説明

便器洗浄システム

【課題】 既存の大洗浄流量では洗浄不良が発生していた設置現場に対しても、洗浄不良を起こさせることなく快適に洗浄する。
【解決手段】 リモコン30の特大洗浄スイッチ34を押下すると、特大洗浄信号が送信され上記大洗浄時の動作と同様にスピンドル装置50内部のモータ51が回転する。但し、この場合の通電時間は2.5秒と大洗浄よりも通電時間が長く設定されている為、モータ51の回転によって引上げられ、全開となった排水弁42は開状態が大洗浄時よりも長く保持されて、ロータンク40に貯留されていた洗浄水が便器内へと略全量排水される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動操作もしくはスイッチ操作によりロータンクから水洗便器に洗浄水を供給可能とした便器洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の便器洗浄装置として、特開平11−36405号(特許文献1)では、ロータンクの排水弁の引上げ量を異ならせることにより大洗浄および小洗浄を行なっている。ここで大洗浄は、ロータンクの排水弁に接続されたケーブルをモータの回転により短時間ホールドし、排水弁が完全に浮上するだけの量を引き上げることで行なっており、小洗浄は、大洗浄よりも引上げ量を少なくし、且ホールド時間を長くすることで行なっている。
【特許文献1】特開平11−36405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし上記の便器洗浄装置では、大洗浄のとき常に一定量の洗浄水を排水させるので、例えば便器からの排水配管経路が長かったり、勾配があるような現場では、洗浄不良を発生させ、大便を十分に流しきれないという問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題を解決するために成されたもので、大便器の設置現場の環境によらず確実に便器洗浄が実行できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、第一の発明は、排水弁を内蔵したロータンクに取り付け可能とされ、出力軸の回転により前記排水弁の開動作を実行可能な便器洗浄装置と、洗浄モードに関する制御情報が格納され、前記洗浄モードに基づいた制御信号を前記便器洗浄装置に供給する制御部と、を備えた便器洗浄システムにおいて、前記洗浄モードは、前記排水弁の開時間を異ならせた複数の大便用洗浄を備えてなり、前記制御部は、前記複数の大便用洗浄のうちのいずれかを選択して実行可能としたことを特徴とする。なお、本出願では、既存の大洗浄よりも排水弁の開弁をホールド時間を設けた実行する大洗浄を、特大洗浄と称する。
【0006】
また、上記課題を解決するために、第二の発明は、排水弁を内蔵したロータンクに取り付け可能とされ、出力軸の回転により前記排水弁の開動作を実行可能な便器洗浄装置と、複数の洗浄モードに関する制御情報が格納され、前記複数の洗浄モードのいずれかを設定可能とし、前記設定された洗浄モードに基づいた制御信号を前記便器洗浄装置に供給する制御部と、を備えた便器洗浄システムにおいて、前記複数の洗浄モードのうち少なくとも一つの洗浄モードは、前記排水弁の開時間を異ならせた複数の大便用洗浄を備えることを特徴とする。
【0007】
これらの発明により、既存の大洗浄よりも洗浄水を多く供給することが可能となり、既存の大洗浄では洗浄不良が生じていた設置現場においても、洗浄不良を解消することが出来る。
【0008】
また、前記複数の大便用洗浄は、前記制御部に設けた操作部を特定操作することにより選択可能としたので、洗浄不良を生じた設置現場においてのみ対応することが可能で、新たに専用の洗浄操作部や表示部を設ける必要が無く、また適切な量の洗浄水を供給可能とすることが出来る。
【0009】
更に、操作部を特定操作することにより前記回転時間を変更可能とすれば、設置現場ごとに排水量の微調整が可能となり、節水に貢献することが出来る。また新たに専用の洗浄操作部や表示部を設ける必要が無いためコストの低減とリモコンの小型化が可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、既存の大洗浄の他に、既存の大洗浄よりも開弁時間が長い大洗浄を設けたので、既存の大洗浄流量では洗浄不良が発生していた設置現場に対しても、洗浄不良を起こさせることなく快適に洗浄することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施例について図を基に説明する。図1は便器にロータンクと温水洗浄便座が取付けられた状態の外観図である。便器10の上に、温水洗浄便座20及びロータンク40が載置されている。温水洗浄便座20は、その本体23が有するヒンジ部(図示なし)に便ふた21及び便座22が回動自体に取り付けられ、本体23の上面には、リモコンより送信された信号を受信する受信部24及び動作状態を表わす表示部26が設けられている。また、温水洗浄便座20の本体23は、各種機能部に制御信号を出力する駆動部25を内蔵している。壁には、温水洗浄便座20を操作するリモコン30が取り付けられている。本実施例においては、駆動部25とリモコン30とで、制御部60を構成(図2参照)しており、リモコン30の操作により、制御信号がリモコン30から受信部24を介して駆動部25に伝達され、駆動部25が各種機能部を制御する。
【0012】
図3は温水洗浄便座操作用リモコンの詳細図である。温水洗浄便座20はリモコン30の洗浄用操作スイッチ31を操作することにより洗浄用ノズル(図示しない)が伸出し、お尻洗浄若しくはビデ洗浄等を行なうことが出来る。また、リモコン30の便座・便ふた開閉用の操作スイッチ32を押下することにより便ふた21、便座22の開閉動作が可能である。
【0013】
図4はロータンク40内部の構造図である。ロータンク40は、排水弁41、排水弁41を引上げるための玉鎖42、玉鎖42を介して電動で排水弁41を引上げるスピンドル装置50を備えている。スピンドル装置50は、モータ51、モータ51の回転を伝達するスピンドル軸52、スピンドル軸52に連係して便器洗浄を手動で操作する為のハンドル53、玉鎖42を係止する係止部54、スピンドル装置50を温水洗浄便座20に電気的に接続する為のコード55を備えている。
【0014】
前述した制御部60は、便器10の洗浄形態に合わせてロータンク40から適切な給水量を供給するようにスピンドル装置50の動作を制御してなる、複数の洗浄モードを選択可能に備えている。複数の洗浄モードは、例えば、図5に示すように、モータ51を順方向(CW)に1.0秒回転させる大洗浄、モータ51を順方向(CW)に2.5秒回転させる特大洗浄、モータ51を逆方向(CCW)に1.0秒回転させる小洗浄、の3つの洗浄の組合わせからなる洗浄モード1と、モータ51を順方向(CW)に1.0秒回転させる大洗浄、モータ51を順方向(CW)に2.5秒回転させる特大洗浄、モータ51を順方向(CW)に1.0秒回転させる小洗浄、の3つの洗浄の組合わせからなる洗浄モード2、……、モータ51を逆方向(CCW)に1.0秒回転させる大洗浄、モータ51を逆方向(CCW)に2.5秒回転させる特大洗浄、モータ51を順方向(CW)に4.0秒回転させてホールド時間を稼いだ小洗浄、の3つの洗浄の組合わせからなる洗浄モード6、とから成っている。これらの複数の洗浄モードから、便器の洗浄形態に合った洗浄モードをリモコン30の操作スイッチを特定操作することで選択するのである。
【0015】
ここから、洗浄モード1を選択した場合の洗浄動作について説明する。リモコン30の大洗浄スイッチ33を押下することにより、大洗浄の信号がリモコン30から送信される。この大洗浄信号が便器洗浄装置本体23後部に設けてある受信部24により受信される。そして受信部24により受信された大洗浄信号は、駆動部25にてスピンドル装置のモータを回転させる為の電気信号となって、便器洗浄装置本体23後部に設けてある接続部(図示しない)に接続したコード55よりスピンドル装置50に送られ、モータ51を順方向に回転させる。この際、モータ51への通電時間は1秒間である。そして、このモータ51が回転することにより、減速ギアを介してモータ51に接続されたスピンドル軸52が回転し、スピンドル軸52に装着された係止部54が回転する。最終的に係止部54の回転によって玉鎖42を介して繋がれた排水弁41が全開し、タンク40に貯留された洗浄水が便器内に供給される。なお、このとき、排水弁41の開弁時間が短いので、タンク40に貯留されていた洗浄水が全て排出されることはない。
【0016】
またリモコン30の特大洗浄スイッチ34を押下すると、特大洗浄信号が送信され上記大洗浄時の動作と同様にスピンドル装置50内部のモータ51が順方向に回転する。但し、この場合の通電時間は2.5秒と大洗浄よりも通電時間が長く設定されている為、モータ51の回転によって引上げられ、全開となった排水弁42は開状態が大洗浄時よりも長く保持されて、ロータンク40に貯留されていた洗浄水が便器内へと略全量排水される。この特大洗浄では、排水弁41が本来流すべき洗浄水量を超えた水量を流すものとなる。
【0017】
リモコン30の小洗浄スイッチ35を押下すると、小洗浄信号が送信され上記大洗浄時の動作と同様にスピンドル装置50内部のモータ51が逆方向に回転する。ここで、モータ51に送信される小洗浄信号は、通電時間が1秒、モータ51の回転量は、排水弁41が半開となるように設定されているので、大洗浄よりも少量の洗浄水が便器内に排水される。
【0018】
尚、スピンドル装置50は、上記の様なリモコン30による洗浄操作以外に、ハンドル53を回転させることによって、手動操作が可能である。この場合、特大洗浄を行なうには、大洗浄を行なう方向へハンドル53を回転させ、その回転を任意の時間、保持させれば良い。
【0019】
次に、別の実施例について説明する。本発明は、大洗浄スイッチ33、特大洗浄スイッチ34の両方をリモコンに設けた図3の例に限定されず、図6に示すように一つの大洗浄スイッチ33に大洗浄・特大洗浄の両方の機能を設定し、使用することが出来る。この場合、予め温水洗浄便座20の制御部60に記憶させておいた各洗浄モードの中の大洗浄と特大洗浄どちらかをリモコン30の操作スイッチを特定操作することにより、大便用洗浄として選択設定可能な状態となるよう設定しておく。ここで前記選択設定可能な状態を起動させる方法として、例えばオート開閉スイッチ32と洗浄用操作スイッチ31を同時に1秒間押すことで可能としても良いし、その他の操作で起動可能とするように設定しても良い。この操作により本体23の表示部26が点滅し、選択設定可能になったことを知らせる。
【0020】
次に大洗浄もしくは特大洗浄のどちらかを大便用洗浄として選択する。この場合の操作は例えば、大洗浄を選択する場合は大洗浄スイッチ33を短押しし、特大洗浄を選択する場合は、大洗浄スイッチ33を長押しする。これらの操作により点滅していた本体表示部26が一定時間点灯し、大洗浄スイッチ33に大洗浄もしくは特大洗浄が設定されたことを知らせる。
【0021】
上記の操作によって所望の大便用洗浄が使用可能となり、1つの大洗浄スイッチ33で、大洗浄もしくは特大洗浄を行なうことが出来るようになる。またこれによりリモコン30に大洗浄スイッチ33および、特大洗浄スイッチ34の両方を設ける必要が無くなり、コストの低減とリモコンの小型化が可能になる。また設置現場によって適切な大便用洗浄を設定することによって、快適な洗浄が可能となるばかりでなく、適切な量の洗浄水を供給することが出来る。
【0022】
尚、上記説明において、大洗浄用洗浄は大洗浄、特大洗浄の2モードとしたが、これに限定する必要はなく、例えば異なるホールド時間のモードを制御部60に複数用意しておき、設定可能とすることが出来る。
【0023】
更に本発明では、大洗浄スイッチ33、特大洗浄スイッチ34の両方をリモコンに設けた図6の例の他に、複数の大便用洗浄を使用可能とする別の方法として、大洗浄のホールド時間を任意に変更出来るようにしてもよい。この場合、温水洗浄便座20の制御部60に記憶させておいたスピンドル装置50のモータ51の回転時間を、リモコン30の操作スイッチの何れかを操作することにより、選択設定可能な状態となるよう設定しておく。ここで前記選択設定可能な状態を起動させる方法として、上記のように例えばオート開閉スイッチ32と洗浄用操作スイッチ31を同時に1秒間押すことで可能としても良いし、その他の操作で起動可能とするように設定しても良い。この操作により本体23の表示部26が点滅し、選択設定可能になったことを知らせる。
【0024】
次に大便用洗浄のホールド時間を決定する。この場合の操作は例えば、大洗浄スイッチ33を押下するごとに設定時間が0.1秒刻みに増え、小洗浄スイッチ35を押下するごとに0.1秒刻みに減るようになっている。設定したいホールド時間をリモコン表示部36に表示させ、洗浄スイッチ31を押下することで、点滅していた本体表示部26が一定時間点灯し、ホールド時間が確定となったことを知らせる。
【0025】
上記の操作によって任意に大洗浄のホールド時間を変更することが出来、1つの大洗浄スイッチ33で、複数の大便用洗浄が使用可能となる。また設置現場ごとに適切な大洗浄のホールド時間を設定してあげることによって、快適な洗浄が可能となるばかりでなく、適切な量の洗浄水を供給することが出来る。
【0026】
本発明は、以上説明した実施例が最適な実施形態であるが、発明の主旨を逸脱しない範囲で変形することが可能である。例えば、便器洗浄システムとして洗浄モードを一つしか持たず、その洗浄モードの大便用洗浄として特大洗浄と大洗浄を設定可能な形態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の便器洗浄システムを具備したトイレの外観を示す図である。
【図2】本発明の便器洗浄システムの制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】特大洗浄スイッチを設けたリモコンのスイッチ配置を示す図である。
【図4】ロータンクの内部の構造を示す図である。
【図5】本発明の便器洗浄システムにおける複数の洗浄モードの洗浄動作を示す一覧表である。
【図6】特大洗浄スイッチが無い場合のリモコンのスイッチ配置を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
10 便器
20 温水洗浄便座
21 便蓋
22 便座
23 温水洗浄便座本体
24 受信部
25 駆動部
26 本体表示部
30 リモコン
31 洗浄用操作スイッチ
32 座蓋開閉用操作スイッチ
33 大洗浄スイッチ
34 特大洗浄スイッチ
35 小洗浄スイッチ
36 リモコン表示部
40 ロータンク
41 排水弁
42 玉鎖
50 スピンドル装置
51 モータ
52 スピンドル軸
53 ハンドル
54 係止部
55 コード
60 制御部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水弁を内蔵したロータンクに取り付け可能とされ、出力軸の回転により前記排水弁の開動作を実行可能な便器洗浄装置と、
洗浄モードに関する制御情報が格納され、前記洗浄モードに基づいた制御信号を前記便器洗浄装置に供給する制御部と、を備えた便器洗浄システムにおいて、
前記洗浄モードは、前記排水弁の開時間を異ならせた複数の大便用洗浄を備えてなり、前記制御部は、前記複数の大便用洗浄のうちのいずれかを選択して実行可能としたことを特徴とする便器洗浄システム。
【請求項2】
排水弁を内蔵したロータンクに取り付け可能とされ、出力軸の回転により前記排水弁の開動作を実行可能な便器洗浄装置と、
複数の洗浄モードに関する制御情報が格納され、前記複数の洗浄モードのいずれかを設定可能とし、前記設定された洗浄モードに基づいた制御信号を前記便器洗浄装置に供給する制御部と、を備えた便器洗浄システムにおいて、
前記複数の洗浄モードのうち少なくとも一つの洗浄モードは、前記排水弁の開時間を異ならせた複数の大便用洗浄を備えることを特徴とする便器洗浄システム。
【請求項3】
前記複数の大便用洗浄は、前記制御部に設けた操作部を特定操作することにより選択可能としたことを特徴とする請求項1又は2記載の便器洗浄システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−146567(P2007−146567A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344809(P2005−344809)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】