説明

便座装置

【課題】着座時の衝撃を吸収し、かつ着座状態の座り心地が良く、かつ長時間の着座の際においても人体への影響度が小さい便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】便座7の少なくとも一部に使用者の体形に沿うように変形する弾性体層12を備え、前記弾性体層12の下方に弾性を備えた補強材13、基材14の順に配設することにより、弾性体層12と補強材13で着座時の衝撃を吸収するとともに、弾性体層12が臀部に沿って変形することにより座圧を均等化および分散化することができるので、長時間快適に着座できる便座とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器上面に設けられ、使用者の体形に沿うように変形する弾性体層を有する便座装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の便座装置としては、合成皮革の表皮材の裏面に紐状ヒータを配設し、それらの下方に低反発の発泡樹脂を設置し、低反発の発泡樹脂の下方には合成樹脂基材を設置した構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8は、特許文献1に記載された従来の便座装置の断面を示すものである。図8に示すように、使用者の皮膚に接触する便座6の表面から表皮材2、紐状発熱体3、クッション層4、合成樹脂基材5の順に構成されている。
【特許文献1】特開2005−102843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、使用者の体重を柔軟に支えるクッションは、低反発の発泡樹脂で構成されたクッション層のみであるため、剛性不足になり使用者の体重を十分に支えきれない場合や、クッション層の厚さが不十分なために、特に着座時に底当たり状態になり、合成樹脂基材の感触が使用者の臀部に伝わり、不快感を感じことがある。また、便座ヒータが表皮材と軟質樹脂層の間に配置され、その便座ヒータの形状が紐状ヒータであるため、着座したときに便座に紐状ヒータのところだけ凸になった面が形成され、でこぼこ感が残るとともに、長く座っていると臀部に凹凸の型が残ってしまうなどの課題を有していた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであり、着座時の衝撃を吸収し、かつ着座状態の座り心地が良く、かつ長時間の着座の際においても人体への影響度が小さい便座装置を提供することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の便座装置は、便座の少なくとも一部に使用者の体形に沿うように変形する弾性体層を備え、前記弾性体層の下方に弾性を備えた補強材、基材の順に配設したものである。
【0007】
これによって、弾性体層と補強材で着座時の衝撃を吸収するとともに、弾性体層が臀部に沿って変形することにより座圧を均等化および分散化することができるので、長時間快適に着座できる便座とすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の便座装置は、着座時の衝撃の吸収と座圧の均等化および分散化により、長時間快適に着座できる便座装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、便器上面に装着する便座において、少なくとも一部に使用者の体形に沿うように変形する弾性体層を備え、前記弾性体層の下方に補強材と基材を順に配設し、前記補強材は弾性を備えたことを特徴とすることにより、使用者が着座するときの衝撃は弾性体層と弾性を備えた補強材で吸収し、着座状態では弾性体層が使用者の臀部に倣って変
形することで座圧の均等化と分散化を行うことができるので、長時間着座しても痺れたり、痛さを感じることがなく快適な便座装置を提供することができる。
【0010】
第2の発明は、特に、第1の発明の補強材の弾性強度が、着座した使用者が便座に接触する身体の部位に対応して異なることにより、使用者の身体の突出部が接触し座圧が高くなり底当たり状態になりやすい部分は弾性強度を低くし、広い面で接触することにより座圧が低くなる部分は弾性強度を高くすることにより、全体の座圧を均等化と底当たりを解消することができるので、より快適な便座を提供できると共に、便座の周辺部の弾性強度を大きくすることで弾性体層の変形移動を防止することができる。
【0011】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の補強材の弾性強度が、便座の開口部近傍が外周部近傍に対して硬くすることにより、補強材の開口部近傍のひずみ量を小さくすることで、便座開口部の形状の安定させることとなり、使用者が着座したときに感じる便器内への落ち込みへの不安感を取り除くと共に、弾性体層が便器内側方向に移動変形することを防止することができる。
【0012】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明において、補強材の上面の少なくとも一部を傾斜面で構成したことにより、使用者の臀部の形状に近い補強材とすることができ、座圧の均等化を図ることができるので、座っていてより快適な座り心地にすることができる。
【0013】
第5の発明は、特に、第4の発明の補強材の上面を便座の開口部側に向かって低くなる傾斜を設けたことにより、弾性体層の厚さを開口部側を外周側より厚くすることが可能となり、柔らかさを敏感に感じる内股に接触する部分の弾性強度を柔らかくすることができるとともに、弾性体層が体重により変形移動することを防止することができる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における便座装置の外観図、図2は便座の弾性強度の分布を示す模式図であり、図3は図2のAA断面図を示し、図4は図2のBB断面図示し、図5は図2のCC断面図を示すものである。
【0016】
図1に示す本発明の第1の実施の形態を説明すると、便座装置は、温水洗浄便座であって、便座6と便蓋7と、本体ケース8で構成され、本体ケース8内部には、熱交換タンクや洗浄ノズル、電磁弁、乾燥ユニット、脱臭ユニット、制御装置等が内蔵されており(図示せず)、使用者は洗浄ノズルから吐水される温水を臀部に当てることにより、用便による汚れを洗い流すことができるものである。この便座装置は、便器9の上面に便座6及び本体ケース8の下面が接するように載置される。便器9の上面には、本体ケース8と係合するベースプレート固定用穴が2箇所穿設されており、ゴムブッシュ及びボルトによりベースプレートは固定される(図示せず)。
【0017】
次に、便座6の構成について図を用いて説明する。図2は便座の弾性強度の分布を示す模式図であり、図のハッチングの部分は他の部分より弾性強度が高くなっていることを表している。
【0018】
図3は便座6の側部後方に対応するAA断面図であり、この部分は着座した使用者の臀部のほぼ中心に対応する部分であり、上面が使用者の皮膚と接触する面である。便座6は上面には柔軟性を有する表皮材10が便座6のほぼ全面に配置してあり、表皮材10の下
方には柔軟性を備えた面状の便座ヒータ11と軟質樹脂からなる弾性体層12が設置してあり、前記便座ヒータ11は弾性体層12の上部に配設してある。
【0019】
弾性体層12の下方には弾性体層12に当接して弾性を有する樹脂の成型品からなる補強材13が設置してあり、補強材13は両側端を基材14で保持され、補強材13の中央部と基材14との間は空洞部を形成しており、補強材13は下方に撓むことが可能な構成となっている。
【0020】
補強材13は上面は中央部が凹陥した傾斜面となっており、下面は略水平面で構成することにより、便座6の外周部6a近傍と開口部6bの近傍に対応する部分は肉厚が厚くなっており、外周部6a近傍と開口部6bの近傍は中央部より弾性強度が高くなっている。
【0021】
また、図3に示すように、弾性体層12は便座6の外周部6aから中央部までは厚さが厚く、それより開口部6b側は順次厚さが薄くなるように構成してある。
【0022】
図4は便座6の側方に対応するBB断面を示すものであり、この部分は着座した使用者の太ももに対応する部分である。AA断面と異なる点は、補強材13の上面は便座6の開口部6b側が低くなる傾斜面となっており、下面は中央部より開口部6bに向かって順次肉厚が厚くなっており、開口部6b側の弾性強度が高くなった構成となっている。また、弾性体層12は便座6の外周部6a側と開口部6b側はほぼ同等の厚みを有している。
【0023】
図5は便座6の後方に対応するCC断面を示すものであり、この部分は着座した使用者の臀部後方に対応する部分で身体とあまり接触することがなく、荷重もあまり掛からない部分である。AA断面と異なる点は、補強材13の上面と下面はともに便座6の開口部6b側が低くなる傾斜面となっており、補強材の肉厚はほぼ一定の厚みとなっており、外周部6a側と開口部6b側はほぼ同等の弾性強度となっている。また、弾性体層12は便座6の外周部6a側と開口部6b側はほぼ同等の厚みを有している。
【0024】
以上のように構成された便座装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0025】
便座ヒータ11であらかじめ暖められた便座6に使用者が着座すると、着座時は便座6に使用者の体重による荷重が衝撃的に加えられる。このとき、使用者の臀部の中央部に対応する便座の側部後方では、まず弾性体層12が完全に変形し、底当たり状態となるが、この部分の補強材13は中央部の肉厚が薄くなっているため、補強材が撓み、この衝撃を吸収することにより、使用者はあまり衝撃を感じることがなく快適に着座することができる。
【0026】
着座した状態では、便座の側部後方に使用者の臀部の中央部が載り、便座6の側方部に使用者の太ももが載った状態になるが、便座6の側方部は図4に示すように便座6の開口部6bに向かった傾斜面となっているので、太ももの内側が圧迫されることがなく、使用者の血流を阻害することが少ない。
【0027】
また、便座6の側部後方及び側方部ともに開口部6b側の補強材13の弾性強度を高くしており、この部分で使用者の体重を確実に支持するとともに、弾性体層8が変形して開口部6bに流出することを防止する作用を備えている。
【0028】
また、便座後部においては、補強材13、弾性体層12とも開口部6bに向かって傾斜を設けることにより、使用者の臀部後方の体形に沿って容易に変形しやすいようになっている。
【0029】
以上のように、本実施の形態においては、着座する使用者の臀部の部位に対応して、補強材の弾性強度と傾斜を変えるとともに、弾性体層を配置することにより、着座時の衝撃を吸収するとともに、着座状態では座圧を分散及び均一化すすることにより、使用者が長時間快適に着座できる便座装置を提供することができる。
【0030】
なお、本実施の形態においては、便座ヒータを弾性体層の上部に配設したが、これに限るものではなく、表皮材の内部あるいは表皮材と弾性体層の間に配設することにより、便座暖房の速暖性を高めることが可能となり、補強材の上面あるいは補強材の内部に配設した場合は、非使用時の保温性を高めることができ、省エネの効果を得ることができる。
【0031】
また、本実施の形態においては、便座ヒータとして、面状のヒータを使用したが、これに限るものではなく、コードヒータや板状のヒータ等の使用が考えられる。また、面状のヒータにおいても、正温度係数特性を有するPTCヒータを採用することにより、安全性の高い便座装置を提供することが可能となる。
【0032】
また、本実施の形態においては、補強材は樹脂成型品を採用したが、これに限るものではなく、各種の金属で形成したものや、金属と樹脂の複合の材料で構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明にかかわる便座装置は、着座時に衝撃を与えず、長時間快適に着座することが可能となるので、特に高齢者あるいは障害者用の着座装置等の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態1における便座装置の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における便座の弾性強度を示す模式図
【図3】本発明の実施の形態1における便座の図2に示すAA断面図
【図4】本発明の実施の形態1における便座の図2に示すBB断面図
【図5】本発明の実施の形態1における便座の図2に示すCC断面図
【図6】従来の便座装置の斜視図
【符号の説明】
【0035】
6 便座
6a 外周部
6b 開口部
12 弾性体層
13 補強材
14 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器上面に装着する便座において、少なくとも一部に使用者の体形に沿うように変形する弾性体層を備え、前記弾性体層の下方に補強材と基材を順に配設し、前記補強材は弾性を備えたことを特徴とした便座装置。
【請求項2】
補強材の弾性強度が、着座した使用者が便座に接触する身体の部位に対応して異なることを特徴とした請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
補強材の弾性強度が、便座の開口部近傍が外周部近傍に対して硬いことを特徴とした請求項1または2に記載の便座装置。
【請求項4】
補強材の上面の少なくとも一部を傾斜面で構成したことを特徴とした請求項1〜3のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項5】
補強材の上面を便座の開口部側に向かって低くなる傾斜を設けたことを特徴とした請求項4記載の便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−135654(P2007−135654A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329664(P2005−329664)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】