使い捨て吸収性物品
【課題】度変化物質に対して十分な量の尿がより効果的に供給され、所期の温度変化が発生するとともに、その温度変化が身体に対して効果的に伝達される、吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収体56の幅方向中央部のうち、少なくとも股間部から腹側部分にわたる部分に温度変化物質の融着部分40が設けられ、且つ吸収体56における温度変化物質の融着部分40の周囲には温度変化物質が融着されていない、使い捨て吸収性物品とする。
【解決手段】吸収体56の幅方向中央部のうち、少なくとも股間部から腹側部分にわたる部分に温度変化物質の融着部分40が設けられ、且つ吸収体56における温度変化物質の融着部分40の周囲には温度変化物質が融着されていない、使い捨て吸収性物品とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所謂トイレトレーニングに用いられる使い捨ておむつ、使い捨て吸収パッド等の、使い捨て吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トレーニング用の使い捨ておむつとしては、着用者に排尿を知覚させるために、尿を肌に接触させ、湿潤による不快感を強調する工夫を施したものが一般的であったが、肌のフヤケからカブレに繋がるおそれがあることから、尿を肌から遠ざけるものでありながら、着用者に排尿を知覚させるための技術開発が行われている。
この代表的なものが、ソルビトール等のように尿との接触により尿に温度変化をもたらす物質の利用である(例えば特許文献1、2参照)。特許文献1記載の技術では、ソルビトール等の温度変化物質を含む部材を、吸収要素の身体側に配置することが提案されている。また、特許文献2記載の技術では、浸透性層と不浸透性層との間にソルビトール等の温度変化物質を挟んでなる要素を、吸収性コア上に配置することが提案されている。
【特許文献1】特許3922722号公報
【特許文献2】特許3830901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の技術では、温度変化物質が粉粒体状のまま非固定で含有されているため、製品の流通過程又は使用中に温度変化物質が所定部位から移動し、温度変化物質に対する尿の供給が不足する、温度変化が身体に対して十分に伝達しなくなる等により、温度変化が不十分となるおそれがあった。
また、温度変化物質が移動しない場合であっても、温度変化物質含有部分が皺等の変形によって身体にフィットせず、温度変化物質含有部分への尿供給が不十分となることにより温度変化が不十分となる、或いは温度変化の身体への伝達が不十分となる、といった問題点があった。
そこで、本発明の主たる課題は、これらの問題点を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
股間部と、股間部の前側に延出する腹側部分と、股間部の後側に延出する背側部分とを有し、
前記腹側部分から背側部分までにわたり、液透過性表面シートと裏面側シートとの間に繊維集合体からなる吸収体が介在されてなる吸収部分が設けられ、
尿との接触により尿を冷却又は加熱する温度変化物質が含有された、使い捨て吸収性物品において、
前記吸収体の幅方向中央部のうち、少なくとも前記股間部から前記腹側部分にわたる部分に前記温度変化物質が融着され、且つ前記吸収体における前記温度変化物質の融着部分の周囲には前記温度変化物質が融着されていない、
ことを特徴とする使い捨て吸収性物品。
【0005】
(作用効果)
本発明では、吸収体の幅方向中央部のうち、少なくとも股間部から腹側部分にわたる部分に温度変化物質が融着されているため、少なくともこの部分には温度変化物質が確実に保持されるようになる。また、吸収体における温度変化物質の融着部分はその周囲の温度変化物質が融着されていない部分と比較してコシ(剛性)が高くなるため、温度変化物質を確実に保持する温度変化物質融着部分に皺や折れ曲がり等の変形が起こり難く、股間部から腹側部分にわたる部分が身体に良好にフィットするようになる。よって、本発明によれば、温度変化物質に対して十分な量の尿がより効果的に供給され、所期の温度変化が発生するとともに、その温度変化が身体に対して効果的に伝達されるようになる。なお、本発明における「融着」とは、温度変化物質が溶融状態で対象(吸収体)に付着した後に固化し、固化体が対象に固定された状態を意味する。なお、股間部とは、展開状態における腹側部分のウエスト端縁から背側部分のウエスト端縁までの前後方向中央を意味し、それよりも前側の部分及び後側の部分が腹側部分及び背側部分をそれぞれ意味する。
【0006】
<請求項2記載の発明>
展開状態における腹側部分のウエスト端縁から背側部分のウエスト端縁までの前後方向長さとして定まる製品長をLとしたとき、
少なくとも前記腹側部分のウエスト側端縁から股間側に0.15〜0.80Lの範囲にわたり、前記吸収体が設けられており、
少なくとも前記腹側部分のウエスト側端縁から股間側に0.25〜0.45Lの範囲にわたり、前記温度変化物質の融着部分が設けられている、
請求項1記載の使い捨て吸収性物品。
【0007】
(作用効果)
このような寸法を採用することによって、男女の排尿位置に温度変化物質の融着部分が位置するようになる。つまり、排尿時に尿が温度変化物質の融着部分に確実に当たりようになる。
【0008】
<請求項3記載の発明>
前記温度変化物質の融着部分は、鼠蹊部に沿い且つ鼠蹊部よりも幅が広くなるように、ウエスト側に向かうにつれて幅が拡大する形状を有している、請求項2記載の使い捨て吸収性物品。
【0009】
(作用効果)
温度変化物質の融着部分をこのような形状にすることによって、股間部における縦皺及び鼠蹊部に沿う皺が入り難く、股間部から腹側部分にかけてのフィット性がより一層のものとなる。
【0010】
<請求項4記載の発明>
前記吸収体の股間部に脚周りに沿う括れ部が設けられており、展開状態における前記吸収体の前後方向長さをY、幅をXとしたとき、前記括れ部の前後方向長さが0.2〜0.3Yであり、前記括れ部における最も幅が狭い部分の幅が0.6〜0.75Xであり、
【0011】
前記腹側部分における前記温度変化物質の融着部分のウエスト側端縁の幅は0.4〜0.7Xであり、
前記温度変化物質の融着部分のうち前記幅が拡大する部分の股間側端が、前記括れ部の最も幅の狭い部分と同位置か、又はこれよりも腹側に位置しており、
前記温度変化物質の融着部分の後端は、前記括れ部の後端と同位置、又はこれよりも背側に位置するとともに、その幅が、前記腹側部分における前記温度変化物質の融着部分のウエスト側端縁の幅の0.7倍以下で、且つ0.5X以下である、
請求項3記載の使い捨て吸収性物品。
【0012】
(作用効果)
吸収体の股間部に脚周りに沿う括れ部が設けられていると、両脚の付け根と股間部とのフィット性が高まり、股間部における縦皺が入り難いため好ましく、その場合、各部の寸法は本項記載の範囲内にあるのが好ましい。具体的には、吸収体の寸法が上記範囲内にあると吸収体が脚周りにフィットし易くなる。また、腹側部分における融着部分のウエスト側端縁の幅が上記範囲内にあり、温度変化物質の融着部分のうち幅拡大部分の股間側端が上記範囲に位置していると、歩行により鼠蹊部に沿って発生する皺を効果的に防止できる。また、温度変化物質の融着部分の後端を上記範囲内に抑えることで、温度変化に鈍感である尻側に無駄な温度変化物質を配置しなくて済む。また、温度変化物質の融着部分の後端の幅が上記範囲内にあると股間部における縦皺が入り難くなるため好ましい。
【0013】
<請求項5記載の発明>
前記吸収体は、高吸収性ポリマーを少なくとも表面側層に含んでおり、前記温度変化物質は前記吸収体の表面または表面側層に融着されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品。
【0014】
(作用効果)
本項記載のように構成されていると、表面シートを通過し、吸収体の表面に到達した尿は、温度変化物質により冷却または加熱された後、表面側層に含まれる高吸収性ポリマーにより吸収され、この高吸収性ポリマーを含む吸収体の表面側層の温度が物品表面側に効果的に伝達され、装着者に温度変化を知覚させることになるため好ましい。
【0015】
<請求項6記載の発明>
前記吸収体は上層とその裏面側に接する下層とを有し、前記温度変化物質は前記上層に融着されるとともに、少なくとも前記上層は高吸収性ポリマーを含み、
前記上層の繊維密度が前記下層の繊維密度の4.5倍以上である、
請求項5記載の使い捨て吸収性物品。
【0016】
(作用効果)
吸収体が本項記載のような2層構造を有していると、吸収体に吸収された尿が下層に移動せずに上層に保持されるようになるため、より大きな温度変化を生じることができるようになる。その後、上層で温度変化した尿は高吸収性ポリマーに吸収されるため、大きな温度変化を生じた状態を維持しつつ、尿の肌への逆戻りは低減することができる。
【0017】
<請求項7記載の発明>
前記吸収体は上層とその裏面側に接する下層とを有し、
前記上層の全体が、前記温度変化物質の融着部分全体をなすとともに、前記上層における厚み方向と直交する方向の全体にわたり高吸収性ポリマーが含有されており、
前記融着された温度変化物質は尿への溶解により吸熱反応を起し、尿を冷却するものであり、且つ温度20℃の100mlの水への溶解度が30g以上であり、
前記温度変化物質の融着部分における前記温度変化物質の目付けは300〜800g/m2であり、
前記温度変化物質の融着部分により前記吸収体に生じうる熱量変化の総量は50cal以上であり、
前記温度変化物質の融着部分の単位面積当たりの熱量変化は1cal/cm2以上であり、
前記高吸収性ポリマーは吸収速度が50秒以下であり、
前記上層における高吸収性ポリマーの目付けは50〜400g/m2である、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品。
【0018】
(作用効果)
上層に、本項記載のような性質、量の温度変化物質及び高吸収性ポリマーを含有させることにより、上層の液保持性能がより一層のものとなり、着用者に対して温度変化を効果的に伝達させることができるため好ましい。なお、吸収速度とは、2gの試料が50gの生理食塩水を吸収するのに要する時間であって、JIS K 7224−1996に基づき測定されるものである(以下同じ)。
【発明の効果】
【0019】
以上のとおり、本発明によれば、温度変化物質に対して十分な量の尿がより効果的に供給され、所期の温度変化が発生するとともに、その温度変化が身体に対して効果的に伝達されるようになる、等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、パンツ型使い捨ておむつ(トレーニングパンツ)の例を引いて説明するが、本発明はテープ式の使い捨ておむつやパッド型の吸収性物品等にも適用できることはいうまでもない。
【0021】
<パンツ型使い捨ておむつの基本構造例>
図1〜図10は、パンツ型使い捨ておむつの一例を示している。各図において、「前後方向」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味し、「上下方向」とはおむつの装着状態、すなわちおむつの腹側と背側とを重ね合わせるようにおむつを股間部で2つに折った状態で胴回り方向と直交する方向、換言すればウエスト開口部WO側と股間部側とを結ぶ方向を意味する。
【0022】
このパンツ型使い捨ておむつは、着用者の胴回りのうち腹側を覆う腹側外装シート12Fと背側を覆う背側外装シート12Bとを有しており、腹側外装シート12Fの幅方向両側縁と背側外装シート12Bの幅方向両側縁とが、上下方向全体にわたりヒートシールや超音波溶着等により溶着接合されて筒状の胴回り部100が形成されるように構成されている。符号12Aは個々の溶着部を示しており、この溶着部12Aの群がサイドシール部を構成するものである。図示形態のように、背側外装シート12Bが溶着部12Aよりも下側に延出している場合には、この部分までを含む上下方向範囲に一体的にヒートシール等の加工を施し、背側延出部14に延出溶着部12Eを設けることができる。延出溶着部12Eを設けることにより、後述する背側延出部14の第2の細長状弾性伸縮部材16の引き込みを防止することができる。この場合、脇部の破りやすさを考慮して、溶着部12Aは小さな溶着部の集合からなり、溶着部12Aにおける溶着面積の比率が低い接合パターンとすることが一般的であるが、延出溶着部12Eでは破りやすさを考慮する必要が無いため、溶着パターンは溶着部12Aよりも溶着面積の比率を高くすることにより第2の細長状弾性伸縮部材16が確実に溶着固定されるようにしてもよい。また、延出溶着部12Eは臀部カバー部14Cの縁部をカーブしたラインで溶着し、臀部カバー部14Cの第2の細長状弾性伸縮部材16の引き込みを防止することもできる。
【0023】
また、胴回り部100における腹側外装シート12Fの幅方向中央部内面に内装体200の前端部がホットメルト接着剤等により連結されるとともに、背側外装シート12Bの幅方向中央部内面に内装体200の後端部がホットメルト接着剤等により連結されており、腹側外装シート12Fと背側外装シート12Bとが股間側で連続しておらず、離間されている。この離間距離は150〜250mm程度とすることができる。図示しないが、腹側外装シート12Fと背側外装シート12Bとが股間部で連続した形態、つまり腹側から背側までを一体的な外装シートにより連続的に覆う形態を採用することもできる。
【0024】
図7及び図8からも判るように、胴回り部100の上部開口は、着用者の胴を通すウエスト開口部WOとなり、内装体200の幅方向両側において胴回り部100の下縁および内装体200の側縁によりそれぞれ囲まれる部分が脚を通す脚開口部LOとなる。各溶着部12Aを剥がして展開した状態では、図1に示すように砂時計形状をなす。内装体200は、背側から股間部を通り腹側までを覆うように延在するものであり、排泄物を受け止めて液分を吸収し保持する部分であり、胴回り部100は内装体200を着用者に対して支持する部分である。
【0025】
(外装シート)
腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bは、図4及び図5にも示すようにシート状資材12,12を2枚貼り合せてなるものであり、内側に位置する内側シート状資材12はウエスト開口部WOの縁までしか延在していないが、外側に位置する外側シート状資材12は内側シート状資材12のウエスト側の縁を回り込んでその内側に折り返されており、この折り返し部分12rは内装体200のウエスト側端部上までを被覆するように延在され、対向面にホットメルト接着剤等により固定されている。シート状資材12としては溶着により接合できるものであれば特に限定されないが、不織布であるのが好ましい。不織布は、その原料繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。不織布を用いる場合、その坪量は10〜30g/m2程度とするのが好ましい。
【0026】
そして、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bには、胴回りに対するフィット性を高めるために、両シート状資材12,12間に糸ゴム等の細長状弾性伸縮部材15〜19が所定の伸張率で設けられている。細長状弾性伸縮部材15〜19としては、合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。各外装シート12F,12Bの両シート状資材12,12の貼り合せや、その間に挟まれる細長状弾性伸縮部材15〜19の固定にはホットメルト接着またはヒートシールや超音波接着を用いることができる。外装シート12F,12B全面を強固に固定するとシートの風合いを損ねるため好ましくない。これらを組合せ、細長状弾性伸縮部材15〜19の接着は強固にし、それ以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。
【0027】
より詳細には、背側外装シート12Bは、溶着部12A群によるサイドシール部と同じ上下方向範囲を占める背側本体部13と、この背側本体部13の下側に延出する背側延出部14とを有している。背側延出部14は、内装体200と重なる幅方向中央部14Mと、その両側に延出した臀部カバー部14Cとを有している。
【0028】
背側延出部14の形状は適宜定めることができるが、図示例では、背側延出部14の上端部は、背側本体部13と同幅で背側本体部13の下側に延出されており、その下側は股間側に近づくにつれて幅が狭められている。背側本体部13と同幅の部分は省略することもできる。このように構成されていると、臀部カバー部14Cの幅方向外側の縁14eが、股間側に近づくにつれて内装体200側に近づくような直線状または曲線状をなすようになり、臀部を覆い易い形状となる。
【0029】
背側延出部14の寸法は適宜定めることができるが、図6に示すように、臀部カバー部14Cの幅方向長さ14x(臀部カバー部14Cの幅方向外側の縁14eと内装体200の側縁との幅方向の最大離間距離)が80〜160mmであり、臀部カバー部14Cの上下方向の長さ14y(延出長さ)が30〜80mmであると、より好ましい。また、背側延出部14の幅方向に最も広い部位と上下方向に最も広い部位により定まる四角形の面積をSとすると、背側延出部14の面積はSに対して20〜80%、特に40〜60%程度であると、臀部の外観および装着感に優れるため、好ましい。
【0030】
背側本体部13は、上下方向において概念的に上端部(ウエスト部)Wと、これよりも下側の下側部分Uとに分けることができ、その範囲は製品のサイズによって異なるが、一般に、上端部Wの上下方向長さは15〜80mm、下側部分Uの上下方向長さは35〜220mmとすることができる。
【0031】
背側本体部13の上端部(ウエスト部)Wにおける内側シート状資材12の内側面と外側シート状資材の折り返し部分12rの外側面との間には、幅方向全体にわたり連続するように、複数の背側ウエスト部弾性伸縮部材17が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。また、背側ウエスト部弾性伸縮部材17のうち、背側本体部13の下側部分Uに隣接する領域に配設される1本または複数本については、内装体200と重なっていてもよいし、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けてもよい。この背側ウエスト弾性伸縮部材17としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、4〜12mmの間隔で3〜22本程度、それぞれ伸張率150〜400%、特に220〜320%程度で固定するのが好ましい。また、背側ウエスト部弾性伸縮部材17は、その全てが同じ太さと伸張率にする必要はなく、例えば背側ウエスト部の上部と下部で弾性伸縮部材の太さと伸張率が異なるようにしてもよい。
【0032】
また、背側本体部13の下側部分Uにおける内側シート状資材12の外側面と外側シート状資材12の内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その上側および幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の第1の細長状弾性伸縮部材15が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。
【0033】
第1の細長状弾性伸縮部材15としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、1〜15mm、特に3〜8mmの間隔で5〜30本程度、それぞれ伸張率200〜350%、特に240〜300%程度で固定するのが好ましい。
【0034】
また、背側延出部14における内側シート状資材12の外側面と外側シート状資材12の内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり(少なくとも臀部カバー部14C全体にわたり)連続するように、複数の第2の細長状弾性伸縮部材16が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。
【0035】
第2の細長状弾性伸縮部材16としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、5〜40mm、特に5〜20mmの間隔で2〜10本程度、それぞれ伸張率150〜300%、特に180〜260%で固定するのが好ましい。
【0036】
一方、腹側外装シート12Fは背側外装シート12Bの背側本体部13と基本的に同様の腹側本体部(溶着部12A群によるサイドシール部と同じ上下方向範囲を占める部分)のみからなるものであり、胴回り方向に沿って延在する矩形状をなし、背側外装シート12Bのような背側延出部14を有していないものである。
【0037】
すなわち、腹側外装シート(腹側本体部)12Fの上端部(ウエスト部)Wおよび下側部分Uのうち、上端部Wにおける内側シート状資材12の内側面と外側シート状資材12の折り返し部分12rの外側面との間には、幅方向全体にわたり連続するように、複数の腹側ウエスト部弾性伸縮部材18が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。この腹側ウエスト部弾性伸縮部材18は、背側ウエスト部弾性伸縮部材17に対して、本数、太さ、伸張率、間隔、及び上下方向配置をできるだけ近づけるのが好ましいが、異ならしめることもでき、異ならしめる場合、本数の差は10本以下、好ましくは5本以下、太さの差は1880dtex以下、好ましくは470dtex以下、伸張率の差は100%以下、好ましくは40%以下、間隔の差は10mm以下、好ましくは5mm以下である。
【0038】
また、腹側外装シート12F(腹側本体部)の下側部分Uにおける内側シート状資材12の外側面と外側シート状資材12の内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その上側および幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の第3の細長状弾性伸縮部材19が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。第3の細長状弾性伸縮部材19の上下方向配設範囲は、下側部分の一部としても良いが、実質的に全体(全体に伸縮力が作用する範囲)とするのが好ましい。
【0039】
第3の細長状弾性伸縮部材19としては、第1の細長状弾性伸縮部材15と、本数、太さ、伸張率、間隔、及び上下方向配置をできるだけ近づけるのが好ましいが、異ならしめることもでき、異ならしめる場合、本数の差は10本以下、好ましくは5本以下、太さの差は1880dtex以下、好ましくは470dtex以下、伸張率の差は100%以下、好ましくは40%以下、間隔の差は10mm以下、好ましくは5mm以下である。
【0040】
図示形態の腹側外装シート12Fは、溶着部12Aと同じ上下方向範囲を占める部分のみからなるものとしたが、背側と同様に、溶着部12Aと同じ上下方向範囲を占める腹側本体部と、この腹側本体部の下側に延出する腹側延出部とからなる構成とすることもできる。これにより、腹側外装シート12Fの脚周り形状を鼠蹊部に沿ってフィットする形状とすることができる。この場合、腹側延出部の面積は、背側延出部の面積の10〜80%であるのが好ましく、20〜50%であるとより好ましい。腹側延出部が過度に大きいと、かえってフィット性を損なうため好ましくない。
【0041】
他方、図示のように、第1、第2及び第3の細長状弾性伸縮部材15、16及び19が、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けられていると、内装体200と外装シート12F,12Bが剥れにくいため好ましいが、この形態には、幅方向両側にのみ弾性伸縮部材が存在する形態の他、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで弾性伸縮部材が存在しているが、内装体200と重なる幅方向中央部では弾性伸縮部材が切断され、伸縮力が作用しない(実質的には、弾性伸縮部材を設けないことに等しい)ように構成されている形態も含まれる。また、背側本体部13および背側延出部14の幅方向全体にわたり伸縮力が作用するように、第1、第2及び第3の細長状弾性伸縮部材15、16及び19の一部または全部を、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで設けることもできる。
【0042】
(内装体)
内装体200は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。内装体200は、図3に示されるように、身体側となる表面シート30と、液不透過性シート11と、これらの間に介在された吸収要素50とを備えている。液不透過性シート11の裏面側には、内装体200の裏面全体を覆うように、あるいは腹側外装シート12Fと背側外装シート12Bとの間に露出する部分全体を覆うように、股間部外装シート12Mを固定することもできる。また、表面シート30と吸収要素50との間に、表面シート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させる中間シート(セカンドシート)を設けることもできるが、肌への熱伝達が阻害されるため、表面シート30と吸収要素50との間には、少なくとも後述する高吸収性ポリマーを有する部分と重なる部分、好ましくは全体にわたり、他の部材を設けないのが好ましい。さらに、内装体200の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、内装体200の両側に、身体側に起立するバリヤーカフス60,61を設けることができる。なお、図示しないが、内装体200の各構成部材は、ホットメルト接着剤などのベタ、ビードまたはスパイラル塗布などにより、適宜相互に固定することができる。また、内装体200は、メカニカルファスナーや粘着材を用い、外装シート12F,12Bに対して着脱自在に取り付けることもできる。
【0043】
(表面シート)
表面シート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、SMS法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。特には、表面側からの温度変化を感知し易くするため、スパンボンド法やSMS法により加工された不織布が薄さと強度のバランスに優れる点で好適であり、エアスルー法により加工された不織布は低坪量でも吸収が速やかでかつさらっと感に優れるため好適である。
【0044】
また、表面シート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、表面シート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合わせてなるものであってもよい。
【0045】
表面シート30を不織布から構成する場合、その厚みが0.1〜3mm程度、特に0.5mm以下、且つ目付けが10〜40g/m2程度、特に25g/m2以下であるように構成すると、裏面側から肌への伝熱性に優れるため好ましい。
【0046】
バリヤーカフス60,61を設ける場合、表面シート30の両側部は、液不透過性シート11とバリヤーカフス60,61との間を通して、吸収要素50の裏側まで回りこませ、液の浸透を防止するために、液不透過性シート11及びバリヤーカフス60,61に対してホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。これにより、内装体200の両側部の剛性が向上するという効果も得られる。
【0047】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この不透液性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができる。
【0048】
液不透過性シート11は、防漏性を高めるために、吸収要素50の両側を回りこませて吸収要素50の表面シート30側面の両側部まで延在させるのが好ましい。これにより、内装体200の両側部の剛性が向上するという効果も得られる。この延在部の幅は、左右それぞれ5〜20mm程度が適当である。
【0049】
また、液不透過性シート11の内面または外面には、印刷や着色によるデザインを施しても良い。さらに液不透過性シート11の外側に、股間部外装シート12Mとは別部材の、印刷または着色を施したデザインシートを貼り付けても良い。また、液不透過性シート11の内側に、液分の吸収により色が変化する排泄インジケータ80を設けることができる。
【0050】
(バリヤーカフス)
バリヤーカフス60,61は、内装体200の両側部に沿って前後方向全体にわたり延在する帯状部材であり、表面シート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を遮断し、横漏れを防止するために設けられているものである。
【0051】
本実施の形態では、図3及び図4にも示すように、内装体200の左右各側において二重にバリヤーカフス60,61が設けられている。おむつを展開した状態では、図示のように、内側バリヤーカフス61は内装体200の側部から幅方向中央側に斜めに起立するものであり、外側バリヤーカフス60は、内側バリヤーカフス61の幅方向外側において内装体200の側部から起立するように設けられ、付け根側の部分は幅方向中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側の部分は幅方向外側に向かって斜めに起立するものである。
【0052】
より詳細には、内側バリヤーカフス61は、内装体200の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のバリヤーシート62を幅方向に折り返して二つに折り重ねるとともに、折り返し部分及びその近傍のシート間に、細長状弾性伸縮部材63を長手方向に沿って伸張状態で、幅方向に間隔をあけて複数本固定してなるものである。細長状弾性伸縮部材63は、バリヤーシート62に対し、前後端部では固定されておらず、中間部においてバリヤーカフスが前後に伸縮するように固定されている。バリヤーシート62としてはスパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができ、繊維目付けは10〜30g/m2程度とするのが好ましい。細長状弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは420〜1120dtexが好ましく、620〜940dtexがより好ましい。固定時の伸長率は、150〜350%が好ましく、200〜300%がより好ましい。また、図示しないが、二つに折り重ねたバリヤーシートの間に防水フィルムを介在させることもできる。
【0053】
細長状弾性伸縮部材63は、内側バリヤーカフス61の先端部に1〜2本配置するのが好ましく、先端部と基端部との間の中間部にも1〜2本配置すると更に好ましい。中間部に細長状弾性伸縮部材63があると、これを支点として中間部から先端部に亘る範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。中間部の細長状弾性伸縮部材63の配置位置は内側バリヤーカフス61の高さ(突出部の幅方向長さ)の30〜70%範囲が好ましい。乳幼児用紙おむつでは、内側バリヤーカフス61の高さは15〜35mm程度が好ましいため、細長状弾性伸縮部材63の配置範囲は先端から基端側に5〜25mmの位置が好ましく、12〜18mmの位置がより好ましい。内側バリヤーカフス61の先端部及び/または中間部にそれぞれ細長状弾性伸縮部材63を平行に設ける場合は、その配置間隔61dは2〜10mmが好ましく、2〜6mmがより好ましい。
【0054】
そして、内側バリヤーカフス61のうち幅方向において折り返し部分と反対側の端部は内装体200の側縁部の裏面に固定された取付部分(内側取付部分)65とされ、この取付部分65以外の部分は取付部分65から突出する突出部分66(折り返し部分側の部分であり、内側突出部分に相当する)とされ、この突出部分66のうち前後方向両端部が表面シート30表面にホットメルト接着剤やヒートシールによる前後固定部67により固定され、前後方向中間部が非固定の自由部分(内側自由部分)とされ、この自由部分に前後方向に沿う細長状弾性部材63が伸張状態で固定されている。
【0055】
外側バリヤーカフス60も、内側バリヤーカフス61と基本的に同様の構造を有するものであるが、その取付部分(外側取付部分)68が、内装体200の裏面側における内側バリヤーカフス61の取付部分65よりも幅方向中央側において内側バリヤーカフス61の外面に固定される点、突出部分(外側突出部分)69のうち前後方向両端部が、取付部分68から内装体200の側部を通り内側バリヤーカフス61における内側突出部分66の前後方向両端部の表面まで延在し且つ内側突出部分66の前後方向両端部の表面に固定された付け根側部分と、この付け根側部分の先端から幅方向外側に折り返され且つ付け根側部分に固定された先端側部分とからなる点、細長状弾性伸縮部材63の配置及び本数等で異なるものである。
【0056】
ただし、内側バリヤーカフス61についても、内側突出部分の先端部は幅方向外側に折り返される構造、具体的には内側バリヤーカフス61の高さ(突出部の幅方向長さ)の1/2以下、好ましくは1/3以下であれば、外側バリヤーカフス61と同様に先端側部分が幅方向外側に折り返され且つ付け根部側部分に固定される構造を採っても良い。
【0057】
外側バリヤーカフス60の自由部分(外側自由部分)に設けられる細長状弾性伸縮部材63の本数は2〜6本が好ましく、3〜5本がより好ましい。配置間隔60dは3〜10mmが適当である。このように構成すると、細長状弾性伸縮部材63を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。先端側だけでなく付け根側にも細長状弾性伸縮部材63を配置しても良い。外側バリヤーカフス60に配置する細長状弾性伸縮部材63の太さや伸長率は、内側バリヤーカフス61に準ずるが、太さは内側バリヤーカフス61のものと同じ、またはより太く、伸長率は内側バリヤーカフス61のものと同じ、またはより低いほうが好ましい。
【0058】
また、突出部分66,69の前後固定部67の前後方向長さL6は、内側バリヤーカフス61の方が外側バリヤーカフス60と同じかまたは短く形成するのが好ましく、バリヤーカフス60,61における細長状弾性伸縮部材63の前後方向固定長さは、内側バリヤーカフス61の方が外側バリヤーカフス60と同じかまたは長く形成するのが好ましい。取付部分65と突出部分66との境界は、外側バリヤーカフス60と内側バリヤーカフス61とで同じ位置であっても良いが、外側バリヤーカフス60の境界が内側バリヤーカフス61の境界よりも幅方向中央側に離間しているのが好ましく、その離間距離は10mm以内が好ましい。
【0059】
外側バリヤーカフス60及び内側バリヤーカフス61の取付部分68,65における突出部分66,69側の縁部には、ホットメルト接着剤やヒートシールによる線状の付け根固定部を形成するのが好ましい。また、他の固定部はホットメルト接着剤等を用いて適宜のパターンで固定することができる。この線状の付け根固定部は、内装体200の表面側の側部近傍(具体的には側縁から幅方向に0〜5mm、好ましくは0〜3mmの位置)または裏面側に位置するのが好ましい。この場合、バリヤーカフスを表面側に折り返して固定しているのは実質的に前後方向両端部のみとなるため、前後固定部67による幅方向中央側への規制が十分に作用しない股間部においては、外側バリヤーカフス60及び内側バリヤーカフス61いずれもが幅方向外側に向かって起立し、内側バリヤーカフス61の形成するポケットが広くなる。表面側で側縁から幅方向に5mmを越えて線状の付け根固定部が位置すると、股間部においてもバリヤーカフスが幅方向中央側に向かって起立し、内側バリヤーカフス61の形成するポケットが狭くなるため、好ましくない。裏面側に位置する場合は、内装体200の側縁から0〜20mmの位置が適当だが、20mmを越えて位置してもよい。
【0060】
外側及び内側バリヤーカフス60,61の取付部分68,65の固定対象は、内装体200における表面シート30、液不透過性シート11、吸収要素50等適宜の部材とすることができ、またいずれか一方のバリヤーカフスを介して他方のバリヤーカフスを内装体200に対して固定することもできる。
【0061】
かくして構成された外側及び内側バリヤーカフス60,61では、細長状弾性伸縮部材63の収縮力が前後方向両端部を近づけるように作用するが、突出部分66,69のうち前後方向両端部が起立しないように固定されるのに対して、それらの間は非固定の自由部分とされているため、自由部分のみが図3に示すように身体側に当接するように起立する。特に、取付部分68,65が内装体200の裏面側に位置していると、股間部及びその近傍において外側及び内側バリヤーカフス60,61が幅方向外側に開くように起立するため、外側及び内側バリヤーカフス60,61が脚周りに面で当接するようになり、フィット性が向上するようになる。一方、股間部の前後両側(腹部及び背部)においては、前後固定部67により外側及び内側バリヤーカフス60,61が幅方向外側へ開かないように規制されるため、内側バリヤーカフス61は高く起立し、外側バリヤーカフス60の下半分も同様に起立するため、腹部及び背部における内装体200両脇からのもれが確実に防止できる。また、内側バリヤーカフス61の突出部分66における前後固定部67は折り返さずに、外側バリヤーカフス60の突出部部分68における前後固定部67は外向きに折り返されているため、外側及び内側バリヤーカフス60,61における内側及び外側自由部分間の離間状態が維持され、外側及び内側バリヤーカフス60,61が広い間隔で確実に起立し、それぞれが脚周りにフィットするようになるため、漏れ防止性に優れたものとなる。
【0062】
バリヤーカフス60,61の寸法は適宜定めることができるが、乳幼児用紙おむつの場合は、例えば図7に示すように、内側バリヤーカフス61の起立高さ(展開状態における突出部分66の幅方向長さ)W5は10〜50mm、特に15〜35mmであるのが好ましく、外側バリヤーカフス60の起立高さ(展開状態における突出部分69の幅方向長さ)W6は15〜60mm、特に20〜40mmであるのが好ましい。また、内側バリヤーカフス61を表面シート30表面に倒した状態における先端間の離間距離W4は60〜170mm、特に70〜120mmであるのが好ましい。また、外側バリヤーカフス60を表面シート30表面と平行になるように、平坦に折り畳んだ状態において最も内側に位置する折り目間の離間距離W3は60〜190mm、特に70〜140mmであるのが好ましい。
なお、図示形態と異なり、外側及び内側バリヤーカフス60,61のいずれか一方のみを設けることもできる。
【0063】
(吸収要素)
本例の吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の全体を包む包被シート58とを有するものとなっているが、包被シート58は省略することもできる。
【0064】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成される。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。吸収体56中には高吸収性ポリマー粒子を分散保持させるのが好ましい。
【0065】
吸収体56は長方形形状でも良いが、図6にも示すように、前端部56F、後端部56B及びこれらの間に位置し、前端部56F及び後端部56Bと比べて幅が狭い括れ部56Nとを有する砂時計形状を成していると、吸収体56自体とバリヤーカフス60,61の、脚回りへのフィット性が向上するため好ましい。具体的な寸法としては、吸収体前端部56Fの前後方向長さをL1とし、吸収体56と腹側外装シート12Fとの重なり部分における前後方向長さをL2とし、吸収体後端部56Bの前後方向長さをL3とし、吸収体56と背側外装シート12Bとの重なり部分における前後方向長さをL4とし、括れ部56Nの最小幅をW1とし、吸収体前端部56Fの幅及び吸収体後端部56Bの幅をW2としたとき、下記の式(1)〜(4)を満足するように構成されていると、好ましい。
70mm ≦ W1 < W2 ≦ 190mm …(1)
0.5 ≦ W1/W2 ≦ 0.85 …(2)
0mm ≦ L1−L2 ≦ 70mm …(3)
0mm ≦ L3−L4 ≦ 50mm …(4)
【0066】
W1及びW2が狭過ぎると、バリヤーカフス60,61の起立が不安定になり、また吸収量が不十分となり、広過ぎるとフィット性の低下により装着感が悪化する。
【0067】
また、上記数値範囲にあると、股間部においてはバリヤーカフス60,61の取付部分65近傍に吸収体56が存在しないため、バリヤーカフス60,61の動きの自由度が増し、バリヤーカフス60,61が幅方向外側に開き易く、肌に対して面で当たりやすくなり、脚の動きに対するフィット面の追従性も向上する。前後両側においては内装体200側部の吸収体56が十分な範囲に存在するため、これを基点(支点)としてバリヤーカフス60,61の起立が安定する。前後両側から股間部に至る部分は、バリヤーカフス60,61が内装体200の幅方向両側縁を基準として幅方向内側に起立した姿勢から幅方向外側に開いていく変位部であり、このバリヤーカフス60,61の姿勢変化が内装体200側部まで存在する吸収体56により支えられ、バリヤーカフス60,61の全体的な起立形状が安定する。上記数値範囲を外れ、括れ部が大きくなりすぎると、股間部においてはバリヤーカフス60,61の自由度が高くなりすぎ、かえって脚周りに隙間ができ易くなるおそれがあり、また股間部の前後両側においても基点(支点)が無いためにバリヤーカフス60,61の起立が不安定になるおそれがある。逆に括れ部が小さくなりすぎると、バリヤーカフス60,61の自由度が低下するので好ましくない。
【0068】
さらに、括れ部56N全体の前後方向長さL7は好ましくは80mm以上、特に好ましくは120〜260mmとされる。括れ部56Nの前後方向長さL7が短過ぎるとバリヤーカフス60,61の自由度が低下するとともに、吸収体56の脚周りに対するフィット性が低下して脚の動きを妨げるようになり、長すぎるとバリヤーカフス60,61の起立が安定しなくなる。
【0069】
(高吸収性ポリマー粒子)
高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0070】
高吸収性ポリマーとしては、抗菌物質と一体化したものを用いることができる。特に、ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部または全部を銀イオンで置換してなるゼオライト粒子(以下、これを抗菌消臭性ゼオライトという)を高吸収性ポリマー中に含有させるか、あるいは抗菌消臭性ゼオライト粒子を高吸収性ポリマー粒子の表面に静電気により付着させてなる、抗菌消臭性高吸収性ポリマー粒子が好適である。
【0071】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0072】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0073】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、50〜800g/m2とすることができ、特に100〜400g/m2が好ましい。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。800g/m2を超えると、効果が飽和する。
【0074】
必要であれば、高吸収性ポリマー粒子は、吸収体56の平面方向で散布密度あるいは散布量を調整できる。たとえば、液の排泄部位を他の部位より散布量を多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の散布密度(量)を高め、女用は中央部の散布密度(量)を高めることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)にポリマーが存在しない部分を設けることもできる。
【0075】
特に、後述する温度変化物質により温度変化した尿を肌により近い位置で保持するために、高吸収性ポリマーとしては吸水速度が50秒以下のものが好適である。吸水速度が遅いと、温度変化した尿の多くが吸収されずに裏面側に通過してしまう。
【0076】
(包被シート)
包被シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないような目の細かいシートであるのが望ましく、表面側からの温度変化を感知し易くするため、薄く低目付けのものが適当である。厚みは0.05〜3mm程度、特に0.2mm以下、且つ目付けが5〜25g/m2程度、特に15g/m2以下であると、裏面側から肌への伝熱性に優れるため好ましい。不織布を用いる場合は、スパンボンド法やSMS法により加工された不織布、特にSMS法により加工された不織布が、薄さと強度のバランスに優れる点で好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。
【0077】
吸収体56を一枚の包被シートで包む場合、着用者に効果的に温度変化を伝達させるため、身体側の包被シート58の合わせ目の重なり幅58Wを温度変化物質の配置領域の幅40Wより狭く、かつ寸法が40mm以下、特に20mm以下にするのが好ましい。また、包被シート58の合わせ目は、排尿口に当接する幅方向の中央を含まないように、側部寄りに形成するのも好ましい形態である。特に、身体側の包被シート58の合わせ目のシートの重なり部が、後述する温度変化物質の融着部分40とは重ならないようになっていることが好ましい。
【0078】
(股間部外装シート)
内装体200の裏面側には、製品外面に露出する股間部外装シート12Mが設けられている。この股間部外装シート12Mの素材としては、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bと同様のものを用いることができるが、より高強度の素材や消臭剤を含有するもの等、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bとは異なる素材を用いることもできる。具体的には、PP、PP/PE、PP/PET等の繊維からなる、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、エアーポイント不織布、スパンレース不織布、SMS不織布等の各種不織布、あるいはこれに消臭剤等を添加したもの等を用いることができる。
【0079】
股間部外装シート12Mには座位時に高い体圧がかかる。よって、摩擦堅牢度の高い(毛羽立たない)特性を有する素材が好ましい。
【0080】
股間部外装シート12Mは、印刷や着色を行い、デザイン要素を備えたシートとしてもよい。前述のデザインシートと併用する場合は、それぞれのデザインが重ならないように配置することが好ましい。
【0081】
股間部外装シート12Mとして伸縮不織布を用い、内装体200の長手方向に伸長して貼り付けると、股間部のフィット性が向上するため好ましい。
【0082】
股間部外装シート12Mが幅方向側部から身体側面まで回り込み、バリヤーシート62の外面にホットメルト接着剤等により接着固定されていると、内装体200の両側部の剛性が向上する。このような形態においては、股間部外装シート12Mに剛度(コシ度)の高いシートを用いることが好ましい。具体的には、クラーク法(JISL1096 C法)によって測定される剛軟度の、シートのMD方向とCD方向との和が100mm以上、好ましくは150mm以上のシートを用いるとよい。
【0083】
図示例では、腹側及び背側外装シート12F,12Bと内装体200とが重なる部分において、股間部外装シート12Mは内装体200と腹側及び背側外装シート12F,12Bとの間に挟まれているが、腹側及び背側外装シート12F,12Bの外側に貼り付けることも可能である。股間部外装シート12Mは、ホットメルト接着剤等により内装体200の裏面、並びに腹側及び背側外装シート12F,12Bの内面若しくは外面に貼り付けられる。
【0084】
(温度変化物質)
吸収体56は、その幅方向中央部のうち、少なくとも股間部から腹側部分にわたる部分に温度変化物質が融着され、且つ吸収体56における温度変化物質の融着部分40の周囲には温度変化物質が融着されていないものである。温度変化物質は、吸収体56に融着されていると、温度変化物質が移動することがなくなり、所定の領域(この場合は股間部)で確実に機能するようになる。また、融着されていない部分と比較してコシ(剛性)が高くなるため、温度変化物質を確実に保持する温度変化物質融着部分に皺や折れ曲がり等の変形が起こり難く、股間部から腹側部分にわたる部分が身体に良好にフィットするようになる。
【0085】
本発明における剛性とは、曲げ剛性(剛度)のことを意味し、JIS K 7171(プラスチック‐曲げ剛性の試験方法)に準拠し、次の方法で測定する。測定にはテンシロン試験機(圧子先端部の曲率半径R1=5.0±0.1mm、支持プレート先端部の曲率半径R2=5.0±0.2mm)を用い、内装体20の製品前後方向の曲げ剛性を測定する。試験片は、内装体20から測定に影響する弾性伸縮部材を取り除き、これをおむつ長手方向80mm、おむつ幅方向50mmの長方形に切り取ることにより作製する。曲げ剛性値の単位中の50mmは試験片の短辺の長さであり、試験時の圧子でたわませた試験片の幅である。それぞれ断面円弧状の先端部を有し、両先端部の先端(上端)間の間隔を位置を揃えて配置された一対の支持プレート上に、上記の試験片を、その長手方向を各プレートに直交する方向に向けて、掛け渡すように載置し、その試験片に僅かに接するように圧子先端部を配置する。ロードセル5kg(レンジ196cN)、速度30mm/minの条件で圧子を降下させ、荷重‐たわみ曲線を得る。得られた曲げ応力の最大値を曲げ剛性値(cN/50mm)とする。なお、測定対象となる部位が上記サンプリング寸法より小さい場合は、小スケールの試験片で測定を行い、寸法比に基づいて比例計算にて換算する。
【0086】
吸収体56における温度変化物質の融着部分40の剛性は、15〜50cN/50mm、特に20〜35cN/50mmが好ましく、その周囲の温度変化物質が融着されていない部分の剛性は、5〜35cN/50mm、特に10〜25cN/50mmが好ましく、通常の場合、融着部分40とその周囲の部分の剛性差は10〜25cN/50mm程度である。
【0087】
温度変化物質の融着部分40は、吸収体56が少なくとも腹側部分のウエスト側端縁から股間側に0.15〜0.80L(Lは製品長さ)の範囲にわたり設けられている場合、少なくとも腹側部分のウエスト側端縁から股間側に0.25〜0.45Lの範囲40Yにわたり設けられているのが好ましい。このような寸法を採用することによって、男女の排尿位置に温度変化物質の融着部分40が位置するようになる。つまり、排尿時に尿が温度変化物質の融着部分40に確実に当たるようになる。
【0088】
また、温度変化物質の融着部分40は、鼠蹊部に沿い且つ鼠蹊部よりも幅が広くなるように、ウエスト側に向かうにつれて幅が拡大する形状を有しているのが好ましい。図中の符号41が幅拡大部分を示している。温度変化物質の融着部分40をこのような形状にすることによって、股間部における縦皺及び鼠蹊部に沿う皺が入り難く、股間部から腹側部分にかけてのフィット性がより一層のものとなる。幅拡大部分41より後側は、図示形態では一定の幅とされているが、脚周りに沿う曲線状をなしていても良い。
【0089】
吸収体56の股間部に脚周りに沿う括れ部56Nを設ける場合、括れ部56Nの前後方向長さが0.2〜0.3Y(Yは吸収体56の前後方向長さ)であり、括れ部56Nにおける最も幅が狭い部分の幅が0.6〜0.75X(Xは吸収体56の全幅で、前記W2と同じ)であり、腹側部分における温度変化物質の融着部分40のウエスト側端縁の幅40Wは0.4〜0.7Xであり、温度変化物質の融着部分40のうち幅拡大部分41の股間側端が、括れ部56Nの最も幅の狭い部分と同位置か、又はこれよりも腹側に位置しており、温度変化物質の融着部分40の後端は、括れ部56Nの後端と同位置、又はこれよりも背側に位置するとともに、その幅40Xが、腹側部分における温度変化物質の融着部分40のウエスト側端縁の幅40Wの0.7倍以下で、且つ0.5X以下であるのが好ましい。特に、本実施形態のようなパンツ型使い捨ておむつの場合、温度変化物質の融着部分40のウエスト側端縁の位置が、腹側部分においてサイドシール部の下端よりウエスト側に位置しているのが好ましい。
【0090】
吸収体56の寸法が上記範囲内にあると吸収体56が脚周りにフィットし易くなる。また、腹側部分における融着部分40のウエスト側端縁の幅40Wが上記範囲内にあり、温度変化物質の融着部分40のうち幅拡大部分41の股間側端が前後方向において上記範囲に位置していると、歩行により鼠蹊部に沿って発生する皺を効果的に防止できる。また、温度変化物質の融着部分40の後端を前後方向において上記範囲内に抑えることで、温度変化に鈍感である尻側に無駄な温度変化物質を配置しなくて済む。また、温度変化物質の融着部分40の後端の幅40Xが上記範囲内にあると股間部における縦皺が入り難くなるため好ましい。
【0091】
温度変化物質が融着された吸収体56は、粒子状(粉体状含む)又は繊維状等の適宜形状の温度変化物質を吸収体56の上面の所定部位に載せた後、或いは吸収体56の内部の所定部位に侵入させた後に、温度変化物質を吸収体56とともに加熱し、温度変化物質のみを溶融状態として吸収体56の繊維に付着させた後、冷却して温度変化物質を固化させることにより製造できる。
【0092】
なお、本形態では、吸収要素50における吸収体包被シート58内において、高吸収性ポリマーを少なくとも表面側層に含む吸収体56の、表面側層に温度変化物質が配置され、温度変化物質が吸収体の表面または表面側層に融着されているのが好ましい。このように構成されていると、表面シート30を通過し、吸収体56の表面に到達した尿は、温度変化物質により冷却または加熱された後、表面側層に含まれる高吸収性ポリマーにより吸収され、この高吸収性ポリマーを含む吸収体56の表面側層の温度が物品表面側に効果的に伝達され、装着者に温度変化を知覚させることになる。
【0093】
粒子状の温度変化物質を吸収体56の表面または表面側層に配置する(載せるあるいは侵入させる)形態は、例えば、厚み方向の実質的に全体に高吸収性ポリマー粒子を含有する吸収体56を形成した後、その表面の所定部位に粒子状の温度変化物質を散布又は投射することによって製造することができる。特に、粒子状の温度変化物質を投射することによって、一部の温度変化物質が吸収体56内に侵入し、吸収体56の表面側層は温度変化物質及び高吸収性ポリマーを混合状態で含む層となり、この層の上に実質的に温度変化物質のみの層が形成される。このように形成すると、温度変化物質の一部は吸収体に混合した状態で融着されることになり、融着部分40が硬くなりすぎるおそれがないため、好ましい。一方、排尿直後の温度変化をより強く感知させるため、温度変化物質を散布することによって、上記混合層を形成せず、実質的に全ての温度変化物質40を吸収体56の上側に配置することもできる。
【0094】
この形態は、吸収体56内に通常含有される高吸収性ポリマー粒子のうち、吸収体56の表面側層に含まれるものを、温度変化した尿を吸収保持するために利用するものである。従ってこの形態では、吸収体56の裏面側よりも表面側のほうが高吸収性ポリマーの密度が高くなっていると、温度変化した尿を吸収体56の表面側により多く保持でき、物品表面における温度変化をより大きくすることができるため好ましい。さらに、吸収体56の表面側に向かうにつれて次第に高吸収性ポリマーの密度が高くなったり、吸収体56の表面側に向かうにつれて段階的に高吸収性ポリマーの密度が高くなったりというように、密度勾配を有するように形成されていると、物品表面の温度変化を大きくする効果が顕著なものとなるため、より好ましい。このような密度勾配は、吸収体56内に侵入し難い大粒径分が多い粒度分布を有する高吸収性ポリマーを用いることにより形成することができる。
【0095】
なお、本明細書においては、粒子状物を自由落下させることを「散布」、初速度を与えて自由落下よりも勢いよく散布することを「投射」と呼ぶ。
【0096】
図10に示すように、吸収体56を、吸収体56の幅方向中央部のうち少なくとも股間部から腹側部分にわたる部分にのみ設けられた上層56Aと、その裏面側に接する下層56Bとを有する2層構造とし、上層56Aの全体(厚み方向と直交する方向の全体)にわたり温度変化物質を融着させ、上層56Aのみで温度変化物質の融着部分40を形成しても良い。このような構造は、パルプ等の短繊維に温度変化物質を混合したものを原料として上層56Aを積繊形成するか、又は温度変化物質を含むシートを切断又は折り曲げにより所定形状に形成した後、上層56Aのみ又は上層56Aと下層56Bとを一体的に加熱・冷却することにより製造することができる。
【0097】
これらの製造方法における加熱手段は特に限定されないが、例えば図11〜図14に示す手段を採用することができる。図11及び図12に示す手段は、高温の空気の通過により加熱を図るエアスルードライヤーを利用するものである。図11に示す手段では、温度変化物質を所定部分に配置した吸収体56を、ベルトコンベヤー301により搬送しながら、搬送面に対して直交する方向に通される熱風302により加熱した後、同じく搬送面に対して直交する方向に通される風303により冷却する、というものである。また、図12(a)及び(b)に示す手段は、温度変化物質を所定部分に配置した吸収体56を、高温空気が供給される加熱室310内に設置されたサクションロール311に巻き掛けて移送しつつ、サクションロール311外側から内側に通される熱風312により加熱した後、加熱室310外に設置されたクーリングロール313に巻き掛けて移送することにより冷却する、というものである。
【0098】
また、図13に示す加熱手段は、温度変化物質を所定部分に配置した吸収体56を、加熱ロール320に巻き掛けて移送することにより、加熱ロール320の熱を接触により温度変化物質に対して伝達し、片面側から加熱するというものである。
【0099】
さらに、図14に示す加熱手段は、温度変化物質を所定部分に配置した吸収体56を、少なくとも一方が加熱ロールからなる一対のロール330,331、340,341間に通すことにより、加熱ロールの熱を接触により温度変化物質に対して伝達し、加熱するというものである。この場合、同図(a)に示すように、両ロール330,331を表面が平滑なスムースロールとし、吸収体56に凹凸を形成しないようにしても、同図(b)に示すように、いずれか一方のロール340を表面に所定パターンの凹凸を有するエンボスロールとし、吸収体56の一方の面に凹凸を形成しても良い。特に、後者の場合、エンボスロール340の凸部パターンを、温度変化物質の融着部分40の領域だけに合せて形成しておき、当該領域のみを加熱するように構成するのも好ましい。融着部分40が形成されるのは、エンボスロール340の凸部パターンに対応する領域のみであるため、温度変化物質は、エンボスロール340の凸部パターンよりも広い範囲に配置してもよい。このように、吸収体56を部分的に加熱する方法を用いれば、吸収体56の所定の領域のみに温度変化物質を配置する必要はなく、例えば吸収体の全面に温度変化物質を配置し、所定の領域のみを部分的に加熱することにより、融着部分40を形成することも可能である。
【0100】
温度変化物質の加熱溶融は、吸収体56の製造時のみならず、その後の製造過程の適宜段階、例えば内装体200の組立完了状態(製品状態までの組立完了前)、又は製品状態までの組立完了後に、内装体やおむつ全体に対して行うこともできる。この場合における加熱方法としては、例えば前述した図11〜図14に示す手段を応用することができる。
【0101】
温度変化物質は、尿に接触して溶解熱、水和熱、又は反応熱等により熱を吸収又は放出し、尿を冷却又は加熱するものである。尿への溶解により熱を吸収する温度変化物質の例としては、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等の含水塩、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、塩化アンモニウム、塩化カリウム、硝酸ナトリウム等の無水塩、尿素、キシリトール、ソルビトール等の糖アルコール等を挙げることができる。尿への溶解により熱を放出する温度変化物質の例としては、塩化アルミニウム、硫化アルミニウム、硫化アルミニウムカリウム等を挙げることができる。本発明では、これらのうち、吸熱作用を発現するソルビトール、キシリトールなどの糖アルコール又は尿素などの有機化合物を使用することが好ましい。特にソルビトールやキシリトールは、溶解性に極めて優れ、化学的安定性が良く、人体に悪影響を及ぼさないため、好適に使用できる。尿への溶解により吸熱又は放熱する物質を用いる場合、尿への溶解度が低いと、十分な温度変化を発揮できないため、温度20℃の100mlの水への溶解度が30g以上、特に50g以上であるものが好ましい。また、20cal/g以上の温度変化を生じるものが好ましく、35cal/g以上の温度変化を生じるものがより好ましい。
【0102】
尿との反応により熱を吸収又は放出する物質の例としては、オルトエステル類、又はメントンを炭素量が1ないし8のアルコール或いは炭素量が2ないし8のポリオールと反応させて得られるメントンケタルのようなケタル類、及びそれらの構造的又は光学的異性体を挙げることができる。また、尿により膨潤することにより熱を吸収又は放出する温度変化物質の例としては、軽く架橋結合し部分的に中和されたポリアクリル酸を挙げることができる。
【0103】
また、温度変化物質は加熱により融着されるものであるため、融点が温度変化物質とともに加熱される部材よりも低い物質であるのが望ましい。すなわち、使い捨ておむつは通常ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を含むため、温度変化物質はこれらの樹脂と同じかそれよりも低い融点を有することが望ましい。一般的な熱可塑性樹脂の中で特に融点の低いポリエチレンは、通常100〜130℃程度の融点を有するため、温度変化物質の融点は130℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。また、製品保管時に温度変化物質が融解しないよう、70℃以上の融点を有することが好ましい。このような温度変化物質としては、融点が通常約95〜110℃程度(純度によって若干異なる)であるソルビトール及びキシリトールを挙げることができる。
【0104】
また、温度変化物質の溶融時の粘度が低いと、吸収体56の繊維間隙に浸透し難くなるため吸収体56に対する付着力が低下する。この観点から、温度変化物質としては、溶融時の温度(例えば70〜130℃)における粘度が5〜80ポアズのものが好ましい。
【0105】
吸収体56に融着された温度変化物質は、一度融解して液状化した後固化するため、表面積が小さくなっている。従って、温度変化物質における尿との接触面積が小さくなるため、温度変化速度が抑えられ、持続性が向上する。ただし、一律に温度変化速度が遅くなると、着用者が温度変化を知覚し難くなるおそれがある。よって、温度変化物質として嵩密度が低い粒子状物を用い、その全てを溶融させず、一部を溶融させて嵩密度の高い固体にし、残りは嵩密度の低い粒子状物のままで残すようにするのも好ましい形態である。粒子状の温度変化物質は、同程度の粒径であれば、嵩密度が低いほど表面積が大きく、尿との接触効率が高いため、温度変化速度が速くなる。特に温度変化物質が尿に溶解して温度変化が生じる場合にはこの傾向が顕著である。よって、前述したように、温度変化物質の一部のみを溶融させる場合、粒子状を維持する温度変化物質は温度変化作用が素速く生じ、溶融固化した温度変化物質は、温度変化作用が遅れて生じるようになるため、速効性と遅効性とを兼ね備えた温度変化が得られる。
【0106】
嵩密度の低い粒子状の温度変化物質としては、顆粒、表面凹凸の多い形状の粒子、表面や内部に微細な孔を有する粒子等の多孔質粒子が好適である。嵩密度の程度は適宜定めれば良いが、真密度の50%以下である(見かけの体積に対して50%以上の空隙(空間)を有する)のが好ましい。例えば、ソルビトールの場合、真密度は1.50g/cm3なので、好ましい嵩密度は0.75g/cm3以下であり、0.50〜0.70g/cm3がより好ましく、0.55〜0.65g/cm3が特に好ましい。また、粒子径が大きいと、見かけの嵩密度は小さいが、表面積は大きくないため、粒子状の温度変化物質を用いる場合、その平均粒径(JIS K 1474−2007 メジアン径)が200〜600μmであることが好ましい。
【0107】
他方、吸収体56が2層構造で、上層56Aに温度変化物質の融着部分40を有する場合、上層56Aは高吸収性ポリマーを含有し、かつ上層56Aの繊維密度が下層56Bより高いことが好ましい。繊維密度差をもたせる場合、上層56Aの繊維密度は下層56Bの4.5倍以上とすることが特に好ましい。具体的には、上層56Aの繊維密度を2.25〜6.75g/m3とし、下層56Bの繊維密度を0.5〜1.5g/m3程度とすればよい。図15に繊維密度比の変化に対する液保持性の測定結果を示した。この実験では、下層として密度1.0g/m3のエアスルー不織布(寸法10×15cm、目付25g/m2)と、上層として各種密度のパルプのみからなる層(寸法10×15cm、目付200g/m2)を用意し、予め上層の重量を計測した後、水平面上に下層及び上層をこの順に重ねた状態で、ビーカーから10mlの水を2cmの高さから10秒で上層上に注ぎ、注水してから5分経過した後に吸水した上層の重量を計測し、これら吸水後重量から吸水前重量を差し引いて求まる吸水量を注入水量で除して上層の液体保持率とした。この結果から、繊維密度の差が小さい条件では上層の液体保持率は40%程度であるが、上層の繊維密度が下層の繊維密度の4.0倍となる近辺を境として上層の液体保持率は大きく上昇を始め、上層の繊維密度を下層の繊維密度の4.5倍以上とすることにより、上層が上に位置するにもかかわらず液体保持率が50%超となり、上層に吸収された尿が下層に移動し難くなることが判る。
【0108】
このように構成すると、上層56A内において高吸収性ポリマーが吸収力を発揮して尿を取り込むまでの間、最初の排尿の大部分を上層56A内に保持できる。その結果、上層56A内の尿は高吸収性ポリマーに吸収されるまでの間、温度変化物質と接した状態を維持し、下層56Bに移動し難いため、より大きな温度変化が発生する。また、これによって、十分に温度変化した尿が上層56Aにおいて高吸収性ポリマーにより吸収され保持されるため、着用者に温度変化を効果的に伝えるとともに、尿の肌への逆戻りは低減することができる。また、上層56Aは、少なくとも1回分の排尿を保持できる程度の初期吸収量を有するようにするのが好ましい。そうすると、温度変化が発生する最初の1回の排尿は、全て上層56Aに保持できるため、温度変化した尿が下層56Bに移動して温度変化を無駄にすることがない。排尿1回分の初期吸収量を設定する上では、上層56Aがパルプをベースとする場合は、上層56Aのパルプ量は5〜10gが適当であり、上層56Aにおける繊維、高吸収性ポリマー及び温度変化物質の重量比率は、それぞれ15〜30%程度、5〜40%程度、及び30〜80%程度とするのが適当である。上層56Aにおける繊維、高吸収性ポリマー及び温度変化物質の目付は、それぞれ150〜300g/m2、50〜400g/m2、300〜800g/m2とするのが好適である。
【0109】
トレーニングパンツとしては、最初の1回の排尿で着用者が排尿を知覚し、親に伝えることができれば、おむつは交換されるため、それ以上の吸収量は必ずしも必要ではないが、着用者が知覚できなかったり、親に伝えることができなかったり、交換が遅れたりした場合には、2回目以降の排尿も吸収する必要がある。このような場合であっても、本形態では、上層56Aの吸収量が飽和に達した後、引き続き下層56Bで吸収することができる。
【0110】
なお、初期吸収量とは、繊維集合体や高吸収性ポリマー(SAP)等の吸収材料が本来の吸収力を発揮する前に一時的に吸収保持できる水(あるいは尿等の体液)の量のことである。高吸収性ポリマー粒子や、水溶性の温度変化物質は1gあたりの初期吸収量を1ccとし、パルプ等のセルロース系の繊維やオレフィン系の合成繊維は、長時間吸収させても吸収量がほとんど変わらないため、1gあたりの保水量をもって1gあたりの初期吸収量とし、これらを各素材使用量に応じて積算することにより算出することができる。本発明では、吸収体56の上層56Aにおける初期吸収量(吸収体の包被シートの吸収分は含まないものとする)は70cc以上であることが好ましく、100cc以上であることがより好ましい。
【0111】
また、最初の排尿の大部分を上層56A内に保持するために、上層56Aを構成する繊維の親水度及び/又は保水量を、下層56Bを構成する繊維の親水度及び/又は保水量よりも高くすることも好ましい。上層56Aを構成する繊維の保水量は、8cc/g以上、特に10cc/g以上が好ましく、下層56Bを構成する繊維の保水量は、8cc/g以下、特に5cc/g以下が好ましい。
(繊維1gあたりの保水量の測定方法)
1.200ccビーカーに20℃のイオン交換水200ccを入れる。
2.その中に繊維集合体1gを入れ、ガラス棒で30秒間攪拌する。
3.内径62mmのブフナー漏斗を支持台にセットし、ビーカー内の試料および水を10秒間で流し込み、自然ろ過する。
4.底面が直径60mmで、重さ1450gの円筒形の重りを試料の上に載せ、1分間放置する。(10cm四方あたりの荷重は5kgとなる。)
5.繊維の重量を量り、前後の重量差から繊維の保水量(1g=1ccとする)を求め、この保水量を繊維1gあたりに換算して、繊維1gあたりの保水量とする。
なお、試料が不織布等のシート状物である場合は、1gのシートを長さ20mm×幅2mmで、厚さ2mm以下にカットしたものを用いて測定する。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、パンツ型やテープ式、あるいはパッド型の吸収性物品等、広範な用途に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】パンツ型使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図2】パンツ型使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図3】図1の6−6断面図である。
【図4】図1の7−7断面図である。
【図5】図1の8−8断面図である。
【図6】パンツ型使い捨ておむつの要部のみを寸法とともに示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図7】パンツ型使い捨ておむつの要部のみを寸法とともに示す、断面図である。
【図8】製品状態の正面図である。
【図9】製品状態の背面図である。
【図10】他の形態の要部断面図である。
【図11】加熱手段を示す概略図である。
【図12】加熱手段を示す概略図である。
【図13】加熱手段を示す概略図である。
【図14】加熱手段を示す概略図である。
【図15】実験結果のグラフである。
【符号の説明】
【0114】
100…胴回り部、11…液不透過性シート、12F…腹側外装シート、12B…背側外装シート、200…内装体、30…表面シート、40…温度変化物質の融着部分、50…吸収要素、56…吸収体、58…包被シート、60…側部バリヤーカフス、62…バリヤーシート。
【技術分野】
【0001】
本発明は、所謂トイレトレーニングに用いられる使い捨ておむつ、使い捨て吸収パッド等の、使い捨て吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トレーニング用の使い捨ておむつとしては、着用者に排尿を知覚させるために、尿を肌に接触させ、湿潤による不快感を強調する工夫を施したものが一般的であったが、肌のフヤケからカブレに繋がるおそれがあることから、尿を肌から遠ざけるものでありながら、着用者に排尿を知覚させるための技術開発が行われている。
この代表的なものが、ソルビトール等のように尿との接触により尿に温度変化をもたらす物質の利用である(例えば特許文献1、2参照)。特許文献1記載の技術では、ソルビトール等の温度変化物質を含む部材を、吸収要素の身体側に配置することが提案されている。また、特許文献2記載の技術では、浸透性層と不浸透性層との間にソルビトール等の温度変化物質を挟んでなる要素を、吸収性コア上に配置することが提案されている。
【特許文献1】特許3922722号公報
【特許文献2】特許3830901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の技術では、温度変化物質が粉粒体状のまま非固定で含有されているため、製品の流通過程又は使用中に温度変化物質が所定部位から移動し、温度変化物質に対する尿の供給が不足する、温度変化が身体に対して十分に伝達しなくなる等により、温度変化が不十分となるおそれがあった。
また、温度変化物質が移動しない場合であっても、温度変化物質含有部分が皺等の変形によって身体にフィットせず、温度変化物質含有部分への尿供給が不十分となることにより温度変化が不十分となる、或いは温度変化の身体への伝達が不十分となる、といった問題点があった。
そこで、本発明の主たる課題は、これらの問題点を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
股間部と、股間部の前側に延出する腹側部分と、股間部の後側に延出する背側部分とを有し、
前記腹側部分から背側部分までにわたり、液透過性表面シートと裏面側シートとの間に繊維集合体からなる吸収体が介在されてなる吸収部分が設けられ、
尿との接触により尿を冷却又は加熱する温度変化物質が含有された、使い捨て吸収性物品において、
前記吸収体の幅方向中央部のうち、少なくとも前記股間部から前記腹側部分にわたる部分に前記温度変化物質が融着され、且つ前記吸収体における前記温度変化物質の融着部分の周囲には前記温度変化物質が融着されていない、
ことを特徴とする使い捨て吸収性物品。
【0005】
(作用効果)
本発明では、吸収体の幅方向中央部のうち、少なくとも股間部から腹側部分にわたる部分に温度変化物質が融着されているため、少なくともこの部分には温度変化物質が確実に保持されるようになる。また、吸収体における温度変化物質の融着部分はその周囲の温度変化物質が融着されていない部分と比較してコシ(剛性)が高くなるため、温度変化物質を確実に保持する温度変化物質融着部分に皺や折れ曲がり等の変形が起こり難く、股間部から腹側部分にわたる部分が身体に良好にフィットするようになる。よって、本発明によれば、温度変化物質に対して十分な量の尿がより効果的に供給され、所期の温度変化が発生するとともに、その温度変化が身体に対して効果的に伝達されるようになる。なお、本発明における「融着」とは、温度変化物質が溶融状態で対象(吸収体)に付着した後に固化し、固化体が対象に固定された状態を意味する。なお、股間部とは、展開状態における腹側部分のウエスト端縁から背側部分のウエスト端縁までの前後方向中央を意味し、それよりも前側の部分及び後側の部分が腹側部分及び背側部分をそれぞれ意味する。
【0006】
<請求項2記載の発明>
展開状態における腹側部分のウエスト端縁から背側部分のウエスト端縁までの前後方向長さとして定まる製品長をLとしたとき、
少なくとも前記腹側部分のウエスト側端縁から股間側に0.15〜0.80Lの範囲にわたり、前記吸収体が設けられており、
少なくとも前記腹側部分のウエスト側端縁から股間側に0.25〜0.45Lの範囲にわたり、前記温度変化物質の融着部分が設けられている、
請求項1記載の使い捨て吸収性物品。
【0007】
(作用効果)
このような寸法を採用することによって、男女の排尿位置に温度変化物質の融着部分が位置するようになる。つまり、排尿時に尿が温度変化物質の融着部分に確実に当たりようになる。
【0008】
<請求項3記載の発明>
前記温度変化物質の融着部分は、鼠蹊部に沿い且つ鼠蹊部よりも幅が広くなるように、ウエスト側に向かうにつれて幅が拡大する形状を有している、請求項2記載の使い捨て吸収性物品。
【0009】
(作用効果)
温度変化物質の融着部分をこのような形状にすることによって、股間部における縦皺及び鼠蹊部に沿う皺が入り難く、股間部から腹側部分にかけてのフィット性がより一層のものとなる。
【0010】
<請求項4記載の発明>
前記吸収体の股間部に脚周りに沿う括れ部が設けられており、展開状態における前記吸収体の前後方向長さをY、幅をXとしたとき、前記括れ部の前後方向長さが0.2〜0.3Yであり、前記括れ部における最も幅が狭い部分の幅が0.6〜0.75Xであり、
【0011】
前記腹側部分における前記温度変化物質の融着部分のウエスト側端縁の幅は0.4〜0.7Xであり、
前記温度変化物質の融着部分のうち前記幅が拡大する部分の股間側端が、前記括れ部の最も幅の狭い部分と同位置か、又はこれよりも腹側に位置しており、
前記温度変化物質の融着部分の後端は、前記括れ部の後端と同位置、又はこれよりも背側に位置するとともに、その幅が、前記腹側部分における前記温度変化物質の融着部分のウエスト側端縁の幅の0.7倍以下で、且つ0.5X以下である、
請求項3記載の使い捨て吸収性物品。
【0012】
(作用効果)
吸収体の股間部に脚周りに沿う括れ部が設けられていると、両脚の付け根と股間部とのフィット性が高まり、股間部における縦皺が入り難いため好ましく、その場合、各部の寸法は本項記載の範囲内にあるのが好ましい。具体的には、吸収体の寸法が上記範囲内にあると吸収体が脚周りにフィットし易くなる。また、腹側部分における融着部分のウエスト側端縁の幅が上記範囲内にあり、温度変化物質の融着部分のうち幅拡大部分の股間側端が上記範囲に位置していると、歩行により鼠蹊部に沿って発生する皺を効果的に防止できる。また、温度変化物質の融着部分の後端を上記範囲内に抑えることで、温度変化に鈍感である尻側に無駄な温度変化物質を配置しなくて済む。また、温度変化物質の融着部分の後端の幅が上記範囲内にあると股間部における縦皺が入り難くなるため好ましい。
【0013】
<請求項5記載の発明>
前記吸収体は、高吸収性ポリマーを少なくとも表面側層に含んでおり、前記温度変化物質は前記吸収体の表面または表面側層に融着されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品。
【0014】
(作用効果)
本項記載のように構成されていると、表面シートを通過し、吸収体の表面に到達した尿は、温度変化物質により冷却または加熱された後、表面側層に含まれる高吸収性ポリマーにより吸収され、この高吸収性ポリマーを含む吸収体の表面側層の温度が物品表面側に効果的に伝達され、装着者に温度変化を知覚させることになるため好ましい。
【0015】
<請求項6記載の発明>
前記吸収体は上層とその裏面側に接する下層とを有し、前記温度変化物質は前記上層に融着されるとともに、少なくとも前記上層は高吸収性ポリマーを含み、
前記上層の繊維密度が前記下層の繊維密度の4.5倍以上である、
請求項5記載の使い捨て吸収性物品。
【0016】
(作用効果)
吸収体が本項記載のような2層構造を有していると、吸収体に吸収された尿が下層に移動せずに上層に保持されるようになるため、より大きな温度変化を生じることができるようになる。その後、上層で温度変化した尿は高吸収性ポリマーに吸収されるため、大きな温度変化を生じた状態を維持しつつ、尿の肌への逆戻りは低減することができる。
【0017】
<請求項7記載の発明>
前記吸収体は上層とその裏面側に接する下層とを有し、
前記上層の全体が、前記温度変化物質の融着部分全体をなすとともに、前記上層における厚み方向と直交する方向の全体にわたり高吸収性ポリマーが含有されており、
前記融着された温度変化物質は尿への溶解により吸熱反応を起し、尿を冷却するものであり、且つ温度20℃の100mlの水への溶解度が30g以上であり、
前記温度変化物質の融着部分における前記温度変化物質の目付けは300〜800g/m2であり、
前記温度変化物質の融着部分により前記吸収体に生じうる熱量変化の総量は50cal以上であり、
前記温度変化物質の融着部分の単位面積当たりの熱量変化は1cal/cm2以上であり、
前記高吸収性ポリマーは吸収速度が50秒以下であり、
前記上層における高吸収性ポリマーの目付けは50〜400g/m2である、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品。
【0018】
(作用効果)
上層に、本項記載のような性質、量の温度変化物質及び高吸収性ポリマーを含有させることにより、上層の液保持性能がより一層のものとなり、着用者に対して温度変化を効果的に伝達させることができるため好ましい。なお、吸収速度とは、2gの試料が50gの生理食塩水を吸収するのに要する時間であって、JIS K 7224−1996に基づき測定されるものである(以下同じ)。
【発明の効果】
【0019】
以上のとおり、本発明によれば、温度変化物質に対して十分な量の尿がより効果的に供給され、所期の温度変化が発生するとともに、その温度変化が身体に対して効果的に伝達されるようになる、等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、パンツ型使い捨ておむつ(トレーニングパンツ)の例を引いて説明するが、本発明はテープ式の使い捨ておむつやパッド型の吸収性物品等にも適用できることはいうまでもない。
【0021】
<パンツ型使い捨ておむつの基本構造例>
図1〜図10は、パンツ型使い捨ておむつの一例を示している。各図において、「前後方向」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味し、「上下方向」とはおむつの装着状態、すなわちおむつの腹側と背側とを重ね合わせるようにおむつを股間部で2つに折った状態で胴回り方向と直交する方向、換言すればウエスト開口部WO側と股間部側とを結ぶ方向を意味する。
【0022】
このパンツ型使い捨ておむつは、着用者の胴回りのうち腹側を覆う腹側外装シート12Fと背側を覆う背側外装シート12Bとを有しており、腹側外装シート12Fの幅方向両側縁と背側外装シート12Bの幅方向両側縁とが、上下方向全体にわたりヒートシールや超音波溶着等により溶着接合されて筒状の胴回り部100が形成されるように構成されている。符号12Aは個々の溶着部を示しており、この溶着部12Aの群がサイドシール部を構成するものである。図示形態のように、背側外装シート12Bが溶着部12Aよりも下側に延出している場合には、この部分までを含む上下方向範囲に一体的にヒートシール等の加工を施し、背側延出部14に延出溶着部12Eを設けることができる。延出溶着部12Eを設けることにより、後述する背側延出部14の第2の細長状弾性伸縮部材16の引き込みを防止することができる。この場合、脇部の破りやすさを考慮して、溶着部12Aは小さな溶着部の集合からなり、溶着部12Aにおける溶着面積の比率が低い接合パターンとすることが一般的であるが、延出溶着部12Eでは破りやすさを考慮する必要が無いため、溶着パターンは溶着部12Aよりも溶着面積の比率を高くすることにより第2の細長状弾性伸縮部材16が確実に溶着固定されるようにしてもよい。また、延出溶着部12Eは臀部カバー部14Cの縁部をカーブしたラインで溶着し、臀部カバー部14Cの第2の細長状弾性伸縮部材16の引き込みを防止することもできる。
【0023】
また、胴回り部100における腹側外装シート12Fの幅方向中央部内面に内装体200の前端部がホットメルト接着剤等により連結されるとともに、背側外装シート12Bの幅方向中央部内面に内装体200の後端部がホットメルト接着剤等により連結されており、腹側外装シート12Fと背側外装シート12Bとが股間側で連続しておらず、離間されている。この離間距離は150〜250mm程度とすることができる。図示しないが、腹側外装シート12Fと背側外装シート12Bとが股間部で連続した形態、つまり腹側から背側までを一体的な外装シートにより連続的に覆う形態を採用することもできる。
【0024】
図7及び図8からも判るように、胴回り部100の上部開口は、着用者の胴を通すウエスト開口部WOとなり、内装体200の幅方向両側において胴回り部100の下縁および内装体200の側縁によりそれぞれ囲まれる部分が脚を通す脚開口部LOとなる。各溶着部12Aを剥がして展開した状態では、図1に示すように砂時計形状をなす。内装体200は、背側から股間部を通り腹側までを覆うように延在するものであり、排泄物を受け止めて液分を吸収し保持する部分であり、胴回り部100は内装体200を着用者に対して支持する部分である。
【0025】
(外装シート)
腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bは、図4及び図5にも示すようにシート状資材12,12を2枚貼り合せてなるものであり、内側に位置する内側シート状資材12はウエスト開口部WOの縁までしか延在していないが、外側に位置する外側シート状資材12は内側シート状資材12のウエスト側の縁を回り込んでその内側に折り返されており、この折り返し部分12rは内装体200のウエスト側端部上までを被覆するように延在され、対向面にホットメルト接着剤等により固定されている。シート状資材12としては溶着により接合できるものであれば特に限定されないが、不織布であるのが好ましい。不織布は、その原料繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。不織布を用いる場合、その坪量は10〜30g/m2程度とするのが好ましい。
【0026】
そして、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bには、胴回りに対するフィット性を高めるために、両シート状資材12,12間に糸ゴム等の細長状弾性伸縮部材15〜19が所定の伸張率で設けられている。細長状弾性伸縮部材15〜19としては、合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。各外装シート12F,12Bの両シート状資材12,12の貼り合せや、その間に挟まれる細長状弾性伸縮部材15〜19の固定にはホットメルト接着またはヒートシールや超音波接着を用いることができる。外装シート12F,12B全面を強固に固定するとシートの風合いを損ねるため好ましくない。これらを組合せ、細長状弾性伸縮部材15〜19の接着は強固にし、それ以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。
【0027】
より詳細には、背側外装シート12Bは、溶着部12A群によるサイドシール部と同じ上下方向範囲を占める背側本体部13と、この背側本体部13の下側に延出する背側延出部14とを有している。背側延出部14は、内装体200と重なる幅方向中央部14Mと、その両側に延出した臀部カバー部14Cとを有している。
【0028】
背側延出部14の形状は適宜定めることができるが、図示例では、背側延出部14の上端部は、背側本体部13と同幅で背側本体部13の下側に延出されており、その下側は股間側に近づくにつれて幅が狭められている。背側本体部13と同幅の部分は省略することもできる。このように構成されていると、臀部カバー部14Cの幅方向外側の縁14eが、股間側に近づくにつれて内装体200側に近づくような直線状または曲線状をなすようになり、臀部を覆い易い形状となる。
【0029】
背側延出部14の寸法は適宜定めることができるが、図6に示すように、臀部カバー部14Cの幅方向長さ14x(臀部カバー部14Cの幅方向外側の縁14eと内装体200の側縁との幅方向の最大離間距離)が80〜160mmであり、臀部カバー部14Cの上下方向の長さ14y(延出長さ)が30〜80mmであると、より好ましい。また、背側延出部14の幅方向に最も広い部位と上下方向に最も広い部位により定まる四角形の面積をSとすると、背側延出部14の面積はSに対して20〜80%、特に40〜60%程度であると、臀部の外観および装着感に優れるため、好ましい。
【0030】
背側本体部13は、上下方向において概念的に上端部(ウエスト部)Wと、これよりも下側の下側部分Uとに分けることができ、その範囲は製品のサイズによって異なるが、一般に、上端部Wの上下方向長さは15〜80mm、下側部分Uの上下方向長さは35〜220mmとすることができる。
【0031】
背側本体部13の上端部(ウエスト部)Wにおける内側シート状資材12の内側面と外側シート状資材の折り返し部分12rの外側面との間には、幅方向全体にわたり連続するように、複数の背側ウエスト部弾性伸縮部材17が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。また、背側ウエスト部弾性伸縮部材17のうち、背側本体部13の下側部分Uに隣接する領域に配設される1本または複数本については、内装体200と重なっていてもよいし、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けてもよい。この背側ウエスト弾性伸縮部材17としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、4〜12mmの間隔で3〜22本程度、それぞれ伸張率150〜400%、特に220〜320%程度で固定するのが好ましい。また、背側ウエスト部弾性伸縮部材17は、その全てが同じ太さと伸張率にする必要はなく、例えば背側ウエスト部の上部と下部で弾性伸縮部材の太さと伸張率が異なるようにしてもよい。
【0032】
また、背側本体部13の下側部分Uにおける内側シート状資材12の外側面と外側シート状資材12の内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その上側および幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の第1の細長状弾性伸縮部材15が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。
【0033】
第1の細長状弾性伸縮部材15としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、1〜15mm、特に3〜8mmの間隔で5〜30本程度、それぞれ伸張率200〜350%、特に240〜300%程度で固定するのが好ましい。
【0034】
また、背側延出部14における内側シート状資材12の外側面と外側シート状資材12の内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり(少なくとも臀部カバー部14C全体にわたり)連続するように、複数の第2の細長状弾性伸縮部材16が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。
【0035】
第2の細長状弾性伸縮部材16としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、5〜40mm、特に5〜20mmの間隔で2〜10本程度、それぞれ伸張率150〜300%、特に180〜260%で固定するのが好ましい。
【0036】
一方、腹側外装シート12Fは背側外装シート12Bの背側本体部13と基本的に同様の腹側本体部(溶着部12A群によるサイドシール部と同じ上下方向範囲を占める部分)のみからなるものであり、胴回り方向に沿って延在する矩形状をなし、背側外装シート12Bのような背側延出部14を有していないものである。
【0037】
すなわち、腹側外装シート(腹側本体部)12Fの上端部(ウエスト部)Wおよび下側部分Uのうち、上端部Wにおける内側シート状資材12の内側面と外側シート状資材12の折り返し部分12rの外側面との間には、幅方向全体にわたり連続するように、複数の腹側ウエスト部弾性伸縮部材18が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。この腹側ウエスト部弾性伸縮部材18は、背側ウエスト部弾性伸縮部材17に対して、本数、太さ、伸張率、間隔、及び上下方向配置をできるだけ近づけるのが好ましいが、異ならしめることもでき、異ならしめる場合、本数の差は10本以下、好ましくは5本以下、太さの差は1880dtex以下、好ましくは470dtex以下、伸張率の差は100%以下、好ましくは40%以下、間隔の差は10mm以下、好ましくは5mm以下である。
【0038】
また、腹側外装シート12F(腹側本体部)の下側部分Uにおける内側シート状資材12の外側面と外側シート状資材12の内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その上側および幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の第3の細長状弾性伸縮部材19が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。第3の細長状弾性伸縮部材19の上下方向配設範囲は、下側部分の一部としても良いが、実質的に全体(全体に伸縮力が作用する範囲)とするのが好ましい。
【0039】
第3の細長状弾性伸縮部材19としては、第1の細長状弾性伸縮部材15と、本数、太さ、伸張率、間隔、及び上下方向配置をできるだけ近づけるのが好ましいが、異ならしめることもでき、異ならしめる場合、本数の差は10本以下、好ましくは5本以下、太さの差は1880dtex以下、好ましくは470dtex以下、伸張率の差は100%以下、好ましくは40%以下、間隔の差は10mm以下、好ましくは5mm以下である。
【0040】
図示形態の腹側外装シート12Fは、溶着部12Aと同じ上下方向範囲を占める部分のみからなるものとしたが、背側と同様に、溶着部12Aと同じ上下方向範囲を占める腹側本体部と、この腹側本体部の下側に延出する腹側延出部とからなる構成とすることもできる。これにより、腹側外装シート12Fの脚周り形状を鼠蹊部に沿ってフィットする形状とすることができる。この場合、腹側延出部の面積は、背側延出部の面積の10〜80%であるのが好ましく、20〜50%であるとより好ましい。腹側延出部が過度に大きいと、かえってフィット性を損なうため好ましくない。
【0041】
他方、図示のように、第1、第2及び第3の細長状弾性伸縮部材15、16及び19が、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けられていると、内装体200と外装シート12F,12Bが剥れにくいため好ましいが、この形態には、幅方向両側にのみ弾性伸縮部材が存在する形態の他、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで弾性伸縮部材が存在しているが、内装体200と重なる幅方向中央部では弾性伸縮部材が切断され、伸縮力が作用しない(実質的には、弾性伸縮部材を設けないことに等しい)ように構成されている形態も含まれる。また、背側本体部13および背側延出部14の幅方向全体にわたり伸縮力が作用するように、第1、第2及び第3の細長状弾性伸縮部材15、16及び19の一部または全部を、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで設けることもできる。
【0042】
(内装体)
内装体200は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。内装体200は、図3に示されるように、身体側となる表面シート30と、液不透過性シート11と、これらの間に介在された吸収要素50とを備えている。液不透過性シート11の裏面側には、内装体200の裏面全体を覆うように、あるいは腹側外装シート12Fと背側外装シート12Bとの間に露出する部分全体を覆うように、股間部外装シート12Mを固定することもできる。また、表面シート30と吸収要素50との間に、表面シート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させる中間シート(セカンドシート)を設けることもできるが、肌への熱伝達が阻害されるため、表面シート30と吸収要素50との間には、少なくとも後述する高吸収性ポリマーを有する部分と重なる部分、好ましくは全体にわたり、他の部材を設けないのが好ましい。さらに、内装体200の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、内装体200の両側に、身体側に起立するバリヤーカフス60,61を設けることができる。なお、図示しないが、内装体200の各構成部材は、ホットメルト接着剤などのベタ、ビードまたはスパイラル塗布などにより、適宜相互に固定することができる。また、内装体200は、メカニカルファスナーや粘着材を用い、外装シート12F,12Bに対して着脱自在に取り付けることもできる。
【0043】
(表面シート)
表面シート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、SMS法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。特には、表面側からの温度変化を感知し易くするため、スパンボンド法やSMS法により加工された不織布が薄さと強度のバランスに優れる点で好適であり、エアスルー法により加工された不織布は低坪量でも吸収が速やかでかつさらっと感に優れるため好適である。
【0044】
また、表面シート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、表面シート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合わせてなるものであってもよい。
【0045】
表面シート30を不織布から構成する場合、その厚みが0.1〜3mm程度、特に0.5mm以下、且つ目付けが10〜40g/m2程度、特に25g/m2以下であるように構成すると、裏面側から肌への伝熱性に優れるため好ましい。
【0046】
バリヤーカフス60,61を設ける場合、表面シート30の両側部は、液不透過性シート11とバリヤーカフス60,61との間を通して、吸収要素50の裏側まで回りこませ、液の浸透を防止するために、液不透過性シート11及びバリヤーカフス60,61に対してホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。これにより、内装体200の両側部の剛性が向上するという効果も得られる。
【0047】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この不透液性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができる。
【0048】
液不透過性シート11は、防漏性を高めるために、吸収要素50の両側を回りこませて吸収要素50の表面シート30側面の両側部まで延在させるのが好ましい。これにより、内装体200の両側部の剛性が向上するという効果も得られる。この延在部の幅は、左右それぞれ5〜20mm程度が適当である。
【0049】
また、液不透過性シート11の内面または外面には、印刷や着色によるデザインを施しても良い。さらに液不透過性シート11の外側に、股間部外装シート12Mとは別部材の、印刷または着色を施したデザインシートを貼り付けても良い。また、液不透過性シート11の内側に、液分の吸収により色が変化する排泄インジケータ80を設けることができる。
【0050】
(バリヤーカフス)
バリヤーカフス60,61は、内装体200の両側部に沿って前後方向全体にわたり延在する帯状部材であり、表面シート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を遮断し、横漏れを防止するために設けられているものである。
【0051】
本実施の形態では、図3及び図4にも示すように、内装体200の左右各側において二重にバリヤーカフス60,61が設けられている。おむつを展開した状態では、図示のように、内側バリヤーカフス61は内装体200の側部から幅方向中央側に斜めに起立するものであり、外側バリヤーカフス60は、内側バリヤーカフス61の幅方向外側において内装体200の側部から起立するように設けられ、付け根側の部分は幅方向中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側の部分は幅方向外側に向かって斜めに起立するものである。
【0052】
より詳細には、内側バリヤーカフス61は、内装体200の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のバリヤーシート62を幅方向に折り返して二つに折り重ねるとともに、折り返し部分及びその近傍のシート間に、細長状弾性伸縮部材63を長手方向に沿って伸張状態で、幅方向に間隔をあけて複数本固定してなるものである。細長状弾性伸縮部材63は、バリヤーシート62に対し、前後端部では固定されておらず、中間部においてバリヤーカフスが前後に伸縮するように固定されている。バリヤーシート62としてはスパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができ、繊維目付けは10〜30g/m2程度とするのが好ましい。細長状弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは420〜1120dtexが好ましく、620〜940dtexがより好ましい。固定時の伸長率は、150〜350%が好ましく、200〜300%がより好ましい。また、図示しないが、二つに折り重ねたバリヤーシートの間に防水フィルムを介在させることもできる。
【0053】
細長状弾性伸縮部材63は、内側バリヤーカフス61の先端部に1〜2本配置するのが好ましく、先端部と基端部との間の中間部にも1〜2本配置すると更に好ましい。中間部に細長状弾性伸縮部材63があると、これを支点として中間部から先端部に亘る範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。中間部の細長状弾性伸縮部材63の配置位置は内側バリヤーカフス61の高さ(突出部の幅方向長さ)の30〜70%範囲が好ましい。乳幼児用紙おむつでは、内側バリヤーカフス61の高さは15〜35mm程度が好ましいため、細長状弾性伸縮部材63の配置範囲は先端から基端側に5〜25mmの位置が好ましく、12〜18mmの位置がより好ましい。内側バリヤーカフス61の先端部及び/または中間部にそれぞれ細長状弾性伸縮部材63を平行に設ける場合は、その配置間隔61dは2〜10mmが好ましく、2〜6mmがより好ましい。
【0054】
そして、内側バリヤーカフス61のうち幅方向において折り返し部分と反対側の端部は内装体200の側縁部の裏面に固定された取付部分(内側取付部分)65とされ、この取付部分65以外の部分は取付部分65から突出する突出部分66(折り返し部分側の部分であり、内側突出部分に相当する)とされ、この突出部分66のうち前後方向両端部が表面シート30表面にホットメルト接着剤やヒートシールによる前後固定部67により固定され、前後方向中間部が非固定の自由部分(内側自由部分)とされ、この自由部分に前後方向に沿う細長状弾性部材63が伸張状態で固定されている。
【0055】
外側バリヤーカフス60も、内側バリヤーカフス61と基本的に同様の構造を有するものであるが、その取付部分(外側取付部分)68が、内装体200の裏面側における内側バリヤーカフス61の取付部分65よりも幅方向中央側において内側バリヤーカフス61の外面に固定される点、突出部分(外側突出部分)69のうち前後方向両端部が、取付部分68から内装体200の側部を通り内側バリヤーカフス61における内側突出部分66の前後方向両端部の表面まで延在し且つ内側突出部分66の前後方向両端部の表面に固定された付け根側部分と、この付け根側部分の先端から幅方向外側に折り返され且つ付け根側部分に固定された先端側部分とからなる点、細長状弾性伸縮部材63の配置及び本数等で異なるものである。
【0056】
ただし、内側バリヤーカフス61についても、内側突出部分の先端部は幅方向外側に折り返される構造、具体的には内側バリヤーカフス61の高さ(突出部の幅方向長さ)の1/2以下、好ましくは1/3以下であれば、外側バリヤーカフス61と同様に先端側部分が幅方向外側に折り返され且つ付け根部側部分に固定される構造を採っても良い。
【0057】
外側バリヤーカフス60の自由部分(外側自由部分)に設けられる細長状弾性伸縮部材63の本数は2〜6本が好ましく、3〜5本がより好ましい。配置間隔60dは3〜10mmが適当である。このように構成すると、細長状弾性伸縮部材63を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。先端側だけでなく付け根側にも細長状弾性伸縮部材63を配置しても良い。外側バリヤーカフス60に配置する細長状弾性伸縮部材63の太さや伸長率は、内側バリヤーカフス61に準ずるが、太さは内側バリヤーカフス61のものと同じ、またはより太く、伸長率は内側バリヤーカフス61のものと同じ、またはより低いほうが好ましい。
【0058】
また、突出部分66,69の前後固定部67の前後方向長さL6は、内側バリヤーカフス61の方が外側バリヤーカフス60と同じかまたは短く形成するのが好ましく、バリヤーカフス60,61における細長状弾性伸縮部材63の前後方向固定長さは、内側バリヤーカフス61の方が外側バリヤーカフス60と同じかまたは長く形成するのが好ましい。取付部分65と突出部分66との境界は、外側バリヤーカフス60と内側バリヤーカフス61とで同じ位置であっても良いが、外側バリヤーカフス60の境界が内側バリヤーカフス61の境界よりも幅方向中央側に離間しているのが好ましく、その離間距離は10mm以内が好ましい。
【0059】
外側バリヤーカフス60及び内側バリヤーカフス61の取付部分68,65における突出部分66,69側の縁部には、ホットメルト接着剤やヒートシールによる線状の付け根固定部を形成するのが好ましい。また、他の固定部はホットメルト接着剤等を用いて適宜のパターンで固定することができる。この線状の付け根固定部は、内装体200の表面側の側部近傍(具体的には側縁から幅方向に0〜5mm、好ましくは0〜3mmの位置)または裏面側に位置するのが好ましい。この場合、バリヤーカフスを表面側に折り返して固定しているのは実質的に前後方向両端部のみとなるため、前後固定部67による幅方向中央側への規制が十分に作用しない股間部においては、外側バリヤーカフス60及び内側バリヤーカフス61いずれもが幅方向外側に向かって起立し、内側バリヤーカフス61の形成するポケットが広くなる。表面側で側縁から幅方向に5mmを越えて線状の付け根固定部が位置すると、股間部においてもバリヤーカフスが幅方向中央側に向かって起立し、内側バリヤーカフス61の形成するポケットが狭くなるため、好ましくない。裏面側に位置する場合は、内装体200の側縁から0〜20mmの位置が適当だが、20mmを越えて位置してもよい。
【0060】
外側及び内側バリヤーカフス60,61の取付部分68,65の固定対象は、内装体200における表面シート30、液不透過性シート11、吸収要素50等適宜の部材とすることができ、またいずれか一方のバリヤーカフスを介して他方のバリヤーカフスを内装体200に対して固定することもできる。
【0061】
かくして構成された外側及び内側バリヤーカフス60,61では、細長状弾性伸縮部材63の収縮力が前後方向両端部を近づけるように作用するが、突出部分66,69のうち前後方向両端部が起立しないように固定されるのに対して、それらの間は非固定の自由部分とされているため、自由部分のみが図3に示すように身体側に当接するように起立する。特に、取付部分68,65が内装体200の裏面側に位置していると、股間部及びその近傍において外側及び内側バリヤーカフス60,61が幅方向外側に開くように起立するため、外側及び内側バリヤーカフス60,61が脚周りに面で当接するようになり、フィット性が向上するようになる。一方、股間部の前後両側(腹部及び背部)においては、前後固定部67により外側及び内側バリヤーカフス60,61が幅方向外側へ開かないように規制されるため、内側バリヤーカフス61は高く起立し、外側バリヤーカフス60の下半分も同様に起立するため、腹部及び背部における内装体200両脇からのもれが確実に防止できる。また、内側バリヤーカフス61の突出部分66における前後固定部67は折り返さずに、外側バリヤーカフス60の突出部部分68における前後固定部67は外向きに折り返されているため、外側及び内側バリヤーカフス60,61における内側及び外側自由部分間の離間状態が維持され、外側及び内側バリヤーカフス60,61が広い間隔で確実に起立し、それぞれが脚周りにフィットするようになるため、漏れ防止性に優れたものとなる。
【0062】
バリヤーカフス60,61の寸法は適宜定めることができるが、乳幼児用紙おむつの場合は、例えば図7に示すように、内側バリヤーカフス61の起立高さ(展開状態における突出部分66の幅方向長さ)W5は10〜50mm、特に15〜35mmであるのが好ましく、外側バリヤーカフス60の起立高さ(展開状態における突出部分69の幅方向長さ)W6は15〜60mm、特に20〜40mmであるのが好ましい。また、内側バリヤーカフス61を表面シート30表面に倒した状態における先端間の離間距離W4は60〜170mm、特に70〜120mmであるのが好ましい。また、外側バリヤーカフス60を表面シート30表面と平行になるように、平坦に折り畳んだ状態において最も内側に位置する折り目間の離間距離W3は60〜190mm、特に70〜140mmであるのが好ましい。
なお、図示形態と異なり、外側及び内側バリヤーカフス60,61のいずれか一方のみを設けることもできる。
【0063】
(吸収要素)
本例の吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の全体を包む包被シート58とを有するものとなっているが、包被シート58は省略することもできる。
【0064】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成される。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。吸収体56中には高吸収性ポリマー粒子を分散保持させるのが好ましい。
【0065】
吸収体56は長方形形状でも良いが、図6にも示すように、前端部56F、後端部56B及びこれらの間に位置し、前端部56F及び後端部56Bと比べて幅が狭い括れ部56Nとを有する砂時計形状を成していると、吸収体56自体とバリヤーカフス60,61の、脚回りへのフィット性が向上するため好ましい。具体的な寸法としては、吸収体前端部56Fの前後方向長さをL1とし、吸収体56と腹側外装シート12Fとの重なり部分における前後方向長さをL2とし、吸収体後端部56Bの前後方向長さをL3とし、吸収体56と背側外装シート12Bとの重なり部分における前後方向長さをL4とし、括れ部56Nの最小幅をW1とし、吸収体前端部56Fの幅及び吸収体後端部56Bの幅をW2としたとき、下記の式(1)〜(4)を満足するように構成されていると、好ましい。
70mm ≦ W1 < W2 ≦ 190mm …(1)
0.5 ≦ W1/W2 ≦ 0.85 …(2)
0mm ≦ L1−L2 ≦ 70mm …(3)
0mm ≦ L3−L4 ≦ 50mm …(4)
【0066】
W1及びW2が狭過ぎると、バリヤーカフス60,61の起立が不安定になり、また吸収量が不十分となり、広過ぎるとフィット性の低下により装着感が悪化する。
【0067】
また、上記数値範囲にあると、股間部においてはバリヤーカフス60,61の取付部分65近傍に吸収体56が存在しないため、バリヤーカフス60,61の動きの自由度が増し、バリヤーカフス60,61が幅方向外側に開き易く、肌に対して面で当たりやすくなり、脚の動きに対するフィット面の追従性も向上する。前後両側においては内装体200側部の吸収体56が十分な範囲に存在するため、これを基点(支点)としてバリヤーカフス60,61の起立が安定する。前後両側から股間部に至る部分は、バリヤーカフス60,61が内装体200の幅方向両側縁を基準として幅方向内側に起立した姿勢から幅方向外側に開いていく変位部であり、このバリヤーカフス60,61の姿勢変化が内装体200側部まで存在する吸収体56により支えられ、バリヤーカフス60,61の全体的な起立形状が安定する。上記数値範囲を外れ、括れ部が大きくなりすぎると、股間部においてはバリヤーカフス60,61の自由度が高くなりすぎ、かえって脚周りに隙間ができ易くなるおそれがあり、また股間部の前後両側においても基点(支点)が無いためにバリヤーカフス60,61の起立が不安定になるおそれがある。逆に括れ部が小さくなりすぎると、バリヤーカフス60,61の自由度が低下するので好ましくない。
【0068】
さらに、括れ部56N全体の前後方向長さL7は好ましくは80mm以上、特に好ましくは120〜260mmとされる。括れ部56Nの前後方向長さL7が短過ぎるとバリヤーカフス60,61の自由度が低下するとともに、吸収体56の脚周りに対するフィット性が低下して脚の動きを妨げるようになり、長すぎるとバリヤーカフス60,61の起立が安定しなくなる。
【0069】
(高吸収性ポリマー粒子)
高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0070】
高吸収性ポリマーとしては、抗菌物質と一体化したものを用いることができる。特に、ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部または全部を銀イオンで置換してなるゼオライト粒子(以下、これを抗菌消臭性ゼオライトという)を高吸収性ポリマー中に含有させるか、あるいは抗菌消臭性ゼオライト粒子を高吸収性ポリマー粒子の表面に静電気により付着させてなる、抗菌消臭性高吸収性ポリマー粒子が好適である。
【0071】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0072】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0073】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、50〜800g/m2とすることができ、特に100〜400g/m2が好ましい。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。800g/m2を超えると、効果が飽和する。
【0074】
必要であれば、高吸収性ポリマー粒子は、吸収体56の平面方向で散布密度あるいは散布量を調整できる。たとえば、液の排泄部位を他の部位より散布量を多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の散布密度(量)を高め、女用は中央部の散布密度(量)を高めることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)にポリマーが存在しない部分を設けることもできる。
【0075】
特に、後述する温度変化物質により温度変化した尿を肌により近い位置で保持するために、高吸収性ポリマーとしては吸水速度が50秒以下のものが好適である。吸水速度が遅いと、温度変化した尿の多くが吸収されずに裏面側に通過してしまう。
【0076】
(包被シート)
包被シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないような目の細かいシートであるのが望ましく、表面側からの温度変化を感知し易くするため、薄く低目付けのものが適当である。厚みは0.05〜3mm程度、特に0.2mm以下、且つ目付けが5〜25g/m2程度、特に15g/m2以下であると、裏面側から肌への伝熱性に優れるため好ましい。不織布を用いる場合は、スパンボンド法やSMS法により加工された不織布、特にSMS法により加工された不織布が、薄さと強度のバランスに優れる点で好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。
【0077】
吸収体56を一枚の包被シートで包む場合、着用者に効果的に温度変化を伝達させるため、身体側の包被シート58の合わせ目の重なり幅58Wを温度変化物質の配置領域の幅40Wより狭く、かつ寸法が40mm以下、特に20mm以下にするのが好ましい。また、包被シート58の合わせ目は、排尿口に当接する幅方向の中央を含まないように、側部寄りに形成するのも好ましい形態である。特に、身体側の包被シート58の合わせ目のシートの重なり部が、後述する温度変化物質の融着部分40とは重ならないようになっていることが好ましい。
【0078】
(股間部外装シート)
内装体200の裏面側には、製品外面に露出する股間部外装シート12Mが設けられている。この股間部外装シート12Mの素材としては、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bと同様のものを用いることができるが、より高強度の素材や消臭剤を含有するもの等、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bとは異なる素材を用いることもできる。具体的には、PP、PP/PE、PP/PET等の繊維からなる、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、エアーポイント不織布、スパンレース不織布、SMS不織布等の各種不織布、あるいはこれに消臭剤等を添加したもの等を用いることができる。
【0079】
股間部外装シート12Mには座位時に高い体圧がかかる。よって、摩擦堅牢度の高い(毛羽立たない)特性を有する素材が好ましい。
【0080】
股間部外装シート12Mは、印刷や着色を行い、デザイン要素を備えたシートとしてもよい。前述のデザインシートと併用する場合は、それぞれのデザインが重ならないように配置することが好ましい。
【0081】
股間部外装シート12Mとして伸縮不織布を用い、内装体200の長手方向に伸長して貼り付けると、股間部のフィット性が向上するため好ましい。
【0082】
股間部外装シート12Mが幅方向側部から身体側面まで回り込み、バリヤーシート62の外面にホットメルト接着剤等により接着固定されていると、内装体200の両側部の剛性が向上する。このような形態においては、股間部外装シート12Mに剛度(コシ度)の高いシートを用いることが好ましい。具体的には、クラーク法(JISL1096 C法)によって測定される剛軟度の、シートのMD方向とCD方向との和が100mm以上、好ましくは150mm以上のシートを用いるとよい。
【0083】
図示例では、腹側及び背側外装シート12F,12Bと内装体200とが重なる部分において、股間部外装シート12Mは内装体200と腹側及び背側外装シート12F,12Bとの間に挟まれているが、腹側及び背側外装シート12F,12Bの外側に貼り付けることも可能である。股間部外装シート12Mは、ホットメルト接着剤等により内装体200の裏面、並びに腹側及び背側外装シート12F,12Bの内面若しくは外面に貼り付けられる。
【0084】
(温度変化物質)
吸収体56は、その幅方向中央部のうち、少なくとも股間部から腹側部分にわたる部分に温度変化物質が融着され、且つ吸収体56における温度変化物質の融着部分40の周囲には温度変化物質が融着されていないものである。温度変化物質は、吸収体56に融着されていると、温度変化物質が移動することがなくなり、所定の領域(この場合は股間部)で確実に機能するようになる。また、融着されていない部分と比較してコシ(剛性)が高くなるため、温度変化物質を確実に保持する温度変化物質融着部分に皺や折れ曲がり等の変形が起こり難く、股間部から腹側部分にわたる部分が身体に良好にフィットするようになる。
【0085】
本発明における剛性とは、曲げ剛性(剛度)のことを意味し、JIS K 7171(プラスチック‐曲げ剛性の試験方法)に準拠し、次の方法で測定する。測定にはテンシロン試験機(圧子先端部の曲率半径R1=5.0±0.1mm、支持プレート先端部の曲率半径R2=5.0±0.2mm)を用い、内装体20の製品前後方向の曲げ剛性を測定する。試験片は、内装体20から測定に影響する弾性伸縮部材を取り除き、これをおむつ長手方向80mm、おむつ幅方向50mmの長方形に切り取ることにより作製する。曲げ剛性値の単位中の50mmは試験片の短辺の長さであり、試験時の圧子でたわませた試験片の幅である。それぞれ断面円弧状の先端部を有し、両先端部の先端(上端)間の間隔を位置を揃えて配置された一対の支持プレート上に、上記の試験片を、その長手方向を各プレートに直交する方向に向けて、掛け渡すように載置し、その試験片に僅かに接するように圧子先端部を配置する。ロードセル5kg(レンジ196cN)、速度30mm/minの条件で圧子を降下させ、荷重‐たわみ曲線を得る。得られた曲げ応力の最大値を曲げ剛性値(cN/50mm)とする。なお、測定対象となる部位が上記サンプリング寸法より小さい場合は、小スケールの試験片で測定を行い、寸法比に基づいて比例計算にて換算する。
【0086】
吸収体56における温度変化物質の融着部分40の剛性は、15〜50cN/50mm、特に20〜35cN/50mmが好ましく、その周囲の温度変化物質が融着されていない部分の剛性は、5〜35cN/50mm、特に10〜25cN/50mmが好ましく、通常の場合、融着部分40とその周囲の部分の剛性差は10〜25cN/50mm程度である。
【0087】
温度変化物質の融着部分40は、吸収体56が少なくとも腹側部分のウエスト側端縁から股間側に0.15〜0.80L(Lは製品長さ)の範囲にわたり設けられている場合、少なくとも腹側部分のウエスト側端縁から股間側に0.25〜0.45Lの範囲40Yにわたり設けられているのが好ましい。このような寸法を採用することによって、男女の排尿位置に温度変化物質の融着部分40が位置するようになる。つまり、排尿時に尿が温度変化物質の融着部分40に確実に当たるようになる。
【0088】
また、温度変化物質の融着部分40は、鼠蹊部に沿い且つ鼠蹊部よりも幅が広くなるように、ウエスト側に向かうにつれて幅が拡大する形状を有しているのが好ましい。図中の符号41が幅拡大部分を示している。温度変化物質の融着部分40をこのような形状にすることによって、股間部における縦皺及び鼠蹊部に沿う皺が入り難く、股間部から腹側部分にかけてのフィット性がより一層のものとなる。幅拡大部分41より後側は、図示形態では一定の幅とされているが、脚周りに沿う曲線状をなしていても良い。
【0089】
吸収体56の股間部に脚周りに沿う括れ部56Nを設ける場合、括れ部56Nの前後方向長さが0.2〜0.3Y(Yは吸収体56の前後方向長さ)であり、括れ部56Nにおける最も幅が狭い部分の幅が0.6〜0.75X(Xは吸収体56の全幅で、前記W2と同じ)であり、腹側部分における温度変化物質の融着部分40のウエスト側端縁の幅40Wは0.4〜0.7Xであり、温度変化物質の融着部分40のうち幅拡大部分41の股間側端が、括れ部56Nの最も幅の狭い部分と同位置か、又はこれよりも腹側に位置しており、温度変化物質の融着部分40の後端は、括れ部56Nの後端と同位置、又はこれよりも背側に位置するとともに、その幅40Xが、腹側部分における温度変化物質の融着部分40のウエスト側端縁の幅40Wの0.7倍以下で、且つ0.5X以下であるのが好ましい。特に、本実施形態のようなパンツ型使い捨ておむつの場合、温度変化物質の融着部分40のウエスト側端縁の位置が、腹側部分においてサイドシール部の下端よりウエスト側に位置しているのが好ましい。
【0090】
吸収体56の寸法が上記範囲内にあると吸収体56が脚周りにフィットし易くなる。また、腹側部分における融着部分40のウエスト側端縁の幅40Wが上記範囲内にあり、温度変化物質の融着部分40のうち幅拡大部分41の股間側端が前後方向において上記範囲に位置していると、歩行により鼠蹊部に沿って発生する皺を効果的に防止できる。また、温度変化物質の融着部分40の後端を前後方向において上記範囲内に抑えることで、温度変化に鈍感である尻側に無駄な温度変化物質を配置しなくて済む。また、温度変化物質の融着部分40の後端の幅40Xが上記範囲内にあると股間部における縦皺が入り難くなるため好ましい。
【0091】
温度変化物質が融着された吸収体56は、粒子状(粉体状含む)又は繊維状等の適宜形状の温度変化物質を吸収体56の上面の所定部位に載せた後、或いは吸収体56の内部の所定部位に侵入させた後に、温度変化物質を吸収体56とともに加熱し、温度変化物質のみを溶融状態として吸収体56の繊維に付着させた後、冷却して温度変化物質を固化させることにより製造できる。
【0092】
なお、本形態では、吸収要素50における吸収体包被シート58内において、高吸収性ポリマーを少なくとも表面側層に含む吸収体56の、表面側層に温度変化物質が配置され、温度変化物質が吸収体の表面または表面側層に融着されているのが好ましい。このように構成されていると、表面シート30を通過し、吸収体56の表面に到達した尿は、温度変化物質により冷却または加熱された後、表面側層に含まれる高吸収性ポリマーにより吸収され、この高吸収性ポリマーを含む吸収体56の表面側層の温度が物品表面側に効果的に伝達され、装着者に温度変化を知覚させることになる。
【0093】
粒子状の温度変化物質を吸収体56の表面または表面側層に配置する(載せるあるいは侵入させる)形態は、例えば、厚み方向の実質的に全体に高吸収性ポリマー粒子を含有する吸収体56を形成した後、その表面の所定部位に粒子状の温度変化物質を散布又は投射することによって製造することができる。特に、粒子状の温度変化物質を投射することによって、一部の温度変化物質が吸収体56内に侵入し、吸収体56の表面側層は温度変化物質及び高吸収性ポリマーを混合状態で含む層となり、この層の上に実質的に温度変化物質のみの層が形成される。このように形成すると、温度変化物質の一部は吸収体に混合した状態で融着されることになり、融着部分40が硬くなりすぎるおそれがないため、好ましい。一方、排尿直後の温度変化をより強く感知させるため、温度変化物質を散布することによって、上記混合層を形成せず、実質的に全ての温度変化物質40を吸収体56の上側に配置することもできる。
【0094】
この形態は、吸収体56内に通常含有される高吸収性ポリマー粒子のうち、吸収体56の表面側層に含まれるものを、温度変化した尿を吸収保持するために利用するものである。従ってこの形態では、吸収体56の裏面側よりも表面側のほうが高吸収性ポリマーの密度が高くなっていると、温度変化した尿を吸収体56の表面側により多く保持でき、物品表面における温度変化をより大きくすることができるため好ましい。さらに、吸収体56の表面側に向かうにつれて次第に高吸収性ポリマーの密度が高くなったり、吸収体56の表面側に向かうにつれて段階的に高吸収性ポリマーの密度が高くなったりというように、密度勾配を有するように形成されていると、物品表面の温度変化を大きくする効果が顕著なものとなるため、より好ましい。このような密度勾配は、吸収体56内に侵入し難い大粒径分が多い粒度分布を有する高吸収性ポリマーを用いることにより形成することができる。
【0095】
なお、本明細書においては、粒子状物を自由落下させることを「散布」、初速度を与えて自由落下よりも勢いよく散布することを「投射」と呼ぶ。
【0096】
図10に示すように、吸収体56を、吸収体56の幅方向中央部のうち少なくとも股間部から腹側部分にわたる部分にのみ設けられた上層56Aと、その裏面側に接する下層56Bとを有する2層構造とし、上層56Aの全体(厚み方向と直交する方向の全体)にわたり温度変化物質を融着させ、上層56Aのみで温度変化物質の融着部分40を形成しても良い。このような構造は、パルプ等の短繊維に温度変化物質を混合したものを原料として上層56Aを積繊形成するか、又は温度変化物質を含むシートを切断又は折り曲げにより所定形状に形成した後、上層56Aのみ又は上層56Aと下層56Bとを一体的に加熱・冷却することにより製造することができる。
【0097】
これらの製造方法における加熱手段は特に限定されないが、例えば図11〜図14に示す手段を採用することができる。図11及び図12に示す手段は、高温の空気の通過により加熱を図るエアスルードライヤーを利用するものである。図11に示す手段では、温度変化物質を所定部分に配置した吸収体56を、ベルトコンベヤー301により搬送しながら、搬送面に対して直交する方向に通される熱風302により加熱した後、同じく搬送面に対して直交する方向に通される風303により冷却する、というものである。また、図12(a)及び(b)に示す手段は、温度変化物質を所定部分に配置した吸収体56を、高温空気が供給される加熱室310内に設置されたサクションロール311に巻き掛けて移送しつつ、サクションロール311外側から内側に通される熱風312により加熱した後、加熱室310外に設置されたクーリングロール313に巻き掛けて移送することにより冷却する、というものである。
【0098】
また、図13に示す加熱手段は、温度変化物質を所定部分に配置した吸収体56を、加熱ロール320に巻き掛けて移送することにより、加熱ロール320の熱を接触により温度変化物質に対して伝達し、片面側から加熱するというものである。
【0099】
さらに、図14に示す加熱手段は、温度変化物質を所定部分に配置した吸収体56を、少なくとも一方が加熱ロールからなる一対のロール330,331、340,341間に通すことにより、加熱ロールの熱を接触により温度変化物質に対して伝達し、加熱するというものである。この場合、同図(a)に示すように、両ロール330,331を表面が平滑なスムースロールとし、吸収体56に凹凸を形成しないようにしても、同図(b)に示すように、いずれか一方のロール340を表面に所定パターンの凹凸を有するエンボスロールとし、吸収体56の一方の面に凹凸を形成しても良い。特に、後者の場合、エンボスロール340の凸部パターンを、温度変化物質の融着部分40の領域だけに合せて形成しておき、当該領域のみを加熱するように構成するのも好ましい。融着部分40が形成されるのは、エンボスロール340の凸部パターンに対応する領域のみであるため、温度変化物質は、エンボスロール340の凸部パターンよりも広い範囲に配置してもよい。このように、吸収体56を部分的に加熱する方法を用いれば、吸収体56の所定の領域のみに温度変化物質を配置する必要はなく、例えば吸収体の全面に温度変化物質を配置し、所定の領域のみを部分的に加熱することにより、融着部分40を形成することも可能である。
【0100】
温度変化物質の加熱溶融は、吸収体56の製造時のみならず、その後の製造過程の適宜段階、例えば内装体200の組立完了状態(製品状態までの組立完了前)、又は製品状態までの組立完了後に、内装体やおむつ全体に対して行うこともできる。この場合における加熱方法としては、例えば前述した図11〜図14に示す手段を応用することができる。
【0101】
温度変化物質は、尿に接触して溶解熱、水和熱、又は反応熱等により熱を吸収又は放出し、尿を冷却又は加熱するものである。尿への溶解により熱を吸収する温度変化物質の例としては、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等の含水塩、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、塩化アンモニウム、塩化カリウム、硝酸ナトリウム等の無水塩、尿素、キシリトール、ソルビトール等の糖アルコール等を挙げることができる。尿への溶解により熱を放出する温度変化物質の例としては、塩化アルミニウム、硫化アルミニウム、硫化アルミニウムカリウム等を挙げることができる。本発明では、これらのうち、吸熱作用を発現するソルビトール、キシリトールなどの糖アルコール又は尿素などの有機化合物を使用することが好ましい。特にソルビトールやキシリトールは、溶解性に極めて優れ、化学的安定性が良く、人体に悪影響を及ぼさないため、好適に使用できる。尿への溶解により吸熱又は放熱する物質を用いる場合、尿への溶解度が低いと、十分な温度変化を発揮できないため、温度20℃の100mlの水への溶解度が30g以上、特に50g以上であるものが好ましい。また、20cal/g以上の温度変化を生じるものが好ましく、35cal/g以上の温度変化を生じるものがより好ましい。
【0102】
尿との反応により熱を吸収又は放出する物質の例としては、オルトエステル類、又はメントンを炭素量が1ないし8のアルコール或いは炭素量が2ないし8のポリオールと反応させて得られるメントンケタルのようなケタル類、及びそれらの構造的又は光学的異性体を挙げることができる。また、尿により膨潤することにより熱を吸収又は放出する温度変化物質の例としては、軽く架橋結合し部分的に中和されたポリアクリル酸を挙げることができる。
【0103】
また、温度変化物質は加熱により融着されるものであるため、融点が温度変化物質とともに加熱される部材よりも低い物質であるのが望ましい。すなわち、使い捨ておむつは通常ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を含むため、温度変化物質はこれらの樹脂と同じかそれよりも低い融点を有することが望ましい。一般的な熱可塑性樹脂の中で特に融点の低いポリエチレンは、通常100〜130℃程度の融点を有するため、温度変化物質の融点は130℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。また、製品保管時に温度変化物質が融解しないよう、70℃以上の融点を有することが好ましい。このような温度変化物質としては、融点が通常約95〜110℃程度(純度によって若干異なる)であるソルビトール及びキシリトールを挙げることができる。
【0104】
また、温度変化物質の溶融時の粘度が低いと、吸収体56の繊維間隙に浸透し難くなるため吸収体56に対する付着力が低下する。この観点から、温度変化物質としては、溶融時の温度(例えば70〜130℃)における粘度が5〜80ポアズのものが好ましい。
【0105】
吸収体56に融着された温度変化物質は、一度融解して液状化した後固化するため、表面積が小さくなっている。従って、温度変化物質における尿との接触面積が小さくなるため、温度変化速度が抑えられ、持続性が向上する。ただし、一律に温度変化速度が遅くなると、着用者が温度変化を知覚し難くなるおそれがある。よって、温度変化物質として嵩密度が低い粒子状物を用い、その全てを溶融させず、一部を溶融させて嵩密度の高い固体にし、残りは嵩密度の低い粒子状物のままで残すようにするのも好ましい形態である。粒子状の温度変化物質は、同程度の粒径であれば、嵩密度が低いほど表面積が大きく、尿との接触効率が高いため、温度変化速度が速くなる。特に温度変化物質が尿に溶解して温度変化が生じる場合にはこの傾向が顕著である。よって、前述したように、温度変化物質の一部のみを溶融させる場合、粒子状を維持する温度変化物質は温度変化作用が素速く生じ、溶融固化した温度変化物質は、温度変化作用が遅れて生じるようになるため、速効性と遅効性とを兼ね備えた温度変化が得られる。
【0106】
嵩密度の低い粒子状の温度変化物質としては、顆粒、表面凹凸の多い形状の粒子、表面や内部に微細な孔を有する粒子等の多孔質粒子が好適である。嵩密度の程度は適宜定めれば良いが、真密度の50%以下である(見かけの体積に対して50%以上の空隙(空間)を有する)のが好ましい。例えば、ソルビトールの場合、真密度は1.50g/cm3なので、好ましい嵩密度は0.75g/cm3以下であり、0.50〜0.70g/cm3がより好ましく、0.55〜0.65g/cm3が特に好ましい。また、粒子径が大きいと、見かけの嵩密度は小さいが、表面積は大きくないため、粒子状の温度変化物質を用いる場合、その平均粒径(JIS K 1474−2007 メジアン径)が200〜600μmであることが好ましい。
【0107】
他方、吸収体56が2層構造で、上層56Aに温度変化物質の融着部分40を有する場合、上層56Aは高吸収性ポリマーを含有し、かつ上層56Aの繊維密度が下層56Bより高いことが好ましい。繊維密度差をもたせる場合、上層56Aの繊維密度は下層56Bの4.5倍以上とすることが特に好ましい。具体的には、上層56Aの繊維密度を2.25〜6.75g/m3とし、下層56Bの繊維密度を0.5〜1.5g/m3程度とすればよい。図15に繊維密度比の変化に対する液保持性の測定結果を示した。この実験では、下層として密度1.0g/m3のエアスルー不織布(寸法10×15cm、目付25g/m2)と、上層として各種密度のパルプのみからなる層(寸法10×15cm、目付200g/m2)を用意し、予め上層の重量を計測した後、水平面上に下層及び上層をこの順に重ねた状態で、ビーカーから10mlの水を2cmの高さから10秒で上層上に注ぎ、注水してから5分経過した後に吸水した上層の重量を計測し、これら吸水後重量から吸水前重量を差し引いて求まる吸水量を注入水量で除して上層の液体保持率とした。この結果から、繊維密度の差が小さい条件では上層の液体保持率は40%程度であるが、上層の繊維密度が下層の繊維密度の4.0倍となる近辺を境として上層の液体保持率は大きく上昇を始め、上層の繊維密度を下層の繊維密度の4.5倍以上とすることにより、上層が上に位置するにもかかわらず液体保持率が50%超となり、上層に吸収された尿が下層に移動し難くなることが判る。
【0108】
このように構成すると、上層56A内において高吸収性ポリマーが吸収力を発揮して尿を取り込むまでの間、最初の排尿の大部分を上層56A内に保持できる。その結果、上層56A内の尿は高吸収性ポリマーに吸収されるまでの間、温度変化物質と接した状態を維持し、下層56Bに移動し難いため、より大きな温度変化が発生する。また、これによって、十分に温度変化した尿が上層56Aにおいて高吸収性ポリマーにより吸収され保持されるため、着用者に温度変化を効果的に伝えるとともに、尿の肌への逆戻りは低減することができる。また、上層56Aは、少なくとも1回分の排尿を保持できる程度の初期吸収量を有するようにするのが好ましい。そうすると、温度変化が発生する最初の1回の排尿は、全て上層56Aに保持できるため、温度変化した尿が下層56Bに移動して温度変化を無駄にすることがない。排尿1回分の初期吸収量を設定する上では、上層56Aがパルプをベースとする場合は、上層56Aのパルプ量は5〜10gが適当であり、上層56Aにおける繊維、高吸収性ポリマー及び温度変化物質の重量比率は、それぞれ15〜30%程度、5〜40%程度、及び30〜80%程度とするのが適当である。上層56Aにおける繊維、高吸収性ポリマー及び温度変化物質の目付は、それぞれ150〜300g/m2、50〜400g/m2、300〜800g/m2とするのが好適である。
【0109】
トレーニングパンツとしては、最初の1回の排尿で着用者が排尿を知覚し、親に伝えることができれば、おむつは交換されるため、それ以上の吸収量は必ずしも必要ではないが、着用者が知覚できなかったり、親に伝えることができなかったり、交換が遅れたりした場合には、2回目以降の排尿も吸収する必要がある。このような場合であっても、本形態では、上層56Aの吸収量が飽和に達した後、引き続き下層56Bで吸収することができる。
【0110】
なお、初期吸収量とは、繊維集合体や高吸収性ポリマー(SAP)等の吸収材料が本来の吸収力を発揮する前に一時的に吸収保持できる水(あるいは尿等の体液)の量のことである。高吸収性ポリマー粒子や、水溶性の温度変化物質は1gあたりの初期吸収量を1ccとし、パルプ等のセルロース系の繊維やオレフィン系の合成繊維は、長時間吸収させても吸収量がほとんど変わらないため、1gあたりの保水量をもって1gあたりの初期吸収量とし、これらを各素材使用量に応じて積算することにより算出することができる。本発明では、吸収体56の上層56Aにおける初期吸収量(吸収体の包被シートの吸収分は含まないものとする)は70cc以上であることが好ましく、100cc以上であることがより好ましい。
【0111】
また、最初の排尿の大部分を上層56A内に保持するために、上層56Aを構成する繊維の親水度及び/又は保水量を、下層56Bを構成する繊維の親水度及び/又は保水量よりも高くすることも好ましい。上層56Aを構成する繊維の保水量は、8cc/g以上、特に10cc/g以上が好ましく、下層56Bを構成する繊維の保水量は、8cc/g以下、特に5cc/g以下が好ましい。
(繊維1gあたりの保水量の測定方法)
1.200ccビーカーに20℃のイオン交換水200ccを入れる。
2.その中に繊維集合体1gを入れ、ガラス棒で30秒間攪拌する。
3.内径62mmのブフナー漏斗を支持台にセットし、ビーカー内の試料および水を10秒間で流し込み、自然ろ過する。
4.底面が直径60mmで、重さ1450gの円筒形の重りを試料の上に載せ、1分間放置する。(10cm四方あたりの荷重は5kgとなる。)
5.繊維の重量を量り、前後の重量差から繊維の保水量(1g=1ccとする)を求め、この保水量を繊維1gあたりに換算して、繊維1gあたりの保水量とする。
なお、試料が不織布等のシート状物である場合は、1gのシートを長さ20mm×幅2mmで、厚さ2mm以下にカットしたものを用いて測定する。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、パンツ型やテープ式、あるいはパッド型の吸収性物品等、広範な用途に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】パンツ型使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図2】パンツ型使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図3】図1の6−6断面図である。
【図4】図1の7−7断面図である。
【図5】図1の8−8断面図である。
【図6】パンツ型使い捨ておむつの要部のみを寸法とともに示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図7】パンツ型使い捨ておむつの要部のみを寸法とともに示す、断面図である。
【図8】製品状態の正面図である。
【図9】製品状態の背面図である。
【図10】他の形態の要部断面図である。
【図11】加熱手段を示す概略図である。
【図12】加熱手段を示す概略図である。
【図13】加熱手段を示す概略図である。
【図14】加熱手段を示す概略図である。
【図15】実験結果のグラフである。
【符号の説明】
【0114】
100…胴回り部、11…液不透過性シート、12F…腹側外装シート、12B…背側外装シート、200…内装体、30…表面シート、40…温度変化物質の融着部分、50…吸収要素、56…吸収体、58…包被シート、60…側部バリヤーカフス、62…バリヤーシート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
股間部と、股間部の前側に延出する腹側部分と、股間部の後側に延出する背側部分とを有し、
前記腹側部分から背側部分までにわたり、液透過性表面シートと裏面側シートとの間に繊維集合体からなる吸収体が介在されてなる吸収部分が設けられ、
尿との接触により尿を冷却又は加熱する温度変化物質が含有された、使い捨て吸収性物品において、
前記吸収体の幅方向中央部のうち、少なくとも前記股間部から前記腹側部分にわたる部分に前記温度変化物質が融着され、且つ前記吸収体における前記温度変化物質の融着部分の周囲には前記温度変化物質が融着されていない、
ことを特徴とする使い捨て吸収性物品。
【請求項2】
展開状態における腹側部分のウエスト端縁から背側部分のウエスト端縁までの前後方向長さとして定まる製品長をLとしたとき、
少なくとも前記腹側部分のウエスト側端縁から股間側に0.15〜0.80Lの範囲にわたり、前記吸収体が設けられており、
少なくとも前記腹側部分のウエスト側端縁から股間側に0.25〜0.45Lの範囲にわたり、前記温度変化物質の融着部分が設けられている、
請求項1記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項3】
前記温度変化物質の融着部分は、鼠蹊部に沿い且つ鼠蹊部よりも幅が広くなるように、ウエスト側に向かうにつれて幅が拡大する形状を有している、請求項2記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体の股間部に脚周りに沿う括れ部が設けられており、展開状態における前記吸収体の前後方向長さをY、幅をXとしたとき、前記括れ部の前後方向長さが0.2〜0.3Yであり、前記括れ部における最も幅が狭い部分の幅が0.6〜0.75Xであり、
前記腹側部分における前記温度変化物質の融着部分のウエスト側端縁の幅は0.4〜0.7Xであり、
前記温度変化物質の融着部分のうち前記幅が拡大する部分の股間側端が、前記括れ部の最も幅の狭い部分と同位置か、又はこれよりも腹側に位置しており、
前記温度変化物質の融着部分の後端は、前記括れ部の後端と同位置、又はこれよりも背側に位置するとともに、その幅が、前記腹側部分における前記温度変化物質の融着部分のウエスト側端縁の幅の0.7倍以下で、且つ0.5X以下である、
請求項3記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体は、高吸収性ポリマーを少なくとも表面側層に含んでおり、前記温度変化物質は前記吸収体の表面または表面側層に融着されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体は上層とその裏面側に接する下層とを有し、前記温度変化物質は前記上層に融着されるとともに、少なくとも前記上層は高吸収性ポリマーを含み、
前記上層の繊維密度が前記下層の繊維密度の4.5倍以上である、
請求項5記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体は上層とその裏面側に接する下層とを有し、
前記上層の全体が、前記温度変化物質の融着部分全体をなすとともに、前記上層における厚み方向と直交する方向の全体にわたり高吸収性ポリマーが含有されており、
前記融着された温度変化物質は尿への溶解により吸熱反応を起し、尿を冷却するものであり、且つ温度20℃の100mlの水への溶解度が30g以上であり、
前記温度変化物質の融着部分における前記温度変化物質の目付けは300〜800g/m2であり、
前記温度変化物質の融着部分により前記吸収体に生じうる熱量変化の総量は50cal以上であり、
前記温度変化物質の融着部分の単位面積当たりの熱量変化は1cal/cm2以上であり、
前記高吸収性ポリマーは吸収速度が50秒以下であり、
前記上層における高吸収性ポリマーの目付けは50〜400g/m2である、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項1】
股間部と、股間部の前側に延出する腹側部分と、股間部の後側に延出する背側部分とを有し、
前記腹側部分から背側部分までにわたり、液透過性表面シートと裏面側シートとの間に繊維集合体からなる吸収体が介在されてなる吸収部分が設けられ、
尿との接触により尿を冷却又は加熱する温度変化物質が含有された、使い捨て吸収性物品において、
前記吸収体の幅方向中央部のうち、少なくとも前記股間部から前記腹側部分にわたる部分に前記温度変化物質が融着され、且つ前記吸収体における前記温度変化物質の融着部分の周囲には前記温度変化物質が融着されていない、
ことを特徴とする使い捨て吸収性物品。
【請求項2】
展開状態における腹側部分のウエスト端縁から背側部分のウエスト端縁までの前後方向長さとして定まる製品長をLとしたとき、
少なくとも前記腹側部分のウエスト側端縁から股間側に0.15〜0.80Lの範囲にわたり、前記吸収体が設けられており、
少なくとも前記腹側部分のウエスト側端縁から股間側に0.25〜0.45Lの範囲にわたり、前記温度変化物質の融着部分が設けられている、
請求項1記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項3】
前記温度変化物質の融着部分は、鼠蹊部に沿い且つ鼠蹊部よりも幅が広くなるように、ウエスト側に向かうにつれて幅が拡大する形状を有している、請求項2記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体の股間部に脚周りに沿う括れ部が設けられており、展開状態における前記吸収体の前後方向長さをY、幅をXとしたとき、前記括れ部の前後方向長さが0.2〜0.3Yであり、前記括れ部における最も幅が狭い部分の幅が0.6〜0.75Xであり、
前記腹側部分における前記温度変化物質の融着部分のウエスト側端縁の幅は0.4〜0.7Xであり、
前記温度変化物質の融着部分のうち前記幅が拡大する部分の股間側端が、前記括れ部の最も幅の狭い部分と同位置か、又はこれよりも腹側に位置しており、
前記温度変化物質の融着部分の後端は、前記括れ部の後端と同位置、又はこれよりも背側に位置するとともに、その幅が、前記腹側部分における前記温度変化物質の融着部分のウエスト側端縁の幅の0.7倍以下で、且つ0.5X以下である、
請求項3記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体は、高吸収性ポリマーを少なくとも表面側層に含んでおり、前記温度変化物質は前記吸収体の表面または表面側層に融着されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体は上層とその裏面側に接する下層とを有し、前記温度変化物質は前記上層に融着されるとともに、少なくとも前記上層は高吸収性ポリマーを含み、
前記上層の繊維密度が前記下層の繊維密度の4.5倍以上である、
請求項5記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体は上層とその裏面側に接する下層とを有し、
前記上層の全体が、前記温度変化物質の融着部分全体をなすとともに、前記上層における厚み方向と直交する方向の全体にわたり高吸収性ポリマーが含有されており、
前記融着された温度変化物質は尿への溶解により吸熱反応を起し、尿を冷却するものであり、且つ温度20℃の100mlの水への溶解度が30g以上であり、
前記温度変化物質の融着部分における前記温度変化物質の目付けは300〜800g/m2であり、
前記温度変化物質の融着部分により前記吸収体に生じうる熱量変化の総量は50cal以上であり、
前記温度変化物質の融着部分の単位面積当たりの熱量変化は1cal/cm2以上であり、
前記高吸収性ポリマーは吸収速度が50秒以下であり、
前記上層における高吸収性ポリマーの目付けは50〜400g/m2である、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の使い捨て吸収性物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−207564(P2009−207564A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51292(P2008−51292)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
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