説明

便器用洗浄水タンクの操作装置

【課題】 外側タンクと内側タンクとの寸法のバラツキに影響を受けず、洗浄水タンク内に配設された排水弁の開弁動作が安定する便器用洗浄水タンクの操作装置を提供する。
【解決手段】 外側タンクと内側タンクとを有する便器用洗浄水タンクの内側タンク内に配設された排水弁を開弁操作する便器用洗浄水タンクの操作装置であって、前記外側タンクの壁面に回動自在に取り付けられる操作レバーと、この操作レバーと連結して操作レバーの回動動作と連動して回動する第1操作スピンドルと、第1操作スピンドルと平行に配設した第2操作スピンドルと、第1操作スピンドル及び第2操作スピンドルを回動自在に支持する操作スピンドル支持部材と、第2操作スピンドルに設けられた排水弁を引き上げるための第1引上げ部材を係止する係止部材と、第1操作スピンドルの回動力を第2操作スピンドルに伝達するための回動力伝達手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗便器に洗浄水を供給する外側タンクと内側タンクとを有する洗浄水タンク内に配設された排水弁の開弁操作する便器用洗浄水タンクの操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外側タンクと内側タンクとを有する便器用の洗浄水タンク内に配設された排水弁の操作機構を備えた便器洗浄タンク装置として特許文献1に示すものがあり、図6(特許文献1の図1に相当する)に基づいて操作機構を説明する。洗浄水タンク50は、陶器製の外側の化粧タンク51と化粧タンク51の内側に洗浄水を貯水する樹脂製の内部タンク52とから構成し、内部タンク52の底面中央部には排水口53が開設され、この排水口53の直上に排水弁54を配設している。排水弁54を引き上げて開弁するための操作ロッド55が内部タンク52の両側壁間に水平に架設した状態で回動可能に支持され、その中央部をくの字に屈曲して屈曲部56を突出形成してある。操作ロッド55は一端部を直角に屈曲して、化粧タンク51の側面に取付けた操作レバー57に接続してあり、操作レバー57を回動させることにより、操作ロッド55を蹴り上げることによって、中央に屈曲する屈曲部56が上下方向に回動し、この回動により屈曲部56と連携した排水弁54が引き上げられて開弁するように構成してある。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載されている操作機構では、操作ロッド55が内部タンク52の両側壁間に架設した状態で支持されて回動するため、化粧タンク51及び内部タンク52の寸法バラツキによっては芯ズレが生じ、操作レバー57の回動力が操作ロッド55に十分に伝達せず開弁動作不良及び取付け不良が発生する恐れがある。また、操作ロッド55の全長が長くなり排水弁54の引き上げ時に操作ロッド55がたわみ、開弁動作不良の問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開平8―311954号公報(図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は外側タンクと内側タンクとの寸法のバラツキに影響を受けず、洗浄水タンク内に配設された排水弁の開弁動作が安定する便器用洗浄水タンクの操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の本発明は、外側タンクと内側タンクとを有する便器用洗浄水タンクの内側タンク内に配設された第1排水弁を開弁操作する便器用洗浄水タンクの操作装置であって、前記外側タンクの壁面に回動自在に取り付けられる操作レバーと、この操作レバーと連結して操作レバーの回動動作と連動して回動する第1操作スピンドルと、前記第1操作スピンドルと平行に配設した第2操作スピンドルと、前記第1操作スピンドル及び第2操作スピンドルを回動自在に支持する操作スピンドル支持部材と、前記第2操作スピンドルに設けられた第1排水弁を引き上げるための第1引上げ部材を係止する係止部材と、前記第1操作スピンドルの回動力を前記第2操作スピンドルに伝達するための回動力伝達手段と、を備えたことを特徴とする。
上記のように構成された本発明においては、操作装置の全体が外側タンクに取り付け支持されるので、第1排水弁を操作する第1操作スピンドルが内側タンクとは離隔した状態で配設される。そのため内側タンクの寸法精度が多少ばらついても内側タンク内に配設された第1排水弁の開弁操作が確実に行うことができる。
【0007】
本発明において好ましくは、前記回動力伝達手段を、前記第1操作スピンドルに配設した第1伝達部材と、前記第2操作スピンドルに配設した第2伝達部材とで構成し、前記第1操作スピンドルの回動によって第1伝達部材が第2伝達部材に当接する構成とする。
上記のように構成された本発明においては、第1操作スピンドルの回動力を第2操作スピンドルに伝達する機構を簡単に構成することができる。
【0008】
また、本発明において好ましくは、前記外側タンク内に第2排水弁を配設し、この第2排水弁を引き上げるための引き上げ部材を前記第1伝達部材に係止する構成とする。
上記のように構成された本発明においては、リム吐水口へのリム導水路とジェット吐水口へのジェット導水路とそれぞれに独立した導水路を備えたサイホンジェット式の水洗便器に洗浄水タンクから給水する場合、容易に対応することができる。
【0009】
また、本発明において好ましくは、前記開弁操作の初期位置で前記第1伝達部材と前記第2伝達部材との間に所定の隙間を形成する構成とする。
上記のように構成された本発明においては、第2排水弁の開弁後遅れて第1排水弁が開弁する。上記サイホンジェット式の水洗便器において、便器の洗浄機能に応じてリム吐水またはジェット吐水の吐水開始のタイミングを遅らせる洗浄機能を容易に実現できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外側タンクと内側タンクとからなる2重構造の便器用洗浄水タンク内に配設された排水弁の開弁操作を安定して行うことができる。
また、外側タンク内に第1排水弁及び第2排水弁を配設し、この2つの排水弁の引き上げを容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明に係る便器用洗浄水タンクの操作装置の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図2は第1の実施形態の便器用洗浄水タンクの操作装置Xの組み立て斜視図、図3は便器用洗浄水タンクの操作装置Xの分解斜視図、図1は便器用洗浄水タンクの操作装置Xを外側タンク2と内側タンク3とから構成した洗浄水タンク1に取り付けた状態を示す模式図である。洗浄水タンク1は洗浄水を貯留する内側タンク3の底部の排水口3aを開閉する排水弁5を配設している。外側タンク2はタンクの外観デザインを形成するための部材である。
【0012】
便器用洗浄水タンクの操作装置Xは、外側タンク2の壁面に回動自在に取り付けられる操作レバー4と、この操作レバー4と連結して操作レバー4の回動動作と連動する第1操作スピンドル7と、第1操作スピンドル7と平行に配設した第2操作スピンドル8と、第1操作スピンドル7及び第2操作スピンドル8が自在に回動するように支持する操作スピンドル支持部材6と、第1操作スピンドル7の先端部に取り付けられた第1操作スピンドル7の回動力を第2操作スピンドル8に伝達するための板状の第1伝達部材9と、第2操作スピンドル8に一体に取り付けられた第1伝達部材9が当接して第1操作スピンドル7の回動力を受ける第2伝達部材10とから構成している。
第1伝達部材9は第2伝達部材10の先端部10aが当接する面が傾斜した傾斜面9bを設けている。
第2スピンドル8の先端部には後述する玉鎖11を係止するための板状の接続部材8aが第2スピンドル8の回動軸8bと直角方向にL状に交差するように取り付けられている。接続部材8aの回動軸8bと偏芯した位置には玉鎖11の一方端を係止するための貫通孔8cを開口している。
図2に示すように、この実施形態では洗浄操作前の初期状態で第1伝達部材9の傾斜面9bに第2伝達部材10の先端部10aが当接している。
【0013】
次に、便器用洗浄水タンクの操作装置Xを洗浄水タンク1に取り付けた状態を説明する。
外側タンク2の側壁部に貫通孔(図示しない)が設けられ、操作レバー4が外側タンク2の側壁部の外面に回動自在に取りつけている。支持部材6と、第1操作スピンドル7と、第1伝達部材9と、第2伝達部材10とを外側タンク2と内側タンク3との間の空間部Yに配設している。そして、支持部材6を外側タンク2の側壁部の内面に取り付け固定している。また、第2操作スピンドル8を内側タンク3の上端部3aより上方位置で内側タンク3の内部に延設している。玉鎖11の一方端を第2操作スピンドル8の先端部の設けた接続部材8aの貫通孔8cに係止し、他方端を排水弁5の上部に係止している。
【0014】
次に、便器用洗浄水タンクの操作装置Xによる洗浄操作について説明する。
図2に示すように使用者が操作レバー4を第1伝達部材9側から見た状態で反時計方向(矢印A方向)に回動すると、第1伝達部材9は操作レバー4の回動と同時に反時計方向(矢印B方向)に回動する。それに伴なって第2伝達部材10の当接部10aが第1伝達部材9の傾斜面9bに当接した状態で第1伝達部材9の先端部に向かって移動し、第2伝達部材10と一体的に構成した第2操作スピンドル8が反時計方向に回動する。第2操作スピンドル8の反時計方向の回動によって接続部材8aも回動軸8bを中心に回動して玉鎖11を上方に引き上げる。
玉鎖11の引き上げによって、排水弁5が上方に移動して排水口3aを開放して洗浄水を内側タンク3から排出する。
【0015】
操作レバー4を約90度回動した後、使用者が操作レバー4から手を離すと便器用洗浄水タンクの操作装置Xは、その自重によって図2に示す初期状態に戻る。また、排水弁5は開弁後、内側タンク3内の水位が下降して行って排水弁5自体の重量が浮子5aによる浮力に勝った状態で閉弁する。
【0016】
(第2の実施形態)
次に、便器用洗浄水タンクの操作装置Xを内側タンクと外側タンクの各々に独立した排水弁を備えた洗浄水タンクに適用した例を説明する。
図4は、リム吐水部へのリム導水路とジェット吐水部へのジェット導水路とが各々独立した導水路を備えたサイホンジェット式水洗便器に洗浄水を供給する洗浄水タンクの断面模式図である。洗浄水タンク20は、ジェット吐水部に給水する外側タンク部21と、外側タンク部21の内部上方に配置したリム吐水部に給水する内側タンク22とから構成し、外側タンク部21の底部には第2排水弁24を配設し、内側タンク部22の底部には第1排水弁23を配設している。また、外側タンク部21、内側タンク22は便器本体部25と一体成形している。
【0017】
便器用洗浄水タンクの操作装置Xの外側タンク部21への取り付けは第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
この第2の実施形態においては、図2に示す第1伝達部材9の先端部に設けた貫通孔9aに後述する第2排水弁24を引き上げるための点線で示す玉鎖12を係止している。そして、第2操作スピンドル8の先端部の設けた接続部材8aの貫通孔8cに第1排水弁23を引き上げるための玉鎖11係止している。また、第2操作スピンドル8は内側タンク部22上端に設けた切欠き部(図示しない)の介して内側タンク22の内部に延設している。
【0018】
次に、便器用洗浄水タンクの操作装置Xによるサイホンジェット式水洗便器のリム吐水部、ジェット吐水部への洗浄水供給操作を図2を用いて説明する。
使用者が操作レバー4を第1伝達部材9側から見た状態で反時計方向(矢印A方向)に回動すると、第1伝達部材9が操作レバー4が回動と同時に反時計方向に回動して玉鎖12を上方に引き上げる。それと同時に第1伝達部材9に当接した第2伝達部材10が上方向(矢印B方向)に持ち上げられ第2操作スピンドル8が反時計方向に回動する。
第2操作スピンドル8の反時計方向の回動によって接続部材8aも回動軸8bを中心に回動して玉鎖11を上方に引き上げる。
玉鎖12が引き上げられることにより第2排水弁24が上方に移動して外側タンク部21からジェット吐水部に洗浄水が供給される。一方、玉鎖11の引き上げられることにより第1排水弁23が上方に移動して内側タンク部22からリム吐水部に洗浄水が供給される。
【0019】
第2排水弁23の開弁後は、内側タンク部22内の水位が下降して第1排水弁23第1排水弁23の自重が作用する浮力に勝った時点で閉弁する。第1排水弁24の開弁後は、外側タンク部21内の水位が下降して行って排水弁24自体の重量が浮子24aによる浮力に勝った状態で閉弁する。
【0020】
上記第2の実施形態においては、サイホンジェット式水洗便器においてジェット吐水部からの吐水量、リム吐水部からの吐水量をそれぞれ単独に調整することができ、洗浄水の節水化等便器に最適な洗浄水の供給が可能となる。
【0021】
(第3の実施形態)
次に、第2の実施形態において、第2排水弁24の開弁から時間差をおいて第1排水弁23を開弁する場合について説明する。
図5は、便器用洗浄水タンクの操作装置Xの初期状態において、第1伝達部材9の傾斜面9bと第2伝達部材10の当接部10aとの間に所定の隙間Cを形成した構成としたものである。この構成の場合、第2排水弁24が開弁してジェット吐水部への給水が開始された後、第1伝達部材9がその回動開始から第2伝達部材10に当接するまでの時間だけ遅れて第1排水弁23が開弁してリム吐水部への給水が開始される。
【0022】
上記第3の実施形態においては、サイホンジェット式水洗便器のジェット吐水部から吐水した後遅延してリム吐水部から吐水するので、サイホン作用を早期に発生させて少ない洗浄水量で便器洗浄を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施形態の便器用洗浄水タンクの操作装置Xを便器用洗浄水タンクを外側タンクと内側タンクとから構成した洗浄水タンクに取り付けた状態を示す模式図。
【図2】第1の実施形態の便器用洗浄水タンクの操作装置Xの組み立て斜視図。
【図3】第1の実施形態の便器用洗浄水タンクの操作装置Xの分解斜視図。
【図4】第1の実施形態の便器用洗浄水タンクの操作装置Xを内側タンクと外側タンクの各々に独立した排水弁を備えた洗浄水タンクに取り付けた状態を示す模式図。
【図5】便器用洗浄水タンクの操作装置Xの初期状態において、第1伝達部材9の傾斜面9bと第2伝達部材10の当接部10aとの間に隙間を形成した状態を示す図。
【図6】従来の便器洗浄タンク装置を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0024】
1、20…洗浄水タンク
2…外側タンク
3…内側タンク
3a…排水口
4…操作レバー
5…排水弁
6…操作スピンドル支持部材
7…第1操作スピンドル
8…第2操作スピンドル
8a…接続部材
9…第1伝達部材
9a…傾斜面
10…第2伝達部材
11、12…玉鎖
21…外側タンク部
22…内側タンク部
23…第1排水弁
24…第2排水弁
50…洗浄水タンク
51…化粧タンク
52…内部タンク
53…排水口
54…排水弁
55…操作ロッド
56…屈曲部
57…操作レバー






【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側タンクと内側タンクとを有する洗浄水タンクの内側タンク内に配設された第1排水弁を開弁操作する便器用洗浄水タンクの操作装置であって、
前記外側タンクの壁面に回動自在に取り付けられる操作レバーと、
この操作レバーと連結して操作レバーの回動動作と連動して回動する第1操作スピンドルと、
前記第1操作スピンドルと平行に配設した第2操作スピンドルと、
前記第1操作スピンドル及び第2操作スピンドルを回動自在に支持する操作スピンドル支持部材と、
前記第2操作スピンドルに設けられた第1排水弁を引き上げるための第1引上げ部材を係止する係止部材と、
前記第1操作スピンドルの回動力を前記第2操作スピンドルに伝達するための回動力伝達手段と、を備えたことを特徴とする便器用洗浄水タンクの操作装置。
【請求項2】
前記回動力伝達手段を、前記第1操作スピンドルに配設した第1伝達部材と、前記第2操作スピンドルに配設した第2伝達部材とで構成し、前記第1操作スピンドルの回動によって第1伝達部材が第2伝達部材に当接して前記第2操作スピンドルが回動することを特徴とする請求項1記載の便器用洗浄水タンクの操作装置。
【請求項3】
前記外側タンク内に第2排水弁を配設し、この第2排水弁を引き上げるための引き上げ部材を前記第1伝達部材に係止することを特徴とする請求項2記載の便器用洗浄水タンクの操作装置。
【請求項4】
前記開弁操作の初期位置で前記第1伝達部材と前記第2伝達部材との間に所定の隙間を形成していることを特徴とする請求項3記載の便器用洗浄水タンクの操作装置。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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