持続時間に亘り使用できるようにしていた。
これに対し、本発明の実施例に係る使い捨てカイロ用外袋Ａでは、予め劣化補充用の持続時間に相当する量の発熱体を増量充填する必要がなくなるため、使い捨てカイロ用外袋Ａの薄型化が図れるとともに、コストの低減化が図れるという利点がある。
【００２４】
なお、前示実施例では、基材フィルム１の内面に、例えば文字、図形、記号、絵柄などからなる表示層６を印刷などで設けたが、これに限定されず、表示層６を設けず、基材フィルム１の内面に直接アンカーコート剤５をコーティングしても良い。
【符号の説明】
【００２５】
１ 基材フィルム ２ バリアフィルム
２ａ 樹脂フィルム ２ｂ 蒸着膜
３ シーラント樹脂層 ４ 溶融樹脂層
５ アンカーコート剤 ６ 表示層
【技術分野】
【０００１】
本発明は、内袋に鉄粉などを含む発熱材が直接収納され、該内袋内で酸化反応させることにより発熱する使い捨ての化学カイロを更に包装するために用いられる使い捨てカイロ用外袋に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、この種の使い捨てカイロ用外袋として、包材の最外層を構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの耐熱性樹脂フィルム層と、該樹脂フィルム層の内側に位置して二軸延伸ポリプロピレン（ＯＰＰ）などのフィルムにアルミニウムなどを蒸着した第１の金属蒸着フィルム層と、耐熱性樹脂フィルム層に遠い内側に位置して未延伸ポリプロピレン（ＣＰＰ）などのフィルムにアルミニウムなどを蒸着した第２の金属蒸着フィルム層とを、それぞれドライラミネートで接着することにより、包材を構成する積層フィルムが形成されるものがある。そして、同形の２枚の包材（積層フィルム）をそれらの最内層どうしが対向するように重ね合わせ、次いで、それらの三辺の周縁部をヒートシールすると共に、残りの一辺の部分が開口した三方シール型の袋に形成し、この袋の開口部を通じて、フィルムからなる袋状の収容体に発熱部が収容された水蒸気発生体を袋内に入れ、開口部をヒートシールすることで、水蒸気発生体が密封収納されている（例えば、特許文献１参照）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開２００６−３４７５８２号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかし乍ら、このような従来の使い捨てカイロ用外袋では、外層側のＯＰＰフィルムにアルミニウムなどの金属を緻密に蒸着させることが難しく、さらに内層側のＣＰＰフィルムは、延伸したＯＰＰフィルムに比べて引っ張り強度、引き裂き強度に劣って伸び易いため、製造工程中にＯＰＰフィルムとＣＰＰフィルムを積層する前の時点で、ＣＰＰフィルムにテンション（張力）が作用すると、アルミニウムなどの蒸着膜にクラックが入ってしまい、一度、蒸着膜にクラックが生じてしまうと、酸素透過度、透湿度において高いバリア性を担保できなくなるおそれがあった。
それによって、使い捨てカイロ用外袋に収容されるカイロの商品寿命が短くなるという問題があった
【０００５】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものであり、バリア性及び加工性に優れた使い捨てカイロ用外袋を提供することなどを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
このような目的を達成するために本発明は、使い捨てカイロが収納された内袋を更に包装する使い捨てカイロ用外袋であって、該外袋の外側に設けられて耐熱性樹脂からなる基材フィルムと、この基材フィルムの内面に沿って設けられ、樹脂フィルム及び無機酸化物の蒸着膜を有するバリアフィルムと、前記外袋の内側で互いに対向して設けられるシーラント樹脂層とを備え、前記基材フィルムが二軸延伸ポリプロピレンであり、前記バリアフィルムの前記樹脂フィルムの外面に化学気相成長法で前記蒸着膜を蒸着させており、前記基材フィルムの内面と前記蒸着膜との間に溶融樹脂層を挟み込み、押出しラミネーションで貼り合わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【０００７】
前述した特徴を有する本発明は、基材フィルムとして二軸延伸ポリプロピレンを用いることにより、酸素透過度及び透湿度のバリア性能が高くなるとともに衝撃強度及び突刺強度が強くなって、加圧しながらヒートシールする際にピンホールなどのエアリークが発生せず、さらにバリアフィルムの樹脂フィルムの外面に化学気相成長法で蒸着膜を蒸着させることにより、樹脂フィルムの外面に沿って平板状の蒸着膜が層状に積み重なるように蒸着されるため、バリアフィルムにテンションが作用して樹脂フィルムが伸びでも平板状の蒸着膜が位置ズレするだけでクラックが発生せず、また基材フィルムの内面と蒸着膜との間に溶融樹脂層を挟み込み、押出しラミネーションで貼り合わせることにより、一工程で基材フィルムとバリアフィルムが積層されるので、バリア性及び加工性に優れた使い捨てカイロ用外袋を提供することができる。
その結果、樹脂フィルム層と、ＯＰＰフィルムにアルミニウムが蒸着された第１の金属蒸着フィルム層と、ＣＰＰフィルムにアルミニウムが蒸着された第２の金属蒸着フィルム層とをドライラミネートで接着した従来のものに比べ、高い密封性を保持できて、使い捨てカイロを長期に亘り保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【０００８】
【図１】本発明の実施形態に係る使い捨てカイロ用外袋を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【０００９】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る使い捨てカイロ用外袋Ａは、使い捨てカイロ（図示しない）が収納された内袋（図示しない）を更に包装するものであり、図１に示すように、外袋Ａの外側に設けられて耐熱性樹脂からなる基材フィルム１と、この基材フィルム１の内面に沿って設けられるバリアフィルム２と、外袋Ａの内側で互いに対向して設けられるシーラント樹脂層３を、主要な構成要素として備えている。
【００１０】
基材フィルム１の具体例としては、例えば二軸延伸ポリプロピレン（ＯＰＰ）などが挙げられる。着色材などが添加されない素材の透明状態で使用するか、又は適量の着色材が添加された半透明状態として使用する。
さらに必要に応じて、基材フィルム１の内面には、印刷などの表示層を設けることも可能である。
【００１１】
バリアフィルム２は、樹脂フィルム２ａと無機酸化物の蒸着膜２ｂを有している。
樹脂フィルム２ａの具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）などが挙げられる。蒸着膜２ｂの具体例としては、例えば酸化アルミニウムやシリカなどが挙げられる。
蒸着膜２ｂの蒸着法としては、化学気相成長（ＣＶＤ）法を用い、樹脂フィルム２ａの外面に沿って平板状の蒸着膜２ｂが層状に積み重なるような構造を取りながら蒸着されるようにしている。
さらに必要に応じて、樹脂フィルム２ａの蒸着面は、オゾン処理により清浄化して蒸着膜２ｂとの密接着性等を向上させることが好ましい。
【００１２】
シーラント樹脂層３の具体例としては、例えば直鎖状低密度ポリエチレン（ＬＬＤＰＥ）やエチレン−酢酸ビニル共重合体（ＥＶＡ）などが挙げられる。
【００１３】
そして、基材フィルム１とバリアフィルム２の接着方法は、基材フィルム１の内面と蒸着膜２ｂとの間に溶融樹脂層４を挟み込み、押出しラミネーションで貼り合わせている。
その具体例としては、基材フィルム１の内面にアンカーコート剤５をコーティングし、このアンカーコート剤５と蒸着膜２ｂとの間に、溶融樹脂層４としてポリエチレン（ＰＥ）を溶融押出しさせ、押出しラミネーションで貼り合わせている。
【００１４】
さらに、バリアフィルム２とシーラント樹脂層３の接着方法は、樹脂フィルム２ａの内面にアンカーコート剤などをコーティングし、押出しラミネーションで貼り合わせることが好ましい。
また、その他の例として図示しないが、バリアフィルム２とシーラント樹脂層３をドライラミネーションなどで貼り合わせることも可能である。
【００１５】
このような本発明の実施形態に係る使い捨てカイロ用外袋Ａによると、基材フィルム１として二軸延伸ポリプロピレン（ＯＰＰ）を用いたので、酸素透過度及び透湿度のバリア性能が高くなるとともに衝撃強度及び突刺強度が強くなって、加圧しながらヒートシールする際にピンホールなどのエアリークが発生しない。さらに、バリアフィルム２の樹脂フィルム２ａの外面に化学気相成長（ＣＶＤ）法で蒸着膜２ｂを蒸着させたので、樹脂フィルム２ａの外面に沿って平板状の蒸着膜２ｂが層状に積み重なるように蒸着されるため、バリアフィルム２にテンションが作用して樹脂フィルム２ａが伸びでも平板状の蒸着膜２ｂが位置ズレするだけでクラックが発生しない。また、基材フィルム１の内面と蒸着膜２ｂとの間に溶融樹脂層４を挟み込み、押出しラミネーションで貼り合わせるため、一工程（１パス）で基材フィルム１とバリアフィルム２が積層される。
それにより、バリア性と加工性を向上させることができ、高い密封性を保持できるから、使い捨てカイロを長期に亘り保存することができる。
【００１６】
さらに、バリアフィルム２の樹脂フィルム２ａとして、引っ張り強度に優れたポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）を用い、その外面に蒸着膜２ｂとして酸化アルミニウムを蒸着させる場合には、蒸着膜２ｂとしてシリカなどを蒸着したものに比べて、屈曲性能に優れるとともに、透明性に優れてヒートシールする際の噛み込みを検出できる。また、基材フィルム１の内面にコーティングされるアンカーコート剤５と蒸着膜２ｂとの間に溶融樹脂層４としてポリエチレン（ＰＥ）を挟むことで、基材フィルム１とバリアフィルム２が確実に積層される。
それにより、屈曲性能と密封性能を更に向上させることができる。
次に、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【００１７】
この実施例は、図１に示すように、基材フィルム１となる透明な二軸延伸ポリプロピレン（ＯＰＰ）の内面に、例えば文字、図形、記号、絵柄などからなる表示層６を印刷などで設け、この表示層６を覆うようにアンカーコート剤５をコーティングしている。
【００１８】
図１に示される例では、基材フィルム１の内面全体に沿って表示層６が全面印刷されており、この表示層６を覆うようにアンカーコート剤５をコーティングしている。
また、その他の例として図示しないが、基材フィルム１の内面の一部に表示層６を部分印刷し、これら部分印刷された表示層６と、印刷が無い基材フィルム１の内面に亘ってアンカーコート剤５をコーティングすることも可能である。
【００１９】
さらに、図１に示される例では、バリアフィルム２とシーラント樹脂層３の接着方法として、樹脂フィルム２ａの内面にアンカーコート剤７をコーティングし、押出しラミネーションで貼り合わせている。
また、その他の例として図示しないが、アンカーコート剤７に代えて、樹脂フィルム２ａの内面とシーラント樹脂層３のいずれか一方又は両方に、例えばオゾン処理、酸化処理、コロナ処理、ブラスト処理などを施してから熱圧着などにより、これら樹脂フィルム２ａの内面とシーラント樹脂層３を接着するか、或いは必要に応じて両者間に接着剤を挟み込んで接着することも可能である。
その具体例としては、シーラント樹脂層３にオゾン処理などを施した後に、樹脂フィルム２ａの内面と熱圧着して接着させることが好ましい。
【００２０】
このような本発明の実施例に係る使い捨てカイロ用外袋Ａによると、透明な二軸延伸ポリプロピレン（ＯＰＰ）を透過して表示層６が外袋Ａの外から目視可能となる。
それにより、外袋Ａの外から表示層６を明確に目視することができるという利点がある。
【００２１】
さらに、下記の条件で本発明の実施例に係る使い捨てカイロ用外袋Ａを作製するとともに比較例の使い捨てカイロ用外袋を作製し、これらの中に使い捨てカイロ（図示しない）を収納して密閉させたものを複数用意した。このような使い捨てカイロを使用し、その保存期間の経過に対応する発熱体の劣化について実験を行った。
［本発明の実施例に係る使い捨てカイロ用外袋Ａ］
・基材フィルム１：二軸延伸ポリプロピレン（ＯＰＰ）；厚さ寸法が２０μｍ
・バリアフィルム２：ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）の樹脂フィルム２ａに酸化アルミニウムの蒸着膜２ｂを化学気相成長（ＣＶＤ）法で蒸着したＣＶＭ−ＰＥＴ；厚さ寸法が１２μｍ
・溶融樹脂層４：ポリエチレン（ＰＥ）；厚さ寸法が１５μｍ
・シーラント樹脂層３：直鎖状低密度ポリエチレン（ＬＬＤＰＥ）；厚さ寸法が２５μｍ
【００２２】
［比較例の使い捨てカイロ用外袋］
・基材フィルム：Ｋコート延伸ポリプロピレン（ＫＯＰ）；厚さ寸法が３０μｍ
・溶融樹脂層：ポリエチレン（ＰＥ）；厚さ寸法が１５μｍ
・シーラント樹脂層３：直鎖状低密度ポリエチレン（ＬＬＤＰＥ）；厚さ寸法が２０μｍ
【００２３】
・実験の結果
本発明の実施例に係る使い捨てカイロ用外袋Ａを一般的な生活温度で維持保存したところ、約２年経過しても、発熱体の劣化が見られなかった。
これに対し、比較例の使い捨てカイロ用外袋を同じ温度環境で維持保存したが、約１年４ヶ月経過した時点で、発熱体の劣化が見られた。
したがって、本発明の実施例に係る使い捨てカイロ用外袋Ａで包装された使い捨てカイロは、比較例の使い捨てカイロ用外袋で包装された使い捨てカイロに比べて、使い捨てカイロの商品寿命を約１．５まで延長できたと云える。
従来の使い捨てカイロ用外袋は、使用期限の間に生ずる僅かなバリア不良により、カイロの発熱体から徐々に水分が抜けて劣化していくことを考慮し、製造時においては、表示持続時間に相当する量の発熱体に、劣化補充用の持続時間に相当する量の発熱体を予め増量充填しておくことで、実際に使用した際に表示持続時間に亘り使用できるようにしていた。
これに対し、本発明の実施例に係る使い捨てカイロ用外袋Ａでは、予め劣化補充用の持続時間に相当する量の発熱体を増量充填する必要がなくなるため、使い捨てカイロ用外袋Ａの薄型化が図れるとともに、コストの低減化が図れるという利点がある。
【００２４】
なお、前示実施例では、基材フィルム１の内面に、例えば文字、図形、記号、絵柄などからなる表示層６を印刷などで設けたが、これに限定されず、表示層６を設けず、基材フィルム１の内面に直接アンカーコート剤５をコーティングしても良い。
【符号の説明】
【００２５】
１ 基材フィルム ２ バリアフィルム
２ａ 樹脂フィルム ２ｂ 蒸着膜
３ シーラント樹脂層 ４ 溶融樹脂層
５ アンカーコート剤 ６ 表示層
【特許請求の範囲】
【請求項１】
使い捨てカイロが収納された内袋を更に包装する使い捨てカイロ用外袋であって、
該外袋の外側に設けられて耐熱性樹脂からなる基材フィルムと、
この基材フィルムの内面に沿って設けられ、樹脂フィルム及び無機酸化物の蒸着膜を有するバリアフィルムと、
前記外袋の内側で互いに対向して設けられるシーラント樹脂層とを備え、
前記基材フィルムが二軸延伸ポリプロピレンであり、
前記バリアフィルムの前記樹脂フィルムの外面に化学気相成長法で前記蒸着膜を蒸着させており、前記基材フィルムの内面と前記蒸着膜との間に溶融樹脂層を挟み込み、押出しラミネーションで貼り合わせることを特徴とする使い捨てカイロ用外袋。
【請求項２】
前記基材フィルムの内面にアンカーコート剤をコーティングし、
前記バリアフィルムの前記樹脂フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートを用い、その外面に前記蒸着膜として酸化アルミニウムを蒸着させ、
前記アンカーコート剤と前記蒸着膜との間に、前記溶融樹脂層としてポリエチレンを溶融押出しさせ、前記押出しラミネーションで貼り合わせることを特徴とする請求項１記載の使い捨てカイロ用外袋。
【請求項３】
前記基材フィルムとなる透明又は半透明な二軸延伸ポリプロピレンの内面に表示層を設け、この表示層を覆うように前記アンカーコート剤をコーティングしたことを特徴とする請求項２記載の使い捨てカイロ用外袋。
【請求項１】
使い捨てカイロが収納された内袋を更に包装する使い捨てカイロ用外袋であって、
該外袋の外側に設けられて耐熱性樹脂からなる基材フィルムと、
この基材フィルムの内面に沿って設けられ、樹脂フィルム及び無機酸化物の蒸着膜を有するバリアフィルムと、
前記外袋の内側で互いに対向して設けられるシーラント樹脂層とを備え、
前記基材フィルムが二軸延伸ポリプロピレンであり、
前記バリアフィルムの前記樹脂フィルムの外面に化学気相成長法で前記蒸着膜を蒸着させており、前記基材フィルムの内面と前記蒸着膜との間に溶融樹脂層を挟み込み、押出しラミネーションで貼り合わせることを特徴とする使い捨てカイロ用外袋。
【請求項２】
前記基材フィルムの内面にアンカーコート剤をコーティングし、
前記バリアフィルムの前記樹脂フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートを用い、その外面に前記蒸着膜として酸化アルミニウムを蒸着させ、
前記アンカーコート剤と前記蒸着膜との間に、前記溶融樹脂層としてポリエチレンを溶融押出しさせ、前記押出しラミネーションで貼り合わせることを特徴とする請求項１記載の使い捨てカイロ用外袋。
【請求項３】
前記基材フィルムとなる透明又は半透明な二軸延伸ポリプロピレンの内面に表示層を設け、この表示層を覆うように前記アンカーコート剤をコーティングしたことを特徴とする請求項２記載の使い捨てカイロ用外袋。
【図１】
【公開番号】特開２０１２−６５８７６（Ｐ２０１２−６５８７６Ａ）
【公開日】平成２４年４月５日（２０１２．４．５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−２１３６５８（Ｐ２０１０−２１３６５８）
【出願日】平成２２年９月２４日（２０１０．９．２４）
【出願人】（００００００５５０）オカモト株式会社 (118)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年４月５日（２０１２．４．５）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年９月２４日（２０１０．９．２４）
【出願人】（００００００５５０）オカモト株式会社 (118)
【Ｆターム（参考）】
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