説明

使い捨て着用物品

【課題】比較的に薄く着用感に優れ、かつ、速やかに体液を吸収することのできる吸液構造体を備えた使い捨て着用物品。
【解決手段】吸液構造体15は、透液性の身体側ライナ36と吸液層とを有し、吸液層は、透液性の第1シートと、透液性又は不透液性の第2シートと、少なくとも第1シートの内面に固定された吸水性ポリマー粒子とを含む。身体側ライナ36と第1シートとの間には少なくとも吸液層の中央部において縦方向へ延びる複数条の弾性体37が伸長状態で配設されている。身体側ライナ36と第1シートとは、縦方向へ延び、かつ、横方向において所与寸法離間する複数の接合部を介して接合されており、弾性体37が収縮することによって身体側ライナ36及び第1シートに横方向へ延びる複数の凹凸条26が形成され、第1シートと第2シートとの間に体液保持部が画定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨て着用物品に関し、より詳しくは、比較的に薄く、かつ、速やかに体液を吸収することのできる吸液構造体を有する使い捨ておむつ、使い捨てのトイレット・トレーニングパンツ、使い捨て失禁パンツ、使い捨ての生理用パンツ、使い捨て吸収パッド等の使い捨て着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、比較的に薄い吸液構造体を備える使い捨て着用物品は公知である。例えば、特許文献1には、パルプ繊維を含まず、2枚の繊維不織布シート間に吸水性ポリマー粒子を含む吸液構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−238161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の着用物品によれば、体液を吸収、保持する吸液域が吸水性ポリマー粒子のみから形成されているので、所要の吸水力を有するとともに、比較的に薄く着用感に優れたものといえる。また、吸水性ポリマー粒子は、繊維不織布シートの対向面に網目状に塗布された接着剤を介して固定されているので、該シート間において確実に保持され、かつ、接着剤が対向面全体に塗布されている場合に比して、吸液構造体の吸水性能が低下するおそれはない。
【0005】
しかし、このように、吸液域が吸水性ポリマー粒子のみから形成されている場合には、パルプ繊維を含む場合に比して体液の拡散性が低く、体液を吸収して吸水性ポリマー粒子がすでに膨潤した領域では排泄後しばらくの間吸液構造体の肌対向面に体液が残り、着用者に不快感を与えたり、肌のかぶれの原因ともなりうる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、従来の技術の改良であって、比較的に薄く着用感に優れ、かつ、速やかに体液を吸収することのできる吸液構造体を備えた使い捨て着用物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、縦方向及び横方向を有し、前記縦方向へ延びる吸液構造体を含む使い捨て着用物品に関わる。
【0008】
本発明の使い捨て着用物品は、前記吸液構造体は、透液性の身体側ライナと吸液層とを有し、前記吸液層は、透液性の第1シートと、透液性又は不透液性の第2シートと、前記第1及び第2シート間に介在され、かつ、両シートのうちの少なくとも前記第1シートの内面に固定された吸水性ポリマー粒子とを含み、前記身体側ライナと前記第1シートとの間には少なくとも前記吸液層の中央部において前記縦方向へ延びる複数条の弾性体が伸長状態で配設されており、前記身体側ライナと前記第1シートとは、前記縦方向へ延び、かつ、前記横方向において互いに所与寸法離間する複数の接合部を介して接合されており、前記弾性体が収縮することによって前記身体側ライナ及び前記第1シートに前記横方向へ延びる複数の凹凸条が形成され、前記第1シートと前記第2シートとの間に体液保持部が画定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る使い捨て着用物品によれば、弾性体の収縮作用によって身体側ライナと第1シートとに複数の凹凸条が形成され、かつ、第1シートの内面には吸水性ポリマー粒子が固定されているので、身体側ライナ上に排泄された体液を凹凸条間に形成された凹部に溜めて速やかに吸液層に移行させ、第1シートと第2シートとの間に形成された体液保持部に一時的に保持することができる。体液保持部に移行した体液は、吸収層内において拡がり、吸水性ポリマー粒子に吸収、保持される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態における使い捨て着用物品の一例として示す、使い捨ておむつの斜視図。
【図2】図1と同様の使い捨ておむつの一部破断斜視図。
【図3】おむつのサイドシーム部を剥離して前後方向に伸展した状態をその内面から見た一部破断展開平面図。
【図4】おむつの分解斜視図。
【図5】ベースシートの平面図。
【図6】吸液構造体の平面図。
【図7】身体側ライナを取り除いた、接合部のホットメルト接着剤の塗布パターンを示す吸液層の平面図。
【図8】吸液層の一部破断平面図。
【図9】図2のIX−IX線に沿う模式的断面図。
【図10】体液を吸収した後の図9と同様の模式的断面図。
【図11】他の実施例における吸液構造体の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1〜図4に示すとおり、本発明の使い捨て着用物品の一例として示す使い捨ておむつ10は、縦方向Yとそれに直交する横方向Xとを有する。おむつ10は、前ウエスト域11と、後ウエスト域12と、前後ウエスト域11,12間を縦方向Yへ延びるクロッチ域13とを有するシャーシ14と、少なくともクロッチ域13の肌対向面に取り付けられた吸液構造体15とを含む。図2に示すとおり、吸液構造体15の肌対向面には、横方向Xへ延びる複数の凹凸条26が形成されている。
【0012】
シャーシ14は、肌対向面及びそれに対向する非肌対向面と、ウエスト回り方向に延びる環状の弾性ウエストパネル16と、弾性ウエストパネル16の非肌対向面に取り付けられたクロッチパネル17とを有する。弾性ウエストパネル16は、前ウエスト域11を形成する前ウエストパネル18と、後ウエスト域12を形成する後ウエストパネル19とから構成される。
【0013】
図3に示すとおり、前ウエストパネル18は、クロッチパネル17と交差し、横方向Xへ延びる内端縁18aと、縦方向Yにおいて内端縁18aと離間対向して横方向Xへ延びる外端縁18bと、内外端縁18a,18b間において縦方向Xへ延びる両側縁18c,18dとによって横長矩形状に形成される。
【0014】
後ウエストパネル19は、前ウエストパネル16とほぼ同形同大であって、クロッチパネル17と交差し、横方向Xへ延びる内端縁19aと、縦方向Yにおいて内端縁19aと離間対向して横方向Xへ延びる外端縁19bと、内外端縁19a,19b間において縦方向Yへ延びる両側縁19c,19dとによって横長矩形状に形成される。
【0015】
前ウエストパネル18の両側縁18c,18dと後ウエストパネル19の両側縁19c,19dとは、互いに重ね合わされて、縦方向Yに断続的に延びるサイドシーム部20によって連結され、ウエスト開口21及び一対のレッグ開口22とが画定されている(図1参照)。サイドシーム部20は、公知の接合手段、例えば、熱エンボス加工、ソニック加工等の各種の熱溶着手段によって形成される。
【0016】
前ウエストパネル18は、肌対向面側に位置する第1内面シート23と、非肌対向面側に位置する第1外面シート24を有する。第1内外面シート23,24は、質量約15〜30g/mの不透液性のSMS(スパンボンド・メルトブローン・スアパンボンド)繊維不織布若しくはスパンボンド繊維不織布、又は、プラスチックシートやそれらのラミネートシートとから形成される。両シート23,24は、少なくともいずれか一方の内面に間欠的に塗布されたホットメルト接着剤又は前記熱溶着手段によって接合される。
【0017】
両シート23,24間には、横方向Xへ延びる複数条のストランド状又はストリング状の前ウエスト弾性体25が配設される。前ウエストパネル18は、前ウエス弾性体25が配設されることによって少なくとも横方向Xへ伸長可能である。なお、両シート23,24は、前ウエスト弾性体25のほぼ全周縁に塗布したホットメルト接着剤を介してのみ互いに接合されていてもよい。前ウエスト弾性体25は、前ウエストパネル18の外端縁18bに沿って横方向Xへ延びる前上方ウエスト弾性体25Aと、内端縁18aに沿って横方向Xへ延びる前下方ウエスト弾性体25Bとから構成される。
【0018】
後ウエストパネル19は、肌対向面側に位置する第2内面シート28と、非肌対向面側に位置する第2外面シート29を有する。第2内外面シート28,29は、質量約15〜30g/mの不透液性のSMS(スパンボンド・メルトブローン・スアパンボンド)繊維不織布若しくはスパンボンド繊維不織布、又は、プラスチックシート若しくはそれらのラミネートシートとから形成される。両シート28,29は、少なくともいずれか一方の内面に塗布されたホットメルト接着剤又は前記熱溶着手段よって接合される。
【0019】
両シート28,29間には、横方向Xへ延びる複数条のストランド状又はストリング状の弾性体からなる後ウエスト弾性体30が配設される。後ウエストパネル17は、後ウエス弾性体30が配設されることによって少なくとも横方向Xに伸長可能である。なお、両シート28,29は、後ウエスト弾性体30を構成する各弾性体のほぼ全周縁に塗布したホットメルト接着剤を介してのみ互いに接合されてもよい。後ウエスト弾性体30は、後ウエストパネル19の外端縁19bに沿って横方向Xへ延びる後上方ウエスト弾性体30Aと、内端縁19aに沿って横方向Xへ延びる後下方ウエスト弾性体30Bとから構成される。
【0020】
クロッチパネル17は、縦長の略矩形状であって、前ウエストパネル18の非肌対向面(外面)に取り付けられた前端部17Aと、後ウエストパネル19の非肌対向面に取り付けられた後端部17Bと、前後端部17A,17B間において縦方向Yへ延びる中間部17Cとを有する。また、クロッチパネル17は、ベースシート34と、ベースシート34の肌対向面(内面)に配置された吸液構造体15とを有する。吸液構造体15は、吸液層35と、透液性のシートから形成された、吸液層35の少なくとも肌対向面側を被覆する身体側ライナ36とから構成されている。身体側ライナ36と吸液層35との間には、後記のように縦方向Yへ延びるストリング状又はストランド状の複数条の弾性体37が配設されており、弾性体37の収縮作用によって、吸液構造体15の肌対向面側には、横方向Xへ延びる複数の凹凸条26が形成されている(図2参照)。凹凸条26は、縦方向Yにおいて交互に位置する凸部27aと凹部27bとによって形成される。
【0021】
なお、後記の本発明の効果を奏する限りにおいて、本発明のおむつ10は、前後ウエスト域11,12とクロッチ域13とが別体ではなく、それらが一体に形成されたシャーシ14から構成されるものであってもよい。その場合には、シャーシ14を構成する、肌対向面に位置する透液性のトップシートと非肌対抗面に位置する不透液性のバックシートとの間に吸液構造体15を介在してもよい。
さらに、本発明の使い捨て着用物品は、テープファスナによって前後ウエスト域の両側部どうしを連結する、いわゆる開放型の使い捨ておむつであってもよいし、前後ウエスト域に矩形状に延びる使い捨ての吸収パッドであってもよい。いずれの構成を有するものであっても、吸液構造体15を有する限りにおいて後記の本発明の効果を奏しうるといえるからである。
【0022】
図3に示すとおり、ベースシート34は、不透液性の繊維不織布シート又はプラスチックフィルムから形成された内外面クロッチシート38,39によって形成されている。また、内外面クロッチシート38,39は、両シート38,39のうちのいずれか一方のシートの内面に塗布されたホットメルト接着剤(図示せず)を介して互いに接合され、それらの両側部は、内方へ折り曲げられて、縦方向へ延びるガスケット機能を有する一対のサイド弾性部40が形成される。
【0023】
各サイド弾性部40には、縦方向Yへ延びる複数条のストランド状又はストリング状の第1及び第2レッグ弾性体41,42が配設されており、少なくとも縦方向Yにおいて弾性化されている。第1レッグ弾性体41はサイド弾性部40の内側縁に沿って縦方向Yへ直状に延びており、第2レッグ弾性体42は、クロッチ域13の中央部において内方へ凹曲し、前後ウエスト域11,12に向かって湾曲して延びている。第1及び第2レッグ弾性体41,42は、前記の内外面クロッチシート38,39のうちのいずれか一方の内面に塗布されたホットメルト接着剤(図示せず)を介して両シート38,39間に縦方向Yに伸長された状態で固定される。
【0024】
クロッチパネル17は、前端部17A及び後端部17Bの肌対向面にホットメルト接着剤を塗布して形成された前接合域45と後接合域46とにおいて前後ウエストパネル18,19の外面に取り付けられる。前後接合域45,46は、クロッチ域13に向かって開口した凹状部位を有し、該開口した凹状部位には、ホットメルト接着剤が塗布されていない非接合域50が画定されている。
【0025】
クロッチパネル17の前後端部17A,17Bには、それを被覆するカバーシート51,52が取り付けられる。具体的には、カバーシート51,52は、質量約10〜30g/mの繊維不織布やプラスチックシートなどから形成されており、クロッチパネル17の前後端部17A,17Bと交差した状態で前後ウエストパネル18,19の非肌対向面にホットメルト接着剤(図示せず)を介して固定される。このように、クロッチパネル17の前後端部17A,17Bがカバーシート51,52に被覆されることによって、おむつ10の着用時において、着用者又は着用補助者が前後ウエストパネル18,19を指で掴んで引き上げるときに指が前後端部17A,17Bに引っ掛かるおそれはない。また、カバーシート51,52が取り付けられることによって剛性が高くなるので、シート部材の一部が破れたりすることなく、該領域を指で掴んで安定的に引き上げることができる。
【0026】
図5は、ベースシート34の平面図であって、吸液構造体15の外形を仮想線で示している。
【0027】
図5に示すとおり、吸液構造体15は、前ウエスト域11側において横方向Xへ延びる前端部15aと、後ウエスト域12側において横方向Xへ延びる後端部15bと、前後端部15a,15b間において縦方向Yへ延びる両側縁部15c,15dとを有する。また、ベースシート34の中央域には、その肌対向面にホットメルト接着剤を塗布してなる、吸液構造体15を固定するための接合域54が形成されている。接合域54は、連続する角枠状であって、縦方向Yにおいて互いに対向して横方向Xへ延びる両端部55Aと、両端部55A間において縦方向Yへ延びる一対のサイド部55Bとを有する。また、接合域54に囲まれた領域には、非接合域56が画定されている。したがって、吸液構造体15の中央部は、ベースシート34に固定されていない。このように、ベースシート34に対する弾性体37の収縮作用による影響を抑えるために、弾性体37と重なる部位に非接合域56が形成され、該部位において吸液構造体15がベースシート34に固定されていないことが好ましい。なお、図示されているとおり、接合域54は吸液構造体15の外周縁から内方へ僅かに離間しているが、吸液構造体15をより確実に固定するために、その外形がほぼ吸液構造体15の外周縁と接する大きさを有していてもよい。また、接合域54はその一部が分離していてもよい。
【0028】
図6は、吸液構造体15の平面図、図7は、身体側ライナを取り除き、接合部のホットメルト接着剤の塗布パターンを示す吸液層35の平面図、図8は、吸液層35の一部破断平面図である。図6及び7において、吸液構造体15、吸液層35は縦方向Yに伸長されている。
【0029】
図6に示すとおり、弾性体37は、横方向Xにおいて所与寸法離間して配置されている。具体的には、横方向Xにおいて隣り合う弾性体37どうしの離間寸法R(ピッチ。弾性体の中心部間の距離)は約5〜40mm、好ましくは、約10〜25mmである。弾性体37は、約1.1〜2.4倍、好ましくは1.2〜1.8倍に縦方向Yへ伸長させられた状態で身体側ライナ36の内面に取り付けられている。なお、複数条の弾性体37は、吸液構造体15に凹凸条26が形成される限りにおいて、互いに交差していてもよいし、離間寸法Rやホットメルト接着剤の塗布パターン等にも依るが、横方向Xへ直状又は曲状に延びるように取り付けられていてもよい。
【0030】
身体側ライナ36は、好ましくは親水化処理された、質量約15〜35g/mの透液性を有する繊維不織布シートであって、例えば、スパンボンド繊維不織布、ポイントボンド繊維不織布及びエアスルー不織布等各種公知の繊維不織布から形成することができる。
【0031】
図7に示すとおり、身体側ライナ36は、ホットメルト接着剤を縦方向Yへスパイラル状に連続して塗布することによって形成された接合部59を介して吸液層35(後記の第1シート61)に接合されている。接合部59は、吸液層35の第1シート61のほぼ全域に形成される。また、横方向Xにおいて隣り合う接合部59どうしの間には、弾性体37が配設されている。弾性体37は、そのほぼ周縁に塗布されたホットメルト接着剤(図示せず)を介して身体側ライナ36と吸液層35とのうちの少なくとも吸液層35に固定されている。
【0032】
吸液構造体15に形成される凹凸条26は、接合部59どうしの横方向Xにおける離間部位と、各接合部59の縦方向Yへ連続する円弧状の塗布パターンの離間部位とに弾性体37の収縮力が作用して複数の皺が形成され、それらが横方向Xへ延びることによって形成されていると考えられる。したがって、凹凸条26を形成する凸部27aと凹部27bとは、断続的であって、かつ、不規則に変形している。後記の効果を生じ得る所要の大きさの凹凸条26を形成するためには、前者の離間寸法R2は約5〜20mm、後者の離間寸法R3は、3〜25mmであることが好ましい。
【0033】
図8に示すとおり、吸液層35は、水不溶性かつ自己質量の10倍以上の吸水力を有するいわゆる吸水性ポリマー粒子60から主として形成された吸収性コアと、肌対向面側に位置する質量約8.0〜15.0g/m、好ましくは、質量約10.0g/mの透液性の繊維不織布から形成された第1シート(上面シート)61と、非肌対向面側に位置する質量約8.0〜15.0g/m、好ましくは、11.0g/mの透液性または難透水性又は不透液性のSMS繊維不織布から形成された第2シート(下面シート)62とを含む。
【0034】
吸液層35は、さらに、吸収性コアが配置された、縦方向Yへ所与寸法離間する略矩形状に画定された複数の吸液域63と、吸収性コアが実質的に配置されていない、吸液域63を取り囲むように形成された非吸液域64とを有する。なお、本実施形態において、吸液域63は、8つの区域に区分されているが、吸液層35の要する吸収性能に応じてその面積、区域数を適宜変更することができ、例えば、8つ以上の区域に区分されていてもよいし、吸液層35の全体に延びる単一の区域のみから形成されていてもよい。
【0035】
吸液域63では、第1シート61の内面には、ホットメルト接着剤66を介して質量約30〜300g/m、好ましくは、質量約40〜280g/mの吸水性ポリマー粒子60がほぼ一様に固定されている。かかる吸水性ポリマー粒子60の単位面積当たりの質量が約30g/m以下の場合には、吸収層35の吸収性能が低く、十分に体液を吸収することができない。一方、その単位面積当たりの質量が300g/m以上の場合には、吸液層35内において、第1シート61の内面に固定されていない吸収性ポリマー粒子60が後記の体液保持部65に位置して吸液層35の吸収速度が低下するおそれがあるとともに、吸水性ポリマー粒子60の分布に偏りが生じて吸液層35が変形するおそれがある。ただし、前記所定の範囲内の単位面積当たりの質量であっても、第1シート61に固定されておらず、かつ、第2シート62に固定されていない吸水性ポリマー粒子60が吸液層35内に僅かに存在し、第2シート62上に位置する。
【0036】
吸水性ポリマー粒子60には、吸液層35全体の吸収速度を調整するために、例えば、吸収速度の異なる2種類のものを併用することができる。また、後記の本発明の効果を奏する限りにおいて、吸収性コアには、吸水性ポリマー粒子60のみならずフラッフパルプやオプションとして熱可塑性ステープル繊維などの公知の材料を比較的に低い混合率でその一部に含むものであってもよい。具体的には、フラッフパルプ等の吸水性繊維を混合する場合は、吸収性コア全体に対して約0〜30重量%の割合で混合されていることが好ましい。ホットメルト接着剤66には、各種公知のものを使用することができるが、体液を吸収する前に、吸水性ポリマー粒子60が第1シート61から剥離しないようにするために、疎水性を有する接着剤を使用することが好ましい。
【0037】
吸液域63では、第1シート61と第2シート62とが部分的に固定されているか又はそれらが互いに固定されていないことが好ましい。また、吸液域63において第1及び第2シート61,62がホットメルト接着剤66で互いに部分的に固定されている場合には、吸液層35内に移行した体液が吸水生ポリマー粒子60に吸収されてそれが膨潤することによって、両シート61,62どうしの固定が解かれるようにしてもよい。一方、非吸液域64では、すなわち、吸液域63間の離間部位及び吸液層35の外周縁沿い全域においては、ホットメルト接着剤66を介して第1及び第2シート61,62が互いに接合されている。なお、吸液域63においては、吸水性ポリマー粒子60を第1シート61の内面に固定するためにホットメルト接着剤66は比較的に疎に塗布されており、非吸液域64においては、比較的に密に塗布されている。すなわち、吸液域63においては体液の透過を阻害しない程度にホットメルト接着剤66が塗布されており、一方、非吸液域64においては、吸液域63が体液を吸収して膨らんだとしても、その固定が容易に解かれない程度にホットメルト接着剤66が密に塗布されている。
【0038】
このように、吸液層35の吸収性コアは、70質量%以上の吸水性ポリマー粒子を含むことから、それが吸水性ポリマー粒子60とフラッフパルプとがほぼ同じ割合で混合された混合物からなる場合に比して吸液層35全体は薄く、吸液構造体15はクロッチパネル17の動きに対する順応性に優れている。また、第1及び第2シート61,62が非吸液域64において安定的に固定されていることによって所要の剥離強度を有するとともに、第1及び第2シート61,62の内面全体が固定されている場合に比して高い可撓性を有するものといえる。さらに、吸液域63において吸水性ポリマー粒子60が第1シート61に一様に固定されていることから、着用者の動作及び姿勢のいかんにかかわらず、その分布に偏りを生じることはない。なお、非吸液域64は、吸液域63から移動可能な吸水性ポリマー粒子60がこぼれ出るのを防止するために吸液域63の周縁を封止するシール部としての機能を果たしうるが、製造工程において、吸水性ポリマー粒子60の一部が、吸液域63における吸水性ポリマー粒子60の単位面積当たりの所要質量よりも少ない範囲において、非吸液域64に配置されることがある。
【0039】
図9は、図2のIX−IX線に沿う模式的断面図、図10は、体液を吸収した後の図9と同様の模式的断面図である。
【0040】
図9に示すとおり、身体側ライナ36及びそれに接着部59を介して固定された第1シート61とは、吸液域63において弾性体37の収縮作用によって起伏しており、凹凸条26の凸部27aと凹部27bとが縦方向Yにおいて交互に形成されている。非吸液域64によって区分された各吸液域63において、吸水性ポリマー粒子60は第1シート61の内面に固定されており、かつ、凸部27aにおいて第1シート61と身体側ライナ36とが上方へ凸となることによって、第1シート61と第2シート62との離間スペースには体液保持部65が形成される。一般に、吸水性ポリマー粒子60は自重の数倍以上の吸水量を有するが、吸水性繊維に比べて体液の拡散性が低く、吸収層35が吸水性ポリマー粒子60のみから形成されており、かつ、吸液域63全体にそれが充填されている場合には、体液が排泄された部位の吸水性ポリマー粒子60のみが体液を吸収しそれ以外の部位には拡散し難いので、排泄後しばらくの間体液が身体側ライナ36の表面に残り、着用者に不快感を与えたり肌のかぶれ等を引き起こす原因ともなりうる。しかし、本発明にかかる吸液構造体15によれば、以下の構成、作用を有することによって、かかる問題を解消することができる。
【0041】
まず、吸液域63において排泄された体液は凹部27bに溜まり、その自重によって下方へ、すなわち、吸液層35の内部へ速やかに移行するので、身体側ライナ36が起伏した形状を有しない場合に比して、体液の吸収速度を上げることができる。また、吸液層35には所定の厚さを有する吸液域63間に非吸液域64が形成されているので、凹部27bのみならず非吸液域64にも排泄された体液が溜まるところ、凹部27b及び非吸液域64の両側に位置する吸液域63の一部に吸水性ポリマー粒子60が固定されていることによって、それらに溜まった体液を下方へ移行させようとする作用が生じ、より速やかに体液を吸収することができる。
【0042】
また、図2に示すとおり、おむつ10の着用中において、吸液構造体15は湾曲形状を有しており、前後ウエスト域11,12側において凹部27bに溜まった体液は、下方へ、すなわち、クロッチ域13の中央部に向かって流れようとするが、縦方向Yにおいて隣接する凸部27aによって堰きとめられるので、体液がクロッチ域13の中央部に過剰に溜まり、レッグ開口縁から溜まった体液が横漏れするおそれはない。なお、吸液域63においては、第1シート61に凹凸条26が形成されることによって第2シート62には、それを外方へ(図9の下方)湾曲させようとする力が作用するが、前記のとおり、着用状態において、吸液構造体15全体は縦方向Yに湾曲した形状を有するので、ベースシート34とほぼ並行した形状を有する。
【0043】
次に、身体側ライナ36と第1シート61とを透過した体液は、第1シート61と第2シート62との離間スペースに形成された体液保持部65に移行する。体液保持部65に移行した体液は、吸液域63内において拡がり、吸液域63内の吸水性ポリマー粒子60に吸収、保持される。
【0044】
このように、弾性体37の収縮作用を利用して身体ライナ36と上面シート61とを起伏させて凸部27aと凹部27bとを形成し、凹部27bや非吸液域64に溜まった体液を体液保持部65に速やかに移行させて一時的に保持し、かつ、吸液域63内に拡げることにより、局所的ではなく吸液域63内の吸水性ポリマー粒子60全体に体液を吸収保持させることができる。それにより、吸収性コア全体の吸収性能が向上するとともに、身体ライナ36の表面に比較的に長い時間体液が残ることはなく、着用者に長時間不快感を与えたり、かぶれ等の肌トラブルを引き起こすこともない。なお、身体側ライナ36として予め起伏形状を有するシートを使用することによっても同様の効果を得ることができるといえるが、弾性体37に収縮作用によって起伏させることによって、着用者の体圧によっても形状が崩れることのないより安定的な起伏形状を身体側ライナ36に付与することができる。また、かかる効果を奏する限りにおいて、吸液層35は複数の吸液域63に区分されていなくてもよい。ただし、複数の吸液域63に区分されている場合には、吸液層35にその全体に延びる単一の吸液域63のみが形成されている場合に比して体液保持部65内における体液の拡がる速度が速く、より速やかに体液を吸収することができるといえる。
【0045】
既述のとおり、吸液構造体15は角枠状の接合域54によってベースシート34に固定され、その中央部は中央非接合域56と対向し、ベースシート34に固定されていない。したがって、吸液層35が比較的に厚さ寸法の小さなものであって、かつ、それ全体が弾性体37の収縮作用によって起伏する形状を有する場合であっても、ベースシート34がその影響を受けて皺が生じてその外観を損ねるおそれはない。
【0046】
本発明の効果を奏するためには、凸部27aの高さ寸法(凸部27aの最端部位70から凹部27bの底部71までの離間寸法)Hは、2.5〜15mmであることが好ましい。2.5mm以下の場合には、比較的に凸部27aが小さくなり、十分な大きさの体液保持部65を形成することができず、一方、15mm以上の場合には、比較的に凸部27aが高くなり、それが着用者の肌に接したときに着用者に違和感を与えるおそれがある。
【0047】
<離間寸法Hの測定方法>
断面矩形(断面寸法が1mm×1mm)の金属棒状の測定子を使用して、吸液構造体15の複数の弾性体37に挟まれた領域又はそれらに囲まれた領域内の凹凸条26が形成された部分において、凸部27aの最端部位70と凹部27bの底部71に測定子の先端が触れたときの基準線の高さ寸法を比較してその差(mm)を求め、平均値(n=10)を離間寸法Hとする。通常、シート部材の厚さ寸法を図る場合には、測定子を所定の圧力で押し当てて測定するところ、凸部27aに所定の圧力で測定子を押し当てるとそれが倒れて正確な測定できなくなるので、凸部27aの最端部位70と凹部27bの底部71とに圧力をかけることなく接したときの基準線の高さ寸法どうしを比較して求める。
【0048】
図10に示すとおり、吸水性ポリマー粒子60が体液を吸収した後は、それが膨潤することによって、体液保持部65に吸水性ポリマー粒子60が充填された状態となる。具体的には、各吸液域63において、体液の透過によって吸水性ポリマー粒子60と第1シート61との接合面であるホットメルト接着剤66が湿潤して接着力が低下し、一部の吸水性ポリマー粒子60が第1シート61の内面から剥がれて、第2シート62上に位置している。このように、吸水性ポリマー粒子60が第2シート62に位置する場合であっても、吸水性ポリマー粒子60は膨潤して凹部27bに近接しているので、再び吸液層35に流れ込んだ体液を速やかに吸収することができる。また、吸水性ポリマー粒子60が飽和状態になるまで体液を吸収した場合にはゲル化してブロックを形成するので、体液保持部65に溜まった吸水性ポリマー粒子60に吸収されなかった体液が着用者の身体側へ逆戻り(リウエット)し難くなる。なお、このような効果を奏するために、吸液域63に含まれる吸水性ポリマー粒子60の粒径等を調整することが好ましい。
【0049】
図11は、他の実施例における吸液構造体15の平面図である。説明の便宜上、吸液層35の吸液域63と弾性体37とを仮想線で示している。
【0050】
本実施例においては、吸液域63が縦方向Yに4つ並んで列をなし、それが横方向Xに2列配置されており、弾性体37は吸液構造体15の中央部にのみ配設されている。このように、弾性体37は、吸液構造体15全体に配設されず、最も体液が排泄される中央部にのみ配設されていることによって、中央部にのみ凹凸条26を形成し、凹部27bや非吸液域64に溜まった体液を速やかに吸液層35に移行させることもできる。
【0051】
おむつ10を構成する各構成部材には、本明細書に記載されている材料のほかに、この種の物品において通常用いられている各種の公知の材料を制限なく用いることができる、また、本発明の明細書及び特許請求の範囲において、「第1」および「第2」の用語は、同様の要素、位置などを単に区別するために用いられている。
【0052】
以上の記載した本発明に関する開示は、少なくとも下記事項に要約することができる。
【0053】
縦方向及び横方向を有し、縦方向へ延びる吸液構造体を含む使い捨て着用物品であって、吸液構造体は、透液性の身体側ライナと吸液層とを有し、吸液層は、透液性の第1シートと、透液性又は不透液性の第2シートと、第1及び第2シート間に介在され、かつ、両シートのうちの少なくとも前記第1シートの内面に固定された吸水性ポリマー粒子とを含む。身体側ライナと第1シートとの間には少なくとも吸液層の中央部において縦方向へ延びる複数条の弾性体が伸長状態で配設されており、身体側ライナと第1シートとは、縦方向へ延び、かつ、横方向において互いに所与寸法離間する複数の接合部を介して接合されており、弾性体が収縮することによって身体側ライナ及び第1シートに横方向へ延びる複数の凹凸条が形成され、第1シートと第2シートとの間に体液保持部が画定される。
【0054】
上記段落0053に開示した本発明は、少なくとも下記の実施の形態を含むことができる。
(1)吸液層は、第1シートと第2シートとが互いに接合された非吸液域と、非吸液域に囲まれた、吸水性ポリマー粒子が被包された複数の吸液域とをさらに含む。
(2)前ウエスト域と、後ウエスト域と、前後ウエスト域間に位置するクロッチ域とを形成するシャーシをさらに含み、シャーシの前記クロッチ域には、前記吸液構造体を固定するための接合域が形成されており、接合域の中央部のうちの少なくとも前記弾性体と重なる部位には、非接合域が画定されている。
(3)弾性体は縦方向に約1.2〜2.4倍に伸長された状態で配設されており、隣り合う弾性体どうしの横方向における離間寸法は、約5〜40mmである。
(4)凹凸条は縦方向において交互に位置する複数の凸部と複数の凹部とを有し、凸部の最端部位と凹部の底部との離間寸法が約2.5〜15mmである。
(5)第1シートの内面には、質量約30〜300g/mの吸水性ポリマー粒子が固定されている。
(6)吸水性ポリマー粒子は、第1シートの内面に疎水性のホットメルト接着剤を介して固定されている。
(7)吸液域は、吸水性ポリマー粒子と吸水性繊維との混合物から形成された吸収性コアを含み、吸水性繊維の混合率が30%以下である。
【符号の説明】
【0055】
10 使い捨て着用物品(使い捨ておむつ)
11 前ウエスト域
12 後ウエスト域
13 クロッチ域
14 シャーシ
15 吸液構造体
26 凹凸条
27a 凸部
27b 凹部
35 吸液層
36 身体側ライナ
37 弾性体
54 接合域
56 非接合域
59 接合部
60 吸水性ポリマー粒子
61 第1シート(上面シート)
62 第2シート(下面シート)
63 吸液域
64 非吸液域
65 体液保持部
66 ホットメルト接着剤
70 凸部の最端部位
71 凹部の底部
H 凸部の最端部位と凹部の底部との離間寸法
X 横方向
Y 縦方向
R 隣り合う弾性体どうしの横方向における離間寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向及び横方向を有し、前記縦方向へ延びる吸液構造体を含む使い捨て着用物品であって、
前記吸液構造体は、透液性の身体側ライナと吸液層とを有し、
前記吸液層は、透液性の第1シートと、透液性又は不透液性の第2シートと、前記第1及び第2シート間に介在され、かつ、両シートのうちの少なくとも前記第1シートの内面に固定された吸水性ポリマー粒子とを含み、前記身体側ライナと前記第1シートとの間には少なくとも前記吸液層の中央部において前記縦方向へ延びる複数条の弾性体が伸長状態で配設されており、
前記身体側ライナと前記第1シートとは、前記縦方向へ延び、かつ、前記横方向において互いに所与寸法離間する複数の接合部を介して接合されており、
前記弾性体が収縮することによって前記身体側ライナ及び前記第1シートに前記横方向へ延びる複数の凹凸条が形成され、前記第1シートと前記第2シートとの間に体液保持部が画定されることを特徴とする前記着用物品。
【請求項2】
前記吸液層は、前記第1シートと前記第2シートとが互いに接合された非吸液域と、前記非吸液域に囲まれた、前記吸水性ポリマー粒子が被包された複数の吸液域とをさらに含む請求項1に記載の着用物品。
【請求項3】
前ウエスト域と、後ウエスト域と、前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域とを形成するシャーシをさらに含み、前記シャーシの前記クロッチ域には、前記吸液構造体を固定するための接合域が形成されており、前記接合域の中央部のうちの少なくとも前記弾性体と重なる部位には、非接合域が画定されている請求項1又は2に記載の着用物品。
【請求項4】
前記弾性体は前記縦方向に約1.2〜2.4倍に伸長された状態で配設されており、隣り合う前記弾性体どうしの前記横方向における離間寸法は、約5〜40mmである請求項1〜3のいずれかに記載の着用物品。
【請求項5】
前記凹凸条は前記縦方向において交互に位置する複数の凸部と複数の凹部とを有し、前記凸部の最端部位と前記凹部の底部との離間寸法が約2.5〜15mmである請求項1〜4のいずれかに記載の着用物品。
【請求項6】
前記第1シートの内面には、質量約30〜300g/mの前記吸水性ポリマー粒子が固定されている請求項1〜5のいずれかに記載の着用物品。
【請求項7】
前記吸水性ポリマー粒子は、前記第1シートの内面に疎水性のホットメルト接着剤を介して固定されている請求項1〜6のいずれかに記載の着用物品。
【請求項8】
前記吸液域は、前記吸水性ポリマー粒子と吸水性繊維との混合物から形成された吸収性コアを含み、前記吸水性繊維の混合率が30%以下である請求項1〜7のいずれかに記載の着用物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−78369(P2013−78369A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218513(P2011−218513)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】