説明

便器洗浄水供給装置

【課題】給水バルブが吐水状態から止水状態に変わる際にフロートの桶貯水部における排水を確実にかつ効率よく行うことができる便器洗浄水供給装置を提供する。
【解決手段】本発明の便器洗浄水供給装置20は、給水管22と、この給水管から供給される洗浄水のロータンク14内への吐水及び止水を切替える給水バルブ24と、ロータンク内の洗浄水の水位の変動に伴って上下動するフロート26と、一端部が給水バルブに回動可能に取り付けられ、他端部がフロートに固定されるレバーアーム30と、を有し、フロートは、その上部に形成され、給水バルブが吐水状態のとき給水バルブから吐水される洗浄水の少なくとも一部を受け取って貯水すると共に給水バルブが止水状態のとき貯水した洗浄水を排水口26eから排水する桶貯水部26bを備え、この桶貯水部の排水口が桶貯水部の周縁部全周に沿って複数配置されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器洗浄水供給装置に係り、特に、水洗便器の洗浄水タンクに洗浄水を供給する便器洗浄水供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水洗便器のロータンク等の洗浄水タンクに洗浄水を供給する便器洗浄水供給装置の一例として、洗浄水タンク内にパイロット式のダイヤフラム弁を有するボールタップ(給水バルブ)を設けた便器洗浄水供給装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような従来の便器洗浄水供給装置においては、外部の給水源(水道)に接続された給水管の上端に設けられた給水バルブが、洗浄水タンク内の水位に応じて上下動するフロートと連動することにより、給水バルブから洗浄水タンク内への吐水及び止水が切り替えられるようになっている。また、給水バルブが、フロートの上部に形成された桶貯水部に上方から洗浄水を吐水する吐水管を備えている。これにより、給水バルブが吐水状態のときには、フロートには浮力以外に吐水管から下向きのジェット水圧が作用し、給水バルブが止水状態に変わるときは、このジェット水圧が急に作用しなくなり、フロートに大きな押上力(浮力)が作用する。これにより、止水が不安定となって吐水と止水の状態を小刻みに繰り返す現象(いわゆる「ハンチング現象」)が発生する不安定域を速やかに短時間で通過させて、フロートのハンチング現象の発生を抑制している。
【0003】
【特許文献1】特開2008−57160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の便器洗浄水供給装置においては、給水バルブが止水状態に変わるときに、フロートの桶貯水部に貯水されていた洗浄水は、桶貯水部の一部分に形成された排水口等から桶貯水部の外部へ排水されるようになっているが、給水バルブが吐水状態から止水状態に変わる際にフロート自体や桶貯水部の姿勢が傾いていたりすると、うまく桶貯水部から排水しきれず、この排水しきれなかった桶貯水部における残水が原因でフロートがハンチングしてしまうという問題がある。
【0005】
特に、このような桶貯水部の排水不良によって生ずるフロートのハンチングの問題は、上述した特許文献1に記載した便器洗浄水供給装置に限られず、フロートの桶貯水部に給水バルブから吐水するタイプの便器洗浄水供給装置に共通する解決すべき課題であり、給水バルブが吐水状態から止水状態に切り替わる際のフロートの桶貯水部の排水をいかに確実にかつ効率よく行うかが重大な課題となっている。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点及び課題を解決するためになされたものであり、給水バルブが吐水状態から止水状態に切り替わる際にフロートの桶貯水部における排水を確実にかつ効率よく行うことができ、給水バルブを吐水から止水に切り替える際に生ずるフロートのハンチング現象の発生を防止することができる便器洗浄水供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、水洗便器の洗浄水タンクに洗浄水を供給する便器洗浄水供給装置であって、外部の給水源に接続された給水管と、この給水管から供給される洗浄水の洗浄水タンク内への吐水及び止水を切替えて洗浄水を洗浄水タンク内に供給する給水バルブと、洗浄水タンク内の洗浄水の水位の変動に伴って上下動するフロート部と、一端部が上記給水バルブに回動可能に取り付けられ、他端部が上記フロート部に固定されて上記フロート部と共に上下動することにより上記給水バルブの吐水及び止水を切り替えるレバーアーム部と、を有し、上記フロート部は、その上部に形成され、上記給水バルブが吐水状態のとき給水バルブから吐水される洗浄水の少なくとも一部を受け取って貯水すると共に上記給水バルブが止水状態のとき貯水した洗浄水を排水口から排水する桶貯水部を備え、この桶貯水部の排水口が、上記桶貯水部の周縁部全周に沿って複数配置されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、フロート部の桶貯水部の排水口が桶貯水部の周縁部全周に沿って複数配置されているため、フロート部が傾いている状態であっても、桶貯水部に貯水されている洗浄水を複数の排水口の少なくとも1つを経て桶貯水部の外部に確実に排水することができる。また、給水バルブが止水状態のとき、桶貯水部に貯水されている洗浄水が外部に確実に排水されるため、フロート部のハンチングを確実に防ぐことができる。さらに、フロート部のハンチングを確実に防ぐことにより、給水バルブにおけるゴミ噛みによる作動不良を確実に防ぐことができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、桶貯水部の排水口は、桶貯水部の周縁部全周に沿ってほぼ等間隔で複数配置されている。
このように構成された本発明においては、排水口が桶貯水部の周縁部全周に沿ってほぼ等間隔で複数配置されているため、フロート部がいかなる方向に傾いている状態であっても、桶貯水部に貯水されている洗浄水を複数の排水口の少なくとも1つを経て桶貯水部の外部に確実に排水することができる。また、給水バルブが止水状態のとき、桶貯水部に貯水されている洗浄水が外部に確実に排水されるため、フロート部のハンチングを確実に防ぐことができる。さらに、フロート部のハンチングを確実に防ぐことにより、給水バルブにおけるゴミ噛みによる作動不良を確実に防ぐことができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、フロート部は、そのフロート部本体を形成し桶貯水部の下部に位置する外周壁を備え、桶貯水部の排水口は、外周壁に向かって開口している。
このように構成された本発明においては、フロート部の桶貯水部に貯水されている洗浄水は、排水口から排水されると、フロート部の外周壁の壁面に沿って流下するため、洗浄水の水はねによる騒音(水はね音)を防ぐことができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、フロート部は、その外周壁の全周に沿って排水口の位置と対応するようにほぼ等間隔に形成された凹部を備えている。
このように構成された本発明においては、フロート部の桶貯水部に貯水されている洗浄水は、排水口から排水されると、フロート部の外周壁の凹部に沿って流下することによって整流化されるため、洗浄水の乱れによって発生する騒音を抑制し、静音化を実現することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、桶貯水部は、その底面部の中心部から周縁部全周にかけて斜め下方に傾斜している傾斜面を備えている。
このように構成された本発明においては、フロート部の桶貯水部の中心部から周縁部全周にかけて斜め下方に傾斜している傾斜面により、桶貯水部に貯水されている洗浄水を複数の排水口の少なくとも1つを経て桶貯水部の外部に確実に排水することができる。また、給水バルブが止水状態のとき、桶貯水部に貯水されている洗浄水が外部に確実に排水されるため、フロート部のハンチングを確実に防ぐことができる。さらに、フロート部のハンチングを確実に防ぐことにより、給水バルブにおけるゴミ噛みによる作動不良を確実に防ぐことができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、給水バルブは、フロート部の桶貯水部の斜め上方に配置され且つフロート部の桶貯水部に給水源の水圧の洗浄水の少なくとも一部を吐水する吐水部を備えている。
このように構成された本発明においては、給水バルブの吐水部がフロート部の桶貯水部の斜め上方に配置されているため、フロート部がいかなる方向に傾いている状態であっても、給水バルブの吐水部が給水源の水圧の洗浄水の少なくとも一部をフロート部の桶貯水部に向けて確実に吐水することができる。また、吐水部がフロート部の桶貯水部の斜め上方に配置することにより、吐水部が干渉することなく給水バルブの周辺のスペースを有効利用してコンパクトにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の便器洗浄水供給装置によれば、給水バルブが吐水状態から止水状態に変わる際にフロートの桶貯水部における排水を確実にかつ効率よく行うことができ、給水バルブを吐水から止水に切り替える際に生ずるフロートのハンチング現象の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面により、本発明の一実施形態による便器洗浄水供給装置を説明する。
まず、図1により、本発明の便器洗浄水供給装置が適用される便器の一例を説明する。図1は本発明の便器洗浄水供給装置が適用される水洗便器の断面図である。図1に示すように、符号1は水洗便器を示し、この水洗便器1の上部の前方側には、ボウル部2が形成され、後方側の上部には導水路4が、導水路4の下方にはボウル部2と連通する排水トラップ管路6が、それぞれ形成されている。
【0015】
水洗便器1のボウル部2の上縁部にはオーバーハング形状のリム8が形成され、このリム8に導水路4から洗浄水が供給される1つ又は2つのリム吐水口10が形成され、洗浄水が旋回しながら下降してボウル部2を洗浄できるようになっている。また、ボウル部2の中心下部には、導水路4から洗浄水が供給されるジェット吐水口12が形成され、このジェット吐水口12から洗浄水が排水トラップ管路6に向けて吐水され、サイホンを短時間で発生されるようになっている。
【0016】
水洗便器1の導水路4の上方には、洗浄水を貯留する洗浄水タンクであるロータンク14が設けられている。このロータンク14の底面14aには、水洗便器1の導水路4と連通する連通口14bが形成されている。このロータンク14の内部には、後述するように、本発明の便器洗浄水供給装置20を含む種々の機器が設けられている。
【0017】
つぎに、図2及び図3により、ロータンク14内に設けられた種々の機器について説明する。図2はロータンクの内部を示す正面断面図であり、図3はロータンクの内部を示す平面図である。
図2及び図3に示すように、ロータンク14内には、排水弁16、オーバーフロー管18、給水管22、給水バルブ24、及び、フロート26が設けられている。
【0018】
具体的には、排水弁16は、大洗浄用の弁体16aと小洗浄用の弁体16bからなり、両弁体16a,16bは、ロータンク14の底面14aの連通口14bの部分に設けられている。また、両弁体16a,16bのそれぞれは、それぞれの排水弁用のフロート16c,16dを介して、操作レバー28に接続された玉鎖16e,16fにそれぞれ接続されており、操作レバー28を操作して大洗浄又は小洗浄のモードを切り替えることにより、大洗浄用の弁体16a又は小洗浄用の弁体16bの開閉操作が行われるようになっている。
【0019】
この排水弁16は、閉操作により洗浄水をロータンク14内に貯水し、開操作により、ロータンク14内の洗浄水を水洗便器1の導水路4を経由して、リム吐水口10及びジェット吐水口12に導くようになっている。
【0020】
また、オーバーフロー管18は、その上端に開口18aが形成されその下端が排水弁16の弁座16gに連通するように設けられている。このオーバーフロー管18により、洗浄水の水位が万一上昇しても、開口18aから、洗浄水がオーバーフローし、排水弁16の弁座16gを経由して、さらに、水洗便器1の導水路4を経て、リム吐水口10とジェット吐水口12から、ボウル部2内に排出されるようになっている。
【0021】
つぎに、図2〜図6を参照して、本発明の一実施形態による便器洗浄水供給装置20について説明する。図4は本実施形態の便器洗浄水供給装置を示す斜視図であり、図5は本実施形態の便器洗浄水供給装置を示す縦断面図であり、図6は図5に示す本実施形態の便器洗浄水供給装置の給水バルブの部分を拡大した拡大断面図である。
【0022】
まず、図2〜図6に示すように、本実施形態の便器洗浄水供給装置20は、給水管22、給水バルブ24、フロート26(詳細は後述する)、及び、レバーアーム30を備えている。
【0023】
給水管22は、ロータンク14の底面14aに取り付けられ、外部の水道等の給水源(図示せず)に接続され、洗浄水をロータンク14内に供給するようになっている。この給水管22は、中心部に給水路22aが形成され、この給水路22aの下流側端部(図5における給水路22aの右側端部)には、ダイヤフラム式の給水バルブ24が設けられている。
【0024】
給水バルブ24は、バルブハウジング24aと、このバルブハウジング24a内に上下方向に移動可能に設けられてシート面24bを開閉するダイヤフラム24cと、このダイヤフラム24cに取り付けられてバルブハウジング24a内をダイヤフラム24cと共に一体的に上下方向に移動可能な弁体24dを備えている。
また、ダイヤフラム24cには、パイロット穴(図示せず)が形成され、このパイロット穴(図示せず)により、給水管22の給水路22aとダイアフラム24cの上側にある背圧室24eとが連通されている。この背圧室24eの上部には、背圧抜き穴24fが形成されている。
【0025】
また、給水バルブ24のバルブハウジング24aのフロート26側の斜め下方には、ダイアフラム24cを介して給水管22の給水路22aに連通する吐水管32が設けられている。この吐水管32は、言い換えると、フロート26の筒状の本体26aの上部に形成された桶貯水部26b(詳細は後述する)の斜め上方に配置され、ほぼ給水源(図示せず)の水圧に等しい給水管22の給水路22aの洗浄水の少なくとも一部をフロート26の桶貯水部26bに向けて吐水する吐水部として機能している。
【0026】
さらに、給水バルブ24のバルブハウジング24aの上面には、レバーアーム30が取り付けられている。このレバーアーム30は、一端部(図2〜図6における左側端部)30aから他端部(図2〜図6における右側端部)30bにかけてクランク状に延びており、左側端部30aが給水バルブ24のバルブハウジング24aの上面に回動可能に取り付けられ、右側端部30bがフロート26の主軸部26cに固定されている。また、レバーアーム30の左側端部30aには、背圧抜き穴24fを開閉するトップシール30cが取り付けられている。
このような構成により、レバーアーム30は、その右側端部30bがフロート30と共に上下動することにより、レバーアーム30の左側端部30aが支点30d(図4参照)を中心に揺動運動ができるようになっており、給水バルブ24の吐水及び止水が切り替えられるようになっている。
【0027】
また、給水バルブ24は、給水管22から吐水管32とは別に分岐して設けられた手洗い給水管34を備えている。この手洗い給水管34は、ロータンク14の上に着脱自在に固定され且つその上面に手洗い鉢14cを形成する蓋14dに設けられた手洗いカラン14eに接続されている。給水管22の給水路22aの洗浄水の一部は手洗い給水管34を通過して手洗いカラン14eの吐水口14fから手洗い鉢14c内に吐水され、手洗い鉢14cの排水口14gからロータンク14内に排水されるようになっている。
【0028】
つぎに、図2〜図5、図7及び図8を参照して、フロート26の詳細について説明する。図7は本実施形態による便器洗浄水供給装置のフロートを示す平面図であり、図8は図7のVIII−VIII断面図である。
図2〜図5、図7及び図8に示すように、フロート26は、筒状のフロート本体26aの上部に形成された桶貯水部26bと、この桶貯水部26bの中心部から上方に延びてレバーアーム30の右側端部30bと螺合するように雄ねじ山が形成された主軸部26cとを備えている。
【0029】
フロート26の桶貯水部26bは、その周囲が側壁26dによって取り囲まれており、吐水管32から桶貯水部26bに向けて吐水された吐水の所定容積量を収容して貯水することができるようになっている。
フロート26の主軸部26cは、その軸回りに回転させることによりフロートの高さ位置を変更することができるようになっており、ロータンク14の設定される標準水位(ウォーターライン)に応じてフロート26の位置を調節できるようになっている。
【0030】
また、フロート26の桶貯水部26bには、その周縁部全周に沿ってほぼ等間隔に形成されて複数の長孔形状の排水口26eが配置されている。これらの排水口26eは、桶貯水部26bの軸方向に貫通しており、フロート本体26aを形成する外周壁26fに向かって開口している。ここで、排水口26eは、桶貯水部26bに貯水されている洗浄水を外部により確実に排水するために、桶貯水部26bの側壁26dの高さ方向中央より下側に形成されることが好ましく、桶貯水部26bの底面部に形成されることが最も好ましい。
【0031】
さらに、フロート本体26aの外周壁26fの壁面には、その全周に沿って桶貯水部26bの排水口26eの位置と対応するようにほぼ等間隔に形成された凹部である縦溝26gが形成されている。この縦溝26gは、その溝の横断面がフロート本体26aの半径方向内方に向かって凹んだ凹状の溝を形成している。
【0032】
また、桶貯水部26bの底面部においては、その中心部から周縁部全周にかけて斜め下方に傾斜している傾斜面26hが形成されている。
特に、図8に示す桶貯水部26bの傾斜面26hの断面において、水平面に対する傾斜角度αを大きな角度に設定すると、排出口26eからの排出性能は上がるが、桶貯水部26bの貯水量が減ってしまったり、或いは、主軸部26cのネジ代が確保できなくなるという問題が生じる。また、傾斜角度αが大きくなるにつれて側壁26dも高くなり、フロート26自体の重量や桶貯水部26bの貯水量が増えるため、フロート26への大きな浮力が必要になるといった問題が生じる。これらの問題を解消するため、傾斜角度αは、1°〜15°に設定されているのが好ましく、5°〜10°に設定されるのがさらに好ましく、6°〜8°に設定されるのが最も好ましい。
【0033】
つぎに、図1〜図10により、本発明の実施形態による便器洗浄水供給装置の動作(作用)を説明する。ここで、図9は、図5と同様な本実施形態の便器洗浄水供給装置を示す縦断面図であり、給水バルブが開弁した状態を示している。また、図10は、図9に示す本実施形態の便器洗浄水供給装置の給水バルブの部分を拡大した拡大断面図である。
【0034】
まず、ロータンク14内に洗浄水が十分に貯水されている場合には、洗浄水の水位は満水の水位A(図2参照)となっている。このとき、給水バルブ24等は、以下の状態となっている。
すなわち、図4〜図6に示すように、フロート26は、上方位置まで上昇しており、その浮力により、レバーアーム30は、支点30dを中心にして反時計回り方向に付勢され、レバーアーム30の左側端部30aが下方に押し下げられた状態となる。この結果、レバーアーム30の左側端部30aのトップシール30cが給水バルブ24の背圧抜き穴24fを閉じる。このとき、ダイヤフラム24cのパイロット穴(図示せず)により、背圧室24eと給水管22の給水路(1次側)22aとが連通されているので、背圧室24eと給水路(1次側)22aの圧力が等しくなり、その結果、ダイヤフラム24cを押す面積比(背圧室側面積>1次側面積)により、ダイヤフラム24c及び弁体24dは下方に移動し、閉弁した状態となっている。
【0035】
つぎに、水洗便器1の使用後には、便器使用者が操作レバー(図示せず)を操作した場合、例えば、大洗浄の場合には、排水弁16の弁体16a,16bの双方が開き、ロータンク14内に貯水された洗浄水を水洗便器1へ流して水洗便器1を洗浄する。最後には、ロータンク14内に洗浄水の水位は空状態である水位B(図2参照)となる。
【0036】
その後、排水弁16が閉じられ、この洗浄タンク14の空状態(水位Bの状態)から、ロータンク14内に外部の給水源(水道)から洗浄水が供給される。このとき、給水バルブ24等は、以下の状態となっている。
すなわち、図9及び図10に示すように、フロート26は下方位置まで下降し、洗浄水から露出し、レバーアーム30の右側端部30bに空中からぶら下がった状態となっている。このとき、レバーアーム30の左側端部30aは、フロート26の重量により、支点30dを中心にして時計回り方向に付勢され、上方に押し上げられる。このとき、レバーアーム30の左側端部30aのトップシール30cが給水バルブ24の背圧抜き穴24fを開放し、背圧室24eは大気開放となる。その結果、ダイヤフラム24c及び弁体24dは、給水路(1次側)22aの圧力(水道圧)により押されて上方に移動し、開弁状態となる。
【0037】
給水バルブ24が開弁状態となれば、外部の給水源(水道)から洗浄水が給水管22の給水路22a(1次側)に供給される。給水管22の給水路22aの洗浄水の一部は手洗い給水管34を通過して手洗いカラン14eの吐水口14fから手洗い鉢14c内に吐水され、手洗い鉢14cの排水口14gからロータンク14内に排水される。これにより、ロータンク14内の水位が次第に上昇する。
【0038】
このとき、図9に吐水管32から吐出される洗浄水をWで示すように、洗浄水Wが給水管22の給水路22a(1次側)から吐水管32へも供給され、この吐水管32から、斜め下方にあるフロート26の桶貯水部26bに向けて吐水される。これにより、フロート26が上昇して洗浄水中に浮いた状態となった場合には、フロート26には、上向きの浮力、桶貯水部26bに貯水された洗浄水の重量(下向き)、及び、吐水管32の吐水による下向きの押付力が作用している。
そして、桶貯水部26bが洗浄水で満たされると、側壁26dの上端から溢れ出したり、排水口26eから排出されたりしてロータンク14内へ供給される。
【0039】
この後、ロータンク14内の水位が図2に示す満水の水位Aまで上昇すると、上述したように、給水バルブ24は閉じられ、ロータンク14内への洗浄水の供給は停止される。
【0040】
また、図8に示すように、吐水管32から吐水されたフロート26の桶貯水部26b内の洗浄水Wは、給水バルブ24が吐水状態から止水状態に切り替わる際、桶貯水部26bの傾斜面26hに沿って排水口26eに向かって流れる。その後、排水口26eに流れ込んだ洗浄水Wは、それぞれの排水口26eの位置と対応するフロート本体26aの外周壁26fの壁面に形成された縦溝26gに沿って流下して整流化され、ロータンク14内へ供給される。
【0041】
上述した本発明の一実施形態による便器洗浄水供給装置20によれば、レバーアーム30が一端部(図2〜図6における左側端部)30aから他端部(図2〜図6における右側端部)30bにかけてクランク状に延びており、左側端部30aが給水バルブ24のバルブハウジング24aの上面に回動可能に取り付けられ、右側端部30bがフロート26の主軸部26cに固定されているため、レバーアーム30の左側端部30aの回転と右側端部30bの上下動に伴って、給水バルブ24が吐水状態から止水状態に切り替わる際、フロート26及び桶貯水部26bが傾きやすい状態となっている。しかしながら、フロート26及び桶貯水部26bが傾いている状態であっても、フロート26の桶貯水部26bの排水口26eが桶貯水部26bの周縁部全周に沿ってほぼ等間隔で複数配置されているため、桶貯水部26bに貯水されている洗浄水Wを複数の排水口26eの少なくとも1つを経て桶貯水部26bの外部に確実に排水することができる。
また、給水バルブ24が止水状態のとき、桶貯水部26bに貯水されている洗浄水Wが外部に確実に排水されるため、フロート26のハンチングを確実に防ぐことができる。
さらに、フロート26のハンチングを確実に防ぐことにより、給水バルブ24の背圧抜き穴24fとレバーアーム30のトップシール30cとの間の開閉部分や、ダイヤフラム24cとバルブハウジング24aのシート面24bとの間の開閉部分におけるゴミ噛み等による作動不良を確実に防ぐことができる。
また、排水口26eが桶貯水部26bの周縁部全周に沿ってほぼ等間隔で複数配置されているため、各排水口26eの大きさを小さくすることができ、結果としてフロート26を小型化できる。
【0042】
また、本実施形態の便器洗浄水供給装置20によれば、フロート26の桶貯水部26bに貯水されている洗浄水Wは、排水口26eから排水されると、排水口26eの位置と対応するフロート本体26aの外周壁26fの壁面に形成された縦溝26gに沿って流下して整流化されるため、洗浄水の水はねによる騒音(水はね音)を防ぐことができる。また、洗浄水の乱れによって発生する騒音を抑制し、静音化を実現することができる。
【0043】
さらに、本実施形態の便器洗浄水供給装置20によれば、フロート26の桶貯水部26bの中心部から周縁部全周にかけて斜め下方に傾斜している傾斜面26hにより、桶貯水部26bに貯水されている洗浄水Wを複数の排水口26eの少なくとも1つを経て桶貯水部26bの外部に確実に排水することができる。
【0044】
また、本実施形態の便器洗浄水供給装置20によれば、給水バルブ24の吐水管32がフロート26の桶貯水部26bの斜め上方に配置されているため、フロート26及び桶貯水部26bがいかなる方向に傾いている状態であっても、給水バルブ24の吐水管32が給水源(図示せず)の水圧の洗浄水の少なくとも一部をフロート26の桶貯水部26bに向けて確実に吐水することができる。また、吐水管32がフロート26の桶貯水部26bの斜め上方に配置することにより、吐水管32が干渉することなく給水バルブ24の周辺のスペースを有効利用してコンパクトにすることができる。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に限定されず、これらに種々の変更を加えてもよい。特に、上述した実施形態においては、レバーアーム30は左側端部30aから右側端部30bにかけてクランク状に延びており、左側端部30aが給水バルブ24のバルブハウジング24aの上面に回動可能に取り付けられ、右側端部30bがフロート26の主軸部26cに固定されているが、レバーアームをその左側端部から右側端部にかけて直線状に延びるような構成にしたりしてもよいし、或いは、左側端部と給水バルブとを他の部材を介して接続したり、右側端部とフロートとを他の部材を介して接続したりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態による便器洗浄水供給装置が適用される水洗便器の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による便器洗浄水供給装置を含むロータンクの内部を示す正面断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による便器洗浄水供給装置を含むロータンクの内部を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態による便器洗浄水供給装置を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態による便器洗浄水供給装置を示す縦断面図である。
【図6】図5に示す本発明の一実施形態による便器洗浄水供給装置の給水バルブの部分を拡大した拡大断面図である。
【図7】本発明の一実施形態による便器洗浄水供給のフロートを示す平面図である。
【図8】図7のVIII−VIII断面図である。
【図9】図5と同様な本発明の一実施形態による便器洗浄水供給装置を示す縦断面図であり、給水バルブが開弁した状態を示している。
【図10】図9に示す本発明の一実施形態による便器洗浄水供給装置の給水バルブの部分を拡大した拡大断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 水洗便器
2 ボウル部
4 導水路
6 排水トラップ管路
8 リム
10 リム吐水口
12 ジェット吐水口
14 ロータンク
14a ロータンクの底面
14b 連通口
14c 手洗い鉢
14d 蓋
14e 手洗いカラン
14f 手洗いカランの吐水口
14g 手洗い鉢の排水口
16 排水弁
16a 大洗浄用の弁体
16b 小洗浄用の弁体
16c,16d 排水弁用のフロート
16e,16f 玉鎖
16g 弁座
18 オーバーフロー管
20 便器洗浄水供給装置
22 給水管
22a 給水路
24 給水バルブ
24a バルブハウジング
24b シート面
24c ダイヤフラム
24d 弁体
24e 背圧室
24f 背圧抜き穴
26 フロート
26a フロート本体
26b 桶貯水部
26c 主軸部
26d 桶貯水部の側壁
26e 桶貯水部の排水口
26f フロート本体の外周壁
26g 縦溝
26h 桶貯水部の傾斜面
28 操作レバー
30 レバーアーム
30a レバーアームの左側端部
30b レバーアームの右側端部
30c トップシール
30d 支点
32 吐水管
34 手洗い給水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗便器の洗浄水タンクに洗浄水を供給する便器洗浄水供給装置であって、
外部の給水源に接続された給水管と、
この給水管から供給される洗浄水の洗浄水タンク内への吐水及び止水を切替えて洗浄水を上記洗浄水タンク内に供給する給水バルブと、
上記洗浄水タンク内の洗浄水の水位の変動に伴って上下動するフロート部と、
一端部が上記給水バルブに回動可能に取り付けられ、他端部が上記フロート部に固定されて上記フロート部と共に上下動することにより上記給水バルブの吐水及び止水を切り替えるレバーアーム部と、
を有し、上記フロート部は、その上部に形成され、上記給水バルブが吐水状態のとき給水バルブから吐水される洗浄水の少なくとも一部を受け取って貯水すると共に上記給水バルブが止水状態のとき貯水した洗浄水を排水口から排水する桶貯水部を備え、この桶貯水部の排水口が、上記桶貯水部の周縁部全周に沿って複数配置されていることを特徴とする便器洗浄水供給装置。
【請求項2】
上記桶貯水部の排水口は、上記桶貯水部の周縁部全周に沿ってほぼ等間隔で複数配置されている請求項1記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項3】
上記フロート部は、そのフロート部本体を形成し上記桶貯水部の下部に位置する外周壁を備え、上記桶貯水部の排水口は、上記外周壁に向かって開口している請求項1又は2に記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項4】
上記フロート部は、その外周壁の全周に沿って上記排水口の位置と対応するようにほぼ等間隔に形成された凹部を備えている請求項3記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項5】
上記桶貯水部は、その底面部の中心部から周縁部全周にかけて斜め下方に傾斜している傾斜面を備えている請求項1記載の便器洗浄水供給装置。
【請求項6】
上記給水バルブは、上記フロート部の桶貯水部の斜め上方に配置され且つ上記フロート部の桶貯水部に上記給水源の水圧の洗浄水の少なくとも一部を吐水する吐水部を備えている請求項1記載の便器洗浄水供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−71055(P2010−71055A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243180(P2008−243180)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】