説明

係合部付き車両用樹脂成形品

【課題】製品意匠面側にヒケが生じないようにしながら、変位量を自ら吸収できる構造にして、櫓体根元での剥離防止を確実にし、品質向上に貢献できる係合部付き車両用樹脂成形品を提供する。
【解決手段】車両用樹脂成形品1に係る板状部11の裏面11bに、一対の脚片3を離間させて立設すると共に、両脚片3の上部同士を天板4で連結してなる櫓体2が一体に成形され、さらに該天板4上に起立し、相手部材71との連結に供する係合部6が一体に成形される係合部付き車両用樹脂成形品1であって、一対の前記脚片3が対向して配設され、且つ両脚片3のそれぞれに、曲板部38又は/および前記板状部11の裏面11bに対し傾く板状の傾斜部31が形成され、該曲板部38又は/および該傾斜部31の撓み変形により、前記係合部6の位置が前記板状部11の裏面11bに対し垂直方向に相対変動するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手部材との連結に供するボス等の係合部が一体に成形される係合部付き車両用樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグ装置82を備える車両には、例えば図12のように裏面9a側に形成した櫓体91にボス92を立設させる樹脂製パッセンジャーエアバッグリッド9が用いられることがある。該パッセンジャーエアバッグリッド9は、ボス92を介して、インストルメントパネル71にビス72で接続固定される。パッセンジャーエアバッグリッド9を用いたエアバッグ装置82は、車両衝突時に、エアバッグドア部86が開いて、バッグ82aが飛び出すことにより乗員を保護する構造になっている(図13)。符号81はエアバッグガイド用枠体、符号81aは該枠体81に設けた通孔、符号83はエアバッグケース、符号83aはフック、符号84はブラケット、符号85はリンフォースを示す。
ところで、前記エアバッグドア部86の展開時に、バッグ82aが飛び出す力によって、パッセンジャーエアバッグリッド9が、図13の中黒矢印のように押し上げられ変形する。パッセンジャーエアバッグリッド本体90、板状部で構成された櫓体91、及びボス92によるインストルメントパネル71へのビス接続構造は、パッセンジャーエアバッグリッド9の変形時の変位量を吸収するのが困難で、最悪の場合、強度的に一番弱い櫓体91の根元91aで剥離する虞があった。剥離対策として、櫓体91の板厚を厚肉化する方法も考えられる。しかし、そのようにすれば、櫓体91がパッセンジャーエアバッグリッド製品9の意匠裏面9aに着地するため、今度は意匠面側にヒケなどの外観不良を誘発した。
こうしたなか、ヒケ対策を講じながらその問題解決に取り組む発明も提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−237562公報
【0004】
特許文献1は、電気回路部品を収容する樹脂成型筐体であるが、その請求項1に記載のごとく「樹脂成型筐体の裏面に、前記電気回路部品を支持するリブが、前記樹脂成型筐体に一体的に突出形成されており、且つ前記リブは、前記樹脂成型筐体に比べて肉薄に形成されたリブ部と、前記リブ部上に一体に形成されたボス部とを備え、前記リブ部が、前記樹脂成型筐体に接合」されている。さらに、その段落0126に、「リブ部3Bは、箱体形状、この例では、図7(c)に示すように、底面視した場合、概ねE字形状にされて、樹脂成型筐体(この例では、化粧カバー体1a)の裏面に接合することで、樹脂成型筐体への接合面積を、図5に示すリブ2Aより更に大きくし、樹脂成型筐体1に対するリブ2Bの機械的強度を増している」と発明開示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、特許文献1のリブ部の形状では、エアバッグドア展開時の衝撃を吸収するにまだ不十分であった。図13で説明すれば、エアバッグドア展開時において、櫓体根元91a(特許文献1ではリブ部根元)で剥離に耐え得る縦方向の引張り強さを向上させる必要があった。パッセンジャーエアバッグリッド9の変形時の変位量に抗する引張強度を高めるにも限界があった。加えて、パッセンジャーエアバッグリッド等の車両用樹脂成形品にあっては、電気回路部品を収容する樹脂成形品と違い、車両走行で振動,衝撃等の過酷な条件下におかれ、またエアバッグドア展開時の衝撃力を受けることから、様々な角度からの圧力にも耐え得る一層の強度を要した。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するもので、製品意匠面側にヒケが生じないようにしながら、変位量を自ら吸収できる構造にして、櫓体根元での剥離防止を確実にし、品質向上に貢献できる係合部付き車両用樹脂成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、車両用樹脂成形品に係る板状部の裏面に、一対の脚片を離間させて立設すると共に、両脚片の上部同士を天板で連結してなる櫓体が一体に成形され、さらに該天板上に起立し、相手部材との連結に供する係合部が一体に成形される係合部付き車両用樹脂成形品であって、一対の前記脚片が対向して配設され、且つ両脚片のそれぞれに、曲板部又は/および前記板状部の裏面に対し傾く板状傾斜部が形成され、該曲板部又は/および該傾斜部の撓み変形により、前記係合部の位置が前記板状部の裏面に対し垂直方向に相対変動するようにしたことを特徴とする係合部付き車両用樹脂成形品にある。
請求項2の発明たる係合部付き車両用樹脂成形品は、請求項1で、一対の前記脚片に係る両傾斜部が、一方を正面視<形にして他方を正面視>形の一又は複数繰り返す形状とすることを特徴とする。請求項3の発明たる係合部付き車両用樹脂成形品は、請求項1で、一対の前記脚片に係る両傾斜部が、それぞれ前記板状部の裏面から、同方向に向けて等間隔を保ちながら延設される平行板部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の係合部付き車両用樹脂成形品は、製品意匠面側に外観不良が生じないようにしながら、衝撃等で発生する変位量を自ら吸収できる構造を保有して、櫓体根元での剥離防止を確実にし、品質向上に貢献できる係合部付き車両用樹脂成形品を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態1に係る係合部付き車両用樹脂成形品の概略斜視図である。
【図2】図1の部分拡大斜視図である。
【図3】図1で図示した一の櫓体の斜視図である。
【図4】図3の櫓体の正面図である。
【図5】図3の櫓体による相手部材へのビス接続構造で、樹脂成形品の変形が生じた際の様子を示す一部断面説明図である。
【図6】図3の櫓体で、(イ)が相手部材と櫓体との間に隙間発生した様子の説明断面図、(ロ)が(イ)の状態から相手部材へ櫓体をビス固定した説明断面図である。
【図7】図6に代わる従来形櫓体を用いた場合の対比説明断面図である。
【図8】(イ),(ロ)共に、図3〜図6の櫓体と異なる他態様の櫓体の正面図で、図4に対応する図である。
【図9】実施形態2の櫓体の正面図で、図4に対応する図である。
【図10】図9の櫓体による相手部材へのビス接続構造で、樹脂成形品の変形が生じた様子を示す一部断面説明図である。
【図11】実施形態3の櫓体の正面図で、図4に対応する図である。
【図12】従来技術の説明断面図である。
【図13】従来技術の説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る係合部付き車両用樹脂成形品について詳述する。
(1)実施形態1
図1〜図8は本発明の係合部付き車両用樹脂成形品の一形態で、図1がその全体斜視図、図2が図1の部分拡大図、図3が櫓体の斜視図、図4が図3の櫓体の正面図、図5が櫓体と相手部材とのビス接続で、樹脂成形品に変形が生じた様子を示す一部断面説明図、図6(イ)が相手部材と櫓体との間に隙間発生した様子の説明断面図、(ロ)が(イ)の状態から相手部材へ櫓体をビス接続した説明断面図、図7が図6に代わる従来形櫓体を用いた場合の対比図、図8が図4の櫓体に代わる櫓体の他態様図である。尚、図1は主だった係合部付き櫓体を数個図示するにとどめて簡略化し、また板状部裏面に設けている補強用起立リブの図示を省略する。また、図面を判かり易くするため、櫓体の脚片の肉厚を厚く描く。
【0011】
本実施形態の係合部付き車両用樹脂成形品1(以下、単に「樹脂成形品」ともいう。)は、車両用内装品たるパッセンジャーエアバッグリッドに適用する。車両用樹脂成形品1がエアバッグを開放する開口部12を有するパッセンジャーエアバッグリッドになっている。樹脂成形品1は、熱可塑性樹脂からなる図1ごとくの板状射出成形品で、櫓体2と係合部6とを具備する。
この樹脂成形品1に係る板状部11の裏面11bには、略四角筒枠の形で、別成形されたエアバッグガイド用枠体81が接着固定される(図1,図2)。枠体81の外鍔811が板状部裏面11bに接着する。枠体内81cの底板810には、図2に見られるようなH字状のスリット86aが設けられて、二つのエアバッグドア部86を形成する。符号86bは両エアバッグドア部86をつなぐ括れ部分を示す。枠体内81cに配される樹脂成形品1の裏面11bには、例えば前記スリット86aに合わせて、溝底が意匠面11aの手前でおさまる断面略U字状の溝(図示せず)が設けられる。エアバッグドア部86の展開時に、樹脂成形品1の枠体内81cの板状部11を開口部12へと円滑移行させるためである。
【0012】
櫓体2は、前記枠体81近くの外側で、樹脂成形品1に係る板状部11の裏面11bに複数設けられる(図1,図2)。板状部裏面11bに、一対の脚片3を離間させて立設すると共に、両脚片3の上部同士を天板4で連結してなる櫓体2が一体に成形される。櫓体2は脚片3と天板4とからなり、一対の脚片3が対向して配設される。両脚片3のそれぞれに、板状部裏面11bに対し傾く板状の傾斜部31が形成される。
【0013】
詳しくは、一対の脚片3が対向して平行配設され、且つ両脚片3のそれぞれに、板状部11の裏面11bに対し、傾く傾斜部31がその長手方向に等断面形状に形成される(図3)。櫓体2の各脚片3には、図4の正面視で、紙面垂直方向に向け等断面形状にして、板状部裏面11bに対し上方傾斜する板状傾斜部31が設けられる。
本実施形態の櫓体2は、一対の脚片3に係る両傾斜部31の一方を正面視<形にして他方を正面視>形とする。図4のごとく紙面左側の正面視<形の傾斜部31と紙面右側の正面視>形の傾斜部31とする。両傾斜部31が、板状部裏面11bから、それぞれ正面視逆ハの字状に延設される。相手方傾斜部31から、上方に向け次第に遠ざかる拡張斜板部分31aが延設される。該拡張斜板部分31aの先端が屈曲部位35になり、その後は正面視ハの字状に延設される。先端に向け相手方傾斜部31へ次第に近づく縮小斜板部分31bが延設される。さらに、両縮小斜板部分31bの上縁で内方へ屈曲して水平に延び、両脚片3の上方に上蓋ごとくの板状天板4を一体形成する。図3ごとくの左右対称形の櫓体2とする。両脚片3上に天板4をあたかも載置するよう、該脚片3上に天板4を設けてなる櫓体2は、樹脂成形品1の成形時にこれと一体に成形される(図6)。図4で、板状部11を付加した櫓体2の形状は、中空六角形にして、紙面手前の開放口20が、櫓体2内を紙面垂直方向に貫通する通孔2cの一部になっている。
脚片3の肉厚tは、該脚片3の土台となる板状部11の肉厚tの40%以下で成形される(図4)。板状部11の肉厚tが40%を越えると、板状部11の意匠面11a側にヒケが出やすくなるからである。
【0014】
また、相手部材たるインストルメントパネル本体71との連結に供する係合部6たるボス6aが、前記天板4の表面4aに立設する。該ボス6aは、櫓体2と同様、樹脂成形品1の成形時にこれと一体に成形される。樹脂成形品1は図12と同様、ボス6aを介してインストルメントパネル本体71にビス72で接続固定される。符号61はボス本体たる円筒部、符号62はボス穴、符号63はボス6aの補強用リブを示す。
係合部6は、相手部材71との連結に供する棒状,軸状の突起体であればよく、例えば図1,図2に示すようなクリップ6bとすることもできる。符号66はクリップ本体65に設けた係止部を示す。
【0015】
そして、該係合部6と前記傾斜部31を設けた櫓体2とが一体に成形された樹脂成形品1は、傾斜部31の撓み変形により、係合部6の位置が板状部11の裏面に対し垂直方向に相対変動するようにしている。板状部裏面11bに対し垂直方向に加えられる外力に応じて、図5のごとく傾斜部31が樹脂の保有する弾性変形で伸び縮みできる構造とする。
図5は、樹脂成形品1が相手部材71にビス72で接続固定された当初鎖線位置から、白抜矢印方向の外力によって、樹脂成形品1の板状部11が実線位置の上方へ移動した様子を示す。正面視「く」字状の傾斜部31が、図5の上下方向に伸びることによって、外力に伴う板状部11の変位量を吸収する。
【0016】
また、傾斜部31の撓み変形により、係合部6の位置が板状部11の裏面11bに対し垂直方向に相対変動する他の例を示す。
一般的櫓体91を有する図7(イ)ごとくの樹脂成形品9で、相手部材71へ樹脂成形品9をビス72で取付ける際、現場での据付け誤差の隙間εが発生する場合がある。ボス円筒部92の端面921と相手部材71との隙間εをそのまま残して、ビス固定すると、同図(ロ)のごとく、板状部90が反ってしまう。これに対し、本樹脂成形品1は、図6(イ)ごとく、相手部材71へビス72で取付ける際、隙間εが発生しても、同図(ロ)のごとく傾斜部31が伸長して、櫓体2の高さが高くなり隙間εを吸収する。隙間εの分だけ傾斜部31が伸びるので、板状部11は反ることなく、元のままの同図(イ)の平坦面が保たれる。
【0017】
図3〜図6は、脚片3に係る両傾斜部31の一方を正面視<形にして他方を正面視>形の形状の櫓体2を示す。図4の正面視で、板状部裏面11bからまず逆ハの字状に、相手方傾斜部31に対し次第に遠ざかる拡張斜板部分31aが延設され、その先端が屈曲部位35になって、今度は正面視でハの字状に相手方傾斜部31へ次第に近づく縮小斜板部分31bが延設される形状である。
櫓体2はこれに代えて、例えば両傾斜部31が、図8(イ)のごとく、板状部裏面11bからまず正面視ハの字状に、先端に向け相手方傾斜部31へ近づく縮小斜板部分31bが延設され、その先端が屈曲部位35になって、今度は先端に向け正面視逆ハの字状に相手方傾斜部31から遠ざかる拡張斜板部分31aが延設される形状とすることができる。
また、櫓体2は、その傾斜部31を図8(ロ)のごとく、図3〜図6の拡張斜板部分31a,屈曲部位35,縮小斜板部分31bからなる<形,>形ユニットが複数(ここでは二回)繰り返す形状とすることができる。図3〜図6と同様、傾斜部31の撓み変形により、係合部6の位置が板状部11の裏面11bに対し垂直方向に相対変動する。
【0018】
尚、図4,図8では、いずれも櫓体1の紙面手前の開放口20から櫓体2内を紙面垂直方向に貫通する通孔2cになっているが、図4,図8の櫓体2の背面側に、撓み変形を阻害しない程度に立壁を設けてもよい。また、脚片3が<形,>形の板状傾斜部31だけになっているが、傾斜部31以外に、例えば板状部11に垂直起立させた板状起立部を含めた脚片3にすることもできる。起立部を導入した分、傾斜部31の撓み変形量が減るが、本発明の効果は得られるからである。
立壁は脚片3と接続せずに脚片3の変形を阻害しないことが望ましい。また、立壁は板状部11に対して傾斜してもよい。
【0019】
(2)実施形態2
本実施形態は櫓体2が実施形態1と異なる樹脂成形品1で、図9がその櫓体2の正面図、図10が該櫓体2の係合部6を相手部材71へビス72で接続固定して、樹脂成形品1に変形が生じた様子の一部断面説明図である。
【0020】
本実施形態の樹脂成形品1は、実施形態1と違って、櫓体2を構成する脚片3を図9ごとくとする。一対の脚片3が対向して配設され、両脚片3のそれぞれに板状部11の裏面11bに対し傾く板状の傾斜部31が形成されるのは、実施形態1と同じである。しかるに、両傾斜部31を同方向に向け等間隔を保って延設する。一対の脚片3に係る両傾斜部31を、それぞれ板状部11の裏面11bから、同方向に向けて等間隔を保ちながら延設される平行板部37とする。そして、この平行板部37の撓み変形により、係合部6の位置が板状部11の裏面11bに対し垂直方向に相対変動するようにしている。板状部裏面11bに対し垂直方向に加えられる外力に応じて、傾斜部31たる平行板部37が図10のごとく伸長する構造とする。
図10は、樹脂成形品1が相手部材71にビスで接続固定された当初鎖線位置から、樹脂成形品1の板状部11が白抜矢印方向の外力によって、実線位置へと下方へ移動した様子を示す。この板状部11の移動があると、板状部11の裏面11bに対し同方向に傾く板状の平行板部37が傾斜状態から起き上がり、外力に伴う板状部11の変位量を吸収する。本実施形態は平行板部37そのものが脚片3になっている。他の構成は、実施形態1と同様で、その説明を省く。実施形態1と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0021】
(3)実施形態3
本実施形態は櫓体2が実施形態1,2と異なる樹脂成形品1で、図11のような櫓体2を有する樹脂成形品1である。櫓体2を構成する一対の脚片3が図示のごとく正面視弧状の曲板部38になっている。曲板部38は図11の正面視で紙面垂直方向に等断面形状で、両方の湾曲した曲板部38に係る膨出部分38aは外方へ張り出す格好である。樹脂成形品1の板状部裏面11bに、立設する曲板部38からなる一対の脚片3の上部同士を天板4で連結した櫓体2が一体成形され、該天板4上に係合部6が一体成形される。そうして、曲板部38の撓み変形により、係合部6の位置が板状部裏面11bに対し垂直方向に相対変動するようにしている。他の構成は、実施形態1と同様で、その説明を省く。実施形態1と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0022】
(4)効果
このように構成した樹脂成形品1は、曲板部38や板状部裏面11bに対し傾く板状傾斜部31を形成するので、脚片3の曲板38又は/及び該傾斜部31が板状裏面11bに対し撓み変形し易い。一対の脚片3を対向配設し、曲板38又は/及び板状部11の裏面11bに対し傾く板状の傾斜部31を形成し、且つ係合部6を櫓体2の天板上面4aに起立させて、曲板部38,傾斜部31の撓み変形により、係合部6の位置が板状部11の裏面に対し垂直方向に相対変動するようにしているので、衝撃等で発生する変位量を容易に吸収できる。
図13の櫓体91は衝撃変位があると、根元91aで剥離する虞れがあるが、本発明に係る櫓体2は櫓体根元29の剥離の前に、曲板部38,傾斜部31の弾性変形で変位量を吸収する。エアバッグドア部86の展開時に、パッセンジャーエアバッグリッド9が押し上げ変形しても、その変形時の変位量を、曲板部38,傾斜部31が撓み変形で伸長して円滑吸収する。従来、エアバッグドア部86の展開時に、ともすれば櫓体根元29が剥離して強度不足に陥っていた問題に、強度を上げて対抗するのでなく、樹脂成形品1に係る櫓体2の脚片3が自ら変形伸縮して変位量を吸収し解決する。
その一方で、脚片3は接地面となる板状部11の肉厚tの40%以下で成形されるので、樹脂成形品1の意匠面1a側にヒケが生じることがない。意匠外観が損なわれることはない。
通常、櫓体2は複数で、パッセンジャーエアバッググリッドをインストルメントパネルに対して固定支持するが、曲板部38又は傾斜部31が撓み変形することで、一部の櫓体2に集中する応力を、複数の櫓体2に分散できる。また、樹脂変形によって、運動エネルギーを熱エネルギーに変換して、櫓体2の根元にかかる応力を低下させる。
【0023】
加えて、樹脂成形品1は車両用樹脂成形品であることから過酷な環境下におかれる。係合部6が櫓体2上に起立する車両用樹脂成形品1にあっては、車両走行時において、櫓体2が振動,衝撃等の外力をあらゆる方向から受ける。実施形態1,2のような樹脂成形品1は、脚片3に曲板部38,傾斜部31を有して、左右横方向をはじめ、種々の方向からの外力,圧縮力等を受ける厳しい環境下におかれる車両用樹脂成形品1にあって、曲板部38,傾斜部31の動きからスムーズに対応でき、極めて有効となる。
【0024】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。樹脂成形品1、櫓体2、脚片3、傾斜部31,平行板部37,曲板部38,天板4、補強リブ5、係合部6、相手部材71等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。例えば、実施形態では、曲板部38又は傾斜部31を有する脚片3としたが、該脚片3に曲板部38及び傾斜部31を併用できる。また、実施形態は樹脂成形品1にパッセンジャーエアバッグリッドを用いたが、勿論これに限定されず、種々の車両用樹脂成形品(車両用内装品)に適用できる。
【符号の説明】
【0025】
1 車両用樹脂成形品(樹脂成形品)
11 板状部
11b 裏面(板状部裏面)
2 櫓体
3 脚片
31 傾斜部
37 平行板部
38 曲板部
4 天板
6 係合部
71 相手部材(インストルメントパネル本体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用樹脂成形品に係る板状部の裏面に、一対の脚片を離間させて立設すると共に、両脚片の上部同士を天板で連結してなる櫓体が一体に成形され、さらに該天板上に起立し、相手部材との連結に供する係合部が一体に成形される係合部付き車両用樹脂成形品であって、
一対の前記脚片が対向して配設され、且つ両脚片のそれぞれに、曲板部又は/および前記板状部の裏面に対し傾く板状傾斜部が形成され、該曲板部又は/および該傾斜部の撓み変形により、前記係合部の位置が前記板状部の裏面に対し垂直方向に相対変動するようにしたことを特徴とする係合部付き車両用樹脂成形品。
【請求項2】
一対の前記脚片に係る両傾斜部が、一方を正面視<形にして他方を正面視>形の一又は複数繰り返す形状とする請求項1記載の係合部付き車両用樹脂成形品。
【請求項3】
一対の前記脚片に係る両傾斜部が、それぞれ前記板状部の裏面から、同方向に向けて等間隔を保ちながら延設される平行板部である請求項1記載の係合部付き車両用樹脂成形品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−207057(P2011−207057A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77300(P2010−77300)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】