説明

便器

【課題】 便器リム部および便座の汚れの付着を抑え、メンテナンスを容易にし、しかも見栄えをよくすることができる、新しい便器を提供する。
【解決手段】 便器(1)を構成する便器リム部(2)の上面(21)と、この便器リム部(2)の上面(21)と対面する便座(3)の裏面(31)のそれぞれには、便器開口部(4)方向に傾斜が形成されており、便器リム部(2)の上面(21)または便座(3)の裏面(31)のどちらか一方の一部分で前記傾斜の角度を変化させ、便器リム部(2)の上面(21)と便座(3)の裏面(31)とを、当接させる部分と当接させない部分を形成してなること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、便器に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、便器リム部および便座の汚れの付着を抑え、メンテナンスを容易にし、しかも見栄えをよくすることができる、新しい便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、便器を構成する便器リム部の上面と、この便器リム部の上面と対面する便座の裏面は、それぞれ平坦面に形成されている便器が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
図6を例にとって、この特許文献1記載の便器を説明すると、この便器(ア)は、便座(イ)の裏面(ウ)の平坦面の複数箇所に、突起状の支持脚(エ)が設けられている。そして、この支持脚(エ)によって便座(イ)が支持され、便器リム部(オ)の上面(カ)の荒れを防止するとともに、便座(イ)の裏面(ウ)の汚れ付着を抑えるようにしている。なお、(キ)は、便蓋である。
【特許文献1】特開平11−247268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図6に例示した、上記特許文献1記載の便器(ア)における支持脚(エ)の表面は、便器リム部(オ)の上面(カ)の荒れを防止するため、便座(イ)とは別体のゴム材やシリコン材等の軟質材から形成されている。このため、便器リム部(オ)の上面(カ)や便座(イ)、特に便座(イ)における支持脚(エ)の周囲や軟質材に汚れが付着しやすいという問題があった。
【0005】
また、この支持脚(エ)は、突起状に形成されているため、その周囲の清掃等のメンテナンスが行いにくいという問題があった。さらに、男子小用時等で便座(イ)を上げた際に、便座(イ)の裏面(ウ)に形成されている突起状の支持脚(エ)が露出して、見栄えが悪いという問題もあった。
【0006】
そこで、以上のとおりの背景から、この出願の発明は、従来の問題点を解消して、便器リム部および便座の汚れの付着を抑え、メンテナンスを容易にし、しかも見栄えをよくすることができる、新しい便器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、便器を構成する便器リム部の上面と、この便器リム部の上面と対面する便座の裏面のそれぞれには、便器開口部方向に傾斜が形成されており、便器リム部の上面または便座の裏面のどちらか一方の一部分で前記傾斜の角度を変化させ、便器リム部の上面と便座の裏面とを、当接させる部分と当接させない部分を形成してなることを特徴とする便器を提供し、また、第2には、傾斜の角度の変化は、便座の裏面の傾斜角度を変化させることで行う便器を提供する。
【発明の効果】
【0008】
上記のとおりのこの出願の第1の発明によれば、便器リム部および便座の汚れの付着を抑え、メンテナンスを容易にし、しかも見栄えをよくすることができる。
【0009】
第2の発明によれば、上記第1の発明の効果に加えて、より簡便に傾斜を変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この出願の発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に、添付した図面に沿って、この出願の発明の実施形態について詳細かつ具体的に説明する。
【0011】
図1は、この出願の発明の便器の一実施形態において、便座を上げた状態を模式的に例示した正面斜視図およびX-X断面図である。図2は、図1の実施形態において、便座を下げた状態を模式的に例示した正面斜視図である。また、図3は、図2のA-A断面図である。図4は、図2のB-B断面図である。図5は、図2のC-C断面図である。
【0012】
まず、図1に沿って、この出願の発明の便器(1)を説明する。この出願の発明の便器(1)は、便器(1)を構成する便器リム部(2)の上面(21)と、図2のように便座(3)を下げた(閉じた)際にこの便器リム部(2)の上面(21)と対面する便座(3)の裏面(31)のそれぞれに、便器(1)の開口部(4)の方向、つまり内方に向かって一定の角度で下方に傾斜(以下、傾斜角度と記載することがある)を形成させている。このように、開口部(4)の方向に向かって、便器リム部(2)の上面(21)に傾斜を形成させることで、便器リム部(2)の上面(21)に付着した汚れは、この傾斜を伝わって開口部(4)へと流し落とすことができる。
【0013】
そして、便器リム部(2)の上面(21)、または、便座(3)の裏面(31)のどちらか一方の一部分において、前記傾斜角度を大きくしたり、もしくは、小さくしたりする等変化させることで、便器リム部(2)の上面(21)と便座(3)の裏面(31)とを、当接させる部分と当接させない部分を形成している。つまり、便器リム部(2)の上面(21)と便座(3)の裏面(31)において、その一部の箇所のみで線接触で当接しており、一方で、その他の箇所では当接していない状態となっていることを意味する。なお、(5)は便蓋である。
【0014】
図2に沿って、この出願の発明の便器(1)をさらに具体的に説明すると、便器リム部(2)の上面(21)と便座(3)の裏面(31)それぞれにおいて、複数の箇所にて、便器リム部(2)の上面(21)の傾斜角度と便座(3)の裏面(31)の傾斜角度を相違させて形成している。たとえば、図3の例のように、便座(3)の裏面(31)の開口部(4)周縁の一部の箇所(T1)の傾斜角度は、便器リム部(2)の上面(21)の傾斜角度よりも大きく形成している。このため、便器リム部(2)の上面(21)と便座(3)の裏面(31)とは、一部の箇所(T1)(図2においては、開口部(4)周縁の前後左右の4箇所)にて線接触で当接しており、従来のように突起状の支持脚を形成させなくとも便座(3)を安定して支持することができる。
【0015】
その一方で、上記一部の箇所(T1)以外の他の箇所(T2)では、たとえば、図4の例のように、便器リム部(2)の上面(21)の傾斜角度と便座(3)の裏面(31)の傾斜角度とを略同一にすることで、当接していない部分を設けている。
【0016】
さらに具体的に説明すると、図5に例示したように、便器リム部(2)の上面(21)と便座(3)の裏面(31)との関係において、線接触(W)で当接している一部の箇所(T1)と当接していない他の箇所(T2)が共存することによって、線接触(W)による当接箇所で便座(3)の支持をするとともに、当接していない箇所の存在で便器リム部(2)の荒れの防止、便座(3)の汚れ付着の抑制等といった効果を図ることができる。なお、この線接触(W)の幅は、便座(3)を安定して支持することができれば特に制限されないが、通常は、たとえば40-50mm程度である。
【0017】
すなわち、このような構成とすることで、この出願の発明の便器(1)は、従来のように突起状の支持脚を形成する必要がないため、便器リム部(2)の上面(21)の荒れを防止でき、便器リム部(2)および便座(3)の汚れの付着を抑えることができる。また、清掃等のメンテナンスを容易にすることができるため、汚れが付着しても簡単に取り除くことができる。しかも、男子小用時等に便座(3)を上げた(開けた)際の便座(3)の裏面(31)は、略同一の面に見えるため、見栄えをよくすることもできる。
【0018】
ところで、通常、便器リム部(2)の成形は、便器(1)の本体自体を成形する際に形成されるものであるため、便座(3)の成形と比較して大掛りになることがある。そこで、この出願の発明の便器(1)は、図3および図4の例のように、比較的成形が容易な便座(3)にて、前記傾斜の角度を変化させることが好ましい。すなわち、便座(3)の裏面(31)の傾斜角度を変化させることで、便器リム部(2)の上面(21)と便座(3)の裏面(31)において、より簡便に当接箇所と当接しない箇所を設けることができる。
【0019】
もちろん、この出願の発明における傾斜角度の変化は、便器リム部(2)の上面(21)の傾斜角度を変化させることで行ってもよい。
【0020】
この出願の発明の便器は、以上の例示によって限定されるものではなく、その細部については、様々な態様とが可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、この出願の発明の便器の一実施形態において、便座を上げた状態を模式的に例示した正面斜視図およびX-X断面図である。
【図2】図1の実施形態において、便座を下げた状態を模式的に例示した正面斜視図である。
【図3】図2のA-A断面図である。
【図4】図2のB-B断面図である。
【図5】図2のC-C断面図である。
【図6】従来の便器を模式的に例示した側面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 便器
2 便器リム部
21 上面
3 便座
31 裏面
4 開口部
5 便蓋
T1 一部の箇所
T2 他の箇所
W 線接触
ア 便器
イ 便座
ウ 裏面
エ 支持脚
オ 便器リム部
カ 上面
キ 便蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器を構成する便器リム部の上面と、この便器リム部の上面と対面する便座の裏面のそれぞれには、便器開口部方向に傾斜が形成されており、便器リム部の上面または便座の裏面のどちらか一方の一部分で前記傾斜の角度を変化させ、便器リム部の上面と便座の裏面とを、当接させる部分と当接させない部分を形成してなることを特徴とする便器。
【請求項2】
傾斜の角度の変化は、便座の裏面の傾斜角度を変化させることで行う請求項1記載の便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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