便器洗浄装置
【課題】汚物等の排出性能に優れ、少ない洗浄水量であっても便器洗浄を良好に行うことができる便器洗浄装置を提供する。
【解決手段】便器洗浄装置10は、リム吐水口4A及びジェット吐水口7Aを有する便器本体1に洗浄水を供給する。便器洗浄装置10は、リム吐水口4A及びジェット吐水口7Aへ洗浄水を供給する給水路と、リム吐水口4A及びジェット吐水口7Aから洗浄水を吐水して便器洗浄を行う際、先ずリム吐水口4Aから洗浄水を吐水し、その後に連続してジェット吐水口7Aから洗浄水を吐水するように給水先を切り替える弁ユニット20と、リム吐水口4A及びジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水の流量が設定値以上になるように、タンク33内に貯留した洗浄水の一部をリム吐水口4Aから吐水し、残部をジェット吐水口7Aから吐水する蓄圧器30とを備えている。
【解決手段】便器洗浄装置10は、リム吐水口4A及びジェット吐水口7Aを有する便器本体1に洗浄水を供給する。便器洗浄装置10は、リム吐水口4A及びジェット吐水口7Aへ洗浄水を供給する給水路と、リム吐水口4A及びジェット吐水口7Aから洗浄水を吐水して便器洗浄を行う際、先ずリム吐水口4Aから洗浄水を吐水し、その後に連続してジェット吐水口7Aから洗浄水を吐水するように給水先を切り替える弁ユニット20と、リム吐水口4A及びジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水の流量が設定値以上になるように、タンク33内に貯留した洗浄水の一部をリム吐水口4Aから吐水し、残部をジェット吐水口7Aから吐水する蓄圧器30とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便器洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には従来の便器洗浄装置が開示されている。この便器洗浄装置は便器本体に洗浄水を供給する。便器本体は、便鉢部、この便鉢部の上端部の内周縁に設けられたリム通水路、このリム通水路に沿って洗浄水を吐水するリム吐水口、便鉢部の下流側に連続して設けられた便器排水路、及びこの便器排水路の下流側に向けて洗浄水を吐水するジェット吐水口を有している。
【0003】
便器洗浄装置は弁ユニットを有している。この弁ユニットはリム用開閉弁及びジェット用開閉弁を有している。リム用開閉弁及びジェット用開閉弁の上流側は給水路を介して給水源に連通している。リム用開閉弁の下流側はリム側給水路を介してリム吐水口に連通している。ジェット用開閉弁の下流側はジェット側給水路を介してジェット吐水口に連通している。給水路には洗浄水を蓄圧状態で貯留する蓄圧器が連通している。蓄圧器は、リム用開閉弁及びジェット用開閉弁を閉弁すると、洗浄水がタンク内に流入し、静水圧によって洗浄水を蓄圧状態で貯留することができる。また、蓄圧器は、リム用開閉弁又はジェット用開閉弁が開弁すると、タンクから蓄圧状態で貯留した洗浄水を流出して給水源から供給された洗浄水に付加し、リム吐水口又はジェット吐水口から吐水することができる。
【0004】
この便器洗浄装置は、リム吐水口及びジェット吐水口から洗浄水を吐水して便器洗浄を行う際、リム吐水口、ジェット吐水口、リム吐水口の順に洗浄水を吐水する。この際、最初のリム吐水口からの洗浄水の吐水、及びジェット吐水口からの洗浄水の吐水には、蓄圧器のタンク内に蓄圧状態で貯留した洗浄水を給水源から供給された洗浄水に付加する。この便器洗浄装置は、最初のリム吐水口からの洗浄水の吐水により蓄圧器のタンク内に蓄圧状態で貯留した洗浄水の全量を流出する。このため、この便器洗浄装置は、ジェット吐水口からの洗浄水の吐水を開始する前に、リム用開閉弁及びジェット用開閉弁を閉弁して、再度、蓄圧器のタンク内に蓄圧状態で洗浄水を貯留する。その後、この便器洗浄装置は、ジェット用開閉弁を開弁してジェット口から洗浄水を吐水する。このように、この便器洗浄装置は、リム吐水口から勢いよく洗浄水を吐水して便鉢部を万遍なく洗浄し、ジェット吐水口から勢いよく洗浄水を吐水して便器排水路から汚物等を排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−146602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された便器洗浄装置では、最初のリム吐水口からの洗浄水の吐水を終了してからジェット吐水口からの洗浄水の吐水を開始するまでの間にタイムラグが生じる。便器洗浄において、最初のリム吐水口からの洗浄水の吐水によって便鉢部内の洗浄水の水位が最高水位にある状態で、ジェット吐水口からの洗浄水の吐水を開始することが好ましい。つまり、便鉢部内の洗浄水の水位が最高水位になることで最大になった便鉢部内の洗浄水の位置エネルギーと、ジェット吐水口から吐水する洗浄水の水勢との相乗効果により、便器排水路から汚物等を最も良好に排出することができる。この便器洗浄装置では、最初のリム吐水口からの洗浄水の吐水を終了してからジェット吐水口からの洗浄水の吐水を開始するまでの間にタイムラグが生じるため、ジェット吐水口からの洗浄水の吐水を開始する時点では、便鉢部内の洗浄水の水位が最高水位よりも低下している。このため、この便器洗浄装置は、便鉢部内の洗浄水の位置エネルギーを最大に利用することができず、汚物等の排出性能が劣るおそれがある。特に、節水のために洗浄水量を減少させた場合には、顕著に汚物等の排出性能が劣るおそれがある。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、汚物等の排出性能に優れ、少ない洗浄水量であっても便器洗浄を良好に行うことができる便器洗浄装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の便器洗浄装置は、便鉢部、この便鉢部の上端開口部の内周縁に設けられたリム通水路、このリム通水路に沿って洗浄水を吐水するリム吐水口、前記便鉢部の下流側に連続して設けられた便器排水路、及びこの便器排水路の下流側に向けて洗浄水を吐水するジェット吐水口を有する便器本体に洗浄水を供給する便器洗浄装置であって、
前記リム吐水口及び前記ジェット吐水口へ洗浄水を供給する給水路と、
この給水路に設けられ、前記リム吐水口及び前記ジェット吐水口から洗浄水を吐水して便器洗浄を行う際、先ず前記リム吐水口から洗浄水を吐水し、その後に連続して前記ジェット吐水口から洗浄水を吐水するように給水先を切り替える給水切替機構と、
前記給水路に連通して洗浄水を貯留するタンクを有し、前記リム吐水口及び前記ジェット吐水口から吐水する洗浄水の流量が設定値以上になるように、前記タンク内に貯留した洗浄水の一部を前記リム吐水口から吐水し、残部を前記ジェット吐水口から吐水する流量増幅機構とを備えていることを特徴とする。
【0009】
この便器洗浄装置では、流量が設定値以上になるようにタンクに貯留した洗浄水をリム吐水口とジェット吐水口とに分配して吐水する。このため、この便器洗浄装置は、便器洗浄を行う際、リム等水口及びジェット吐水口から吐水する洗浄水の流量を設定値以上にしつつ、リム吐水口からの洗浄水の吐水とジェット吐水口からの洗浄水の吐水とを連続して行うことができる。よって、リム吐水口からの洗浄水の吐水によって便鉢部内の洗浄水の水位が最高水位にある状態でジェット吐水口から洗浄水の吐水を開始することができる。つまり、便鉢部内の洗浄水の位置エネルギーが最大になった状態でジェット吐水口から洗浄水を吐水することができるため、便鉢部内の洗浄水の最大の位置エネルギーとジェット吐水口から吐水される洗浄水の水勢との相乗効果により、少ない洗浄水でも便器排水路から汚物等を良好に排出することができる。なお、流量とは単位時間当たりに通過する水量をいう。
【0010】
したがって、本発明の便器洗浄装置は、汚物等の排出性能に優れ、少ない洗浄水であっても便器洗浄を良好に行うことができる。
【0011】
流量増幅機構は蓄圧器であるとよい。この蓄圧器置は、給水路から流入した洗浄水により容積を拡大するタンクと、タンクの容積を減少させる方向に弾性力を付与する弾性体とを有している。この蓄圧器は、下流側の給水路が閉鎖されると、洗浄水の静水圧により、弾性体の弾性力に抗してタンクの容積を拡大しつつ、洗浄水を蓄圧状態で貯留することができる。蓄圧器は、下流側の給水路が開放されると、タンク内に蓄圧状態で貯留した洗浄水を給水路を流れる洗浄水に付加することができる。このように、蓄圧器は、無電源でリム吐水口及びジェット吐水口から吐水する洗浄水の流量を設定値以上に増幅することができる。
【0012】
また、流量増幅機構はタンクとポンプとから構成されていてもよい。この場合、流量が設定値以上になるようにポンプを駆動することにより、タンクに貯留された洗浄水を流出し、リム吐水口及びジェット吐水口から吐水する洗浄水の流量を設定値以上に増幅することができる。
【0013】
前記ジェット吐水口から吐水する洗浄水の当初の流量は、前記リム吐水口から吐水する洗浄水の流量よりも多くし得る。この場合、タンクに貯留した洗浄水をリム吐水口とジェット吐水口とに適切に分配して吐水することができる。つまり、ジェット吐水口から吐水する洗浄水は、その水勢により便器排水路内にサイホン作用を発生させる等して便器排水路から汚物等を排出するために利用される。このため、ジェット吐水口から吐水する洗浄水は、吐水を開始した当初にできる限り勢いよく吐水することが好ましい。一方、リム吐水口から吐水する洗浄水は、便鉢部の表面を万遍なく洗浄することが目的であり、ジェット吐水口から吐水する洗浄水の当初の水勢より弱くても便鉢部の表面を万遍なく洗浄することができる。
【0014】
前記リム吐水口から吐水する前記タンク内に貯留した一部の洗浄水の水量よりも前記ジェット吐水口から吐水する前記タンク内に貯留した残部の洗浄水の水量を多くして、前記ジェット吐水口から吐水する洗浄水の水量が前記リム吐水口から吐水する洗浄水の水量よりも多くし得る。この場合、タンクに貯留した洗浄水をリム吐水口とジェット吐水口とに適切に分配して吐水することができる。つまり、ジェット吐水口から吐水する洗浄水は、便器排水路内にサイホン作用を発生・継続させる等して便器排水路から汚物等を排出するために利用される。このため、ジェット吐水口から吐水する洗浄水はできる限り多い水量であることが好ましい。一方、リム吐水口から吐水する洗浄水は、便鉢部の表面を万遍なく洗浄することが目的であり、ジェット吐水口から吐水する洗浄水の水量よりも少なくても便鉢部の表面を万遍なく洗浄することができる。
【0015】
前記給水路は、給水源に連通する上流側給水路と、この上流側給水路の下流端を分岐して形成したジェット側給水路及びリム側給水路とから構成されており、
前記流量増幅機構はジェット側給水路に連通し得る。
【0016】
この場合、流量増幅機構からジェット吐水口までの流路が短いため、その間を流れる洗浄水の圧力損失を少なくすることができる。このため、この便器洗浄装置は流量増幅機構から流出した洗浄水をジェット吐水口から勢いよく吐水することができる。よって、便器排水路から汚物等を良好に排出することができる。
【0017】
前記給水切替機構は、前記ジェット側給水路を開閉するジェット用開閉弁と、前記リム側給水路を開閉するリム用開閉弁と、前記ジェット用開閉弁及び前記リム用開閉弁の開閉を制御する制御装置とを有しており、
前記ジェット用開閉弁よりも上流側の前記ジェット側給水路に前記流量増幅機構を連通し、この流量増幅機構を連通した連通部よりも上流側の前記ジェット側給水路に設けられ、前記ジェット側給水路の下流側への大流量の流れを許容し、上流側への小流量の流れを許容する流量調整弁を備え得る。
【0018】
この場合、流量調整弁により、流量増幅機構から流出する洗浄水の流量をジェット吐水口から洗浄水を吐水する際よりもリム吐水口から洗浄水を吐水する際に少なくすることができる。このため、ジェット吐水口から吐水する洗浄水の当初の流量をリム吐水口から吐水する洗浄水の流量よりも多くしたり、ジェット吐水口から吐水する洗浄水の水量をリム吐水口から吐水する洗浄水の水量よりも多くしたりすることが簡易な構造で容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例の便器洗浄装置が取り付けられた便器本体を示す平面図である。
【図2】実施例の便器洗浄装置が取り付けられた便器本体を示す断面図である。
【図3】実施例の弁ユニットを示す断面図である。
【図4】実施例の便器洗浄装置を示すブロック図である。
【図5】実施例の便器洗浄装置の蓄圧器への蓄水工程を示す概略図である。
【図6】実施例の便器洗浄装置の便器洗浄待機状態を示す概略図である。
【図7】実施例の便器洗浄装置の鉢洗浄工程を示す概略図である。
【図8】実施例の便器洗浄装置のジェット洗浄工程を示す概略図である。
【図9】実施例の便器洗浄装置の覆水工程を示す概略図である。
【図10】実施例の便器洗浄装置の便器洗浄における流量変化を示すグラフである。
【図11】(A)、(B)、(C)他の実施例の便器洗浄装置を示すブロック図である。
【図12】(A)、(B)他の実施例の便器洗浄装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の便器洗浄装置を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0021】
<実施例>
実施例の便器洗浄装置10は、図1〜図4に示すように、便器本体1に洗浄水を供給する。便器本体1は、便鉢部2、リム通水路3、リム吐水口4A、便器排水路6、及びジェット吐水口7Aを有している。
【0022】
リム通水路3は便鉢部2の上端開口部の内周縁に棚状に設けられている。リム吐水口4Aはリムノズル4の先端面に開口して形成されている。リムノズル4は、便鉢部2の前端F側から見て便鉢部2の左側後方のコーナー部に配置されている。リムノズル4はリム側給水路の一部を形成するリム側給水管5Aの下流端部に連結されている。リム吐水口4Aから吐水された洗浄水は、リム通水路3に沿って便鉢部2の上端周縁を一方向に旋回しつつ、便鉢部2内に流下する。このため、リム吐水口4Aから洗浄水が吐水されると、便鉢部2内の中心部に向かって旋回流を形成しつつ、便鉢部2内の洗浄水の水位が上昇する。
【0023】
便器排水路6は便鉢部2の下流側に連続して設けられている。便器排水路6は、便鉢部2の下部から後方かつ斜め上方に向けて延びる上昇流路と、この上昇流路の上端部から屈曲して垂直下方に向けて延びる下降流路とから構成されている。
【0024】
ジェット吐水口7Aはジェットノズル7の先端面に開口して形成されている。ジェットノズル7は便器排水路6の上昇流路の上流下端部に取り付けられている。ジェットノズル7はジェット側給水路の一部を形成するジェット側給水管8Aの下流端部に連結されている。ジェット吐水口7Aから吐水された洗浄水は、便器排水路6の上昇流路を充満しつつ、便器排水路6の下流側に流れる。
【0025】
便器洗浄装置10は、給水切替機構である弁ユニット20と、流量増幅機構である蓄圧器30とを備えている。便器洗浄装置10である弁ユニット20と蓄圧器30とは、便器本体1の後部に取り付けられており、上方及び側方を上カバー11C及び図示しない下カバーによって覆われている。上カバー11Cは、便器本体1の後方上部に取り付けられ、便座11A及び便蓋11Bを回動自在に軸支している。下カバーは便器本体1の後方側面に取り付けられている。
【0026】
弁ユニット20は、図3及び図4に示すように、上流側流路9B、及びこの上流側流路9Bの下流端を分岐して形成したジェット側流路8Bとリム側流路5Bとを有している。上流側流路9Bは上下方向に延びて形成されている。ジェット側流路8Bは、上流側流路9Bの下流端である上端部から水平方向に延びてから上方に向けて屈曲し、ジェット用開閉弁21を介して上下方向に延びている。リム側流路5Bは、上流側流路9Bの下流端である上端部からジェット側流路8Bの水平方向に延びた部分の反対方向に延びてから上方に向けて屈曲し、リム用開閉弁22を介して上下方向に延びている。
【0027】
上流側流路9Bは上流端である下部に上流側連結部9Cを形成している。上流側連結部9Cは給水源に連通した給水管9Aに連結している。このように、上流側給水路は、上流側流路9B、上流側連結部9C及び給水管9Aによって構成されている。上流側流路9Bはストレーナー25を収納している。このストレーナー25は上流側流路9Bの下端部から着脱することができる。上流側流路9Bは下流端である上端部に逆止弁26を配置している。逆止弁26は、上流側から下流側へ洗浄水が流れることを許容し、その逆の流れを防止する。
【0028】
ジェット側流路8Bは下流端である上部にジェット側連結部8Cを形成している。ジェット側連結部8Cはジェット側給水管8Aに連結している。このように、ジェット側給水路は、ジェット側流路8B、ジェット側連結部8C及びジェット側給水管8Aによって構成されている。また、上流側給水路及びジェット側給水路によって、ジェット吐水口7Aへ洗浄水を供給する給水路を構成している。
【0029】
ジェット側流路8Bは、上流側流路9Bの上端部から水平方向に延びた部分であって、上方に向けて屈曲した屈曲部Cより上流側に流量調整弁23を収納している。流量調整弁23は、ジェット側流路8Bを拡径して設けた弁座部8Dに下流側から当接する調整弁本体23Aと、この調整弁本体23Aを弁座部8Dに当接する方向に弾性力を付与するコイルばね23Cとを有している。調整弁本体23Aは、小孔23Bを貫設している。このように構成された流量調整弁23は、上流側から下流側へ洗浄水が流れる際、調整弁本体23Aが弁座部8Dから離座する。このため、流量調整弁23はジェット側給水路の下流側への大流量の流れを許容する。一方、この流量調整弁23は、下流側から上流側に洗浄水が流れる際、調整弁本体23Aが弁座部8Dに着座し、小孔23Bのみを洗浄水を流通させることができる。このため、流量調整弁23はジェット側給水路の上流側への小流量の流れを許容する。
【0030】
ジェット側流路8Bは屈曲部Cの下端部に給排水管31を介して蓄圧器30を連通する連通部27を形成している。また、ジェット側流路8Bは屈曲部Cの側面部に図示しない局部洗浄装置に洗浄水を供給する局部洗浄用給水路Sを形成している。
【0031】
ジェット側流路8Bは、屈曲部Cの下流側であり、上下方向に延びた部分の下部にジェット側給水路を開閉するジェット用開閉弁21を設けている。ジェット用開閉弁21は、ダイアフラム式の第1主弁21A、第1主弁21Aが離着する第1弁座21B、第1主弁21Aの背後に形成された第1背圧室21C、第1背圧室21Cと第1主弁21Aの二次側とを連通する第1排水路21D、第1排水路21Dを開閉する第1パイロット弁21E、第1パイロット弁21Eを開閉駆動する第1ソレノイド21Fを有している。第1主弁21Aは第1背圧室21Cと第1主弁21Aの一次側とを連通する第1小孔21Gを貫設している。第1ソレノイド21Fは制御装置24から送信される開閉信号に基づいて駆動する。
【0032】
このように構成されたジェット用開閉弁21は、以下に説明するようにジェット側給水路を開閉する。第1ソレノイド21Fが制御装置24からの開弁信号を受信すると、第1ソレノイド21Fが駆動して第1パイロット弁21Eが第1排水路21Dを開放する。すると、第1背圧室21C内の洗浄水が第1排水路21Dから第1主弁21Aの2次側に排水される。これにより、第1主弁21Aの第1背圧室21C側の面よりもその反対側の面にかかる洗浄水の圧力が高くなり、第1主弁21Aが第1弁座21Bから離座してジェット用開閉弁21が開弁する。一方、第1ソレノイド21Fが制御装置24からの閉弁信号を受信すると、第1ソレノイド21Fが駆動して第1パイロット弁21Eが第1排水路21Dを閉鎖する。すると、第1主弁21Aの一次側から第1小孔21Gを介して第1背圧室21C内に洗浄水が流入する。これにより、第1主弁21Aの第1背圧室21C側の面の方がその反対側の面にかかる洗浄水の圧力よりも高くなり、第1主弁21Aが第1弁座21Bに着座して、ジェット用開閉弁21は閉弁する。
【0033】
ジェット側流路8Bの上端部にはジェット側大気開放弁28Aが設けられている。ジェット側大気開放弁28Aは、ジェット側給水路を介してジェット吐水口7Aから洗浄水を吐水していない時には大気開放状態になり、ジェット側大気開放弁28Aより下流側を大気に開放している。これにより、ジェット用大気開放弁28Aより二次側の汚水がジェット用開閉弁21より一次側に逆流することを防止している。
【0034】
リム側流路5Bは下流端である上部にリム側連結部5Cを形成している。リム側連結部5Cはリム側給水管5Aに連結している。このように、リム側給水路は、リム側流路5B、リム側連結部5C及びリム側給水管5Aによって構成されている。また、上流側給水路及びリム側給水路によって、リム吐水口4Aへ洗浄水を供給する給水路を構成している。
【0035】
リム側流路5Bは、上流側流路9Bの上端部から水平方向に延びた部分に蓋部材29を収納している。蓋部材29は、一方の端部(図3における右側)が閉鎖された筒形状であり、内側から外側に洗浄水が流通するように側面に複数の開口部5Dが設けられている。開口5Dから流出した洗浄水は上下方向に延びたリム側流路5Bへ流入する。蓋部材29はリム側流路5Bに対して着脱可能である。このため、蓋部材29をリム側流路5Bから取り外し、流量調整弁23をジェット側流路8Bに収納したり、メンテナンスのために取り外したりすることができる。
【0036】
リム側流路5Bは、上下方向に延びた部分の下部にリム側給水路を開閉するリム用開閉弁22を設けている。リム用開閉弁22は、ダイアフラム式の第2主弁22A、第2主弁22Aが離着する第2弁座22B、第2主弁22Aの背後に形成された第2背圧室22C、第2背圧室22Cと第2主弁22Aの二次側とを連通する第2排水路22D、第2排水路22Dを開閉する第2パイロット弁22E、第2パイロット弁22Eを開閉駆動する第2ソレノイド22Fを有している。第2主弁22Aは第2背圧室22Cと第2主弁22Aの一次側とを連通する第2小孔22Gを貫設している。第2ソレノイド22Fは制御装置24から送信される開閉信号に基づいて駆動する。
【0037】
このように構成されたリム用開閉弁22は、以下に説明するようにリム側給水路を開閉する。第2ソレノイド22Fが制御装置24からの開弁信号を受信すると、第2ソレノイド22Fが駆動して第2パイロット弁22Eが第2排水路22Dを開放する。すると、第2背圧室22C内の洗浄水が第2排水路22Dから第2主弁22Aの2次側に排水される。これにより、第2主弁22Aの第2背圧室22C側よりもその反対側の面にかかる洗浄水の圧力が高くなり、第2主弁22Aが第2弁座22Bから離座してリム用開閉弁22が開弁する。一方、第2ソレノイド22Fが制御装置24からの閉弁信号を受信すると、第2ソレノイド22Fが駆動して第2パイロット弁22Eが第2排水路22Dを閉鎖する。すると、第2主弁22Aの一次側から第2小孔22Gを介して第2背圧室22C内に洗浄水が流入する。これにより、第2主弁22Aの第2背圧室22C側の面の方がその反対側の面にかかる洗浄水の圧力よりも高くなり、第2主弁22Aが第2弁座22Bに着座して、リム用開閉弁22は閉弁する。
【0038】
リム側流路5Bの上端部にはリム側大気開放弁28Bが設けられている。リム側大気開放弁28Bは、リム側給水路を介してリム吐水口4Aから洗浄水を吐水していない時には大気開放状態になり、リム側大気開放弁28Bより下流側を大気に開放している。これにより、リム用大気開放弁28Bより二次側の汚水がリム用開閉弁22より一次側に逆流することを防止している。
【0039】
蓄圧器30は、図5〜図9に示すように、往復移動する隔壁32を収納し、この隔壁32の往復移動によって容積を増減するタンク33を有している。蓄圧器30は、タンク33の容積を減少させる方向に隔壁32に対して弾性力を付与するコイルばね34を有している。このため、蓄圧器30のタンク33は、給排水管31を介して洗浄水が流入すると容積を拡大しつつ、洗浄水を蓄圧状態で貯留することができる。
【0040】
次に、この便器洗浄装置10が便器本体1に洗浄水を供給して行う便器洗浄について説明する。
【0041】
[蓄圧器への蓄水工程]
便器洗浄装置10は、図5に示すように、ジェット用開閉弁21及びリム用開閉弁22を閉弁する。この状態では、給水源に連通した給水管9Aから弁ユニット20に流入する洗浄水は、上流側連結部9C、上流側流路9B、ジェット側流路8Bの水平方向に延びた部分、流量調整弁23、屈曲部Cに形成された連通部27、及び給排水管31を経由して蓄圧器30のタンク33内に流入する。タンク33内に流入した洗浄水によって、コイルばね34の弾性力に抗してタンク33の容積が増加する方向に隔壁32が移動する。
【0042】
[便器洗浄待機状態]
タンク33内に洗浄水が流入を開始して所定時間を経過すると、便器洗浄装置10は、図6に示すように、タンク33内には静水圧と同じ圧力の蓄圧状態で洗浄水が貯留される。この状態が便器洗浄の待機状態になる。
【0043】
[鉢洗浄工程]
図示しない便器洗浄スイッチが操作されると、制御装置24がリム用開閉弁22の第2ソレノイド22Fに対して開弁信号を発信し、図7に示すように、リム用開閉弁22が開弁する。この際、ジェット用開閉弁21は閉弁した状態のままである。
【0044】
リム用開閉弁22が開弁すると、給水源に連通した給水管9Aから弁ユニット20に流入する洗浄水は、上流側連結部9C及び上流側流路9Bを介してリム側流路5Bへ向けて流入する。また、蓄圧器30のタンク33内に蓄圧状態で貯留された洗浄水は、静水圧で蓄圧されているため、給水源から弁ユニット20に流入する洗浄水の流動圧よりも高い。このため、蓄圧器30のタンク33内に蓄圧状態で貯留した洗浄水も給排水管31、流量調整弁23の小孔23B、及びジェット側流路8Bの水平方向に延びた部分を介してリム側流路5Bへ向けて流入する。つまり、リム側流路5Bの上流部で、給水源から供給された洗浄水に蓄圧器30のタンク33内に蓄圧状態で貯留した洗浄水が付加される。このようにして、流量を増幅した洗浄水が、リム側流路5B、リム側連結部5C、及びリム側給水管5Aを介してリムノズル4に設けられたリム吐水口4Aからリム通水路3に沿って吐水される。
【0045】
リム吐水口4Aから吐水される洗浄水は、図10に示すように、給水源から供給される洗浄水R1に蓄圧器30のタンク33内に蓄圧状態で貯留された洗浄水P1が付加される。このため、給水源から供給される洗浄水R1の流量が少なくても、リム吐水口4Aから吐水する洗浄水の流量を設定値以上にすることができる。これにより、リム吐水口4Aから洗浄水を勢いよく吐水することができ、リム通水路3の終端まで洗浄水を流すことができる。このため、便鉢部2の全体を万遍なく洗浄することができる。また、便鉢部2内の洗浄水の水位を上昇させることができる。
【0046】
また、蓄圧器30のタンク33内に蓄圧状態で貯留された洗浄水は、流量調整弁23の小孔23Bを介してリム側流路5Bに流入しているため、タンク33から流出する洗浄水の流量を抑え、タンク33から洗浄水が一気に流出してしまうことを防止している。このため、蓄圧器30のタンク33内に蓄圧状態で貯留された洗浄水の一部だけをリム吐水口4Aから吐水することができる。このように、流量調整弁23によって、リム吐水口4Aから吐水される洗浄水の流量や水量の調整を簡易な構造で容易に行うことができる。
【0047】
便器洗浄スイッチが操作されてから設定時間(T1)を経過後にリム用開閉弁22が閉弁するように、制御装置24がリム用開閉弁22の第2ソレノイド22Fに対して閉弁信号を発信する。このようにして、リム用開閉弁22が閉弁し、鉢洗浄工程が終了する。
【0048】
[ジェット洗浄(汚物等排出)工程]
便器洗浄スイッチが操作されてから設定時間(T1)が経過する直前に制御装置24がジェット用開閉弁21の第1ソレノイド21Fに対して開弁信号を発信し、図8に示すように、ジェット用開閉弁21が開弁する。
【0049】
ジェット用開閉弁21が開弁すると、給水源に連通した給水管9Aから弁ユニット20に流入する洗浄水は、上流側連結部9c及び上流側流路9Bを介してジェット側流路8Bへ向けて流入する。ジェット側流路8Bに流入した洗浄水によって、流量調整弁23の調整弁本体23Aが弁座部8Dから離座する。このように、流量調整弁23は、下流側への大流量の流れを許容するため、給水源に連通した給水管9Aからジェット側流路8Bに流入した洗浄水は、流量を減少させることなく、ジェット側流路8Bの下流側に流入させることができる。
【0050】
また、蓄圧器30のタンク33内に蓄圧状態で貯留された洗浄水は、静水圧で蓄圧されているため、給水源から弁ユニット20に流入する洗浄水の流動圧よりも高い。このため、蓄圧器30のタンク33内に蓄圧状態で貯留した洗浄水も給排水管31を介して連結部27からジェット側流路8Bへ向けて流入する。つまり、流量調整弁23より下流側のジェット側流路8Bで、給水源から供給された洗浄水に蓄圧器30のタンク33内に蓄圧状態で貯留した洗浄水が付加される。このようにして、流量を増幅した洗浄水が、ジェット側流路8B、ジェット側連結部8C、及びジェット側給水管8Aを介してジェットノズル7に設けられたジェット吐水口7Aから便器排水路6の上昇流路に沿って吐水される。
【0051】
蓄圧器30のタンク33が給排水管31を介して、流量調整弁23より下流側のジェット側流路8Bに連通しているため、洗浄水の流れに抵抗となるものが少なく、かつジェット吐水口7Aまでの流路が短い。このため、ジェット吐水口7Aまで流れる間の洗浄水の圧力損失を少なくすることができる。よって、タンク33に蓄圧状態で貯留した洗浄水を付加した洗浄水をジェット吐水口7Aから勢いよく吐水することができる。
【0052】
ジェット吐水口7Aから吐水される洗浄水は、図10に示すように、給水源から供給される洗浄水Jに蓄圧器30のタンク33内に蓄圧状態で貯留された洗浄水P2が付加される。このため、給水源から供給される洗浄水Jの流量が少なくても、ジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水の流量を設定値以上にすることができる。これにより、ジェット吐水口7Aから洗浄水を勢いよく吐水することができる。
【0053】
また、リム用開閉弁22が閉弁(鉢洗浄工程が終了)する直前にジェット用開閉弁21を開弁しているため、リム吐水口4Aからの洗浄水の吐水とジェット吐水口7Aからの洗浄水の吐水とが連続している。このため、リム吐水口4Aからの洗浄水の吐水によって便鉢部2内の洗浄水の水位が最高水位にある状態でジェット吐水口7Aから洗浄水の吐水を開始することができる。つまり、便鉢部2内の洗浄水の位置エネルギーが最大になった状態でジェット吐水口7Aから洗浄水を吐水することができるため、便鉢部2内の洗浄水の最大エネルギーとジェット吐水口7Aから吐水される洗浄水の水勢との相乗効果により、便器排水路6内にサイホン作用を発生させ、少ない洗浄水でも便器排水路6から汚物等を良好に排出することができる。
【0054】
したがって、実施例の便器洗浄装置10は、汚物等の排出性能に優れ、少ない洗浄水であっても便器洗浄を良好に行うことができる。
【0055】
また、タンク33内に蓄圧状態で貯留された洗浄水P2は、鉢洗浄工程の際にリム吐水口4Aから吐水される場合に比べ、ジェット吐水口7Aから吐水される場合の方が圧力損失が少なく、流量が多い。このため、ジェット用開閉弁21が開弁した当初、つまり、ジェット吐水口7Aから洗浄水が吐水される当初の流量は、鉢洗浄工程の際にリム吐水口4Aから吐水される洗浄水の流量よりも多い。その後、タンク33内の蓄圧状態で貯留された洗浄水は時間の経過とともに減少するため、ジェット吐水口7Aから吐水される洗浄水の流量は減少する。
【0056】
このように、便器洗浄装置10は、タンク33内に蓄圧状態で貯留した洗浄水をリム吐水口4Aとジェット吐水口7Aとに適切に分配して吐水することができる。つまり、ジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水は、その水勢により便器排水路6内にサイホン作用を発生させて便器排水路6から汚物等を排出するために利用される。このため、ジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水は、吐水を開始した当初にできる限り勢いよく吐水することが好ましい。一方、鉢洗浄工程の際にリム吐水口4Aから吐水する洗浄水は、便鉢部2の表面を万遍なく洗浄することが目的であり、ジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水の当初の水勢より弱くても便鉢部2の表面を万遍なく洗浄することができる。
【0057】
便器洗浄スイッチが操作されてから設定時間(T2)を経過後にジェット用開閉弁21が閉弁するように、制御装置24がジェット用開閉弁21の第1ソレノイド21Fに対して閉弁信号を発信する。このようにして、ジェット用開閉弁21が閉弁し、ジェット洗浄工程が終了する。ジェット洗浄工程において、タンク33内に蓄圧状態で貯留した洗浄水は、全てジェット吐水口7Aから吐水される。
【0058】
ジェット洗浄工程においてジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水の水量は、鉢洗浄工程においてリム吐水口4Aから吐水する洗浄水の水量よりも多い。このように、便器洗浄装置10は、タンク33内に蓄圧状態で貯留した洗浄水をリム吐水口4Aとジェット吐水口7Aとに適切に分配して吐水することができる。つまり、ジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水は、便器排水路6内にサイホン作用を発生・継続させて便器排水路6から汚物等を排出するために利用される。このため、ジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水はできる限り多い水量であることが好ましい。一方、鉢洗浄工程の際にリム吐水口4Aから吐水する洗浄水は、便鉢部2の表面を万遍なく洗浄することが目的であり、ジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水の水量よりも少なくても便鉢部2の表面を万遍なく洗浄することができる。
【0059】
[覆水工程]
便器洗浄スイッチが操作されてから設定時間(T2)が経過する直前に制御装置24がリム用開閉弁22の第2ソレノイド22Fに対して開弁信号を発信し、図9に示すように、リム用開閉弁22が開弁する。
【0060】
リム用開閉弁22が開弁した時点では、蓄圧器30のタンク33内には洗浄水が貯留されていない。このため、リム用開閉弁22が開弁すると、給水源に連通した給水管9Aから弁ユニット20に流入する洗浄水のみが、上流側連結部9C、上流側流路9B、リム側流路5B、リム側連結部5C、及びリム側給水管5Aを介してリムノズル4に設けられたリム吐水口4Aからリム通水路3に沿って吐水される。
【0061】
リム吐水口4Aから吐水される洗浄水は、図10に示すように、給水源から供給される洗浄水R2のみであり、便鉢部2内に貯留されて水封が形成される。便器洗浄スイッチが操作されてから設定時間(T3)を経過後にリム用開閉弁22が開弁するように、制御装置24がリム用開閉弁22の第2ソレノイド22Fに対して閉弁信号を発信する。このようにして、リム用開閉弁22が閉弁し、覆水工程が終了する。
【0062】
覆水工程が終了すると、便器洗浄装置10は、図5に示すように、ジェット用開閉弁21及びリム用開閉弁22が閉弁した状態になる。このため、便器洗浄装置10は、蓄圧器30への蓄水工程を経由して、便器洗浄待機状態に復帰する。
【0063】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0064】
(1)実施例では、ジェット側給水路に流量調整弁23を設けていたが、流量調整弁23を設けなくてもよい。
【0065】
この場合、図11(A)に示すように、上流側給水路9A、9B、9Cに開閉弁40を介して蓄圧器30を連通するとよい。この便器洗浄装置100では、鉢洗浄工程の際にリム用開閉弁22を開閉するタイミング及びジェット洗浄工程の際にジェット用開閉弁21を開閉するタイミングに合わせて、開閉弁40を開閉する。これにより、リム吐水口4A及びジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水の流量を設定値以上にしつつ、リム吐水口4Aからの洗浄水の吐水とジェット吐水口7Aからの洗浄水の吐水とを連続して行うことができる。
【0066】
また、図11(B)に示すように、上流側給水路9A、9B、9Cに流路切替弁50と管径が相違する給排水管50A、50Bを介して蓄圧器30を連通するとよい。この便器洗浄装置110では、流路切替弁50を切り替えることにより、鉢洗浄工程の際に管径が小さい方の給排水管50Aから蓄圧器30に蓄圧状態で貯留された洗浄水が流出する。一方、ジェット洗浄工程の際に管径が大きい方の給排水管50Bから蓄圧器30に蓄圧状態で貯留された洗浄水が流出する。これにより、ジェット洗浄工程の際にジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水の当初の流量を鉢洗浄工程の際にリム吐水口4Aから吐水する洗浄水の流量よりも多くすることができる。
【0067】
また、図11(C)に示すように、ジェット側流路8Bに流路切替弁51を介して蓄圧器30を連通するとよい。この便器洗浄装置120では、鉢洗浄工程の際にリム用開閉弁22を開閉するタイミング及びジェット洗浄工程の際にジェット用開閉弁21を開閉するタイミングに合わせて、流路切替弁51を切り替えて、蓄圧器30に蓄圧状態で貯留された洗浄水をリム吐水口4A又はジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水に付加する。これにより、リム吐水口4A及びジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水の流量を設定値以上にしつつ、リム吐水口4Aからの洗浄水の吐水とジェット吐水口7Aからの洗浄水の吐水とを連続して行うことができる。
【0068】
(2)実施例では、流量増幅機構として蓄圧器30を採用していたが、流量増幅機構はタンクとポンプとから構成してもよい。
【0069】
この場合、図12(A)に示すように、タンク35及びポンプ36をジェット側給水路8A、8B、8Cの上流側から順に直列的に設けるとよい。この便器洗浄装置200は、上流側給水路9A、9B、9Cに開閉弁41、上流側給水路9A、9B、9Cがリム側給水路5A、5B、5Cとジェット側給水路8A、8B、8Cとに分岐する部分に流路切替弁52を設けている。また、この便器洗浄装置200は、ポンプ36の下流側のジェット側給水路8A、8B、8Cとリム側給水路5A、5B、5Cと連通するパイパス流路70を設けている。バイパス流路70は開閉弁42と逆止弁60とを設けている。逆止弁60は、ジェット側給水路8A、8B、8Cからリム側給水路5A、5B、5Cへ洗浄水が流れることを許容し、その逆の流れを阻止する。
【0070】
この便器洗浄装置200では、鉢洗浄工程において、リム吐水口4Aから洗浄水を吐水する際、流路切替弁52を切り替えて、給水源から供給される洗浄水をリム吐水口4Aに供給するとともに、開閉弁42を開弁し、かつポンプ36を駆動してタンク35に貯留された一部の洗浄水をバイパス流路70を介してリム吐水口4Aに供給する。また、ジェット洗浄工程において、ジェット吐水口7Aから洗浄水を吐水する際、開閉弁42を閉弁し、かつポンプ36を駆動してタンク35に貯留された残部の洗浄水をジェット吐水口7Aに供給する。この際、ポンプ36はリム吐水口4A及びジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水の流量を設定値以上になるように駆動する。
【0071】
また、図12(B)に示すように、上流側から順にタンク35及びポンプ36の順に配置された増幅流路37をジェット側給水路8A、8B、8Cに並列的に設けるとよい。この便器洗浄装置210も、上流側給水路9A、9B、9Cに開閉弁41、上流側給水路9A、9B、9Cがリム側給水路5A、5B、5Cとジェット側給水路8A、8B、8Cとに分岐する部分に流路切替弁52を設けている。また、この便器洗浄装置210は、増幅流路37の下流端がジェット側給水路8A、8B、8Cに合流する部分よりも下流側のジェット側給水路8A、8B、8Cとリム側給水路5A、5B、5Cと連通するパイパス流路70を設けている。バイパス流路70は開閉弁42と逆止弁60とを設けている。逆止弁60は、ジェット側給水路8A、8B、8Cからリム側給水路5A、5B、5Cへ洗浄水が流れることを許容し、その逆の流れを阻止する。
【0072】
この便器洗浄装置210では、鉢洗浄工程において、リム吐水口4Aから洗浄水を吐水する際、流路切替弁52を切り替えて、給水源から供給される洗浄水をリム吐水口4Aに供給するとともに、開閉弁42を開弁し、かつポンプ36を駆動してタンク35に貯留された一部の洗浄水をバイパス流路70を介してリム吐水口4Aに供給する。また、ジェット洗浄工程において、ジェット吐水口7Aから洗浄水を吐水する際、流路切替弁52を切り替えて、給水源から供給される洗浄水をジェット吐水口7Aに供給するとともに、開閉弁42を閉弁し、かつポンプ36を駆動してタンク35に貯留された残部の洗浄水をジェット吐水口7Aに供給する。この際、ポンプ36はリム吐水口4A及びジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水の流量を設定値以上になるように駆動する。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は水洗式便器に利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1…便器本体
2…便鉢部
3…リム通水路
4A…リム吐水口
6…便器排水路
7A…ジェット吐水口
5A、5B、5C…リム側給水路(5A…リム側給水管、5B…リム側流路、5C…リム側連結部)
8A、8B、8C…ジェット側給水路(8A…ジェット側給水管、8B…ジェット側流路、8C…ジェット側連結部)
9A、9B、9C…上流側給水路(9A…給水管、9B…上流側流路、9C…上流側連結部)
5A、5B、5C、8A、8B、8C、9A、9B、9C…給水路
10、100、110、120、200、210…便器洗浄装置
20…弁ユニット(給水切替機構)
21…ジェット用開閉弁
22…リム用開閉弁
23…流量調整弁
24…制御装置
30…蓄圧器(流量増幅機構)
33…タンク
35、36…流量増幅機構(35…タンク、36…ポンプ)
【技術分野】
【0001】
本発明は便器洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には従来の便器洗浄装置が開示されている。この便器洗浄装置は便器本体に洗浄水を供給する。便器本体は、便鉢部、この便鉢部の上端部の内周縁に設けられたリム通水路、このリム通水路に沿って洗浄水を吐水するリム吐水口、便鉢部の下流側に連続して設けられた便器排水路、及びこの便器排水路の下流側に向けて洗浄水を吐水するジェット吐水口を有している。
【0003】
便器洗浄装置は弁ユニットを有している。この弁ユニットはリム用開閉弁及びジェット用開閉弁を有している。リム用開閉弁及びジェット用開閉弁の上流側は給水路を介して給水源に連通している。リム用開閉弁の下流側はリム側給水路を介してリム吐水口に連通している。ジェット用開閉弁の下流側はジェット側給水路を介してジェット吐水口に連通している。給水路には洗浄水を蓄圧状態で貯留する蓄圧器が連通している。蓄圧器は、リム用開閉弁及びジェット用開閉弁を閉弁すると、洗浄水がタンク内に流入し、静水圧によって洗浄水を蓄圧状態で貯留することができる。また、蓄圧器は、リム用開閉弁又はジェット用開閉弁が開弁すると、タンクから蓄圧状態で貯留した洗浄水を流出して給水源から供給された洗浄水に付加し、リム吐水口又はジェット吐水口から吐水することができる。
【0004】
この便器洗浄装置は、リム吐水口及びジェット吐水口から洗浄水を吐水して便器洗浄を行う際、リム吐水口、ジェット吐水口、リム吐水口の順に洗浄水を吐水する。この際、最初のリム吐水口からの洗浄水の吐水、及びジェット吐水口からの洗浄水の吐水には、蓄圧器のタンク内に蓄圧状態で貯留した洗浄水を給水源から供給された洗浄水に付加する。この便器洗浄装置は、最初のリム吐水口からの洗浄水の吐水により蓄圧器のタンク内に蓄圧状態で貯留した洗浄水の全量を流出する。このため、この便器洗浄装置は、ジェット吐水口からの洗浄水の吐水を開始する前に、リム用開閉弁及びジェット用開閉弁を閉弁して、再度、蓄圧器のタンク内に蓄圧状態で洗浄水を貯留する。その後、この便器洗浄装置は、ジェット用開閉弁を開弁してジェット口から洗浄水を吐水する。このように、この便器洗浄装置は、リム吐水口から勢いよく洗浄水を吐水して便鉢部を万遍なく洗浄し、ジェット吐水口から勢いよく洗浄水を吐水して便器排水路から汚物等を排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−146602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された便器洗浄装置では、最初のリム吐水口からの洗浄水の吐水を終了してからジェット吐水口からの洗浄水の吐水を開始するまでの間にタイムラグが生じる。便器洗浄において、最初のリム吐水口からの洗浄水の吐水によって便鉢部内の洗浄水の水位が最高水位にある状態で、ジェット吐水口からの洗浄水の吐水を開始することが好ましい。つまり、便鉢部内の洗浄水の水位が最高水位になることで最大になった便鉢部内の洗浄水の位置エネルギーと、ジェット吐水口から吐水する洗浄水の水勢との相乗効果により、便器排水路から汚物等を最も良好に排出することができる。この便器洗浄装置では、最初のリム吐水口からの洗浄水の吐水を終了してからジェット吐水口からの洗浄水の吐水を開始するまでの間にタイムラグが生じるため、ジェット吐水口からの洗浄水の吐水を開始する時点では、便鉢部内の洗浄水の水位が最高水位よりも低下している。このため、この便器洗浄装置は、便鉢部内の洗浄水の位置エネルギーを最大に利用することができず、汚物等の排出性能が劣るおそれがある。特に、節水のために洗浄水量を減少させた場合には、顕著に汚物等の排出性能が劣るおそれがある。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、汚物等の排出性能に優れ、少ない洗浄水量であっても便器洗浄を良好に行うことができる便器洗浄装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の便器洗浄装置は、便鉢部、この便鉢部の上端開口部の内周縁に設けられたリム通水路、このリム通水路に沿って洗浄水を吐水するリム吐水口、前記便鉢部の下流側に連続して設けられた便器排水路、及びこの便器排水路の下流側に向けて洗浄水を吐水するジェット吐水口を有する便器本体に洗浄水を供給する便器洗浄装置であって、
前記リム吐水口及び前記ジェット吐水口へ洗浄水を供給する給水路と、
この給水路に設けられ、前記リム吐水口及び前記ジェット吐水口から洗浄水を吐水して便器洗浄を行う際、先ず前記リム吐水口から洗浄水を吐水し、その後に連続して前記ジェット吐水口から洗浄水を吐水するように給水先を切り替える給水切替機構と、
前記給水路に連通して洗浄水を貯留するタンクを有し、前記リム吐水口及び前記ジェット吐水口から吐水する洗浄水の流量が設定値以上になるように、前記タンク内に貯留した洗浄水の一部を前記リム吐水口から吐水し、残部を前記ジェット吐水口から吐水する流量増幅機構とを備えていることを特徴とする。
【0009】
この便器洗浄装置では、流量が設定値以上になるようにタンクに貯留した洗浄水をリム吐水口とジェット吐水口とに分配して吐水する。このため、この便器洗浄装置は、便器洗浄を行う際、リム等水口及びジェット吐水口から吐水する洗浄水の流量を設定値以上にしつつ、リム吐水口からの洗浄水の吐水とジェット吐水口からの洗浄水の吐水とを連続して行うことができる。よって、リム吐水口からの洗浄水の吐水によって便鉢部内の洗浄水の水位が最高水位にある状態でジェット吐水口から洗浄水の吐水を開始することができる。つまり、便鉢部内の洗浄水の位置エネルギーが最大になった状態でジェット吐水口から洗浄水を吐水することができるため、便鉢部内の洗浄水の最大の位置エネルギーとジェット吐水口から吐水される洗浄水の水勢との相乗効果により、少ない洗浄水でも便器排水路から汚物等を良好に排出することができる。なお、流量とは単位時間当たりに通過する水量をいう。
【0010】
したがって、本発明の便器洗浄装置は、汚物等の排出性能に優れ、少ない洗浄水であっても便器洗浄を良好に行うことができる。
【0011】
流量増幅機構は蓄圧器であるとよい。この蓄圧器置は、給水路から流入した洗浄水により容積を拡大するタンクと、タンクの容積を減少させる方向に弾性力を付与する弾性体とを有している。この蓄圧器は、下流側の給水路が閉鎖されると、洗浄水の静水圧により、弾性体の弾性力に抗してタンクの容積を拡大しつつ、洗浄水を蓄圧状態で貯留することができる。蓄圧器は、下流側の給水路が開放されると、タンク内に蓄圧状態で貯留した洗浄水を給水路を流れる洗浄水に付加することができる。このように、蓄圧器は、無電源でリム吐水口及びジェット吐水口から吐水する洗浄水の流量を設定値以上に増幅することができる。
【0012】
また、流量増幅機構はタンクとポンプとから構成されていてもよい。この場合、流量が設定値以上になるようにポンプを駆動することにより、タンクに貯留された洗浄水を流出し、リム吐水口及びジェット吐水口から吐水する洗浄水の流量を設定値以上に増幅することができる。
【0013】
前記ジェット吐水口から吐水する洗浄水の当初の流量は、前記リム吐水口から吐水する洗浄水の流量よりも多くし得る。この場合、タンクに貯留した洗浄水をリム吐水口とジェット吐水口とに適切に分配して吐水することができる。つまり、ジェット吐水口から吐水する洗浄水は、その水勢により便器排水路内にサイホン作用を発生させる等して便器排水路から汚物等を排出するために利用される。このため、ジェット吐水口から吐水する洗浄水は、吐水を開始した当初にできる限り勢いよく吐水することが好ましい。一方、リム吐水口から吐水する洗浄水は、便鉢部の表面を万遍なく洗浄することが目的であり、ジェット吐水口から吐水する洗浄水の当初の水勢より弱くても便鉢部の表面を万遍なく洗浄することができる。
【0014】
前記リム吐水口から吐水する前記タンク内に貯留した一部の洗浄水の水量よりも前記ジェット吐水口から吐水する前記タンク内に貯留した残部の洗浄水の水量を多くして、前記ジェット吐水口から吐水する洗浄水の水量が前記リム吐水口から吐水する洗浄水の水量よりも多くし得る。この場合、タンクに貯留した洗浄水をリム吐水口とジェット吐水口とに適切に分配して吐水することができる。つまり、ジェット吐水口から吐水する洗浄水は、便器排水路内にサイホン作用を発生・継続させる等して便器排水路から汚物等を排出するために利用される。このため、ジェット吐水口から吐水する洗浄水はできる限り多い水量であることが好ましい。一方、リム吐水口から吐水する洗浄水は、便鉢部の表面を万遍なく洗浄することが目的であり、ジェット吐水口から吐水する洗浄水の水量よりも少なくても便鉢部の表面を万遍なく洗浄することができる。
【0015】
前記給水路は、給水源に連通する上流側給水路と、この上流側給水路の下流端を分岐して形成したジェット側給水路及びリム側給水路とから構成されており、
前記流量増幅機構はジェット側給水路に連通し得る。
【0016】
この場合、流量増幅機構からジェット吐水口までの流路が短いため、その間を流れる洗浄水の圧力損失を少なくすることができる。このため、この便器洗浄装置は流量増幅機構から流出した洗浄水をジェット吐水口から勢いよく吐水することができる。よって、便器排水路から汚物等を良好に排出することができる。
【0017】
前記給水切替機構は、前記ジェット側給水路を開閉するジェット用開閉弁と、前記リム側給水路を開閉するリム用開閉弁と、前記ジェット用開閉弁及び前記リム用開閉弁の開閉を制御する制御装置とを有しており、
前記ジェット用開閉弁よりも上流側の前記ジェット側給水路に前記流量増幅機構を連通し、この流量増幅機構を連通した連通部よりも上流側の前記ジェット側給水路に設けられ、前記ジェット側給水路の下流側への大流量の流れを許容し、上流側への小流量の流れを許容する流量調整弁を備え得る。
【0018】
この場合、流量調整弁により、流量増幅機構から流出する洗浄水の流量をジェット吐水口から洗浄水を吐水する際よりもリム吐水口から洗浄水を吐水する際に少なくすることができる。このため、ジェット吐水口から吐水する洗浄水の当初の流量をリム吐水口から吐水する洗浄水の流量よりも多くしたり、ジェット吐水口から吐水する洗浄水の水量をリム吐水口から吐水する洗浄水の水量よりも多くしたりすることが簡易な構造で容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例の便器洗浄装置が取り付けられた便器本体を示す平面図である。
【図2】実施例の便器洗浄装置が取り付けられた便器本体を示す断面図である。
【図3】実施例の弁ユニットを示す断面図である。
【図4】実施例の便器洗浄装置を示すブロック図である。
【図5】実施例の便器洗浄装置の蓄圧器への蓄水工程を示す概略図である。
【図6】実施例の便器洗浄装置の便器洗浄待機状態を示す概略図である。
【図7】実施例の便器洗浄装置の鉢洗浄工程を示す概略図である。
【図8】実施例の便器洗浄装置のジェット洗浄工程を示す概略図である。
【図9】実施例の便器洗浄装置の覆水工程を示す概略図である。
【図10】実施例の便器洗浄装置の便器洗浄における流量変化を示すグラフである。
【図11】(A)、(B)、(C)他の実施例の便器洗浄装置を示すブロック図である。
【図12】(A)、(B)他の実施例の便器洗浄装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の便器洗浄装置を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0021】
<実施例>
実施例の便器洗浄装置10は、図1〜図4に示すように、便器本体1に洗浄水を供給する。便器本体1は、便鉢部2、リム通水路3、リム吐水口4A、便器排水路6、及びジェット吐水口7Aを有している。
【0022】
リム通水路3は便鉢部2の上端開口部の内周縁に棚状に設けられている。リム吐水口4Aはリムノズル4の先端面に開口して形成されている。リムノズル4は、便鉢部2の前端F側から見て便鉢部2の左側後方のコーナー部に配置されている。リムノズル4はリム側給水路の一部を形成するリム側給水管5Aの下流端部に連結されている。リム吐水口4Aから吐水された洗浄水は、リム通水路3に沿って便鉢部2の上端周縁を一方向に旋回しつつ、便鉢部2内に流下する。このため、リム吐水口4Aから洗浄水が吐水されると、便鉢部2内の中心部に向かって旋回流を形成しつつ、便鉢部2内の洗浄水の水位が上昇する。
【0023】
便器排水路6は便鉢部2の下流側に連続して設けられている。便器排水路6は、便鉢部2の下部から後方かつ斜め上方に向けて延びる上昇流路と、この上昇流路の上端部から屈曲して垂直下方に向けて延びる下降流路とから構成されている。
【0024】
ジェット吐水口7Aはジェットノズル7の先端面に開口して形成されている。ジェットノズル7は便器排水路6の上昇流路の上流下端部に取り付けられている。ジェットノズル7はジェット側給水路の一部を形成するジェット側給水管8Aの下流端部に連結されている。ジェット吐水口7Aから吐水された洗浄水は、便器排水路6の上昇流路を充満しつつ、便器排水路6の下流側に流れる。
【0025】
便器洗浄装置10は、給水切替機構である弁ユニット20と、流量増幅機構である蓄圧器30とを備えている。便器洗浄装置10である弁ユニット20と蓄圧器30とは、便器本体1の後部に取り付けられており、上方及び側方を上カバー11C及び図示しない下カバーによって覆われている。上カバー11Cは、便器本体1の後方上部に取り付けられ、便座11A及び便蓋11Bを回動自在に軸支している。下カバーは便器本体1の後方側面に取り付けられている。
【0026】
弁ユニット20は、図3及び図4に示すように、上流側流路9B、及びこの上流側流路9Bの下流端を分岐して形成したジェット側流路8Bとリム側流路5Bとを有している。上流側流路9Bは上下方向に延びて形成されている。ジェット側流路8Bは、上流側流路9Bの下流端である上端部から水平方向に延びてから上方に向けて屈曲し、ジェット用開閉弁21を介して上下方向に延びている。リム側流路5Bは、上流側流路9Bの下流端である上端部からジェット側流路8Bの水平方向に延びた部分の反対方向に延びてから上方に向けて屈曲し、リム用開閉弁22を介して上下方向に延びている。
【0027】
上流側流路9Bは上流端である下部に上流側連結部9Cを形成している。上流側連結部9Cは給水源に連通した給水管9Aに連結している。このように、上流側給水路は、上流側流路9B、上流側連結部9C及び給水管9Aによって構成されている。上流側流路9Bはストレーナー25を収納している。このストレーナー25は上流側流路9Bの下端部から着脱することができる。上流側流路9Bは下流端である上端部に逆止弁26を配置している。逆止弁26は、上流側から下流側へ洗浄水が流れることを許容し、その逆の流れを防止する。
【0028】
ジェット側流路8Bは下流端である上部にジェット側連結部8Cを形成している。ジェット側連結部8Cはジェット側給水管8Aに連結している。このように、ジェット側給水路は、ジェット側流路8B、ジェット側連結部8C及びジェット側給水管8Aによって構成されている。また、上流側給水路及びジェット側給水路によって、ジェット吐水口7Aへ洗浄水を供給する給水路を構成している。
【0029】
ジェット側流路8Bは、上流側流路9Bの上端部から水平方向に延びた部分であって、上方に向けて屈曲した屈曲部Cより上流側に流量調整弁23を収納している。流量調整弁23は、ジェット側流路8Bを拡径して設けた弁座部8Dに下流側から当接する調整弁本体23Aと、この調整弁本体23Aを弁座部8Dに当接する方向に弾性力を付与するコイルばね23Cとを有している。調整弁本体23Aは、小孔23Bを貫設している。このように構成された流量調整弁23は、上流側から下流側へ洗浄水が流れる際、調整弁本体23Aが弁座部8Dから離座する。このため、流量調整弁23はジェット側給水路の下流側への大流量の流れを許容する。一方、この流量調整弁23は、下流側から上流側に洗浄水が流れる際、調整弁本体23Aが弁座部8Dに着座し、小孔23Bのみを洗浄水を流通させることができる。このため、流量調整弁23はジェット側給水路の上流側への小流量の流れを許容する。
【0030】
ジェット側流路8Bは屈曲部Cの下端部に給排水管31を介して蓄圧器30を連通する連通部27を形成している。また、ジェット側流路8Bは屈曲部Cの側面部に図示しない局部洗浄装置に洗浄水を供給する局部洗浄用給水路Sを形成している。
【0031】
ジェット側流路8Bは、屈曲部Cの下流側であり、上下方向に延びた部分の下部にジェット側給水路を開閉するジェット用開閉弁21を設けている。ジェット用開閉弁21は、ダイアフラム式の第1主弁21A、第1主弁21Aが離着する第1弁座21B、第1主弁21Aの背後に形成された第1背圧室21C、第1背圧室21Cと第1主弁21Aの二次側とを連通する第1排水路21D、第1排水路21Dを開閉する第1パイロット弁21E、第1パイロット弁21Eを開閉駆動する第1ソレノイド21Fを有している。第1主弁21Aは第1背圧室21Cと第1主弁21Aの一次側とを連通する第1小孔21Gを貫設している。第1ソレノイド21Fは制御装置24から送信される開閉信号に基づいて駆動する。
【0032】
このように構成されたジェット用開閉弁21は、以下に説明するようにジェット側給水路を開閉する。第1ソレノイド21Fが制御装置24からの開弁信号を受信すると、第1ソレノイド21Fが駆動して第1パイロット弁21Eが第1排水路21Dを開放する。すると、第1背圧室21C内の洗浄水が第1排水路21Dから第1主弁21Aの2次側に排水される。これにより、第1主弁21Aの第1背圧室21C側の面よりもその反対側の面にかかる洗浄水の圧力が高くなり、第1主弁21Aが第1弁座21Bから離座してジェット用開閉弁21が開弁する。一方、第1ソレノイド21Fが制御装置24からの閉弁信号を受信すると、第1ソレノイド21Fが駆動して第1パイロット弁21Eが第1排水路21Dを閉鎖する。すると、第1主弁21Aの一次側から第1小孔21Gを介して第1背圧室21C内に洗浄水が流入する。これにより、第1主弁21Aの第1背圧室21C側の面の方がその反対側の面にかかる洗浄水の圧力よりも高くなり、第1主弁21Aが第1弁座21Bに着座して、ジェット用開閉弁21は閉弁する。
【0033】
ジェット側流路8Bの上端部にはジェット側大気開放弁28Aが設けられている。ジェット側大気開放弁28Aは、ジェット側給水路を介してジェット吐水口7Aから洗浄水を吐水していない時には大気開放状態になり、ジェット側大気開放弁28Aより下流側を大気に開放している。これにより、ジェット用大気開放弁28Aより二次側の汚水がジェット用開閉弁21より一次側に逆流することを防止している。
【0034】
リム側流路5Bは下流端である上部にリム側連結部5Cを形成している。リム側連結部5Cはリム側給水管5Aに連結している。このように、リム側給水路は、リム側流路5B、リム側連結部5C及びリム側給水管5Aによって構成されている。また、上流側給水路及びリム側給水路によって、リム吐水口4Aへ洗浄水を供給する給水路を構成している。
【0035】
リム側流路5Bは、上流側流路9Bの上端部から水平方向に延びた部分に蓋部材29を収納している。蓋部材29は、一方の端部(図3における右側)が閉鎖された筒形状であり、内側から外側に洗浄水が流通するように側面に複数の開口部5Dが設けられている。開口5Dから流出した洗浄水は上下方向に延びたリム側流路5Bへ流入する。蓋部材29はリム側流路5Bに対して着脱可能である。このため、蓋部材29をリム側流路5Bから取り外し、流量調整弁23をジェット側流路8Bに収納したり、メンテナンスのために取り外したりすることができる。
【0036】
リム側流路5Bは、上下方向に延びた部分の下部にリム側給水路を開閉するリム用開閉弁22を設けている。リム用開閉弁22は、ダイアフラム式の第2主弁22A、第2主弁22Aが離着する第2弁座22B、第2主弁22Aの背後に形成された第2背圧室22C、第2背圧室22Cと第2主弁22Aの二次側とを連通する第2排水路22D、第2排水路22Dを開閉する第2パイロット弁22E、第2パイロット弁22Eを開閉駆動する第2ソレノイド22Fを有している。第2主弁22Aは第2背圧室22Cと第2主弁22Aの一次側とを連通する第2小孔22Gを貫設している。第2ソレノイド22Fは制御装置24から送信される開閉信号に基づいて駆動する。
【0037】
このように構成されたリム用開閉弁22は、以下に説明するようにリム側給水路を開閉する。第2ソレノイド22Fが制御装置24からの開弁信号を受信すると、第2ソレノイド22Fが駆動して第2パイロット弁22Eが第2排水路22Dを開放する。すると、第2背圧室22C内の洗浄水が第2排水路22Dから第2主弁22Aの2次側に排水される。これにより、第2主弁22Aの第2背圧室22C側よりもその反対側の面にかかる洗浄水の圧力が高くなり、第2主弁22Aが第2弁座22Bから離座してリム用開閉弁22が開弁する。一方、第2ソレノイド22Fが制御装置24からの閉弁信号を受信すると、第2ソレノイド22Fが駆動して第2パイロット弁22Eが第2排水路22Dを閉鎖する。すると、第2主弁22Aの一次側から第2小孔22Gを介して第2背圧室22C内に洗浄水が流入する。これにより、第2主弁22Aの第2背圧室22C側の面の方がその反対側の面にかかる洗浄水の圧力よりも高くなり、第2主弁22Aが第2弁座22Bに着座して、リム用開閉弁22は閉弁する。
【0038】
リム側流路5Bの上端部にはリム側大気開放弁28Bが設けられている。リム側大気開放弁28Bは、リム側給水路を介してリム吐水口4Aから洗浄水を吐水していない時には大気開放状態になり、リム側大気開放弁28Bより下流側を大気に開放している。これにより、リム用大気開放弁28Bより二次側の汚水がリム用開閉弁22より一次側に逆流することを防止している。
【0039】
蓄圧器30は、図5〜図9に示すように、往復移動する隔壁32を収納し、この隔壁32の往復移動によって容積を増減するタンク33を有している。蓄圧器30は、タンク33の容積を減少させる方向に隔壁32に対して弾性力を付与するコイルばね34を有している。このため、蓄圧器30のタンク33は、給排水管31を介して洗浄水が流入すると容積を拡大しつつ、洗浄水を蓄圧状態で貯留することができる。
【0040】
次に、この便器洗浄装置10が便器本体1に洗浄水を供給して行う便器洗浄について説明する。
【0041】
[蓄圧器への蓄水工程]
便器洗浄装置10は、図5に示すように、ジェット用開閉弁21及びリム用開閉弁22を閉弁する。この状態では、給水源に連通した給水管9Aから弁ユニット20に流入する洗浄水は、上流側連結部9C、上流側流路9B、ジェット側流路8Bの水平方向に延びた部分、流量調整弁23、屈曲部Cに形成された連通部27、及び給排水管31を経由して蓄圧器30のタンク33内に流入する。タンク33内に流入した洗浄水によって、コイルばね34の弾性力に抗してタンク33の容積が増加する方向に隔壁32が移動する。
【0042】
[便器洗浄待機状態]
タンク33内に洗浄水が流入を開始して所定時間を経過すると、便器洗浄装置10は、図6に示すように、タンク33内には静水圧と同じ圧力の蓄圧状態で洗浄水が貯留される。この状態が便器洗浄の待機状態になる。
【0043】
[鉢洗浄工程]
図示しない便器洗浄スイッチが操作されると、制御装置24がリム用開閉弁22の第2ソレノイド22Fに対して開弁信号を発信し、図7に示すように、リム用開閉弁22が開弁する。この際、ジェット用開閉弁21は閉弁した状態のままである。
【0044】
リム用開閉弁22が開弁すると、給水源に連通した給水管9Aから弁ユニット20に流入する洗浄水は、上流側連結部9C及び上流側流路9Bを介してリム側流路5Bへ向けて流入する。また、蓄圧器30のタンク33内に蓄圧状態で貯留された洗浄水は、静水圧で蓄圧されているため、給水源から弁ユニット20に流入する洗浄水の流動圧よりも高い。このため、蓄圧器30のタンク33内に蓄圧状態で貯留した洗浄水も給排水管31、流量調整弁23の小孔23B、及びジェット側流路8Bの水平方向に延びた部分を介してリム側流路5Bへ向けて流入する。つまり、リム側流路5Bの上流部で、給水源から供給された洗浄水に蓄圧器30のタンク33内に蓄圧状態で貯留した洗浄水が付加される。このようにして、流量を増幅した洗浄水が、リム側流路5B、リム側連結部5C、及びリム側給水管5Aを介してリムノズル4に設けられたリム吐水口4Aからリム通水路3に沿って吐水される。
【0045】
リム吐水口4Aから吐水される洗浄水は、図10に示すように、給水源から供給される洗浄水R1に蓄圧器30のタンク33内に蓄圧状態で貯留された洗浄水P1が付加される。このため、給水源から供給される洗浄水R1の流量が少なくても、リム吐水口4Aから吐水する洗浄水の流量を設定値以上にすることができる。これにより、リム吐水口4Aから洗浄水を勢いよく吐水することができ、リム通水路3の終端まで洗浄水を流すことができる。このため、便鉢部2の全体を万遍なく洗浄することができる。また、便鉢部2内の洗浄水の水位を上昇させることができる。
【0046】
また、蓄圧器30のタンク33内に蓄圧状態で貯留された洗浄水は、流量調整弁23の小孔23Bを介してリム側流路5Bに流入しているため、タンク33から流出する洗浄水の流量を抑え、タンク33から洗浄水が一気に流出してしまうことを防止している。このため、蓄圧器30のタンク33内に蓄圧状態で貯留された洗浄水の一部だけをリム吐水口4Aから吐水することができる。このように、流量調整弁23によって、リム吐水口4Aから吐水される洗浄水の流量や水量の調整を簡易な構造で容易に行うことができる。
【0047】
便器洗浄スイッチが操作されてから設定時間(T1)を経過後にリム用開閉弁22が閉弁するように、制御装置24がリム用開閉弁22の第2ソレノイド22Fに対して閉弁信号を発信する。このようにして、リム用開閉弁22が閉弁し、鉢洗浄工程が終了する。
【0048】
[ジェット洗浄(汚物等排出)工程]
便器洗浄スイッチが操作されてから設定時間(T1)が経過する直前に制御装置24がジェット用開閉弁21の第1ソレノイド21Fに対して開弁信号を発信し、図8に示すように、ジェット用開閉弁21が開弁する。
【0049】
ジェット用開閉弁21が開弁すると、給水源に連通した給水管9Aから弁ユニット20に流入する洗浄水は、上流側連結部9c及び上流側流路9Bを介してジェット側流路8Bへ向けて流入する。ジェット側流路8Bに流入した洗浄水によって、流量調整弁23の調整弁本体23Aが弁座部8Dから離座する。このように、流量調整弁23は、下流側への大流量の流れを許容するため、給水源に連通した給水管9Aからジェット側流路8Bに流入した洗浄水は、流量を減少させることなく、ジェット側流路8Bの下流側に流入させることができる。
【0050】
また、蓄圧器30のタンク33内に蓄圧状態で貯留された洗浄水は、静水圧で蓄圧されているため、給水源から弁ユニット20に流入する洗浄水の流動圧よりも高い。このため、蓄圧器30のタンク33内に蓄圧状態で貯留した洗浄水も給排水管31を介して連結部27からジェット側流路8Bへ向けて流入する。つまり、流量調整弁23より下流側のジェット側流路8Bで、給水源から供給された洗浄水に蓄圧器30のタンク33内に蓄圧状態で貯留した洗浄水が付加される。このようにして、流量を増幅した洗浄水が、ジェット側流路8B、ジェット側連結部8C、及びジェット側給水管8Aを介してジェットノズル7に設けられたジェット吐水口7Aから便器排水路6の上昇流路に沿って吐水される。
【0051】
蓄圧器30のタンク33が給排水管31を介して、流量調整弁23より下流側のジェット側流路8Bに連通しているため、洗浄水の流れに抵抗となるものが少なく、かつジェット吐水口7Aまでの流路が短い。このため、ジェット吐水口7Aまで流れる間の洗浄水の圧力損失を少なくすることができる。よって、タンク33に蓄圧状態で貯留した洗浄水を付加した洗浄水をジェット吐水口7Aから勢いよく吐水することができる。
【0052】
ジェット吐水口7Aから吐水される洗浄水は、図10に示すように、給水源から供給される洗浄水Jに蓄圧器30のタンク33内に蓄圧状態で貯留された洗浄水P2が付加される。このため、給水源から供給される洗浄水Jの流量が少なくても、ジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水の流量を設定値以上にすることができる。これにより、ジェット吐水口7Aから洗浄水を勢いよく吐水することができる。
【0053】
また、リム用開閉弁22が閉弁(鉢洗浄工程が終了)する直前にジェット用開閉弁21を開弁しているため、リム吐水口4Aからの洗浄水の吐水とジェット吐水口7Aからの洗浄水の吐水とが連続している。このため、リム吐水口4Aからの洗浄水の吐水によって便鉢部2内の洗浄水の水位が最高水位にある状態でジェット吐水口7Aから洗浄水の吐水を開始することができる。つまり、便鉢部2内の洗浄水の位置エネルギーが最大になった状態でジェット吐水口7Aから洗浄水を吐水することができるため、便鉢部2内の洗浄水の最大エネルギーとジェット吐水口7Aから吐水される洗浄水の水勢との相乗効果により、便器排水路6内にサイホン作用を発生させ、少ない洗浄水でも便器排水路6から汚物等を良好に排出することができる。
【0054】
したがって、実施例の便器洗浄装置10は、汚物等の排出性能に優れ、少ない洗浄水であっても便器洗浄を良好に行うことができる。
【0055】
また、タンク33内に蓄圧状態で貯留された洗浄水P2は、鉢洗浄工程の際にリム吐水口4Aから吐水される場合に比べ、ジェット吐水口7Aから吐水される場合の方が圧力損失が少なく、流量が多い。このため、ジェット用開閉弁21が開弁した当初、つまり、ジェット吐水口7Aから洗浄水が吐水される当初の流量は、鉢洗浄工程の際にリム吐水口4Aから吐水される洗浄水の流量よりも多い。その後、タンク33内の蓄圧状態で貯留された洗浄水は時間の経過とともに減少するため、ジェット吐水口7Aから吐水される洗浄水の流量は減少する。
【0056】
このように、便器洗浄装置10は、タンク33内に蓄圧状態で貯留した洗浄水をリム吐水口4Aとジェット吐水口7Aとに適切に分配して吐水することができる。つまり、ジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水は、その水勢により便器排水路6内にサイホン作用を発生させて便器排水路6から汚物等を排出するために利用される。このため、ジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水は、吐水を開始した当初にできる限り勢いよく吐水することが好ましい。一方、鉢洗浄工程の際にリム吐水口4Aから吐水する洗浄水は、便鉢部2の表面を万遍なく洗浄することが目的であり、ジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水の当初の水勢より弱くても便鉢部2の表面を万遍なく洗浄することができる。
【0057】
便器洗浄スイッチが操作されてから設定時間(T2)を経過後にジェット用開閉弁21が閉弁するように、制御装置24がジェット用開閉弁21の第1ソレノイド21Fに対して閉弁信号を発信する。このようにして、ジェット用開閉弁21が閉弁し、ジェット洗浄工程が終了する。ジェット洗浄工程において、タンク33内に蓄圧状態で貯留した洗浄水は、全てジェット吐水口7Aから吐水される。
【0058】
ジェット洗浄工程においてジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水の水量は、鉢洗浄工程においてリム吐水口4Aから吐水する洗浄水の水量よりも多い。このように、便器洗浄装置10は、タンク33内に蓄圧状態で貯留した洗浄水をリム吐水口4Aとジェット吐水口7Aとに適切に分配して吐水することができる。つまり、ジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水は、便器排水路6内にサイホン作用を発生・継続させて便器排水路6から汚物等を排出するために利用される。このため、ジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水はできる限り多い水量であることが好ましい。一方、鉢洗浄工程の際にリム吐水口4Aから吐水する洗浄水は、便鉢部2の表面を万遍なく洗浄することが目的であり、ジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水の水量よりも少なくても便鉢部2の表面を万遍なく洗浄することができる。
【0059】
[覆水工程]
便器洗浄スイッチが操作されてから設定時間(T2)が経過する直前に制御装置24がリム用開閉弁22の第2ソレノイド22Fに対して開弁信号を発信し、図9に示すように、リム用開閉弁22が開弁する。
【0060】
リム用開閉弁22が開弁した時点では、蓄圧器30のタンク33内には洗浄水が貯留されていない。このため、リム用開閉弁22が開弁すると、給水源に連通した給水管9Aから弁ユニット20に流入する洗浄水のみが、上流側連結部9C、上流側流路9B、リム側流路5B、リム側連結部5C、及びリム側給水管5Aを介してリムノズル4に設けられたリム吐水口4Aからリム通水路3に沿って吐水される。
【0061】
リム吐水口4Aから吐水される洗浄水は、図10に示すように、給水源から供給される洗浄水R2のみであり、便鉢部2内に貯留されて水封が形成される。便器洗浄スイッチが操作されてから設定時間(T3)を経過後にリム用開閉弁22が開弁するように、制御装置24がリム用開閉弁22の第2ソレノイド22Fに対して閉弁信号を発信する。このようにして、リム用開閉弁22が閉弁し、覆水工程が終了する。
【0062】
覆水工程が終了すると、便器洗浄装置10は、図5に示すように、ジェット用開閉弁21及びリム用開閉弁22が閉弁した状態になる。このため、便器洗浄装置10は、蓄圧器30への蓄水工程を経由して、便器洗浄待機状態に復帰する。
【0063】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0064】
(1)実施例では、ジェット側給水路に流量調整弁23を設けていたが、流量調整弁23を設けなくてもよい。
【0065】
この場合、図11(A)に示すように、上流側給水路9A、9B、9Cに開閉弁40を介して蓄圧器30を連通するとよい。この便器洗浄装置100では、鉢洗浄工程の際にリム用開閉弁22を開閉するタイミング及びジェット洗浄工程の際にジェット用開閉弁21を開閉するタイミングに合わせて、開閉弁40を開閉する。これにより、リム吐水口4A及びジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水の流量を設定値以上にしつつ、リム吐水口4Aからの洗浄水の吐水とジェット吐水口7Aからの洗浄水の吐水とを連続して行うことができる。
【0066】
また、図11(B)に示すように、上流側給水路9A、9B、9Cに流路切替弁50と管径が相違する給排水管50A、50Bを介して蓄圧器30を連通するとよい。この便器洗浄装置110では、流路切替弁50を切り替えることにより、鉢洗浄工程の際に管径が小さい方の給排水管50Aから蓄圧器30に蓄圧状態で貯留された洗浄水が流出する。一方、ジェット洗浄工程の際に管径が大きい方の給排水管50Bから蓄圧器30に蓄圧状態で貯留された洗浄水が流出する。これにより、ジェット洗浄工程の際にジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水の当初の流量を鉢洗浄工程の際にリム吐水口4Aから吐水する洗浄水の流量よりも多くすることができる。
【0067】
また、図11(C)に示すように、ジェット側流路8Bに流路切替弁51を介して蓄圧器30を連通するとよい。この便器洗浄装置120では、鉢洗浄工程の際にリム用開閉弁22を開閉するタイミング及びジェット洗浄工程の際にジェット用開閉弁21を開閉するタイミングに合わせて、流路切替弁51を切り替えて、蓄圧器30に蓄圧状態で貯留された洗浄水をリム吐水口4A又はジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水に付加する。これにより、リム吐水口4A及びジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水の流量を設定値以上にしつつ、リム吐水口4Aからの洗浄水の吐水とジェット吐水口7Aからの洗浄水の吐水とを連続して行うことができる。
【0068】
(2)実施例では、流量増幅機構として蓄圧器30を採用していたが、流量増幅機構はタンクとポンプとから構成してもよい。
【0069】
この場合、図12(A)に示すように、タンク35及びポンプ36をジェット側給水路8A、8B、8Cの上流側から順に直列的に設けるとよい。この便器洗浄装置200は、上流側給水路9A、9B、9Cに開閉弁41、上流側給水路9A、9B、9Cがリム側給水路5A、5B、5Cとジェット側給水路8A、8B、8Cとに分岐する部分に流路切替弁52を設けている。また、この便器洗浄装置200は、ポンプ36の下流側のジェット側給水路8A、8B、8Cとリム側給水路5A、5B、5Cと連通するパイパス流路70を設けている。バイパス流路70は開閉弁42と逆止弁60とを設けている。逆止弁60は、ジェット側給水路8A、8B、8Cからリム側給水路5A、5B、5Cへ洗浄水が流れることを許容し、その逆の流れを阻止する。
【0070】
この便器洗浄装置200では、鉢洗浄工程において、リム吐水口4Aから洗浄水を吐水する際、流路切替弁52を切り替えて、給水源から供給される洗浄水をリム吐水口4Aに供給するとともに、開閉弁42を開弁し、かつポンプ36を駆動してタンク35に貯留された一部の洗浄水をバイパス流路70を介してリム吐水口4Aに供給する。また、ジェット洗浄工程において、ジェット吐水口7Aから洗浄水を吐水する際、開閉弁42を閉弁し、かつポンプ36を駆動してタンク35に貯留された残部の洗浄水をジェット吐水口7Aに供給する。この際、ポンプ36はリム吐水口4A及びジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水の流量を設定値以上になるように駆動する。
【0071】
また、図12(B)に示すように、上流側から順にタンク35及びポンプ36の順に配置された増幅流路37をジェット側給水路8A、8B、8Cに並列的に設けるとよい。この便器洗浄装置210も、上流側給水路9A、9B、9Cに開閉弁41、上流側給水路9A、9B、9Cがリム側給水路5A、5B、5Cとジェット側給水路8A、8B、8Cとに分岐する部分に流路切替弁52を設けている。また、この便器洗浄装置210は、増幅流路37の下流端がジェット側給水路8A、8B、8Cに合流する部分よりも下流側のジェット側給水路8A、8B、8Cとリム側給水路5A、5B、5Cと連通するパイパス流路70を設けている。バイパス流路70は開閉弁42と逆止弁60とを設けている。逆止弁60は、ジェット側給水路8A、8B、8Cからリム側給水路5A、5B、5Cへ洗浄水が流れることを許容し、その逆の流れを阻止する。
【0072】
この便器洗浄装置210では、鉢洗浄工程において、リム吐水口4Aから洗浄水を吐水する際、流路切替弁52を切り替えて、給水源から供給される洗浄水をリム吐水口4Aに供給するとともに、開閉弁42を開弁し、かつポンプ36を駆動してタンク35に貯留された一部の洗浄水をバイパス流路70を介してリム吐水口4Aに供給する。また、ジェット洗浄工程において、ジェット吐水口7Aから洗浄水を吐水する際、流路切替弁52を切り替えて、給水源から供給される洗浄水をジェット吐水口7Aに供給するとともに、開閉弁42を閉弁し、かつポンプ36を駆動してタンク35に貯留された残部の洗浄水をジェット吐水口7Aに供給する。この際、ポンプ36はリム吐水口4A及びジェット吐水口7Aから吐水する洗浄水の流量を設定値以上になるように駆動する。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は水洗式便器に利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1…便器本体
2…便鉢部
3…リム通水路
4A…リム吐水口
6…便器排水路
7A…ジェット吐水口
5A、5B、5C…リム側給水路(5A…リム側給水管、5B…リム側流路、5C…リム側連結部)
8A、8B、8C…ジェット側給水路(8A…ジェット側給水管、8B…ジェット側流路、8C…ジェット側連結部)
9A、9B、9C…上流側給水路(9A…給水管、9B…上流側流路、9C…上流側連結部)
5A、5B、5C、8A、8B、8C、9A、9B、9C…給水路
10、100、110、120、200、210…便器洗浄装置
20…弁ユニット(給水切替機構)
21…ジェット用開閉弁
22…リム用開閉弁
23…流量調整弁
24…制御装置
30…蓄圧器(流量増幅機構)
33…タンク
35、36…流量増幅機構(35…タンク、36…ポンプ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢部、この便鉢部の上端開口部の内周縁に設けられたリム通水路、このリム通水路に沿って洗浄水を吐水するリム吐水口、前記便鉢部の下流側に連続して設けられた便器排水路、及びこの便器排水路の下流側に向けて洗浄水を吐水するジェット吐水口を有する便器本体に洗浄水を供給する便器洗浄装置であって、
前記リム吐水口及び前記ジェット吐水口へ洗浄水を供給する給水路と、
この給水路に設けられ、前記リム吐水口及び前記ジェット吐水口から洗浄水を吐水して便器洗浄を行う際、先ず前記リム吐水口から洗浄水を吐水し、その後に連続して前記ジェット吐水口から洗浄水を吐水するように給水先を切り替える給水切替機構と、
前記給水路に連通して洗浄水を貯留するタンクを有し、前記リム吐水口及び前記ジェット吐水口から吐水する洗浄水の流量が設定値以上になるように、前記タンク内に貯留した洗浄水の一部を前記リム吐水口から吐水し、残部を前記ジェット吐水口から吐水する流量増幅機構とを備えていることを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項2】
前記ジェット吐水口から吐水する洗浄水の当初の流量は、前記リム吐水口から吐水する洗浄水の流量よりも多いことを特徴とする請求項1記載の便器洗浄装置。
【請求項3】
前記リム吐水口から吐水する前記タンク内に貯留した一部の洗浄水の水量よりも前記ジェット吐水口から吐水する前記タンク内に貯留した残部の洗浄水の水量を多くして、前記ジェット吐水口から吐水する洗浄水の水量が前記リム吐水口から吐水する洗浄水の水量よりも多いことを特徴とする請求項1又は2記載の便器洗浄装置。
【請求項4】
前記給水路は、給水源に連通する上流側給水路と、この上流側給水路の下流端を分岐して形成したジェット側給水路及びリム側給水路とから構成されており、
前記流量増幅機構はジェット側給水路に連通していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の便器洗浄装置。
【請求項5】
前記給水切替機構は、前記ジェット側給水路を開閉するジェット用開閉弁と、前記リム側給水路を開閉するリム用開閉弁と、前記ジェット用開閉弁及び前記リム用開閉弁の開閉を制御する制御装置とを有しており、
前記ジェット用開閉弁よりも上流側の前記ジェット側給水路に前記流量増幅機構を連通し、この流量増幅機構を連通した連通部よりも上流側の前記ジェット側給水路に設けられ、前記ジェット側給水路の下流側への大流量の流れを許容し、上流側への小流量の流れを許容する流量調整弁を備えていることを特徴とする請求項4記載の便器洗浄装置。
【請求項1】
便鉢部、この便鉢部の上端開口部の内周縁に設けられたリム通水路、このリム通水路に沿って洗浄水を吐水するリム吐水口、前記便鉢部の下流側に連続して設けられた便器排水路、及びこの便器排水路の下流側に向けて洗浄水を吐水するジェット吐水口を有する便器本体に洗浄水を供給する便器洗浄装置であって、
前記リム吐水口及び前記ジェット吐水口へ洗浄水を供給する給水路と、
この給水路に設けられ、前記リム吐水口及び前記ジェット吐水口から洗浄水を吐水して便器洗浄を行う際、先ず前記リム吐水口から洗浄水を吐水し、その後に連続して前記ジェット吐水口から洗浄水を吐水するように給水先を切り替える給水切替機構と、
前記給水路に連通して洗浄水を貯留するタンクを有し、前記リム吐水口及び前記ジェット吐水口から吐水する洗浄水の流量が設定値以上になるように、前記タンク内に貯留した洗浄水の一部を前記リム吐水口から吐水し、残部を前記ジェット吐水口から吐水する流量増幅機構とを備えていることを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項2】
前記ジェット吐水口から吐水する洗浄水の当初の流量は、前記リム吐水口から吐水する洗浄水の流量よりも多いことを特徴とする請求項1記載の便器洗浄装置。
【請求項3】
前記リム吐水口から吐水する前記タンク内に貯留した一部の洗浄水の水量よりも前記ジェット吐水口から吐水する前記タンク内に貯留した残部の洗浄水の水量を多くして、前記ジェット吐水口から吐水する洗浄水の水量が前記リム吐水口から吐水する洗浄水の水量よりも多いことを特徴とする請求項1又は2記載の便器洗浄装置。
【請求項4】
前記給水路は、給水源に連通する上流側給水路と、この上流側給水路の下流端を分岐して形成したジェット側給水路及びリム側給水路とから構成されており、
前記流量増幅機構はジェット側給水路に連通していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の便器洗浄装置。
【請求項5】
前記給水切替機構は、前記ジェット側給水路を開閉するジェット用開閉弁と、前記リム側給水路を開閉するリム用開閉弁と、前記ジェット用開閉弁及び前記リム用開閉弁の開閉を制御する制御装置とを有しており、
前記ジェット用開閉弁よりも上流側の前記ジェット側給水路に前記流量増幅機構を連通し、この流量増幅機構を連通した連通部よりも上流側の前記ジェット側給水路に設けられ、前記ジェット側給水路の下流側への大流量の流れを許容し、上流側への小流量の流れを許容する流量調整弁を備えていることを特徴とする請求項4記載の便器洗浄装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−36622(P2012−36622A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176903(P2010−176903)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】
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