説明

使用済排出海水の泡監視装置及び排出システム

【課題】放水路に放出される排出海水に同伴される泡を安定して連続して監視することができる使用済排出海水の泡監視装置及び排出システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る使用済排出海水の泡監視装置13は、使用済の排出海水11を海20に放水するための放水路12の流路上と海面上とに設けられ、排出海水11と海20とに向けて照射した光の反射光を受光する測定部15a、15bと、測定部15a、15bで受光された光量を検知するセンサ16と、測定部15a、15bで受光された光をセンサ16に伝達する光ファイバー17と、測定部15a、15bを放水路12及び海面上に支持するための支持部材18と、測定部15a、15bの受光量の対比結果から排出海水11に泡23が浮遊しているか否かを求める制御装置19とを有し、測定部15a、15bは、発光部25a、25bと、受光部26a、26bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば火力発電所や原子力発電所等の発電プラントや化学プラント等の冷却水として、あるいは排ガスの洗浄用水として、海水を使用した後に再び海へ排出する使用済排出海水に同伴される泡を監視する使用済排出海水の泡監視装置及び排出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所、火力発電所などの種々の発電プラントでは、海水は復水器等の冷却水や、海水脱硫設備の排ガス処理用の水や熱交換器等の熱交換用の水として多量に使用されている。復水器で使用された後の使用済の排出海水、海水脱硫設備で用いた使用済の排出海水、熱交換器等から排出される排出海水は、温排水として放水路に排出され、海域や河川域に排出されている。
【0003】
放水路には、一般に海の潮位の変動に対応するため堰を設置しているが、この堰を越えて排水が下流側に流れ落ちて空気を巻き込むことで、放水路の水面上には多量の泡が発生する。また、放水路には、排水が空気を巻き込むことで生じる泡の他に、界面活性剤などの化学薬品、微生物や生物死骸など汚染物などの様々な原因により生じている泡も含まれている場合がある。
【0004】
空気を巻き込むことで生じる泡のほとんどは排水路の途中で消泡するが、化学薬品や汚染物等に起因して生じた泡は、化学薬品や汚染物等による界面活性作用により容易に破泡しないため、使用済海水や排出海水の表面に浮遊している場合が多く、排水路の排出口から海に排出される場合がある。
【0005】
また、化学薬品や汚染物等に起因して生じた泡は、空気を巻き込むことで生じる泡に比べ外観も悪く、排水基準に泡の規制がないが、これらに起因して生じた泡が同伴された排出海水は、外観的に汚濁排水と認識されやすい。そのため、排水が放水される周辺の海域や河川域で行われている漁業や農業の安全性を確保する観点から、泡の安全性の確認や証明を行う場合がある。
【0006】
また、放水路の下流側にはフロートを設置して、放水路の水面上に浮遊している泡が海域や河川域に流れ出さないようにしている。しかし、放水路の水面上に浮遊している泡を海域や河川域に流れ出さないようにフロートで止めておくと、フロート周辺には多量の泡が集中して、高波が来た場合や強風が生じた場合には、フロート周辺に浮遊している泡が近隣に飛散してしまう場合がある。
【0007】
そこで、放水路の水面上に泡が発生するのを抑制するため、従来では、例えば、冷却水として用いる海水中に消泡剤等の薬剤を添加し、海水を冷却水として用いる際に泡が発生するのを抑制する発泡抑制方法などが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、放水路の水面上に泡が発生するのを抑制する他に、フロートが浮いている放水路周辺の水面を作業員が直接確認するか監視カメラなどを用いて目視で監視し、フロートで泡が止まっているのを確認した際には、フロート周辺の水面上に浮遊している泡を回収し、分析等していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2008/041400号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、作業員が直接確認するか監視カメラなどを用いて目視で監視する方法では、夜間は放水路の水面上に浮遊している泡を確認することは困難であるため、昼夜を通じて安定して放水路の水面上に浮遊している泡を監視することは困難である、という問題がある。
【0011】
そこで、放水路の水面上に浮遊している泡を昼夜を通じて安定して監視することができる泡の泡検知装置が切望されている。
【0012】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであって、放水路に放出される排出海水に同伴される泡を安定して連続して監視することができる使用済排出海水の泡監視装置及び排出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、使用済の排出海水を放水する放水路の流路上と海面上とに設けられ、前記排出海水と海とに向けて照射した光の反射光を受光する一対の測定部と、前記一対の測定部で受光された光量を検知する検知部と、前記一対の測定部で受光された光を前記検知部に伝達する光送電手段と、前記一対の測定部を前記放水路及び海面上に支持するための支持部材と、前記一対の測定部の受光量の対比結果から前記排出海水に泡が浮遊しているか否かを求める制御手段と、を有し、前記一対の測定部は、前記排出海水と前記海とに向けて光を照射する一対の発光部と、前記一対の発光部から前記排出海水及び前記海に照射して反射した反射光を受光する一対の受光部と、を有することを特徴とする使用済排出海水の泡監視装置である。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、前記制御手段の判断結果に基づいて前記泡の有無を表示する表示手段を有することを特徴とする使用済排出海水の泡監視装置である。
【0015】
第3の発明は、使用済の排出海水を海に放水する排水路と、第1又は第2の発明の使用済排出海水の泡監視装置と、前記排出海水に浮遊している泡を消泡する消泡装置と、を有することを特徴とする使用済排出海水の排出システムである。
【0016】
第4の発明は、第3の発明において、前記放水路に前記排出海水に浮遊している泡の拡散を抑制するための1つ以上の浮体を有することを特徴とする使用済排出海水の排出システムである。
【0017】
第5の発明は、第3又は第4の発明において、前記制御手段は、前記一対の測定部の受光量の対比結果に基づいて前記泡の発生量が所定量以上となったら、前記消泡装置を用いて前記排出海水に浮遊している前記泡を消泡することを特徴とする使用済排出海水の排出システムである。
【0018】
第6の発明は、使用済の排出海水を放水する放水路を流れる前記排出海水と、海に向けて一対の発光部から照射して反射した反射光を一対の受光部で受光し、前記反射光を光送電手段を介して検知部に伝達し、前記検知部で前記一対の受光部で受光された光量を検知し、前記一対の受光部で受光された反射光の受光量を対比して前記排出海水に泡が浮遊しているか否かを求めることを特徴とする使用済排出海水の泡監視方法である。
【0019】
第7の発明は、第6の発明の使用済排出海水の泡監視方法により前記排出海水に泡が浮遊しているか否かを判断し、前記排出海水に前記泡が浮遊している場合には、消泡装置を用いて前記排出海水に浮遊している前記泡を消泡することを特徴とする使用済排出海水の排出処理方法である。
【0020】
第8の発明は、第7の発明において、前記排出海水に泡が浮遊しているか否かを判断した判断結果に基づいて、前記排出海水に浮遊している前記泡の量が所定量以上となったら、前記消泡装置を用いて前記排出海水に浮遊している前記泡を消泡することを特徴とする使用済排出海水の排出処理方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、放水路に放出される排出海水に同伴される泡を安定して連続して監視することができる。このため、海水を使用した後に再び海洋へ排出する排出海水に同伴される泡に対して適切に消泡処理を施すことができ、昼夜を通じて効率よく除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本実施例に係る使用済排出海水の泡監視装置を適用した使用済排出海水の排出システムの構成の概略構成図である。
【図2】図2は、本実施例に係る使用済排出海水の泡監視装置の平面概略図である。
【図3】図3は、図1のA−A方向から見た図である。
【図4】図4は、発光部から照射された光を受光部で受光する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る使用済排出海水の泡監視装置及び使用済排出海水の排出システムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に記載した内容により限定されるものではない。また、以下に記載した下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに以下に記載した下記実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【実施例】
【0024】
本実施例に係る使用済排出海水の泡監視装置の構成について説明する。図1は、本実施例に係る使用済排出海水の泡監視装置を適用した使用済排出海水の排出システムの構成の概略構成図であり、図2は、本実施例に係る使用済排出海水の泡監視装置の平面概略図であり、図3は、図1のA−A方向から見た図である。図1〜図3に示すように、本実施例に係る使用済排出海水の排出システム10は、使用済の排出海水11を海へ排出する放水路12に設けられ、使用済排出海水の泡監視装置13と、消泡装置14とを有するものである。使用済排出海水の泡監視装置13は、一対の測定部15a、15bと、検知部(センサ)16と、光送電手段(光ファイバー)17と、支持手段(支持部材)18と、制御手段(制御装置)19とを有するものである。
【0025】
排出海水11は、例えば、海20から取水した海水を火力発電所、原子力発電所等の発電プラントの復水器の冷却水として用い、復水器で熱交換されて温められた温排水であり、復水器などの放水管21から海20に向けて排出される使用済の海水である。
【0026】
放水路12には堰22が設けられ、放水路12の水面の高さは、復水器の方が海域側よりも高くなるように形成され、海20の潮位の変動を受けないようにしている。
【0027】
放水路12には、排出海水11が海に向けて排出されるまでの間に、排出海水11には泡23が多量に発生し、泡23を同伴した排出海水11が海に向けて流れている。泡23は、排出海水11が堰22を越えて下流側に流れ落ちた際に排出海水11が空気を巻き込むことで生じる泡や、界面活性剤などの化学薬品、微生物や生物死骸などの汚染物、水中の藻類や細菌、無機物や有機物の微粒子、多糖類、脂肪等の両親媒性生体高分子などの様々な原因により生じている泡などがある。空気を巻き込むことで生じる泡のほとんどは放水路12の途中で消泡するが、汚染物等に起因して生じた泡は、水と水以外の物質(化学薬品や汚染物、水中の藻類や細菌、無機物や有機物の微粒子、多糖類、脂肪等の両親媒性生体高分子)が攪拌されたときに曝気され、いったん沈んだ泡が浮上する際に加圧浮上することによって気泡の周囲に吸着することから界面活性剤としての機能を果たし、気泡が割れにくくなっている。また、こうした泡23に対しては、物理的な力を加えた場合でも、破泡、消泡せず、余計な泡を生じることが多い。すなわち、小さな泡が放水路12の下部から上昇する過程で排出海水11中や放水路12の底部に堆積した汚泥などの汚濁成分が泡に巻き込まれることで、化学薬品や汚染物、水中の藻類や細菌、無機物や有機物の微粒子、多糖類、脂肪等の両親媒性生体高分子などを多く取り込み、泡の中に更に小さい泡が多数存在した状態の泡を形成することが考えられる。これにより、泡23の皮膜が厚く、強固となる結果、気泡が割れにくくなり、破泡、消泡し難くなっている。そのため、化学薬品や汚染物等に起因して生じた泡は、放水路12の排出口まで排出海水11の表面に着色した状態で浮遊している場合が多い。
【0028】
放水路12の下流側の放水路12と海域との境近傍には、泡22を同伴した排出海水11の表面近傍の流れを遮る浮体(フロート)23が係留して設けられている。フロート24は放水路12の排出海水11の流れ方向と略直交する向きに複数設けられており、放水路12を流れる排出海水11の海水表層に浮遊する泡23を、フロート24で止めて排出海水11に同伴して海域に拡散するのを抑制するようにしている。
【0029】
フロート24同士は、例えば、紐等により各々連結されており、フロート24の数は、放水路12の幅大きさ等により調整される。また、発生する泡23に応じて、フロート24の高さや、水没量を適宜調整できるようにしてもよい。
【0030】
フロート24を形成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、発泡ポリスチレン等の有機系樹脂などを用いることが好ましい。消泡装置14として薬剤噴霧装置を用いて排出海水11に同伴する泡23を消泡する場合、フロート24の表面に酸が付着することで、フロート24の表面に水垢や微生物が付着するのを抑制し、表面の汚染を抑制できると共に、樹脂と泡23とが接触することで破泡作用が発揮され、泡23の消泡効果を促進することができる。また、フロート24からの有害物質溶出が無いため環境水域(海、湖沼、河川等)を汚染することも抑制することができる。
【0031】
一対の測定部15a、15bは、一対の発光部25a、25bと、一対の受光部26a、26bとを有するものである。図4に示すように発光部25aは海20に向けて光27を照射し、発光部25bは放水路12を流れる排出海水11に向けて光27を照射する。受光部26aは発光部25aから海20に照射して反射した光(反射光)28を受光し、受光部26bは発光部25bから排出海水11に照射して反射した光(反射光)28を受光する。
【0032】
発光部25a、25bとしては、光を出力できるものであればよく、例えば、レーザーダイオード(Laser Diode:LD)や発光ダイオード(Light-Emitting Diodes:LED)等の光源を有して構成されるものが挙げられる。また、発光部25a、25bから照射する光27の種類には特に制限はないが、LED等を用いる場合には白色光等などが好適に用いられる。また、受光部26a、26bとしては、例えば、フォトディテクタ(Photo Detector:PD)や電荷結合素子(Charge-Coupled Device:CCD)等の固体撮像素子等が用いられる。また、発光部25a、25b及び受光部26a、26bとしては、公知の反射型フォトセンサ等を用いるようにしてもよい。
【0033】
発光部25bは泡23の浮遊している排出海水11に向けて光27を照射して、排出海水11で反射した反射光28を受光部26bで受光する。このとき、発光部25bから照射される光27は泡23、排出海水11で散乱するため、受光部26bで受光される反射光28の光量は微少量である。一方、発光部25aは泡23のない海面に向けて光27を照射して、海面で反射した反射光28を受光部26aで受光する。受光部26aで受光される反射光28は、受光部26bで受光される反射光28の光量よりも多くなる。よって、受光部26a、26bで受光される光量の差から排出海水11に泡23が浮遊しているか否かを検知することができる。
【0034】
また、本実施例においては、発光部25a、25bは、光源を有して構成されているが、本実施例は、これに限定されるものではなく、発光部25a、25bは発光源を別途設け、光ファイバー17は、発光源からの光を測定部15a、15bに伝送するようにしてもよい。これにより、発光源からの光を光ファイバー17を介して発光部25a、25bに伝送し、発光部25a、25bから排出海水11、海20に向けて光27を照射することができる。
【0035】
支持部材18は、測定部15a、15bを放水路12及び海20の上に支持するためのものである。支持部材18は、放水路12から垂直に伸びる支持部18aと、支持部18aの上端部から測定部15a、15bを放水路12及び海20の上で保持する保持部18bとを有する。支持部18aは、保持部18bを排出海水11の水面と、海20とから所定の高さの位置に支持できるように適宜任意の高さとすることができる。保持部18bは、支持部18aの上端部から放水路12と海20の両方に延びている。これにより、測定部15a、15bは、各々放水路12及び海20の上に位置するように設けることができる。
【0036】
支持部18aは、放水路12を排出海水11の流れ方向の前後に移動可能となるように設けてもよい。これにより、フロート24が排出海水11の流れに沿って、支持部材18の設けられている位置から前後してもフロート24の位置に応じて容易に調整することができる。
【0037】
光ファイバー17は、測定部15a、15bで受光された反射光28をセンサ16に伝送する。受光部26a、26bで受光された反射光28の信号は光ファイバー17を介してセンサ16に伝送される。
【0038】
センサ16は、受光部26a、26bで受光された反射光28の信号を検知する。センサ16は、受光部26a、26bから伝送された反射光28の信号を制御手段19に伝達する。
【0039】
センサ16は、反射光28の信号の情報を無線で制御手段19に送信するようにしているが、これに限定されるものではなく、センサ16は、反射光28の信号の情報を光ファイバーなどを用いて制御手段19に送信するようにしてもよい。
【0040】
制御手段19は、センサ16で検知された受光部26a、26bの反射光28の光量を対比して、受光部26a、26bで受光された反射光28の光量の対比結果から排出海水11に泡23が浮遊しているか否かを求める。
【0041】
よって、発光部25a、25bと、受光部26a、26bとを用いて、海20の海面から反射される反射光28と、泡23の浮遊している排出海水11の表面から反射される反射光28とを検知して対比し、各々の光量の差を求めることにより、放水路12のフロート24の近傍に泡23があるか否かを求めることができる。また、海20が干潮、満潮により海面の高さが変動する場合でも、発光部25a、25bと、受光部26a、26bとは、支持部材18により海面より所定の高さにあり、海面の高さの変動の影響を受けることはない。そのため、本実施例に係る使用済排出海水の泡監視装置13を用いれば、海面の高さの変動の影響を受けることなく、通年で安定してフロート24近傍で排出海水11に泡23が浮遊しているか否かを求めることができる。
【0042】
制御手段19は、測定部15a、15bの測定結果に基づく判断結果を監視室のモニタ(表示手段)29に伝達し、モニタ29は制御手段19の判断結果に基づいて放水路12のフロート24近傍の排出海水11に泡23が浮遊しているか否かを表示する。
【0043】
これにより、放水路12のフロート24近傍の排出海水11に泡23が浮遊しているか否かは、モニタ29で放水路12の外部から作業員は容易に監視することができる。
【0044】
また、本実施例では、表示手段としてモニタ29を用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、警告灯を点灯したり、警報を発生したり、ブザー、サイレンを鳴動させたり、回転灯を回転させるなどでもよい。
【0045】
よって、本実施例に係る使用済排出海水の泡監視装置13を放水路12の路外に設け、モニタ29に制御手段19の判断結果を表示することにより、放水路12に放出される排出海水11に同伴する泡23を容易に監視することができる。
【0046】
制御手段19で泡23が検知されたら、消泡装置14により泡23の消泡処理を行う。本実施例では、消泡装置14は、薬剤を排出海水11に噴霧する薬剤噴霧装置である。消泡装置14は、薬剤31の薬液を噴霧するスプレー32と、薬液供給ライン33と、薬剤タンク34とを有するものである。スプレー32から排出海水11に薬剤31を供給し、排出海水11中の微生物を殺菌する。
【0047】
薬剤31としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、オゾン、過酸化水素水などが挙げられる。消泡装置14は、その先端のスプレー32からNaClOが5ppm〜10ppm相当分となるように散布する。また、オゾンが気体の場合にはオゾンを吹きつけるようにしてもよい。
【0048】
排出海水11に浮遊している泡23は、水中の藻類や細菌、多糖類、脂肪等の両親媒性生体高分子が気泡の周囲に吸着し、界面活性剤としての機能を果たす結果、気泡が割れにくくなっている。そこで、消泡装置14より薬剤31を排出海水11に噴霧することで、例えば藻類や、細菌の殺菌が促進され、この藻類や細菌等の存在に起因する泡の破泡抑止性能を低下させ、消泡が促進される。これにより、微生物由来に起因し、破泡し難い汚濁泡に対して、薬剤処理により、効果的に消泡処理がなされる。
【0049】
また、制御手段19は、測定部15a、15bで測定された測定結果に基づいて、消泡装置14を用いて排出海水11に浮遊している泡23を消泡することが好ましい。制御手段19は、泡23の発生量が所定量以上と判断した場合に、消泡装置14を用いて薬剤31をフロート24近傍の排出海水11に噴霧し、排出海水11に浮遊している泡23を消泡する。これにより、薬剤31を無駄に消費することなく、効率よく排出海水11に浮遊している泡23の消泡処理を施すことができる。
【0050】
本実施例においては、消泡装置14として薬剤噴霧装置を用いているが、本実施例はこれに限定されるものではなく、例えば、高温ガスを噴射する高温ガス噴射装置などを用いてもよい。
【0051】
よって、本実施例に係る使用済排出海水の排出システム10によれば、使用済の排出海水11の放水路12に本実施例に係る使用済排出海水の泡監視装置13を設け、放水路12に放出される排出海水11に同伴した泡23を安定して連続して監視することができる。このため、昼夜を通じて消泡装置14により、排出海水11の表面に浮遊している泡23に対して、迅速かつ確実に効率よく消泡処理を施すことができるため、海20に泡23が放流するのを抑制することができる。
【0052】
また、従来のように泡23を陸上に回収し、陸上に設けた泡処理設備で処理する場合には、泡23の残骸は産業廃棄物として別途処理する必要があるため、泡23の処理設備を別途設置する必要があり、ランニングコストが上昇すると共に、廃棄物としての処理コストも嵩むこととなる。これに対し、本実施例に係る使用済排出海水の排出システム10では、排出海水11に浮遊している泡23をそのまま破泡させているため、直接、海20へ放出することができ、泡23を処理するために要する泡処理設備の設置コストの低廉及びランニングコストの大幅な削減を図ることが可能となる。
【0053】
本実施例においては、排出海水11に同伴した泡23がフロート24で海20に放流するのを防止するようにし、フロート24でせき止められている泡23が浮遊している排出海水11から反射される反射光28を受光部26a、26bで受光し、センサ16で検知するようにしているが、本実施例はこれに限定されるものではなく、放水路12に設けられている堰に滞留する泡23が浮遊している排出海水11から反射される反射光を一対の受光部26a、26bで受光するようにしてもよい。
【0054】
本実施例においては、制御手段19など本実施例に係る使用済排出海水の排出システム10において用いられる装置には、一般の電源部41と、補助電源部として太陽光発電設備42とから電気を供給するようにしている。太陽光発電設備42は、発電部として太陽光から電力を得る太陽光発電パネル43と、発電された電力を充電する充電部44とを有する。充電部44としては、例えば、二次電池(充電池)、リチウムイオン充電池、ニッケル水素充電池等を挙げることができる。
【0055】
昼間に太陽光発電パネル43で発電した電気は充電部44に充電され、充電しておいた電気は夜間に制御手段19の運転用などの電気として用いる。これにより、昼夜を通して安定して効率よく節電しつつ本実施例に係る使用済排出海水の排出システム10において用いられる装置に電気を供給することが可能となる。
【0056】
本実施例において、発電部には、自然エネルギーとして太陽光から発電する太陽光発電パネル43を用いているが、これに限定されるものではない。発電部は、自然エネルギーとして太陽光以外に、風力、水力などから電力を得るようにしてもよい。発電部として、例えば、風力から電力を得る場合には風車が用いられ、水力から電力を得る場合には水車が用いられる。
【0057】
例えば、風力を用いて電力を得る場合には、昼間に風車で発電した電気を充電部44に充電し、水力を用いて電力を得る場合には、水車で発電した電気を充電部44に充電する。そして、夜間に充電部44に充電しておいた電気を制御手段19など本実施例に係る使用済排出海水の排出システム10において用いられる装置の動力用の電気として用いる。これにより、本実施例に係る使用済排出海水の排出システム10に電気を昼夜を通して安定して効率よく供給することができるため、節電を図りつつ効率よく運転することが可能となる。また、使用済排出海水の泡監視装置13は主に沿岸部に設置されることから、太陽光発電パネル43、風車、水車などを併用することが可能である。
【0058】
本実施例においては、排出海水11として、火力発電所、原子力発電所等の発電プラントの復水器等から排出される使用済海水に同伴される泡を監視し、処理する場合について説明したが、本実施例はこれに限定されるものではなく、海水脱硫設備で用いた使用済の排出海水、熱交換器等から排出される排水、河川に排出される排水等についても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 使用済排出海水の排出システム
11 排出海水
12 放水路
13 使用済排出海水の泡監視装置
14 消泡装置
15a、15b 測定部
16 検知部(センサ)
17 光送電手段(光ファイバー)
18 支持部材(支持手段)
18a 支持部
18b 保持部
19 制御手段
20 海
21 放水管
22 堰
23 泡
23 浮体(フロート)
24 放水管
25a、25b 発光部
26a、26b 受光部
27 光
28 反射光
29 モニタ(表示手段)
31 薬剤
32 スプレー
33 薬液供給ライン
34 薬剤タンク
41 電源部
42 太陽光発電設備
43 太陽光発電パネル
44 充電部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済の排出海水を放水する放水路の流路上と海面上とに設けられ、前記排出海水と海とに向けて照射した光の反射光を受光する一対の測定部と、
前記一対の測定部で受光された光量を検知する検知部と、
前記一対の測定部で受光された光を前記検知部に伝達する光送電手段と、
前記一対の測定部を前記放水路及び海面上に支持するための支持部材と、
前記一対の測定部の受光量の対比結果から前記排出海水に泡が浮遊しているか否かを求める制御手段と、
を有し、
前記一対の測定部は、前記排出海水と前記海とに向けて光を照射する一対の発光部と、前記一対の発光部から前記排出海水及び前記海に照射して反射した反射光を受光する一対の受光部と、
を有することを特徴とする使用済排出海水の泡監視装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御手段の判断結果に基づいて前記泡の有無を表示する表示手段を有することを特徴とする使用済排出海水の泡監視装置。
【請求項3】
使用済の排出海水を海に放水する排水路と、
請求項1又は2の使用済排出海水の泡監視装置と、
前記排出海水に浮遊している泡を消泡する消泡装置と、
を有することを特徴とする使用済排出海水の排出システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記放水路に前記排出海水に浮遊している泡の拡散を抑制するための1つ以上の浮体を有することを特徴とする使用済排出海水の排出システム。
【請求項5】
請求項3又は4において、
前記制御手段は、前記一対の測定部の受光量の対比結果に基づいて前記泡の発生量が所定量以上となったら、前記消泡装置を用いて前記排出海水に浮遊している前記泡を消泡することを特徴とする使用済排出海水の排出システム。
【請求項6】
使用済の排出海水を放水する放水路を流れる前記排出海水と、海に向けて一対の発光部から照射して反射した反射光を一対の受光部で受光し、
前記反射光を光送電手段を介して検知部に伝達し、
前記検知部で前記一対の受光部で受光された光量を検知し、
前記一対の受光部で受光された反射光の受光量を対比して前記排出海水に泡が浮遊しているか否かを求めることを特徴とする使用済排出海水の泡監視方法。
【請求項7】
請求項6の使用済排出海水の泡監視方法により前記排出海水に泡が浮遊しているか否かを判断し、前記排出海水に前記泡が浮遊している場合には、消泡装置を用いて前記排出海水に浮遊している前記泡を消泡することを特徴とする使用済排出海水の排出処理方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記排出海水に泡が浮遊しているか否かを判断した判断結果に基づいて、前記排出海水に浮遊している前記泡の量が所定量以上となったら、前記消泡装置を用いて前記排出海水に浮遊している前記泡を消泡することを特徴とする使用済排出海水の排出処理方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−36786(P2013−36786A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171245(P2011−171245)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】