説明

使い捨て吸収性物品

【課題】液を拡散させて吸収体全体を有効に活用して漏れを確実に防止できる使い捨て吸収性物品を提供する。
【解決手段】透液性表面シート2と不透液性裏面シート3との間に吸収体4を配設する。吸収体4の上層吸収体5と下層吸収体6との間に液拡散性シート7を配設する。上層吸収体5と下層吸収体6との間に液拡散層を形成できる。透液性表面シート2を介して上層吸収体5を通過した液を液拡散性シート7で拡散してから下層吸収体6で吸収できる。吸収体4を効率良く使用できる。吸収体4で液の漏れをより確実に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳幼児用、大人用または失禁用パッドなどの使い捨て吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の使い捨て吸収性物品としては、少なくとも透液性表面シート、不透液性裏面シートおよびこの透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に配設された吸収体とを有する吸収性物品本体を備えている。この吸収性物品本体の上面に、この吸収性物品本体の長手方向に沿って配設された拡散シートが接合され、この拡散シートの上面に、吸収性物品本体の長手方向に沿って配設した透液性上面シートが接合された構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3474497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の使い捨て吸収性物品では、拡散シートによって液が拡散される効果があるものの、透液性表面シートや透液性上面シート、拡散シートでは液を吸収できないため、これら透液性表面シート、透液性上面シートおよび拡散シートに残ってしまった液が逆戻りして肌を濡らしたりしてしまうおそれがある。また、拡散シートの上面に液を吸収させる吸収体が存在しないため、この吸収体による液の吸収量が十分でなく、液が漏れてしまうおそれもあるという問題を有している。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、液を拡散させて吸収体全体を有効に活用して漏れを確実に防止できる使い捨て吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の使い捨て吸収性物品は、透液性表面シートと、不透液性裏面シートと、これら透液性表面シートおよび不透液性裏面シートの間に配設された長手方向を有する吸収体とを具備し、前記吸収体は、前記透液性表面シート側に位置する上層吸収体と、前記不透液性裏面シート側に位置する下層吸収体とが重ね合わされて構成され、前記上層吸収体は、長手寸法が前記下層吸収体の長手寸法と略等しく、幅寸法が前記下層吸収体の幅寸法より小さく、これら上層吸収体および下層吸収体の間には、これら上層吸収体および下層吸収体の長手方向に沿った長手方向を有する液拡散性シートが配設され、この液拡散性シートは、長手寸法が前記上層吸収体の長手寸法に略等しく、幅寸法が前記上層吸収体の幅寸法より小さいものである。
【0006】
そして、上層吸収体と下層吸収体との間の液拡散性シートによって、これら上層吸収体と下層吸収体との間に液拡散層が形成される。したがって、上層吸収体を通った液が液拡散性シートによって拡散されて下層吸収体に吸収されるので、吸収体を効率良く使用できるから、液の漏れを防止できる。また、液拡散性シートの長手寸法を上層吸収体の長さ寸法と略等しくし、この液拡散性シートの幅寸法を上層吸収体より小さくしたことにより、液が液拡散性シートによって長手方向に沿って拡散されるから、液が幅方向にしみ出すことを防止できる。よって、液を拡散させて吸収体全体を有効に活用して漏れを確実に防止できる。
【0007】
請求項2記載の使い捨て吸収性物品は、請求項1記載の使い捨て吸収性物品において、上層吸収体および下層吸収体のそれぞれは、パルプと高分子吸収材とを有し、前記パルプの質量および坪量それぞれは、前記上層吸収体より前記下層吸収体の方が大きく、前記高分子吸収材の質量は、前記上層吸収体より前記下層吸収体の方が大きく、前記高分子吸収体の坪量は、前記下層吸収体より前記上層吸収体の方が大きいものである。
【0008】
そして、高分子吸収材によって上層吸収体および下層吸収体のそれぞれにおいて液が確実に吸収されるとともに、上層吸収体の高分子吸収材の坪量を下層吸収体の高分子吸収材の坪量より大きくしたことにより、液の逆戻りを防止できる。
【0009】
請求項3記載の使い捨て吸収性物品は、請求項1または2記載の使い捨て吸収性物品において、液拡散性シートは、上層吸収体および下層吸収体のいずれかに部分的に接合され、前記上層吸収体には、長手方向の一端部および他端部のいずれかに変位した位置に長手方向に沿った開口部が形成され、この開口部では、透液性表面シートと液拡散性シートとが接合されているものである。
【0010】
そして、開口部には上層吸収体が配設されていないので、開口部に位置する透液性表面シートから液が入るとすぐに、この液が液拡散性シートに伝わるから、この液を拡散性シートにて拡散しやすくなる。液拡散性シートが上層吸収体および下層吸収体のいずれかに部分的に接合され、この透液性表面シートが開口部で透液性表面シートに接合されているので、この液拡散性シートがずれにくい。
【0011】
請求項4記載の使い捨て吸収性物品は、請求項1ないし3のいずれか記載の使い捨て吸収性物品において、液拡散性シートと下層吸収体との間の層間部に高分子吸収材が配設され、前記下層吸収体の高分子吸収材の質量より、上層吸収体の高分子吸収材の質量が小さく、この上層吸収体の高分子吸収材の質量より、前記層間部の高分子吸収材の質量が小さいものである。
【0012】
そして、液拡散性シートと下層吸収体との間の層間部に高分子吸収材が配設され、この高分子吸収材の質量は、下層吸収体より上層吸収体の方が小さく、この上層吸収体より層間部の方が小さいので、液拡散性シートによって拡散されて広がった液が、層間部に位置する高分子吸収材によって確実に吸収できる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の使い捨て吸収性物品によれば、上層吸収体を通った液が液拡散性シートにて拡散されて下層吸収体に吸収されるので、吸収体を効率良く使用できるから、液の漏れを防止できる。また、液が液拡散性シートにて長手方向に沿って拡散されるから、液が幅方向にしみ出すことを防止できる。よって、液を拡散させて吸収体全体を有効に活用して漏れを確実に防止できる。
【0014】
請求項2記載の使い捨て吸収性物品によれば、高分子吸収材によって上層吸収体および下層吸収体のそれぞれにおいて液を確実に吸収できるとともに、上層吸収体の高分子吸収材の坪量を下層吸収体の高分子吸収材の坪量より大きくしたことにより、液の逆戻りを防止できる。
【0015】
請求項3記載の使い捨て吸収性物品によれば、開口部に位置する透液性表面シートから液が入ると、この液がすぐに液拡散性シートに伝わるから、この液を拡散性シートで拡散しやすくできる。また、液拡散性シートが上層吸収体および下層吸収体のいずれかに部分的に接合され、この透液性表面シートが開口部で透液性表面シートに接合されているので、この液拡散性シートをずれにくい。
【0016】
請求項4記載の使い捨て吸収性物品によれば、液拡散性シートと下層吸収体との間の層間部に高分子吸収材を配設し、この高分子吸収材の質量が、下層吸収体より上層吸収体の方が小さく、この上層吸収体より層間部の方が小さいので、液拡散性シートにて拡散されて広がった液が、層間部に位置する高分子吸収材にて確実に吸収できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の使い捨て吸収性物品の第1の実施の形態の構成を使い捨ておむつについて図面を参照して説明する。
【0018】
図1および図2において、1は吸収性物品本体である。この吸収性物品本体1は、液透過性を有する透液性表面シート2と、液不透過性を有する不透液性裏面シート3と、この透液性表面シート2および不透液性裏面シート3の間に配設された液吸収性を有する吸収体4とを具備している。
【0019】
そして、この吸収性部品本体1は、図1に示すように、展開状態で長手方向の中央部を中心として略線対称に形成されているとともに、幅方向の中央部を中心として線対称の左右対称に形成されて、略砂時計形状となっている。すなわち、この吸収性物品本体1は、長手方向に沿って一端側に前側部分1aが形成されており、他端側に後側部分1bとが形成されて、これら前側部分1aおよび後側部分1bにて構成されている。
【0020】
さらに、透液性表面シート2は、尿などの排泄液を吸収体4へ透過できるように液透過性を有しており、例えば織布、不織布、多孔性フィルム、合成繊維などにて吸収性物品本体1の略全表面を覆う形状に成形されている。
【0021】
また、不透液性裏面シート3は、上面周縁部が透液性表面シート2の下面周辺部に接着剤などで接合されて、吸収性物品本体1の略全裏面を覆う形状に成形されている。そして、この不透液性裏面シート3は、尿などの排泄液にて下着などの他の衣類、或いはシートなどを汚損しないように液不透過性を有しており、例えばポリエチレン樹脂などの合成樹脂にて成形されている。
【0022】
さらに、吸収体4は、長手方向の中央部を中心として略線対称に形成されているとともに、幅方向の中央部を中心として線対称に形成されて、吸収性部品本体1より一回り小さい略砂時計形状となっている。ここで、この吸収体4は、吸収性物品本体1より小さな相似形に形成されている。
【0023】
また、この吸収体4は、透液性表面シート2の下面中央部と不透液性裏面シート3の上面中央部との間に扁平状に配設されており、吸収性物品本体1の少なくとも長手方向の中央域を含む位置に配設されている。
【0024】
そして、この吸収体4は、透液性表面シート2側に位置する上層吸収体5と、不透液性裏面シート3側に位置する下層吸収体5とが重ね合わされて構成されている。この下層吸収体6は、吸収性物品本体1より小さな相似形である略砂時計形状に形成されている。言い換えると、この下層吸収体6は、長手方向の中央部の両側部がそれぞれ凹状に切り欠かれた略砂時計形状に形成されている。そして、この下層吸収体6は、吸収性物品本体1の長手方向および幅方向それぞれの中央部に取り付けられている。
【0025】
また、上層吸収体5は、下層吸収体6の長手寸法と略等しい長手寸法を有するとともに、この下層吸収体6の長手方向の中央部に位置する最も幅寸法が小さな股下部1cの幅寸法より小さな幅寸法を有する細長矩形状に形成されている。すなわち、これら上層吸収体5および下層吸収体6は、長手寸法が略等しく、かつ上層吸収体5の幅寸法より下層吸収体6の幅寸法が大きく形成されて、この下層吸収体6が上層吸収体5より幅広に形成されている。
【0026】
そして、この上層吸収体5は、この上層吸収体5の幅方向の中心を、下層吸収体6の幅方向の中央部に対向させつつ、下層吸収体6の長手方向に長手方向を揃えた状態で、この下層吸収体6上に重ね合わされている。さらに、これら上層吸収体5および下層吸収体6のそれぞれは、図示しないパルプと高分子吸収材とを有している。具体的に、これら上層吸収体5および下層吸収体6は、尿などの排泄生理液を吸収できる、例えばパルプを主材料として一部に高分子吸材などの物質を含んだ材料がティッシュにて包んで覆われて形成されている。
【0027】
ここで、上層吸収体5のパルプの質量および坪量は、下層吸収体6のパルプの質量および坪量より大きい。したがって、このパルプの質量は、上層吸収体5よりも下層吸収体6の方が大きい。さらに、このパルプの坪量である目付量は、上層吸収体5よりも下層吸収体6の方が大きい。また、この上層吸収体5の高分子吸収材の質量は、下層吸収体6の高分子吸収材の質量より少ない。さらに、この上層吸収体5の高分子吸収材の坪量は、下層吸収体6の高分子吸収材の坪量より大きい。したがって、この高分子吸収材の質量は、上層吸収体5より下層吸収体6の方が大きい。さらに、この高分子吸収材の坪量である目付量は、下層吸収体6より上層吸収体5の方が大きい。
【0028】
具体的に、これら上層吸収体5および下層吸収体6のパルプの坪量は、100g/m以上400g/mの範囲で、上層吸収体5<下層吸収体6となるようにするのが好ましい。また、これら上層吸収体5および下層吸収体6の高分子吸収材の坪量は、50g/m以上200g/mの範囲で、上層吸収体5>下層吸収体6となるようにするのが好ましい。
【0029】
例えば、上層吸収体5の面積が0.04mで、下層吸収体6の面積が0.08mであって、上層吸収体5のパルプの質量が5g、下層吸収体6のパルプの質量が16gで、上層吸収体5の高分子吸収材が4g、下層吸収体6の高分子吸収材が6gである場合には、上層吸収体5のパルプの坪量が125g/mとなり、下層吸収体6のパルプの坪量が200g/mとなるとともに、上層吸収体5の高分子吸収材の坪量が100g/mとなり、下層吸収体6の高分子吸収材の坪量が75g/mとなる。
【0030】
ここで、上層吸収体5に含まれている高分子吸収材は、下層吸収体6に含まれている高分子吸収材よりも吸収速度が遅いものが好ましい。例えば、ボルテックス法で、上層吸収体5に含まれている高分子吸収材の吸収速度が40秒以上で、下層吸収体6に含まれている高分子吸収材の吸収速度が40秒以下とされている。さらに、下層吸収体6に含まれてる高分子吸収材は、上層吸収体5に含まれている高分子吸収材より吸収量の多いものが好ましい。
【0031】
また、これら上層吸収体5と下層吸収体6との間には、液拡散性を有する液拡散性シート7が配設されている。そして、この液拡散性シート7は、透液性を有しており、10g/m以上40g/m以下の坪量を有するシート、例えば繊維太さは2デニール(d)以上10デニール(d)以下の繊維を使用した親水性不織布や、複数の開口部を有する疎水性不織布などで形成された透液性シートで形成されている。
【0032】
そして、この液拡散性シート7は、上層吸収体5および下層吸収体6のそれぞれの長手方向に沿った長手方向を有している。すなわち、この液拡散性シート7は、上層吸収体5および下層吸収体6それぞれの長手寸法に略等しい長さ寸法を有するとともに、この上層吸収体5の幅寸法より小さな幅寸法を有する細長略矩形状に形成されて、この上部吸収体5より幅狭に形成されている。また、この液拡散性シート7は、透液性表面シート2より厚く形成された嵩高のシートにて構成されている。
【0033】
さらに、この液拡散性シート7は、この液拡散性シート7の幅方向の中心を、下層吸収体6の幅方向の中央部に対向させつつ、この下層吸収体6の長手方向に長手方向を揃えた状態で、この下層吸収体6と上層吸収体5との間に挿入されて取り付けられている。
【0034】
次に、上記一実施の形態の作用について説明する。
【0035】
吸収性物品本体1の前側部分1aが身体の腹側に位置し、この吸収性物品本体1の後側部分1bが身体の背側に位置し、この吸収性物品本体1の股下部1cが身体の股下を覆うように、この吸収性物品本体1の透液性表面シート2を身体に接触させて、この吸収性物品本体1を装着させる。
【0036】
上述したように、上記第1の実施の形態によれば、吸収性物品本体1の透液性表面シート2と不透液性裏面シート3との間に吸収体4を介在させ、この吸収体4の上層吸収体5と下層吸収体6との間に、液拡散性を有する液拡散性シート7を介在させたことによって、これら上層吸収体5と下層吸収体6との間に液拡散層が形成される。したがって、透液性表面シート2を介して上層吸収体5を通過した液が液拡散性シート7によって拡散されから下層吸収体6に吸収されるので、これら上層吸収体5および下層吸収体6にて構成された吸収体4を効率良く使用できる。したがって、この吸収体4にて液の漏れをより確実に防止できる。
【0037】
また、液拡散性シート7の長さを吸収体4の上層吸収体5および下層吸収体6それぞれの長さと略等しくし、さらに、この液拡散性シート7を上層吸収体5より幅狭にしたことにより、透液性表面シート2を通過した液が、この液拡散性シート7によって長手方向に沿って拡散される。したがって、この液拡散性シート7を設けたことにより、液が下層吸収体6の幅方向にしみ出すことを防止できる。
【0038】
さらに、この液拡散性シート7を透液性表面シート2より厚く形成したことにより、この液拡散性シート7によって形成される液拡散層が厚くなって潰れにくくなるから、この液拡散層の形状を保持しやすくできる。この結果、透液性表面シート2を通過した液を、液拡散性シート7にて拡散させながら、吸収体4にて吸収できるから、この吸収体4の全体を有効に活用することができるので、液の漏れを確実に防止できる。
【0039】
また、上層吸収体5および下層吸収体6に含まれている高分子吸収材によって液を確実に吸収できるとともに、上層吸収体5に含まれている高分子吸収材の坪量を、下層吸収体6に含まれている高分子吸収材の坪量より大きくしたことによって、液の逆戻りを防止できる。
【0040】
さらに、上層吸収体5を略矩形状とし、下層吸収体6を長手方向の中央部の両側部が凹状に切り欠かれた略砂時計形状としたことにより、装着時のフィット性や、製造の簡便性を向上できる。
【0041】
また、図3に示す第2の実施の形態のように、液拡散性シート7と下層吸収体6との間に層間部11を設けて、この層間部11に高分子吸収材12を介在させて配設することもできる。この層間部11に配設された高分子吸収材12の質量は、上層吸収体5に含まれている高分子吸収材の質量より小さい。また、この上層吸収体5に含まれている高分子吸収材の質量は、下層吸収体6に含まれている高分子吸収材の質量より小さい。すなわち、これら高分子吸収材12の質量については、下層吸収体6>上層吸収体5>層間部11の関係となるように、これら下層吸収体6、上層吸収体5および層間部11のそれぞれに充填されている。
【0042】
この結果、液拡散性シート7と下層吸収体6との間に層間部11を形成し、この層間部11に高分子吸収材12を配設し、高分子吸収材12の質量を、下層吸収体6>上層吸収体5>層間部11となるようにしたことにより、液拡散性シート7によって拡散されて広がった液が、層間部11に配設された高分子吸収材12によって確実に吸収できる。
【0043】
さらに、図4および図5に示す第3の実施の形態のように、上層吸収体5の長手方向の一端部である前端部に、長手方向に沿った開口部21を形成することもできる。この開口部21は、図4に示すように、吸収性物品本体1の前側部分1aに位置する上層吸収体5の前端縁から、この上層吸収体5の長手方向に沿った中央部より前側までに亘って形成されている。すなわち、この開口部21は、上層吸収体5の長手方向の中央部から、この長手方向の一端部である前端部に変位した位置に設けられている。
【0044】
さらに、この開口部21は、上層吸収体5の長手方向の一方の端縁部である前端縁部まで延在されている。また、この開口部21は、上層吸収体5の幅方向の中央部に設けられており、液拡散性シート7より幅狭に形成されている。そして、透液性表面シート2と液拡散性シート7とは、図5に示すように、開口部21において接着剤にて部分的に接着されて接合部22で接合されている。このとき、これら接合部22は、全面的に接合した場合には液が通過し難くなり吸収体4に吸収されにくくなるので、ホットメルト接着剤などを使用して、螺旋状に巻回したスパイラス状や、直線を平行に離間させたビート状などに間欠的に塗布されて接合されている。
【0045】
また、この液拡散性シート7は、この液拡散性シート7に部分的に塗布された接着剤によって上層吸収体5および下層吸収体6の少なくともいずれかの接合部23で部分的に接合されている。このとき、この液拡散性シート7は、上層吸収体5および下層吸収体6を覆うティッシュに接合されている。そして、このティッシュが透液性表面シート2に接合されている。
【0046】
この結果、吸収性物品本体1の前側部分1aの中央部に開口部21が形成され、この開口部21には上層吸収体5が配設されていないので、この開口部21に位置する透液性表面シート2から液が入るとすぐに、この液が液拡散性シート7に伝わるから、この液を液拡散性シート7にて拡散しやすくできる。また、液拡散性シート7が上層吸収体5および下層吸収体6のいずれかに部分的に接合され、さらに、この液拡散性シート7が開口部21で透液性表面シート2に接合されているので、この液拡散性シート7がずれにくい。
【0047】
さらに、この開口部21が形成されている場合に、液拡散性シート7を吸収体4とは異なる色の色付きとすることによって、この開口部21に色付きの液拡散性シート7が位置し、この開口部21以外の部分の液拡散性シート7が上層吸収体5によって隠れてしまうので、より開口部21を装着者に強調できるので、使い勝手を向上できる。
【0048】
なお、上記第3の実施の形態の液拡散性シート7と下層吸収体6との間の層間部11に高分子吸収材12を配設することもできる。この高分子吸収材12を、吸収性物品本体1の前側部分1aあるいは後側部分1bの開口部21が位置していない側、すなわち長手方向に沿って間欠的に層間部11に配設させる。
【0049】
すなわち、この開口部21の層間部11に高分子吸収材12を配設すると、この開口部21の上面に吸収体4が存在しないので、この高分子吸収材12が表面側に出てきてしまう可能性があるため、この部分に高分子吸収材12を配設しない方がよい。また、この開口部21を吸収性物品本体1の後側部分1bの中央部に設けてもよい。
【0050】
また、この開口部21を上層吸収体5の前端縁部まで延出させたが、この開口部21を上層吸収体5の前端縁部より内側の部分まで延出させてもよい。
【0051】
さらに、上記各実施の形態においては、吸収体4の形状は下層吸収体6が上層吸収体5より幅広であれば良いが、装着時のフィット性および製造の簡便性を考慮すると、この上層吸収体5を略矩形状とし、かつ下層吸収体6を長手方向の中央部の両側部が凹部に切り欠かれた略砂時計形状にすると良い。また、液拡散性シート7の形状は、特に限定されないが、製造の簡便性から略矩形状が良い。さらに、この液拡散性シート7は、液を透過する透液性を有するものであれば、この液拡散性シート7の素材自体は親水性および疎水性のどちらを有するものであってもよい。
【0052】
また、上層吸収体5および下層吸収体6に含まれている高分子吸収材は同一でも異なるものであってもよいが、上層吸収体5に含まれている高分子吸収材の吸収速度が早いと、液拡散性シート7による液拡散層が有効に使われない可能性があるので、少なくとも上層吸収体5に含まれている高分子吸収材の吸収速度が遅いほうがよい。
【0053】
さらに、吸収性物品本体1の縦方向を長手方向とし、この吸収性物品本体1の横方向を幅方向としたが、横方向に長手方向を有する吸収性物品本体1の場合には、この吸収性物品本体1の縦方向に沿った中央部に吸収体4や液拡散性シート7を取り付ければよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の使い捨て吸収性物品の第1の実施の形態を示す展開平面図である。
【図2】図1中のA−A断面図である。
【図3】本発明の使い捨て吸収性物品の第2の実施の形態を示す断面図である。
【図4】本発明の使い捨て吸収性物品の第3の実施の形態を示す展開平面図である。
【図5】図4中のB−B断面図である。
【符号の説明】
【0055】
2 透液性表面シート
3 不透液性裏面シート
4 吸収体
5 上層吸収体
6 下層吸収体
7 液拡散性シート
11 層間部
12 高分子吸収材
21 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートと、不透液性裏面シートと、これら透液性表面シートおよび不透液性裏面シートの間に配設された長手方向を有する吸収体とを具備し、
前記吸収体は、前記透液性表面シート側に位置する上層吸収体と、前記不透液性裏面シート側に位置する下層吸収体とが重ね合わされて構成され、
前記上層吸収体は、長手寸法が前記下層吸収体の長手寸法と略等しく、幅寸法が前記下層吸収体の幅寸法より小さく、
これら上層吸収体および下層吸収体の間には、これら上層吸収体および下層吸収体の長手方向に沿った長手方向を有する液拡散性シートが配設され、
この液拡散性シートは、長手寸法が前記上層吸収体の長手寸法に略等しく、幅寸法が前記上層吸収体の幅寸法より小さい
ことを特徴とした使い捨て吸収性物品。
【請求項2】
上層吸収体および下層吸収体のそれぞれは、パルプと高分子吸収材とを有し、
前記パルプの質量および坪量それぞれは、前記上層吸収体より前記下層吸収体の方が大きく、
前記高分子吸収材の質量は、前記上層吸収体より前記下層吸収体の方が大きく、
前記高分子吸収体の坪量は、前記下層吸収体より前記上層吸収体の方が大きい
ことを特徴とした請求項1記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項3】
液拡散性シートは、上層吸収体および下層吸収体のいずれかに部分的に接合され、
前記上層吸収体には、長手方向の一端部および他端部のいずれかに変位した位置に長手方向に沿った開口部が形成され、
この開口部では、透液性表面シートと液拡散性シートとが接合されている
ことを特徴とした請求項1または2記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項4】
液拡散性シートと下層吸収体との間の層間部に高分子吸収材が配設され、
前記下層吸収体の高分子吸収材の質量より、上層吸収体の高分子吸収材の質量が小さく、
この上層吸収体の高分子吸収材の質量より、前記層間部の高分子吸収材の質量が小さい
ことを特徴とした請求項1ないし3いずれか記載の使い捨て吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−167196(P2006−167196A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−364602(P2004−364602)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(391047503)白十字株式会社 (64)
【Fターム(参考)】