説明

便器装置

【課題】便器本体をトイレ室後方の壁に近づけて設置することができる便器装置を提供する。
【解決手段】ボウル部2を有する便器本体3と、床9に設けられた排水管5に対して接続されて内部が排水管5に通じるトラップケース22と、一端部がボウル部2の排水口部19に連通すると共に他端部がトラップケース22の内部で開口するトラップ管21を備える。トラップ管21が排水口部19に長さ変更可能な接続管部28を介して接続される。トラップケース22が便器本体3に対して前後位置調節可能に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はターントラップ式の便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ターントラップ式の水洗便器装置が開示されている。この水洗便器装置は、ボウル部を有する便器本体と、便器本体の後方に配置されるケース体と、ケース体に収納されて前端部がボウル部の排水管部に接続されるトラップ部を備えている。前記トラップ部の終端は駆動手段により上下に回転し、これによりボウル部の排水管部と床側に設けられた外部排水管とがケース体を介して連通して、ボウル部内の水が排出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−213765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のケース体はアタッチメント部材を介して床側に設けられた外部排水管に接続されているが、ケース体をしっかりと固定するにはケース体を便器本体に取り付けることが好ましい。
【0005】
ところで、前記外部排水管を、床の所定位置に正確に位置決めして設置することは容易ではなく、外部排水管が所定位置からずれた位置に設けられる可能性がある。この場合、上記のようにケース体が便器本体に取り付けられるものであると、便器本体も所定位置からずれた位置に設置されることとなる。殊に便器本体が狭いトイレ室において所定位置よりも後方にずれると、便器本体がトイレ室後方の壁に当たって便器本体を設置できないといった事態が生じる恐れがある。また、これを避けるには、前記外部排水管の施工誤差を考慮して、設置後における便器本体とトイレ室後方の壁との間に比較的大きな隙間ができるように便器本体を形成することが考えられる。しかし、このようにすると、便器本体がトイレ室において前側に設置され、利用者に圧迫感を与えてトイレ室が狭いと感じさせる可能性がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、便器本体をトイレ室後方の壁に近づけて設置することができる便器装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の便器装置は、ボウル部を有する便器本体と、床に設けられた排水管に対して接続されて内部が前記排水管に通じるトラップケースと、一端部が前記ボウル部の排水口部に連通すると共に他端部が前記トラップケースの内部で開口するトラップ管を備え、このトラップ管を変形させて前記ボウル部内に水が溜まる溜水状態と前記ボウル部内の水を前記トラップケースの内部を介して排水管に排出する排水状態とに切り換えるターントラップ式の便器装置であって、前記トラップ管が前記排水口部に長さ変更可能な接続管部を介して接続され、前記トラップケースが前記便器本体に対して前後位置調節可能に取り付けられることを特徴とする。
【0008】
前記トラップ管が伸縮自在の蛇腹管で構成され、この蛇腹管の端部によって前記接続管部が構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明にあっては、便器本体をトイレ室後方の壁に近づけて設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の便器装置の設置状態を示す一部破断側面図である。
【図2】同上の便器装置の斜視図である。
【図3】同上のトラップ装置、床フランジ、及び排水管を示す断面図である。
【図4】同上のトラップ筒の一部破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。本実施形態の便器装置1は、図1に示すようにボウル部2を有する便器本体3にターントラップ式のトラップ装置4を内蔵した洋式便器である。
【0012】
トイレ室の床9に便器装置1を設置するにあたっては、予め図3に示すように床9に排水管5が設けられる。排水管5は、図1に示すようにトイレ室後方の壁35から前方に所定距離L離れた位置に設けられる。
【0013】
図3のように、排水管5には排水流路6を有する床フランジ7が取り付けられる。排水流路6の下流側端部は床フランジ7から下方に突出した接続筒部8で構成されている。接続筒部8は排水管5に嵌め込まれて接続され、これによって床フランジ7は排水管5に固定され、排水流路6が排水管5に連通する。また、この床フランジ7はボルト等を用いて床9に固定される。
【0014】
便器本体3は、図1に示されるように、床9に載置される金属製の固定フレーム10と、固定フレーム10に取り付けられる便器形状の便器外郭11とで構成されている。
【0015】
固定フレーム10の後部左右両側には金属製の取付フレーム12が立設されている。なお、図1では一方の取付フレーム12のみが図示されている。
【0016】
各取付フレーム12の下端部には前方に突出する被取付部13が形成されている。各被取付部13は固定フレーム10に対して前後位置調節可能に取付けられる。各被取付部13には、上下に貫通し、長手方向が前後方向と平行な長孔(図示せず)が形成されている。この長孔には上方からボルト14が挿通され、このボルト14の先端部が固定フレーム10にねじ込まれることで、被取付部13は固定フレーム10に締結される。ボルト14は前記長孔に前後方向にスライド自在に挿入されており、ボルト14を緩めることでこの長孔に対する挿入位置を変更することができる。このため、各取付フレーム12は固定フレーム10に対して前後方向の任意の位置で取り付けることができる。
【0017】
便器外郭11は、前部を構成する前パーツ15と、後部を構成する後パーツ16を備えており、両パーツ15,16は合成樹脂製である。
【0018】
前パーツ15は固定フレーム10の前部に取り付けられる。前パーツ15は、上方に開口するボウル部2と、ボウル部2の上縁に接続されて前パーツ15の上面を構成するリム部17と、平面視で後方に開口する略C字状に形成されてボウル部2を覆うスカート部18で構成されている。ボウル部2の下部には、後方に突出する円筒状の排水口部19が形成されている。
【0019】
トラップ装置4は、ボウル部2の排水口部19に連通するトラップ管21と、トラップ管21を駆動する駆動機構(図示せず)と、トラップ管21から排出された水を受けるトラップケース22で構成されている。
【0020】
トラップケース22はボウル部2の後方に配置されている。図3のようにトラップケース22の内部空間23は、トラップケース22の下面部に形成された孔24から下方に開口している。また、内部空間23はトラップケース22の前面部に形成された孔25から前方に開口している。
【0021】
トラップ管21は、図4に示すように屈曲自在で且つ伸縮自在の蛇腹管で構成されていいる。トラップ管21の中途の外周にはフランジ26が突出して設けられている。フランジ26は図3のように複数のビス27によりトラップケース22の前面部に固着され、これによってトラップ管21はトラップケース22に取り付けられる。
【0022】
図1のようにトラップ管21の一端部はトラップケース22から前方に突出して、ボウル部2の排水口部19に接続されている。このトラップ管21の突出部分は伸縮自在であり、長さ変更可能な接続管部28を構成する。図3のようにトラップ管21の他端部は孔25からトラップケース22の内部空間23に挿入され、トラップケース22の内部空間23において開口している。
【0023】
前記駆動機構はトラップケース22に取り付けられる。駆動機構は図示しないモーターを有している。図示しないリモートコントローラーが操作されると、前記モーターが駆動され、これにより駆動機構はトラップ管21を図3中実線で示す溜水形態から図3中破線で示す排水形態に変形させ、所定時間が経過した後に溜水形態に復元させる。
【0024】
溜水形態のトラップ管21は前記他端部が上向きに開口する。このため、ボウル部2内の水は排水口部19から排出されず、便器装置1はボウル部2に水が溜まる溜水状態となる。
【0025】
排水形態のトラップ管21は前記他端部がトラップケース22の内部空間23において下向きに開口する。このため、ボウル部2内の水は排水口部19からトラップ管21を介してトラップケース22の内部空間23に排出される。つまり、便器装置1はボウル部2内の水が排水口部19から排出される排水状態になる。
【0026】
トラップケース22の下面部は床フランジ7上に載置された状態でボルト等により床フランジ7に締結され、これによってトラップケース22の内部空間23は孔24を介して床フランジ7の排水流路6に通じる。
【0027】
図1のようにトラップケース22の上部は複数のボルト38により各取付フレーム12に取り付けられる。このようにトラップケース22が取り付けられた各取付フレーム12は、前述のように固定フレーム10に対して前後方向の取付位置を変更できる。このため、各取付フレーム12の固定フレーム10に対する前後方向の取付位置を変更すれば、トラップケース22の便器本体3に対する前後位置を変更することができる。すなわち、固定フレーム10に対して前後位置調節可能に取り付けられる各取付フレーム12は、トラップケース22の便器本体3に対する前後方向の取付位置を変更する手段を構成している。また、前記固定フレーム10はボルト等で床9に固着される。
【0028】
前記駆動機構によりトラップ管21を駆動して便器装置1を排水状態にすると、ボウル部2内の水は、排水口部19、トラップ管21の内側、トラップケース22の内部空間23、及び床フランジ7の排水流路6を順に通過して、排水管5から排出される。
【0029】
両取付フレーム12の上端部には、トラップ装置4の上方に位置する装置ユニット30が取り付けられる。装置ユニット30は図示しない各種付属装置を支持ケース31に設けたものであり、前記付属装置として、局部洗浄装置、乾燥装置、脱臭装置、及び給水装置を有している。
【0030】
局部洗浄装置はボウル部2内に突出して人体の局部を洗浄する洗浄ノズルを有し、乾燥装置はボウル部2に通じる送風用ダクトを有している。脱臭装置は、ボウル部2内に通じる脱臭用ダクトを有し、脱臭用ダクトによりボウル部2内の空気を吸い込み、これを脱臭する。給水装置はボウル部2内に通じる給水用ノズルを有し、給水用ノズルからボウル部2内に水洗用の水を供給する。
【0031】
これら付属装置を支持する支持ケース31は、各取付フレーム12に取り付けられる被固定部32を有している。なお、図1では一方の被固定部32のみを図示している。各被固定部32には、上下に貫通し、長手方向が前後方向と平行な長孔33が形成されている。長孔33には上方からボルト34が挿通され、このボルト14の先端部を取付フレーム12にねじ込むことで、被固定部32は取付フレーム12に締結される。ボルト34は長孔33に前後方向にスライド自在に挿入され、ボルト34を緩めることで長孔33に対する挿入位置を変更することができる。このため、支持ケース31を両取付フレーム12の前後方向の任意の位置に取り付けることができる。
【0032】
後パーツ16は固定フレーム10の後部及び前パーツ15に取り付けられるものであって、便器外郭11の後部の両側の側面及び上面を構成する。なお、本実施形態の後パーツ16は後面部を有しておらず、後方に開口している。従って、便器外郭11の内部の後方は、後述のように便器装置1をトイレ室後方の壁35に沿って設けたときに、壁35によって覆われる。
【0033】
後パーツ16は、便器本体3の後部に配置された、トラップ装置4、装置ユニット30、及び床フランジ7を覆う。後パーツ16は着脱自在の複数のカバー36(図2参照)で構成されており、任意のカバー36を取り外すことで、便器外郭11内のトラップ装置4や装置ユニット30等の保守・点検を行えるようになっている。また、便器外郭11には、便座(図示せず)と便蓋37(図2参照)が回動自在に取り付けられる。
【0034】
便器装置1を設置するには例えば以下のように行う。まず、前述のように床9に設けられた排水管5に床フランジ7を取り付け、この床フランジ7を床9に固定する。次に、図1のように各取付フレーム12が取り付けられた固定フレーム10を床9に載置し、これにより床9上に便器本体3を配置する。この際、固定フレーム10は床9に固定しない。
【0035】
次にトラップ管21をボウル部2に接続して、トラップ装置4を便器本体3に取り付ける。この後、前述のようにトラップケース22を床フランジ7に取り付けることで、トラップ装置4を床フランジ7に固定する。また、この際、前述したようにトラップケース22を各取付フレーム12に取り付ける。
【0036】
次に、ボルト14を緩めて、前述のように各取付フレーム12の固定フレーム10に対する前後方向の取付位置を変更し、これにより固定フレーム10及びこれに取り付けられた便器外郭11を後方に移動して壁35に近づける。このとき、トラップ管21は、排水口部19に接続された状態のまま、接続管部28が収縮して短くなる。そして、ボルト14を締めて、各取付フレーム12を固定フレーム10に固定する
次に、固定フレーム10を前述したように床9に固定し、各取付フレーム12に装置ユニット30を取り付ける。前記装置ユニット30は、前記洗浄ノズル、送風用ダクト、脱臭用ダクト、及び給水用ノズルをボウル部2に形成された孔39を介してボウル部2内に臨ませる必要がある。このため、前記装置ユニット30を各取付フレーム12に取り付けるにあたっては、前述のように装置ユニット30の各取付フレーム12に対する前後方向の位置を調節して取り付ける。
【0037】
なお、便器装置1の設置方法は上記に限られるものではない。例えば、上記において、トラップ装置4を床フランジ7に固定した後、トラップ管21をボウル部2に接続したり、トラップケース22を各取付フレーム12に取り付けた後、各取付フレーム12を固定フレーム10に取り付けたりしてもよい。
【0038】
以上説明した便器装置1は、床9に設けられた排水管5に対して接続されたトラップケース22が、便器本体3に対して前後位置調節可能に取り付けられる。このため、施工誤差により排水管5が床9の所定位置から前後方向にずれた位置に設けられたとしても、このずれをトラップケース22の便器本体3に対する前後方向の取付位置を変更することで吸収できる。従って、便器本体3をトイレ室後方の壁35に近づけて設置することができる。また、便器本体3は、便器外郭11の後端を壁35に接触させて設置することができる。この場合、便器本体3と後方の壁35との間にごみ等が溜まる隙間が形成されなくてよい。さらにこの場合、便器外郭11(後パーツ16)の後面部が不要になり、製造コストを削減できる。
【0039】
また、トラップ管21がボウル部2の排水口部19に長さ変更可能な接続管部28を介して接続されている。このため、接続管部28の長さを変更することで、前記トラップケース22の便器本体3に対する取付位置の変更を支障なく行うことができる。
【0040】
また、本実施形態のトラップ管21は伸縮自在の蛇腹管で構成され、この蛇腹管の端部により接続管部28が構成されている。このため、別途接続管部28を構成する部材を設ける必要がなく、部材点数を削減できる。
【0041】
なお、本実施形態では、後パーツ16を後方に開口するものとしたが、後パーツ16は便器外郭11内部の後方を覆う後面部を有するものであってもよい。また、本実施形態では装置ユニット30を両取付フレーム12の前後方向の任意の位置で取り付けることで、洗浄ノズル、送風用ダクト、脱臭用ダクト、及び給水用ノズルがボウル部2内に臨むようにした。しかし、洗浄ノズル、送風用ダクト、脱臭用ダクト、及び給水用ノズル等を、蛇腹管等を用いて伸縮可能とすることで、洗浄ノズル、送風用ダクト、脱臭用ダクト、及び給水用ノズルがボウル部2内に臨むようにしてもよい。また、洗浄ノズル等を設けないような便器装置で構成してもよい。また、本実施形態では、トラップケース22を床フランジ7を介して排水管5に接続したが、トラップケース22は排水管5に直接接続してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 便器装置
2 ボウル部
9 床
19 排水口部
21 トラップ管
22 トラップケース
28 接続管部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボウル部を有する便器本体と、床に設けられた排水管に対して接続されて内部が前記排水管に通じるトラップケースと、一端部が前記ボウル部の排水口部に連通すると共に他端部が前記トラップケースの内部で開口するトラップ管を備え、このトラップ管を変形させて前記ボウル部内に水が溜まる溜水状態と前記ボウル部内の水を前記トラップケースの内部を介して排水管に排出する排水状態とに切り換えるターントラップ式の便器装置であって、前記トラップ管が前記排水口部に長さ変更可能な接続管部を介して接続され、前記トラップケースが前記便器本体に対して前後位置調節可能に取り付けられることを特徴とする便器装置。
【請求項2】
前記トラップ管が伸縮自在の蛇腹管で構成され、この蛇腹管の端部によって前記接続管部が構成されたことを特徴とする請求項1に記載の便器装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−225025(P2012−225025A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92309(P2011−92309)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】