使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法
【課題】銀を含有する使用済みディスプレイパネルから銀を効率的に、しかも安全に分離・回収する方法を提供する。
【解決手段】使用済みディスプレイパネルを破砕し、チオ尿素水溶液と酸との混合液を用いて使用済みディスプレイパネルから含まれる銀を浸出させて浸出液を造り、その浸出液に金属置換法(例えば亜鉛粉末を添加する)を適用する、又は活性炭等を用いることにより銀の効率的な分離・回収が達成できる。
【解決手段】使用済みディスプレイパネルを破砕し、チオ尿素水溶液と酸との混合液を用いて使用済みディスプレイパネルから含まれる銀を浸出させて浸出液を造り、その浸出液に金属置換法(例えば亜鉛粉末を添加する)を適用する、又は活性炭等を用いることにより銀の効率的な分離・回収が達成できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みのディスプレイパネル(例えば、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ等、銀を含むディスプレイパネルをいう)から銀を高純度に分離・回収する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀は従来写真材料や宝飾品としての利用が大きな割合を占めていたが、近年は電気・電子材料等として多くの分野で利用されている。銀は比較的高価なことから従来も写真廃液やレントゲンのX線写真フィルム等の様々な廃棄物や廃液中からの回収が行われてきた。しかし使用済みのプラズマテレビディスプレイパネル等に含まれる銀の量は僅かであり、大過剰に存在するガラスや他の金属等からの銀の選択的な分離・回収は容易でなく、現在まで回収を試みた例はない。
【0003】
固体廃棄物を含め、様々な固体中に含まれる銀の回収では、金の場合と同様に従来アルカリシアン溶液を用いて溶出させる方法が採られてきた。しかし強い毒性のためにシアンを用いる方法は今後実施困難になることが予想される。
鉱石からの金や銀の浸出方法としては、アルカリシアン溶液を用いる以外はチオシアン酸塩水溶液やチオ尿素水溶液の利用が研究されてきた。これらの技術については非特許文献1や2等に報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.Ficeriova, P.Balaz, C.L.Villachica; “Thiosulphate leaching of silver, gold and bismuth from a complex sulfide concentrates”, Hydrometallurgy, 77, 35-39(2005)
【非特許文献2】P.Balaz, J.Ficeriova, V.Sepelak, R.Kammel;“Thiourea leaching of silver from mechanically activated tetrahedrite”, Hydrometallurgy, 43, 367-377(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら使用済みディスプレイパネルからの銀の回収にこれらの技術を利用する試みは報告されておらず、これらの浸出液(浸出原液)により効果的な銀の浸出が達成できるかどうかは不明である。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みななされたもので、銀を含有する使用済みディスプレイパネルから銀を効率的に、しかも安全に分離・回収する方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法は、使用済みディスプレイパネル(以下、単に「ディスプレイパネル」と称する場合もある)を破砕又は粉砕し、チオ尿素水溶液と酸との混合液(「浸出原液」)を用いて前記使用済みディスプレイパネルから含まれる銀を浸出させて浸出液を造り、該浸出液から前記銀を回収する。ここで、破砕には処理容器に入る大きさに使用済みディスプレイパネルを破砕する他、使用済みディスプレイパネルを粉砕する場合も含む。なお、ディスプレイパネルは、単に破砕するより1mm以下(より好ましくは300μm以下)の粒径に粉砕するのがよい。
【0008】
本発明に係る使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記浸出液には前記銀が、Ag[CS(NH2)2]3の陽イオン錯体として溶解しているのが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記破砕した使用済みディスプレイパネルを前記混合液に浸漬した後、放置するより一定時間の振とう処理を行って、前記銀の浸出を行うのが好ましい。
【0010】
本発明に係る使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記混合液には、チオ尿素が0.05モル〜1モル(好ましくは、0.1〜0.25モル、更に好ましくは、0.1〜0.2モル)の範囲で含まれるのがよい。この理由は、チオ尿素の濃度がこの範囲より小さい場合には反応が遅くなり、更にチオ尿素の濃度をこの範囲より高くしても取り出せる銀の量は増加しないので、経済性も考慮してこの範囲が好ましい。
【0011】
本発明に係る使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記酸として毒性の少ない無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸)が使用されているのが好ましい。
本発明に係る使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記無機酸は硫酸であって、0.05モル〜0.25モルの範囲にあるのが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記銀の回収は金属置換法(例えば、イオン化傾向の差を利用した方法)によって行う他、前記浸出液から銀の回収は活性炭を用いて、又は硫化ナトリウムを添加して、又は柿渋をpH13〜14の水に溶解した液を加えることによって行ってもよい。
【0013】
そして、本発明に係る使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記チオ尿素水溶液と酸との混合液の代わりに、塩酸、硫酸、硝酸、チオ硫酸ナトリウムのいずれか1又は2以上の水溶液を用いることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、化学処理を行って、使用済みディスプレイパネル中に含まれる銀を効率的に分離・回収することができる。この場合、従来のように処理液に人体に対して直接毒性を有する液を使用していないので安全性が高い。また、全体のシステムから排出される液も、その処理が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】粉砕された使用済みディスプレイパネルの粒度分布を示すグラフである。
【図2】使用済みディスプレイパネルの粉砕物からの銀の浸出百分率に及ぼす固液比の影響(温度:30℃、振とう時間:4時間)を示すグラフである。
【図3】使用済みディスプレイパネルの粉砕物からの銀の浸出に及ぼすチオ尿素の濃度と硫酸濃度の影響(固液比:250mL/g、温度:30℃、振とう時間:4時間)を示すグラフである。
【図4】0.05Mの濃度のチオ尿素と0.1Mの濃度の硫酸の混合水溶液を用いた場合の様々な温度における使用済みディスプレイパネルの粉砕物からの銀の浸出に及ぼす振とう時間の影響(固液比:250mL/g、振とう速度:200rpm)を示すグラフである。
【図5】亜鉛粉末による金属置換法により0.05Mの濃度のチオ尿素と0.1Mの濃度の硫酸の混合水溶液の浸出液からの銀の回収を行った場合の銀の回収百分率と固液比との関係(温度:30℃)を示すグラフである。
【図6】0.1〜5Mの濃度の硝酸を用いた場合の銀の浸出百分率と固液比との関係を示すグラフである。
【図7】0.1〜5Mの濃度の塩酸を用いた場合の銀の浸出百分率と固液比との関係を示すグラフである。
【図8】1.0、0.5、0.25Mの濃度のチオ硫酸ナトリウム水溶液を用いた場合の銀の浸出量百分率とpHとの関係を示すグラフである(固液比=150mL/g、振り混ぜ速度=150rpm)。
【図9】1.0、0.5、0.25Mの濃度のチオ硫酸ナトリウム水溶液を用いた場合の銀の浸出量百分率と固液比との関係を示すグラフである(pH=3、振り混ぜ速度=150rpm)。
【図10】銀のチオ尿素−希硫酸混合液に硫化ナトリウム水溶液を添加した場合の添加量と硫化物による銀の回収百分率との関係を示すグラフである。
【図11】酸性チオ尿素水溶液からの活性炭及びミカンジュース粕吸着剤(Bioadsorbent)による銀の吸着百分率(縦軸)に対する固液比(1mLの液に加えられた吸着剤のmg数、横軸)との関係を示すグラフである(振り混ぜ時間=12時間、振り混ぜ速度=150rpm、温度30℃)。
【図12】様々な凝集・沈殿剤を用いた場合の銀の回収百分率と凝集剤の添加割合の関係を示すグラフである(温度=30℃、振り混ぜ時間=6〜12時間、振り混ぜ速度=150rpm、静置時間=24時間)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
続いて、添付した図面を参照して、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
使用済みディスプレイパネルの一例である使用済みプラズマテレビディスプレイパネル(以下、単に「ディスプレイパネル」と称する場合もある)を粉砕し、その粉砕物の試料の篩分けによる粒径分布を測定したところ図1のような結果が得られた。
粒径が53〜75μmのもの、及び53μm以下のものが全体の74%を占めたので、以降の実施においては両者の混合物を試料として使用した。
【0017】
この試料を王水を用いて溶解し、溶解液中の成分を島津製ICPS8100型原子発光ICP分光光度計を用いて測定し、固体試料中の各成分の濃度として計算したところ以下の結果が得られた。
ナトリウム2.96、カリウム6.12、カルシウム6.63、鉄1.43、ニッケル0.16、銅0.37、亜鉛7.14、銀2.35、アルミニウム0.27、ケイ素3.21、鉛4.23、金0.18 (単位はmg/g)を有していた。銀の他、亜鉛や鉛、ケイ素等が比較的高濃度で含まれていることが分かる。
【0018】
使用済みディスプレイパネルの粉砕物からの銀の浸出には浸出液(浸出原液)としてチオ尿素の水溶液を用いて行った。所定濃度の浸出液と所定の重量の粉砕物試料とを50mLフラスコ中に取り、30℃の温度に保たれたTHOMAS製AT24R型恒温振とう器を用いて所定時間振り混ぜる(即ち振とう処理を行う)ことにより銀の浸出を行った。島津製ICPS8100型原子発光ICP分光光度計を用いて浸出後の浸出液中の銀の濃度を測定し、これより液中に溶出した銀の物質量を計算した。
【0019】
また浸出に供した固体試料(粉砕物試料)の重量と上記の固体試料中の銀濃度より計算した固体試料中の銀の物質量を計算し、これらの計算値を用いて銀の溶出割合を百分率として求め、これを浸出百分率とした。様々な条件における、この銀の浸出百分率に及ぼす様々な効果について検討した。
【0020】
図2に、浸出液として1)0.05M(モル)の濃度のチオ尿素水溶液、2)0.1Mの濃度のチオ尿素水溶液、3)0.05Mの濃度のチオ尿素と0.05Mの濃度の硫酸との混合水溶液(混合液)を用いた場合のディスプレイパネルの粉砕物からの銀の浸出百分率に及ぼす固液比の影響を示す。ここで固液比とは1gの粉砕物に対する加えた浸出液の液量(mL)の比を意味する。
チオ尿素だけを用いた場合では、いずれの濃度においても銀の浸出は殆ど見られない。しかし硫酸と混合することにより、固液比が100mL/g以上の条件下では、100%近い浸出が得られることが分かる。
【0021】
図3に固液比を250mL/gと一定にした場合の使用済みディスプレイパネルの粉砕物からの銀の浸出に及ぼすチオ尿素の濃度と硫酸濃度の影響を示す。硫酸濃度の効果に関しては、濃度の増加と共に浸出百分率はやや減少しており、その減少の程度はチオ尿素濃度が低下するほど著しい。硫酸濃度が0.25Mあるいは0.05Mと低下するとチオ尿素の濃度の増加と共に浸出百分率は若干低下するが、その効果は小さい。
【0022】
図4に0.05Mの濃度のチオ尿素と0.1Mの濃度の硫酸の混合水溶液を用いた場合の様々な温度における使用済みディスプレイパネルの粉砕物からの銀の浸出に及ぼす振とう時間の影響を示す。温度には影響されず、100%近い浸出が短い振とう時間で達成できることが分かる。
【0023】
上記の結果より、使用済みディスプレイパネルの粉砕物からの銀の浸出においては低濃度のチオ尿素と硫酸の混合水溶液の使用が効果的である。具体的には、硫酸の濃度は0.25M以下の濃度、好ましくは0.1〜0.05Mの濃度で、またチオ尿素は1M以下の濃度、好ましくは、0.25M以下、更に好ましくは0.1〜0.05Mの濃度で浸出を行うと短時間で効果的な浸出が達成できる。また温度の効果は小さいので室温での浸出が好ましい。
【0024】
チオ尿素と硫酸との混合水溶液の浸出液中に浸出された銀の回収には様々な方法が考えられるが、元素状の固体の銀として回収するには、銀塩写真の定着廃液からの銀の回収に実施されてきた金属置換法によることが好ましい。この方法により銀よりもイオン化傾向の大きな、鉄、アルミニウム、亜鉛等の金属を対象の液に加え、異種金属間での酸化還元反応又はイオン化傾向の差によって銀を元素状の高純度の銀として回収することができる。
【0025】
上記の銀を含む0.05Mの濃度のチオ尿素と0.1Mの濃度の硫酸の混合水溶液の浸出液に様々な重量の亜鉛粉末を加えて銀の析出を行った。析出した銀を濾過して回収した後、島津製ICPS8100型原子発光ICP分光光度計を用いて 濾液中の銀の濃度を測定し、亜鉛粉末添加前の銀濃度と比較することにより、銀の回収百分率を求めた。図5に30℃において銀の回収を行った場合の銀の回収百分率と固液比との関係を示す。この場合の固液比は上記の浸出液の体積と加えた亜鉛粉末の重量との比を示す。図より1mLの浸出液に対して6mg以上の亜鉛粉末を添加することにより、100%の銀の回収が達成できることが分かる。
【0026】
以上の実施の形態においては、チオ尿素の水溶液のみを用いた場合は、銀浸出の効果はほとんどなく、硫酸を混入することで浸出効果が著しく高くなる。ここで、酸性チオ尿素水溶液を形成する酸として硫酸を用いたが、その他の無機酸(例えば、塩酸、硝酸等)をチオ尿素に混入して用いることもできる。
【0027】
次に、酸性チオ尿素水溶液の代わりに、0.1〜5Mの濃度の硝酸水溶液、0.1〜5Mの濃度の塩酸水溶液を使用した場合の、銀の浸出百分率を図6、図7に示す。ここで100%は0.5Mのチオ尿素と0.1Mの硫酸を混合して酸性チオ尿素の水溶液を用いた場合としている。
この図6、図7から硝酸の場合であっても、塩酸の場合であっても、酸性チオ尿素の水溶液に比較すると浸出率は下がるが銀の抽出ができることがわかる。
【0028】
また、図8はチオ硫酸ナトリウム水溶液を用いた場合の銀の浸出量百分率に及ぼすpHの影響を示しているが、特に、pHは浸出率には関係ないことがわかる。
図9はチオ硫酸ナトリウム水溶液を用いた場合の銀の浸出百分率に対する固液比の影響を示すグラフであるが70mL/gを超えると特に銀の浸出量には影響しないことが分かる。
【0029】
銀はソフトなルイス(Lewis)酸であるため、ソフトなルイス塩基である硫黄化合物と選択的に反応すると予想される。そこで、供試液に硫化ナトリウムを加えて銀を硫化銀の沈殿として回収することを試みた。図10に20mL及び50mLの濃度の硫化ナトリウム水溶液を添加した場合の、銀の沈殿回収百分率に及ぼす添加量の液−液比(添加した硫化ナトリウム水溶液/供試液)の影響を示す。1mLの供試液に0.05mLの硫化ナトリウム水溶液を添加すれば定量的な回収ができることが分かる。
【0030】
銀一チオ尿素錯体(Ag[CS(NH2)2]3+)は陽イオンであるため、陽イオン交換帯であるミカンジュース粕の吸着剤と代表的な吸着剤である活性炭を用いた酸性チオ尿素水溶液からの銀の回収・吸着を行った。図11に銀の吸着百分率に対する吸着剤と酸性チオ尿素水溶液との関係を示す。活性炭では固液比のいかんによらず銀は定量的に回収されるのに対してミカンジュース粕による吸着は小さい。しかしながら、吸着後に銀を固体として取り出す必要があるので、活性炭により吸着された銀はその後焼却等の方法により回収される。
【0031】
吸着法では吸着した銀をその後更に焼却等による固体の銀化合物にする必要がある。そこで、固体の銀化合物として回収するために、柿渋やカチオンセルロースを用いた凝集沈殿法による銀化合物の分離を試みた。柿渋は18%の柿タンニンを含む渋柿粉末を用いた。カチオンセルロースとしては、東邦化学製のカチオナールHC/LCを用いた。
【0032】
図12に様々な凝集剤の液を用いた場合の凝集沈殿による銀の回収百分率(=(最初の銀濃度−沈殿後の銀濃度)/最初の銀濃度 ×100)との銀の1mLの供試液に加えた凝集剤の液量(mL)の比率との関係を示す。60mgの柿渋粉末をpH=13.85の水30mLに溶解して調製した凝集剤(PTS−C)を用いると、0.3mL/mLの添加で銀をほぼ定量的に回収できることが分かる。これに対して他の凝集剤では供試液と同体積の凝集剤を入れても十分には回収できない。図12において、PTS−Aは2.5gの柿渋粉末を50mLのpH7の水に溶解させた液、PTS−Bは2.5gの柿渋粉末を50mLのpH12の水に溶解させた液、PTS−Cは60mgの柿渋粉末を30mLのpH13.85の水に溶解させた液、CationalHC/LCは0.25gのCationalHC/LCを100mLのpH7の水に溶解させた液を示す。
【0033】
従って以上のことから以下のことが分かる。
1)プラズマテレビパネル廃棄物の粉体中の銀は希硫酸とチオ尿素の混合水溶液によって短時間で効率的に浸出可能である。また、塩酸、硝酸、硫酸、チオ硫酸ナトリウム等でも銀の浸出はできる。
2)浸出された銀は活性炭により定量的に吸着されるが、その後焼却処分などによる固体の銀が回収が必要となる。
3)柿渋粉末をpH=13〜14の水に溶解した液を上記の浸出液に加えると銀は定量的に沈殿として回収される。
4)硫化ナトリウムの添加によっても銀は硫化銀の沈殿として回収される。
【0034】
以上の実施の形態においては、使用済みプラズマテレビディスプレイパネルから銀を浸出する場合について説明したが、その他の使用済みディスプレイパネル(例えば、液晶パネル等)においても同様に処理できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みのディスプレイパネル(例えば、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ等、銀を含むディスプレイパネルをいう)から銀を高純度に分離・回収する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀は従来写真材料や宝飾品としての利用が大きな割合を占めていたが、近年は電気・電子材料等として多くの分野で利用されている。銀は比較的高価なことから従来も写真廃液やレントゲンのX線写真フィルム等の様々な廃棄物や廃液中からの回収が行われてきた。しかし使用済みのプラズマテレビディスプレイパネル等に含まれる銀の量は僅かであり、大過剰に存在するガラスや他の金属等からの銀の選択的な分離・回収は容易でなく、現在まで回収を試みた例はない。
【0003】
固体廃棄物を含め、様々な固体中に含まれる銀の回収では、金の場合と同様に従来アルカリシアン溶液を用いて溶出させる方法が採られてきた。しかし強い毒性のためにシアンを用いる方法は今後実施困難になることが予想される。
鉱石からの金や銀の浸出方法としては、アルカリシアン溶液を用いる以外はチオシアン酸塩水溶液やチオ尿素水溶液の利用が研究されてきた。これらの技術については非特許文献1や2等に報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.Ficeriova, P.Balaz, C.L.Villachica; “Thiosulphate leaching of silver, gold and bismuth from a complex sulfide concentrates”, Hydrometallurgy, 77, 35-39(2005)
【非特許文献2】P.Balaz, J.Ficeriova, V.Sepelak, R.Kammel;“Thiourea leaching of silver from mechanically activated tetrahedrite”, Hydrometallurgy, 43, 367-377(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら使用済みディスプレイパネルからの銀の回収にこれらの技術を利用する試みは報告されておらず、これらの浸出液(浸出原液)により効果的な銀の浸出が達成できるかどうかは不明である。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みななされたもので、銀を含有する使用済みディスプレイパネルから銀を効率的に、しかも安全に分離・回収する方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法は、使用済みディスプレイパネル(以下、単に「ディスプレイパネル」と称する場合もある)を破砕又は粉砕し、チオ尿素水溶液と酸との混合液(「浸出原液」)を用いて前記使用済みディスプレイパネルから含まれる銀を浸出させて浸出液を造り、該浸出液から前記銀を回収する。ここで、破砕には処理容器に入る大きさに使用済みディスプレイパネルを破砕する他、使用済みディスプレイパネルを粉砕する場合も含む。なお、ディスプレイパネルは、単に破砕するより1mm以下(より好ましくは300μm以下)の粒径に粉砕するのがよい。
【0008】
本発明に係る使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記浸出液には前記銀が、Ag[CS(NH2)2]3の陽イオン錯体として溶解しているのが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記破砕した使用済みディスプレイパネルを前記混合液に浸漬した後、放置するより一定時間の振とう処理を行って、前記銀の浸出を行うのが好ましい。
【0010】
本発明に係る使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記混合液には、チオ尿素が0.05モル〜1モル(好ましくは、0.1〜0.25モル、更に好ましくは、0.1〜0.2モル)の範囲で含まれるのがよい。この理由は、チオ尿素の濃度がこの範囲より小さい場合には反応が遅くなり、更にチオ尿素の濃度をこの範囲より高くしても取り出せる銀の量は増加しないので、経済性も考慮してこの範囲が好ましい。
【0011】
本発明に係る使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記酸として毒性の少ない無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸)が使用されているのが好ましい。
本発明に係る使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記無機酸は硫酸であって、0.05モル〜0.25モルの範囲にあるのが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記銀の回収は金属置換法(例えば、イオン化傾向の差を利用した方法)によって行う他、前記浸出液から銀の回収は活性炭を用いて、又は硫化ナトリウムを添加して、又は柿渋をpH13〜14の水に溶解した液を加えることによって行ってもよい。
【0013】
そして、本発明に係る使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記チオ尿素水溶液と酸との混合液の代わりに、塩酸、硫酸、硝酸、チオ硫酸ナトリウムのいずれか1又は2以上の水溶液を用いることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、化学処理を行って、使用済みディスプレイパネル中に含まれる銀を効率的に分離・回収することができる。この場合、従来のように処理液に人体に対して直接毒性を有する液を使用していないので安全性が高い。また、全体のシステムから排出される液も、その処理が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】粉砕された使用済みディスプレイパネルの粒度分布を示すグラフである。
【図2】使用済みディスプレイパネルの粉砕物からの銀の浸出百分率に及ぼす固液比の影響(温度:30℃、振とう時間:4時間)を示すグラフである。
【図3】使用済みディスプレイパネルの粉砕物からの銀の浸出に及ぼすチオ尿素の濃度と硫酸濃度の影響(固液比:250mL/g、温度:30℃、振とう時間:4時間)を示すグラフである。
【図4】0.05Mの濃度のチオ尿素と0.1Mの濃度の硫酸の混合水溶液を用いた場合の様々な温度における使用済みディスプレイパネルの粉砕物からの銀の浸出に及ぼす振とう時間の影響(固液比:250mL/g、振とう速度:200rpm)を示すグラフである。
【図5】亜鉛粉末による金属置換法により0.05Mの濃度のチオ尿素と0.1Mの濃度の硫酸の混合水溶液の浸出液からの銀の回収を行った場合の銀の回収百分率と固液比との関係(温度:30℃)を示すグラフである。
【図6】0.1〜5Mの濃度の硝酸を用いた場合の銀の浸出百分率と固液比との関係を示すグラフである。
【図7】0.1〜5Mの濃度の塩酸を用いた場合の銀の浸出百分率と固液比との関係を示すグラフである。
【図8】1.0、0.5、0.25Mの濃度のチオ硫酸ナトリウム水溶液を用いた場合の銀の浸出量百分率とpHとの関係を示すグラフである(固液比=150mL/g、振り混ぜ速度=150rpm)。
【図9】1.0、0.5、0.25Mの濃度のチオ硫酸ナトリウム水溶液を用いた場合の銀の浸出量百分率と固液比との関係を示すグラフである(pH=3、振り混ぜ速度=150rpm)。
【図10】銀のチオ尿素−希硫酸混合液に硫化ナトリウム水溶液を添加した場合の添加量と硫化物による銀の回収百分率との関係を示すグラフである。
【図11】酸性チオ尿素水溶液からの活性炭及びミカンジュース粕吸着剤(Bioadsorbent)による銀の吸着百分率(縦軸)に対する固液比(1mLの液に加えられた吸着剤のmg数、横軸)との関係を示すグラフである(振り混ぜ時間=12時間、振り混ぜ速度=150rpm、温度30℃)。
【図12】様々な凝集・沈殿剤を用いた場合の銀の回収百分率と凝集剤の添加割合の関係を示すグラフである(温度=30℃、振り混ぜ時間=6〜12時間、振り混ぜ速度=150rpm、静置時間=24時間)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
続いて、添付した図面を参照して、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
使用済みディスプレイパネルの一例である使用済みプラズマテレビディスプレイパネル(以下、単に「ディスプレイパネル」と称する場合もある)を粉砕し、その粉砕物の試料の篩分けによる粒径分布を測定したところ図1のような結果が得られた。
粒径が53〜75μmのもの、及び53μm以下のものが全体の74%を占めたので、以降の実施においては両者の混合物を試料として使用した。
【0017】
この試料を王水を用いて溶解し、溶解液中の成分を島津製ICPS8100型原子発光ICP分光光度計を用いて測定し、固体試料中の各成分の濃度として計算したところ以下の結果が得られた。
ナトリウム2.96、カリウム6.12、カルシウム6.63、鉄1.43、ニッケル0.16、銅0.37、亜鉛7.14、銀2.35、アルミニウム0.27、ケイ素3.21、鉛4.23、金0.18 (単位はmg/g)を有していた。銀の他、亜鉛や鉛、ケイ素等が比較的高濃度で含まれていることが分かる。
【0018】
使用済みディスプレイパネルの粉砕物からの銀の浸出には浸出液(浸出原液)としてチオ尿素の水溶液を用いて行った。所定濃度の浸出液と所定の重量の粉砕物試料とを50mLフラスコ中に取り、30℃の温度に保たれたTHOMAS製AT24R型恒温振とう器を用いて所定時間振り混ぜる(即ち振とう処理を行う)ことにより銀の浸出を行った。島津製ICPS8100型原子発光ICP分光光度計を用いて浸出後の浸出液中の銀の濃度を測定し、これより液中に溶出した銀の物質量を計算した。
【0019】
また浸出に供した固体試料(粉砕物試料)の重量と上記の固体試料中の銀濃度より計算した固体試料中の銀の物質量を計算し、これらの計算値を用いて銀の溶出割合を百分率として求め、これを浸出百分率とした。様々な条件における、この銀の浸出百分率に及ぼす様々な効果について検討した。
【0020】
図2に、浸出液として1)0.05M(モル)の濃度のチオ尿素水溶液、2)0.1Mの濃度のチオ尿素水溶液、3)0.05Mの濃度のチオ尿素と0.05Mの濃度の硫酸との混合水溶液(混合液)を用いた場合のディスプレイパネルの粉砕物からの銀の浸出百分率に及ぼす固液比の影響を示す。ここで固液比とは1gの粉砕物に対する加えた浸出液の液量(mL)の比を意味する。
チオ尿素だけを用いた場合では、いずれの濃度においても銀の浸出は殆ど見られない。しかし硫酸と混合することにより、固液比が100mL/g以上の条件下では、100%近い浸出が得られることが分かる。
【0021】
図3に固液比を250mL/gと一定にした場合の使用済みディスプレイパネルの粉砕物からの銀の浸出に及ぼすチオ尿素の濃度と硫酸濃度の影響を示す。硫酸濃度の効果に関しては、濃度の増加と共に浸出百分率はやや減少しており、その減少の程度はチオ尿素濃度が低下するほど著しい。硫酸濃度が0.25Mあるいは0.05Mと低下するとチオ尿素の濃度の増加と共に浸出百分率は若干低下するが、その効果は小さい。
【0022】
図4に0.05Mの濃度のチオ尿素と0.1Mの濃度の硫酸の混合水溶液を用いた場合の様々な温度における使用済みディスプレイパネルの粉砕物からの銀の浸出に及ぼす振とう時間の影響を示す。温度には影響されず、100%近い浸出が短い振とう時間で達成できることが分かる。
【0023】
上記の結果より、使用済みディスプレイパネルの粉砕物からの銀の浸出においては低濃度のチオ尿素と硫酸の混合水溶液の使用が効果的である。具体的には、硫酸の濃度は0.25M以下の濃度、好ましくは0.1〜0.05Mの濃度で、またチオ尿素は1M以下の濃度、好ましくは、0.25M以下、更に好ましくは0.1〜0.05Mの濃度で浸出を行うと短時間で効果的な浸出が達成できる。また温度の効果は小さいので室温での浸出が好ましい。
【0024】
チオ尿素と硫酸との混合水溶液の浸出液中に浸出された銀の回収には様々な方法が考えられるが、元素状の固体の銀として回収するには、銀塩写真の定着廃液からの銀の回収に実施されてきた金属置換法によることが好ましい。この方法により銀よりもイオン化傾向の大きな、鉄、アルミニウム、亜鉛等の金属を対象の液に加え、異種金属間での酸化還元反応又はイオン化傾向の差によって銀を元素状の高純度の銀として回収することができる。
【0025】
上記の銀を含む0.05Mの濃度のチオ尿素と0.1Mの濃度の硫酸の混合水溶液の浸出液に様々な重量の亜鉛粉末を加えて銀の析出を行った。析出した銀を濾過して回収した後、島津製ICPS8100型原子発光ICP分光光度計を用いて 濾液中の銀の濃度を測定し、亜鉛粉末添加前の銀濃度と比較することにより、銀の回収百分率を求めた。図5に30℃において銀の回収を行った場合の銀の回収百分率と固液比との関係を示す。この場合の固液比は上記の浸出液の体積と加えた亜鉛粉末の重量との比を示す。図より1mLの浸出液に対して6mg以上の亜鉛粉末を添加することにより、100%の銀の回収が達成できることが分かる。
【0026】
以上の実施の形態においては、チオ尿素の水溶液のみを用いた場合は、銀浸出の効果はほとんどなく、硫酸を混入することで浸出効果が著しく高くなる。ここで、酸性チオ尿素水溶液を形成する酸として硫酸を用いたが、その他の無機酸(例えば、塩酸、硝酸等)をチオ尿素に混入して用いることもできる。
【0027】
次に、酸性チオ尿素水溶液の代わりに、0.1〜5Mの濃度の硝酸水溶液、0.1〜5Mの濃度の塩酸水溶液を使用した場合の、銀の浸出百分率を図6、図7に示す。ここで100%は0.5Mのチオ尿素と0.1Mの硫酸を混合して酸性チオ尿素の水溶液を用いた場合としている。
この図6、図7から硝酸の場合であっても、塩酸の場合であっても、酸性チオ尿素の水溶液に比較すると浸出率は下がるが銀の抽出ができることがわかる。
【0028】
また、図8はチオ硫酸ナトリウム水溶液を用いた場合の銀の浸出量百分率に及ぼすpHの影響を示しているが、特に、pHは浸出率には関係ないことがわかる。
図9はチオ硫酸ナトリウム水溶液を用いた場合の銀の浸出百分率に対する固液比の影響を示すグラフであるが70mL/gを超えると特に銀の浸出量には影響しないことが分かる。
【0029】
銀はソフトなルイス(Lewis)酸であるため、ソフトなルイス塩基である硫黄化合物と選択的に反応すると予想される。そこで、供試液に硫化ナトリウムを加えて銀を硫化銀の沈殿として回収することを試みた。図10に20mL及び50mLの濃度の硫化ナトリウム水溶液を添加した場合の、銀の沈殿回収百分率に及ぼす添加量の液−液比(添加した硫化ナトリウム水溶液/供試液)の影響を示す。1mLの供試液に0.05mLの硫化ナトリウム水溶液を添加すれば定量的な回収ができることが分かる。
【0030】
銀一チオ尿素錯体(Ag[CS(NH2)2]3+)は陽イオンであるため、陽イオン交換帯であるミカンジュース粕の吸着剤と代表的な吸着剤である活性炭を用いた酸性チオ尿素水溶液からの銀の回収・吸着を行った。図11に銀の吸着百分率に対する吸着剤と酸性チオ尿素水溶液との関係を示す。活性炭では固液比のいかんによらず銀は定量的に回収されるのに対してミカンジュース粕による吸着は小さい。しかしながら、吸着後に銀を固体として取り出す必要があるので、活性炭により吸着された銀はその後焼却等の方法により回収される。
【0031】
吸着法では吸着した銀をその後更に焼却等による固体の銀化合物にする必要がある。そこで、固体の銀化合物として回収するために、柿渋やカチオンセルロースを用いた凝集沈殿法による銀化合物の分離を試みた。柿渋は18%の柿タンニンを含む渋柿粉末を用いた。カチオンセルロースとしては、東邦化学製のカチオナールHC/LCを用いた。
【0032】
図12に様々な凝集剤の液を用いた場合の凝集沈殿による銀の回収百分率(=(最初の銀濃度−沈殿後の銀濃度)/最初の銀濃度 ×100)との銀の1mLの供試液に加えた凝集剤の液量(mL)の比率との関係を示す。60mgの柿渋粉末をpH=13.85の水30mLに溶解して調製した凝集剤(PTS−C)を用いると、0.3mL/mLの添加で銀をほぼ定量的に回収できることが分かる。これに対して他の凝集剤では供試液と同体積の凝集剤を入れても十分には回収できない。図12において、PTS−Aは2.5gの柿渋粉末を50mLのpH7の水に溶解させた液、PTS−Bは2.5gの柿渋粉末を50mLのpH12の水に溶解させた液、PTS−Cは60mgの柿渋粉末を30mLのpH13.85の水に溶解させた液、CationalHC/LCは0.25gのCationalHC/LCを100mLのpH7の水に溶解させた液を示す。
【0033】
従って以上のことから以下のことが分かる。
1)プラズマテレビパネル廃棄物の粉体中の銀は希硫酸とチオ尿素の混合水溶液によって短時間で効率的に浸出可能である。また、塩酸、硝酸、硫酸、チオ硫酸ナトリウム等でも銀の浸出はできる。
2)浸出された銀は活性炭により定量的に吸着されるが、その後焼却処分などによる固体の銀が回収が必要となる。
3)柿渋粉末をpH=13〜14の水に溶解した液を上記の浸出液に加えると銀は定量的に沈殿として回収される。
4)硫化ナトリウムの添加によっても銀は硫化銀の沈殿として回収される。
【0034】
以上の実施の形態においては、使用済みプラズマテレビディスプレイパネルから銀を浸出する場合について説明したが、その他の使用済みディスプレイパネル(例えば、液晶パネル等)においても同様に処理できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みディスプレイパネルを破砕し、チオ尿素水溶液と酸との混合液を用いて前記使用済みディスプレイパネルから含まれる銀を浸出させて浸出液を造り、該浸出液から前記銀を回収することを特徴とする使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法。
【請求項2】
請求項1記載の使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記浸出液には前記銀が、Ag[CS(NH2)2]3の陽イオン錯体として溶解していることを特徴とする使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記破砕した使用済みディスプレイパネルを前記混合液に浸漬した後、一定時間の振とう処理を行って、前記銀の浸出を行うことを特徴とする使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載の使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記混合液には、チオ尿素が0.05モル〜1モルの範囲で含まれることを特徴とする使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1に記載の使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記酸として無機酸が使用されていることを特徴とする使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法。
【請求項6】
請求項5記載の使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記無機酸は硫酸であって、0.05モル〜0.25モルの範囲にあることを特徴とする使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法。
【請求項7】
請求項1記載の使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記浸出液からの銀の回収は金属置換法によって行うことを特徴とする使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法。
【請求項8】
請求項1記載の使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記浸出液からの銀の回収は活性炭を用いて、硫化ナトリウムを添加して、又は柿渋をpH13〜14の水に溶解した液を加えることによって行うことを特徴とする使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1に記載の使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記チオ尿素水溶液と酸との混合液の代わりに、塩酸、硫酸、硝酸及びチオ硫酸ナトリウムのいずれか1又は2の水溶液を用いたことを特徴とする使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法。
【請求項1】
使用済みディスプレイパネルを破砕し、チオ尿素水溶液と酸との混合液を用いて前記使用済みディスプレイパネルから含まれる銀を浸出させて浸出液を造り、該浸出液から前記銀を回収することを特徴とする使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法。
【請求項2】
請求項1記載の使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記浸出液には前記銀が、Ag[CS(NH2)2]3の陽イオン錯体として溶解していることを特徴とする使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記破砕した使用済みディスプレイパネルを前記混合液に浸漬した後、一定時間の振とう処理を行って、前記銀の浸出を行うことを特徴とする使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載の使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記混合液には、チオ尿素が0.05モル〜1モルの範囲で含まれることを特徴とする使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1に記載の使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記酸として無機酸が使用されていることを特徴とする使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法。
【請求項6】
請求項5記載の使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記無機酸は硫酸であって、0.05モル〜0.25モルの範囲にあることを特徴とする使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法。
【請求項7】
請求項1記載の使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記浸出液からの銀の回収は金属置換法によって行うことを特徴とする使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法。
【請求項8】
請求項1記載の使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記浸出液からの銀の回収は活性炭を用いて、硫化ナトリウムを添加して、又は柿渋をpH13〜14の水に溶解した液を加えることによって行うことを特徴とする使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1に記載の使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法において、前記チオ尿素水溶液と酸との混合液の代わりに、塩酸、硫酸、硝酸及びチオ硫酸ナトリウムのいずれか1又は2の水溶液を用いたことを特徴とする使用済みディスプレイパネルからの銀の回収方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−184472(P2012−184472A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48114(P2011−48114)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年2月27日 TMS発行の「TMS 2011 14Oth Annual Meeting & Exhibition Late News Proceedings」に発表
【出願人】(504209655)国立大学法人佐賀大学 (176)
【出願人】(510021742)西日本家電リサイクル株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年2月27日 TMS発行の「TMS 2011 14Oth Annual Meeting & Exhibition Late News Proceedings」に発表
【出願人】(504209655)国立大学法人佐賀大学 (176)
【出願人】(510021742)西日本家電リサイクル株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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