使い捨て可能なマイクロ精製カード、方法、およびそのシステム
【解決手段】 本明細書に開示されるのは、マイクロ精製カード、システム、システムおよび方法、バックスペースである。マイクロ精製カードは、サンプルから分子を抽出し得る複数の流体構成要素を備える。サンプルとしては生物学的細胞が挙げられ、抽出された分子としては核酸が挙げられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、各々の出願の全体が本明細書において参照によって組み込まれる、2006年10月11日出願の米国特許出願第60/829,079号、および2007年9月17日出願の米国特許出願第60/973,103号に基づく優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、サンプルを調製するため、詳細には、生物学的細胞を溶解し、その中に存在する細胞の高分子を精製するための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
生物学的因子の分析は、分析のための未知のサンプルを調製する能力に依存する。サンプル調製の主要な構成要素は、生物学的因子を溶解および可溶化することである。サンプル調製は、溶解および可溶化の影響に対する生物学的因子の安定性における広範な変動によって複雑にされる。ウイルス、真核生物、および原核生物(細菌の芽胞を含む)を溶解するための種々の技術が開発されている。例としては化学的溶解および界面活性剤溶解、酵素処理、超音波処理、加熱およびガラス・ビーズ・ミリング(glass bead milling)が挙げられる。細菌の芽胞は例えば、溶解および可溶化に極度に耐性であって、しばしば上述の技術の組み合わせを要する。しかし、これらの溶解技術の多くは、増幅、標識または解析的分析を妨げる、サンプルに対する化学的な添加物の添加またはタンパク質のために分析が複雑化する。
【0004】
いくつかのサンプル処理技術が、マイクロ流体デバイスの使用および組み込みのために開発されている。これらの技術およびマイクロ流体デバイスとしては、組み込まれた界面活性剤媒介性溶解、レーザー媒介細胞溶解、および電場媒介性溶解が挙げられる。さらに、E.coli由来のDNAの溶解、濃縮、精製および分析を可能にするシステムが開発されている。これらのシステムの多くは、比較的不安定な真核生物細胞タイプおよび細菌でサンプル処理を行う。これらのデバイスのほとんどは、調製されたサンプルを溶出して下流の分析を可能にする能力がない。マイクロ流体分析のために細菌芽胞を迅速に溶解および分析する能力に関している研究はさらに少ない。
【0005】
従って、限定はしないが電気泳動分析、タンパク質フィンガープリント、核酸増幅、すなわち、PCRおよびハイブリダイゼーション分析、例えば、タンパク質および核酸のマイクロアレイの使用を含む種々の分析のために有用なサンプル処理技術を開発する必要は継続して存在している。最後に、使い捨て可能で小型のカードベースのサンプル調製システムを開発する必要性もあり、それらは使いやすく、サンプルの交差汚染を最小にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様は、サンプルから分子を抽出し得る複数の流体構成要素を含むマイクロ精製カードを提供する。マイクロ精製カードの複数の流体構成要素は、実質的に平面に配向され、この複数の流体構成要素は以下を備える:サンプルローディングインレットと、溶出インレットと、溶解されたサンプルを提供するため、少なくとも約90℃に加熱され得、かつ環境大気圧よりも少なくとも約10psi大きくまで加圧され得る溶解領域。それらはまた、この溶解サンプルから分子を濾過し得る多孔性メンブランと、分析結合工程の間少なくとも約40℃まで、かつ溶出工程の間95℃まで加熱され得る分子捕獲領域と、溶出チップとを備える。このサンプルローディングインレットは、溶解領域と流体連通しており、この溶解領域は、このフィルターと流体連通しており、このフィルターは、この分子捕獲領域に対して1つ以上の分子を流体的に連通し得、かつこの分子捕獲領域は、溶出インレットおよび溶出チップの両方と流体連通し得る。
【0007】
上昇した温度および圧力において1つ以上のマイクロ精製カード中でサンプルを調製するために適切なシステムも提供される。本発明のシステムは、このマイクロ精製カード(MCP)上のサンプルローディングインレットに対して圧力下で流体連通され得るサンプルインプット流体接続と;このマイクロ精製カード上の溶出インレットに対して圧力下でサンプルローディングインレットへ流体接続し得る溶出インプット流体接続と;このサンプルインプット流体および溶出インプット流体接続を受容するようにこのマイクロ精製カードを位置的に保持し得る、カードホルダーと、を備える。
【0008】
上昇した温度および圧力において使い捨て可能なマイクロ精製カードを用いてサンプルから分子を収集するために適切であるシステムも提供される。これらのシステムは、サンプル調製マイクロ精製カード(MCP)中でサンプルを調製するために適切な1つ以上の使い捨て可能なマイクロ精製カードおよびシステムを備える。これらのシステムでは、このマイクロ精製カードは、1個以上の細胞を含むサンプルから分子を抽出し得る複数の流体構成要素を備える射出成形カードを備え、この複数の流体構成要素は、溶解領域と流体連通し得るサンプルローディングインレットを備え、この溶解領域は、フィルターと流体連通されており、このフィルターは、分子捕獲領域に対して1つ以上の分子を流体連通し得、かつこの分子捕獲領域は、溶出インレットおよび溶出チップと流体連通し得る。適切なシステムは、マイクロ精製カード上でサンプルローディングインレットに対して圧力下で流体的に接続され得るサンプルインプット流体接続を備える;溶出インプット流体接続は、このマイクロ精製カード上の溶出インレットに対して圧力下でサンプルローディングインレットへ流体的に接続され得る。このシステム上のカードホルダーは、このようなサンプルインプット流体および溶出インプット流体接続を受容する位置でマイクロ精製カードを保持し得る。適切なカードホルダーは、このマイクロ精製カード上の溶解領域を少なくとも約90℃まで加熱し得るヒーターと;このマイクロ精製カード上の分子捕獲領域を約40℃より高くまで加熱し得、かつこの分子捕獲領域を30℃未満まで冷却し得る熱制御装置とを備える。このシステムはまた、この溶出チップを出てくる分子を含む溶出流体を受容し得る位置決め可能な流体収集ホルダーも備える。本発明のシステムは代表的には、このマイクロ精製カード上の分子捕獲領域を少なくとも約95℃まで加熱し得、かつこの分子捕獲領域を約−20℃未満まで冷却し得る1つ以上の熱制御装置を備える。適切なシステムはまた、1つ以上のマイクロ精製カードを受容するためのスロットを有する1つ以上のカードホルダーを備える。
【0009】
カードベースのサンプル調製システムを用いて分子を収集する方法も提供される。これらの方法は、細胞および第一の緩衝液を含むサンプルを圧力下で、マイクロ精製カード上でサンプルローディングインレットから溶解領域に対して流体連通させる工程と;この溶解領域中のサンプルを、周囲圧力よりも大きい1つ以上の圧力で約100℃から約150℃の範囲の温度まで加熱して、細胞を溶解し、溶解された細胞フラグメントと分子とを生じる工程と;約90℃より高い温度でこの溶解された細胞フラグメントから分子を濾過する工程と;分子捕獲物質またはデバイスを用いてこの濾過された分子の少なくとも一部を捕獲する工程と;溶出チップを通じて第二の緩衝液を用いてこの捕獲された分子の少なくとも一部を溶出させる工程であって、この第二の緩衝液がこの第一の緩衝液と同じかまたは異なっている工程と;この溶出された分子および第二の緩衝液の少なくとも一部を、位置決め可能な流体収集ホルダー中に収集する工程と;を包含する。
【0010】
カードベースのサンプル調製システムを用いて分子を収集する方法も提供される。これらの方法は、サンプルローディングインレットからマイクロ精製カード上の加熱領域に対して圧力下でサンプルを流体的に連通させる工程を包含する。このサンプルを、周囲圧力よりも大きい1つ以上の圧力で約100℃から約150℃の範囲の温度までヒーター領域中で加熱して、このサンプルの少なくとも一部を破壊する。この破壊されたサンプルフラグメントによって分子が生じ、次いでこれを約90℃より高い温度で濾過する。この方法はさらに、分子捕獲物質またはデバイスを用いてこの濾過された分子の少なくとも一部を捕獲する工程と;溶出チップを通じてこの捕獲された分子の少なくとも一部を溶出させる工程と;この溶出された分子の少なくとも一部を、位置決め可能な流体収集ホルダー中に収集する工程と;を包含する。
【0011】
一般的な説明および以下の詳細な説明は例示的であってかつ説明に過ぎず、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の限定ではない。本発明の他の局面は、本明細書に提供される本発明の詳細な説明に照らして当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
要旨および以下の詳細な説明は、添付の図面と合わせて読み取った場合、さらに理解される。本発明を例示する目的のために、本発明の図面の例示的な実施形態を示す;しかし、本発明は、開示される特定の方法、組成物およびデバイスに限定されない。さらに、図面には必ずしもスケールを記していない。
【図1】本発明のマイクロ精製カードの実施形態を示す。
【図2】本発明で用いられ得る穿孔されたキャップの実施形態を示す。
【図3】本発明のマイクロ精製カードの分子捕獲領域および溶出チップ部分の実施形態を示す。
【図4】本発明のマイクロ精製カードでの使用のための収集バイアルを操作するためのシステムの実施形態を示す。
【図5A】本発明の実施形態のシステム上のサンプルホルダー中のマイクロ精製カードのローディングを示す。
【図5B】本発明の実施形態のシステム上のサンプルホルダー中のマイクロ精製カードのローディングを示す。
【図6】本発明のマイクロ精製カードの種々の図を示す。
【図7】図6Bにおける断面H−Hの拡大であって、本発明のマイクロ精製カードの実施形態における流体の流れ方を示す。
【図8】図6Cにおける断面J−Jの拡大であって、本発明のマイクロ精製カードの実施形態における流体の流れ方を示す。
【図9】本発明のマイクロ精製カードの実施形態における流体の流れ方を示す。
【図10】本発明のマイクロ精製カードの実施形態の横断面斜視図を示す。
【図11】本発明の分子捕獲領域カートリッジの実施形態を示す。
【図12A】マイクロアレイを含む本発明の分子捕獲領域カートリッジの実施形態を示す。
【図12B】マイクロアレイを含む本発明の分子捕獲領域カートリッジの実施形態を示す。
【図13】分子捕獲領域カートリッジを備える本発明のマイクロ精製カードの展開された斜視図の実施形態を示す。
【図14】分子捕獲領域カートリッジを備える本発明のマイクロ精製カードの展開された斜視図の実施形態を示す。
【図15A】本発明のシステムのサンプル収集バイアルに隣接する本発明のマイクロ精製カードの溶出チップの図を示す。
【図15B】本発明のシステムのサンプル収集バイアルに隣接する本発明のマイクロ精製カードの溶出チップの図を示す。
【図16A】システムによって保持されるマイクロ精製カードについて、ローディングレールおよび位置変化レールに沿って、収集バイアルおよび廃棄バイアルが操作される方法を示す一連の図である。
【図16B】システムによって保持されるマイクロ精製カードについて、ローディングレールおよび位置変化レールに沿って、収集バイアルおよび廃棄バイアルが操作される方法を示す一連の図である。
【図16C】システムによって保持されるマイクロ精製カードについて、ローディングレールおよび位置変化レールに沿って、収集バイアルおよび廃棄バイアルが操作される方法を示す一連の図である。
【図16D】システムによって保持されるマイクロ精製カードについて、ローディングレールおよび位置変化レールに沿って、収集バイアルおよび廃棄バイアルが操作される方法を示す一連の図である。
【図17】本発明のmRNAを精製するためのプロトコールを示す。
【図18】本発明のmRNAを精製するためのプロトコールを示す。
【図19−1】種々の細胞破壊および標識抽出および方法およびデバイスを示す。頂部のパネルは、溶解デバイスのいくつかのブレッドボードの原型のデザインを記しかつ示している。第二のパネルは、溶解デバイスのブレッドボードの原型を用いる芽胞溶解およびDNA抽出の結果を示す。この第三のパネルは、RNA安定化およびqPCRの結果を示す。下部では、本発明のシステムのためのデザイン(下側の左パネル)、および本発明のマイクロ精製カードのデザインを示す。このシステムとともに本発明のマイクロ精製カードを用いる、芽胞からのDNA、細菌からのRNA、および真核生物細胞からのmRNAの抽出が示される。
【図19−2】種々の細胞破壊および標識抽出および方法およびデバイスを示す。頂部のパネルは、溶解デバイスのいくつかのブレッドボードの原型のデザインを記しかつ示している。第二のパネルは、溶解デバイスのブレッドボードの原型を用いる芽胞溶解およびDNA抽出の結果を示す。この第三のパネルは、RNA安定化およびqPCRの結果を示す。下部では、本発明のシステムのためのデザイン(下側の左パネル)、および本発明のマイクロ精製カードのデザインを示す。このシステムとともに本発明のマイクロ精製カードを用いる、芽胞からのDNA、細菌からのRNA、および真核生物細胞からのmRNAの抽出が示される。
【図20】Tentacle(商標)プローブの設計および機能を示す。
【図21】Tentacle(商標)プローブでの結果を示す。
【図22】Tentacle(商標)プローブを用いる外部試験結果を示す。
【図23】検出システムのデザインおよび製造を示す。
【図24A】マイクロ精製カードがユーザーの見込みで用いられ得るプロセスを示す。
【図24B】カード上でのサンプル調製を行うMCP装置内で用いられる経路を示す。
【図24C】冷却チャネル、溶解領域、ならびにサンプル調製を行うためのインレットポートおよびアウトレットポートを備える、マイクロ精製カード(MCP)キャップを示す。
【図25】MCPを操作するヒーターおよび流体コントロールに対してMCPを嵌合させるために用いられる配置を示す。
【図26】MCPワークステーションの内側に位置するマニフォールドに対するMCPの流体嵌合を示す。
【図27−1】MCPおよび適切なワークステーションを用いるmRNA精製の結果を示す。
【図27−2】MCPおよび適切なワークステーションを用いるmRNA精製の結果を示す。
【図28−1】MCPシステムを用いる総RNA精製の結果を示す。
【図28−2】MCPシステムを用いる総RNA精製の結果を示す。
【図29】8つのMCPを収容し得るアセンブルされたMCPワークステーションを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、本開示の一部を形成する、添付の図面および実施例と関連してとった以下の詳細な説明を参照してさらに容易に理解され得る。本発明は、本明細書に記載されるかおよび/または示される特定のデバイス、方法、適用、条件またはパラメーターに限定されないこと、および本明細書に用いられる用語法は単なる一例によって特定の実施形態を記載する目的であり、特許請求される本発明の限定を意図しないことが理解されるべきである。また、添付の特許請求の範囲を含む本明細書で用いられる場合、単数形「1つの(a)、(an)」および「この、その(the)」は、複数を包含し、特定の数値に対する言及は、文脈が明確に他を示すのでない限り、少なくともその特定の値を包含する。「多数、複数(plurality)」という用語は、本明細書において用いる場合、2つ以上を意味する。ある範囲の値が表わされる場合、別の実施形態は、1つの特定の値から、および/または他の特定の値までを包含する。同様に、値が近似として表わされる場合、推定の「約」を用いることで、その特定の値が別の実施形態を形成することが理解される。全ての範囲が包括的であって、組み合わせ可能である。
【0014】
明確にするために、本明細書において別の実施形態の状況で記載される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態中で組み合わせて提供されてもよいことが理解されるべきである。逆に、単一の実施形態の状況で略して記載される、本発明の種々の特徴はまた、別々に提供されてもよく、または任意の副次的組み合わせ(subcombination)で提供されてもよい。さらに、言及される値についての言及の範囲は、その範囲内の各々の値およびあらゆる値を包含する。
【0015】
本明細書で提供されるマイクロ精製カードは、サンプルから分子を抽出し得る複数の流体構成要素を備える。このマイクロ精製カードの複数の流体構成要素は実質的に平面に配向され、この複数の流体構成要素は、以下の構成要素:サンプルローディングインレットと、溶出インレットと、溶解されたサンプルを提供するため、少なくとも約90℃に加熱され得、かつ環境大気圧よりも少なくとも約10psi大きくまで加圧され得る溶解領域と、を備える。それらはまた、この溶解サンプルから分子を濾過し得るフィルターと、少なくとも約40℃に加熱され得る分子捕獲領域と、溶出チップとを備える。このサンプルローディングインレットは、溶解領域と流体連通しており、この溶解領域は、このフィルターと流体連通しており、このフィルターは、この分子捕獲領域に対して1つ以上の分子を流体的に連通し得、かつこの分子捕獲領域は、溶出インレットおよび溶出チップの両方と流体連通し得る。必要に応じて、1つ以上の流体バルブまたはチャネルが任意の2つ以上の流体構成要素の間に流体的に配置されてもよい。例えば、これらの構成要素を熱的に隔離して保持することを補助するために、このサンプルインレットと溶解領域との間に戦略的にチャネルが配置されてもよい。マイクロ精製カードの異なる部分において圧力を調節する目的のために1つ以上の流体バルブまたはチャネルも備えられてもよい。例えば、フィルターを横切る背圧を確立するために、狭いチャネルまたはバルブをこのフィルターと捕獲物質との間に配置してもよい。背圧はまた捕獲物質によって生み出されてもよい。
【0016】
このマイクロ精製カードは、細胞の溶解物を含む種々のサンプルとともに用いられてもよい。この場合、細胞の溶解物は、高温および高圧を用いて達成され得る。溶解緩衝液中の添加物に依存して、ほとんどまたは全ての溶解は急速に生じる。適切なマイクロ精製カードは、細胞および分子の成分の溶解および濾過の両方を組み合わせる領域を備えてもよい。時には、細胞は、溶解領域に移動される前に溶解され得る(すなわち、プレ溶解である)。プレ溶解の場合、濾過/溶解領域は、細胞壁のサンプル、汚れおよび分子捕獲領域を詰まらせる他の残骸を浄化する。溶解領域における熱はまた、捕獲領域の前に核酸を変性するのに重要である。
【0017】
本明細書において用いる場合、「細胞」という用語はまた、ウイルス、原虫、藻類および他の単細胞の生物および寄生生物、ならびに植物細胞および動物細胞(ヒト細胞を含む)を包含する。従って、サンプルは天然に由来しても、合成由来でも、または天然由来および合成由来の両方であってもよい。天然に由来するサンプルは、少なくとも1つの原核生物細胞、少なくとも1つの真核生物細胞、少なくとも1つのウイルス、少なくとも1つのプリオン、少なくとも1つの天然に由来する分子、またはその任意の組み合わせを包含する。例えば、天然に由来する分子としては、核酸、アミノ酸、炭水化物、塩、多糖類またはその任意の組み合わせを包含し得る。適切な原核生物細胞としては、細菌、藻類、またはその任意の組み合わせが挙げられる。適切な真核生物細胞としては、植物細胞、動物細胞またはその任意の組み合わせが挙げられる。
【0018】
このマイクロ精製カードはまた、合成に由来するサンプルを試験するために用いられてもよい。適切な合成由来のサンプルとしては、少なくとも1つの化成物、薬物分子、遺伝子操作された生物体、合成の核酸、合成のアミノ酸、合成の炭水化物、またはその任意の組み合わせが挙げられる。例えば、地下水中の化成物の試験は、飲料水の安全性を確認するために重要である。薬物分子は、法的機関の申請における使用、および製薬業者のための品質管理用途のために試験され得る。遺伝子操作された生物体および細胞、例えば、遺伝子操作された植物(例えば、食品または飼料中の使用のための植物)、動物、細菌、ウイルス、原生動物などおよび病原体、またはそれらの任意の組み合わせも試験され得る。多数の他の用途が、当業者に容易に想定される。適切には、天然に由来するサンプルとしては、少なくとも1つの植物細胞、少なくとも1つの動物細胞、少なくとも1つのヒト細胞、少なくとも1つのウイルス、少なくとも1つの単細胞生物体、少なくとも1つのプリオン、またはその任意の組み合わせが挙げられる。
【0019】
この分野ではマイクロ精製カードの取り扱いで、適切なサンプルをこのカードにロードし、キャップを用いてこれを密閉して試験の間にサンプルをこぼすことおよび交差汚染を回避できることが望ましくなる。適切なキャップは、サンプルローディングインレットに対して密閉され得、望ましくは、圧力差に供された場合それを通じた流体のフローを可能にし得、かつこのサンプルキャップは圧力差に供されない場合、それを通じた流体のフローを妨げ得る。適切なサンプルキャップは、1つ以上の細孔を備え、その細孔の各々は約2mm未満、代表的には約0.1mmより大きい直径を有する。このキャップを用いて、サンプルローディングインレットを密閉してもよい。適切なサンプルローディングおよびインレットは、生物学的な流体サンプル、組織サンプル、廃棄物、および環境サンプルまたはその任意の組み合わせを受容し得る。
【0020】
本発明のマイクロ精製カードは、プラスチック、金属、セラミック、ガラスまたはその任意の組み合わせから構成される少なくとも2つの流体構成要素を有する。製造の効率および容易さを求めるために、ある実施形態では少なくとも2つ、または3つもしくは4つもの流体構成要素が、同じ物質から同時に成形されてもよい。例えば、少なくとも2つの流体構成要素がポリマー物質から同時に射出成形されてもよい。適切なポリマー材料は、環状オレフィンコポリマー、ポリオレフィン、ポリアクリル酸、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリビニルハライド、またはそれらの任意のコポリマーもしくは組み合わせを含む。適切なポリオレフィンは、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状ポリオレフィン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。適切な環状ポリオレフィンは、Topas(商標)(COC)、Zeonor(商標)(COP)ポリマー、水素化ポリスチレン、ポリビニルシクロヘキサン、またはその任意の組み合わせを含む。
【0021】
このマイクロ精製カードは、平面方向でカード型物質上に支持された種々の流体構造を備え得る。このマイクロ精製カードの2つ以上の流体構成要素は、2つ以上の流体構成要素の平面に対して平行に配置されたカード型物質を用いて構造的に配向され得る。さらなる支持リブおよび/またはポストが、この流体構成要素の少なくとも一部の平面配向を支持し得る。このカードの寸法は、高さおよび幅で、数センチメートル〜10センチメートルに及んでもよい。従って、適切な指示リブまたはポストは代表的には、約数十ミリメートルから1〜2センチメートル程度の寸法を有する。例えば、支持リブまたはポストは、約2cm長、および約0.1〜0.3mmの高さの範囲、および約0.3mmの幅であってもよい。支持リブまたはポストは、サンプルから溶出液への流体のフローの方向と一致して配向され得る。サンプルローディングインレットはさらに、1つ以上の支持構造を用いて他の流体構成要素の少なくとも1つに対して構造的に支持され得る。
【0022】
この溶解領域はサンプルインレットおよびフィルターの両方に流体接続される。このマイクロ精製カードの溶解領域は、このフィルターに対して反対に配向されたフィルターキャップを用いてフィルターを含む任意の領域を封入することによって提供され得る。特定の実施形態では、このフィルターキャップおよびフィルターは、流体提供、温度制御およびサンプル回収のために適切なシステム中へのマイクロ精製カードの挿入の方向に対応する平面に対して実質的に平行に配向される。各々のフィルターキャップおよびフィルターの少なくとも一部は、このマイクロ精製カードの平面に対して垂直な1つ以上の突起に対して密閉可能に固定されてもよい。マイクロ精製カードの平面に対して垂直な適切な突起は、リング、四角、または他の多角形の形状であってもよい。特定の実施形態では、このフィルターは、例えば、与えられた圧力差のもとでフィルターが平坦なままであることを保証することによって、このサンプルの1つ以上の補助濾過によって支持されてもよい。このような突起は、マイクロ精製カードの平面に対して垂直に配向されてもよい。
【0023】
適切なフィルターとしては、メンブランフィルター、パックされた粒子層、フリット、セルロース材料、繊維性物質、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。適切なフィルターとしてはまた、パックされたビートの層、多孔性構造を有するフリット、例えばステンレス鋼フリットが挙げられる。セルロースおよび繊維性物質もフィルター中で適切に用いられてもよい。メンブランフィルターは特に有用である。なぜなら、それらは、デッドボリュームが小さい広い表面積の濾過を可能にするからである。適切なメンブレンフィルターは、ポリマー、金属、セラミック、ガラスまたはそれらの任意の組み合わせから構成され得る。ポリマーフィルター、例えば、PTFEおよび他のフッ素重合体が特に所望される。従って、このポリマーは、ハロゲン化ポリマー、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、セルロース、ポリカーボネート、またはそれらの任意の組み合わせを包含し得る。適切なメンブレンフィルターは、多孔性ポリマー基板上に支持される。メンブレンフィルターのこの多孔性のポリマー基板は、マイクロ精製カードの平面に対して垂直に出てくる1つ以上のシーリング構造に対して密閉的に固定され得る。
【0024】
適切なメンブレンフィルターは、約5ミクロン未満という名目上の細孔サイズを有すると特徴付けられ、ある実施形態では、約0.02μm〜2μmという範囲の名目上の細孔サイズ、さらに代表的には、約0.2μm〜1.0μmという範囲の名目上の細孔サイズを有する。適切なフィルターは、約50平方mm〜約5000平方mmの範囲の濾過面積を有するか、またはさらに約100平方mm〜約600平方mmの範囲の濾過面積を有するとさえ特徴付けられる。従って、このフィルターは、目詰まりの前に少なくとも約100,000個の溶解された細胞を濾過できるのに十分な面積であって、しばしばこのフィルターは、目詰まりの前に最大約10,000,000個までの細胞を取り扱うことができるのに十分な面積である。ある実施形態では、この溶解領域に隣接するフィルター表面は、生体分子の選択性の吸着のために官能化されていると特徴付けられる。これは、例えば、捕獲領域に入る生体分子の量を最小化するのに有用であり得る。適切なフィルター表面官能化としては、シラン還元、プラズマ処理、エポキシ−アミン、ヒドラジン、アルデヒド、ポリジン(polysine)、UV架橋、ラジカル活性化、チオール架橋、スクシンイミジルエステル、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0025】
フィルターキャップは、特定の実施形態では、カード型物質に対して流体的に密閉される、溶解領域またはチャンバを設けるために備えられる。これによって、適切なフィルターメンブレンの結合、続いて適切なフィルターを有する溶解領域のシーリングを可能にしながら、カード型形状で多くの流体構成要素を提供するための物質の適切な成形が可能になる。このフィルターは、限定はしないが、接着、超音波的結合、ネジ切り、圧力クランプ、赤外線アセンブリ法などを含む任意の種々の方法を用いて結合され得る。フィルターキャップ(フィルターキャップ)は、十分な熱伝導性および薄さの物質から構成され得、この上で約140℃未満の接触温度を有する外部ヒーターと接触して、溶解領域内の流体を約3分未満で約100℃より高い温度に達し得る。
【0026】
サンプル調製は、サンプルローディングインレットを有し得、これはバイアル形状、チューブ形状、プリズム形状、球状の、四角の形状、卵型、またはその任意の組み合わせである。このサンプルローディングインレットおよび溶解領域は、1つ以上の流体チャネルを介して流体連通している。適切な流体チャネルを用いて、例えば、ローディングインレットを溶解領域に、または溶解領域をフィルターに、フィルターから捕獲領域に、またはさらには溶出インレットから捕獲領域になど接続してもよい。
【0027】
適切なサンプルローディングインレットによって、カード中へのサンプル、例えば、細胞、組織もしくは血液または他の環境物質を含む液体または流体の配置が可能になる。サンプルローディングインレットは、約0.1ml〜約5mlの範囲の容積を有するか、またはさらに、約0.2ml〜約3mlの範囲の容積を有するとして特徴付けられる。特定の実施形態では、このサンプルローディングインレットは、適切なサンプルキャップに可塑的に接続される。
【0028】
本発明のマイクロ精製カードはまた、分子捕獲領域との流体接続に比較してサイズの小さい開口へ傾斜されているという点で特徴付けられた溶出チップを備える。マイクロ精製カードによって調製される生成物を形成する分子が濾過されて溶出チップを出る場合、この溶出チップのデッドボリューム中に捕まる物質(すなわち生成物)の量を最小にすることが所望される。これに関して、適切な溶出チップは、約75マイクロメートル未満の容積を有すると特徴付けられる。適切な溶出チップは、約0.05マイクロリットル程度の小さい容積を有してもよく、これは適切なピペットチップを用いて提供され得る。適切な溶出チップは、約60マイクロリットル未満の容積を有するか、または約1マイクロリットル未満の容積を有するとさえ特徴付けられる。適切な溶出チップは、このマイクロ精製カードの一部から延びて、外部サンプル収集バイアル中に分子を流し得る。低容積の溶出は、捕獲物質を事前加熱することによって、次いで捕獲領域を通じてポンピングされる流体の量および速度を正確に制御することによって達成される。この方法では、1.0マイクロリットル程度の低い溶出容積が達成され得る。
【0029】
本発明のマイクロ精製カードの溶解領域は、少なくとも約120℃まで加熱され得、かつ少なくとも最大約80psiまで加圧され得る。これらの特性は、上昇した温度および圧力に抵抗することができる十分な強度および熱耐久性の物質を用いて提供される。例えば、射出成形プラスチック、例えば、高温のポリプロピレン、ポリオレフィン、およびポリカーボネートは、このような上昇した温度および圧力に抵抗し得る。さらに、高温に長時間抵抗できないプラスチックは、定格の温度よりも高温で短期間用いられ得る。他の実施形態では、より低い温度およびが圧力も同様に用いられ得る。例えば、溶解領域は、少なくとも約95℃まで加熱され、かつ大気圧より少なくとも約10psi上まで加圧されてもよい。温度および圧力が高いほど、より望ましい傾向であり、他の好ましい実施形態では、この溶解領域は、少なくとも約150℃まで加熱され、かつ少なくとも約100psiまで加圧されてもよいし、またはさらに少なくとも約200℃まで加熱され、かつ少なくとも約350psiまで加圧されてさえよい。種々の物質が、これらの上昇した温度および圧力で用いられ得る。例えば、金属、セラミック、複合材料およびエンジニアリング熱可塑性物質も全て用いられ得る。
【0030】
溶解領域は代表的には、このカード内に構築されるいかなる別個の加熱デバイスも備えないが、備えてもよい。従って、適切なシステムは、この中に構築されたヒーターを有し、この溶解領域は、外部ヒーターに近接して配置される。例えば、外部の電気ヒーターは、フィルターキャップと直接熱的に接触されてもよく、これが次に、この加熱領域内でサンプルを加熱する。細胞が加熱領域に存在する場合、この加熱領域は、熱および圧力のもとでこの細胞を溶解するための溶解領域として用いられ得る。
【0031】
溶出インレットは、マイクロ精製カードに対して外部の流体供給源に対して流体的に接続され得る。適切な流体供給源は、マイクロ精製カードに対して流体的に接続して、これを加熱するように設計されているシステムによって提供される。溶出インレットに入る適切な流体としては、例えば、緩衝液および他の水溶液(分子捕獲領域から分子を洗い去り得る)が挙げられる。適切な溶出液は、本明細書にさらに記載される。
【0032】
マイクロ精製カードは、サンプルから濾過して除かれる分子を捕獲するための1つ以上の分子捕獲領域を備える。特定の実施形態では、この分子は、生体分子、例えば、核酸およびアミノ酸である。核酸およびアミノ酸の高次構造は、温度依存性である傾向であり、これを用いれば、これらのタイプの分子を捕獲および遊離するのに有益であり得る。例えば、ポリ核酸は、約90℃未満の温度でハイブリダイズし得る。従って、ポリ核酸鎖からなる分子捕獲領域を用いて、対応する核酸配列を捕獲してもよい。捕獲された分子の遊離および溶出は、分子捕獲領域を通じてかつ溶出チップを通って外に緩衝液を流しながら、少なくとも約95℃まで分子捕獲領域を加熱することによって達成され得る。精製された核酸分子の遊離は、より低温度でも同様に達成され得、そして主にDNAまたはRNAハイブリッドの融点によって制御される。生体分子は代表的には、約150℃より上で損傷される。この分子捕獲領域は、加熱ブロック、加熱カートリッジ、加熱テープなど、またはさらにはマイクロ精製カードを受容するための適切なシステム中に装着された熱電性冷却器を用いて適切に加熱されてもよい。さらに、この分子捕獲領域を少なくとも約15℃未満、または少なくとも約4℃未満、または少なくとも約−10℃未満の温度まで冷却し得るか、あるいはさらに約−20℃まで冷却し得ることも所望される。約0℃未満の温度は、溶出インレットに入る液体中において、例えば、適切なアルコールまたは凍結防止剤、例えば、エタノールまたはプロピレングリコールを使用することによって実行され得る。種々の緩衝液によって、凝固点を約−20℃未満まで低下し得る。熱電性またはペルチェ冷却器を用いて、これらの低温を達成してもよい。
【0033】
分子捕獲領域は、マイクロ精製カード中と一体の取り外し不能な領域、取り外し可能なカートリッジ、またはそれらの任意の組み合わせを備えてもよい。例えば、マイクロ精製カードと一体の取り外し可能な領域は、カートリッジの実質的な一部の射出成形プロセスによって提供されてもよい。あるいは、別個のカートリッジが加工され、適切な捕獲物質または捕獲デバイスで充填され、カートリッジ上の流体ポートに結合されてもよい。適切な分子捕獲領域は、フィルターによって濾過され得る1つ以上のタイプの分子を選択的に捕獲し得る捕獲物質または捕獲デバイスを含む。例えば、捕獲物質としては、多孔性材料、パックされた層物質、ゲル、金属フリット、捕獲物質、セルロース、ファイバーメンブレン、目的の分子と結合するように官能化または改変され得る任意の物質、ガラス、ケイ素、セラミック、ポリマーまたはそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。適切な多孔性物質は、多孔性ポリマーモノリスを含む。適切な捕獲物質は、核酸、アミノ酸、炭素鎖、陽イオン、陰イオン、ペプチドまたはそれらの任意の組み合わせで官能化されてもよい。捕獲領域中に含まれ得る核酸としては、限定はしないが、全長遺伝子、ランダムなDNAまたはRNA配列、アプタマー、DNA、LNA、PNA、RNA、配列特異的なオリゴヌクレオチド、対立遺伝子反復、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0034】
捕獲デバイスはまた、マイクロアレイを備えてもよい。マイクロアレイカートリッジは、2部(二等分)で作製されてもよい。最初の半分は、約200ミクロンから約2mmの幅の範囲の開口チャネルを備えてもよく、ここに多孔性基板が沈着されて架橋されて、チャネルの壁に結合されてもよい。第二の部分は、このチャネルに結合され得る固体の半円(本質的にレンズ)であってもよい。レンズを受容するために、カートリッジの基部の連続(すなわちカード)は、このレンズを受容するようにスタンプされてもよい。次に、このレンズは、溶媒結合されてもよいし、またはマイクロアレイを含むカートリッジに対してUVエポキシ結合されてもよい。適切なプラスチックレンズは、適切なアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂またはポリスチレン型樹脂を用いて容易に製造される。あるいは、3ウェーハシステムを用いて、分子捕獲カートリッジ中でマイクロアレイを調製してもよい。1つのウェーハは、そこにエッチングされた多孔性領域を有し得る。このウェーハは、穴を介して2つを含む基部ウェーハに結合されてもよい。次いで、この2つのウェーハは、ロボットまたはフォトリソグラフィーのいずれか、例えば、デジタル光投射設定などを用いてスポッティングされ得る。一旦、プローブの沈着が完了すれば、次いで、オープン・フェースのチャネルを、この「レンズのある(lensed)」トップ・ウェーハを用いて密閉してもよい。あるいは、マイクロアレイデバイスからなる分子捕獲カートリッジは、種々の捕獲物質でこのカートリッジを交互に充填することによって提供され得る。
【0035】
マイクロ精製カードはまた、識別タグを備えてもよい。適切な識別タグとしては、光学的にスキャン可能なコード、磁気ストリップ、および電磁的に読み取り可能なシグナル、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。例えば、識別タグとしては、バーコードまたは高周波識別(「RFID」)チップを挙げることができる。サンプルの処理条件がカードにそって追跡できるように、バーコードリーダーをこのカードまたはシステムに用いてもよい。バーコードはまた、溶出バイアルの両方または一方に結合され得る複製とともにカード上に配置されてもよい。
【0036】
フィルターと溶解領域との間のクロストーク(cross talk)を制限することが所望される。クロストーク(すなわち、混入)は、カード上の流体構成要素の間に適切なバルブを組み込むことによって最小にできる。これには、カードを変更し得る(すなわち、熱シーリング、チャネル変形、単一方向バルブを用いるなどによって)、単回使用バルブを挙げることができる。上で記載のとおり、小径の孤立したチャネルを用いて領域の間のクロストークを制限してもよい。
【0037】
使い捨て可能なマイクロ精製カードはまた、射出成形過程を用いて、カードおよび流体構成要素の実質的な部分を製造することも可能である。例えば、カードは、サンプルから分子を抽出し得る複数の流体構成要素を備えるように射出成形されてもよく、この複数の流体構成要素は、溶解領域と流体連通され得るサンプルローディングインレットを備え、この溶解領域は、フィルターと流体連通され得、このフィルターは、分子捕獲領域に対して1つ以上の分子を流体連通し得、この分子捕獲領域は、溶出インレットおよび溶出チップと流体連通し得る。これらの使い捨て可能なマイクロ精製カードはまた、サンプルキャップを備える。適切なサンプルキャップは、サンプルローディングインレットに対して密閉され得、このサンプルキャップは、圧力差に供された場合それを通じた流体のフローを可能にし得、このサンプルキャップは、圧力差に供されない場合、それを通じた流体のフローを妨げ得る。さらに、各々の流体構成要素の一部は、射出成形カードによって提供され得る。使い捨て可能なマイクロ精製カードは、細胞からDNAのような核酸などの分子を得るために適切に用いられる。
【0038】
上昇した温度および圧力で1つ以上のマイクロ精製カードにおいてサンプルを調製するために適切なシステムも提供される。本発明のシステムは、マイクロ精製カード上のサンプルローディングインレットに対して圧力下で流体接続され得るサンプルインプット流体接続と;マイクロ精製カード上で溶出インレットに対してサンプルローディングインレットへ圧力下で流体的に接続され得る溶出インプット流体接続と;このサンプルインプット流体および溶出インプット流体接続を受容するようにマイクロ精製カードを位置的に保持し得るカードホルダーと;を備える。このカードホルダーはまた、マイクロ精製カードを受容するためのスロットを備え得る。
【0039】
さらに、このカードホルダーは、このマイクロ精製カード上の溶解領域を少なくとも約90℃まで加熱し得るヒーターと、このマイクロ精製カード上の分子捕獲領域を約40℃より高くまで加熱し得、かつこの分子捕獲領域を30℃未満まで冷却し得る熱制御装置とを備える。このシステムはまた、マイクロ精製カード上の溶出チップを出て行く流体を受容するための2つ以上の流体収集レセプタクルを交互に位置決めし得る位置決め可能な流体収集ホルダーを備える。
【0040】
このシステムは、マイクロ精製カード上の種々の流体構成要素の加熱および冷却を制御するために、ならびにカードの流体構造内の流体の圧力を制御するために用いられ得る。従って、流体は、マイクロ精製カードに入ることも出ることも両方可能である。出て行く場合、この流体は、1つ以上のレセプタクルに収集され得る。例えば、流体収集レセプタクルの1つは、廃棄流体収集レセプタクルであってもよく、そしてもう一方は、溶出流体レセプタクルであってもよい。ここで、位置決め可能な流体収集ホルダーは、この溶出チップから廃棄流体レセプタクルへ出て行く廃液を受容するように、またはこの溶出チップから溶出流体レセプタクルへ出てくる溶出流体を受容するように交互にスライドして配置されてもよい。マイクロ精製カードの溶出チップに対して収集バイアルの位置を操作することによる流体収集の多くの他のバリエーションが想定される。
【0041】
このシステムは、マイクロ精製カード上の分子捕獲領域を少なくとも約95℃および代表的にはそれ以上まで加熱し得る1つ以上の熱制御装置を備えてもよい。冷却デバイス、例えば、熱電冷却器も、任意の1つ以上の流体構成要素、例えば分子捕獲領域を約−20℃程度の低い温度まで冷却するために設けられてもよい。他の実施形態では、このシステムのヒーターは、マイクロ精製カード上の溶解領域を少なくとも約95℃、または少なくとも約100℃、または少なくとも約110℃、または少なくとも約120℃、または少なくとも約130℃、または少なくとも約140℃、または少なくとも約150℃まで加熱し得る。
【0042】
他の実施形態では、このシステムの流体接続は、少なくとも約10psi、または少なくとも約20psi、または少なくとも約40psi、または少なくとも約80psi、または少なくとも約120psi、またはさらに少なくとも約150psi、またはさらには少なくとも約200psi、またはさらに少なくとも約250psi、またはさらに少なくとも約300psi、またはさらに少なくとも約350psiまでマイクロ精製カードの内側の圧力を増大し得る。高圧の配管およびカップリング継ぎ手がこのような操作に容易に利用可能である。
【0043】
さらなるサンプルカードの在庫の(inventory)構成要素およびシステムがこのシステムに包含され得る。例えば、このシステムはさらに、本明細書に上記されるような、バーコードまたはRFIDタグなどの識別タグを読み取るためのスキャナーを備えてもよい。
【0044】
上昇した温度および圧力で使い捨て可能なマイクロ精製カードを用いてサンプルから分子を収集するために適切であるシステムも提供される。これらのシステムは、マイクロ精製カード中のサンプルを調製するために適切な1つ以上の使い捨て可能なマイクロ精製カードおよびシステムを備える。これらのシステムでは、このマイクロ精製カードは、射出成形カードを備え、このカードは、1つ以上の細胞を含むサンプルから分子を抽出し得る複数の流体構成要素を備え、この複数の流体構成要素は、溶解領域と流体連通され得るサンプルローディングインレットを備え、この溶解領域は、フィルターと流体連通され得、このフィルターは、分子捕獲領域に対して1つ以上の分子を流体連通し得、この分子捕獲領域は、溶出インレットおよび溶出チップと流体連通し得る。適切なシステムは、マイクロ精製カード上のサンプルローディングインレットに対して圧力下で流体接続され得るサンプルインプット流体接続と;マイクロ精製カード上で溶出インレットに対してサンプルローディングインレットへ圧力下で流体的に接続され得る溶出インプット流体接続とを備える。このシステム上のカードホルダーは、このようなサンプルインプット流体および溶出インプット流体接続を受容する位置にマイクロ精製カードを保持し得る。適切なカードホルダーは、マイクロ精製カード上の溶解領域を少なくとも約90℃まで加熱し得るヒーターと;マイクロ精製カード上の分子捕獲領域を約40℃より上まで加熱し得、かつこの分子捕獲領域を約30℃未満まで冷却し得る熱制御装置とを備える。このシステムはまた、この溶出チップから出てくる分子を含む溶出流体を受容し得る位置決め可能な流体収集ホルダーを備える。本発明のシステムは代表的には、マイクロ精製カード上の分子捕獲領域を少なくとも約95℃まで加熱し得、この分子捕獲領域を約−20℃まで冷却し得る1つ以上の熱制御装置を備える。適切なシステムはまた、1つ以上のマイクロ精製カードを受容するためのスロットを有する1つ以上のカードホルダーを備える。
【0045】
カードベースのサンプル調製システムを用いる分子収集の方法も提供される。これらの方法は、細胞および第一の緩衝液を含むサンプルを圧力下で、マイクロ精製カード上でサンプルローディングインレットから溶解領域に対して流体連通させる工程と;この溶解領域中のサンプルを、周囲圧力よりも大きい1つ以上の圧力で約100℃から約150℃の範囲の温度まで加熱して、細胞を溶解して溶解された細胞フラグメントと分子とを生じる工程と;約90℃より高い温度でこの溶解された細胞フラグメントから分子を濾過する工程と;分子捕獲物質またはデバイスを用いてこの濾過された分子の少なくとも一部を捕獲する工程と;溶出チップを通じて第二の緩衝液を用いてこの捕獲された分子の少なくとも一部を溶出させる工程であって、この第二の緩衝液がこの第一の緩衝液と同じかまたは異なっている工程と;この溶出された分子および第二の緩衝液の少なくとも一部を、位置決め可能な流体収集ホルダー中に収集する工程と;を包含する。
【0046】
本発明の方法はさらに、マイクロ精製カード中でサンプルを調製するために適切なシステム中にこのマイクロ精製カードを挿入する工程を包含する。例えば、マイクロ精製カードを最初に生物学的サンプルで充填してキャップした。次いでこのカードをカードホルダーのスロットを通じて挿入し、これで、カード上の種々の液体構成要素の温度を制御し、同様に、このカード内の流体接続および圧力を維持する。このシステムによって提供される流体接続は代表的に、細胞を含む生物学的サンプルなどのサンプルを操作するために適切な緩衝液を提供し得る。例えば、緩衝液の1つまたは両方がDNase、RNAse、インヒビター、塩、緩衝液、界面活性剤、水、有機溶媒、酸、塩基またはその任意の組み合わせを含むべきであるかもしれない。
【0047】
カードベースのサンプル調製システムを用いて分子を収集するための方法も提供される。これらの方法は、サンプルローディングインレットからマイクロ精製カード上の加熱領域に対して圧力下でサンプルを流体的に連通させる工程を包含する。このサンプルを、周囲圧力よりも大きい1つ以上の圧力で約100℃から約150℃の範囲の温度までヒーター領域中で加熱して、このサンプルの少なくとも一部を破壊する。この破壊されたサンプルフラグメントは、分子を生じ、次いでこの分子を約90℃より高い温度で濾過する。この方法はさらに、分子捕獲物質またはデバイスを用いてこの濾過された分子の少なくとも一部を捕獲する工程と;溶出チップを通じてこの捕獲された分子の少なくとも一部を溶出する工程と;位置決め可能な流体収集ホルダー中でこの溶出された分子の少なくとも一部を収集する工程とを包含する。これらの方法はさらに、別の実施形態では、マイクロ精製カード中でサンプルを調製するために適切なシステム中にマイクロ精製カードを挿入する工程を包含し得る。
【0048】
分子は、サンプルを溶解するために必ずしも加熱を必要としないカードベースのサンプル調製システムを用いて、溶解された細胞から収集され得る。例えば、1つの方法は、サンプルローディングインレットからマイクロ精製カード上の溶解領域に対して圧力下で、細胞および第一の緩衝液を含むサンプルを流体的に連通させる工程と;周囲圧力よりも大きい1つ以上の圧力で、溶解剤、超音波処理、またはその両方を用いてこの溶解領域においてこの細胞を溶解して、溶解された細胞フラグメントおよび分子を生じる工程と;この溶解された細胞フラグメントから分子の少なくとも一部を濾過する工程と;分子捕獲物質またはデバイスを用いてこの濾過された分子の少なくとも一部を捕獲する工程と;溶出チップを通じて第二の緩衝液を用いてこの捕獲された分子の少なくとも一部を溶出させる工程であって、この第二の緩衝液が、第一の緩衝液と同じであるかまたは異なっている工程と;位置決め可能な流体収集ホルダー中でこの溶出された分子および第二の緩衝液の少なくとも一部を収集する工程とを包含する。この方法は、RNA、mRNA、またはそれらの任意の組み合わせなどの分子を真核生物細胞から回収するために特に有用である。適切なRNaseインヒビターが溶解領域に存在する。さらに頑丈な細胞、例えば、細菌の芽胞は、上昇した温度(最大約150℃、代表的には約90℃〜約150℃の範囲)で適切に溶解される。分子、例えばRNAを濾過するために所望される特定の実施形態では、約90℃より高い温度である。
【0049】
種々の緩衝液、例えば、溶解剤が、サンプルフラグメントの破壊を補助するためにこの方法に含まれてもよい。例えば、1つ以上の緩衝液は、DNase、RNAse、インヒビター、塩、緩衝液、界面活性剤、水、有機溶媒、酸、塩基またはその任意の組み合わせを含む。
【0050】
一実施形態では、生物学的サンプルから核酸を単離するためのMCPシステムを意味するシステムが提供される。このMCPシステムは、使い捨て可能なMCP中に組み込まれたサンプルバイアルから、MCP上の組み込まれた溶解領域へ、ゲノムDNA、総RNAまたはmRNAに特異的な安定化緩衝液中に分散された生物学的細胞を流す。次いで、この細胞を溶解して、一方では同時に核酸を溶解領域内で約130℃で濾過して流して濾液を形成する。次いで、この濾液(核酸、細胞由来の非核酸分子、および安定化緩衝液を含む)は、MCP上に組み込まれたセルペンチン冷却領域を通じて流れる。次いで、この冷却された濾液は、このカードに結合されたピペットチップ内に位置する捕獲領域を通じて流れる。この捕獲領域は、濾液が捕獲媒体を通過するにつれて捕獲される核酸のタイプに依存して種々の捕獲媒体を含む。ガラスファイバーを、ゲノムDNAまたは総RNAを捕獲するための捕獲領域で用い、オリゴ−dT連結セルロースを、mRNAを捕獲するための捕獲領域中で用いる。次いで、この捕獲された核酸を洗浄して不純物を除く。第一の洗浄は、カオトロピック塩、80%エタノール、および水を約20℃で含む水性緩衝液を用いる。第二の洗浄は、80/20のエタノール/水を用いて、緩衝液および塩を約20℃で除去する。最終工程では、捕獲された核酸を、RNaseなしの水を約65℃〜約95℃の範囲の温度で溶出させることによって、捕獲物質から外部サンプル収集バイアルに遊離させる。
【0051】
実施例および追加の例示的実施形態
図1〜図29は、本発明の種々の実施例および実施形態を図示する。これらの図では、「Lysix」または「Lysix(商標)」という用語は、MCPまたはマイクロ精製カードという用語と交換可能に用いられ得る。以下の表は、このセクションで考察される種々の構成要素に対する参照の数字を列挙する。
【0052】
【表1】
【0053】
実施例−マイクロ精製カード処理(図1〜図5)
図1〜図5を参照、ここに本発明の例示的マイクロ精製カードを用いてサンプルを処理する方法を記載する。
【0054】
サンプル処理フロー
1)サンプルを、マイクロ精製カード100にロードする。カード上のバイアル(サンプルローディングインレット1)を標準的なラボのバイアル後にモデルにする。サンプルをローディング時にサンプル中にカード内へピペッティングしてそのままにする[サンプルを1にロードする]。
2)サンプルリッドを閉鎖して、穿孔がサンプルの溢流を防ぐ。穿孔はまたクロストークも制限する[3のキャップおよび9の穿孔]。
3)カードをこのシステムに挿入する(図4、図5Aおよび図5B)。カードがレールにそってそのスライドに挿入されるにつれ位置内にロックされる。捕獲領域の加熱エレメントはカードに対して圧入される[図5Bにおいて上の「MCPローディング」に示される]。
4)作製された流体接続[1および2で行われた]。
5)係合された熱ヒーター[ヒーターは5に対して圧する]。
6)洗浄位置にセットされた収集バイアル[13の頂部にスライドする]。
7)洗浄/ブロック緩衝液で事前に湿された捕獲物質[2の接続から]。
8)事前加熱された熱領域(95、および40〜50℃)[5および14で]。
9)溶解緩衝液はサンプルをフィルター/溶解領域を通して押す[1での流体接続を通じて]。
10)捕獲物質中の分子の選択的なトラッピング[14で]。
11)捕獲されたサンプルでの捕獲領域を洗浄するために用いた洗浄/ブロック緩衝液。これは、冷却された収集エリアを用いてもよい[2からの流体のフロー、14で熱電冷却器(TEC)から冷却]。
12)廃棄から収集へ収集バイアルの変更[13にそって底の方にスライドする]。
13)捕獲領域上に導入された溶出緩衝液[流体接続2を通じて]。
14)捕獲物質を加熱して結合サンプルを遊離する[2を通った流体および14での加熱]。
15)溶出緩衝液をポンピングしてサンプルを新しいバイアル中へ溶出する[14から放出される]。
16)カードを取り外して廃棄する。廃棄物は、他の生体分子を抽出するために処理してもよい。例えば、タンパク質または未結合の核酸。
【0055】
実施例:マイクロ精製カード。本発明のマイクロ精製カードの例は、クレジットカードのサイズで消費できる。サンプルをロードして、溶解し、濾過してマイクロ精製カード上にトラップする。このカードは、2つの流体インプット、1つのアウトプット、および2つの熱制御領域を有する。これらのインプットおよび熱領域は、基部システム中で接面する。
【0056】
製造。適切なマイクロ精製カードを、ポリプロピレン(PP)を用いて射出成形する。ポリカーボネート(PC)環状オレフィンコポリマーまたは環状オレフィンポリマーも用いてもよく、ポリプロピレンよりも高い使用温度を有する。
【0057】
流体接続。サンプルバイアル(サンプルローディングインレット)をサンプルカード中に組み込み、このサンプルバイアルのサイズおよび形状は標準的な研究室のバイアルと同様である。このシステムにそったカードを用いて、サンプルを処理するのに必要なユーザーの工程を減らす。カード上のサンプルバイアル流体接続は、穿孔したキャップを通じて行う。バイアル中へのサンプルを密閉するだけである代表的なサンプルバイアルとは異なり、マイクロ精製カードのキャップは、加圧された流体のフローを可能にする穿孔を有する。キャップが密閉されるとき、この穿孔は十分に小さく、表面張力によって流体のフローが限定される。流体接続をクラウンの頂部に対して作製するとき、このキャップを通じた流体のフローは圧力ポンピングで生成される。このデザインの利点は、サンプルのキャリーオーバー(持ち越し)の機会を大きく低減させるということである。キャップ中の穿孔によって、サンプルと流体接続との間の障壁を作製する。これが、サンプルの間の流体接続の浄化の必要性を排除し得る。カードの頂部で圧力フィットによってインプット流体接続を行う。実験によって、このタイプのフィットは、緩衝液/洗浄溶出インレット2に対して容易に適合される、少なくとも100psiで取り扱い得ることが示されている。上記のとおり、バイアルキャップ3は、サンプル間の交差汚染を防ぐためにクラウンおよび穿孔9を有する。
【0058】
アウトプット流体接続。アウトプット流体接続は、出口チップ(溶出チップ7)を通じて作製される。これは、射出成形を用いて容易に提供される。溶出チップの内側のデッドボリュームは望ましくは、抽出された生体分子ができるだけ濃縮されるように、できるだけ減少される。このチップの製造は、ピペットの先端に匹敵する。この実施例における溶出チップのデッドボリュームは約1μlである。
【0059】
フィルターおよび溶解領域。濾過は、例えば、圧力制限のために、種々の流体チャネルの目詰まりを防ぐのに必要であり、また分子捕獲領域の目詰まりを妨げることも補助する。1実施例では、サンプルを含む細胞を溶解し、次いでその物質を濾過して、その後に、これをカード中で任意のサイズの選択性領域にとる。
【0060】
濾過能力は、フィルターの表面積および細孔サイズによって決定され得る。表面積が増大するにつれて、フィルターの能力も増大する。また細孔のサイズが増大するにつれて能力はやはり増大する。1インチの0.22μmのフィルターは、目詰まりするまでに二百万個の溶解されていない細胞を取り扱い得る。サンプルあたり約百万個個の細胞を取り扱うということは、約500mm2の表面積に等しい。
【0061】
濾過なしでは全ての細胞がおそらく溶解されない。フロー・スルー(貫流)のみの中の細胞の溶解(濾過なし)は、上昇した温度での滞留時間に依存する。これによって問題が生じる。なぜなら、サンプルの上昇した温度が長いほど損傷が多く、目的の生体分子にされるからである。しかし、サンプルの流速が速すぎる場合、細胞のわずかな画分しか溶解されない。本発明では、溶解領域は、同様に濾過能力を有する。これによって、従前の技術と比べて多くの利点が提供される。述べられたとおり、細胞の溶解は部分的には、温度での時間に依存する。溶解エリア中の濾過領域に置くことによって、溶解されていない細胞はトラップされて、溶解が生じるまで上場した温度で保持される。細胞から放出される任意の生体分子がフィルターを通過し得るが、必要より長時間高温に曝されることはない。これはより多くの細胞が溶解するほど、目的の生体分子に対する損傷が少ないことを意味する。これはまた、溶解領域に達する前に放出されている任意の生体分子が、上昇した温度を自由に急速に通過することを意味する。
【0062】
このフィルターはサンプルから細胞壁または細胞膜を取り除き、それらが捕獲領域下流を目詰まりさせることを防ぐ。
【0063】
フィルターメンブレンの表面を化学的に修飾してもよい。これによって、「ガーベッジ(garbage)」生体分子のさらに特異的な抽出が可能になり、これで本質的に事前浄化の特徴が加わる。
【0064】
分子捕獲領域。本実施例の捕獲領域に有用な物質としては、分子に結合するかまたは抽出し得る任意の物質が挙げられる。1実施例では、メンブレン上の分析物の沈殿に基づく精製について、これは天然の物質、例えば、微結晶性セルロースまたはシリカであってもよい。あるいは、ハイブリダイゼーション反応については、オリゴdTなど、捕獲物質は、捕獲オリゴヌクレオチドの共有結合を可能にするために、アルデヒドもしくはグリシダール、またはアミン化学を受容するように官能化されてもよい。アミンをアプタマーとともに用いてもよい。これについての共通の物質は、シリカである。なぜなら、これはマイクロアレイスライドのベースであるからである。両方の末端結合を有するポリマー物質を用いてもよい。適切なポリマー物質としては、エチレングリコールジメタクリレートおよびグリシダール(またはアルデヒド)メタクリレートを用いることが挙げられる(架橋された官能的な表面が露出される場合)。官能基を有する他の物質は、ラテックス、PTFE,ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルトルエン(PVT)、スチレン/ブタジエン(S/B)コポリマー、スチレン/ビニルトルエン(S/VT)コポリマー−プレイン(非染色)、疎水性(硫酸表面基)である。http://www.bangslabs.com/products/bangs/guide.phpを参照のこと。
【0065】
捕獲物質は、約35%の空隙率(すなわち、65%の固体基質)を有する固定マトリクスであってもよい。空隙率が大きすぎれば、目的の生体分子とプローブとの間の相互作用はありそうにない。空隙率が背圧増大を減少するにつれて、極めて小さい空隙率によって、この物質を通じてサンプルが流れる能力が遅くなり得る。
【0066】
キャピラリーでの問題は、製造可能性である。キャピラリーは大いに効果的であって、サンプルの溶出のためのデッドボリュームは極めて小さいが、それらは、大量生産が困難である。捕獲エリアは、生体分子がトラップされ遊離され得るということを保証するように緊密に制御される必要がある。キャピラリーでの問題の1つは、その物が作成される領域を規定することにある。ポリマー材料は、このキャピラリーの末端には延びられない。なぜなら、温度制御は、キャピラリーの末端まで行えないからである(これによって溶出は極めて小容積で妨げられる)。この物質(材料)が溶出の間に加熱されない場合、サンプルのうちある程度は、未制御の領域における物質に結合される。キャピラリーの第二の問題は、その脆弱性である。任意の衝突や鋭い角によってキャピラリーは破壊され得、カード/サンプルが失われる。
【0067】
分子捕獲領域23は、マイクロ精製カード100のチャネルの内側に作製され得る。次いで、捕獲物質がオープンチャネル中に注入されるか挿入される。1つの構成では、第一のフリット26が、緩衝液/洗浄チャネルに挿入される。次に、捕獲物質(例えば、オリゴdTまたは他の特異的な核酸配列が結合した官能化されたシリカビーズ)をフリットの後ろに流す/射出する。第二のフリット26をシリカビーズの物質の後ろに挿入する。このフリットを用いて捕獲領域を含みかつ作製させる。
【0068】
温度制御領域。本実施例では2つの別個の温度制御領域がある。これらの領域の温度制御は、生体分子の溶解/変性および抽出に必要である。
【0069】
溶解および変性。溶解領域を、市販の適切な温度制御装置を備えている、このシステム(示さず)中に装着された抵抗性ヒーターによって加熱する。
【0070】
溶解および変性のための最小温度は90℃である。下限は、捕獲物質に入る前に核酸を変性する必要に依存する。サンプルがカードに挿入される前に溶解される場合でさえ、サンプルは変性のために加熱されてもよい。上限は、カードの材料および処理されているサンプルによって決定される。射出等級PPは、約100〜130℃という高い末端温度を有し、射出等級PCは、約150〜160℃限界という高い末端温度を有する。より頑丈なサンプルについては、溶解温度を上昇させて、より多くの細胞が破壊されることを確実にし、より多くの不安定な細胞が生体分子統合性を維持することを補助するためには低温にする。
【0071】
カードがベースシステムに挿入された後、抵抗性ヒーターをこのカードの溶解領域に接触して圧迫する。この領域はまた、TEC、または他の考え得るヒーターによって制御されてもよい。TECを用いない特定の理由は、この領域では冷却は必要ないということである。一旦溶解が完了すれば、ヒーターを切って、その領域を、放射によって冷却する。加熱/冷却領域の気流制御も用いてもよい。
【0072】
溶解領域の第二の熱構成要素は、捕獲領域に入る前のサンプルの変性である。これによって、生体分子の結合の増大を達成することを補助する。サンプルが変性されない場合、捕獲領域におけるハイブリダイゼーションに対してオープンでありかつ受け入れられる機会が減る。変性のための最小温度は90℃である。溶解および捕獲熱領域にはわずかな重複がある。これによって、サンプルが捕獲物質に到達する前に冷却されることを防ぐことが補助される。
【0073】
捕獲物質熱制御領域はまた、TECを用いることによって加熱後に冷却される。冷却は、選択された生体分子の適切なハイブリダイゼーションのために用いられる。また、ハイブリダイゼーション後に、サンプルを冷却して、さらなる化学反応または変性を妨げる。
【0074】
捕獲物質。いかなる特定の理論によっても束縛されないが、捕獲物質の温度制御は、生体分子の特異的な抽出を制御する傾向である。先行技術は、全核酸(Nucleic Acids)(NA)をトラップするために表面エネルギー相互作用を用いている。高い塩緩衝液では、NAは優先的にシリカ荷電表面に結合する。塩が緩衝液から除去されるにつれて、NAは遊離して、さらなる処理の準備ができる。この方法での問題は、目的のものでもない全てのNAを収集するということである。このプロセスはまた、温度を制御することによって改善され得るが、そこに特異性はない。
【0075】
この分野でしばしば用いられる他の方法は、固定表面に結合されたオリゴdTを利用する。最も一般的な基質はセルロースおよび磁気粒子である。これによってより特異的なハイブリダイゼーションが可能になるが、この方法は、サンプルまたは基質の温度を緊密に制御はしない。これは、サンプルおよび基質の緊密な熱制御であり、これによってmRNAの極めて特異的な抽出が可能になる。流体サンプルの熱特異性は、フロー・スルー(貫流)環境を用いて緊密に制御され得る。流体の熱容量は、容積の増大につれて制御を減らし始める。
【0076】
マイクロ精製カードシステム。これは、マイクロ精製カードを保持して処理するベースである。このシステムのほとんどの特徴は、本明細書において上記に記載されている。
【0077】
収集バイアル。2つの収集バイアルをフルのサンプル処理に用いる。ローディングトレイの作動によって、同じシステム中の別個の流体の収集が可能になる。第一は、全ての未結合のNAおよびタンパク質を溶解および洗浄緩衝液の組み合わせにおいて収集する廃棄バイアルである。抽出されないどの生体分子もさらに処理し得ることが可能である。廃棄バイアルの使用はまた、任意の廃棄を含む。このバイアルの容積は5〜15mlのいずれかである。2mLのサンプルは、約7mLの廃液を生じると見積もられる。(2mLのサンプル 4mLの溶解緩衝液、および1mLの洗浄/ブロック緩衝液)。この第二のバイアルは目的の濃縮された生体分子を捕獲するためである。溶解および浄化が完全である場合、サンプル収集バイアルを、溶出チップの端部にもってくる。この方法で約10μLという小容積をカードから溶出させて、バイアルに捕獲し得る。
【0078】
ユーザー・インターフェース。このシステムの前端部は簡易でかつ使いやすい。このカードは1方向に挿入される。流体接続をシールした後、ユーザー(使用者)は、溶解加熱領域を適所でロックするレバー/ダイアルを作動させる。実行ボタンを押して、サンプルをきれいに処理して、溶出させる。
【0079】
図6A〜図6E。断面積の概観。底部の様子(6E)は、マイクロ精製カード100の分解図を示しており、フィルター16およびフィルターキャップ15を伴う。マイクロ精製カード100の断面I−I、J−JおよびH−Hも図示する。
【0080】
図7。断面H−Hの拡大。これは、サンプルがフィルターおよび流体接続を捕獲領域に出る場合を示す。このポイントでは、いくつかの流体のフローがフィルター(16)をやはり横切り得る。ほとんどのサンプルは、フィルターを通過して、支持リブによって作製されたチャネルを通って流れる。捕獲物質に対する流体接続は(6)で作成される。射出成型のための支持体としては、このより大きい中空が必要である。(6)では溶出および洗浄の緩衝液は(2)から接続される(図面なし)。
【0081】
図8。断面I−Iの拡大。このサンプルは、サンプルバイアル(1)にロードされる。バイアルの端部は、フィルターおよび加熱領域を通じた流体接続を有する(4)。このフィルターキャップ(15)はフィルターを適所で密閉する(次の略図を参照のこと)。射出成型のためには(4)をわずかに大きく作製して、(1)および(4)へのチャネルを作製する成形ピンを受容する。
【0082】
図9。断面J−Jの拡大。フィルター領域に導入されているサンプルは(4)を通じてフィルター(16)を横切って流れる。このフィルターは理想的には0.22μm〜0.45μmであるが、空隙率を増大してより大きい粒子を許容してもよいし、または空隙率を低下させてより小さい粒子をトラップしてもよい。このフィルターは、リブ(17)によって適所に保持され、これによってフィルターが壊れず、かつ全体が一緒に流れることを防ぐことが確実にされる。
【0083】
図10。本発明のマイクロ精製カード100の実施形態の断面の斜視図を示す。この断面図は、図面の右側である溶出インレットにそっている。この図面は、分子捕獲領域がマイクロ精製カード中に挿入され得る方法を記す。第一に、不活性なフィルタープラグを26の位置で第一の穴に詰める。引き続いて、適切な分子捕獲物質またはデバイス、例えば、粉末を、適切なプローブまたは皮下注射針を用いて(例えば)、溶出捕獲領域23に導入する。引き続き、第二の不活性なフィルタープラグを、分子捕獲領域の後ろに詰める。この図はまた、溶出チップが小さい空隙容量を有することを示す。またこの図では、フィルターキャップとメンブレンフィルターとの間に位置するライセンシング領域も示される。このメンブレンフィルターは、このカードに溶着されていることが示される。
【0084】
図11。溶出カートリッジのワイヤフレーム図面。この図は、溶出カートリッジの内径を示す。この捕獲領域(23)は、カートリッジ内に含まれ、溶出チップ(24)は、容積を有意に減少させるように製造されてもよい。捕獲領域の内側には多孔性物質が充填され、この物質は特定の種の抽出のための種々の化学物質で官能化され得る。特定の実施形態では、層状のマイクロアレイが形成されるように、捕獲領域に多孔性物質の層を充填する。溶出カートリッジの材料は変化し、ほとんどの場合、周囲のカードと同じであるが、マイクロアレイの場合には、特に光学的に透明な材料から作製される。
【0085】
図12Aおよび図12B:溶出カートリッジの充填。捕獲物質(14)は溶出カートリッジ(23)の捕獲領域中に詰められ/充填され/流される。このカートリッジの別の充填物は、適所でこの物質と架橋される。上の図では、捕獲物質は、マイクロアレイとして描かれるが、全ての断面は、同じ化学的処理を有し得る。マイクロアレイ捕獲物質の形成は、お互いの頂部上の平坦な物質のアレイを層状にすること、およびついでこのスタックからプラグをコアリング(芯抜き)することによって達成され得る。あるいは、この捕獲物質は、カートリッジ中に形成/挿入され、その後に機械的なスポッター(spotter)で標識を付けられる。この実施形態では、カートリッジとして架橋またはゾル・ゲル物質を、チップを通じて吸引し、適所に固定してもよい;これは複数のカートリッジ(例えば、96または384ウェルのフォーマット)をローディングするために特に有利である。
【0086】
溶出チップ(24)は、デッドボリュームを制限して、溶出されたサンプルを収集バイアルに向けるように設計する。収集物質は、熱的に制御して目的の分子を遊離する必要があり得る。これは、核酸の溶出に関しては特にあてはまり、収集物質からNAを熱的に遊離させる。サンプルの溶出はまた、緩衝液の変化(例えば、ハイブリダイゼーションの親和性は、低塩緩衝液中では減少される)によって達成されてもよい。
【0087】
収集物質および溶出カートリッジ捕獲領域は、捕獲分子のデッドボリュームを減少するように設計されている。捕獲物質が示す総デッドボリュームが約30μlであれば、チップは10μlのデッドボリュームを有する。
【0088】
図13。溶出カートリッジ21を有するマイクロ精製カード。このデザインによって、将来のカートリッジのためにアセンブリはさらにモジュール構成にされ、かつさらに容易に変化される。溶出カートリッジ(21)は、溶出カートリッジスロット(22)に挿入され、完全に挿入されるとき、これはこのカードの以前の図と同じに見える。これは、種々の方法、末端での熱結合、UV接着、圧力フィットシーリング(pressure fit sealing)で、密閉され得る。
【0089】
図14は、分子捕獲領域カートリッジを含む本発明のマイクロ精製カードの分解斜視図の実施形態を示す。この実施形態では、この分子捕獲領域カートリッジは、複数のプローブ(陽性コントロール、陰性コントロールおよびTentacle(商標)プローブを含む)を含むマイクロアレイを備える。
【0090】
図15:サンプル収集バイアルと接されている溶出チップ。これは溶出チップ(7)の2つの異なる角度の拡大であって、サンプル収集バイアル(11)と接している。溶出チップとサンプルバイアルとはわずかな角度であることに注意のこと。これによって、チップからバイアルへのサンプルの移動が容易になる。
【0091】
図16A:位置1:収集バイアルは、ローディングレール(12)に沿ってホルダーから挿入されても、または除去されてもよい。このホルダーは、容易なアクセスのためにこのカードからバイアルローディングハンドル(20、図なし)を用いて挿入されて、このシステムから引き出される。収集バイアルホルダー(19)は、サンプル(11)および濾液(10)バイアルの両方を保持する。
【0092】
図16B:位置2:収集バイアルホルダーが完全に挿入されるにつれて、濾液バイアルは、溶出チップの下に整列される。これは位置3と同じイメージで、ちょうど90度の角度である。
【0093】
図16C:位置3:位置2の90度バージョン。廃棄バイアル(10)は溶解液および洗浄溶出液の収集のために溶出チップ(7)の下に整列される。この図面では、溶出チップは濾液バイアルの頂部からほぼ3mmであり、これは表示の目的のためだけであって、そのチップは濾過された溶離液の飛び散りを制限するために1.5mm内である。
【0094】
図16D:位置4:ホルダーは、位置変化レール(13)の上で45度の角度にそってスライドして上がり、溶出チップ(7)は、コレクションバイアル(11)の側面に接触される。この角度は45度に設定されて濾液バイアル(10)に当たらず、収集バイアルの一端と接触する。この相互関係のさらに詳細な図面は以前に示した。
【0095】
マイクロ精製カードの操作の説明。マイクロ精製カードの1例は、細胞の溶解と、複雑な混合物中で生体分子の抽出および濃縮のためのトラッピング物質とを組み合わせる。このマイクロ精製カードは、流動条件下でサンプルを過熱する。過熱は、流動の間にサンプルを加圧することによって達成される。さらにキャピラリー中でフロー(流動)を用いることによって、温度、およびより詳細には温度に対する時間は容易に制御される。圧力は、小径のキャピラリーの形態での流動制限を用いることによって達成され得る。この同じ流動制限は、キャピラリー中で捕獲領域を利用することによって達成され得る。
【0096】
ポリマー物質は、トラッピングエリアのデッドボリュームを最小にして、結合事象のための拡散距離を短くし、サンプルと修飾された表面との間の相互関係のための表面積を増大する。単量体前駆体の1つとしてグリシジル(Glycidal)連結メタクリレートを用いることによって、その表面は、アミン連結化学を用いて容易に修飾される。mRNAをトラップする場合、オリゴdTに連結されたアミンをポリマー物質表面に結合させる。ポリマー物質とは別に可能であるのは、キャピラリー中の捕獲領域を形成するためのシリカビーズの使用である。これはまた、表面が修飾しやすいので有利であり得る。シリカ表面の修飾をカバーしている初期の特許の多くは、失効しており、使用は自由である。ポリマーのモノリシック物質もまた用いられ得る。
【0097】
捕獲モジュールに対して溶解モジュールを接続することに取り組む必要がある程度考慮される。第一に、溶解中のいずれの時点でも、溶液中で溶解されない余分な物質が生成される。例としては、細胞膜およびサンプルの増殖または収集の間に用いられている任意の物質である。これらの粒子は、捕獲領域を目詰まりさせることおよび組み込まれたデバイスを通じたサンプルの流動を妨げることによって問題を生じ得る。望ましくない粒子が捕獲領域に達することを防ぐために、サンプルを濾過する必要がある。本実施形態では、捕獲物質と類似の細孔サイズを有し得るが、粒子をトラップするためにかなり大きい表面積を有し得る、既製のフィルター(0.5〜2μmの細孔サイズ)を用いた。
【0098】
緩衝液。エチレングリコールおよび水ベースの緩衝液をもちいてもよい。適切な緩衝液は、3〜8のpHを有し得(酸は、開いた芽胞を破壊するために有用である)、ここで界面活性剤は容積あたり約0.5%のSDSの有無である。Trisおよびリン酸塩が緩衝剤として用いられ得る。
【0099】
マイクロ精製カードおよびシステムを用いるための手順。適切な緩衝液にサンプルを移す(前に記載されたとおり、これは代表的には7というpHでリン酸緩衝液である)。マイクロ精製カードの頂部におけるピペットサンプル(以前の図面)。本実施形態は、10μL〜1mLのサンプルを取り扱い得、ここで適切な容積は200〜500μLである。サンプルをローディングした後、このマイクロ精製カードをポンプに対して液体接続する。これは、サンプルがロードされたフィッティングに対してシリンジを接続することによって達成され、このシリンジはルアー・ロックフィッティングで接続される。この流体のフローは、シリンジポンプ中にシリンジを入れることによって発生される。(シリンジおよびシリンジポンプの両方とも市販されている)。
【0100】
サンプルを、サンプルローディングから溶解領域に強制的に流す。この溶解領域を、100〜150℃の温度に熱制御する(抵抗加熱またはTECによる)。必要な温度は、溶解されている生物学的物質に依存する。加熱はまた、NAの塩基対の長さを制御するために用いられてもよい。溶解領域における滞留時間は約45秒である。溶解領域の長さは3〜5cmのいずれかである。サンプルは、360/150μmの融合シリカキャピラリーを通じて流れる(ポリミクロンから)。
【0101】
溶解後にサンプルを、フィルターを通して送って溶解物に残るどの粒子も排除する。この代表的なフィルターサイズは0.2〜5μmである。(フィルターは、既成の構成要素である)。このフィルターを加熱して、可溶化されたNAが未変性のままであり、フィルターにくっつかないことを確実にする。温度を90〜100℃に制御する。
【0102】
次にこのサンプルを捕獲領域内に流す。捕獲領域は、2つの目的を果たす;第一は、溶解領域中でサンプルの結合を妨げるのに必要な圧力を生じることであり、第二は、サンプルのトラッピングおよび濃縮である。捕獲領域の細孔サイズと流速との組み合わせで、溶解の間に生成される圧力が制御される。捕獲領域の表面は、mRNAをトラッピングするためのオリゴdT鎖を有するように改変される。この表面はまた、遺伝子の任意の特異的な配列またはスーパーファミリーをトラップして濃縮するように処理されてもよい。サンプルのトラッピングは、特異的なNA配列のハイブリダイゼーション、または全てのゲノムDNAの抽出のための表面エネルギー相互作用によって達成される。
【0103】
NAのさらに十分な抽出を達成するために、温度を制御する。ハイブリダイゼーションの好ましい温度は、45〜55℃である。捕獲領域の断面の表面積が大きければ、3cmの断面で最大10μgまでのNAをトラップすることが可能になる。さらに、トラッピング領域のデッドボリュームは約0.5μLであって、これは、1〜10μLのサンプル容積中で完全に溶出され得る。
【0104】
サンプルの溶出は、ハイブリダイズされたNAを変性する熱を用いて達成される。この溶出緩衝液は、特異的でなく、変化され得る。前の実験では、同じ緩衝液を溶解緩衝液として用い得ることが示されている。しかし、特定の緩衝液がサンプル流動中で後に必要である場合、サンプルを任意の緩衝液中で溶出してもよい。
【0105】
溶解の容易な哺乳動物細胞のためのプロトコール。
【0106】
1.ATA緩衝液システム。このアプローチ(図17)は、室温での溶解およびRNA安定化のためにATA(アウリントリカルボン酸)を用いる。ATA溶解液は、ATA溶解緩衝液(下を参照のこと)中でのホモジナイゼーションによって細胞ペレットから調製される。mRNAを精製するために、ATA溶解液を0.45μmのフィルターを最初に通過させてゲノムDNAを剪断し、細胞細片を除去し、加熱してmRNAを変性し、次いで、オリゴdT支持体を横切って流す。この支持体を洗浄して、ATAおよび混入物(ゲノムDNA、リボゾームRNA、タンパク質、炭水化物、脂質など)を除去し、RNAを溶出する。溶出は、低い塩および熱の組み合わせによって達成する。
【0107】
ATAは、タンパク質−核酸の相互作用の一般的なインヒビターである芳香族の特徴を有する小さいポリアニオン系分子(および赤い色素)である。これは、GuSCNよりも強力なRNaseインヒビターであり得るが、これはまた、ハイブリダイゼーション効率(塩基対合)を減少し得る。ATAは、溶液中で重合化し、核酸模倣物として作用し得、タンパク質結合部位について核酸と競合し、またおそらく芳香族環のスタッキングを通じて、核酸と会合もする。ATAがGuSCNのような「非標的化」変性剤ではなく「標的化された」リボヌクレアーゼインヒビターであるという事実によって、これがより有効なRNA保護剤である理由、およびGuSCNよりも約500倍低い濃度で用いられ得る理由が説明され得る。しかし、マイクロアレイハイブリダイゼーション、PCRまたは他の酵素媒介性反応のいずれかにおいてATAで調製されたRNAの機能はまだ、決定されていない。
【0108】
適切なATA溶解緩衝液は25mMのTris(pH7)、150mMのNaCl、0.1%のTween20、10mMのATAである。この緩衝液では、室温での有効な細胞溶解液は10mMのATAを用いる。ATAによる哺乳動物細胞の溶解は、以前には報告されていない。ATA溶解緩衝液は、同時に細胞を溶解し、かつ、少なくともGuSCN程度有効にRNAを安定化し得る。増大した塩濃度(例えば、500mMのNaCl)が必須であって、さらなるサーファクタント(例えば、SDS、デオキシコール酸塩、サルコシン)またはGuSCNも添加されてもよい。
【0109】
ATAは、溶出の前に除去される。AmbionのRiboPureキットはRNAからATAを効率的に除去し得る。このキットは、TRI Reagent(Phenol,GuSCN、塩混合物)での有機抽出、その後のシリカ膜上の精製を使用する。ATAは、抽出の間、有機相および水相の両方へ分配するようであるが、ただし一方ではシリカ膜を通って流れる。膜から溶出したRNAはATAを含まないようである(赤色なし)。可能性としては、GuSCNは、RNA変性およびRNA結合したATAの解離を促進する。RNAとは異なり、ATAは、GuSCN緩衝液中ではシリカに結合しないようである。
【0110】
2.GuSCN緩衝液システム。このアプローチ(図18)は、従来のGuSCN緩衝液を用いて、オリゴdT上のmRNAを精製する。おそらくmRNAは全強(4〜6M)のGuSCN緩衝液においてはオリゴdTに結合しないので、希釈をする。ATA緩衝液システムについて以前に概説された全ての考慮がここにあてはまる。詳細には、GuSCNは、強力な変性剤でかつPCRインヒビターであるので、溶出前に除去される。GuSCNの除去は、これらの市販のプロトコールにおける2つの異なる緩衝液で達成される。
【0111】
3.一般的考慮。ATAは、10mM(100分の1の濃度)で用いられてもよい。ATAは、GuSCNについて上記されたような希釈工程を要するかもしれない。
【0112】
以下の表は、オリゴdTセルロースベッド容積、および2つの異なる一般的マイクロアレイ標識プロトコールについて必要なパックされた細胞(ペレット)の容積を見積もる。
【0113】
【表2】
【0114】
細胞溶解容積は、溶解緩衝液の有意な希釈を回避し、かつ粘度を減じるために、10×細胞ペレット容積であると見積もられる。洗浄工程は代表的には、3〜10の総容積(ベッドボリューム)を用い、そして溶出は、少なくとも1総容積を要し得る。
【0115】
本明細書に記載される技術は、生物学的な実体、例えば、生物学的な脅威の因子の検出に用いられ得る。
【0116】
MCPシステムは、適切なアッセイシステム、例えば、Tentacle(商標)プローブ、Arcxis Biotechnologies,Pleasanton,CAおよびサンプル・ツー・アンサーシステム(sample to answer system)と組み合わせてもよい。本明細書に記載される場合、適切なMCPサンプル調製システムは、3分程度の時間枠でサンプル溶解および高分子抽出を行い得る。このシステムデバイスおよびマイクロ精製カードは、プッシュボタン操作を用いて全細胞からmRNA、RNAおよびDNAの単離を可能にする。溶解システムのまとめ:1)細菌芽胞、細菌、および真核生物細胞の溶解、2)DNA、RNAおよびmRNAの単離、3)急速サンプル調製のための安価な消費可能なデバイスの構築。
【0117】
細菌芽胞の溶解および核酸の質に対する過熱の効果。図19は、細菌芽胞Bacillus Atropheus(ATR)を示しており、Bacillus thurengensis(BT)を種々の時間の間加圧された過熱チャンバ中で溶解した(A〜J)。溶解チャンバ中の芽胞の滞留時間が延長したので、遊離されたDNAの量は増大した。DNAの量は、A260/280の比によって測定した場合、可変である(K)ことがより長時間観察された。コントロールの芽胞(A&F)は、少量の解放されたDNAを有し、吸光度比は約1.45であって、滞留時間が長くなるにつれて遊離したDNAの量は増大した。DNAの量はまた、ATR(B−E)およびBT(G−J)の両方について1.55程度の高さに増大したが、次いでおそらく、DNAがこの条件下で分解されるにつれて、劇的に減少する(K)。いくつかの研究ではまた、これらの高温条件下でヌクレアーゼインヒビターを用いる影響を示すことを行った。アガロースゲル(L)中でみられるとおり、インヒビターの濃度が増大すれば、核酸(RNA)分解の量が減った。次いで、これらの調製物を洗浄して、インヒビターを除去し、次いで、rtPCR反応で用いて有効であることを示した(M)。この結果、種々の核酸型を遊離する能力、および高品質の核酸を維持するのに必要な条件が示され、引き続き、精製された物質を下流の分析手順で用いる。
【0118】
Tentacle(商標)プローブ。新規なクラスの標識なしの親和性試薬。Tentacle(商標)プローブは、実施可能である。さらなる詳細な考察では、これらのTentacle(商標)プローブは、「Cooperative Probes and Methods of Using Them」Jason A.A.WestおよびBrent A.Satterfield,米国仮特許出願整理番号60/850,958号(2006年10月10日出願)、代理人整理番号ARCX−0004、および国際特許出願番号PCT/US07/63229(2007年3月2日出願)(各々の出願の全体が本明細書において参照によって援用される)に開示される。これらのプローブ分子は、反応速度論を200倍まで、SNP検出における分子正確性を少なくとも345倍まで増大し、これにはほぼ無限の改善という予測された増強がある。それらの協調的な相互作用のおかげで、それらは、典型的な代償なしに、感度、特異性および反応速度論の有意な増強を可能にする。Tentacle(商標)プローブの能力特徴:それらは、有意に高い速度定数で結合して、アッセイ時間を減じる。それらは、一価のプローブ分子よりも590,000倍大きい遺伝子型決定レベルで識別する;それらは、一塩基遺伝子多型(Single Nucleotide polymorphism)(SNPs)の識別のための標準的なプローブ分子(すなわち、Taqman,Molecularビーコン)よりも能力が優れている;それらは、挿入/欠失および可能性としてはフレームシフトの識別について標準的なプローブ分子(すなわち、Taqman,Molecularビーコン)よりも能力が優れている;それらは、増大したステム強度に起因して高いシグナル対ノイズ比を有する;それらは、開発されたアルゴリズムを用いて、より流線型のデザインおよび製造を可能にする;それらは、DNAまたはRNAのために設計され得る;それらは、アレイベースの適用のために固体表面に容易に結合される;それらは、EXO+およびEXO−taqポリメラーゼqPCRの両方で用いられ得る。
【0119】
図20は、Tentacle(商標)プローブのデザインおよび機能を図示する。
【0120】
図21は、Tentacle(商標)プローブでの結果を示す。
【0121】
図22は、Tentacle(商標)プローブを用いた外部試験の結果を示す。
【0122】
図23は、検出システムのデザインおよび製造を示す。
【0123】
検出システム。第一世代の検出システムシステムを示した。このデバイスは、オンボード(on−board)のサンプル調製システムを備え、これは溶解剤、サンプル緩衝液、および関連するポンプを備える。このシステムはまた、協同的なプローブアッセイの検出のための組み込みの分析システムを備える。この全体のシステムは、システム制御データ分析および報告を行う、オンボードのラップトップコンピューターによって制御される。これによって、溶解、緩衝化および分析を含む10分未満のサンプル調製が可能になる。検出システム系のまとめ:1)製造されたマイクロ流体マイクロアレイデバイス、2)作製された携帯可能なシステムのための新規な溶解システム、3)設計されたロバストフィールド作動可能光子計数システム(robust field operable photon counting system)、4)野外試験システム。
【0124】
図24は、MCPをMCPシステムと組み合わせて用いる場合のプロセスを示す。
【0125】
図24bは、カードがMCPシステムによって流体的に制御されるプロセスを示す。
【0126】
図24cは、MCPデバイスのキャップ構成要素のデザインを示す。
【0127】
図25は、複数のMCPデバイスの温度制御のためのアセンブリを示す。
【0128】
図26は、MCPを有するMCPワークステーションの温度制御および流体のインターフェースの第二の図を示す。
【0129】
図27は、本明細書に記載されるMCPおよびMCPシステムを用いるmRNA精製の結果を示す。これらの実験では、約200Kの細胞由来のmRNAの収率は、従来のスピンカラムキットに比較して同等であった(A)。次いで、これらの精製されたサンプルをリアルタイムPCRおよびAgilent Bioanalyzerを用いてさらに分析した。mRNAの現在の収率は同様であるが、リボソームRNAのレベルはMCPの調製したサンプル中では劇的に低下したことが見出された(B)。特にMCP調製のサンプルでは、18SのRNAの混入のレベルは、リアルタイムPCR(B&D)で判定した場合、MCPシステムを用いるよりも数桁小さいことが見出された。この調製物はまた、Agilent Bioanalyzerを用いるゲル電気泳動によって分離した場合、リボソームRNAを(もしあっても)ほとんど含まないことが明らかであった(C)。
【0130】
図28は、本発明に従うMCPおよびMCPシステムを用いる総RNA精製の結果を示す。種々の量の細胞を、なんら前処理なしに細胞まるごとMCPを通過させることによって処理した。MCPが、凍結保存されたラットの肝細胞から総RNAの抽出におけるスピンカラム技術と等しい能力を有することが結果によって示された(A)。特に、本発明によるシステムを用いて抽出されたRNAの量は、従来のスピンカラムの間で有意に異なることはなかった。Agilent Bioanalyzer(商標)によって判定したRNAインテグリティー・ナンバー(RNA integrity numbers)(RIN)はまた、これらの細胞調製物について有意に異なることはなかった。MCPシステムが総RNA調製物の質に有害に影響するか否かを決定するため、第二のセットの実験を、約8.8のRINナンバーを示した精製された総RNAを用いて行った(B)。これらの実験によって、MCPシステムは、単離されたRNAを分解せず、またAgilent Bioanalyzer(商標)によって生成されたRIN数で判定したRNAの質に有意に影響もしないことが示された。いくつかの実験をさらに行って、MCPを用いて抽出した総RNAのゲノムDNA混入のレベルを決定した(C)。アガロースゲルおよびリアルタイムPCRの両方を用いることによって、gDNAが、スピンカラムの調製したサンプルで見出されたよりも有意に低い濃度であったことが確認された。
【0131】
図29は、8つのMCPに対応し得るアセンブリされたMCPシステムを示す。他の実施形態では、適切なMCPシステムは、多数のMCP、例えば、1または2、または3、または4、または5、または6、または7、または8、または9、または10、または約12、または約15、または約20、またはさらにそれ以上のMCPを取り扱い得る。
【実施例1】
【0132】
細胞由来の総RNA。以下の実施例は、マイクロ精製カード(MCP)およびハードウェアシステムの例示的な使用である。総RNAを細胞懸濁物から単離する。約100〜約百万個のインタクトな細胞を含む細胞培養物を最初に低速で遠心分離して、インタクトな細胞をペレットにする。次いで、細胞培地を吸引して廃棄する。あとで500μlの総RNA安定化緩衝液(これは、GuSCN(3.5M)、Triton X−100(1.3%)Tris HCl(10mM)pH6.4を含む)を細胞含有バイアルに加えた。次いで、今安定化緩衝液にあるその細胞ペレットをボルテックスするかまたは徹底的に混合し、次いで、MCP上に位置するサンプル収集バイアル中に入れた。次いで、デバイスのリッドを閉じて、MCPをMCPシステム中のスロットに挿入する。一旦このカードをハードウェアステーションにロードすれば、光学的センサーを用いてMCPの存在を検出する。次いで、このシステムは、ユーザーが精製手順を始めるように促す。一旦オペレーターが正確なスイッチを押せば、MCPワークステーションは、サンプル封じ込めバイアル中に位置するサンプルを、MCPの溶解領域に移すように進行し、ここでサンプルは、熱媒介性の溶解および変性を受ける。次いで、このサンプル(溶解され変性されている)を、溶解領域に位置するフィルターを通過させ、これによってほとんどの細胞砕片を除去する。次いで、この溶解物を分析物捕獲領域に移し、ここで、この溶解物は、親和性に基づく抽出を受けて、シリカベースの物質を用いて、塩およびエタノール沈殿物の組み合わせを介して総RNAが精製される。この移行の間、およびサンプルが捕獲物質に接触する前に、このサンプルを100%のエタノールと混合して、捕獲チップ上の核酸の結合を促進する。一旦、標的分析物が結合すれば、ワークステーションは一連の2つの洗浄工程を続けて、非特異的に単離された物質を除去して、総RNAの単離物中で用いられた塩および界面活性剤を除去する。これらの洗浄工程の最初は、緩衝液を含み、この緩衝液は、GuSCN(0.15M)、Tris HCL(10mM)、pH6.4を80%のEtOHの中に含む。次いで、この単離されたサンプルを80%のEtOHを用いて2回洗浄する。次いで、この洗浄されたサンプルを風乾して、サンプルの溶出前に全ての微量のEtOHを除去する。これらの工程が終るとき、MCPの溶出チップを65℃に温めて、そのサンプルを、Tris−EDTA緩衝液または純水のいずれかを用いて外部収集バイアル中に溶出する。
【実施例2】
【0133】
組織由来の総RNA。以下の実施例は、マイクロ精製カード(MCP)およびMCPハードウェアシステムの例示的な使用である。5〜50mgの動物および植物の組織を含む組織ホモジネートからの総RNAの単離。組織を、最低500μlのMCP総RNA安定化緩衝液(GuSCN(3.5M)、TritonX−100(1.3%)およびTrisHCL(10mM)pH6.4を含む)中に入れて、これを組織含有バイアル中に入れる。次いで、このサンプルを、シリンジまたは別のデバイス、例えば、Polytron(商標)ミキサー、またはDounce(商標)ホモジナイザーを用いてホモジネートする。このホモジナイズされたサンプルを遠心分離して不溶性物質を除去するか、またはMCP総RNAカード中に直接入れる。全ての不溶性組織物質を除去する必要はないが、ある場合には、ホモジナイズされたサンプルから総RNAの収率を増大してもよい。ホモジナイゼーションの終了後、次いで、そのサンプルをMCP上に配置されたサンプル収集バイアル中に入れる。次いで、MCPのリッドを閉じて、MCPシステム上のスロット中に挿入する。一旦、カードをハードウェアステーションにロードすれば、光学的センサーを用いてMCPの存在を検出する。次いで、このシステムは、ユーザーが精製手順を始めるように促す。一旦オペレーターが正確なスイッチを押せば、MCPワークステーションは、サンプル封じ込めバイアル中に位置するサンプルを、MCPの溶解領域に移すように進行し、ここでサンプルは、熱媒介性の溶解および変性を受ける。次いで、このサンプル(溶解され変性されている)を、溶解領域に位置するメンブレンフィルターを通過させ、これによってほとんどの細胞砕片を除去する。次いで、この溶解物を分析物捕獲領域に移し、ここで、この溶解物は、親和性に基づく抽出を受けて、シリカベースの物質を用いて、塩およびエタノール沈殿物の組み合わせを介して総RNAが精製される。この移行の間、およびサンプルが捕獲物質に接触する前に、このサンプルを100%のエタノールと混合して、捕獲チップ上の核酸の結合を促進する。一旦、標的分析物が捕獲物質に結合すれば、ワークステーションは、一連の2つの洗浄工程を続けて、非特異的に単離された物質を除去して、総RNAの単離物中で用いられた塩および界面活性剤を除去する。これらの洗浄工程の最初は、緩衝液(GuSCN(0.15M)、Tris HCL(10mM)、pH6.4を80%のEtOHの中に含む)を含み、次いで、第二の洗浄工程ではこの単離されたサンプルを80%のEtOHを用いて洗浄する。次いで、この洗浄されたサンプルを風乾して、サンプルの溶出前に全ての微量のEtOHを除去する。これらの工程が終るとき、MCPの溶出チップを65℃に温めて、そのサンプルを、Tris−EDTA緩衝液または純水のいずれかを用いて外部収集バイアル中に溶出する。
【実施例3】
【0134】
血液由来の総RNA。以下の実施例は、マイクロ精製カード(MCP)およびMCPハードウェアシステムの例示的な使用である。約1.0mlの血液からの総RNAの単離は、GuSCN(3.5M)、Triton X−100(1.3%)Tris HCL(10mM)pH6.4を添加されて含む等容積(500μlの血液/500μlの2×濃度の安定化緩衝液)の中でサンプルを混合することによって行い、血液含有バイアル中に入れられるべきである、等容積中でサンプルを混合することによって行う。次いで、この血液サンプルを遠心分離して不溶性物質を除いてもよいし、またはMCP総RNAカード中に直接入れてもよい。全ての不溶性の組織物質を除去する必要はないが、ある場合には、ホモジネートされたサンプルからの総RNAの収率を増大してもよい。次いで、MCPのリッドを閉じて、MCPシステム上のスロット中に挿入する。一旦このカードをハードウェアステーションにロードすれば、光学的センサーを用いてMCPの存在を検出する。次いで、このシステムは、ユーザーが精製手順を始めるように促す。一旦オペレーターが正確なスイッチを押せば、MCPワークステーションは、サンプル封じ込めバイアル中に位置するサンプルを、MCPの溶解領域に移すように進行し、ここでサンプルは、熱媒介性の溶解および変性を受ける。次いで、このサンプル(溶解され変性されている)を、溶解領域に位置するメンブレンフィルターを通過させ、これによってほとんどの細胞砕片を除去する。次いで、この溶解物を分析物捕獲領域に移し、ここで、この溶解物は、親和性に基づく抽出を受けて、シリカベースの物質を用いて、塩およびエタノール沈殿物の組み合わせを介して総RNAが精製される。この移行の間、およびサンプルが捕獲物質に接触する前に、このサンプルを100%のエタノールと混合して、捕獲チップ上の核酸の結合を促進する。一旦、標的分析物が捕獲物質に結合すれば、このワークステーションは、一連の2つの洗浄工程を続けて、非特異的に単離された物質を除去して、総RNAの単離物中で用いられた塩および界面活性剤を除去する。これらの洗浄工程の最初は、緩衝液(GuSCN(0.15M)、Tris HCL(10mM)、pH6.4を80%のEtOHの中に含む)を含み、次いで、第二の洗浄工程では、この単離されたサンプルを80%のEtOHを用いて洗浄する。次いで、この洗浄されたサンプルを風乾して、サンプルの溶出前に全ての微量のEtOHを除去する。これらの工程が終るとき、MCPの溶出チップを65℃に温めて、そのサンプルを、Tris−EDTA緩衝液または純水のいずれかを用いて外部収集バイアル中に溶出する。
【実施例4】
【0135】
細胞由来のmRNA。以下の実施例は、マイクロ精製カード(MCP)およびMCPハードウェアシステムの例示的な使用である。約100〜約1×106個の細胞を含む培養物についての細胞懸濁液からの総RNAの単離は、最初に低速度で遠心分離して、インタクトな細胞をペレット化する。次いでこの細胞培地を吸引して廃棄し、次いで500μlのMCP mRNA安定化緩衝液(アウリントリカルボン酸(ATA)(3M)、TMAC(2M)、Triton X−100(0.035%)pH(7.4)を細胞含有バイアルに添加して含む。次いで、現在、安定化緩衝液中の細胞ペレットをボルテックスするかまたは徹底的に混合し、次いでMCP上に位置するサンプル収集バイアル中に入れる。次いでデバイスのリッドを閉じて、MCPをMCPシステム上のスロットに挿入する。一旦、このカードをハードウェアステーションにロードすれば、光学的センサーを用いてMCPの存在を検出する。次いで、このシステムは、ユーザーが精製手順を始めるように促す。一旦オペレーターが正確なスイッチを押せば、MCPワークステーションは、サンプル封じ込めバイアル中に位置するサンプルを、MCPの溶解領域に移すように進行させ、ここでこのサンプルは、熱媒介性の溶解および変性を受ける。次いで、このサンプル(溶解され変性されている)を、溶解領域に位置するフィルターを通過させ、これによってほとんどの細胞砕片を除去する。次いで、この溶解物を分析物捕獲領域に移し、ここで、この溶解物は、親和性に基づく抽出を受けて、塩およびエタノール沈殿物の組み合わせを介して、シリカベースの物質を用いて、総RNAが精製される。一旦、標的分析物が結合すれば、このワークステーションは、一連の2つの洗浄工程を続けて、非特異的に単離された物質を除去して、mRNAの単離物中で用いられた塩および界面活性剤を除去する。これらの洗浄工程の最初は、緩衝液(TMAC(2M)TritonX−100(0.035%)、pH(7.4)を含む)を含み、次いで、第二の洗浄工程では、この単離されたサンプルをTMAC(0.1M)、TritonX−100(0.125%)、pH(7.4)を用いて洗浄する。次いで、この洗浄されたサンプルを風乾して、サンプルの溶出前に全ての微量の洗浄緩衝液を除去する。これらの工程が終るとき、MCPの溶出チップを75℃に温めて、そのサンプルを、Tris−EDTA緩衝液または純水のいずれかを用いて外部収集バイアル中に溶出する。
【実施例5】
【0136】
組織由来のmRNA。以下の実施例は、マイクロ精製カード(MCP)およびMCPハードウェアシステムの例示的な使用である。5〜50mgの動物または植物の組織を含む組織ホモジネートからの総RNAの単離。組織を、最少、500μlのMCP mRNA安定化緩衝液(この緩衝液は、アウリントリカルボン酸(ATA)(3M)、TMAC(2M)、Triton X−100(0.035%)pH(7.4)を含む)にいれた組織を、組織含有バイアル中に入れる。次いで、このサンプルを、シリンジまたは別のデバイス、例えば、PolytronミキサーまたはDounceホモジネーターを用いてホモジネートする。このホモジネートしたサンプルを遠心分離して、不溶性物質を除くか、または直接MCP mRNAカード中に入れる。全ての不溶性組織物質を除去する必要はないが、ある場合には、ホモジネートされたサンプルからのmRNAの収率を増大し得る。ホモジネーションの終了後、次にこのサンプルをMCP上に位置するサンプル収集バイアル中に入れる。次いでこのMCPのリッドを閉じて、MCPシステム上のスロットに挿入する。一旦、このカードをハードウェアステーションにロードすれば、光学的センサーを用いてMCPの存在を検出する。次いで、このシステムは、ユーザーが精製手順を始めるように促す。一旦オペレーターが正確なスイッチを押せば、MCPワークステーションは、サンプル封じ込めバイアル中に位置するサンプルを、MCPの溶解領域に移すように進行し、ここでサンプルは、熱媒介性の溶解および変性を受ける。次いで、このサンプル(溶解され変性されている)を、溶解領域に位置するフィルターを通過させ、これによってほとんどの細胞砕片を除去する。次いで、この溶解物を分析物捕獲領域に移し、ここで、この溶解物は、親和性に基づく抽出を受けて、塩およびエタノール沈殿物の組み合わせを介して、シリカベースの物質を用いて、総RNAが精製される。一旦、標的分析物が結合すれば、このワークステーションは、一連の2つの洗浄工程を続けて、非特異的に単離された物質を除去して、mRNAの単離物中で用いられた塩および界面活性剤を除去する。これらの洗浄工程の最初は、緩衝液(TMAC(2M)TritonX−100(0.035%)、pH(7.4)を含む)を含む。次いで、この単離されたサンプルを2回目はTMAC(0.1M)、TritonX−100(0.125%)、pH(7.4)を用いて洗浄する。次いで、この洗浄されたサンプルを風乾して、サンプルの溶出前に全ての微量の洗浄緩衝液を除去する。これらの工程が終るとき、MCPの溶出チップを75℃に温めて、そのサンプルを、Tris−EDTA緩衝液または純水のいずれかを用いて外部収集バイアル中に溶出する。
【実施例6】
【0137】
血液由来のmRNA。以下の実施例は、マイクロ精製カード(MCP)およびMCPハードウェアシステムの例示的な使用である。約1.0mlの血液からのmRNAの単離は、サンプルを等容積(血液500μl/安定化緩衝液500μl)で、2×濃度の安定化緩衝液(アウリントリカルボン酸(ATA)(3M)、TMAC(2M)、Triton X−100(0.035%)pH(7.4)を含む)と混合することによって行う。安定化緩衝液中にある血液サンプルを次に、ボルテックスするかまたは徹底的に混合し、次いでMCP上に位置するサンプル収集バイアル中に入れる。次いでデバイスのリッドを閉じて、MCPをMCPシステム上のスロットに挿入する。一旦、このカードをハードウェアステーションにロードすれば、光学的センサーを用いてMCPの存在を検出する。次いで、このシステムは、ユーザーが精製手順を始めるように促す。一旦オペレーターが正確なスイッチを押せば、MCPワークステーションは、サンプル封じ込めバイアル中に位置するサンプルを、MCPの溶解領域に移すように進行し、ここでこのサンプルは、熱媒介性の溶解および変性を受ける。次いで、このサンプル(溶解され変性されている)を、溶解領域に位置するフィルターを通過させ、これによってほとんどの細胞砕片を除去する。次いで、この溶解物を分析物捕獲領域に移し、ここで、この溶解物は、親和性に基づく抽出を受けて、シリカベースの物質を用いて、塩およびエタノール沈殿物の組み合わせを介して総RNAが精製される。一旦、標的分析物が結合すれば、このワークステーションは、一連の2つの洗浄工程を続けて、非特異的に単離された物質を除去して、mRNAの単離物中で用いられた塩および界面活性剤を除去する。これらの洗浄工程の最初は、緩衝液(TMAC(2M、TritonX−100(0.035%)、pH(7.4)を含む)を含み、次いで、第二の洗浄工程では、この単離されたサンプルをTMAC(0.1M)、TritonX−100(0.125%)、pH(7.4)を用いて洗浄する。次いで、この洗浄されたサンプルを風乾して、サンプルの溶出前に全ての微量の洗浄緩衝液を除去する。これらの工程が終るとき、MCPの溶出チップを75℃に温めて、そのサンプルを、Tris−EDTA緩衝液または純水のいずれかを用いて外部収集バイアル中に溶出する。
【実施例7】
【0138】
細胞由来のゲノムDNA。以下の実施例は、マイクロ精製カード(MCP)およびMCPハードウェアシステムの例示的な使用である。約100〜約百万個の細胞を含む培養物についての細胞懸濁液からのgDNAの単離は、最初に低速で遠心分離して、インタクトな細胞をペレットにする。次いで、細胞培地を吸引して廃棄する。次いで、500μlのMCP gDNA安定化緩衝液(これは、GuHCl(3.5M)、Triton X−100(1.3%)Tris HCL(10mM)pH6.4を含む)を細胞含有バイアルに加える。次いで、今安定化緩衝液にあるその細胞ペレットをボルテックスするかまたは徹底的に混合し、次いで、MCP上に位置するサンプル収集バイアル中に入れた。次いで、デバイスのリッドを閉じて、MCPをMCPシステム中のスロットに挿入する。一旦このカードをハードウェアステーションにロードすれば、光学的センサーを用いてMCPの存在を検出する。次いで、このシステムは、ユーザーが精製手順を始めるように促す。一旦オペレーターが正確なスイッチを押せば、MCPワークステーションは、サンプル封じ込めバイアル中に位置するサンプルを、MCPの溶解領域に移すように進行し、ここでサンプルは、熱媒介性の溶解および変性を受ける。次いで、このサンプル(溶解され変性されている)を、溶解領域に位置するフィルターを通過させ、これによってほとんどの細胞砕片を除去する。次いで、この溶解物を分析物捕獲領域に移し、ここで、この溶解物は、親和性に基づく抽出を受けて、塩およびエタノール沈殿物の組み合わせを介して、シリカベースの物質を用いて、gDNAが精製される。一旦、標的分析物が結合すれば、ワークステーションは一連の2つの洗浄工程を続けて、非特異的に単離された物質を除去して、gDNAの単離物中で用いられた塩および界面活性剤を除去する。これらの洗浄工程の最初は、緩衝液(GuSCN(0.15M)、Tris HCL(10mM)、pH6.4を80%のEtOHの中に含む)を含み、次いで、第二の洗浄工程では、この単離されたサンプルを80%のEtOHを用いて洗浄する。次いで、この洗浄されたサンプルを風乾して、サンプルの溶出前に全ての微量のEtOHを除去する。これらの工程が終るとき、MCPの溶出チップを65℃に温めて、そのサンプルを、Tris−EDTA緩衝液または純水のいずれかを用いて外部収集バイアル中に溶出する。
【実施例8】
【0139】
組織由来のゲノムDNA。以下の実施例は、5〜50mgの動物または植物の組織を含む組織ホモジネートからgDNAを単離するためのマイクロ精製カード(MCP)およびMCPハードウェアシステムの例示的な使用である。組織を、最小500μlのMCP gDNA安定化緩衝液(これは、GuHCl(3.5M)、Triton X−100(1.3%)Tris HCL(10mM)pH6.4を含む)の中に入れて、これを組織含有バイアルに入れる。次いで、このサンプルを、シリンジまたは別のデバイス、例えば、PolytronミキサーまたはDounceホモジネーターを用いてホモジネートする。このホモジネートしたサンプルを遠心分離して、不溶性物質を除くか、または直接MCP gDNAカード中に入れる。全ての不溶性組織物質を除去する必要はないが、ある場合には、ホモジネートされたサンプルからのgDNAの収率を増大し得る。ホモジネーションの終了後、次にこのサンプルをMCP上に位置するサンプル収集バイアル中に入れる。次いでこのMCPのリッドを閉じて、MCPをMCPシステム上のスロットに挿入する。一旦、このカードをハードウェアステーションにロードすれば、光学的センサーを用いてMCPの存在を検出する。次いで、このシステムは、ユーザーが精製手順を始めるように促す。一旦オペレーターが正確なスイッチを押せば、MCPワークステーションは、サンプル封じ込めバイアル中に位置するサンプルを、MCPの溶解領域に移すように進行し、ここでサンプルは、熱媒介性の溶解および変性を受ける。次いで、このサンプル(溶解され変性されている)を、溶解領域に位置するフィルターを通過させ、これによってほとんどの細胞砕片を除去する。次いで、この溶解物を分析物捕獲領域に移し、ここで、この溶解物は、親和性に基づく抽出を受けて、塩およびエタノール沈殿物の組み合わせを介して、シリカベースの物質を用いて、gDNAが精製される。一旦、標的分析物が捕獲物質に結合すれば、このワークステーションは、一連の2つの洗浄工程を続けて、非特異的に単離された物質を除去して、gDNAの単離物中で用いられた塩および界面活性剤を除去する。これらの洗浄工程の最初は、緩衝液(GuSCN(0.15M)、Tris HCL(10mM)、pH6.4を80%のEtOH中に含む)を含み、次いで、第二の洗浄工程では、この単離されたサンプルが80%のEtOHで洗浄される。次いで、この洗浄されたサンプルを風乾して、サンプルの溶出前に全ての微量のEtOHを除去する。これらの工程が終るとき、MCPの溶出チップを65℃に温めて、そのサンプルを、Tris−EDTA緩衝液または純水のいずれかを用いて外部収集バイアル中に溶出する。
【実施例9】
【0140】
血液由来のゲノムDNA。以下の実施例は、マイクロ精製カード(MCP)およびMCPハードウェアシステムの例示的な使用である。約1.0mlの血液からのゲノムのDNAの単離は、等容積(血液500μl/2×濃度の安定化緩衝液500μl)(これは、GuHCl(3.5M)、Triton X−100(1.3%)Tris HCL(10mM)pH6.4を添加されて含む)中でサンプルを混合することによって行い、血液含有バイアルに入れなければならない。次いで、この血液サンプルを、遠心分離して不溶性物質を除くか、または直接MCPゲノムDNAカード中に入れてもよい。全ての不溶性組織物質を除去する必要はないが、ある場合には、ホモジネートされたサンプルからのゲノムDNAの収率を増大してもよい。次いでMCPのリッドを閉じて、MCPをMCPシステム上のスロットに挿入する。一旦、このカードをハードウェアステーションにロードすれば、光学的センサーを用いてMCPの存在を検出する。次いで、このシステムは、ユーザーが精製手順を始めるように促す。一旦オペレーターが正確なスイッチを押せば、MCPワークステーションは、サンプル封じ込めバイアル中に位置するサンプルを、MCPの溶解領域に移すように進行し、ここでサンプルは、熱媒介性の溶解および変性を受ける。次いで、このサンプル(溶解され変性されている)を、溶解領域に位置するメンブレンフィルターを通過させ、これがほとんどの細胞砕片を除去する。次いで、この溶解物を分析物捕獲領域に移し、ここで、この溶解物は、親和性に基づく抽出を受けて、シリカベースの物質を用いて、塩およびエタノール沈殿物の組み合わせを介してゲノムDNAが精製される。この移動の間、およびサンプルが捕獲物質に接触する前に、このサンプルを100%のエタノールと混合して、捕獲チップ上の核酸の結合を促進する。一旦、標的分析物が捕獲物質に結合すれば、このワークステーションは、一連の2つの洗浄工程を続けて、非特異的に単離された物質を除去して、総RNAの単離物中で用いられた塩および界面活性剤を除去する。これらの洗浄工程の最初は、緩衝液(GuHCl(0.15M)、Tris HCL(10mM)、pH6.4を80%のEtOH中に含む)を含み、次いで、第二の洗浄工程では、この単離されたサンプルが80%のEtOHで洗浄される。次いで、この洗浄されたサンプルを風乾して、サンプルの溶出前に全ての微量のEtOHを除去する。これらの工程が終るとき、MCPの溶出チップを65℃に温めて、そのサンプルを、Tris−EDTA緩衝液または純水のいずれかを用いて外部収集バイアル中に溶出する。
【実施例10】
【0141】
本実施例では、MCPシステムは、DNA、総RNAまたはmRNAを別々に精製し得る全自動のシステムである。このシステムは、ゲノムDNA、総RNAまたはmRNA適用について最適化されたマイクロ精製カード(「MCP」または「Lysixカード」)を備える。このシステムは、MCPのロードされる種々の組織および細胞サンプルから核酸を得て、精製するように設計される。MCPシステムは、8つのサンプル(すなわち、8つのMCP)を約10分で同時に分析し得、PCR増幅のような下流の適用のための高品質のデータを保証する。各々のMCPは、約1〜約50mgのホモジナイズされた組織に匹敵する、約100個の細胞〜約百万個の細胞を含むサンプルサイズを取り扱い可能である。
【0142】
生物学的サンプルの調製。
【0143】
総RNAサンプル。総RNA分析のための生物学的サンプルは、以下の成分を含む緩衝液(結合緩衝液、安定化緩衝液)を用いて調製する:グアニジウムイソチオシアネート(GuSCN)、5.25モル(M);tris−HCl、1M;pH6.4;50mlの水。組織は、結合緩衝液とともにホモジナイズしてもよく、または細胞は、結合緩衝液中に最初に分散してもよい。次いで、結合緩衝液中の細胞の懸濁物を、カードのバイアル部分に添加し、その細胞を本明細書において上記されるように処理する。
【0144】
mRNAサンプル。RNA分析のための生物学的サンプルは、以下の成分を含む任意の結合緩衝液を用いて調製する:アウリントリカルボン酸(「ATA」)、10mmol;グリセロール20容積%;トリメチルアンモニウムクロライド(「TMAC」);Triton X−100、0.025%;および水(総容積約200ml)。組織は、結合緩衝液とともにホモジナイズしてもよく、または細胞は、結合緩衝液中に最初に分散してもよい。次いで、結合緩衝液中の細胞の懸濁物を、カードのバイアル部分に添加し、その細胞を本明細書において上記されるように処理する。
【0145】
ゲノムDNA。ゲノムDNA分析のための生物学的サンプルは、以下の成分を含む任意の結合緩衝液を用いて調製する:GuHCl、5.25M;Tris Hcl、1.0M;pH6.4、50mlの水。組織は、結合緩衝液とともにホモジナイズしてもよく、または細胞は、結合緩衝液中に最初に分散してもよい。次いで、結合緩衝液中の細胞の懸濁物を、カードのバイアル部分に添加し、その細胞を本明細書において上記されるように処理する。
【0146】
生物学的サンプルの処理。MCPワークステーションおよびマイクロ精製カードは下の図24〜26に示され、かつ記載される。このMCPシステムは、特別に設計されたマイクロ精製カード(すなわち、MCP)を備える。これらのカードは各々、他の核酸アッセイのなかでも、マイクロアレイ分析、リアルタイムPCR、定量的PCRおよびノーザンブロットなどの適用においてMCPプロセスに対して外部のその後の使用のために、細胞サンプルからゲノムDNA、総RNAまたはmRNAを抽出、単離および精製するように設計される。
【0147】
マイクロ精製カード。MCP(ベースおよびフィルターカバー)は、130℃を超える温度までMCPの加熱を可能にする物質である、環状ポリオレフィン樹脂から射出成形される。フィルターメンブレンを溶解領域とフィルターカバーとの間の適所に結合させる。図24aを参照、130℃を超える温度を溶解工程の間に用い、ここでは生物学的物質が結合緩衝液中のフィルター領域に入り、細胞が溶解し、核酸を含む高分子内容物がメンブレンフィルターを通って濾過される。環状ポリオレフィン樹脂から別々に射出成形されるフィルターカバー(図24c)を、ベースカードに結合して、溶解領域を取り囲む。MCPシステムおよびマイクロ精製カードのプロセスのワークフローの図を図24a、図24b、図24cに示す。
【0148】
MCPを通るサンプル細胞および核酸の処理の図を図24aに示す。サンプル細胞が安定化緩衝液に分散した後、この分散した細胞を、例えば、ピペットによって、MCPバイアルに手動的に注射する。保持ラックをワークステーション上に設けて、このローディング工程の間、カードを適所に保持する。MCPのバイアルにサンプルをロードして、このリッドを閉じ、MCPをMCPワークステーション中に挿入し、次いで生物学的サンプル中の核酸を単離して精製する。生物学的サンプルの処理についてのさらなる詳細は、下にさらに記載する。
【0149】
図25および図26は、ワークステーション内に位置するMCPの種々の図面を示す。これらの図面は、ワークステーション上の加熱および冷却成分に対するMCPの方向を示す。MCPのサンプル冷却領域をサンプル冷却のための温度制御パドルに隣接しておく。温度制御パドルは、一体型のメイン・コア・デバイス上の温度制御領域に熱的に接続される。このメイン・コア・デバイスはまた、熱電制御(TEC)熱移動デバイスと熱連通される。また、MCPの溶解領域を加熱するMCP局所ヒーター(MCP Region Heaters)も示される。本実施例では、この溶解領域は約130℃に加熱される。
【0150】
サンプル調製およびMCPシステムの流体フローのまとめ。生物学的サンプルを最初に、ユーザーが結合緩衝液(すなわち、安定化緩衝液)とホモジナイズするか、またはボルテックスして細胞を分散させる。組織サンプルについては、安定化緩衝液をホモジナイゼーションの前にサンプルに加える。細胞については、ペレットを最初に遠心分離によって形成し、次いで結合緩衝液をこのペレットに加えて、その細胞をボルテックスして、緩衝液中の細胞を分散させる。この細胞分散を、ピペットを用いてMCP MCPバイアルのサンプルバイアル中にロードし、このバイアルをキャップして、MCPをワークステーション中にロードする(図24a)。MCPをワークステーション中にインストールすると、このサンプルは、陽圧下でフィルターを通じて約0.2ml/分で、約130℃でポンピングされて、サンプル由来の核酸および他の分子を含む濾液が生じる。この濾液を引き続き、サンプル冷却領域にポンピングして、ほぼ室温まで冷却する。次いで、この濾液を捕獲領域に流し、ここで濾液中の核酸が捕獲物質に結合する。総RNAについては、捕獲物質はガラス濾紙であり;ゲノムRNAについては、捕獲物質は、ガラス繊維紙であり;mRNAについては、捕獲物質はオリゴdTセルロースである。核酸が捕獲物質に結合した後、この結合した核酸を次に洗浄して、捕獲物質に吸着されているかもしれない非核酸化合物を除去する。洗浄工程1の間、1mlの洗浄液1を、メイン・コア・デバイス(Main Core Device)を通じてMCP中に、洗浄インレットを通じて、次いで捕獲チップ中に、ポンピングして、捕獲物質から未結合の分子を洗い去る。洗浄2の間、1mlの洗浄液2を、メイン・コア・デバイスを通してポンピングして、結合した(すなわち捕獲された)核酸を洗浄し、洗浄液1をすすぎ落とし(かつ塩を除去し)、核酸を精製する。これらの洗浄工程に続いて、4000mlの乾燥空気をメイン・コア・デバイスを通して流し、結合した核酸を乾燥させる。次いで、この核酸を、95℃で、約0.26(以下)mlの溶出液(RNaseなしの水)を用いて捕獲物質から溶出させる。この核酸を、MCPに位置しており、結合はしておらず、かつ下にある収集チューブ中に収集する。溶出チップ中の分子捕獲領域中で本質的に乾燥しかつ本質的に塩のない核酸を得る能力は、本発明の種々の局面に従って、可能である。詳細には、溶出チップの温度制御によってもこの能力は可能になり、これがmRNAの精製および単離を助ける。例えば、分子捕獲領域における機能的な物質は、mRNAのハイブリダイゼーションを果たす。ハイブリダイゼーションは、mRNAに結合して遊離するために温度制御を利用する。総RNAおよびゲノムDNAの結合によって、同様に温度制御効果を利用して、これらの核酸の沈殿および適切な分子捕獲物質に対する結合を制御する。従って、MCPおよび本発明のシステムは適切には、多数のステージおよび多数の領域の熱制御能力を有する。MCPは、上昇した温度で細胞を溶解するように溶解領域中で加熱されてもよい。MCPはまた、分子を捕獲するための溶解領域に流体的に隣接する領域中で冷却されてもよい。MCPは核酸を結合および遊離するために加熱および冷却され得る溶出チップを有する。温度、圧力、試薬および分析物を操作するためのこのワークステーションまたはシステムは、MCPと一体化されている。この組み込まれたシステムは、分子分析物を精製および単離するための本明細書に記載の種々の温度プログラムで、サンプル、試薬および洗浄液の流れを制御する。本明細書に提供されるMCPおよびシステムは、適切な緩衝液、熱制御、および捕獲物質と組み合わせて、最大約5mlまでのサンプルサイズの単回通過から、約200μl未満、さらには約10〜50μlの範囲という溶出されたサンプルサイズを調製し得る。ゲノムDNA、総RNA、およびmRNAの各々を単離するための流体ローディング、洗浄、溶出および乾燥プログラムの詳細は下の表に示す。
【0151】
まとめると、これらの実験で記載されたMCPシステム(systema)は、ゲノムDNA、総RNAまたはmRNAに特異的な安定化緩衝液中で分散した生物学的細胞を、サンプルバイアルからMCPの組み込まれた溶解領域に移動する。後に、この細胞は溶解され、同時に溶解領域内で約130℃で核酸を濾過して濾液を形成しながら流れる。引き続き、核酸、安定化緩衝液、および他の非核酸分子を含む濾液の流れを、次に、カード上に組み込まれたサーペンタイン冷却領域を通じてポンピングする。この濾液を、冷却領域内で流すことによって約20℃〜42℃の間の温度まで冷却し、次いで、このカードに結合したピペットチップ内に位置する捕獲領域を通じて冷却した濾液を流す。核酸を、捕獲領域内に位置するグラスファイバー(ゲノムDNAまたは総RNA)またはオリゴ−dT連結セルロース(mRNA)を用いてカード上に捕獲する。洗浄溶液が流れるにつれて、捕獲された核酸を最初に、カオトロピック塩、80%エタノール、およびバランスの水を含む緩衝液を用いて、約20℃で、二番目は、80/20のエタノール/水で洗浄して、緩衝液および塩を約20℃で除去する。この捕獲された核酸を最終的に、約65℃〜約95℃の範囲の温度でRNaseなしの水を用いて外部サンプル収集バイアルに対して溶出する。
【0152】
初期のサンプル調製技術の圧倒的多数が、種々の遠心分離タイプと組み合わせて用いられるスピンカラムを利用する。一連の工程(代表的には15〜45)における分析のための生物学的サンプルを調製するためにこれらの初期のシステムを用いることは、ユーザーによって実験室ベンチで行われる。これらの技術のさらに小さいサブセットは、親和性マトリックスに対して溶液をピペッティングするロボットシステムを利用する。マイクロ精製カード(MCP)およびMCPシステムを含む、本明細書に記載されるシステムの開発は、これらの初期のシステムに対して有意な技術的進歩である。初期の技術は、生物学的分析を行う能力を急速に発展させているが、それらは分子生物学のいくつかの局面を利用していない。詳細には、既存のシステムは、限定はしないが核酸およびタンパク質を含む、細胞の高分子の効率的な精製を可能にする、熱、流体および大気圧環境を的確に制御していない。この環境を制御する結果は、ごく微量の混入物しかない、高度に精製されたサンプルを供給する能力である。
【0153】
この新規に開発されたMCPシステムはまた、初期の技術に比較して生物学的サンプルの調製において有意な時間の節約をもたらす。選択された適用に依存して、マイクロ精製カードシステムは、初期の技術よりも2〜10倍速くサンプルを調製する能力を示している。いかなる特定の動作理論にも束縛されないが、これは、MCP環境(例えば、温度)を制御すること、および以前に開発されたシステム中で必須であった多数のインキュベーション工程を排除することによって達成される。サンプルの環境を効率的に制御するための工程は、切り離されている。一例として、適切なMCPおよびシステムを用いる溶解サンプルは、標的分析物の分離を必要としない。この方法では、細胞および高分子砕片のほとんどを、沈殿または標的分析物の親和性捕獲の前に除去してもよい。一旦トラップされれば、その分析物は、温度、流速(従って、圧力)および緩衝液の組成に関して緊密な制御下で洗浄され得る。精製の工程は切り離されているが、これは、ユーザーにはシステムのオペレーターとして意識されない。このシステムの操作は単に、1つ以上のMCPに対してサンプルをロードすることを必要とするだけであり、MCPシステム上のスロットにMCPを挿入して、標的分子の精製および単離を行う。
【0154】
従って、本発明によって、コスト(材料および労力の両方に関して)、および時間を低減しながら、極めて高い純度のサンプル調製が可能になる。この結果は、改善された下流の生物化学分析である。
【0155】
【表3】
【技術分野】
【0001】
本出願は、各々の出願の全体が本明細書において参照によって組み込まれる、2006年10月11日出願の米国特許出願第60/829,079号、および2007年9月17日出願の米国特許出願第60/973,103号に基づく優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、サンプルを調製するため、詳細には、生物学的細胞を溶解し、その中に存在する細胞の高分子を精製するための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
生物学的因子の分析は、分析のための未知のサンプルを調製する能力に依存する。サンプル調製の主要な構成要素は、生物学的因子を溶解および可溶化することである。サンプル調製は、溶解および可溶化の影響に対する生物学的因子の安定性における広範な変動によって複雑にされる。ウイルス、真核生物、および原核生物(細菌の芽胞を含む)を溶解するための種々の技術が開発されている。例としては化学的溶解および界面活性剤溶解、酵素処理、超音波処理、加熱およびガラス・ビーズ・ミリング(glass bead milling)が挙げられる。細菌の芽胞は例えば、溶解および可溶化に極度に耐性であって、しばしば上述の技術の組み合わせを要する。しかし、これらの溶解技術の多くは、増幅、標識または解析的分析を妨げる、サンプルに対する化学的な添加物の添加またはタンパク質のために分析が複雑化する。
【0004】
いくつかのサンプル処理技術が、マイクロ流体デバイスの使用および組み込みのために開発されている。これらの技術およびマイクロ流体デバイスとしては、組み込まれた界面活性剤媒介性溶解、レーザー媒介細胞溶解、および電場媒介性溶解が挙げられる。さらに、E.coli由来のDNAの溶解、濃縮、精製および分析を可能にするシステムが開発されている。これらのシステムの多くは、比較的不安定な真核生物細胞タイプおよび細菌でサンプル処理を行う。これらのデバイスのほとんどは、調製されたサンプルを溶出して下流の分析を可能にする能力がない。マイクロ流体分析のために細菌芽胞を迅速に溶解および分析する能力に関している研究はさらに少ない。
【0005】
従って、限定はしないが電気泳動分析、タンパク質フィンガープリント、核酸増幅、すなわち、PCRおよびハイブリダイゼーション分析、例えば、タンパク質および核酸のマイクロアレイの使用を含む種々の分析のために有用なサンプル処理技術を開発する必要は継続して存在している。最後に、使い捨て可能で小型のカードベースのサンプル調製システムを開発する必要性もあり、それらは使いやすく、サンプルの交差汚染を最小にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様は、サンプルから分子を抽出し得る複数の流体構成要素を含むマイクロ精製カードを提供する。マイクロ精製カードの複数の流体構成要素は、実質的に平面に配向され、この複数の流体構成要素は以下を備える:サンプルローディングインレットと、溶出インレットと、溶解されたサンプルを提供するため、少なくとも約90℃に加熱され得、かつ環境大気圧よりも少なくとも約10psi大きくまで加圧され得る溶解領域。それらはまた、この溶解サンプルから分子を濾過し得る多孔性メンブランと、分析結合工程の間少なくとも約40℃まで、かつ溶出工程の間95℃まで加熱され得る分子捕獲領域と、溶出チップとを備える。このサンプルローディングインレットは、溶解領域と流体連通しており、この溶解領域は、このフィルターと流体連通しており、このフィルターは、この分子捕獲領域に対して1つ以上の分子を流体的に連通し得、かつこの分子捕獲領域は、溶出インレットおよび溶出チップの両方と流体連通し得る。
【0007】
上昇した温度および圧力において1つ以上のマイクロ精製カード中でサンプルを調製するために適切なシステムも提供される。本発明のシステムは、このマイクロ精製カード(MCP)上のサンプルローディングインレットに対して圧力下で流体連通され得るサンプルインプット流体接続と;このマイクロ精製カード上の溶出インレットに対して圧力下でサンプルローディングインレットへ流体接続し得る溶出インプット流体接続と;このサンプルインプット流体および溶出インプット流体接続を受容するようにこのマイクロ精製カードを位置的に保持し得る、カードホルダーと、を備える。
【0008】
上昇した温度および圧力において使い捨て可能なマイクロ精製カードを用いてサンプルから分子を収集するために適切であるシステムも提供される。これらのシステムは、サンプル調製マイクロ精製カード(MCP)中でサンプルを調製するために適切な1つ以上の使い捨て可能なマイクロ精製カードおよびシステムを備える。これらのシステムでは、このマイクロ精製カードは、1個以上の細胞を含むサンプルから分子を抽出し得る複数の流体構成要素を備える射出成形カードを備え、この複数の流体構成要素は、溶解領域と流体連通し得るサンプルローディングインレットを備え、この溶解領域は、フィルターと流体連通されており、このフィルターは、分子捕獲領域に対して1つ以上の分子を流体連通し得、かつこの分子捕獲領域は、溶出インレットおよび溶出チップと流体連通し得る。適切なシステムは、マイクロ精製カード上でサンプルローディングインレットに対して圧力下で流体的に接続され得るサンプルインプット流体接続を備える;溶出インプット流体接続は、このマイクロ精製カード上の溶出インレットに対して圧力下でサンプルローディングインレットへ流体的に接続され得る。このシステム上のカードホルダーは、このようなサンプルインプット流体および溶出インプット流体接続を受容する位置でマイクロ精製カードを保持し得る。適切なカードホルダーは、このマイクロ精製カード上の溶解領域を少なくとも約90℃まで加熱し得るヒーターと;このマイクロ精製カード上の分子捕獲領域を約40℃より高くまで加熱し得、かつこの分子捕獲領域を30℃未満まで冷却し得る熱制御装置とを備える。このシステムはまた、この溶出チップを出てくる分子を含む溶出流体を受容し得る位置決め可能な流体収集ホルダーも備える。本発明のシステムは代表的には、このマイクロ精製カード上の分子捕獲領域を少なくとも約95℃まで加熱し得、かつこの分子捕獲領域を約−20℃未満まで冷却し得る1つ以上の熱制御装置を備える。適切なシステムはまた、1つ以上のマイクロ精製カードを受容するためのスロットを有する1つ以上のカードホルダーを備える。
【0009】
カードベースのサンプル調製システムを用いて分子を収集する方法も提供される。これらの方法は、細胞および第一の緩衝液を含むサンプルを圧力下で、マイクロ精製カード上でサンプルローディングインレットから溶解領域に対して流体連通させる工程と;この溶解領域中のサンプルを、周囲圧力よりも大きい1つ以上の圧力で約100℃から約150℃の範囲の温度まで加熱して、細胞を溶解し、溶解された細胞フラグメントと分子とを生じる工程と;約90℃より高い温度でこの溶解された細胞フラグメントから分子を濾過する工程と;分子捕獲物質またはデバイスを用いてこの濾過された分子の少なくとも一部を捕獲する工程と;溶出チップを通じて第二の緩衝液を用いてこの捕獲された分子の少なくとも一部を溶出させる工程であって、この第二の緩衝液がこの第一の緩衝液と同じかまたは異なっている工程と;この溶出された分子および第二の緩衝液の少なくとも一部を、位置決め可能な流体収集ホルダー中に収集する工程と;を包含する。
【0010】
カードベースのサンプル調製システムを用いて分子を収集する方法も提供される。これらの方法は、サンプルローディングインレットからマイクロ精製カード上の加熱領域に対して圧力下でサンプルを流体的に連通させる工程を包含する。このサンプルを、周囲圧力よりも大きい1つ以上の圧力で約100℃から約150℃の範囲の温度までヒーター領域中で加熱して、このサンプルの少なくとも一部を破壊する。この破壊されたサンプルフラグメントによって分子が生じ、次いでこれを約90℃より高い温度で濾過する。この方法はさらに、分子捕獲物質またはデバイスを用いてこの濾過された分子の少なくとも一部を捕獲する工程と;溶出チップを通じてこの捕獲された分子の少なくとも一部を溶出させる工程と;この溶出された分子の少なくとも一部を、位置決め可能な流体収集ホルダー中に収集する工程と;を包含する。
【0011】
一般的な説明および以下の詳細な説明は例示的であってかつ説明に過ぎず、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の限定ではない。本発明の他の局面は、本明細書に提供される本発明の詳細な説明に照らして当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
要旨および以下の詳細な説明は、添付の図面と合わせて読み取った場合、さらに理解される。本発明を例示する目的のために、本発明の図面の例示的な実施形態を示す;しかし、本発明は、開示される特定の方法、組成物およびデバイスに限定されない。さらに、図面には必ずしもスケールを記していない。
【図1】本発明のマイクロ精製カードの実施形態を示す。
【図2】本発明で用いられ得る穿孔されたキャップの実施形態を示す。
【図3】本発明のマイクロ精製カードの分子捕獲領域および溶出チップ部分の実施形態を示す。
【図4】本発明のマイクロ精製カードでの使用のための収集バイアルを操作するためのシステムの実施形態を示す。
【図5A】本発明の実施形態のシステム上のサンプルホルダー中のマイクロ精製カードのローディングを示す。
【図5B】本発明の実施形態のシステム上のサンプルホルダー中のマイクロ精製カードのローディングを示す。
【図6】本発明のマイクロ精製カードの種々の図を示す。
【図7】図6Bにおける断面H−Hの拡大であって、本発明のマイクロ精製カードの実施形態における流体の流れ方を示す。
【図8】図6Cにおける断面J−Jの拡大であって、本発明のマイクロ精製カードの実施形態における流体の流れ方を示す。
【図9】本発明のマイクロ精製カードの実施形態における流体の流れ方を示す。
【図10】本発明のマイクロ精製カードの実施形態の横断面斜視図を示す。
【図11】本発明の分子捕獲領域カートリッジの実施形態を示す。
【図12A】マイクロアレイを含む本発明の分子捕獲領域カートリッジの実施形態を示す。
【図12B】マイクロアレイを含む本発明の分子捕獲領域カートリッジの実施形態を示す。
【図13】分子捕獲領域カートリッジを備える本発明のマイクロ精製カードの展開された斜視図の実施形態を示す。
【図14】分子捕獲領域カートリッジを備える本発明のマイクロ精製カードの展開された斜視図の実施形態を示す。
【図15A】本発明のシステムのサンプル収集バイアルに隣接する本発明のマイクロ精製カードの溶出チップの図を示す。
【図15B】本発明のシステムのサンプル収集バイアルに隣接する本発明のマイクロ精製カードの溶出チップの図を示す。
【図16A】システムによって保持されるマイクロ精製カードについて、ローディングレールおよび位置変化レールに沿って、収集バイアルおよび廃棄バイアルが操作される方法を示す一連の図である。
【図16B】システムによって保持されるマイクロ精製カードについて、ローディングレールおよび位置変化レールに沿って、収集バイアルおよび廃棄バイアルが操作される方法を示す一連の図である。
【図16C】システムによって保持されるマイクロ精製カードについて、ローディングレールおよび位置変化レールに沿って、収集バイアルおよび廃棄バイアルが操作される方法を示す一連の図である。
【図16D】システムによって保持されるマイクロ精製カードについて、ローディングレールおよび位置変化レールに沿って、収集バイアルおよび廃棄バイアルが操作される方法を示す一連の図である。
【図17】本発明のmRNAを精製するためのプロトコールを示す。
【図18】本発明のmRNAを精製するためのプロトコールを示す。
【図19−1】種々の細胞破壊および標識抽出および方法およびデバイスを示す。頂部のパネルは、溶解デバイスのいくつかのブレッドボードの原型のデザインを記しかつ示している。第二のパネルは、溶解デバイスのブレッドボードの原型を用いる芽胞溶解およびDNA抽出の結果を示す。この第三のパネルは、RNA安定化およびqPCRの結果を示す。下部では、本発明のシステムのためのデザイン(下側の左パネル)、および本発明のマイクロ精製カードのデザインを示す。このシステムとともに本発明のマイクロ精製カードを用いる、芽胞からのDNA、細菌からのRNA、および真核生物細胞からのmRNAの抽出が示される。
【図19−2】種々の細胞破壊および標識抽出および方法およびデバイスを示す。頂部のパネルは、溶解デバイスのいくつかのブレッドボードの原型のデザインを記しかつ示している。第二のパネルは、溶解デバイスのブレッドボードの原型を用いる芽胞溶解およびDNA抽出の結果を示す。この第三のパネルは、RNA安定化およびqPCRの結果を示す。下部では、本発明のシステムのためのデザイン(下側の左パネル)、および本発明のマイクロ精製カードのデザインを示す。このシステムとともに本発明のマイクロ精製カードを用いる、芽胞からのDNA、細菌からのRNA、および真核生物細胞からのmRNAの抽出が示される。
【図20】Tentacle(商標)プローブの設計および機能を示す。
【図21】Tentacle(商標)プローブでの結果を示す。
【図22】Tentacle(商標)プローブを用いる外部試験結果を示す。
【図23】検出システムのデザインおよび製造を示す。
【図24A】マイクロ精製カードがユーザーの見込みで用いられ得るプロセスを示す。
【図24B】カード上でのサンプル調製を行うMCP装置内で用いられる経路を示す。
【図24C】冷却チャネル、溶解領域、ならびにサンプル調製を行うためのインレットポートおよびアウトレットポートを備える、マイクロ精製カード(MCP)キャップを示す。
【図25】MCPを操作するヒーターおよび流体コントロールに対してMCPを嵌合させるために用いられる配置を示す。
【図26】MCPワークステーションの内側に位置するマニフォールドに対するMCPの流体嵌合を示す。
【図27−1】MCPおよび適切なワークステーションを用いるmRNA精製の結果を示す。
【図27−2】MCPおよび適切なワークステーションを用いるmRNA精製の結果を示す。
【図28−1】MCPシステムを用いる総RNA精製の結果を示す。
【図28−2】MCPシステムを用いる総RNA精製の結果を示す。
【図29】8つのMCPを収容し得るアセンブルされたMCPワークステーションを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、本開示の一部を形成する、添付の図面および実施例と関連してとった以下の詳細な説明を参照してさらに容易に理解され得る。本発明は、本明細書に記載されるかおよび/または示される特定のデバイス、方法、適用、条件またはパラメーターに限定されないこと、および本明細書に用いられる用語法は単なる一例によって特定の実施形態を記載する目的であり、特許請求される本発明の限定を意図しないことが理解されるべきである。また、添付の特許請求の範囲を含む本明細書で用いられる場合、単数形「1つの(a)、(an)」および「この、その(the)」は、複数を包含し、特定の数値に対する言及は、文脈が明確に他を示すのでない限り、少なくともその特定の値を包含する。「多数、複数(plurality)」という用語は、本明細書において用いる場合、2つ以上を意味する。ある範囲の値が表わされる場合、別の実施形態は、1つの特定の値から、および/または他の特定の値までを包含する。同様に、値が近似として表わされる場合、推定の「約」を用いることで、その特定の値が別の実施形態を形成することが理解される。全ての範囲が包括的であって、組み合わせ可能である。
【0014】
明確にするために、本明細書において別の実施形態の状況で記載される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態中で組み合わせて提供されてもよいことが理解されるべきである。逆に、単一の実施形態の状況で略して記載される、本発明の種々の特徴はまた、別々に提供されてもよく、または任意の副次的組み合わせ(subcombination)で提供されてもよい。さらに、言及される値についての言及の範囲は、その範囲内の各々の値およびあらゆる値を包含する。
【0015】
本明細書で提供されるマイクロ精製カードは、サンプルから分子を抽出し得る複数の流体構成要素を備える。このマイクロ精製カードの複数の流体構成要素は実質的に平面に配向され、この複数の流体構成要素は、以下の構成要素:サンプルローディングインレットと、溶出インレットと、溶解されたサンプルを提供するため、少なくとも約90℃に加熱され得、かつ環境大気圧よりも少なくとも約10psi大きくまで加圧され得る溶解領域と、を備える。それらはまた、この溶解サンプルから分子を濾過し得るフィルターと、少なくとも約40℃に加熱され得る分子捕獲領域と、溶出チップとを備える。このサンプルローディングインレットは、溶解領域と流体連通しており、この溶解領域は、このフィルターと流体連通しており、このフィルターは、この分子捕獲領域に対して1つ以上の分子を流体的に連通し得、かつこの分子捕獲領域は、溶出インレットおよび溶出チップの両方と流体連通し得る。必要に応じて、1つ以上の流体バルブまたはチャネルが任意の2つ以上の流体構成要素の間に流体的に配置されてもよい。例えば、これらの構成要素を熱的に隔離して保持することを補助するために、このサンプルインレットと溶解領域との間に戦略的にチャネルが配置されてもよい。マイクロ精製カードの異なる部分において圧力を調節する目的のために1つ以上の流体バルブまたはチャネルも備えられてもよい。例えば、フィルターを横切る背圧を確立するために、狭いチャネルまたはバルブをこのフィルターと捕獲物質との間に配置してもよい。背圧はまた捕獲物質によって生み出されてもよい。
【0016】
このマイクロ精製カードは、細胞の溶解物を含む種々のサンプルとともに用いられてもよい。この場合、細胞の溶解物は、高温および高圧を用いて達成され得る。溶解緩衝液中の添加物に依存して、ほとんどまたは全ての溶解は急速に生じる。適切なマイクロ精製カードは、細胞および分子の成分の溶解および濾過の両方を組み合わせる領域を備えてもよい。時には、細胞は、溶解領域に移動される前に溶解され得る(すなわち、プレ溶解である)。プレ溶解の場合、濾過/溶解領域は、細胞壁のサンプル、汚れおよび分子捕獲領域を詰まらせる他の残骸を浄化する。溶解領域における熱はまた、捕獲領域の前に核酸を変性するのに重要である。
【0017】
本明細書において用いる場合、「細胞」という用語はまた、ウイルス、原虫、藻類および他の単細胞の生物および寄生生物、ならびに植物細胞および動物細胞(ヒト細胞を含む)を包含する。従って、サンプルは天然に由来しても、合成由来でも、または天然由来および合成由来の両方であってもよい。天然に由来するサンプルは、少なくとも1つの原核生物細胞、少なくとも1つの真核生物細胞、少なくとも1つのウイルス、少なくとも1つのプリオン、少なくとも1つの天然に由来する分子、またはその任意の組み合わせを包含する。例えば、天然に由来する分子としては、核酸、アミノ酸、炭水化物、塩、多糖類またはその任意の組み合わせを包含し得る。適切な原核生物細胞としては、細菌、藻類、またはその任意の組み合わせが挙げられる。適切な真核生物細胞としては、植物細胞、動物細胞またはその任意の組み合わせが挙げられる。
【0018】
このマイクロ精製カードはまた、合成に由来するサンプルを試験するために用いられてもよい。適切な合成由来のサンプルとしては、少なくとも1つの化成物、薬物分子、遺伝子操作された生物体、合成の核酸、合成のアミノ酸、合成の炭水化物、またはその任意の組み合わせが挙げられる。例えば、地下水中の化成物の試験は、飲料水の安全性を確認するために重要である。薬物分子は、法的機関の申請における使用、および製薬業者のための品質管理用途のために試験され得る。遺伝子操作された生物体および細胞、例えば、遺伝子操作された植物(例えば、食品または飼料中の使用のための植物)、動物、細菌、ウイルス、原生動物などおよび病原体、またはそれらの任意の組み合わせも試験され得る。多数の他の用途が、当業者に容易に想定される。適切には、天然に由来するサンプルとしては、少なくとも1つの植物細胞、少なくとも1つの動物細胞、少なくとも1つのヒト細胞、少なくとも1つのウイルス、少なくとも1つの単細胞生物体、少なくとも1つのプリオン、またはその任意の組み合わせが挙げられる。
【0019】
この分野ではマイクロ精製カードの取り扱いで、適切なサンプルをこのカードにロードし、キャップを用いてこれを密閉して試験の間にサンプルをこぼすことおよび交差汚染を回避できることが望ましくなる。適切なキャップは、サンプルローディングインレットに対して密閉され得、望ましくは、圧力差に供された場合それを通じた流体のフローを可能にし得、かつこのサンプルキャップは圧力差に供されない場合、それを通じた流体のフローを妨げ得る。適切なサンプルキャップは、1つ以上の細孔を備え、その細孔の各々は約2mm未満、代表的には約0.1mmより大きい直径を有する。このキャップを用いて、サンプルローディングインレットを密閉してもよい。適切なサンプルローディングおよびインレットは、生物学的な流体サンプル、組織サンプル、廃棄物、および環境サンプルまたはその任意の組み合わせを受容し得る。
【0020】
本発明のマイクロ精製カードは、プラスチック、金属、セラミック、ガラスまたはその任意の組み合わせから構成される少なくとも2つの流体構成要素を有する。製造の効率および容易さを求めるために、ある実施形態では少なくとも2つ、または3つもしくは4つもの流体構成要素が、同じ物質から同時に成形されてもよい。例えば、少なくとも2つの流体構成要素がポリマー物質から同時に射出成形されてもよい。適切なポリマー材料は、環状オレフィンコポリマー、ポリオレフィン、ポリアクリル酸、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリビニルハライド、またはそれらの任意のコポリマーもしくは組み合わせを含む。適切なポリオレフィンは、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状ポリオレフィン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。適切な環状ポリオレフィンは、Topas(商標)(COC)、Zeonor(商標)(COP)ポリマー、水素化ポリスチレン、ポリビニルシクロヘキサン、またはその任意の組み合わせを含む。
【0021】
このマイクロ精製カードは、平面方向でカード型物質上に支持された種々の流体構造を備え得る。このマイクロ精製カードの2つ以上の流体構成要素は、2つ以上の流体構成要素の平面に対して平行に配置されたカード型物質を用いて構造的に配向され得る。さらなる支持リブおよび/またはポストが、この流体構成要素の少なくとも一部の平面配向を支持し得る。このカードの寸法は、高さおよび幅で、数センチメートル〜10センチメートルに及んでもよい。従って、適切な指示リブまたはポストは代表的には、約数十ミリメートルから1〜2センチメートル程度の寸法を有する。例えば、支持リブまたはポストは、約2cm長、および約0.1〜0.3mmの高さの範囲、および約0.3mmの幅であってもよい。支持リブまたはポストは、サンプルから溶出液への流体のフローの方向と一致して配向され得る。サンプルローディングインレットはさらに、1つ以上の支持構造を用いて他の流体構成要素の少なくとも1つに対して構造的に支持され得る。
【0022】
この溶解領域はサンプルインレットおよびフィルターの両方に流体接続される。このマイクロ精製カードの溶解領域は、このフィルターに対して反対に配向されたフィルターキャップを用いてフィルターを含む任意の領域を封入することによって提供され得る。特定の実施形態では、このフィルターキャップおよびフィルターは、流体提供、温度制御およびサンプル回収のために適切なシステム中へのマイクロ精製カードの挿入の方向に対応する平面に対して実質的に平行に配向される。各々のフィルターキャップおよびフィルターの少なくとも一部は、このマイクロ精製カードの平面に対して垂直な1つ以上の突起に対して密閉可能に固定されてもよい。マイクロ精製カードの平面に対して垂直な適切な突起は、リング、四角、または他の多角形の形状であってもよい。特定の実施形態では、このフィルターは、例えば、与えられた圧力差のもとでフィルターが平坦なままであることを保証することによって、このサンプルの1つ以上の補助濾過によって支持されてもよい。このような突起は、マイクロ精製カードの平面に対して垂直に配向されてもよい。
【0023】
適切なフィルターとしては、メンブランフィルター、パックされた粒子層、フリット、セルロース材料、繊維性物質、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。適切なフィルターとしてはまた、パックされたビートの層、多孔性構造を有するフリット、例えばステンレス鋼フリットが挙げられる。セルロースおよび繊維性物質もフィルター中で適切に用いられてもよい。メンブランフィルターは特に有用である。なぜなら、それらは、デッドボリュームが小さい広い表面積の濾過を可能にするからである。適切なメンブレンフィルターは、ポリマー、金属、セラミック、ガラスまたはそれらの任意の組み合わせから構成され得る。ポリマーフィルター、例えば、PTFEおよび他のフッ素重合体が特に所望される。従って、このポリマーは、ハロゲン化ポリマー、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、セルロース、ポリカーボネート、またはそれらの任意の組み合わせを包含し得る。適切なメンブレンフィルターは、多孔性ポリマー基板上に支持される。メンブレンフィルターのこの多孔性のポリマー基板は、マイクロ精製カードの平面に対して垂直に出てくる1つ以上のシーリング構造に対して密閉的に固定され得る。
【0024】
適切なメンブレンフィルターは、約5ミクロン未満という名目上の細孔サイズを有すると特徴付けられ、ある実施形態では、約0.02μm〜2μmという範囲の名目上の細孔サイズ、さらに代表的には、約0.2μm〜1.0μmという範囲の名目上の細孔サイズを有する。適切なフィルターは、約50平方mm〜約5000平方mmの範囲の濾過面積を有するか、またはさらに約100平方mm〜約600平方mmの範囲の濾過面積を有するとさえ特徴付けられる。従って、このフィルターは、目詰まりの前に少なくとも約100,000個の溶解された細胞を濾過できるのに十分な面積であって、しばしばこのフィルターは、目詰まりの前に最大約10,000,000個までの細胞を取り扱うことができるのに十分な面積である。ある実施形態では、この溶解領域に隣接するフィルター表面は、生体分子の選択性の吸着のために官能化されていると特徴付けられる。これは、例えば、捕獲領域に入る生体分子の量を最小化するのに有用であり得る。適切なフィルター表面官能化としては、シラン還元、プラズマ処理、エポキシ−アミン、ヒドラジン、アルデヒド、ポリジン(polysine)、UV架橋、ラジカル活性化、チオール架橋、スクシンイミジルエステル、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0025】
フィルターキャップは、特定の実施形態では、カード型物質に対して流体的に密閉される、溶解領域またはチャンバを設けるために備えられる。これによって、適切なフィルターメンブレンの結合、続いて適切なフィルターを有する溶解領域のシーリングを可能にしながら、カード型形状で多くの流体構成要素を提供するための物質の適切な成形が可能になる。このフィルターは、限定はしないが、接着、超音波的結合、ネジ切り、圧力クランプ、赤外線アセンブリ法などを含む任意の種々の方法を用いて結合され得る。フィルターキャップ(フィルターキャップ)は、十分な熱伝導性および薄さの物質から構成され得、この上で約140℃未満の接触温度を有する外部ヒーターと接触して、溶解領域内の流体を約3分未満で約100℃より高い温度に達し得る。
【0026】
サンプル調製は、サンプルローディングインレットを有し得、これはバイアル形状、チューブ形状、プリズム形状、球状の、四角の形状、卵型、またはその任意の組み合わせである。このサンプルローディングインレットおよび溶解領域は、1つ以上の流体チャネルを介して流体連通している。適切な流体チャネルを用いて、例えば、ローディングインレットを溶解領域に、または溶解領域をフィルターに、フィルターから捕獲領域に、またはさらには溶出インレットから捕獲領域になど接続してもよい。
【0027】
適切なサンプルローディングインレットによって、カード中へのサンプル、例えば、細胞、組織もしくは血液または他の環境物質を含む液体または流体の配置が可能になる。サンプルローディングインレットは、約0.1ml〜約5mlの範囲の容積を有するか、またはさらに、約0.2ml〜約3mlの範囲の容積を有するとして特徴付けられる。特定の実施形態では、このサンプルローディングインレットは、適切なサンプルキャップに可塑的に接続される。
【0028】
本発明のマイクロ精製カードはまた、分子捕獲領域との流体接続に比較してサイズの小さい開口へ傾斜されているという点で特徴付けられた溶出チップを備える。マイクロ精製カードによって調製される生成物を形成する分子が濾過されて溶出チップを出る場合、この溶出チップのデッドボリューム中に捕まる物質(すなわち生成物)の量を最小にすることが所望される。これに関して、適切な溶出チップは、約75マイクロメートル未満の容積を有すると特徴付けられる。適切な溶出チップは、約0.05マイクロリットル程度の小さい容積を有してもよく、これは適切なピペットチップを用いて提供され得る。適切な溶出チップは、約60マイクロリットル未満の容積を有するか、または約1マイクロリットル未満の容積を有するとさえ特徴付けられる。適切な溶出チップは、このマイクロ精製カードの一部から延びて、外部サンプル収集バイアル中に分子を流し得る。低容積の溶出は、捕獲物質を事前加熱することによって、次いで捕獲領域を通じてポンピングされる流体の量および速度を正確に制御することによって達成される。この方法では、1.0マイクロリットル程度の低い溶出容積が達成され得る。
【0029】
本発明のマイクロ精製カードの溶解領域は、少なくとも約120℃まで加熱され得、かつ少なくとも最大約80psiまで加圧され得る。これらの特性は、上昇した温度および圧力に抵抗することができる十分な強度および熱耐久性の物質を用いて提供される。例えば、射出成形プラスチック、例えば、高温のポリプロピレン、ポリオレフィン、およびポリカーボネートは、このような上昇した温度および圧力に抵抗し得る。さらに、高温に長時間抵抗できないプラスチックは、定格の温度よりも高温で短期間用いられ得る。他の実施形態では、より低い温度およびが圧力も同様に用いられ得る。例えば、溶解領域は、少なくとも約95℃まで加熱され、かつ大気圧より少なくとも約10psi上まで加圧されてもよい。温度および圧力が高いほど、より望ましい傾向であり、他の好ましい実施形態では、この溶解領域は、少なくとも約150℃まで加熱され、かつ少なくとも約100psiまで加圧されてもよいし、またはさらに少なくとも約200℃まで加熱され、かつ少なくとも約350psiまで加圧されてさえよい。種々の物質が、これらの上昇した温度および圧力で用いられ得る。例えば、金属、セラミック、複合材料およびエンジニアリング熱可塑性物質も全て用いられ得る。
【0030】
溶解領域は代表的には、このカード内に構築されるいかなる別個の加熱デバイスも備えないが、備えてもよい。従って、適切なシステムは、この中に構築されたヒーターを有し、この溶解領域は、外部ヒーターに近接して配置される。例えば、外部の電気ヒーターは、フィルターキャップと直接熱的に接触されてもよく、これが次に、この加熱領域内でサンプルを加熱する。細胞が加熱領域に存在する場合、この加熱領域は、熱および圧力のもとでこの細胞を溶解するための溶解領域として用いられ得る。
【0031】
溶出インレットは、マイクロ精製カードに対して外部の流体供給源に対して流体的に接続され得る。適切な流体供給源は、マイクロ精製カードに対して流体的に接続して、これを加熱するように設計されているシステムによって提供される。溶出インレットに入る適切な流体としては、例えば、緩衝液および他の水溶液(分子捕獲領域から分子を洗い去り得る)が挙げられる。適切な溶出液は、本明細書にさらに記載される。
【0032】
マイクロ精製カードは、サンプルから濾過して除かれる分子を捕獲するための1つ以上の分子捕獲領域を備える。特定の実施形態では、この分子は、生体分子、例えば、核酸およびアミノ酸である。核酸およびアミノ酸の高次構造は、温度依存性である傾向であり、これを用いれば、これらのタイプの分子を捕獲および遊離するのに有益であり得る。例えば、ポリ核酸は、約90℃未満の温度でハイブリダイズし得る。従って、ポリ核酸鎖からなる分子捕獲領域を用いて、対応する核酸配列を捕獲してもよい。捕獲された分子の遊離および溶出は、分子捕獲領域を通じてかつ溶出チップを通って外に緩衝液を流しながら、少なくとも約95℃まで分子捕獲領域を加熱することによって達成され得る。精製された核酸分子の遊離は、より低温度でも同様に達成され得、そして主にDNAまたはRNAハイブリッドの融点によって制御される。生体分子は代表的には、約150℃より上で損傷される。この分子捕獲領域は、加熱ブロック、加熱カートリッジ、加熱テープなど、またはさらにはマイクロ精製カードを受容するための適切なシステム中に装着された熱電性冷却器を用いて適切に加熱されてもよい。さらに、この分子捕獲領域を少なくとも約15℃未満、または少なくとも約4℃未満、または少なくとも約−10℃未満の温度まで冷却し得るか、あるいはさらに約−20℃まで冷却し得ることも所望される。約0℃未満の温度は、溶出インレットに入る液体中において、例えば、適切なアルコールまたは凍結防止剤、例えば、エタノールまたはプロピレングリコールを使用することによって実行され得る。種々の緩衝液によって、凝固点を約−20℃未満まで低下し得る。熱電性またはペルチェ冷却器を用いて、これらの低温を達成してもよい。
【0033】
分子捕獲領域は、マイクロ精製カード中と一体の取り外し不能な領域、取り外し可能なカートリッジ、またはそれらの任意の組み合わせを備えてもよい。例えば、マイクロ精製カードと一体の取り外し可能な領域は、カートリッジの実質的な一部の射出成形プロセスによって提供されてもよい。あるいは、別個のカートリッジが加工され、適切な捕獲物質または捕獲デバイスで充填され、カートリッジ上の流体ポートに結合されてもよい。適切な分子捕獲領域は、フィルターによって濾過され得る1つ以上のタイプの分子を選択的に捕獲し得る捕獲物質または捕獲デバイスを含む。例えば、捕獲物質としては、多孔性材料、パックされた層物質、ゲル、金属フリット、捕獲物質、セルロース、ファイバーメンブレン、目的の分子と結合するように官能化または改変され得る任意の物質、ガラス、ケイ素、セラミック、ポリマーまたはそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。適切な多孔性物質は、多孔性ポリマーモノリスを含む。適切な捕獲物質は、核酸、アミノ酸、炭素鎖、陽イオン、陰イオン、ペプチドまたはそれらの任意の組み合わせで官能化されてもよい。捕獲領域中に含まれ得る核酸としては、限定はしないが、全長遺伝子、ランダムなDNAまたはRNA配列、アプタマー、DNA、LNA、PNA、RNA、配列特異的なオリゴヌクレオチド、対立遺伝子反復、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0034】
捕獲デバイスはまた、マイクロアレイを備えてもよい。マイクロアレイカートリッジは、2部(二等分)で作製されてもよい。最初の半分は、約200ミクロンから約2mmの幅の範囲の開口チャネルを備えてもよく、ここに多孔性基板が沈着されて架橋されて、チャネルの壁に結合されてもよい。第二の部分は、このチャネルに結合され得る固体の半円(本質的にレンズ)であってもよい。レンズを受容するために、カートリッジの基部の連続(すなわちカード)は、このレンズを受容するようにスタンプされてもよい。次に、このレンズは、溶媒結合されてもよいし、またはマイクロアレイを含むカートリッジに対してUVエポキシ結合されてもよい。適切なプラスチックレンズは、適切なアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂またはポリスチレン型樹脂を用いて容易に製造される。あるいは、3ウェーハシステムを用いて、分子捕獲カートリッジ中でマイクロアレイを調製してもよい。1つのウェーハは、そこにエッチングされた多孔性領域を有し得る。このウェーハは、穴を介して2つを含む基部ウェーハに結合されてもよい。次いで、この2つのウェーハは、ロボットまたはフォトリソグラフィーのいずれか、例えば、デジタル光投射設定などを用いてスポッティングされ得る。一旦、プローブの沈着が完了すれば、次いで、オープン・フェースのチャネルを、この「レンズのある(lensed)」トップ・ウェーハを用いて密閉してもよい。あるいは、マイクロアレイデバイスからなる分子捕獲カートリッジは、種々の捕獲物質でこのカートリッジを交互に充填することによって提供され得る。
【0035】
マイクロ精製カードはまた、識別タグを備えてもよい。適切な識別タグとしては、光学的にスキャン可能なコード、磁気ストリップ、および電磁的に読み取り可能なシグナル、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。例えば、識別タグとしては、バーコードまたは高周波識別(「RFID」)チップを挙げることができる。サンプルの処理条件がカードにそって追跡できるように、バーコードリーダーをこのカードまたはシステムに用いてもよい。バーコードはまた、溶出バイアルの両方または一方に結合され得る複製とともにカード上に配置されてもよい。
【0036】
フィルターと溶解領域との間のクロストーク(cross talk)を制限することが所望される。クロストーク(すなわち、混入)は、カード上の流体構成要素の間に適切なバルブを組み込むことによって最小にできる。これには、カードを変更し得る(すなわち、熱シーリング、チャネル変形、単一方向バルブを用いるなどによって)、単回使用バルブを挙げることができる。上で記載のとおり、小径の孤立したチャネルを用いて領域の間のクロストークを制限してもよい。
【0037】
使い捨て可能なマイクロ精製カードはまた、射出成形過程を用いて、カードおよび流体構成要素の実質的な部分を製造することも可能である。例えば、カードは、サンプルから分子を抽出し得る複数の流体構成要素を備えるように射出成形されてもよく、この複数の流体構成要素は、溶解領域と流体連通され得るサンプルローディングインレットを備え、この溶解領域は、フィルターと流体連通され得、このフィルターは、分子捕獲領域に対して1つ以上の分子を流体連通し得、この分子捕獲領域は、溶出インレットおよび溶出チップと流体連通し得る。これらの使い捨て可能なマイクロ精製カードはまた、サンプルキャップを備える。適切なサンプルキャップは、サンプルローディングインレットに対して密閉され得、このサンプルキャップは、圧力差に供された場合それを通じた流体のフローを可能にし得、このサンプルキャップは、圧力差に供されない場合、それを通じた流体のフローを妨げ得る。さらに、各々の流体構成要素の一部は、射出成形カードによって提供され得る。使い捨て可能なマイクロ精製カードは、細胞からDNAのような核酸などの分子を得るために適切に用いられる。
【0038】
上昇した温度および圧力で1つ以上のマイクロ精製カードにおいてサンプルを調製するために適切なシステムも提供される。本発明のシステムは、マイクロ精製カード上のサンプルローディングインレットに対して圧力下で流体接続され得るサンプルインプット流体接続と;マイクロ精製カード上で溶出インレットに対してサンプルローディングインレットへ圧力下で流体的に接続され得る溶出インプット流体接続と;このサンプルインプット流体および溶出インプット流体接続を受容するようにマイクロ精製カードを位置的に保持し得るカードホルダーと;を備える。このカードホルダーはまた、マイクロ精製カードを受容するためのスロットを備え得る。
【0039】
さらに、このカードホルダーは、このマイクロ精製カード上の溶解領域を少なくとも約90℃まで加熱し得るヒーターと、このマイクロ精製カード上の分子捕獲領域を約40℃より高くまで加熱し得、かつこの分子捕獲領域を30℃未満まで冷却し得る熱制御装置とを備える。このシステムはまた、マイクロ精製カード上の溶出チップを出て行く流体を受容するための2つ以上の流体収集レセプタクルを交互に位置決めし得る位置決め可能な流体収集ホルダーを備える。
【0040】
このシステムは、マイクロ精製カード上の種々の流体構成要素の加熱および冷却を制御するために、ならびにカードの流体構造内の流体の圧力を制御するために用いられ得る。従って、流体は、マイクロ精製カードに入ることも出ることも両方可能である。出て行く場合、この流体は、1つ以上のレセプタクルに収集され得る。例えば、流体収集レセプタクルの1つは、廃棄流体収集レセプタクルであってもよく、そしてもう一方は、溶出流体レセプタクルであってもよい。ここで、位置決め可能な流体収集ホルダーは、この溶出チップから廃棄流体レセプタクルへ出て行く廃液を受容するように、またはこの溶出チップから溶出流体レセプタクルへ出てくる溶出流体を受容するように交互にスライドして配置されてもよい。マイクロ精製カードの溶出チップに対して収集バイアルの位置を操作することによる流体収集の多くの他のバリエーションが想定される。
【0041】
このシステムは、マイクロ精製カード上の分子捕獲領域を少なくとも約95℃および代表的にはそれ以上まで加熱し得る1つ以上の熱制御装置を備えてもよい。冷却デバイス、例えば、熱電冷却器も、任意の1つ以上の流体構成要素、例えば分子捕獲領域を約−20℃程度の低い温度まで冷却するために設けられてもよい。他の実施形態では、このシステムのヒーターは、マイクロ精製カード上の溶解領域を少なくとも約95℃、または少なくとも約100℃、または少なくとも約110℃、または少なくとも約120℃、または少なくとも約130℃、または少なくとも約140℃、または少なくとも約150℃まで加熱し得る。
【0042】
他の実施形態では、このシステムの流体接続は、少なくとも約10psi、または少なくとも約20psi、または少なくとも約40psi、または少なくとも約80psi、または少なくとも約120psi、またはさらに少なくとも約150psi、またはさらには少なくとも約200psi、またはさらに少なくとも約250psi、またはさらに少なくとも約300psi、またはさらに少なくとも約350psiまでマイクロ精製カードの内側の圧力を増大し得る。高圧の配管およびカップリング継ぎ手がこのような操作に容易に利用可能である。
【0043】
さらなるサンプルカードの在庫の(inventory)構成要素およびシステムがこのシステムに包含され得る。例えば、このシステムはさらに、本明細書に上記されるような、バーコードまたはRFIDタグなどの識別タグを読み取るためのスキャナーを備えてもよい。
【0044】
上昇した温度および圧力で使い捨て可能なマイクロ精製カードを用いてサンプルから分子を収集するために適切であるシステムも提供される。これらのシステムは、マイクロ精製カード中のサンプルを調製するために適切な1つ以上の使い捨て可能なマイクロ精製カードおよびシステムを備える。これらのシステムでは、このマイクロ精製カードは、射出成形カードを備え、このカードは、1つ以上の細胞を含むサンプルから分子を抽出し得る複数の流体構成要素を備え、この複数の流体構成要素は、溶解領域と流体連通され得るサンプルローディングインレットを備え、この溶解領域は、フィルターと流体連通され得、このフィルターは、分子捕獲領域に対して1つ以上の分子を流体連通し得、この分子捕獲領域は、溶出インレットおよび溶出チップと流体連通し得る。適切なシステムは、マイクロ精製カード上のサンプルローディングインレットに対して圧力下で流体接続され得るサンプルインプット流体接続と;マイクロ精製カード上で溶出インレットに対してサンプルローディングインレットへ圧力下で流体的に接続され得る溶出インプット流体接続とを備える。このシステム上のカードホルダーは、このようなサンプルインプット流体および溶出インプット流体接続を受容する位置にマイクロ精製カードを保持し得る。適切なカードホルダーは、マイクロ精製カード上の溶解領域を少なくとも約90℃まで加熱し得るヒーターと;マイクロ精製カード上の分子捕獲領域を約40℃より上まで加熱し得、かつこの分子捕獲領域を約30℃未満まで冷却し得る熱制御装置とを備える。このシステムはまた、この溶出チップから出てくる分子を含む溶出流体を受容し得る位置決め可能な流体収集ホルダーを備える。本発明のシステムは代表的には、マイクロ精製カード上の分子捕獲領域を少なくとも約95℃まで加熱し得、この分子捕獲領域を約−20℃まで冷却し得る1つ以上の熱制御装置を備える。適切なシステムはまた、1つ以上のマイクロ精製カードを受容するためのスロットを有する1つ以上のカードホルダーを備える。
【0045】
カードベースのサンプル調製システムを用いる分子収集の方法も提供される。これらの方法は、細胞および第一の緩衝液を含むサンプルを圧力下で、マイクロ精製カード上でサンプルローディングインレットから溶解領域に対して流体連通させる工程と;この溶解領域中のサンプルを、周囲圧力よりも大きい1つ以上の圧力で約100℃から約150℃の範囲の温度まで加熱して、細胞を溶解して溶解された細胞フラグメントと分子とを生じる工程と;約90℃より高い温度でこの溶解された細胞フラグメントから分子を濾過する工程と;分子捕獲物質またはデバイスを用いてこの濾過された分子の少なくとも一部を捕獲する工程と;溶出チップを通じて第二の緩衝液を用いてこの捕獲された分子の少なくとも一部を溶出させる工程であって、この第二の緩衝液がこの第一の緩衝液と同じかまたは異なっている工程と;この溶出された分子および第二の緩衝液の少なくとも一部を、位置決め可能な流体収集ホルダー中に収集する工程と;を包含する。
【0046】
本発明の方法はさらに、マイクロ精製カード中でサンプルを調製するために適切なシステム中にこのマイクロ精製カードを挿入する工程を包含する。例えば、マイクロ精製カードを最初に生物学的サンプルで充填してキャップした。次いでこのカードをカードホルダーのスロットを通じて挿入し、これで、カード上の種々の液体構成要素の温度を制御し、同様に、このカード内の流体接続および圧力を維持する。このシステムによって提供される流体接続は代表的に、細胞を含む生物学的サンプルなどのサンプルを操作するために適切な緩衝液を提供し得る。例えば、緩衝液の1つまたは両方がDNase、RNAse、インヒビター、塩、緩衝液、界面活性剤、水、有機溶媒、酸、塩基またはその任意の組み合わせを含むべきであるかもしれない。
【0047】
カードベースのサンプル調製システムを用いて分子を収集するための方法も提供される。これらの方法は、サンプルローディングインレットからマイクロ精製カード上の加熱領域に対して圧力下でサンプルを流体的に連通させる工程を包含する。このサンプルを、周囲圧力よりも大きい1つ以上の圧力で約100℃から約150℃の範囲の温度までヒーター領域中で加熱して、このサンプルの少なくとも一部を破壊する。この破壊されたサンプルフラグメントは、分子を生じ、次いでこの分子を約90℃より高い温度で濾過する。この方法はさらに、分子捕獲物質またはデバイスを用いてこの濾過された分子の少なくとも一部を捕獲する工程と;溶出チップを通じてこの捕獲された分子の少なくとも一部を溶出する工程と;位置決め可能な流体収集ホルダー中でこの溶出された分子の少なくとも一部を収集する工程とを包含する。これらの方法はさらに、別の実施形態では、マイクロ精製カード中でサンプルを調製するために適切なシステム中にマイクロ精製カードを挿入する工程を包含し得る。
【0048】
分子は、サンプルを溶解するために必ずしも加熱を必要としないカードベースのサンプル調製システムを用いて、溶解された細胞から収集され得る。例えば、1つの方法は、サンプルローディングインレットからマイクロ精製カード上の溶解領域に対して圧力下で、細胞および第一の緩衝液を含むサンプルを流体的に連通させる工程と;周囲圧力よりも大きい1つ以上の圧力で、溶解剤、超音波処理、またはその両方を用いてこの溶解領域においてこの細胞を溶解して、溶解された細胞フラグメントおよび分子を生じる工程と;この溶解された細胞フラグメントから分子の少なくとも一部を濾過する工程と;分子捕獲物質またはデバイスを用いてこの濾過された分子の少なくとも一部を捕獲する工程と;溶出チップを通じて第二の緩衝液を用いてこの捕獲された分子の少なくとも一部を溶出させる工程であって、この第二の緩衝液が、第一の緩衝液と同じであるかまたは異なっている工程と;位置決め可能な流体収集ホルダー中でこの溶出された分子および第二の緩衝液の少なくとも一部を収集する工程とを包含する。この方法は、RNA、mRNA、またはそれらの任意の組み合わせなどの分子を真核生物細胞から回収するために特に有用である。適切なRNaseインヒビターが溶解領域に存在する。さらに頑丈な細胞、例えば、細菌の芽胞は、上昇した温度(最大約150℃、代表的には約90℃〜約150℃の範囲)で適切に溶解される。分子、例えばRNAを濾過するために所望される特定の実施形態では、約90℃より高い温度である。
【0049】
種々の緩衝液、例えば、溶解剤が、サンプルフラグメントの破壊を補助するためにこの方法に含まれてもよい。例えば、1つ以上の緩衝液は、DNase、RNAse、インヒビター、塩、緩衝液、界面活性剤、水、有機溶媒、酸、塩基またはその任意の組み合わせを含む。
【0050】
一実施形態では、生物学的サンプルから核酸を単離するためのMCPシステムを意味するシステムが提供される。このMCPシステムは、使い捨て可能なMCP中に組み込まれたサンプルバイアルから、MCP上の組み込まれた溶解領域へ、ゲノムDNA、総RNAまたはmRNAに特異的な安定化緩衝液中に分散された生物学的細胞を流す。次いで、この細胞を溶解して、一方では同時に核酸を溶解領域内で約130℃で濾過して流して濾液を形成する。次いで、この濾液(核酸、細胞由来の非核酸分子、および安定化緩衝液を含む)は、MCP上に組み込まれたセルペンチン冷却領域を通じて流れる。次いで、この冷却された濾液は、このカードに結合されたピペットチップ内に位置する捕獲領域を通じて流れる。この捕獲領域は、濾液が捕獲媒体を通過するにつれて捕獲される核酸のタイプに依存して種々の捕獲媒体を含む。ガラスファイバーを、ゲノムDNAまたは総RNAを捕獲するための捕獲領域で用い、オリゴ−dT連結セルロースを、mRNAを捕獲するための捕獲領域中で用いる。次いで、この捕獲された核酸を洗浄して不純物を除く。第一の洗浄は、カオトロピック塩、80%エタノール、および水を約20℃で含む水性緩衝液を用いる。第二の洗浄は、80/20のエタノール/水を用いて、緩衝液および塩を約20℃で除去する。最終工程では、捕獲された核酸を、RNaseなしの水を約65℃〜約95℃の範囲の温度で溶出させることによって、捕獲物質から外部サンプル収集バイアルに遊離させる。
【0051】
実施例および追加の例示的実施形態
図1〜図29は、本発明の種々の実施例および実施形態を図示する。これらの図では、「Lysix」または「Lysix(商標)」という用語は、MCPまたはマイクロ精製カードという用語と交換可能に用いられ得る。以下の表は、このセクションで考察される種々の構成要素に対する参照の数字を列挙する。
【0052】
【表1】
【0053】
実施例−マイクロ精製カード処理(図1〜図5)
図1〜図5を参照、ここに本発明の例示的マイクロ精製カードを用いてサンプルを処理する方法を記載する。
【0054】
サンプル処理フロー
1)サンプルを、マイクロ精製カード100にロードする。カード上のバイアル(サンプルローディングインレット1)を標準的なラボのバイアル後にモデルにする。サンプルをローディング時にサンプル中にカード内へピペッティングしてそのままにする[サンプルを1にロードする]。
2)サンプルリッドを閉鎖して、穿孔がサンプルの溢流を防ぐ。穿孔はまたクロストークも制限する[3のキャップおよび9の穿孔]。
3)カードをこのシステムに挿入する(図4、図5Aおよび図5B)。カードがレールにそってそのスライドに挿入されるにつれ位置内にロックされる。捕獲領域の加熱エレメントはカードに対して圧入される[図5Bにおいて上の「MCPローディング」に示される]。
4)作製された流体接続[1および2で行われた]。
5)係合された熱ヒーター[ヒーターは5に対して圧する]。
6)洗浄位置にセットされた収集バイアル[13の頂部にスライドする]。
7)洗浄/ブロック緩衝液で事前に湿された捕獲物質[2の接続から]。
8)事前加熱された熱領域(95、および40〜50℃)[5および14で]。
9)溶解緩衝液はサンプルをフィルター/溶解領域を通して押す[1での流体接続を通じて]。
10)捕獲物質中の分子の選択的なトラッピング[14で]。
11)捕獲されたサンプルでの捕獲領域を洗浄するために用いた洗浄/ブロック緩衝液。これは、冷却された収集エリアを用いてもよい[2からの流体のフロー、14で熱電冷却器(TEC)から冷却]。
12)廃棄から収集へ収集バイアルの変更[13にそって底の方にスライドする]。
13)捕獲領域上に導入された溶出緩衝液[流体接続2を通じて]。
14)捕獲物質を加熱して結合サンプルを遊離する[2を通った流体および14での加熱]。
15)溶出緩衝液をポンピングしてサンプルを新しいバイアル中へ溶出する[14から放出される]。
16)カードを取り外して廃棄する。廃棄物は、他の生体分子を抽出するために処理してもよい。例えば、タンパク質または未結合の核酸。
【0055】
実施例:マイクロ精製カード。本発明のマイクロ精製カードの例は、クレジットカードのサイズで消費できる。サンプルをロードして、溶解し、濾過してマイクロ精製カード上にトラップする。このカードは、2つの流体インプット、1つのアウトプット、および2つの熱制御領域を有する。これらのインプットおよび熱領域は、基部システム中で接面する。
【0056】
製造。適切なマイクロ精製カードを、ポリプロピレン(PP)を用いて射出成形する。ポリカーボネート(PC)環状オレフィンコポリマーまたは環状オレフィンポリマーも用いてもよく、ポリプロピレンよりも高い使用温度を有する。
【0057】
流体接続。サンプルバイアル(サンプルローディングインレット)をサンプルカード中に組み込み、このサンプルバイアルのサイズおよび形状は標準的な研究室のバイアルと同様である。このシステムにそったカードを用いて、サンプルを処理するのに必要なユーザーの工程を減らす。カード上のサンプルバイアル流体接続は、穿孔したキャップを通じて行う。バイアル中へのサンプルを密閉するだけである代表的なサンプルバイアルとは異なり、マイクロ精製カードのキャップは、加圧された流体のフローを可能にする穿孔を有する。キャップが密閉されるとき、この穿孔は十分に小さく、表面張力によって流体のフローが限定される。流体接続をクラウンの頂部に対して作製するとき、このキャップを通じた流体のフローは圧力ポンピングで生成される。このデザインの利点は、サンプルのキャリーオーバー(持ち越し)の機会を大きく低減させるということである。キャップ中の穿孔によって、サンプルと流体接続との間の障壁を作製する。これが、サンプルの間の流体接続の浄化の必要性を排除し得る。カードの頂部で圧力フィットによってインプット流体接続を行う。実験によって、このタイプのフィットは、緩衝液/洗浄溶出インレット2に対して容易に適合される、少なくとも100psiで取り扱い得ることが示されている。上記のとおり、バイアルキャップ3は、サンプル間の交差汚染を防ぐためにクラウンおよび穿孔9を有する。
【0058】
アウトプット流体接続。アウトプット流体接続は、出口チップ(溶出チップ7)を通じて作製される。これは、射出成形を用いて容易に提供される。溶出チップの内側のデッドボリュームは望ましくは、抽出された生体分子ができるだけ濃縮されるように、できるだけ減少される。このチップの製造は、ピペットの先端に匹敵する。この実施例における溶出チップのデッドボリュームは約1μlである。
【0059】
フィルターおよび溶解領域。濾過は、例えば、圧力制限のために、種々の流体チャネルの目詰まりを防ぐのに必要であり、また分子捕獲領域の目詰まりを妨げることも補助する。1実施例では、サンプルを含む細胞を溶解し、次いでその物質を濾過して、その後に、これをカード中で任意のサイズの選択性領域にとる。
【0060】
濾過能力は、フィルターの表面積および細孔サイズによって決定され得る。表面積が増大するにつれて、フィルターの能力も増大する。また細孔のサイズが増大するにつれて能力はやはり増大する。1インチの0.22μmのフィルターは、目詰まりするまでに二百万個の溶解されていない細胞を取り扱い得る。サンプルあたり約百万個個の細胞を取り扱うということは、約500mm2の表面積に等しい。
【0061】
濾過なしでは全ての細胞がおそらく溶解されない。フロー・スルー(貫流)のみの中の細胞の溶解(濾過なし)は、上昇した温度での滞留時間に依存する。これによって問題が生じる。なぜなら、サンプルの上昇した温度が長いほど損傷が多く、目的の生体分子にされるからである。しかし、サンプルの流速が速すぎる場合、細胞のわずかな画分しか溶解されない。本発明では、溶解領域は、同様に濾過能力を有する。これによって、従前の技術と比べて多くの利点が提供される。述べられたとおり、細胞の溶解は部分的には、温度での時間に依存する。溶解エリア中の濾過領域に置くことによって、溶解されていない細胞はトラップされて、溶解が生じるまで上場した温度で保持される。細胞から放出される任意の生体分子がフィルターを通過し得るが、必要より長時間高温に曝されることはない。これはより多くの細胞が溶解するほど、目的の生体分子に対する損傷が少ないことを意味する。これはまた、溶解領域に達する前に放出されている任意の生体分子が、上昇した温度を自由に急速に通過することを意味する。
【0062】
このフィルターはサンプルから細胞壁または細胞膜を取り除き、それらが捕獲領域下流を目詰まりさせることを防ぐ。
【0063】
フィルターメンブレンの表面を化学的に修飾してもよい。これによって、「ガーベッジ(garbage)」生体分子のさらに特異的な抽出が可能になり、これで本質的に事前浄化の特徴が加わる。
【0064】
分子捕獲領域。本実施例の捕獲領域に有用な物質としては、分子に結合するかまたは抽出し得る任意の物質が挙げられる。1実施例では、メンブレン上の分析物の沈殿に基づく精製について、これは天然の物質、例えば、微結晶性セルロースまたはシリカであってもよい。あるいは、ハイブリダイゼーション反応については、オリゴdTなど、捕獲物質は、捕獲オリゴヌクレオチドの共有結合を可能にするために、アルデヒドもしくはグリシダール、またはアミン化学を受容するように官能化されてもよい。アミンをアプタマーとともに用いてもよい。これについての共通の物質は、シリカである。なぜなら、これはマイクロアレイスライドのベースであるからである。両方の末端結合を有するポリマー物質を用いてもよい。適切なポリマー物質としては、エチレングリコールジメタクリレートおよびグリシダール(またはアルデヒド)メタクリレートを用いることが挙げられる(架橋された官能的な表面が露出される場合)。官能基を有する他の物質は、ラテックス、PTFE,ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルトルエン(PVT)、スチレン/ブタジエン(S/B)コポリマー、スチレン/ビニルトルエン(S/VT)コポリマー−プレイン(非染色)、疎水性(硫酸表面基)である。http://www.bangslabs.com/products/bangs/guide.phpを参照のこと。
【0065】
捕獲物質は、約35%の空隙率(すなわち、65%の固体基質)を有する固定マトリクスであってもよい。空隙率が大きすぎれば、目的の生体分子とプローブとの間の相互作用はありそうにない。空隙率が背圧増大を減少するにつれて、極めて小さい空隙率によって、この物質を通じてサンプルが流れる能力が遅くなり得る。
【0066】
キャピラリーでの問題は、製造可能性である。キャピラリーは大いに効果的であって、サンプルの溶出のためのデッドボリュームは極めて小さいが、それらは、大量生産が困難である。捕獲エリアは、生体分子がトラップされ遊離され得るということを保証するように緊密に制御される必要がある。キャピラリーでの問題の1つは、その物が作成される領域を規定することにある。ポリマー材料は、このキャピラリーの末端には延びられない。なぜなら、温度制御は、キャピラリーの末端まで行えないからである(これによって溶出は極めて小容積で妨げられる)。この物質(材料)が溶出の間に加熱されない場合、サンプルのうちある程度は、未制御の領域における物質に結合される。キャピラリーの第二の問題は、その脆弱性である。任意の衝突や鋭い角によってキャピラリーは破壊され得、カード/サンプルが失われる。
【0067】
分子捕獲領域23は、マイクロ精製カード100のチャネルの内側に作製され得る。次いで、捕獲物質がオープンチャネル中に注入されるか挿入される。1つの構成では、第一のフリット26が、緩衝液/洗浄チャネルに挿入される。次に、捕獲物質(例えば、オリゴdTまたは他の特異的な核酸配列が結合した官能化されたシリカビーズ)をフリットの後ろに流す/射出する。第二のフリット26をシリカビーズの物質の後ろに挿入する。このフリットを用いて捕獲領域を含みかつ作製させる。
【0068】
温度制御領域。本実施例では2つの別個の温度制御領域がある。これらの領域の温度制御は、生体分子の溶解/変性および抽出に必要である。
【0069】
溶解および変性。溶解領域を、市販の適切な温度制御装置を備えている、このシステム(示さず)中に装着された抵抗性ヒーターによって加熱する。
【0070】
溶解および変性のための最小温度は90℃である。下限は、捕獲物質に入る前に核酸を変性する必要に依存する。サンプルがカードに挿入される前に溶解される場合でさえ、サンプルは変性のために加熱されてもよい。上限は、カードの材料および処理されているサンプルによって決定される。射出等級PPは、約100〜130℃という高い末端温度を有し、射出等級PCは、約150〜160℃限界という高い末端温度を有する。より頑丈なサンプルについては、溶解温度を上昇させて、より多くの細胞が破壊されることを確実にし、より多くの不安定な細胞が生体分子統合性を維持することを補助するためには低温にする。
【0071】
カードがベースシステムに挿入された後、抵抗性ヒーターをこのカードの溶解領域に接触して圧迫する。この領域はまた、TEC、または他の考え得るヒーターによって制御されてもよい。TECを用いない特定の理由は、この領域では冷却は必要ないということである。一旦溶解が完了すれば、ヒーターを切って、その領域を、放射によって冷却する。加熱/冷却領域の気流制御も用いてもよい。
【0072】
溶解領域の第二の熱構成要素は、捕獲領域に入る前のサンプルの変性である。これによって、生体分子の結合の増大を達成することを補助する。サンプルが変性されない場合、捕獲領域におけるハイブリダイゼーションに対してオープンでありかつ受け入れられる機会が減る。変性のための最小温度は90℃である。溶解および捕獲熱領域にはわずかな重複がある。これによって、サンプルが捕獲物質に到達する前に冷却されることを防ぐことが補助される。
【0073】
捕獲物質熱制御領域はまた、TECを用いることによって加熱後に冷却される。冷却は、選択された生体分子の適切なハイブリダイゼーションのために用いられる。また、ハイブリダイゼーション後に、サンプルを冷却して、さらなる化学反応または変性を妨げる。
【0074】
捕獲物質。いかなる特定の理論によっても束縛されないが、捕獲物質の温度制御は、生体分子の特異的な抽出を制御する傾向である。先行技術は、全核酸(Nucleic Acids)(NA)をトラップするために表面エネルギー相互作用を用いている。高い塩緩衝液では、NAは優先的にシリカ荷電表面に結合する。塩が緩衝液から除去されるにつれて、NAは遊離して、さらなる処理の準備ができる。この方法での問題は、目的のものでもない全てのNAを収集するということである。このプロセスはまた、温度を制御することによって改善され得るが、そこに特異性はない。
【0075】
この分野でしばしば用いられる他の方法は、固定表面に結合されたオリゴdTを利用する。最も一般的な基質はセルロースおよび磁気粒子である。これによってより特異的なハイブリダイゼーションが可能になるが、この方法は、サンプルまたは基質の温度を緊密に制御はしない。これは、サンプルおよび基質の緊密な熱制御であり、これによってmRNAの極めて特異的な抽出が可能になる。流体サンプルの熱特異性は、フロー・スルー(貫流)環境を用いて緊密に制御され得る。流体の熱容量は、容積の増大につれて制御を減らし始める。
【0076】
マイクロ精製カードシステム。これは、マイクロ精製カードを保持して処理するベースである。このシステムのほとんどの特徴は、本明細書において上記に記載されている。
【0077】
収集バイアル。2つの収集バイアルをフルのサンプル処理に用いる。ローディングトレイの作動によって、同じシステム中の別個の流体の収集が可能になる。第一は、全ての未結合のNAおよびタンパク質を溶解および洗浄緩衝液の組み合わせにおいて収集する廃棄バイアルである。抽出されないどの生体分子もさらに処理し得ることが可能である。廃棄バイアルの使用はまた、任意の廃棄を含む。このバイアルの容積は5〜15mlのいずれかである。2mLのサンプルは、約7mLの廃液を生じると見積もられる。(2mLのサンプル 4mLの溶解緩衝液、および1mLの洗浄/ブロック緩衝液)。この第二のバイアルは目的の濃縮された生体分子を捕獲するためである。溶解および浄化が完全である場合、サンプル収集バイアルを、溶出チップの端部にもってくる。この方法で約10μLという小容積をカードから溶出させて、バイアルに捕獲し得る。
【0078】
ユーザー・インターフェース。このシステムの前端部は簡易でかつ使いやすい。このカードは1方向に挿入される。流体接続をシールした後、ユーザー(使用者)は、溶解加熱領域を適所でロックするレバー/ダイアルを作動させる。実行ボタンを押して、サンプルをきれいに処理して、溶出させる。
【0079】
図6A〜図6E。断面積の概観。底部の様子(6E)は、マイクロ精製カード100の分解図を示しており、フィルター16およびフィルターキャップ15を伴う。マイクロ精製カード100の断面I−I、J−JおよびH−Hも図示する。
【0080】
図7。断面H−Hの拡大。これは、サンプルがフィルターおよび流体接続を捕獲領域に出る場合を示す。このポイントでは、いくつかの流体のフローがフィルター(16)をやはり横切り得る。ほとんどのサンプルは、フィルターを通過して、支持リブによって作製されたチャネルを通って流れる。捕獲物質に対する流体接続は(6)で作成される。射出成型のための支持体としては、このより大きい中空が必要である。(6)では溶出および洗浄の緩衝液は(2)から接続される(図面なし)。
【0081】
図8。断面I−Iの拡大。このサンプルは、サンプルバイアル(1)にロードされる。バイアルの端部は、フィルターおよび加熱領域を通じた流体接続を有する(4)。このフィルターキャップ(15)はフィルターを適所で密閉する(次の略図を参照のこと)。射出成型のためには(4)をわずかに大きく作製して、(1)および(4)へのチャネルを作製する成形ピンを受容する。
【0082】
図9。断面J−Jの拡大。フィルター領域に導入されているサンプルは(4)を通じてフィルター(16)を横切って流れる。このフィルターは理想的には0.22μm〜0.45μmであるが、空隙率を増大してより大きい粒子を許容してもよいし、または空隙率を低下させてより小さい粒子をトラップしてもよい。このフィルターは、リブ(17)によって適所に保持され、これによってフィルターが壊れず、かつ全体が一緒に流れることを防ぐことが確実にされる。
【0083】
図10。本発明のマイクロ精製カード100の実施形態の断面の斜視図を示す。この断面図は、図面の右側である溶出インレットにそっている。この図面は、分子捕獲領域がマイクロ精製カード中に挿入され得る方法を記す。第一に、不活性なフィルタープラグを26の位置で第一の穴に詰める。引き続いて、適切な分子捕獲物質またはデバイス、例えば、粉末を、適切なプローブまたは皮下注射針を用いて(例えば)、溶出捕獲領域23に導入する。引き続き、第二の不活性なフィルタープラグを、分子捕獲領域の後ろに詰める。この図はまた、溶出チップが小さい空隙容量を有することを示す。またこの図では、フィルターキャップとメンブレンフィルターとの間に位置するライセンシング領域も示される。このメンブレンフィルターは、このカードに溶着されていることが示される。
【0084】
図11。溶出カートリッジのワイヤフレーム図面。この図は、溶出カートリッジの内径を示す。この捕獲領域(23)は、カートリッジ内に含まれ、溶出チップ(24)は、容積を有意に減少させるように製造されてもよい。捕獲領域の内側には多孔性物質が充填され、この物質は特定の種の抽出のための種々の化学物質で官能化され得る。特定の実施形態では、層状のマイクロアレイが形成されるように、捕獲領域に多孔性物質の層を充填する。溶出カートリッジの材料は変化し、ほとんどの場合、周囲のカードと同じであるが、マイクロアレイの場合には、特に光学的に透明な材料から作製される。
【0085】
図12Aおよび図12B:溶出カートリッジの充填。捕獲物質(14)は溶出カートリッジ(23)の捕獲領域中に詰められ/充填され/流される。このカートリッジの別の充填物は、適所でこの物質と架橋される。上の図では、捕獲物質は、マイクロアレイとして描かれるが、全ての断面は、同じ化学的処理を有し得る。マイクロアレイ捕獲物質の形成は、お互いの頂部上の平坦な物質のアレイを層状にすること、およびついでこのスタックからプラグをコアリング(芯抜き)することによって達成され得る。あるいは、この捕獲物質は、カートリッジ中に形成/挿入され、その後に機械的なスポッター(spotter)で標識を付けられる。この実施形態では、カートリッジとして架橋またはゾル・ゲル物質を、チップを通じて吸引し、適所に固定してもよい;これは複数のカートリッジ(例えば、96または384ウェルのフォーマット)をローディングするために特に有利である。
【0086】
溶出チップ(24)は、デッドボリュームを制限して、溶出されたサンプルを収集バイアルに向けるように設計する。収集物質は、熱的に制御して目的の分子を遊離する必要があり得る。これは、核酸の溶出に関しては特にあてはまり、収集物質からNAを熱的に遊離させる。サンプルの溶出はまた、緩衝液の変化(例えば、ハイブリダイゼーションの親和性は、低塩緩衝液中では減少される)によって達成されてもよい。
【0087】
収集物質および溶出カートリッジ捕獲領域は、捕獲分子のデッドボリュームを減少するように設計されている。捕獲物質が示す総デッドボリュームが約30μlであれば、チップは10μlのデッドボリュームを有する。
【0088】
図13。溶出カートリッジ21を有するマイクロ精製カード。このデザインによって、将来のカートリッジのためにアセンブリはさらにモジュール構成にされ、かつさらに容易に変化される。溶出カートリッジ(21)は、溶出カートリッジスロット(22)に挿入され、完全に挿入されるとき、これはこのカードの以前の図と同じに見える。これは、種々の方法、末端での熱結合、UV接着、圧力フィットシーリング(pressure fit sealing)で、密閉され得る。
【0089】
図14は、分子捕獲領域カートリッジを含む本発明のマイクロ精製カードの分解斜視図の実施形態を示す。この実施形態では、この分子捕獲領域カートリッジは、複数のプローブ(陽性コントロール、陰性コントロールおよびTentacle(商標)プローブを含む)を含むマイクロアレイを備える。
【0090】
図15:サンプル収集バイアルと接されている溶出チップ。これは溶出チップ(7)の2つの異なる角度の拡大であって、サンプル収集バイアル(11)と接している。溶出チップとサンプルバイアルとはわずかな角度であることに注意のこと。これによって、チップからバイアルへのサンプルの移動が容易になる。
【0091】
図16A:位置1:収集バイアルは、ローディングレール(12)に沿ってホルダーから挿入されても、または除去されてもよい。このホルダーは、容易なアクセスのためにこのカードからバイアルローディングハンドル(20、図なし)を用いて挿入されて、このシステムから引き出される。収集バイアルホルダー(19)は、サンプル(11)および濾液(10)バイアルの両方を保持する。
【0092】
図16B:位置2:収集バイアルホルダーが完全に挿入されるにつれて、濾液バイアルは、溶出チップの下に整列される。これは位置3と同じイメージで、ちょうど90度の角度である。
【0093】
図16C:位置3:位置2の90度バージョン。廃棄バイアル(10)は溶解液および洗浄溶出液の収集のために溶出チップ(7)の下に整列される。この図面では、溶出チップは濾液バイアルの頂部からほぼ3mmであり、これは表示の目的のためだけであって、そのチップは濾過された溶離液の飛び散りを制限するために1.5mm内である。
【0094】
図16D:位置4:ホルダーは、位置変化レール(13)の上で45度の角度にそってスライドして上がり、溶出チップ(7)は、コレクションバイアル(11)の側面に接触される。この角度は45度に設定されて濾液バイアル(10)に当たらず、収集バイアルの一端と接触する。この相互関係のさらに詳細な図面は以前に示した。
【0095】
マイクロ精製カードの操作の説明。マイクロ精製カードの1例は、細胞の溶解と、複雑な混合物中で生体分子の抽出および濃縮のためのトラッピング物質とを組み合わせる。このマイクロ精製カードは、流動条件下でサンプルを過熱する。過熱は、流動の間にサンプルを加圧することによって達成される。さらにキャピラリー中でフロー(流動)を用いることによって、温度、およびより詳細には温度に対する時間は容易に制御される。圧力は、小径のキャピラリーの形態での流動制限を用いることによって達成され得る。この同じ流動制限は、キャピラリー中で捕獲領域を利用することによって達成され得る。
【0096】
ポリマー物質は、トラッピングエリアのデッドボリュームを最小にして、結合事象のための拡散距離を短くし、サンプルと修飾された表面との間の相互関係のための表面積を増大する。単量体前駆体の1つとしてグリシジル(Glycidal)連結メタクリレートを用いることによって、その表面は、アミン連結化学を用いて容易に修飾される。mRNAをトラップする場合、オリゴdTに連結されたアミンをポリマー物質表面に結合させる。ポリマー物質とは別に可能であるのは、キャピラリー中の捕獲領域を形成するためのシリカビーズの使用である。これはまた、表面が修飾しやすいので有利であり得る。シリカ表面の修飾をカバーしている初期の特許の多くは、失効しており、使用は自由である。ポリマーのモノリシック物質もまた用いられ得る。
【0097】
捕獲モジュールに対して溶解モジュールを接続することに取り組む必要がある程度考慮される。第一に、溶解中のいずれの時点でも、溶液中で溶解されない余分な物質が生成される。例としては、細胞膜およびサンプルの増殖または収集の間に用いられている任意の物質である。これらの粒子は、捕獲領域を目詰まりさせることおよび組み込まれたデバイスを通じたサンプルの流動を妨げることによって問題を生じ得る。望ましくない粒子が捕獲領域に達することを防ぐために、サンプルを濾過する必要がある。本実施形態では、捕獲物質と類似の細孔サイズを有し得るが、粒子をトラップするためにかなり大きい表面積を有し得る、既製のフィルター(0.5〜2μmの細孔サイズ)を用いた。
【0098】
緩衝液。エチレングリコールおよび水ベースの緩衝液をもちいてもよい。適切な緩衝液は、3〜8のpHを有し得(酸は、開いた芽胞を破壊するために有用である)、ここで界面活性剤は容積あたり約0.5%のSDSの有無である。Trisおよびリン酸塩が緩衝剤として用いられ得る。
【0099】
マイクロ精製カードおよびシステムを用いるための手順。適切な緩衝液にサンプルを移す(前に記載されたとおり、これは代表的には7というpHでリン酸緩衝液である)。マイクロ精製カードの頂部におけるピペットサンプル(以前の図面)。本実施形態は、10μL〜1mLのサンプルを取り扱い得、ここで適切な容積は200〜500μLである。サンプルをローディングした後、このマイクロ精製カードをポンプに対して液体接続する。これは、サンプルがロードされたフィッティングに対してシリンジを接続することによって達成され、このシリンジはルアー・ロックフィッティングで接続される。この流体のフローは、シリンジポンプ中にシリンジを入れることによって発生される。(シリンジおよびシリンジポンプの両方とも市販されている)。
【0100】
サンプルを、サンプルローディングから溶解領域に強制的に流す。この溶解領域を、100〜150℃の温度に熱制御する(抵抗加熱またはTECによる)。必要な温度は、溶解されている生物学的物質に依存する。加熱はまた、NAの塩基対の長さを制御するために用いられてもよい。溶解領域における滞留時間は約45秒である。溶解領域の長さは3〜5cmのいずれかである。サンプルは、360/150μmの融合シリカキャピラリーを通じて流れる(ポリミクロンから)。
【0101】
溶解後にサンプルを、フィルターを通して送って溶解物に残るどの粒子も排除する。この代表的なフィルターサイズは0.2〜5μmである。(フィルターは、既成の構成要素である)。このフィルターを加熱して、可溶化されたNAが未変性のままであり、フィルターにくっつかないことを確実にする。温度を90〜100℃に制御する。
【0102】
次にこのサンプルを捕獲領域内に流す。捕獲領域は、2つの目的を果たす;第一は、溶解領域中でサンプルの結合を妨げるのに必要な圧力を生じることであり、第二は、サンプルのトラッピングおよび濃縮である。捕獲領域の細孔サイズと流速との組み合わせで、溶解の間に生成される圧力が制御される。捕獲領域の表面は、mRNAをトラッピングするためのオリゴdT鎖を有するように改変される。この表面はまた、遺伝子の任意の特異的な配列またはスーパーファミリーをトラップして濃縮するように処理されてもよい。サンプルのトラッピングは、特異的なNA配列のハイブリダイゼーション、または全てのゲノムDNAの抽出のための表面エネルギー相互作用によって達成される。
【0103】
NAのさらに十分な抽出を達成するために、温度を制御する。ハイブリダイゼーションの好ましい温度は、45〜55℃である。捕獲領域の断面の表面積が大きければ、3cmの断面で最大10μgまでのNAをトラップすることが可能になる。さらに、トラッピング領域のデッドボリュームは約0.5μLであって、これは、1〜10μLのサンプル容積中で完全に溶出され得る。
【0104】
サンプルの溶出は、ハイブリダイズされたNAを変性する熱を用いて達成される。この溶出緩衝液は、特異的でなく、変化され得る。前の実験では、同じ緩衝液を溶解緩衝液として用い得ることが示されている。しかし、特定の緩衝液がサンプル流動中で後に必要である場合、サンプルを任意の緩衝液中で溶出してもよい。
【0105】
溶解の容易な哺乳動物細胞のためのプロトコール。
【0106】
1.ATA緩衝液システム。このアプローチ(図17)は、室温での溶解およびRNA安定化のためにATA(アウリントリカルボン酸)を用いる。ATA溶解液は、ATA溶解緩衝液(下を参照のこと)中でのホモジナイゼーションによって細胞ペレットから調製される。mRNAを精製するために、ATA溶解液を0.45μmのフィルターを最初に通過させてゲノムDNAを剪断し、細胞細片を除去し、加熱してmRNAを変性し、次いで、オリゴdT支持体を横切って流す。この支持体を洗浄して、ATAおよび混入物(ゲノムDNA、リボゾームRNA、タンパク質、炭水化物、脂質など)を除去し、RNAを溶出する。溶出は、低い塩および熱の組み合わせによって達成する。
【0107】
ATAは、タンパク質−核酸の相互作用の一般的なインヒビターである芳香族の特徴を有する小さいポリアニオン系分子(および赤い色素)である。これは、GuSCNよりも強力なRNaseインヒビターであり得るが、これはまた、ハイブリダイゼーション効率(塩基対合)を減少し得る。ATAは、溶液中で重合化し、核酸模倣物として作用し得、タンパク質結合部位について核酸と競合し、またおそらく芳香族環のスタッキングを通じて、核酸と会合もする。ATAがGuSCNのような「非標的化」変性剤ではなく「標的化された」リボヌクレアーゼインヒビターであるという事実によって、これがより有効なRNA保護剤である理由、およびGuSCNよりも約500倍低い濃度で用いられ得る理由が説明され得る。しかし、マイクロアレイハイブリダイゼーション、PCRまたは他の酵素媒介性反応のいずれかにおいてATAで調製されたRNAの機能はまだ、決定されていない。
【0108】
適切なATA溶解緩衝液は25mMのTris(pH7)、150mMのNaCl、0.1%のTween20、10mMのATAである。この緩衝液では、室温での有効な細胞溶解液は10mMのATAを用いる。ATAによる哺乳動物細胞の溶解は、以前には報告されていない。ATA溶解緩衝液は、同時に細胞を溶解し、かつ、少なくともGuSCN程度有効にRNAを安定化し得る。増大した塩濃度(例えば、500mMのNaCl)が必須であって、さらなるサーファクタント(例えば、SDS、デオキシコール酸塩、サルコシン)またはGuSCNも添加されてもよい。
【0109】
ATAは、溶出の前に除去される。AmbionのRiboPureキットはRNAからATAを効率的に除去し得る。このキットは、TRI Reagent(Phenol,GuSCN、塩混合物)での有機抽出、その後のシリカ膜上の精製を使用する。ATAは、抽出の間、有機相および水相の両方へ分配するようであるが、ただし一方ではシリカ膜を通って流れる。膜から溶出したRNAはATAを含まないようである(赤色なし)。可能性としては、GuSCNは、RNA変性およびRNA結合したATAの解離を促進する。RNAとは異なり、ATAは、GuSCN緩衝液中ではシリカに結合しないようである。
【0110】
2.GuSCN緩衝液システム。このアプローチ(図18)は、従来のGuSCN緩衝液を用いて、オリゴdT上のmRNAを精製する。おそらくmRNAは全強(4〜6M)のGuSCN緩衝液においてはオリゴdTに結合しないので、希釈をする。ATA緩衝液システムについて以前に概説された全ての考慮がここにあてはまる。詳細には、GuSCNは、強力な変性剤でかつPCRインヒビターであるので、溶出前に除去される。GuSCNの除去は、これらの市販のプロトコールにおける2つの異なる緩衝液で達成される。
【0111】
3.一般的考慮。ATAは、10mM(100分の1の濃度)で用いられてもよい。ATAは、GuSCNについて上記されたような希釈工程を要するかもしれない。
【0112】
以下の表は、オリゴdTセルロースベッド容積、および2つの異なる一般的マイクロアレイ標識プロトコールについて必要なパックされた細胞(ペレット)の容積を見積もる。
【0113】
【表2】
【0114】
細胞溶解容積は、溶解緩衝液の有意な希釈を回避し、かつ粘度を減じるために、10×細胞ペレット容積であると見積もられる。洗浄工程は代表的には、3〜10の総容積(ベッドボリューム)を用い、そして溶出は、少なくとも1総容積を要し得る。
【0115】
本明細書に記載される技術は、生物学的な実体、例えば、生物学的な脅威の因子の検出に用いられ得る。
【0116】
MCPシステムは、適切なアッセイシステム、例えば、Tentacle(商標)プローブ、Arcxis Biotechnologies,Pleasanton,CAおよびサンプル・ツー・アンサーシステム(sample to answer system)と組み合わせてもよい。本明細書に記載される場合、適切なMCPサンプル調製システムは、3分程度の時間枠でサンプル溶解および高分子抽出を行い得る。このシステムデバイスおよびマイクロ精製カードは、プッシュボタン操作を用いて全細胞からmRNA、RNAおよびDNAの単離を可能にする。溶解システムのまとめ:1)細菌芽胞、細菌、および真核生物細胞の溶解、2)DNA、RNAおよびmRNAの単離、3)急速サンプル調製のための安価な消費可能なデバイスの構築。
【0117】
細菌芽胞の溶解および核酸の質に対する過熱の効果。図19は、細菌芽胞Bacillus Atropheus(ATR)を示しており、Bacillus thurengensis(BT)を種々の時間の間加圧された過熱チャンバ中で溶解した(A〜J)。溶解チャンバ中の芽胞の滞留時間が延長したので、遊離されたDNAの量は増大した。DNAの量は、A260/280の比によって測定した場合、可変である(K)ことがより長時間観察された。コントロールの芽胞(A&F)は、少量の解放されたDNAを有し、吸光度比は約1.45であって、滞留時間が長くなるにつれて遊離したDNAの量は増大した。DNAの量はまた、ATR(B−E)およびBT(G−J)の両方について1.55程度の高さに増大したが、次いでおそらく、DNAがこの条件下で分解されるにつれて、劇的に減少する(K)。いくつかの研究ではまた、これらの高温条件下でヌクレアーゼインヒビターを用いる影響を示すことを行った。アガロースゲル(L)中でみられるとおり、インヒビターの濃度が増大すれば、核酸(RNA)分解の量が減った。次いで、これらの調製物を洗浄して、インヒビターを除去し、次いで、rtPCR反応で用いて有効であることを示した(M)。この結果、種々の核酸型を遊離する能力、および高品質の核酸を維持するのに必要な条件が示され、引き続き、精製された物質を下流の分析手順で用いる。
【0118】
Tentacle(商標)プローブ。新規なクラスの標識なしの親和性試薬。Tentacle(商標)プローブは、実施可能である。さらなる詳細な考察では、これらのTentacle(商標)プローブは、「Cooperative Probes and Methods of Using Them」Jason A.A.WestおよびBrent A.Satterfield,米国仮特許出願整理番号60/850,958号(2006年10月10日出願)、代理人整理番号ARCX−0004、および国際特許出願番号PCT/US07/63229(2007年3月2日出願)(各々の出願の全体が本明細書において参照によって援用される)に開示される。これらのプローブ分子は、反応速度論を200倍まで、SNP検出における分子正確性を少なくとも345倍まで増大し、これにはほぼ無限の改善という予測された増強がある。それらの協調的な相互作用のおかげで、それらは、典型的な代償なしに、感度、特異性および反応速度論の有意な増強を可能にする。Tentacle(商標)プローブの能力特徴:それらは、有意に高い速度定数で結合して、アッセイ時間を減じる。それらは、一価のプローブ分子よりも590,000倍大きい遺伝子型決定レベルで識別する;それらは、一塩基遺伝子多型(Single Nucleotide polymorphism)(SNPs)の識別のための標準的なプローブ分子(すなわち、Taqman,Molecularビーコン)よりも能力が優れている;それらは、挿入/欠失および可能性としてはフレームシフトの識別について標準的なプローブ分子(すなわち、Taqman,Molecularビーコン)よりも能力が優れている;それらは、増大したステム強度に起因して高いシグナル対ノイズ比を有する;それらは、開発されたアルゴリズムを用いて、より流線型のデザインおよび製造を可能にする;それらは、DNAまたはRNAのために設計され得る;それらは、アレイベースの適用のために固体表面に容易に結合される;それらは、EXO+およびEXO−taqポリメラーゼqPCRの両方で用いられ得る。
【0119】
図20は、Tentacle(商標)プローブのデザインおよび機能を図示する。
【0120】
図21は、Tentacle(商標)プローブでの結果を示す。
【0121】
図22は、Tentacle(商標)プローブを用いた外部試験の結果を示す。
【0122】
図23は、検出システムのデザインおよび製造を示す。
【0123】
検出システム。第一世代の検出システムシステムを示した。このデバイスは、オンボード(on−board)のサンプル調製システムを備え、これは溶解剤、サンプル緩衝液、および関連するポンプを備える。このシステムはまた、協同的なプローブアッセイの検出のための組み込みの分析システムを備える。この全体のシステムは、システム制御データ分析および報告を行う、オンボードのラップトップコンピューターによって制御される。これによって、溶解、緩衝化および分析を含む10分未満のサンプル調製が可能になる。検出システム系のまとめ:1)製造されたマイクロ流体マイクロアレイデバイス、2)作製された携帯可能なシステムのための新規な溶解システム、3)設計されたロバストフィールド作動可能光子計数システム(robust field operable photon counting system)、4)野外試験システム。
【0124】
図24は、MCPをMCPシステムと組み合わせて用いる場合のプロセスを示す。
【0125】
図24bは、カードがMCPシステムによって流体的に制御されるプロセスを示す。
【0126】
図24cは、MCPデバイスのキャップ構成要素のデザインを示す。
【0127】
図25は、複数のMCPデバイスの温度制御のためのアセンブリを示す。
【0128】
図26は、MCPを有するMCPワークステーションの温度制御および流体のインターフェースの第二の図を示す。
【0129】
図27は、本明細書に記載されるMCPおよびMCPシステムを用いるmRNA精製の結果を示す。これらの実験では、約200Kの細胞由来のmRNAの収率は、従来のスピンカラムキットに比較して同等であった(A)。次いで、これらの精製されたサンプルをリアルタイムPCRおよびAgilent Bioanalyzerを用いてさらに分析した。mRNAの現在の収率は同様であるが、リボソームRNAのレベルはMCPの調製したサンプル中では劇的に低下したことが見出された(B)。特にMCP調製のサンプルでは、18SのRNAの混入のレベルは、リアルタイムPCR(B&D)で判定した場合、MCPシステムを用いるよりも数桁小さいことが見出された。この調製物はまた、Agilent Bioanalyzerを用いるゲル電気泳動によって分離した場合、リボソームRNAを(もしあっても)ほとんど含まないことが明らかであった(C)。
【0130】
図28は、本発明に従うMCPおよびMCPシステムを用いる総RNA精製の結果を示す。種々の量の細胞を、なんら前処理なしに細胞まるごとMCPを通過させることによって処理した。MCPが、凍結保存されたラットの肝細胞から総RNAの抽出におけるスピンカラム技術と等しい能力を有することが結果によって示された(A)。特に、本発明によるシステムを用いて抽出されたRNAの量は、従来のスピンカラムの間で有意に異なることはなかった。Agilent Bioanalyzer(商標)によって判定したRNAインテグリティー・ナンバー(RNA integrity numbers)(RIN)はまた、これらの細胞調製物について有意に異なることはなかった。MCPシステムが総RNA調製物の質に有害に影響するか否かを決定するため、第二のセットの実験を、約8.8のRINナンバーを示した精製された総RNAを用いて行った(B)。これらの実験によって、MCPシステムは、単離されたRNAを分解せず、またAgilent Bioanalyzer(商標)によって生成されたRIN数で判定したRNAの質に有意に影響もしないことが示された。いくつかの実験をさらに行って、MCPを用いて抽出した総RNAのゲノムDNA混入のレベルを決定した(C)。アガロースゲルおよびリアルタイムPCRの両方を用いることによって、gDNAが、スピンカラムの調製したサンプルで見出されたよりも有意に低い濃度であったことが確認された。
【0131】
図29は、8つのMCPに対応し得るアセンブリされたMCPシステムを示す。他の実施形態では、適切なMCPシステムは、多数のMCP、例えば、1または2、または3、または4、または5、または6、または7、または8、または9、または10、または約12、または約15、または約20、またはさらにそれ以上のMCPを取り扱い得る。
【実施例1】
【0132】
細胞由来の総RNA。以下の実施例は、マイクロ精製カード(MCP)およびハードウェアシステムの例示的な使用である。総RNAを細胞懸濁物から単離する。約100〜約百万個のインタクトな細胞を含む細胞培養物を最初に低速で遠心分離して、インタクトな細胞をペレットにする。次いで、細胞培地を吸引して廃棄する。あとで500μlの総RNA安定化緩衝液(これは、GuSCN(3.5M)、Triton X−100(1.3%)Tris HCl(10mM)pH6.4を含む)を細胞含有バイアルに加えた。次いで、今安定化緩衝液にあるその細胞ペレットをボルテックスするかまたは徹底的に混合し、次いで、MCP上に位置するサンプル収集バイアル中に入れた。次いで、デバイスのリッドを閉じて、MCPをMCPシステム中のスロットに挿入する。一旦このカードをハードウェアステーションにロードすれば、光学的センサーを用いてMCPの存在を検出する。次いで、このシステムは、ユーザーが精製手順を始めるように促す。一旦オペレーターが正確なスイッチを押せば、MCPワークステーションは、サンプル封じ込めバイアル中に位置するサンプルを、MCPの溶解領域に移すように進行し、ここでサンプルは、熱媒介性の溶解および変性を受ける。次いで、このサンプル(溶解され変性されている)を、溶解領域に位置するフィルターを通過させ、これによってほとんどの細胞砕片を除去する。次いで、この溶解物を分析物捕獲領域に移し、ここで、この溶解物は、親和性に基づく抽出を受けて、シリカベースの物質を用いて、塩およびエタノール沈殿物の組み合わせを介して総RNAが精製される。この移行の間、およびサンプルが捕獲物質に接触する前に、このサンプルを100%のエタノールと混合して、捕獲チップ上の核酸の結合を促進する。一旦、標的分析物が結合すれば、ワークステーションは一連の2つの洗浄工程を続けて、非特異的に単離された物質を除去して、総RNAの単離物中で用いられた塩および界面活性剤を除去する。これらの洗浄工程の最初は、緩衝液を含み、この緩衝液は、GuSCN(0.15M)、Tris HCL(10mM)、pH6.4を80%のEtOHの中に含む。次いで、この単離されたサンプルを80%のEtOHを用いて2回洗浄する。次いで、この洗浄されたサンプルを風乾して、サンプルの溶出前に全ての微量のEtOHを除去する。これらの工程が終るとき、MCPの溶出チップを65℃に温めて、そのサンプルを、Tris−EDTA緩衝液または純水のいずれかを用いて外部収集バイアル中に溶出する。
【実施例2】
【0133】
組織由来の総RNA。以下の実施例は、マイクロ精製カード(MCP)およびMCPハードウェアシステムの例示的な使用である。5〜50mgの動物および植物の組織を含む組織ホモジネートからの総RNAの単離。組織を、最低500μlのMCP総RNA安定化緩衝液(GuSCN(3.5M)、TritonX−100(1.3%)およびTrisHCL(10mM)pH6.4を含む)中に入れて、これを組織含有バイアル中に入れる。次いで、このサンプルを、シリンジまたは別のデバイス、例えば、Polytron(商標)ミキサー、またはDounce(商標)ホモジナイザーを用いてホモジネートする。このホモジナイズされたサンプルを遠心分離して不溶性物質を除去するか、またはMCP総RNAカード中に直接入れる。全ての不溶性組織物質を除去する必要はないが、ある場合には、ホモジナイズされたサンプルから総RNAの収率を増大してもよい。ホモジナイゼーションの終了後、次いで、そのサンプルをMCP上に配置されたサンプル収集バイアル中に入れる。次いで、MCPのリッドを閉じて、MCPシステム上のスロット中に挿入する。一旦、カードをハードウェアステーションにロードすれば、光学的センサーを用いてMCPの存在を検出する。次いで、このシステムは、ユーザーが精製手順を始めるように促す。一旦オペレーターが正確なスイッチを押せば、MCPワークステーションは、サンプル封じ込めバイアル中に位置するサンプルを、MCPの溶解領域に移すように進行し、ここでサンプルは、熱媒介性の溶解および変性を受ける。次いで、このサンプル(溶解され変性されている)を、溶解領域に位置するメンブレンフィルターを通過させ、これによってほとんどの細胞砕片を除去する。次いで、この溶解物を分析物捕獲領域に移し、ここで、この溶解物は、親和性に基づく抽出を受けて、シリカベースの物質を用いて、塩およびエタノール沈殿物の組み合わせを介して総RNAが精製される。この移行の間、およびサンプルが捕獲物質に接触する前に、このサンプルを100%のエタノールと混合して、捕獲チップ上の核酸の結合を促進する。一旦、標的分析物が捕獲物質に結合すれば、ワークステーションは、一連の2つの洗浄工程を続けて、非特異的に単離された物質を除去して、総RNAの単離物中で用いられた塩および界面活性剤を除去する。これらの洗浄工程の最初は、緩衝液(GuSCN(0.15M)、Tris HCL(10mM)、pH6.4を80%のEtOHの中に含む)を含み、次いで、第二の洗浄工程ではこの単離されたサンプルを80%のEtOHを用いて洗浄する。次いで、この洗浄されたサンプルを風乾して、サンプルの溶出前に全ての微量のEtOHを除去する。これらの工程が終るとき、MCPの溶出チップを65℃に温めて、そのサンプルを、Tris−EDTA緩衝液または純水のいずれかを用いて外部収集バイアル中に溶出する。
【実施例3】
【0134】
血液由来の総RNA。以下の実施例は、マイクロ精製カード(MCP)およびMCPハードウェアシステムの例示的な使用である。約1.0mlの血液からの総RNAの単離は、GuSCN(3.5M)、Triton X−100(1.3%)Tris HCL(10mM)pH6.4を添加されて含む等容積(500μlの血液/500μlの2×濃度の安定化緩衝液)の中でサンプルを混合することによって行い、血液含有バイアル中に入れられるべきである、等容積中でサンプルを混合することによって行う。次いで、この血液サンプルを遠心分離して不溶性物質を除いてもよいし、またはMCP総RNAカード中に直接入れてもよい。全ての不溶性の組織物質を除去する必要はないが、ある場合には、ホモジネートされたサンプルからの総RNAの収率を増大してもよい。次いで、MCPのリッドを閉じて、MCPシステム上のスロット中に挿入する。一旦このカードをハードウェアステーションにロードすれば、光学的センサーを用いてMCPの存在を検出する。次いで、このシステムは、ユーザーが精製手順を始めるように促す。一旦オペレーターが正確なスイッチを押せば、MCPワークステーションは、サンプル封じ込めバイアル中に位置するサンプルを、MCPの溶解領域に移すように進行し、ここでサンプルは、熱媒介性の溶解および変性を受ける。次いで、このサンプル(溶解され変性されている)を、溶解領域に位置するメンブレンフィルターを通過させ、これによってほとんどの細胞砕片を除去する。次いで、この溶解物を分析物捕獲領域に移し、ここで、この溶解物は、親和性に基づく抽出を受けて、シリカベースの物質を用いて、塩およびエタノール沈殿物の組み合わせを介して総RNAが精製される。この移行の間、およびサンプルが捕獲物質に接触する前に、このサンプルを100%のエタノールと混合して、捕獲チップ上の核酸の結合を促進する。一旦、標的分析物が捕獲物質に結合すれば、このワークステーションは、一連の2つの洗浄工程を続けて、非特異的に単離された物質を除去して、総RNAの単離物中で用いられた塩および界面活性剤を除去する。これらの洗浄工程の最初は、緩衝液(GuSCN(0.15M)、Tris HCL(10mM)、pH6.4を80%のEtOHの中に含む)を含み、次いで、第二の洗浄工程では、この単離されたサンプルを80%のEtOHを用いて洗浄する。次いで、この洗浄されたサンプルを風乾して、サンプルの溶出前に全ての微量のEtOHを除去する。これらの工程が終るとき、MCPの溶出チップを65℃に温めて、そのサンプルを、Tris−EDTA緩衝液または純水のいずれかを用いて外部収集バイアル中に溶出する。
【実施例4】
【0135】
細胞由来のmRNA。以下の実施例は、マイクロ精製カード(MCP)およびMCPハードウェアシステムの例示的な使用である。約100〜約1×106個の細胞を含む培養物についての細胞懸濁液からの総RNAの単離は、最初に低速度で遠心分離して、インタクトな細胞をペレット化する。次いでこの細胞培地を吸引して廃棄し、次いで500μlのMCP mRNA安定化緩衝液(アウリントリカルボン酸(ATA)(3M)、TMAC(2M)、Triton X−100(0.035%)pH(7.4)を細胞含有バイアルに添加して含む。次いで、現在、安定化緩衝液中の細胞ペレットをボルテックスするかまたは徹底的に混合し、次いでMCP上に位置するサンプル収集バイアル中に入れる。次いでデバイスのリッドを閉じて、MCPをMCPシステム上のスロットに挿入する。一旦、このカードをハードウェアステーションにロードすれば、光学的センサーを用いてMCPの存在を検出する。次いで、このシステムは、ユーザーが精製手順を始めるように促す。一旦オペレーターが正確なスイッチを押せば、MCPワークステーションは、サンプル封じ込めバイアル中に位置するサンプルを、MCPの溶解領域に移すように進行させ、ここでこのサンプルは、熱媒介性の溶解および変性を受ける。次いで、このサンプル(溶解され変性されている)を、溶解領域に位置するフィルターを通過させ、これによってほとんどの細胞砕片を除去する。次いで、この溶解物を分析物捕獲領域に移し、ここで、この溶解物は、親和性に基づく抽出を受けて、塩およびエタノール沈殿物の組み合わせを介して、シリカベースの物質を用いて、総RNAが精製される。一旦、標的分析物が結合すれば、このワークステーションは、一連の2つの洗浄工程を続けて、非特異的に単離された物質を除去して、mRNAの単離物中で用いられた塩および界面活性剤を除去する。これらの洗浄工程の最初は、緩衝液(TMAC(2M)TritonX−100(0.035%)、pH(7.4)を含む)を含み、次いで、第二の洗浄工程では、この単離されたサンプルをTMAC(0.1M)、TritonX−100(0.125%)、pH(7.4)を用いて洗浄する。次いで、この洗浄されたサンプルを風乾して、サンプルの溶出前に全ての微量の洗浄緩衝液を除去する。これらの工程が終るとき、MCPの溶出チップを75℃に温めて、そのサンプルを、Tris−EDTA緩衝液または純水のいずれかを用いて外部収集バイアル中に溶出する。
【実施例5】
【0136】
組織由来のmRNA。以下の実施例は、マイクロ精製カード(MCP)およびMCPハードウェアシステムの例示的な使用である。5〜50mgの動物または植物の組織を含む組織ホモジネートからの総RNAの単離。組織を、最少、500μlのMCP mRNA安定化緩衝液(この緩衝液は、アウリントリカルボン酸(ATA)(3M)、TMAC(2M)、Triton X−100(0.035%)pH(7.4)を含む)にいれた組織を、組織含有バイアル中に入れる。次いで、このサンプルを、シリンジまたは別のデバイス、例えば、PolytronミキサーまたはDounceホモジネーターを用いてホモジネートする。このホモジネートしたサンプルを遠心分離して、不溶性物質を除くか、または直接MCP mRNAカード中に入れる。全ての不溶性組織物質を除去する必要はないが、ある場合には、ホモジネートされたサンプルからのmRNAの収率を増大し得る。ホモジネーションの終了後、次にこのサンプルをMCP上に位置するサンプル収集バイアル中に入れる。次いでこのMCPのリッドを閉じて、MCPシステム上のスロットに挿入する。一旦、このカードをハードウェアステーションにロードすれば、光学的センサーを用いてMCPの存在を検出する。次いで、このシステムは、ユーザーが精製手順を始めるように促す。一旦オペレーターが正確なスイッチを押せば、MCPワークステーションは、サンプル封じ込めバイアル中に位置するサンプルを、MCPの溶解領域に移すように進行し、ここでサンプルは、熱媒介性の溶解および変性を受ける。次いで、このサンプル(溶解され変性されている)を、溶解領域に位置するフィルターを通過させ、これによってほとんどの細胞砕片を除去する。次いで、この溶解物を分析物捕獲領域に移し、ここで、この溶解物は、親和性に基づく抽出を受けて、塩およびエタノール沈殿物の組み合わせを介して、シリカベースの物質を用いて、総RNAが精製される。一旦、標的分析物が結合すれば、このワークステーションは、一連の2つの洗浄工程を続けて、非特異的に単離された物質を除去して、mRNAの単離物中で用いられた塩および界面活性剤を除去する。これらの洗浄工程の最初は、緩衝液(TMAC(2M)TritonX−100(0.035%)、pH(7.4)を含む)を含む。次いで、この単離されたサンプルを2回目はTMAC(0.1M)、TritonX−100(0.125%)、pH(7.4)を用いて洗浄する。次いで、この洗浄されたサンプルを風乾して、サンプルの溶出前に全ての微量の洗浄緩衝液を除去する。これらの工程が終るとき、MCPの溶出チップを75℃に温めて、そのサンプルを、Tris−EDTA緩衝液または純水のいずれかを用いて外部収集バイアル中に溶出する。
【実施例6】
【0137】
血液由来のmRNA。以下の実施例は、マイクロ精製カード(MCP)およびMCPハードウェアシステムの例示的な使用である。約1.0mlの血液からのmRNAの単離は、サンプルを等容積(血液500μl/安定化緩衝液500μl)で、2×濃度の安定化緩衝液(アウリントリカルボン酸(ATA)(3M)、TMAC(2M)、Triton X−100(0.035%)pH(7.4)を含む)と混合することによって行う。安定化緩衝液中にある血液サンプルを次に、ボルテックスするかまたは徹底的に混合し、次いでMCP上に位置するサンプル収集バイアル中に入れる。次いでデバイスのリッドを閉じて、MCPをMCPシステム上のスロットに挿入する。一旦、このカードをハードウェアステーションにロードすれば、光学的センサーを用いてMCPの存在を検出する。次いで、このシステムは、ユーザーが精製手順を始めるように促す。一旦オペレーターが正確なスイッチを押せば、MCPワークステーションは、サンプル封じ込めバイアル中に位置するサンプルを、MCPの溶解領域に移すように進行し、ここでこのサンプルは、熱媒介性の溶解および変性を受ける。次いで、このサンプル(溶解され変性されている)を、溶解領域に位置するフィルターを通過させ、これによってほとんどの細胞砕片を除去する。次いで、この溶解物を分析物捕獲領域に移し、ここで、この溶解物は、親和性に基づく抽出を受けて、シリカベースの物質を用いて、塩およびエタノール沈殿物の組み合わせを介して総RNAが精製される。一旦、標的分析物が結合すれば、このワークステーションは、一連の2つの洗浄工程を続けて、非特異的に単離された物質を除去して、mRNAの単離物中で用いられた塩および界面活性剤を除去する。これらの洗浄工程の最初は、緩衝液(TMAC(2M、TritonX−100(0.035%)、pH(7.4)を含む)を含み、次いで、第二の洗浄工程では、この単離されたサンプルをTMAC(0.1M)、TritonX−100(0.125%)、pH(7.4)を用いて洗浄する。次いで、この洗浄されたサンプルを風乾して、サンプルの溶出前に全ての微量の洗浄緩衝液を除去する。これらの工程が終るとき、MCPの溶出チップを75℃に温めて、そのサンプルを、Tris−EDTA緩衝液または純水のいずれかを用いて外部収集バイアル中に溶出する。
【実施例7】
【0138】
細胞由来のゲノムDNA。以下の実施例は、マイクロ精製カード(MCP)およびMCPハードウェアシステムの例示的な使用である。約100〜約百万個の細胞を含む培養物についての細胞懸濁液からのgDNAの単離は、最初に低速で遠心分離して、インタクトな細胞をペレットにする。次いで、細胞培地を吸引して廃棄する。次いで、500μlのMCP gDNA安定化緩衝液(これは、GuHCl(3.5M)、Triton X−100(1.3%)Tris HCL(10mM)pH6.4を含む)を細胞含有バイアルに加える。次いで、今安定化緩衝液にあるその細胞ペレットをボルテックスするかまたは徹底的に混合し、次いで、MCP上に位置するサンプル収集バイアル中に入れた。次いで、デバイスのリッドを閉じて、MCPをMCPシステム中のスロットに挿入する。一旦このカードをハードウェアステーションにロードすれば、光学的センサーを用いてMCPの存在を検出する。次いで、このシステムは、ユーザーが精製手順を始めるように促す。一旦オペレーターが正確なスイッチを押せば、MCPワークステーションは、サンプル封じ込めバイアル中に位置するサンプルを、MCPの溶解領域に移すように進行し、ここでサンプルは、熱媒介性の溶解および変性を受ける。次いで、このサンプル(溶解され変性されている)を、溶解領域に位置するフィルターを通過させ、これによってほとんどの細胞砕片を除去する。次いで、この溶解物を分析物捕獲領域に移し、ここで、この溶解物は、親和性に基づく抽出を受けて、塩およびエタノール沈殿物の組み合わせを介して、シリカベースの物質を用いて、gDNAが精製される。一旦、標的分析物が結合すれば、ワークステーションは一連の2つの洗浄工程を続けて、非特異的に単離された物質を除去して、gDNAの単離物中で用いられた塩および界面活性剤を除去する。これらの洗浄工程の最初は、緩衝液(GuSCN(0.15M)、Tris HCL(10mM)、pH6.4を80%のEtOHの中に含む)を含み、次いで、第二の洗浄工程では、この単離されたサンプルを80%のEtOHを用いて洗浄する。次いで、この洗浄されたサンプルを風乾して、サンプルの溶出前に全ての微量のEtOHを除去する。これらの工程が終るとき、MCPの溶出チップを65℃に温めて、そのサンプルを、Tris−EDTA緩衝液または純水のいずれかを用いて外部収集バイアル中に溶出する。
【実施例8】
【0139】
組織由来のゲノムDNA。以下の実施例は、5〜50mgの動物または植物の組織を含む組織ホモジネートからgDNAを単離するためのマイクロ精製カード(MCP)およびMCPハードウェアシステムの例示的な使用である。組織を、最小500μlのMCP gDNA安定化緩衝液(これは、GuHCl(3.5M)、Triton X−100(1.3%)Tris HCL(10mM)pH6.4を含む)の中に入れて、これを組織含有バイアルに入れる。次いで、このサンプルを、シリンジまたは別のデバイス、例えば、PolytronミキサーまたはDounceホモジネーターを用いてホモジネートする。このホモジネートしたサンプルを遠心分離して、不溶性物質を除くか、または直接MCP gDNAカード中に入れる。全ての不溶性組織物質を除去する必要はないが、ある場合には、ホモジネートされたサンプルからのgDNAの収率を増大し得る。ホモジネーションの終了後、次にこのサンプルをMCP上に位置するサンプル収集バイアル中に入れる。次いでこのMCPのリッドを閉じて、MCPをMCPシステム上のスロットに挿入する。一旦、このカードをハードウェアステーションにロードすれば、光学的センサーを用いてMCPの存在を検出する。次いで、このシステムは、ユーザーが精製手順を始めるように促す。一旦オペレーターが正確なスイッチを押せば、MCPワークステーションは、サンプル封じ込めバイアル中に位置するサンプルを、MCPの溶解領域に移すように進行し、ここでサンプルは、熱媒介性の溶解および変性を受ける。次いで、このサンプル(溶解され変性されている)を、溶解領域に位置するフィルターを通過させ、これによってほとんどの細胞砕片を除去する。次いで、この溶解物を分析物捕獲領域に移し、ここで、この溶解物は、親和性に基づく抽出を受けて、塩およびエタノール沈殿物の組み合わせを介して、シリカベースの物質を用いて、gDNAが精製される。一旦、標的分析物が捕獲物質に結合すれば、このワークステーションは、一連の2つの洗浄工程を続けて、非特異的に単離された物質を除去して、gDNAの単離物中で用いられた塩および界面活性剤を除去する。これらの洗浄工程の最初は、緩衝液(GuSCN(0.15M)、Tris HCL(10mM)、pH6.4を80%のEtOH中に含む)を含み、次いで、第二の洗浄工程では、この単離されたサンプルが80%のEtOHで洗浄される。次いで、この洗浄されたサンプルを風乾して、サンプルの溶出前に全ての微量のEtOHを除去する。これらの工程が終るとき、MCPの溶出チップを65℃に温めて、そのサンプルを、Tris−EDTA緩衝液または純水のいずれかを用いて外部収集バイアル中に溶出する。
【実施例9】
【0140】
血液由来のゲノムDNA。以下の実施例は、マイクロ精製カード(MCP)およびMCPハードウェアシステムの例示的な使用である。約1.0mlの血液からのゲノムのDNAの単離は、等容積(血液500μl/2×濃度の安定化緩衝液500μl)(これは、GuHCl(3.5M)、Triton X−100(1.3%)Tris HCL(10mM)pH6.4を添加されて含む)中でサンプルを混合することによって行い、血液含有バイアルに入れなければならない。次いで、この血液サンプルを、遠心分離して不溶性物質を除くか、または直接MCPゲノムDNAカード中に入れてもよい。全ての不溶性組織物質を除去する必要はないが、ある場合には、ホモジネートされたサンプルからのゲノムDNAの収率を増大してもよい。次いでMCPのリッドを閉じて、MCPをMCPシステム上のスロットに挿入する。一旦、このカードをハードウェアステーションにロードすれば、光学的センサーを用いてMCPの存在を検出する。次いで、このシステムは、ユーザーが精製手順を始めるように促す。一旦オペレーターが正確なスイッチを押せば、MCPワークステーションは、サンプル封じ込めバイアル中に位置するサンプルを、MCPの溶解領域に移すように進行し、ここでサンプルは、熱媒介性の溶解および変性を受ける。次いで、このサンプル(溶解され変性されている)を、溶解領域に位置するメンブレンフィルターを通過させ、これがほとんどの細胞砕片を除去する。次いで、この溶解物を分析物捕獲領域に移し、ここで、この溶解物は、親和性に基づく抽出を受けて、シリカベースの物質を用いて、塩およびエタノール沈殿物の組み合わせを介してゲノムDNAが精製される。この移動の間、およびサンプルが捕獲物質に接触する前に、このサンプルを100%のエタノールと混合して、捕獲チップ上の核酸の結合を促進する。一旦、標的分析物が捕獲物質に結合すれば、このワークステーションは、一連の2つの洗浄工程を続けて、非特異的に単離された物質を除去して、総RNAの単離物中で用いられた塩および界面活性剤を除去する。これらの洗浄工程の最初は、緩衝液(GuHCl(0.15M)、Tris HCL(10mM)、pH6.4を80%のEtOH中に含む)を含み、次いで、第二の洗浄工程では、この単離されたサンプルが80%のEtOHで洗浄される。次いで、この洗浄されたサンプルを風乾して、サンプルの溶出前に全ての微量のEtOHを除去する。これらの工程が終るとき、MCPの溶出チップを65℃に温めて、そのサンプルを、Tris−EDTA緩衝液または純水のいずれかを用いて外部収集バイアル中に溶出する。
【実施例10】
【0141】
本実施例では、MCPシステムは、DNA、総RNAまたはmRNAを別々に精製し得る全自動のシステムである。このシステムは、ゲノムDNA、総RNAまたはmRNA適用について最適化されたマイクロ精製カード(「MCP」または「Lysixカード」)を備える。このシステムは、MCPのロードされる種々の組織および細胞サンプルから核酸を得て、精製するように設計される。MCPシステムは、8つのサンプル(すなわち、8つのMCP)を約10分で同時に分析し得、PCR増幅のような下流の適用のための高品質のデータを保証する。各々のMCPは、約1〜約50mgのホモジナイズされた組織に匹敵する、約100個の細胞〜約百万個の細胞を含むサンプルサイズを取り扱い可能である。
【0142】
生物学的サンプルの調製。
【0143】
総RNAサンプル。総RNA分析のための生物学的サンプルは、以下の成分を含む緩衝液(結合緩衝液、安定化緩衝液)を用いて調製する:グアニジウムイソチオシアネート(GuSCN)、5.25モル(M);tris−HCl、1M;pH6.4;50mlの水。組織は、結合緩衝液とともにホモジナイズしてもよく、または細胞は、結合緩衝液中に最初に分散してもよい。次いで、結合緩衝液中の細胞の懸濁物を、カードのバイアル部分に添加し、その細胞を本明細書において上記されるように処理する。
【0144】
mRNAサンプル。RNA分析のための生物学的サンプルは、以下の成分を含む任意の結合緩衝液を用いて調製する:アウリントリカルボン酸(「ATA」)、10mmol;グリセロール20容積%;トリメチルアンモニウムクロライド(「TMAC」);Triton X−100、0.025%;および水(総容積約200ml)。組織は、結合緩衝液とともにホモジナイズしてもよく、または細胞は、結合緩衝液中に最初に分散してもよい。次いで、結合緩衝液中の細胞の懸濁物を、カードのバイアル部分に添加し、その細胞を本明細書において上記されるように処理する。
【0145】
ゲノムDNA。ゲノムDNA分析のための生物学的サンプルは、以下の成分を含む任意の結合緩衝液を用いて調製する:GuHCl、5.25M;Tris Hcl、1.0M;pH6.4、50mlの水。組織は、結合緩衝液とともにホモジナイズしてもよく、または細胞は、結合緩衝液中に最初に分散してもよい。次いで、結合緩衝液中の細胞の懸濁物を、カードのバイアル部分に添加し、その細胞を本明細書において上記されるように処理する。
【0146】
生物学的サンプルの処理。MCPワークステーションおよびマイクロ精製カードは下の図24〜26に示され、かつ記載される。このMCPシステムは、特別に設計されたマイクロ精製カード(すなわち、MCP)を備える。これらのカードは各々、他の核酸アッセイのなかでも、マイクロアレイ分析、リアルタイムPCR、定量的PCRおよびノーザンブロットなどの適用においてMCPプロセスに対して外部のその後の使用のために、細胞サンプルからゲノムDNA、総RNAまたはmRNAを抽出、単離および精製するように設計される。
【0147】
マイクロ精製カード。MCP(ベースおよびフィルターカバー)は、130℃を超える温度までMCPの加熱を可能にする物質である、環状ポリオレフィン樹脂から射出成形される。フィルターメンブレンを溶解領域とフィルターカバーとの間の適所に結合させる。図24aを参照、130℃を超える温度を溶解工程の間に用い、ここでは生物学的物質が結合緩衝液中のフィルター領域に入り、細胞が溶解し、核酸を含む高分子内容物がメンブレンフィルターを通って濾過される。環状ポリオレフィン樹脂から別々に射出成形されるフィルターカバー(図24c)を、ベースカードに結合して、溶解領域を取り囲む。MCPシステムおよびマイクロ精製カードのプロセスのワークフローの図を図24a、図24b、図24cに示す。
【0148】
MCPを通るサンプル細胞および核酸の処理の図を図24aに示す。サンプル細胞が安定化緩衝液に分散した後、この分散した細胞を、例えば、ピペットによって、MCPバイアルに手動的に注射する。保持ラックをワークステーション上に設けて、このローディング工程の間、カードを適所に保持する。MCPのバイアルにサンプルをロードして、このリッドを閉じ、MCPをMCPワークステーション中に挿入し、次いで生物学的サンプル中の核酸を単離して精製する。生物学的サンプルの処理についてのさらなる詳細は、下にさらに記載する。
【0149】
図25および図26は、ワークステーション内に位置するMCPの種々の図面を示す。これらの図面は、ワークステーション上の加熱および冷却成分に対するMCPの方向を示す。MCPのサンプル冷却領域をサンプル冷却のための温度制御パドルに隣接しておく。温度制御パドルは、一体型のメイン・コア・デバイス上の温度制御領域に熱的に接続される。このメイン・コア・デバイスはまた、熱電制御(TEC)熱移動デバイスと熱連通される。また、MCPの溶解領域を加熱するMCP局所ヒーター(MCP Region Heaters)も示される。本実施例では、この溶解領域は約130℃に加熱される。
【0150】
サンプル調製およびMCPシステムの流体フローのまとめ。生物学的サンプルを最初に、ユーザーが結合緩衝液(すなわち、安定化緩衝液)とホモジナイズするか、またはボルテックスして細胞を分散させる。組織サンプルについては、安定化緩衝液をホモジナイゼーションの前にサンプルに加える。細胞については、ペレットを最初に遠心分離によって形成し、次いで結合緩衝液をこのペレットに加えて、その細胞をボルテックスして、緩衝液中の細胞を分散させる。この細胞分散を、ピペットを用いてMCP MCPバイアルのサンプルバイアル中にロードし、このバイアルをキャップして、MCPをワークステーション中にロードする(図24a)。MCPをワークステーション中にインストールすると、このサンプルは、陽圧下でフィルターを通じて約0.2ml/分で、約130℃でポンピングされて、サンプル由来の核酸および他の分子を含む濾液が生じる。この濾液を引き続き、サンプル冷却領域にポンピングして、ほぼ室温まで冷却する。次いで、この濾液を捕獲領域に流し、ここで濾液中の核酸が捕獲物質に結合する。総RNAについては、捕獲物質はガラス濾紙であり;ゲノムRNAについては、捕獲物質は、ガラス繊維紙であり;mRNAについては、捕獲物質はオリゴdTセルロースである。核酸が捕獲物質に結合した後、この結合した核酸を次に洗浄して、捕獲物質に吸着されているかもしれない非核酸化合物を除去する。洗浄工程1の間、1mlの洗浄液1を、メイン・コア・デバイス(Main Core Device)を通じてMCP中に、洗浄インレットを通じて、次いで捕獲チップ中に、ポンピングして、捕獲物質から未結合の分子を洗い去る。洗浄2の間、1mlの洗浄液2を、メイン・コア・デバイスを通してポンピングして、結合した(すなわち捕獲された)核酸を洗浄し、洗浄液1をすすぎ落とし(かつ塩を除去し)、核酸を精製する。これらの洗浄工程に続いて、4000mlの乾燥空気をメイン・コア・デバイスを通して流し、結合した核酸を乾燥させる。次いで、この核酸を、95℃で、約0.26(以下)mlの溶出液(RNaseなしの水)を用いて捕獲物質から溶出させる。この核酸を、MCPに位置しており、結合はしておらず、かつ下にある収集チューブ中に収集する。溶出チップ中の分子捕獲領域中で本質的に乾燥しかつ本質的に塩のない核酸を得る能力は、本発明の種々の局面に従って、可能である。詳細には、溶出チップの温度制御によってもこの能力は可能になり、これがmRNAの精製および単離を助ける。例えば、分子捕獲領域における機能的な物質は、mRNAのハイブリダイゼーションを果たす。ハイブリダイゼーションは、mRNAに結合して遊離するために温度制御を利用する。総RNAおよびゲノムDNAの結合によって、同様に温度制御効果を利用して、これらの核酸の沈殿および適切な分子捕獲物質に対する結合を制御する。従って、MCPおよび本発明のシステムは適切には、多数のステージおよび多数の領域の熱制御能力を有する。MCPは、上昇した温度で細胞を溶解するように溶解領域中で加熱されてもよい。MCPはまた、分子を捕獲するための溶解領域に流体的に隣接する領域中で冷却されてもよい。MCPは核酸を結合および遊離するために加熱および冷却され得る溶出チップを有する。温度、圧力、試薬および分析物を操作するためのこのワークステーションまたはシステムは、MCPと一体化されている。この組み込まれたシステムは、分子分析物を精製および単離するための本明細書に記載の種々の温度プログラムで、サンプル、試薬および洗浄液の流れを制御する。本明細書に提供されるMCPおよびシステムは、適切な緩衝液、熱制御、および捕獲物質と組み合わせて、最大約5mlまでのサンプルサイズの単回通過から、約200μl未満、さらには約10〜50μlの範囲という溶出されたサンプルサイズを調製し得る。ゲノムDNA、総RNA、およびmRNAの各々を単離するための流体ローディング、洗浄、溶出および乾燥プログラムの詳細は下の表に示す。
【0151】
まとめると、これらの実験で記載されたMCPシステム(systema)は、ゲノムDNA、総RNAまたはmRNAに特異的な安定化緩衝液中で分散した生物学的細胞を、サンプルバイアルからMCPの組み込まれた溶解領域に移動する。後に、この細胞は溶解され、同時に溶解領域内で約130℃で核酸を濾過して濾液を形成しながら流れる。引き続き、核酸、安定化緩衝液、および他の非核酸分子を含む濾液の流れを、次に、カード上に組み込まれたサーペンタイン冷却領域を通じてポンピングする。この濾液を、冷却領域内で流すことによって約20℃〜42℃の間の温度まで冷却し、次いで、このカードに結合したピペットチップ内に位置する捕獲領域を通じて冷却した濾液を流す。核酸を、捕獲領域内に位置するグラスファイバー(ゲノムDNAまたは総RNA)またはオリゴ−dT連結セルロース(mRNA)を用いてカード上に捕獲する。洗浄溶液が流れるにつれて、捕獲された核酸を最初に、カオトロピック塩、80%エタノール、およびバランスの水を含む緩衝液を用いて、約20℃で、二番目は、80/20のエタノール/水で洗浄して、緩衝液および塩を約20℃で除去する。この捕獲された核酸を最終的に、約65℃〜約95℃の範囲の温度でRNaseなしの水を用いて外部サンプル収集バイアルに対して溶出する。
【0152】
初期のサンプル調製技術の圧倒的多数が、種々の遠心分離タイプと組み合わせて用いられるスピンカラムを利用する。一連の工程(代表的には15〜45)における分析のための生物学的サンプルを調製するためにこれらの初期のシステムを用いることは、ユーザーによって実験室ベンチで行われる。これらの技術のさらに小さいサブセットは、親和性マトリックスに対して溶液をピペッティングするロボットシステムを利用する。マイクロ精製カード(MCP)およびMCPシステムを含む、本明細書に記載されるシステムの開発は、これらの初期のシステムに対して有意な技術的進歩である。初期の技術は、生物学的分析を行う能力を急速に発展させているが、それらは分子生物学のいくつかの局面を利用していない。詳細には、既存のシステムは、限定はしないが核酸およびタンパク質を含む、細胞の高分子の効率的な精製を可能にする、熱、流体および大気圧環境を的確に制御していない。この環境を制御する結果は、ごく微量の混入物しかない、高度に精製されたサンプルを供給する能力である。
【0153】
この新規に開発されたMCPシステムはまた、初期の技術に比較して生物学的サンプルの調製において有意な時間の節約をもたらす。選択された適用に依存して、マイクロ精製カードシステムは、初期の技術よりも2〜10倍速くサンプルを調製する能力を示している。いかなる特定の動作理論にも束縛されないが、これは、MCP環境(例えば、温度)を制御すること、および以前に開発されたシステム中で必須であった多数のインキュベーション工程を排除することによって達成される。サンプルの環境を効率的に制御するための工程は、切り離されている。一例として、適切なMCPおよびシステムを用いる溶解サンプルは、標的分析物の分離を必要としない。この方法では、細胞および高分子砕片のほとんどを、沈殿または標的分析物の親和性捕獲の前に除去してもよい。一旦トラップされれば、その分析物は、温度、流速(従って、圧力)および緩衝液の組成に関して緊密な制御下で洗浄され得る。精製の工程は切り離されているが、これは、ユーザーにはシステムのオペレーターとして意識されない。このシステムの操作は単に、1つ以上のMCPに対してサンプルをロードすることを必要とするだけであり、MCPシステム上のスロットにMCPを挿入して、標的分子の精製および単離を行う。
【0154】
従って、本発明によって、コスト(材料および労力の両方に関して)、および時間を低減しながら、極めて高い純度のサンプル調製が可能になる。この結果は、改善された下流の生物化学分析である。
【0155】
【表3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ精製カードであって、
実質的に平面に配向され、サンプルから分子を抽出し得る複数の流体構成要素を有し、前記複数の流体構成要素が、
サンプルローディングインレットと、
溶出インレットと、
溶解されたサンプルを提供するため、少なくとも約90℃に加熱され得、かつ環境大気圧よりも少なくとも約10psi大きくまで加圧され得る溶解領域と、
前記溶解サンプルから分子を濾過し得るフィルターと、
少なくとも約40℃に加熱され得る分子捕獲領域と、
溶出チップと、
を有し、
前記サンプルローディングインレットは、前記溶解領域と流体連通しており、前記溶解領域は、前記フィルターと流体連通しており、前記フィルターは、前記分子捕獲領域に対して1若しくはそれ以上の分子を流体的に連通し得、かつ前記分子捕獲領域は、溶出インレットおよび溶出チップの両方と流体連通し得る、マイクロ精製カード。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記サンプルは、天然に由来するか、合成由来であるか、または天然由来および合成由来の両方である。
【請求項3】
請求項2記載のマイクロ精製カードにおいて、前記天然に由来する分子は、核酸、アミノ酸、炭水化物、塩、多糖、またはその任意の組み合わせを含むものである。
【請求項4】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、このマイクロ精製カードは、さらに、
前記サンプルローディングインレットを密閉し得るサンプルキャップを有し、前記サンプルキャップは、圧力差に供された場合それを通じた流体の流れを可能にし得、かつ前記サンプルキャップは圧力差に供されない場合それを通じた流体の流れを妨げ得るものである。
【請求項5】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、2若しくはそれ以上の前記流体構成要素は、2若しくはそれ以上の前記流体構成要素の平面に対して平行に配置されたカード型材料を用いて構造的に配向されるものである。
【請求項6】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記溶解領域は、前記フィルターに対向して配置されるフィルターキャップを用いて囲まれ、前記フィルターキャップおよびフィルターは、複数の流体構成要素の平面に対して実質的に平行に配向されているものである。
【請求項7】
請求項6記載のマイクロ精製カードにおいて、前記フィルターキャップは、十分な熱伝導率および十分な薄さの物質から構成され、その上での約140℃未満の接触温度を有する外部ヒーターとの接触によって、前記溶解領域内の液体を約3分未満で約100℃より高い温度に達し得るものである。
【請求項8】
請求項6記載のマイクロ精製カードにおいて、前記溶解領域に隣接する前記フィルター表面は、生体分子の選択的な吸着のために官能化されるとして特徴付けられるものである。
【請求項9】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記フィルターは、目詰まりの前に少なくとも約100,000個の溶解された細胞を濾過できるのに十分な面積である。
【請求項10】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記溶出チップは、前記分子捕獲領域との流体連通に比較してサイズの小さい開口部へ傾斜付けられているとして特徴付けられるものである。
【請求項11】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記溶出チップは、約70マイクロリットル未満の容積を有するとして特徴付けられるものである。
【請求項12】
請求項11記載のマイクロ精製カードにおいて、前記溶出チップは、約0.05マイクロリットルより大きい容積を有するとして特徴付けられるものである。
【請求項13】
請求項12記載のマイクロ精製カードにおいて、前記溶出チップはピペットチップを有するものである。
【請求項14】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記溶出チップは、前記マイクロ精製カードの一部から延び、かつ外部サンプル収集バイアル中に分子を流し得るものである。
【請求項15】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記溶解領域は少なくとも約120℃まで加熱され得、かつ最大で少なくとも約80psiまで加圧され得るものである。
【請求項16】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記溶解領域は外部ヒーターに近接して配置され得るものである。
【請求項17】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記溶出インレットは前記マイクロ精製カードの外部の流体供給源に対して流体的に連通され得るものである。
【請求項18】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記分子捕獲領域は少なくとも約95℃まで加熱され得るものである。
【請求項19】
請求項18記載のマイクロ精製カードにおいて、前記分子捕獲領域は約150℃まで加熱され得るものである。
【請求項20】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記分子捕獲領域は少なくとも約4℃まで冷却され得るものである。
【請求項21】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記分子捕獲領域は、前記マイクロ精製カードに不可欠な取り外し不能領域、取り外し可能なカートリッジ、またはその両方を有するものである。
【請求項22】
請求項21記載のマイクロ精製カードにおいて、前記分子捕獲領域は、前記フィルターによって濾過され得る1若しくはそれ以上のタイプの分子を選択的に捕獲し得る、捕獲物質または捕獲デバイスを有するものである。
【請求項23】
請求項21記載のマイクロ精製カードにおいて、前記捕獲デバイスはマイクロアレイを有するものである。
【請求項24】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記分子捕獲領域は、外部ヒーター、外部冷却器、またはその両方に近接して配置され得るものである。
【請求項25】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、このマイクロ精製カードは、さらに、
任意の2若しくはそれ以上の前記流体構成要素の間に流体的に配置された1若しくはそれ以上の一方向流体バルブ、またはチャネルを有し、一度、前記分子捕獲領域を通過した溶解されたサンプルから流体的に分子を輸送し得るものである。
【請求項26】
使い捨て可能なマイクロ精製カードであって、
サンプルから分子を抽出し得る複数の流体構成要素を有する射出成形カードを有し、前記複数の流体構成要素が、溶解領域と流体連通し得るサンプルローディングインレットを有し、前記溶解領域が、フィルターと流体連通しており、前記フィルターが分子捕獲領域に対して1若しくはそれ以上の分子を流体連通し得、かつ前記分子捕獲領域が、溶出インレットおよび溶出チップと流体連通され得るものである、マイクロ精製カード。
【請求項27】
請求項26記載の使い捨て可能なマイクロ精製カードにおいて、このマイクロ精製カードは、さらに、
前記サンプルローディングインレットを密閉し得るサンプルキャップを有し、前記サンプルキャップは、圧力差に供された場合それを通じた流体の流れを可能にし得、かつ前記サンプルキャップは圧力差に供されない場合それを通じた流体の流れを妨げ得るものである。
【請求項28】
請求項26記載の使い捨て可能なマイクロ精製カードにおいて、各々の前記流体構成要素の一部は射出成形カードによって提供されるものである。
【請求項29】
請求項26記載の使い捨て可能なマイクロ精製カードにおいて、前記サンプルは、1若しくはそれ以上の細胞を有するものである。
【請求項30】
上昇した温度および圧力においてマイクロ精製カード中でサンプルを調製するために適切なシステムであって、
前記マイクロ精製カード上のサンプルローディングインレットに対して圧力下で流体連通され得るサンプルインプット流体接続と、
前記マイクロ精製カード上の溶出インレットに対して圧力下でサンプルローディングインレットに流体接続し得る溶出インプット流体接続と、
前記サンプルインプット流体および溶出インプット流体接続を受容するように前記マイクロ精製カードを位置的に保持し得るカードホルダーであって、
前記マイクロ精製カード上の溶解領域を少なくとも約90℃まで加熱し得るヒーターと、
前記マイクロ精製カード上の分子捕獲領域を約40℃より高くまで加熱し得、かつ前記分子捕獲領域を30℃未満まで冷却し得る熱制御装置と
を有するカードホルダーと、
前記マイクロ精製カード上で溶出チップを出る流体を受容するための2若しくはそれ以上の収集流体レセプタクルを交互に配置し得る位置決め可能な流体収集ホルダーと、
を有する、システム。
【請求項31】
請求項30記載のシステムにおいて、前記流体収集レセプタクルの一つは、廃棄用流体収集レセプタクルであり、かつ他の前記流体収集レセプタクルは溶出用流体レセプタクルであり、前記位置決め可能な流体収集ホルダーは、前記溶出チップから廃棄用流体レセプタクルに出る廃液を受容するように、または前記溶出チップから溶出用流体レセプタクルへ出てくる溶出液を受容するように、交互にスライド可能に配置され得るものである。
【請求項32】
請求項30記載のシステムにおいて、前記熱制御装置は、前記マイクロ精製カード上の分子捕獲領域を少なくとも約95℃まで加熱し得、かつ前記分子捕獲領域を約−20℃まで冷却し得るものである。
【請求項33】
請求項30のシステムにおいて、このシステムは、さらに、
識別タグを読み取るためのスキャナーを有するものである。
【請求項34】
請求項30記載のシステムにおいて、前記カードホルダーは、前記マイクロ精製カードを受容するためのスロットを有するものである。
【請求項35】
上昇した温度および圧力において1つ以上の使い捨て可能なマイクロ精製カードを用いてサンプルから分子を収集するために適切なシステムであって、
1若しくはそれ以上の使い捨て可能なマイクロ精製カードであって、1若しくはそれ以上の細胞を有するサンプルから分子を抽出し得る複数の流体構成要素を有する射出成形カードを有し、前記複数の流体構成要素が、溶解領域と流体連通し得るサンプルローディングインレットを有し、前記溶解領域が、フィルターと流体連通されており、前記フィルターが、分子捕獲領域に対して1つ以上の分子を流体連通し得、かつ前記分子捕獲領域が、溶出インレットおよび溶出チップと流体連通し得る、マイクロ精製カードと、
マイクロ精製カード中でサンプルを調製するために適切なシステムであって、マイクロ精製カード上でサンプルローディングインレットに対して圧力下で流体的に接続され得るサンプルインプット流体接続を有するシステムと、
前記マイクロ精製カード上で溶出インレットに対してサンプルローディングインレットへ圧力下で流体的に接続され得る溶出インプット流体接続と、
前記サンプルインプット流体および溶出インプット流体接続を受容する位置でマイクロ精製カードを保持し得るカードホルダーであって、
前記マイクロ精製カード上の溶解領域を少なくとも約90℃まで加熱し得るヒーターと、
前記マイクロ精製カード上の分子捕獲領域を約40℃より高くまで加熱し得、かつ前記分子捕獲領域を約30℃未満まで冷却し得る熱制御装置と
を有するカードホルダーと、
前記溶出チップを出てくる分子を含む溶解流体を受容し得る位置決め可能な流体収集ホルダーと、
を有する、システム。
【請求項36】
請求項35記載のシステムにおいて、前記熱制御装置は、前記マイクロ精製カード上の分子捕獲領域を少なくとも約95℃まで加熱し得、かつ前記分子捕獲領域を約−20℃まで冷却し得るものである。
【請求項37】
請求項35記載のシステムにおいて、前記カードホルダーは前記マイクロ精製カードを受容するためのスロットを有するものである。
【請求項38】
カードベースのサンプル調製システムを用いて分子を収集する方法であって、
細胞と第一の緩衝液とを有するサンプルを圧力下で、マイクロ精製カード上でサンプルローディングインレットから溶解領域に対して流体連通させる工程と、
前記溶解領域中のサンプルを、周囲圧力よりも大きい1若しくはそれ以上の圧力で約100℃〜約150℃の範囲の温度まで加熱して、前記細胞を溶解して溶解された細胞フラグメントと分子とを生じる工程と、
約90℃より高い温度で前記溶解された細胞フラグメントから分子を濾過する工程と、
分子捕獲物質またはデバイスを用いて前記濾過された分子の少なくとも一部を捕獲する工程と、
溶出チップを通じて第二の緩衝液を用いて前記捕獲された分子の少なくとも一部を溶出させる工程であって、前記第二の緩衝液が前記第一の緩衝液と同じかまたは異なっているものである、前記溶出させる工程と、
前記溶出された分子および第二の緩衝液の少なくとも一部を、位置決め可能な流体収集ホルダー中に収集する工程と、
を有する、方法。
【請求項39】
請求項38記載の方法において、この方法は、さらに、
マイクロ精製カード中でサンプルを調製するために適切なシステムにマイクロ精製カードを挿入する工程を有するものである。
【請求項40】
請求項38記載の方法において、前記1つまたは両方の緩衝液は、DNase、RNAse、インヒビター、塩、緩衝液、界面活性剤、水、有機溶媒、酸、塩基またはその任意の組み合わせを有するものである。
【請求項41】
カードベースのサンプル調製システムを用いて分子を収集する方法であって、
サンプルローディングインレットからマイクロ精製カード上の加熱領域に対して圧力下でサンプルを流体的に連通させる工程と、
前記ヒーター領域中のサンプルを、周囲圧力よりも大きい1つ以上の圧力で約100℃から約150℃の範囲の温度まで加熱して、前記サンプルの少なくとも一部を破壊する工程と、
約90℃より高い温度でサンプルフラグメントから分子を濾過する工程と、
分子捕獲物質またはデバイスを用いて前記濾過された分子の少なくとも一部を捕獲する工程と、
溶出チップを通じて前記捕獲された分子の少なくとも一部を溶出させる工程と、
前記溶出された分子の少なくとも一部を、位置決め可能な流体収集ホルダー中に収集する工程と、
を有する、方法。
【請求項42】
請求項41記載の方法において、この方法は、さらに、
マイクロ精製カード中でサンプルを調製するために適切なシステムにマイクロ精製カードを挿入する工程を有するものである。
【請求項43】
請求項41記載の方法において、1若しくはそれ以上の緩衝液は、前記サンプルが破壊される前、後、又はその両方で前記サンプルに添加されるものである。
【請求項44】
請求項41記載の方法において、1若しくはそれ以上の緩衝液は、DNase、RNAse、インヒビター、塩、緩衝液、界面活性剤、水、有機溶媒、酸、塩基またはその任意の組み合わせを有するものである。
【請求項45】
カードベースのサンプル調製システムを用いて、溶解された細胞から分子を収集する方法であって、
サンプルローディングインレットからマイクロ精製カード上の溶解領域に対して圧力下で細胞および第一の緩衝液を含むサンプルを流体的に連通させる工程と、
前記溶解領域中の細胞を、溶解剤を用いて周囲圧力よりも大きい1つ以上の圧力で溶解させて、溶解された細胞フラグメントおよび分子を生じさせる工程と、
前記溶解された細胞フラグメントから分子の少なくとも一部を濾過する工程と、
分子捕獲物質またはデバイスを用いて前記濾過された分子の少なくとも一部を捕獲する工程と、
溶出チップを通じて、第二の緩衝液を用いて前記捕獲された分子の少なくとも一部を溶出させ、前記第二の緩衝液が第一の緩衝液と同じかまたは異なっている工程と、
前記溶出された分子の少なくとも一部および第二の緩衝液を、位置決め可能な流体収集ホルダー中に収集する工程と、
を有する、方法。
【請求項46】
請求項45記載の方法において、前記溶解領域中の細胞を溶解する工程は、さらに、前記溶解領域中の前記細胞を最大約150℃の温度まで加熱する工程を有するものである。
【請求項47】
請求項46記載の方法において、前記溶解領域は、約90℃から約150℃の範囲の温度まで加熱されるものである。
【請求項48】
請求項47記載の方法において、前記細胞は芽胞を含むものである。
【請求項49】
請求項45記載の方法において、前記分子の少なくとも一部は、約90℃より高い温度で溶解された細胞フラグメントから濾過されるものである。
【請求項50】
請求項45記載の方法において、前記分子はRNA、mRNAまたはその任意の組み合わせを含むものである。
【請求項51】
請求項45記載の方法において、RNAseインヒビターは、溶解領域に存在するものである。
【請求項52】
請求項38記載の方法において、この方法は、さらに、
前記マイクロ精製カードを、マイクロ精製カード中でサンプルを調製するために適切なシステム中に挿入する工程を有するものである。
【請求項53】
請求項38記載の方法において、前記緩衝液のうちの1つまたは両方は、DNase、RNAse、インヒビター、塩、緩衝液、界面活性剤、水、有機溶媒、酸、塩基またはその任意の組み合わせを有するものである。
【請求項1】
マイクロ精製カードであって、
実質的に平面に配向され、サンプルから分子を抽出し得る複数の流体構成要素を有し、前記複数の流体構成要素が、
サンプルローディングインレットと、
溶出インレットと、
溶解されたサンプルを提供するため、少なくとも約90℃に加熱され得、かつ環境大気圧よりも少なくとも約10psi大きくまで加圧され得る溶解領域と、
前記溶解サンプルから分子を濾過し得るフィルターと、
少なくとも約40℃に加熱され得る分子捕獲領域と、
溶出チップと、
を有し、
前記サンプルローディングインレットは、前記溶解領域と流体連通しており、前記溶解領域は、前記フィルターと流体連通しており、前記フィルターは、前記分子捕獲領域に対して1若しくはそれ以上の分子を流体的に連通し得、かつ前記分子捕獲領域は、溶出インレットおよび溶出チップの両方と流体連通し得る、マイクロ精製カード。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記サンプルは、天然に由来するか、合成由来であるか、または天然由来および合成由来の両方である。
【請求項3】
請求項2記載のマイクロ精製カードにおいて、前記天然に由来する分子は、核酸、アミノ酸、炭水化物、塩、多糖、またはその任意の組み合わせを含むものである。
【請求項4】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、このマイクロ精製カードは、さらに、
前記サンプルローディングインレットを密閉し得るサンプルキャップを有し、前記サンプルキャップは、圧力差に供された場合それを通じた流体の流れを可能にし得、かつ前記サンプルキャップは圧力差に供されない場合それを通じた流体の流れを妨げ得るものである。
【請求項5】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、2若しくはそれ以上の前記流体構成要素は、2若しくはそれ以上の前記流体構成要素の平面に対して平行に配置されたカード型材料を用いて構造的に配向されるものである。
【請求項6】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記溶解領域は、前記フィルターに対向して配置されるフィルターキャップを用いて囲まれ、前記フィルターキャップおよびフィルターは、複数の流体構成要素の平面に対して実質的に平行に配向されているものである。
【請求項7】
請求項6記載のマイクロ精製カードにおいて、前記フィルターキャップは、十分な熱伝導率および十分な薄さの物質から構成され、その上での約140℃未満の接触温度を有する外部ヒーターとの接触によって、前記溶解領域内の液体を約3分未満で約100℃より高い温度に達し得るものである。
【請求項8】
請求項6記載のマイクロ精製カードにおいて、前記溶解領域に隣接する前記フィルター表面は、生体分子の選択的な吸着のために官能化されるとして特徴付けられるものである。
【請求項9】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記フィルターは、目詰まりの前に少なくとも約100,000個の溶解された細胞を濾過できるのに十分な面積である。
【請求項10】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記溶出チップは、前記分子捕獲領域との流体連通に比較してサイズの小さい開口部へ傾斜付けられているとして特徴付けられるものである。
【請求項11】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記溶出チップは、約70マイクロリットル未満の容積を有するとして特徴付けられるものである。
【請求項12】
請求項11記載のマイクロ精製カードにおいて、前記溶出チップは、約0.05マイクロリットルより大きい容積を有するとして特徴付けられるものである。
【請求項13】
請求項12記載のマイクロ精製カードにおいて、前記溶出チップはピペットチップを有するものである。
【請求項14】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記溶出チップは、前記マイクロ精製カードの一部から延び、かつ外部サンプル収集バイアル中に分子を流し得るものである。
【請求項15】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記溶解領域は少なくとも約120℃まで加熱され得、かつ最大で少なくとも約80psiまで加圧され得るものである。
【請求項16】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記溶解領域は外部ヒーターに近接して配置され得るものである。
【請求項17】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記溶出インレットは前記マイクロ精製カードの外部の流体供給源に対して流体的に連通され得るものである。
【請求項18】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記分子捕獲領域は少なくとも約95℃まで加熱され得るものである。
【請求項19】
請求項18記載のマイクロ精製カードにおいて、前記分子捕獲領域は約150℃まで加熱され得るものである。
【請求項20】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記分子捕獲領域は少なくとも約4℃まで冷却され得るものである。
【請求項21】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記分子捕獲領域は、前記マイクロ精製カードに不可欠な取り外し不能領域、取り外し可能なカートリッジ、またはその両方を有するものである。
【請求項22】
請求項21記載のマイクロ精製カードにおいて、前記分子捕獲領域は、前記フィルターによって濾過され得る1若しくはそれ以上のタイプの分子を選択的に捕獲し得る、捕獲物質または捕獲デバイスを有するものである。
【請求項23】
請求項21記載のマイクロ精製カードにおいて、前記捕獲デバイスはマイクロアレイを有するものである。
【請求項24】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、前記分子捕獲領域は、外部ヒーター、外部冷却器、またはその両方に近接して配置され得るものである。
【請求項25】
請求項1記載のマイクロ精製カードにおいて、このマイクロ精製カードは、さらに、
任意の2若しくはそれ以上の前記流体構成要素の間に流体的に配置された1若しくはそれ以上の一方向流体バルブ、またはチャネルを有し、一度、前記分子捕獲領域を通過した溶解されたサンプルから流体的に分子を輸送し得るものである。
【請求項26】
使い捨て可能なマイクロ精製カードであって、
サンプルから分子を抽出し得る複数の流体構成要素を有する射出成形カードを有し、前記複数の流体構成要素が、溶解領域と流体連通し得るサンプルローディングインレットを有し、前記溶解領域が、フィルターと流体連通しており、前記フィルターが分子捕獲領域に対して1若しくはそれ以上の分子を流体連通し得、かつ前記分子捕獲領域が、溶出インレットおよび溶出チップと流体連通され得るものである、マイクロ精製カード。
【請求項27】
請求項26記載の使い捨て可能なマイクロ精製カードにおいて、このマイクロ精製カードは、さらに、
前記サンプルローディングインレットを密閉し得るサンプルキャップを有し、前記サンプルキャップは、圧力差に供された場合それを通じた流体の流れを可能にし得、かつ前記サンプルキャップは圧力差に供されない場合それを通じた流体の流れを妨げ得るものである。
【請求項28】
請求項26記載の使い捨て可能なマイクロ精製カードにおいて、各々の前記流体構成要素の一部は射出成形カードによって提供されるものである。
【請求項29】
請求項26記載の使い捨て可能なマイクロ精製カードにおいて、前記サンプルは、1若しくはそれ以上の細胞を有するものである。
【請求項30】
上昇した温度および圧力においてマイクロ精製カード中でサンプルを調製するために適切なシステムであって、
前記マイクロ精製カード上のサンプルローディングインレットに対して圧力下で流体連通され得るサンプルインプット流体接続と、
前記マイクロ精製カード上の溶出インレットに対して圧力下でサンプルローディングインレットに流体接続し得る溶出インプット流体接続と、
前記サンプルインプット流体および溶出インプット流体接続を受容するように前記マイクロ精製カードを位置的に保持し得るカードホルダーであって、
前記マイクロ精製カード上の溶解領域を少なくとも約90℃まで加熱し得るヒーターと、
前記マイクロ精製カード上の分子捕獲領域を約40℃より高くまで加熱し得、かつ前記分子捕獲領域を30℃未満まで冷却し得る熱制御装置と
を有するカードホルダーと、
前記マイクロ精製カード上で溶出チップを出る流体を受容するための2若しくはそれ以上の収集流体レセプタクルを交互に配置し得る位置決め可能な流体収集ホルダーと、
を有する、システム。
【請求項31】
請求項30記載のシステムにおいて、前記流体収集レセプタクルの一つは、廃棄用流体収集レセプタクルであり、かつ他の前記流体収集レセプタクルは溶出用流体レセプタクルであり、前記位置決め可能な流体収集ホルダーは、前記溶出チップから廃棄用流体レセプタクルに出る廃液を受容するように、または前記溶出チップから溶出用流体レセプタクルへ出てくる溶出液を受容するように、交互にスライド可能に配置され得るものである。
【請求項32】
請求項30記載のシステムにおいて、前記熱制御装置は、前記マイクロ精製カード上の分子捕獲領域を少なくとも約95℃まで加熱し得、かつ前記分子捕獲領域を約−20℃まで冷却し得るものである。
【請求項33】
請求項30のシステムにおいて、このシステムは、さらに、
識別タグを読み取るためのスキャナーを有するものである。
【請求項34】
請求項30記載のシステムにおいて、前記カードホルダーは、前記マイクロ精製カードを受容するためのスロットを有するものである。
【請求項35】
上昇した温度および圧力において1つ以上の使い捨て可能なマイクロ精製カードを用いてサンプルから分子を収集するために適切なシステムであって、
1若しくはそれ以上の使い捨て可能なマイクロ精製カードであって、1若しくはそれ以上の細胞を有するサンプルから分子を抽出し得る複数の流体構成要素を有する射出成形カードを有し、前記複数の流体構成要素が、溶解領域と流体連通し得るサンプルローディングインレットを有し、前記溶解領域が、フィルターと流体連通されており、前記フィルターが、分子捕獲領域に対して1つ以上の分子を流体連通し得、かつ前記分子捕獲領域が、溶出インレットおよび溶出チップと流体連通し得る、マイクロ精製カードと、
マイクロ精製カード中でサンプルを調製するために適切なシステムであって、マイクロ精製カード上でサンプルローディングインレットに対して圧力下で流体的に接続され得るサンプルインプット流体接続を有するシステムと、
前記マイクロ精製カード上で溶出インレットに対してサンプルローディングインレットへ圧力下で流体的に接続され得る溶出インプット流体接続と、
前記サンプルインプット流体および溶出インプット流体接続を受容する位置でマイクロ精製カードを保持し得るカードホルダーであって、
前記マイクロ精製カード上の溶解領域を少なくとも約90℃まで加熱し得るヒーターと、
前記マイクロ精製カード上の分子捕獲領域を約40℃より高くまで加熱し得、かつ前記分子捕獲領域を約30℃未満まで冷却し得る熱制御装置と
を有するカードホルダーと、
前記溶出チップを出てくる分子を含む溶解流体を受容し得る位置決め可能な流体収集ホルダーと、
を有する、システム。
【請求項36】
請求項35記載のシステムにおいて、前記熱制御装置は、前記マイクロ精製カード上の分子捕獲領域を少なくとも約95℃まで加熱し得、かつ前記分子捕獲領域を約−20℃まで冷却し得るものである。
【請求項37】
請求項35記載のシステムにおいて、前記カードホルダーは前記マイクロ精製カードを受容するためのスロットを有するものである。
【請求項38】
カードベースのサンプル調製システムを用いて分子を収集する方法であって、
細胞と第一の緩衝液とを有するサンプルを圧力下で、マイクロ精製カード上でサンプルローディングインレットから溶解領域に対して流体連通させる工程と、
前記溶解領域中のサンプルを、周囲圧力よりも大きい1若しくはそれ以上の圧力で約100℃〜約150℃の範囲の温度まで加熱して、前記細胞を溶解して溶解された細胞フラグメントと分子とを生じる工程と、
約90℃より高い温度で前記溶解された細胞フラグメントから分子を濾過する工程と、
分子捕獲物質またはデバイスを用いて前記濾過された分子の少なくとも一部を捕獲する工程と、
溶出チップを通じて第二の緩衝液を用いて前記捕獲された分子の少なくとも一部を溶出させる工程であって、前記第二の緩衝液が前記第一の緩衝液と同じかまたは異なっているものである、前記溶出させる工程と、
前記溶出された分子および第二の緩衝液の少なくとも一部を、位置決め可能な流体収集ホルダー中に収集する工程と、
を有する、方法。
【請求項39】
請求項38記載の方法において、この方法は、さらに、
マイクロ精製カード中でサンプルを調製するために適切なシステムにマイクロ精製カードを挿入する工程を有するものである。
【請求項40】
請求項38記載の方法において、前記1つまたは両方の緩衝液は、DNase、RNAse、インヒビター、塩、緩衝液、界面活性剤、水、有機溶媒、酸、塩基またはその任意の組み合わせを有するものである。
【請求項41】
カードベースのサンプル調製システムを用いて分子を収集する方法であって、
サンプルローディングインレットからマイクロ精製カード上の加熱領域に対して圧力下でサンプルを流体的に連通させる工程と、
前記ヒーター領域中のサンプルを、周囲圧力よりも大きい1つ以上の圧力で約100℃から約150℃の範囲の温度まで加熱して、前記サンプルの少なくとも一部を破壊する工程と、
約90℃より高い温度でサンプルフラグメントから分子を濾過する工程と、
分子捕獲物質またはデバイスを用いて前記濾過された分子の少なくとも一部を捕獲する工程と、
溶出チップを通じて前記捕獲された分子の少なくとも一部を溶出させる工程と、
前記溶出された分子の少なくとも一部を、位置決め可能な流体収集ホルダー中に収集する工程と、
を有する、方法。
【請求項42】
請求項41記載の方法において、この方法は、さらに、
マイクロ精製カード中でサンプルを調製するために適切なシステムにマイクロ精製カードを挿入する工程を有するものである。
【請求項43】
請求項41記載の方法において、1若しくはそれ以上の緩衝液は、前記サンプルが破壊される前、後、又はその両方で前記サンプルに添加されるものである。
【請求項44】
請求項41記載の方法において、1若しくはそれ以上の緩衝液は、DNase、RNAse、インヒビター、塩、緩衝液、界面活性剤、水、有機溶媒、酸、塩基またはその任意の組み合わせを有するものである。
【請求項45】
カードベースのサンプル調製システムを用いて、溶解された細胞から分子を収集する方法であって、
サンプルローディングインレットからマイクロ精製カード上の溶解領域に対して圧力下で細胞および第一の緩衝液を含むサンプルを流体的に連通させる工程と、
前記溶解領域中の細胞を、溶解剤を用いて周囲圧力よりも大きい1つ以上の圧力で溶解させて、溶解された細胞フラグメントおよび分子を生じさせる工程と、
前記溶解された細胞フラグメントから分子の少なくとも一部を濾過する工程と、
分子捕獲物質またはデバイスを用いて前記濾過された分子の少なくとも一部を捕獲する工程と、
溶出チップを通じて、第二の緩衝液を用いて前記捕獲された分子の少なくとも一部を溶出させ、前記第二の緩衝液が第一の緩衝液と同じかまたは異なっている工程と、
前記溶出された分子の少なくとも一部および第二の緩衝液を、位置決め可能な流体収集ホルダー中に収集する工程と、
を有する、方法。
【請求項46】
請求項45記載の方法において、前記溶解領域中の細胞を溶解する工程は、さらに、前記溶解領域中の前記細胞を最大約150℃の温度まで加熱する工程を有するものである。
【請求項47】
請求項46記載の方法において、前記溶解領域は、約90℃から約150℃の範囲の温度まで加熱されるものである。
【請求項48】
請求項47記載の方法において、前記細胞は芽胞を含むものである。
【請求項49】
請求項45記載の方法において、前記分子の少なくとも一部は、約90℃より高い温度で溶解された細胞フラグメントから濾過されるものである。
【請求項50】
請求項45記載の方法において、前記分子はRNA、mRNAまたはその任意の組み合わせを含むものである。
【請求項51】
請求項45記載の方法において、RNAseインヒビターは、溶解領域に存在するものである。
【請求項52】
請求項38記載の方法において、この方法は、さらに、
前記マイクロ精製カードを、マイクロ精製カード中でサンプルを調製するために適切なシステム中に挿入する工程を有するものである。
【請求項53】
請求項38記載の方法において、前記緩衝液のうちの1つまたは両方は、DNase、RNAse、インヒビター、塩、緩衝液、界面活性剤、水、有機溶媒、酸、塩基またはその任意の組み合わせを有するものである。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17】
【図18】
【図19−1】
【図19−2】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【図25】
【図26】
【図27−1】
【図27−2】
【図28−1】
【図28−2】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17】
【図18】
【図19−1】
【図19−2】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【図25】
【図26】
【図27−1】
【図27−2】
【図28−1】
【図28−2】
【図29】
【公表番号】特表2010−507071(P2010−507071A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532413(P2009−532413)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/021741
【国際公開番号】WO2008/133640
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(509105189)アークシス バイオテクノロジーズ、インク. (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/021741
【国際公開番号】WO2008/133640
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(509105189)アークシス バイオテクノロジーズ、インク. (1)
【Fターム(参考)】
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