説明

便器排水路の吸気装置

【課題】便器本体の設置場所や使用状況にかかわらず、便器洗浄を良好に行なうことができる便器排水路の吸気装置を提供する。
【解決手段】便器排水路5の吸気装置20は、ハウジング30H内に設置時の上下方向で移動可能に第1隔膜31が設けられ、第1隔膜31によって上側の第1室32と下側の第2室33とに区画され、第2室33が便器排水5路に連通されている吸引タンク30を備えている。また、この吸気装置20は、第1隔膜31を電磁力によって上方向に移動させる電磁式駆動装置40を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便器排水路の吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図7に従来の便器排水路の吸気装置が開示されている。この吸気装置は吸引タンク及び水圧式駆動装置を備え、便器本体の水封部の下流側に連なる便器排水路から空気を吸引するものである。
【0003】
吸引タンクは、ハウジング内に設置時の上下方向で移動可能に第1隔膜が設けられ、第1隔膜によって上側の第1室と下側の第2室とに区画されている。吸引タンクの第2室は便器排水路に連通されている。水圧式駆動装置は、水道水が給水されることにより上方向に移動する第2隔膜と、第2隔膜の上面に取り付けられ、先端が第1隔膜に接続された棒状部材とを有している。
【0004】
この吸気装置は、水圧式駆動装置に水道水が給水されると、第2隔膜が上方向に移動し、棒状部材が第1隔膜を上方向に押し上げ、便器排水路の空気が吸引タンクの第2室に吸引される。このため、便器排水路が洗浄水で満水になり、サイホン作用が発生する。よって、少ない洗浄水でもサイホン作用を発生させることができ、便器本体外へ汚物を排出することができる。
【0005】
【特許文献1】特開平5−311719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の吸気装置では、便器本体が設置される地域、建物、階等の設置場所や、便器本体が使用される時間帯等の使用状況が相違すると、水道水の単位時間当たりの給水量等が変化してしまうため、第2隔膜の上方向への移動速度や移動量が変化してしまう。すると、棒状部材が第1隔膜を上方向に押し上げる速度等が変化し、第2室による便器排水路の空気の吸引状態がばらつき、便器洗浄が良好に行われないおそれがある。
【0007】
つまり、第1隔膜が上方向に押し上げられる速度が速すぎると、便器本体に洗浄水が充分に供給されていない状態で第2室が便器排水路から空気を吸引することになり、便器排水路を洗浄水で満水にすることができず、サイホン作用を発生させることができない。また、第1隔膜が上方向に押し上げられる速度が遅すぎたり、移動量が少なかったりすると、便器排水路からの第2室による空気の吸引力が弱くなり、便器排水路を洗浄水で満水にすることができず、やはりサイホン作用を発生させることができない。このようにサイホン作用が発生しないと、汚物が便器本体外へ排出されず、便器洗浄が良好に行なわれないおそれがある。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、便器本体の設置場所や使用状況にかかわらず、便器洗浄を良好に行なうことができる便器排水路の吸気装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の便器排水路の吸気装置は、便器本体の水封部の下流側に連なる便器排水路から空気を吸引する便器排水路の吸気装置において、
ハウジング内に設置時の上下方向で移動可能に第1隔膜が設けられ、該第1隔膜によって上側の第1室と下側の第2室とに区画され、該第2室が前記便器排水路に連通されている吸引タンクと、
該第1隔膜を電磁力によって上方向に移動させる電磁式駆動装置とを備えていることを特徴とする。
【0010】
この便器排水路の吸気装置では、便器洗浄を行う際、電磁式駆動装置によって所定のタイミングの下、所定の速度かつ所定の移動量だけ、第1隔膜を上方向に移動させることができる。このため、便器排水路からの空気の吸引状態がばらつかず、便器排水路が確実に洗浄水で満水になるため、サイホン作用が確実に発生して汚物を便器本体外へ排出することができる。
【0011】
したがって、本発明の吸気装置は、便器本体の設置場所や使用状況にかかわらず、便器洗浄を良好に行うことができる。
【0012】
本発明の吸気装置において、電磁式駆動装置は、モーターを利用したもの、ソレノイドを利用したもの、電磁石を利用したもの等、種々のものを採用することができる。
【0013】
本発明の吸気装置において、電磁式駆動装置は、軸方向に延びる筒状のケース本体と、ケース本体内に軸方向に移動可能に収納された移動体と、ケース本体の一端に設けられ、内蔵するモーターによって移動体を移動させる移動装置とを有し得る。そして、ケース本体内には、移動体の移動によって容積が変化し、連通管によって第1室に連通されている気密室が形成され得る。
【0014】
この場合、電磁式駆動装置を吸引タンクから離して配置することができるため、電磁式駆動装置を便器本体の便鉢後方等の空いたスペースに配置することができ、スペースを有効に利用することができる。また、電磁式駆動装置を吸引タンクの上方に配置しないことにより、ローシルエットの洋風水洗式便器を実現することができる等、洋風水洗式便器の設計の自由度が高まる。
【0015】
本発明の吸気装置において、移動体は、ケース本体の内周面に沿って軸方向に延びる筒部と、筒部の一端から外方に延びてケース本体の内周面に固定される鍔部と、筒部の他端から内方に延びる中央部とからなる第2隔膜と、
中央部に取り付けられ、中央部がケース本体の軸方向と直交する状態を保ちながら軸方向に移動するように第2隔膜を案内するガイドとを有し得る。
【0016】
この場合、移動体がスムーズにケース本体内を移動できるため、電磁式駆動装置は吸引タンクの第1室内の空気を良好に吸引することができる。このため、吸引タンクは便器排水路から安定的に空気を吸引することができ、サイホン作用が安定して発生する。また、第2隔膜は、鍔部がケース本体の内周面に固定されており、移動体が移動する際に、ケース本体の内周面等に対して摺動するものではない。このため、第2隔膜は摩耗し難く、気密室の気密性が長期にわたって保たれる。よって、この電磁式駆動装置は、優れた耐久性を呈することができる。また、電磁式駆動装置の部品交換等のメンテナンスの手間を少なくすることができる。
【0017】
本発明の吸気装置において、電磁式駆動装置は、第1隔膜の中央部に連結され、上下方向に延びる連結体と、吸引タンクのハウジングに固定され、連結体を上方向へ引き上げるモーターとを有していることもできる。
【0018】
この場合、吸気装置の構造が簡略化されるため、吸気装置の小型化を図ることができる。また、連結体により、直接、第1隔膜を上方向に移動させることができるため、第1隔膜の移動速度や移動量を精度よく実現することができる。つまり、便器本体の形状や便器排水路の容量等の種類に応じ、便器排水路からの空気の吸引速度や吸引量を設定すれば、その吸引速度や吸引量を精度よく実現できるため、複数種類の洋風水洗式便器に対してこの吸気装置を容易に適用することができる。
【0019】
本発明の吸気装置において、モーター等を制御する制御装置を備え得る。その制御装置は、モーターの駆動タイミング、回転速度等を制御し、第1隔膜の移動タイミング、移動速度、移動量等を変化させる。
【0020】
この場合、例えば、吸気装置による便器排水路からの空気の吸引速度を変化させることができるため、便器洗浄をより良好に行なうことができる。より具体的には、吸気装置が便器排水路からの空気の吸引を開始してから特定時間が経過するまでは第1隔膜の移動速度が早くなるようにモーターを制御し、吸気装置の便器排水路からの空気の吸引力を強くする。その後、第1隔膜の上昇速度が遅くなるようにモーターを制御し、吸気装置の便器排水路からの空気の吸引力を弱くする。このようにすると、吸気装置が便器排水路からの空気の吸引を開始してから特定時間を経過するまでの間にサイホン作用を確実に発生させて重い汚物を便器本体外へ排出し、その後はサイホン作用を継続させて軽い汚物を便器本体外へ排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の便器排水路の吸気装置を洋風水洗式便器に具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0022】
図1及び図2に示すように、実施例1の洋風水洗式便器は、便器本体1と、便器洗浄装置Sとを備えている。なお、便座及び便蓋の図示は省略する。
【0023】
便器本体1は、便鉢2の上部内周にリム3を有している。また、便器本体1には便鉢2の下端から上方向に延びる上昇流路2Aが形成され、便鉢2の下方には水封部4が形成されている。便器本体1の上昇流路2Aは接続管と接続されており、接続管内は便器排水路5、滞留部6及び排水口7が形成されている。
【0024】
便器洗浄装置Sは、洗浄水供給装置10と便器排水路5の吸気装置20とを備えている。
【0025】
洗浄水供給装置10は、便器本体1が据え付けられたトイレルームの床面又は壁面から引き出された水道管に取り付けられた止水栓V1に接続され、便器本体1のリム3に連通する導水管11を有している。導水管11には、上流側から順に止水弁及びストレーナを内蔵するストレーナ装置12、定流量弁13、開閉弁V2及びバキュームブレーカ14が設けられている。
【0026】
便器排水路5の吸気装置20は、ハウジング30H内に設置時の上下方向で移動可能な第1隔膜31が設けられた吸引タンク30と、第1隔膜31を上方向に移動させる電磁式駆動装置40とを備えている。吸引タンク30及び電磁式駆動装置40は、図示しないが、便器本体1の側壁に囲まれ、便鉢2の後方に形成された収納空間に配置される。
【0027】
吸引タンク30の内部は、第1隔膜31によって上側の第1室32と下側の第2室33とに区画されている。第1室32及び第2室33は気密性を有している。第1室32は、連通管50を介して後述する電磁式駆動装置40の気密室47に連通されている。また、第2室33は、吸引管60を介して便器排水路5に連通されている。
【0028】
電磁式駆動装置40は、上下方向(軸方向)に延びる筒状のケース本体41と、ケース本体41内に上下方向に移動可能に収納された移動体42と、ケース本体41の下端に設けられ、内蔵するモーター46Mによって移動体42を上方向に移動させる移動装置46とを有している。ケース本体41内には、移動体42及び移動装置46に囲まれ、移動体42の移動によって容積が変化する気密室47が形成されている。
【0029】
ケース本体41は、上端面に空気が出入可能な開口41Aが形成されている。開口41Aには、ケース本体41内にゴミ等が侵入しないようにフィルターが取り付けられている。また、上下方向に延びる筒状のケース本体41は、下端が開口している。この開口には、移動装置46の上部が下方から挿入され、移動装置46の上部がケース本体41内に収納されている。ケース本体41と移動装置46とはパッキンPを介在させて気密性を保つように接続されている。
【0030】
移動体42は、可撓性を有する第2隔膜43と、第2隔膜43の中央部43Cの下面に取り付けられた第1ガイド44と、第2隔膜43の中央部43Cの上面に取り付けられた第2ガイド45とから構成されている。第2隔膜43は、ケース本体41の内周面に沿って上下方向に延びる筒部43Aと、筒部43Aの一端から外方に延びてケース本体41の内周面に挟持されて固定される鍔部43Bと、筒部43Aの他端から内方に延びる中央部43Cとから形成されている。
【0031】
第1ガイド44は、第2隔膜43の中央部43Cの下面に取り付けられる上壁44Aと、上壁44Aの周縁から下方に延び、ケース本体41の内周面に沿って下方に延びる側壁44Bと、側壁44Bの下端の外周縁から外方に延びるフランジ44Cとから形成された下向きのカップ形状とされている。上壁44Aは、第2隔膜43の中央部43Cより一回り小さい相似形状とされている。この第1ガイド44は、下降した状態では、ケース本体41内の下部に位置する。
【0032】
第2ガイド45は、第2隔膜43の中央部43Cの上面に取り付けられる底壁45Aと、底壁45Aの周縁から上下方向に延び、ケース本体41の内周面に沿った側壁45Bとから形成されている。底壁45Aは、第1ガイド44の上壁44Aより大きい相似形状とされている。
【0033】
この移動体42は、第1ガイド44及び第2ガイド45によりケース本体41内をスムーズに上昇、下降することができる。つまり、移動体42が上昇、下降する際には、第1ガイド44の側壁44B及びフランジ44Cと、第2ガイド45の側壁45Bとにより、移動体42がケース本体41の内周面に沿って移動する。このため、第2隔膜43の中央部43Cが水平状態(ケース本体41の軸方向と直交する状態)を保ちながら上下方向に移動可能である。
【0034】
また、移動体42が上昇する際、図2に示すように、第2隔膜43は、第1ガイド44の側壁44Bの外周面を被覆するように変形する。一方、移動体42が下降する際、図1に示すように、第2隔膜43は、第2ガイド45の側壁45Bの下端周縁に押えられながら変形する。このため、第2隔膜43がケース本体41の内周面に対して摺動しないため、第2隔膜43は摩耗し難く、気密室47の気密性が長期にわたって保たれる。よって、この電磁式駆動装置40は、優れた耐久性を呈することができる。また、第2隔膜43の交換等の電磁式駆動装置40のメンテナンスの手間を少なくすることができる。
【0035】
また、移動体42が下降した際、図1に示すように、第1ガイド44の内側に移動装置46の上部が収納される。このため、電磁式駆動装置40の小型化を図ることができ、便鉢2の後方に設けられた収納空間に電磁式駆動装置40を容易に配置することができる。
【0036】
移動装置46は、モーター46Mと、モーター46Mにより回転するネジ軸46Aと、ネジ軸46Aに外嵌したナット部を下端に有し、上端が移動装置46の上方から突出して円盤状の押上板46Cが固定された棒状体46Bとを有している。押上板46Cの上面は移動体42に固定されていない。このため、移動体42は、押上板46Cが上昇すると上方向へ押上げられ、押上板46Cが下降すると自重により下降する。
【0037】
ケース本体41の側壁には連通管50が接続され、気密室47は連通管50を介して吸引タンク30の第1室32に連通されている。連通管50の中間部には、常時は大気に開放しており、電磁式駆動装置40の移動体42が移動する際、閉弁する開閉弁48が設けられている。
【0038】
電磁式駆動装置40は吸引タンク30から離して配置することができる。このため、電磁式駆動装置40を便器本体1の便鉢2の後方に設けられた収納空間の空いたスペースに配置することができ、スペースを有効に利用することができる。また、電磁式駆動装置40を吸引タンク30の上方に配置しないことにより、ローシルエットの洋風水洗式便器を実現することができる。
【0039】
移動体42の中央部の上面には、手動で移動体42を上方向に移動させることのできる引上げ用の鎖49の一端が取り付けられており、鎖49の他端はケース本体41の上端面から外部に引き出されている。
【0040】
以上の実施例1の洋風水洗式便器の便器洗浄は以下のように行われる。
【0041】
使用者が図示しない洋風水洗式便器の便器洗浄スイッチを操作すると、先ず、洗浄水供給装置10の開閉弁V2が開弁される。これにより導水管11から洗浄水がリム3に供給され、便鉢2の内面に沿って旋回しながら流れ落ち、便鉢2内に旋回流が形成される。この旋回流により、汚物が便鉢2の中央側に集められるとともに、トイレットペーパーがほぐれて洗浄水となじみ、水中に分散するようになるので、後にサイホン作用が発生すると、汚物及びトイレットペーパーがスムーズに便器本体1外へ排出される。洗浄水が便鉢2に供給され、便鉢2内の水位が充分に高くなると、電磁式駆動装置40が駆動される。つまり、図2に示すように、移動装置46のモーター46Mが駆動され、棒状体46Bの押上板46Cが所定の速度で所定の高さまで上昇し、移動体42を所定の高さまで押し上げる。これにより、気密室47の容積は所定の速度で所定の量に拡大する。この際、連通管50に設けられた開閉弁48は閉弁しており、連通管50を通じて吸引タンク30の第1室32内の空気が気密室47側に移動する。
【0042】
第1室32内の空気が気密室47側に移動することにより、第1隔膜31が上方向に所定の速度で所定の高さまで上昇する。これにより、便器排水路5内から空気が第2室33内に吸引される。この時には、滞留部6内に上昇流路2Aから溢れた洗浄水が流入し、便器排水路5内と排水口7側との間は完全に封鎖されているため、便器排水路5内が洗浄水で満水になり、サイホン作用が発生し、汚物が便器本体1外へ排出される。
【0043】
サイホン作用が発生し、所定時間が経過した後、モーター46Mを逆回転させ、棒状体46Bの押上板46Cを下降させる。すると、移動体42は自重により下降し、気密室47内の空気が連通管50を通じて吸引タンク30の第1室32側に移動するため、第1隔膜31が下降する。この後、連通管50に設けられた開閉弁48は大気に開放され、気密室47内及び第1室32内は大気圧とされるため、移動体42及び第1隔膜31が下降途中で止まることなく、最下点まで確実に下降する。
【0044】
第1隔膜31が下降すると、第2室33から便器排水路5内に空気が排出されるため、便器排水路5を洗浄水で満水状態に維持することができなくなり、サイホン作用が終了する。その後、便鉢2内に所定の水位を有する水封部4が形成されるように洗浄水供給装置10から洗浄水が供給される。
【0045】
このように、実施例1の吸気装置20では、便器洗浄を行う際、モーター46Mによって所定のタイミングの下、所定の速度かつ所定の移動量だけ、押上板46Cを上昇させることにより、第1隔膜31を所定のタイミングの下、所定の速度かつ所定の移動量だけ上方向に移動させることができる。このため、便器排水路5からの空気の吸引状態がばらつかず、便器排水路5が確実に洗浄水で満水になるため、サイホン作用が確実に発生して汚物を便器本体1外へ排出することができる。また、吸気装置20によって、便器排水路5から空気を吸引することにより、少ない洗浄水でもサイホン作用を発生させ、汚物を便器本体1外へ排出することができるため、洗浄水の節水を図ることができる。
【0046】
したがって、実施例1の吸気装置20は、便器本体1の設置場所や使用状況にかかわらず、便器洗浄を良好に行なうことができる。
【0047】
また、停電等により、モーター46Mを駆動させることができない場合には、手動で開閉弁V2を開弁した後、手動で鎖49を引き上げることにより、移動体42を上方向に移動させる。これにより、吸引タンク30の第1隔膜31が上方向に移動して便器排水路5から空気が吸引されるため、便器排水路5が洗浄水で満水になりサイホン作用が発生し、汚物を便器本体1外へ排出することができる。
【実施例2】
【0048】
実施例2の洋風水洗式便器は、便器本体1と、便器洗浄装置Sとを備えている。便器洗浄装置Sは、実施例1と同じ構成を有する洗浄水供給装置10と、便器排水路5の吸気装置200とを備えている。図3及び図4には、便器本体1及び便器排水路5の吸気装置200を図示し、便座、便蓋及び実施例1と同じ構成を有する洗浄水供給装置10の図示は省略する。また、実施例1と同一の構成については、詳細な説明は省略する。
【0049】
実施例2の吸気装置200は、ハウジング300H内に設置時の上下方向で移動可能な第1隔膜301が設けられた吸引タンク300と、第1隔膜301を上方向に移動させる電磁式駆動装置400とを備えている。
【0050】
吸引タンク300の内部は、第1隔膜301によって上側の第1室302と下側の第2室303とに区画されている。第2室303は気密性を有している。第1室302は開口300Aを介して大気に開放されている。開口300Aには、第1室302内にゴミ等が侵入しないようにフィルターが取り付けられている。また、第2室303は、吸引管60を介して便器排水路5に連通されている。
【0051】
電磁式駆動装置400は、第1隔膜301の中央部の下面に接着された円盤状の引上げ板401Aに下端が接続され、ラックギアが設けられ、上下方向に延びる連結体401を有している。また、電動式駆動装置400は、ハウジング300Hに固定され、連結体401を上下方向に移動させるピニオンギアを回転駆動するモーター402を有している。
【0052】
実施例2の洋風水洗式便器の便器洗浄は以下のように行われる。
【0053】
実施例1と同様に洗浄水供給装置10から、便鉢2に所定量の洗浄水が供給されて便鉢2内の水位が充分に高くなると、電磁式駆動装置400が駆動される。つまり、図4に示すように、モーター402が駆動され、連結体401が所定の速度で所定の高さまで引き上げられることにより、第1隔膜301が上方向に所定の速度で所定の高さまで移動する。これにより、便器排水路5内から空気が第2室303内に吸引されるため、便器排水路5が洗浄水で満水になり、サイホン作用が発生し、汚物が便器本体1外へ排出される。
【0054】
サイホン作用が発生し、所定時間が経過した後、モーター402を逆回転させ、連結体401を下降させることにより、第1隔膜301も下降する。この際、便器排水路5に第2室303から空気が排出されるため、便器排水路5を洗浄水で満水状態に維持することができなくなり、サイホン作用が終了する。その後、便鉢2内に所定の水位を有する水封部4が形成されるように洗浄水供給装置10から洗浄水が供給される。
【0055】
このように、実施例2の便器排水路5の吸気装置200は、第1隔膜301を連結体401により、直接、上方向に移動させることができるため、便器排水路5からの空気の吸引状態がばらつかず、便器排水路5が確実に洗浄水で満水にすることができるため、サイホン作用が確実に発生して汚物を便器本体1外へ排出することができる。また、吸気装置200によって、便器排水路5から空気を吸引することにより、少ない洗浄水でもサイホン作用を発生させ、汚物を便器本体1外へ排出することができるため、洗浄水の節水を図ることができる。
【0056】
したがって、実施例2の吸気装置200も、便器本体1の設置場所や使用状況にかかわらず、便器洗浄を良好に行なうことができる。
【0057】
また、実施例2の便器排水路5の吸気装置200は、構造が簡略化されるため、小型化を図ることができる。また、連結体401により、直接、第1隔膜301を移動させることができるため、第1隔膜301の移動速度や移動量を精度よく実現することができる。つまり、便器本体1の形状や便器排水路5の容量等の種類に応じ、便器排水路5からの空気の吸引速度や吸引量を設定すれば、その吸引速度や吸引量を精度よく実現できるため、複数種類の洋風水洗式便器に対してこの吸気装置200を容易に適用することができる。
【0058】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨に逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0059】
例えば、第1実施例において、移動体を円柱状のピストンにすることが可能である。この場合、移動体の構造を簡略化することができるため、電磁式駆動装置40を小型化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は洋風水洗式便器に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施例1の便器排水路の吸気装置を備えた洋風水洗式便器の模式図である。
【図2】実施例1の便器排水路の吸気装置を備えた洋風水洗式便器の便器洗浄状態を示す模式図である。
【図3】実施例2の便器排水路の吸気装置を備えた洋風水洗式便器の模式図である。
【図4】実施例2の便器排水路の吸気装置を備えた洋風水洗式便器の便器洗浄状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0062】
1…便器本体
4…水封部
5…便器排水路
20、200…吸気装置
30、300…吸引タンク
30H、300H…ハウジング
31、301…第1隔膜
32、302…第1室
33、303…第2室
40、400…電磁式駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体の水封部の下流側に連なる便器排水路から空気を吸引する便器排水路の吸気装置において、
ハウジング内に設置時の上下方向で移動可能に第1隔膜が設けられ、該第1隔膜によって上側の第1室と下側の第2室とに区画され、該第2室が前記便器排水路に連通されている吸引タンクと、
該第1隔膜を電磁力によって上方向に移動させる電磁式駆動装置とを備えていることを特徴とする便器排水路の吸気装置。
【請求項2】
前記電磁式駆動装置は、軸方向に延びる筒状のケース本体と、該ケース本体内に該軸方向に移動可能に収納された移動体と、該ケース本体の一端に設けられ、内蔵するモーターによって該移動体を移動させる移動装置とを有し、
該ケース本体内には、該移動体の移動によって容積が変化し、連通管によって前記第1室に連通されている気密室が形成されている請求項1記載の便器排水路の吸気装置。
【請求項3】
前記移動体は、前記ケース本体の内周面に沿って前記軸方向に延びる筒部と、該筒部の一端から外方に延びて該ケース本体の内周面に固定される鍔部と、該筒部の他端から内方に延びる中央部とからなる第2隔膜と、
該中央部に取り付けられ、該中央部が該ケース本体の軸方向と直交する状態を保ちながら該軸方向に移動するように該第2隔膜を案内するガイドとを有している請求項2記載の便器排水路の吸気装置。
【請求項4】
前記電磁式駆動装置は、前記第1隔膜の中央部に連結され、上下方向に延びる連結体と、前記吸引タンクの前記ハウジングに固定され、該連結体を上方向へ引き上げるモーターとを有している請求項1記載の便器排水路の吸気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−74303(P2009−74303A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244741(P2007−244741)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】