説明

使用済みキノコ栽培袋のリサイクル支援システム

【課題】キノコの人工栽培に使用される栽培袋の製造・販売者が主体となり、使用済み袋のリサイクルを支援するリサイクル支援システムを提供すること。
【解決手段】栽培袋4を製造販売する袋製造・販売者Aと、栽培袋4でキノコを生産するキノコ生産者Bと、キノコ生産者Bへオガコを供給するオガコ業者Cと、廃棄物をリサイクルするリサイクル工場DとをネットワークNWで結び、袋製造・販売者Aが使用済み袋のリサイクルを支援するリサイクル支援システム1であり、袋製造・販売者Aにリサイクル支援制御装置2、キノコ生産者Bに生産者端末7、オガコ業者Cにオガコ端末8及びリサイクル工場Dにリサイクル端末9とが設置され、リサイクル支援制御装置2は、キノコ生産者Bからの使用済袋量をオガコ業者Cから入手して使用済袋量を記録する記録手段と、記録手段からの使用済袋量が基準値を超えたときにリサイクル工場Dへ通知する通知手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、使用済みキノコ栽培袋のリサイクル支援システムに係り、さらに詳しくはキノコの人工栽培後に出る使用済み栽培袋を資源としてリサイクルするのを支援するリサイクル支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、なめこ、シイタケ、マイタケ、シメジなどのキノコは、その大半が人工栽培によって栽培されている。人工栽培であっても、例えば、シイタケの人工栽培は、これまでが原木に種菌を植え込んで栽培する原木栽培が主流であったが、この原木栽培はその時々の気象条件、病害虫及び有害菌などの影響を受け易いために、安定した収穫が確保し難いなどの理由から、最近は、屋内でシイタケ栽培に適合した環境を調えて、この環境下で栽培できる菌床栽培へと移行して来ている。この菌床栽培は、オガコなどの基材に米ぬかなどの栄養体を加えた培地を栽培袋に詰める工程、この袋詰めした培地を殺菌釜に入れて蒸気殺菌する工程、培地に雑菌が入らないように冷却した後に種菌を接種する工程、温度・湿度などを調節しながら数週間掛けて培養する工程、その後、さらに温度・湿度などを調節して菌床を培養しながらキノコを発生させる工程及び育成したキノコを収穫する工程などの一連の工程を経る栽培となっている。この菌床栽培は、原木栽培に比べて、室内において温度、湿度などの条件を任意にコントロールすることができ、しかも病害虫或いは有害菌の影響を受け難くなるので、安定した収穫及び品質の高いキノコを栽培できる利点があるので、多くのキノコ生産者に採用されている。
【0003】
この菌床栽培には、概ね、所定大きさ及び形状のプラスチック製の栽培袋が使用されている。この栽培袋は、1回限りの使い捨てとなっており、1回のキノコ栽培が終了すると、この栽培袋は、培地とともにゴミとして廃棄処分される。培地はその殆どがオガコとなっているので、栽培袋から分離したオガコは、堆肥などに使用されている。また、栽培袋は、多少のオガコが付着したままのプラスチック廃棄物として処理されている。このプラスチック廃棄物の管理・処理は、キノコ生産者に任されて、その自主管理・処分となっている。
【0004】
一方、近年、地球の温暖化及び資源枯渇によるエネルギーなどの問題が大きな社会問題として出現しており、この問題への対応が、国、企業、一般家庭及び個人レベルで急務となっている。この問題の一つの解決法として、使用後の製品(廃棄物)を回収して、資源として再利用する処理方法が提案されている。
【0005】
例えば、下記特許文献1には、培地を低コストで処理して資源として再利用できるようにした資源化装置が記載されている。また、下記特許文献2には、炭化物熱分解処理施設と固形燃料製造施設が別々に設置して、廃棄物をリサイクルする方法及び装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−172641号公報(段落〔0023〕〜〔0033〕、図1)
【特許文献2】特開2008−169289公報(段落〔0019〕、〔0020〕、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
栽培袋を使用したキノコの人工栽培は、多くの利点があることから、多くの生産者によって行われている。このようなキノコ生産者は、大規模な生産者が極めて少なく、その多くが家内工業的な規模、例えば小規模農家などとなっている。これらのキノコ生産者によって、使用済みキノコ栽培袋(以下、使用済み袋という)が管理・処分されるが、これらのキノコ生産者が廃棄処理装置で処分しようとすると、プラスチック廃棄物専用の処理装置・施設が必要となり、このような装置・施設はかなり高額なものとなるので、このような廃棄処理装置を購入できるキノコ生産者は極めて少ない。そのために、現在はその殆どのキノコ生産者は、処理費用を支払って専門の廃棄処理業者へ依頼して処分して貰わなければならない状況にある。そうすると、処理費用はキノコの価格に上乗せされることになるが、キノコの出荷価格が高いときは、この上乗せが可能であるが、出荷価格が低く抑えられると、この上乗せが出来なくなり、費用を掛けない方法での処分をせざるを得なくなる。この場合の処分は、ともすると違法処分、例えば不法焼却や不法投棄となることがあり、このような処分が実際に実施されると環境問題を誘発することになる。
【0008】
キノコの人工栽培は、栽培袋を製造・販売する袋製造・販売者、栽培袋を使用して各種のキノコを生産するキノコ生産者、及びこのキノコ生産者へ培地原料となるオガコを供給するオガコ業者などが強く結びついた連携のもとで行われている。これらの連携のもとでも、使用済み袋の処分を誰が担うかになると、キノコ生産者以外の袋製造・販売者或いはオガコ業者が処分者になるのは適当でない。しかしながら、このキノコの人工栽培は、これらの者が強く関与しているので、いずれかの者が責任をもって処分に当たらなければならず、それができないときは、専門の廃棄物処理業者へ依頼して処理して貰わざるを得ない。一方、廃棄物処理業者は、廃棄物が一般家庭や、様々な種類の飲食・小売店や、様々な大小企業などの広範囲なところから出されるので、その種類、中身が千差万別となり、それらの廃棄物を扱う際に、種類、中身によって異なる対応が必要になる。例えば、その回収にあっても、廃棄物の種類、中身によって異なった対応が必須となり、また回収できたとしても処分可能なように分別することが極めて難しく、結局、これらは多大な工数及び費用が掛かり過ぎて、ビジネス上の採算がとれなくなり、結局、行政主体の処理施設に依存せざるを得ない。しかし、このような処理施設でも、年々、廃棄物が増大しているので、処理能力が追いつかずに、年々その処理が困難な状況になってきている。この状況から、最近では、一部のリサイクル業者であるが、廃棄物を回収・分別して、所定量に纏めて貰えば、無料の引取り或いは所定価格での買い取り処理する者が出現している。そうなると、廃棄物を出す側及びリサイクルする側の双方にメリットがあるが、課題は如何にして回収し、分別し、所定量が集められるかにある。
【0009】
以上のことから、袋製造・販売者、キノコ生産者、オガコ業者及びリサイクル業者のそれぞれの役割及び抱える課題などを纏めると、以下のようになる。
(i)袋製造・販売者は、栽培袋を供給する役割を担って、キノコ生産者へ栽培袋を販売・供給している。その結果、この袋製造・販売者は、このキノコ生産者の栽培袋の総量を把握でき、しかも、この総量から使用済み袋の量も栽培時期などと合わせて推量できる。また、使用済み袋は再利用可能な重要な資源であるため、袋製造・販売者が回収することも考えられるが、多数のキノコ生産者から直接回収すると莫大な費用と労力を必要とする。
(ii)オガコ業者は、オガコを供給する役割を担って、オガコをキノコ生産者へ販売・供給している。この供給は、オガコが嵩張るので、この嵩張った量を運搬できる大きさの運搬車を使用してキノコ生産者へ届ける。しかしながら、オガコを届けた後は、この運搬車が空車となり、このまま帰ると、もったいなく、すなわち運搬車の有効利用が図れず、この利用率アップが課題となっている。
(iii)キノコ生産者は、栽培袋を用いて高品質のキノコ生産、販売して、収益を上げている。一方で、使用済み袋の処分が課題となっており、この処分のためにプラスチック廃棄物専用の処理装置を設置するのは極めて難しく、一方、処理費用を払わなければならないと利益率が低下してしまうなどの課題を抱えている。しかしながら、このキノコ生産者は、他の業者より多く利益を上げているので、この利益に対応して処理の社会的責任を負っている。
(iv)リサイクル業者は、一部ではあるがこの業者に届けられる前に廃棄物を回収・分別して、所定量に纏めて貰えば、無料の引取り或いは所定価格での買い取りする者が出現している。
【0010】
上記(i)〜(iv)の纏めから、本願の発明者らは、キノコの人工栽培が袋製造・販売者、キノコ生産者及びオガコ業者が強い連携を保って行われていることに着目し、この連携がリサイクル業者へも拡大できないかを検討した。この検討の中で、上記(i)〜(iv)から、上記(ii)では空になった運搬車の利用率アップ、上記(iv)では回収・分別及び量が確保されればリサイクルが可能であり、これらを連携させれば、上記(iii)の負担が軽減されることが分った。そこで、オガコ業者がオガコの運搬を終了し空になった運搬車に使用済み袋を積み込めば、効率よくオガコ業者が回収できる。このオガコ業者は、オガコにする木材保管スペース及びオガコ製造設備などを有し、通常、広大スペースを有しているので、回収した使用済み袋の保管も容易にできる。また、袋製造・販売者は、キノコ生産者へ栽培袋を供給し、この供給量から、キノコ生産者からでる使用済み袋の量の推定が可能であり、回収された使用済み袋量をオガコ業者から入手できれば、リサイクル工場との連携が可能になり、これら連携をシステムネットワーク化すれば、円滑に、回収し処理の支援が可能になるとともに、さらに、上記(i)によるところの、袋製造・販売者が希望する使用済み袋をキノコ生産者から回収し、リサイクル工場へ運ぶという流れを、オガコ業者を介することで、袋製造・販売者はキノコ生産者から資源としての使用済み袋の購入料金を支払うのみで、使用済み袋は上記のネットワークによりリサイクル工場まで搬送するという流れが円滑に運ぶこととなることを見出して、本発明を完成させるに至ったものである。
【0011】
そこで、本願の発明は、上記の知見に基づいてなされたもので、本発明の目的は、キノコの人工栽培に使用される栽培袋の製造・販売者が主体となって、使用済み袋の再利用を支援するリサイクル支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、以下の構成によって、達成される。すなわち、請求項1に記載の使用済みキノコ栽培袋のリサイクル支援システムは、キノコ栽培袋を製造し販売する袋製造・販売者と、前記キノコ栽培袋を用いてキノコを生産するキノコ生産者と、前記キノコ生産者へ培地の基材となるオガコを供給するオガコ業者と、廃棄物をリサイクルするリサイクル工場とをコンピューターネットワークで結んで前記袋製造・販売者が使用済み袋のリサイクルを支援する使用済みキノコ栽培袋のリサイクル支援システムであって、前記袋製造・販売者にリサイクル支援制御装置、前記キノコ生産者に生産者端末、前記オガコ業者にオガコ端末及び前記リサイクル工場にリサイクル端末とがそれぞれ設置されて、前記リサイクル支援制御装置は、前記キノコ生産者から出る使用済み袋の量を前記オガコ業者から入手して使用済み袋量を記録する記録手段と、前記記録手段からの使用済み袋量が基準値を超えたときに前記リサイクル工場へ通知する通知手段とを備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の使用済みキノコ栽培袋のリサイクル支援システムにおいて、前記袋製造・販売者は、前記キノコ栽培袋の所定単位数量毎に1個の回収容器を該回収容器に少なくともキノコ生産者名及び番号などの識別情報を付して前記キノコ生産者へ供給し、前記キノコ生産者は使用済み袋を前記回収容器へ投棄し、前記オガコ業者は前記キノコ生産者へのオガコ運搬後に前記回収容器を回収するようにしたシステムであって、前記オガコ端末には、前記回収容器に付された識別情報を読取る読取手段と、前記読取手段からデータを前記リサイクル支援制御装置へ通知する通知手段とが設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1に記載の使用済みキノコ栽培袋のリサイクル支援システムにおいて、前記回収された使用済み袋は、その重量が計測されて、管理されることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の使用済みキノコ栽培袋のリサイクル支援システムにおいて、前記キノコ生産者及び前記オガコ業者は、複数であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、袋製造・販売者は、キノコ栽培袋の製造・販売者として、現在、出現している社会問題、例えば地球の温暖化及び資源枯渇などの問題に対処できるビジネスを展開できる。すなわち、袋製造・販売者は、キノコ栽培袋を売るだけでなく、使用済みの栽培袋を資源として再利用するのを支援するので、上記の問題に対処したビジネスができる。また、リサイクル支援システムは、キノコ生産者、オガコ業者及びリサイクル工場へもそれぞれ以下のメリットあるものとなる。
【0017】
キノコ生産者は、使用済み袋を処理するための廃棄物処理装置・施設の設置が不要となり、また、これまでの廃棄処理業者への依頼していた処理及びその際の処理費用も不要になる。また、オガコ業者にあっては、オガコを運搬した後に空になった運搬車の有効利用ができる。さらに、リサイクル工場は、使用済み袋の回収、分別などが不要になり、効率よくリサイクル処理してペレットなどにして販売できる。
【0018】
さらに、袋製造・販売者が希望する使用済み袋をキノコ生産者から回収し、リサイクル工場へ運ぶという流れを、オガコ業者を介することで、袋製造・販売者はキノコ生産者から資源としての使用済み袋の購入料金を支払うのみで、使用済み袋はキノコ生産者、オガコ業者及びリサイクル工場を円滑に運ぶことができる。
【0019】
その結果、袋製造・販売者は、このリサイクル支援システムにより、キノコ生産者、オガコ業者及びリサイクル工場へメリットを与えながら、出現している社会問題に対して責任をもって対処して、次のビジネス拡大へ繋げて収益を上げることが可能になる。なお、キノコ業者から袋製造・販売者が使用済み袋を購入する料金は、あらかじめキノコ生産者への販売代金に含ませておくこともできる。
【0020】
請求項2の発明によれば、回収容器にキノコ生産者名及び番号などの識別情報が付されているので、この識別情報に基づいて、使用済み袋の管理が容易になる。
【0021】
請求項3の発明によれば、回収された使用済み袋をその重量で管理することにより、扱いが容易になる。
【0022】
請求項4の発明によれば、袋製造・販売者は、複数のキノコ生産者及びオガコ業者を対象にして、使用済み袋のリサイクルの支援が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る使用済み袋のリサイクル支援システムのネットワーク系統図である。
【図2】図2はキノコ栽培袋を示し、図2Aはキノコ栽培袋を広げる前の平面図、図2Bはキノコ栽培袋に培地を詰めた状態の斜視図である。
【図3】図3は回収容器の斜視図である。
【図4】図4は栽培袋を使用したシイタケ栽培の栽培工程図である。
【図5】図5はリサイクル支援制御装置の表示手段に表示されるデータを示し、図5Aはキノコ生産者への回収容器個数、図5Bは回収された回収容器数、図5Cはキノコ生産者毎に残存している回収容器個数のデータを示した図である。
【図6】図6は図1のリサイクル支援システムのネットワークを構成する制御ブロック図である。
【図7】図7はリサイクル支援システムのフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための使用済みキノコ栽培袋のリサイクル支援システムを例示するものであって、本発明を以下の実施形態のシステムに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも等しく適応し得るものである。
【0025】
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る使用済みキノコ栽培袋のリサイクル支援システムの概要を説明する。なお、図1は本発明の実施形態に係る使用済みキノコ栽培袋のリサイクル支援システムのネットワーク系統図、図6は図1のネットワーク系統の制御ブロック図である。
【0026】
本発明の実施形態に係る使用済みキノコ栽培袋のリサイクル支援システム(以下、リサイクル支援システムという)1は、図1に示すように、キノコの人工栽培後に出る使用済み袋を資源としてリサイクルするのを支援するシステムであって、袋製造・販売者Aに、リサイクル支援制御装置2を設置して、このリサイクル支援制御装置2がネットワークNWを介して、キノコ生産者B、オガコ業者C及びリサイクル工場Dに接続されたシステムとなっている。キノコ生産者Bは、複数のキノコ生産者B1、B2〜BNとなっている。なお、オガコ業者Cも複数C1〜C3にしてもよい。これらの数は、所定の地域、例えば、県レベルではキノコ生産者が多く、オガコ業者が少なくなっているので、この実施形態では、オガコ業者の数がキノコ生産者より少なくなっている。
【0027】
このリサイクル支援システム1は、図1、図6に示すように、袋製造・販売者Aにリサイクル支援制御装置2、キノコ生産者Bに生産者端末7、オガコ業者Cにオガコ端末8及びリサイクル工場Dにリサイクル端末9がそれぞれ設置されている。リサイクル支援制御装置2は、キノコ生産者Bから出る使用済み袋の量をオガコ業者Cから入手して使用済み袋量を記録する記録手段32と、この記録手段からの使用済み袋量が基準値を超えたときにリサイクル工場Dへ通知する通知手段34とを備えている。また、袋製造・販売者Aは、栽培袋4の所定単位数量毎に1個の回収容器5を該回収容器に少なくともキノコ生産者名及び番号などの識別情報6を付してキノコ生産者Bへ供給し、キノコ生産者Bは使用済み袋をこの回収容器5へ投棄し、オガコ業者Cはキノコ生産者Bへのオガコ運搬後にこの回収容器5が回収される。そして、オガコ端末8には、回収容器5に付された識別情報6を読取る読取手段83と、この読取手段83からリサイクル支援制御装置2へデータの送受信を行う通信手段82とが設けられている。
【0028】
このリサイクル支援システムによれば、袋製造・販売者は、栽培袋の製造・販売者として、現在、出現している社会問題、例えば地球の温暖化及び資源枯渇などの問題に対処できるビジネスを展開できる。すなわち、袋製造・販売者は、栽培袋を売るだけでなく、使用済みの栽培袋を資源として再利用するのを支援するので、上記の問題に対処したビジネスができる。また、リサイクル支援システムは、キノコ生産者、オガコ業者及びリサイクル工場へもそれぞれ以下のメリットがあるものとなる。キノコ生産者は、使用済み袋を処理するための廃棄物処理装置・施設の設置が不要となり、また、これまでの廃棄処理業者への依頼していた処理及びその際の処理費用も不要になる。また、オガコ業者にあっては、オガコを運搬した後に空になった運搬車の有効利用ができる。さらに、リサイクル工場は、使用済み袋の回収、分別などが不要になり、効率よくリサイクル処理してペレットなどにして販売できる。その結果、袋製造・販売者は、このリサイクル支援システムにより、キノコ生産者、オガコ業者及びリサイクル工場へメリットを与えながら、出現している社会問題に対して責任をもって対処して、次のビジネス拡大へ繋げて収益を上げることが可能になる。
【0029】
さらに、このリサイクル支援システムによれば、回収容器にキノコ生産者名及び番号などの識別情報が付されているので、この識別情報に基づいて、使用済み袋の管理が容易になる。以下、このリサイクル支援システムの個々の構成を詳述する。
【0030】
袋製造・販売者Aは、各種の栽培袋4を作製し販売するのを業とし、この袋製造・販売者Aのところに、リサイクル支援制御装置2が設置されている。このリサイクル支援制御装置2は、複数のキノコ生産者B1〜BN、オガコ業者C及びリサイクル工場Dからの各種のデータを入力して管理・制御してリサイクルを支援するサーバ3Aと、各種のデータを入出力する情報端末3Bとを有している。サーバ3Aは、リサイクル支援システム1の全体を一元的に集中して管理するものとなっている。
【0031】
袋製造・販売者Aは、各種のキノコの栽培に適合する栽培袋4及び使用済み袋を回収する回収容器5を製造する。栽培袋4は、種々のキノコに対応して、その形状及び大きさが異なるが、一般的な栽培袋4は、図2に示すように、所定の長さ及び幅長を有する矩形状の底部4aと、この底部の外周囲から上方へ所定の高さ立設した側壁4b〜4eとを有し、側壁の上端が開口4fとなっている。この栽培袋4は、培地が充填される充填部4Aと、充填部の上方にあって空間とされる空間部4Bとに区分されている。空間部4Bは、図2に示すように、その袋体の壁面に、雑菌の侵入を阻止し且つ通気性のある複数個の微細孔を有するフィルタFが装着されている。充填部4Aには、おがくず、米糠、ふすまを主成分とする培地、栄養剤及び水が所定の比率で混合された混合材が充填される。
【0032】
この栽培袋4は、ポリエチレンなどからなる合成樹脂製フィルムで形成されている。なお、栽培袋4は、袋体で形成したが、所定容積を有する合成樹脂製の箱、瓶でもよい。この栽培袋4は、シート状にしたもの(図2A参照)を所定単位枚数、例えば300枚を1ブロックにして、キノコ生産者Bへ供給される。この際、1ブロック毎に、使用済み袋を回収する1個の回収容器5が付けられる。
【0033】
回収容器5は、図3に示すように、所定の広さの面積を有する矩形状の底板部5aと、この底板部の外周囲から上方へ所定の高さ立設した側板部5b〜5eとを有し、側板部の上端が開口5fとなっている。この回収容器5は、1ブロックの栽培袋4が使用済みになったものが収容できる大きさになっている。開口5fには、この開口5fを塞ぐ開閉自在な蓋体を設けるのが好ましい。使用済み袋は、オガコが付着するので、使用前の略50%アップの重量となる。この回収容器5は、側板部の一部に、キノコ生産者及び番号などの識別情報6が付される。この識別情報6は、例えば、バーコードなどである。回収容器5は、箱状にしたが、袋体にしたものでもよい。
【0034】
袋製造・販売者Aは、キノコ生産者Bからの栽培袋4の注文に応じて、所定単位枚数、例えば300枚毎に1個の回収容器5を付けて、キノコ生産者Bへ発送する。
【0035】
キノコ生産者Bは、袋製造・販売者Aから送られた栽培袋4を用いて、各種のキノコを栽培する。このキノコ栽培は、キノコの種類によって異なるが、以下、図4を参照して、シイタケの人工栽培を説明する。
【0036】
シイタケの人工栽培は、図4に示すように、まず、所定量のオガコに、栄養体として米ぬかrbを混合して、所定量の水を加えて培地調整を行う(工程I)。調整された培地を栽培袋4の充填部4Aまで充填する(工程II)。この栽培袋4の上端の開口4fを仮止めして、栽培袋ごと高圧釜に入れて殺菌又は滅菌する(工程III)。そして、殺菌をした後に冷却する(工程IV)。その後、クリーンルームへ搬送して、このクリーンルーム内で栽培袋4の上端開口4fを開放して椎茸の種菌を接種する(工程V)。この接種により、椎茸の種菌は培地の中へ接種される。次いで、所定の培養室へ搬送し、この培養室で初期培養を行う(工程VI)。この初期培養では、光を照射することなく略暗黒の状態で菌糸培養に適した環境、所定室温(18〜20℃)と所定湿度(60%)に保持して種菌を生育・増殖させる。この期間は略30日程度である。その後の熟成培養では、熟成培養に適した環境、例えば温度20〜23℃及び所定の光を照射して、略60日〜70日掛けて培地に栄養蓄積を行いシイタケの発生をさせ育成する(工程VII)。その後、シイタケを収穫(工程VIII)し、収穫が終了すると、培地Sを栽培袋から分離する。培地を分離した使用済み袋4'は、多少オガコが付着しているが、このオガコが付着したままの状態で回収容器5に入れて保管する。なお、分離された培地は、別ルートで処理されて堆肥などに使用される。
【0037】
オガコ業者Cは、オガコ端末8を備えている。このオガコ端末には、回収容器5に付された識別情報6を読取る、例えばバーコードリーダー等からなる読取手段83と、この読取手段83からリサイクル支援制御装置2へデータの送受信を行う通信手段82とが設けられている。このオガコ業者Cは、キノコ生産者Bの注文に応じて、オガコを運搬車に積載して運搬する。オガコを下すと、運搬車は空となるので、使用済み袋が詰まった回収容器5を積んでオガコ業者Cの所へ持ち帰り、ここで保管する。このオガコ業者Cは、木材からオガコを製造するので、広大なスペースを保有しているので、この保管が容易になる。持ち帰った回収容器5から識別情報6が読取られて、リサイクル支援制御装置2を備えた袋製造・販売者Aへ通知される。使用済み袋は、嵩張っているので、圧縮、例えば10分の1程度に圧縮すると、運搬が容易になる。この圧縮作業は、オガコ業者Cで行うのが好ましい。
【0038】
袋製造・販売者Aにあるリサイクル支援制御装置2には、キノコ生産者B及びオガコ業者C別の回収容器5の識別情報6が記録される。この記録されたデータは、例えば、図5の表で表される。リサイクル支援制御装置2は、回収された回収容器から重量が概算される。この総重量が所定単位重量、例えば、10トンになると、リサイクル工場Dへ引取りの指令が通知される。
【0039】
リサイクル工場Dへ引取りの指令がされると、このリサイクル工場Dからオガコ業者Cへ引取り車が配車されて、引取りされる。引取られた使用済み袋は、専用のリサイクル装置によって、資源、例えば、ペレットにリサイクルされる。ペレットが袋製造・販売者Aへ供給されると、循環系ルートができる。
【0040】
次に、図5〜図7を参照して、リサイクル支援システムの作用を説明する。なお、図5はリサイクル支援制御装置の表示手段に表示されるデータを示し、図5Aはキノコ生産者への回収容器個数、図5Bは回収された回収容器数、図5Cはキノコ生産者毎に残存している回収容器個数、図6は図1のリサイクル支援システムのネットワークを構成する制御ブロック図、図7はリサイクル支援システムのフローチャート図である。
【0041】
図6に示すように、ネットワークNWには袋製造・販売者のリサイクル支援制御装置2、各キノコ生産者B1〜BNが栽培袋の注文を行うための端末である生産者端末7、各オガコ業者C1〜C3が回収した回収容器の個数を通知するための端末であるオガコ端末8、リサイクル工場Dが回収容器を回収する通知を袋製造・販売者Aから受けるための端末であるリサイクル端末9が接続されている。
【0042】
リサイクル支援制御装置2は制御手段31、通信手段33、記録手段32、通知手段34、記憶手段35、表示手段36、などを備えて構成されている。制御手段31は、図示してはいないがRAM、ROM、プロセッサを有するマイクロプロセッサであり、ROMに格納された制御プログラムにより各部の動作を制御する。通信手段33は、ネットワークNWを介して、他端末とのデータの送受信を行う。記録手段32は、ネットワークNWを介し、通信手段33によって生産者端末7やオガコ端末8から送信されてきたデータを記憶手段35内に記録する。表示手段36は、LCDなどのディスプレイパネルから構成される表示画面を備えた表示ユニットであり、図5に示されているデータなどを表示する。通知手段34は、回収済回収容器データベースに記録されているデータに基いて、各オガコ業者Cに保管されている回収容器5の重量が所定重量を超えたか否かを判別し、所定重量を超えている場合にリサイクル端末9へ回収容器5の回収を通知する。記憶手段35には、送付済回収容器データベース、回収済回収容器データベースなどのデータが記憶されており、送付済回収容器データベースにはキノコ生産者毎に残存している回収容器個数、回収済回収容器データベースには各オガコ業者に回収された回収容器個数とその概算重量などが記録されている。
【0043】
生産者端末7は制御手段71、通信手段72、入力手段73、表示手段74、などを備えて構成されている。制御手段71は、図示してはいないがRAM、ROM、プロセッサを有するマイクロプロセッサであり、ROMに格納された制御プログラムにより各部の動作を制御する。通信手段72は、ネットワークNWを介して、リサイクル支援制御装置2とのデータの送受信を行う。入力手段73はキーボード上の操作ボタンなどにより構成され、生産者端末7の各種機能を操作したり、所要の数値や文字を入力したりするものである。表示手段75は、LCDなどのディスプレイパネルから構成される表示画面を備えた表示ユニットであり、図示してはいないが、各キノコ生産者が注文する際の注文フォームなどを表示する。
【0044】
オガコ端末8は制御手段81、通信手段82、読取手段83、表示手段84、などを備えて構成されている。制御手段81は、図示してはいないがRAM、ROM、プロセッサを有するマイクロプロセッサであり、ROMに格納された制御プログラムにより各部の動作を制御する。通信手段82は、ネットワークNWを介して、リサイクル支援制御装置2とのデータの送受信を行う。読取手段83はバーコード読み取り機器などにより構成され、回収した回収容器の識別情報を、回収容器に付されたバーコードなどから読み取る。表示手段84は、LCDなどのディスプレイパネルから構成される表示画面を備えた表示ユニットである。
【0045】
リサイクル端末9は制御手段91、受信手段92、表示手段93、などを備えて構成されている。制御手段91は、図示してはいないがRAM、ROM、プロセッサを有するマイクロプロセッサであり、ROMに格納された制御プログラムにより各部の動作を制御する。受信手段92は、ネットワークNWを介して、リサイクル支援制御装置2から送信された回収容器の回収通知を受信する。表示手段93は、LCDなどのディスプレイパネルから構成される表示画面を備えた表示ユニットであり、リサイクル支援制御装置2からの回収容器の回収通知などを表示する。
【0046】
次に、図5、図7を参照して本発明の実施形態におけるリサイクル支援システムの一例を説明する。まず、各キノコ生産者Bが生産者端末7に入力した、購入したい栽培袋4の枚数を通信手段33が受信する(ステップS02)。受信した注文数に応じて、袋製造・販売者Aは注文された栽培袋4と、注文された栽培袋4の枚数に応じた個数の回収容器5(個数N1)をキノコ生産者Bのもとへと配送する(ステップS03)。また、このとき記憶手段35内の送付済回収容器データベースに送付した回収容器の枚数N1を、送付済の回収容器の枚数Mに加算し、記憶しておく(ステップS04、ステップS05)。
【0047】
また、このとき、オガコ業者Cは各キノコ生産者Bへオガコを供給し、オガコを供給した後、使用済みの栽培袋を回収容器5へ詰め、回収する(ステップS06)。次いで、オガコ業者Cが読取手段83により読み取った回収した回収容器5の個数(N2)を、通信手段33で受信する(ステップS07)。この後、オガコ業者Cに回収された回収容器5の個数NにN2を加算し、キノコ生産者毎に残存している回収容器個数MからN2を減算し、Nを回収済回収容器データベースに、Mを送付済回収容器データベースに記憶しておく(ステップS08、ステップS09)。
【0048】
回収済回収容器の個数Nが更新されると、通知手段34により、オガコ業者に回収された回収容器5の概算重量を計算し、この重量が所定重量(本実施形態の場合、10t)を超過した場合、リサイクル業者Dへ回収容器5の回収通知を行う(ステップS10、ステップS11)。また、本実施形態では回収容器1個につき10kgの使用済み袋が回収されているとして概算重量の計算を行っている。
【0049】
リサイクル業者Dは、通知手段34によって行われた回収通知を、受信手段92によりネットワークNWを介して受信すると、オガコ業者Cのもとへ回収容器5の回収へ向かい(図1参照)回収された回収容器を用いてリサイクル業者Dは、ペレット等にリサイクルを行う。
【符号の説明】
【0050】
1 使用済みキノコ栽培袋のリサイクル支援システム
2 リサイクル支援制御装置
3A サーバ
3B 情報端末
4 キノコ栽培袋
5 回収容器
6 バーコード(識別情報)
7 生産者端末
8 オガコ端末
9 リサイクル端末
A 袋製造・販売者
B、B1〜BN キノコ生産者
C オガコ業者
D リサイクル工場
F フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キノコ栽培袋を製造し販売する袋製造・販売者と、前記栽培袋を用いてキノコを生産するキノコ生産者と、前記キノコ生産者へ培地の基材となるオガコを供給するオガコ業者と、廃棄物をリサイクルするリサイクル工場とをコンピューターネットワークで結んで前記袋製造・販売者が使用済み袋のリサイクルを支援する使用済みキノコ栽培袋のリサイクル支援システムであって、
前記袋製造・販売者にリサイクル支援制御装置、前記キノコ生産者に生産者端末、前記オガコ業者にオガコ端末及び前記リサイクル工場にリサイクル端末とがそれぞれ設置されて、
前記リサイクル支援制御装置は、前記キノコ生産者から出る使用済み袋の量を前記オガコ業者から入手して使用済み袋量を記録する記録手段と、前記記録手段からの使用済み袋量が基準値を超えたときに前記リサイクル工場へ通知する通知手段とを備えていることを特徴とする使用済みキノコ栽培袋のリサイクル支援システム。
【請求項2】
前記袋製造・販売者は、前記キノコ栽培袋の所定単位数量毎に1個の回収容器を該回収容器に少なくともキノコ生産者名及び番号などの識別情報を付して前記キノコ生産者へ供給し、前記キノコ生産者は使用済み袋を前記回収容器へ投棄し、前記オガコ業者は前記キノコ生産者へのオガコ運搬後に前記回収容器を回収するようにしたシステムであって、
前記オガコ端末には、前記回収容器に付された識別情報を読取る読取手段と、前記読取手段からデータを前記リサイクル支援制御装置へ通知する通知手段とが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の使用済みキノコ栽培袋のリサイクル支援システム。
【請求項3】
前記回収された使用済み袋は、その重量が計測されて、管理されることを特徴とする請求項1に記載の使用済みキノコ栽培袋のリサイクル支援システム。
【請求項4】
前記キノコ生産者及び前記オガコ業者は、複数であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の使用済みキノコ栽培袋のリサイクル支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−143374(P2011−143374A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7610(P2010−7610)
【出願日】平成22年1月16日(2010.1.16)
【出願人】(504328152)株式会社サカト産業 (13)
【Fターム(参考)】