説明

係止装置及びその製造方法

【課題】電気アセンブリ基板にヒートシンクを固着する係止装置であって、良好な熱伝導経路を形成する熱伝導係止装置を提供する。
【解決手段】係止装置16は、流体で飽和され且つ電気アセンブリ基板14とヒートシンク12との間に配設された流体透過性部材24と、電気アセンブリ基板14及びヒートシンク12に対してほぼ垂直である1対の係止装置基板22と、係止装置基板22のうち少なくとも一方に結合されたアクチュエータ20とを含む。流体透過性部材24は係止装置基板22の間に配設される。流体透過性部材24から流体を押し出し且つ可逆過程で電気アセンブリ基板14及びヒートシンク12との間に少なくとも1つの流体接触境界面を形成するために係止装置基板22のうち少なくとも一方により流体透過性部材24を圧縮するようにアクチュエータ20は構成される。係止装置16を製造する方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に機械的接続及び熱接続のための装置に関し、特に電気アセンブリに1つ以上の部材を固着するための熱伝導係止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気アセンブリは、一般にプリント回路基板(PCB)及びヒートシンクシャシを有し且つ係止装置を使用してもよい。電気アセンブリから係止装置を介してヒートシンクシャシへ熱が消散されるように電気アセンブリをヒートシンクシャシに物理的に結合された状態に保持するために、係止装置は通常使用される。電気アセンブリは、係止装置とヒートシンクシャシとの間にヒートスプレッダを更に任意に含んでもよい。PCBには複数の電気素子が通常実装される。動作中、PCB及び/又はPCB上の電気素子は熱を発生する。任意に配置されるヒートスプレッダ及びヒートシンクシャシは熱伝導性を有し且つ発生された熱を外部又は冷却剤へ消散するように協働する。係止装置は、PCB及び/又はヒートスプレッダをヒートシンクシャシに堅固に固着し且つそれらの間に熱伝導経路を規定するために通常使用される。
【0003】
電子素子の動作温度は限定されているので、超小型電子素子と冷却剤との温度差を最小限にとどめて熱を除去することが通常望ましい。そのため、熱抵抗を最小限に抑えることが可能な冷却方法が望まれる。現在、大半の電気アセンブリにおいて、係止装置、PCB及びヒートシンクシャシ(又はヒートスプレッダ)の相互接触境界面は金属接触面である(「金属バルク接触」と呼ばれる)。金属バルク接触の場合、熱抵抗に主に影響を及ぼすのは接触面の粗さ及び接触圧力である。しかし、用途によっては接触面の粗さ又は接触圧力を制御することは難しい。
【0004】
更に、電子素子の小型化によって、必要とされる電力は増加し且つ実装密度も高くなっているので、アセンブリごとの発熱量は増加する。従って、電気アセンブリを温度仕様の範囲内に維持するためには熱伝導率のより高い改善された係止装置を提供することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0001576号明細書
【発明の概要】
【0006】
一実施形態では、電気アセンブリ基板の熱管理を実行する係止装置は、流体で飽和され且つ電気アセンブリ基板とヒートシンクとの間に配設された流体透過性部材と、電気アセンブリ基板及びヒートシンクに対してほぼ垂直である1対の係止装置基板と、係止装置基板のうち少なくとも一方に結合されたアクチュエータとを備える。流体透過性部材は係止装置基板の間に配設される。流体の一部を流体透過性部材から押し出し且つ可逆過程で電気アセンブリ基板とヒートシンクとの間に少なくとも1つの流体接触境界面を形成するために係止装置基板のうち少なくとも一方により流体透過性部材を圧縮するようにアクチュエータは構成される。
【0007】
別の実施形態では、電気アセンブリは、熱を発生する電気回路基板と、発生された熱を消散するために電気回路基板に結合されたヒートシンクと、電気回路基板とヒートシンクとの間に挿入された係止装置とを備える。係止装置は複数の接触境界面を具備し、且つ接触境界面のうち少なくとも1つは流体で飽和された流体透過性部材である。係止装置により圧縮された場合、流体は接触境界面から搾り出され、可逆過程で少なくとも1つの流体接触境界面を形成する。
【0008】
更なる実施形態では、係止装置を製造する方法は、流体透過性部材を準備することと、流体透過性部材を保持する1対の係止装置基板を準備することと、流体透過性部材を流体で飽和することと、流体透過性部材に結合され、流体透過性部材からの流体の搾り出しを開始することにより可逆過程で流体接触境界面を形成するアクチュエータを準備することを含む。
【0009】
上記の利点及び特徴並びに他の利点及び特徴は、添付の図面と関連する以下の本発明の実施形態の詳細な説明から更によく理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は一実施形態に係る非係合状態の電気アセンブリを示した概略図である。
【図2】図2は図1に示す電気アセンブリの係止装置を示した部分拡大図である。
【図3】図3は係合状態の図1の電気アセンブリを示した図である。
【図4】図4は別の実施形態に係る流体透過性部材を製造する方法を示したフローチャートである。
【図5A】図5Aは図4の方法の実施中の中間生成物を示した概略図である。
【図5B】図5Bは図4の方法の実施中の中間生成物を示した概略図である。
【図5C】図5Cは図4の方法の実施中の中間生成物を示した概略図である。
【図6】図6は更に別の実施形態に係る係止装置を示した概略図である。
【図7】図7は図6の係止装置が非係合状態にある電気アセンブリを示した概略図である。
【図8】図8は係止装置が係合状態にある図7の電気アセンブリを示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明中、無用に詳細に説明することにより開示内容を理解しにくくするのを避けるために、周知の機能又は構成は詳細に説明されない。
【0012】
図1は一実施形態に係る電気アセンブリ10を示す。電気アセンブリ10は、ヒートシンク12、電気アセンブリ基板14及び係止装置16を含む。ヒートシンク12と電気アセンブリ基板14との間の機械的接続及び熱結合を改善するために、係止装置16はヒートシンク12と電気アセンブリ基板14との間に配置される。
【0013】
電気アセンブリ基板14は、プリント配線基板(PWB)、プリント回路基板(PCB)及び回路カードを含むが、それらに限定されないことが理解される。PCB、PWB及び回路カードと同様の特性を有する他の素子も熱管理システムの範囲内に含まれる。一実施形態において、電気回路基板14は一方の面に複数の電気素子(図示せず)を有する。別の実施形態において、電気素子は電気アセンブリ基板14の両側に分散される。
【0014】
ヒートシンク12は、例えばコールドプレートなどのヒートシンクシャシ又はヒートスプレッダであってもよい。一実施形態において、ヒートシンク12はヒートスプレッダ及びヒートシンクシャシを含む。電気アセンブリ基板14又は電気アセンブリ基板14上の電気素子により発生される熱をまずヒートスプレッダが伝導し、次にヒートシンクシャシがヒートスプレッダから外部又は冷却機構へ熱を伝達する。
【0015】
係止装置16は、流体透過性部材24、流体透過性部材24を保持する1つ以上の平坦な外側基板部材22及びアクチュエータ20を含む。図1に示す実施例において、流体透過性部材24はナノ構造化金属スポンジであり且ついくつかのスポンジ部分に分割される。各スポンジ部分は、平坦な外側基板部材22並びに内側部材34及び36などの対応する基板により固着される。尚、特に機械的挿入によって起動が実行される場合、流体透過性部材24及びアクチュエータ20と共に他の保持構造も使用可能である。本実施例のアクチュエータは内部機構であるが、アクチュエータは外部に配置されてもよく且つ流体透過性部材を圧縮又は復元するために一方又は双方の外側基板の外壁に力を加えてもよいことは容易に理解されるはずである。本発明の範囲内で使用可能なアクチュエータ構造の例には、基板に外側から結合される変形C形クランプ、歯/歯車アセンブリ、プランジャ、ねじ部材などがある。一実施形態において、流体透過性部材24は、10〜100μの直径を有するように構成された孔を有する微細構造化熱伝導性スポンジである。
【0016】
一実施例のアクチュエータ20は平坦な外側基板22を介して内部へ延出するか又は外側基板24に沿って外側へ延出し、それらの基板22を一体に接続する。一実施形態において、アクチュエータ20は、雌ねじ部分及び雄ねじ部分を含むねじであり、それらのねじ部分のうち一方は係止装置16の一端に固定される。ねじにトルクが加えられた場合、2つのねじ部分は係合して逆方向に運動する。別の実施形態において、アクチュエータ20は、固定部分及び可動部分を含むプランジャ又は滑り要素である。一実施形態において、可動部分はプランジャ又は滑り要素が摺動するための穴を規定する。
【0017】
図2は、1つの基板22及び流体透過性部材24を示した部分拡大図である。本実施例の流体透過性部材24は、基板22に対して垂直に結合され且つ複数の孔26と、本実施形態においては網目状である金属ワイヤ28とを有する。金属ワイヤ28は、銅(Cu)、金(Au)、チタン(Ti)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)又はそれらの組成物から製造されてもよい。ある特定の実施形態において、熱伝導率が高く且つ機械的強度及び耐食性に優れたCuが使用される。金属ワイヤ28は中空芯又はポリマー芯を更に有してもよい。一実施形態において、流体透過性部材24は窒化アルミニウム(AlN)などの焼結粒子又は銅粒子球から製造される。別の実施形態において、流体透過性部材24はポリマーフォームから製造される。十分な熱伝導率及び圧縮性を有する他の多孔質ウィック構造も流体透過性部材24の範囲内に含まれる。一実施形態において、孔26は10〜10000nmであるように構成され且つ個々の金属ワイヤの幅は10〜10000nmであるように構成される。一実施形態において、図1に符号30で示すように液体金属の湿潤性を向上し且つ腐食又は酸化を防止するために、金属ワイヤ28はパッシベーション層27で被覆される。別の実施形態において、パッシベーション層27はAuなどの適切な材料から形成されてもよい。
【0018】
図1に戻って説明する。一実施例において、流体透過性部材24は熱伝導性であり且つCu、Au、Tiその他の適切な熱伝導性材料から製造されてもよい。流体透過性部材24は液体金属30で飽和され且つ液体金属30を所定の位置に保持するための毛管力を発生する。尚、「飽和される」という用語は完全に飽和された状態に限定されず、部分飽和も含む。すなわち、流体透過性部材24は必ずしも液体金属30で完全に充填されていなくてもよい。先に示された実施形態及び以下に示す実施形態において液体金属30が説明されるが、液体金属は流体透過性部材24を飽和するために使用可能な唯一の流体ではなく、表面張力及び熱伝導率が実際の必要条件に適合する流体であれば、他の流体も本発明の範囲内に含まれることが理解される。「流体」という用語は、係止装置16の動作温度の液体である1つの物質を示す。
【0019】
図1を参照すると、金属又は合金などの液体金属30は動作温度の液体である。一実施形態において、液体金属30は、ガリウム、インジウム、スズ、インダロイ又はガリンスタンである。液体金属30は室温の液体又は固体であってもよい。用途の条件に応じて固体/液体遷移を制御するために、合金組成によって液体金属30の特性が調整されてもよい。いくつかの実施例において、液体金属30は、室温及び室温より高い動作温度の双方の温度の液体である。他の実施例において、液体金属30は室温では固体であるが、それより高い動作温度になると液体に変化する。
【0020】
更なる実施例において、符号34及び36で示すような隣接する内側基板を柔軟に接続する屈曲自在のスペーサ32が配置され、図1では屈曲自在のスペーサ32は非係合状態にある。図1に示すように、隣接する内側基板34及び36は互いにごく近接する位置にあり且つ屈曲自在のスペーサ32は弛緩状態の可撓性材料である。屈曲自在のスペーサ32は、係止装置の係合が解除された後に液体金属30を分割する複数の部分を形成するために使用される。液体金属30を破断する十分な表面張力があれば、用途によっては屈曲自在のスペーサ32は配置されない。屈曲自在のスペーサ32は、圧縮状態になった各組の流体透過性部材の間に間隙を形成することにより、流体透過性部材24から押し出された液体金属30を屈曲自在のスペーサ32とヒートシンク12との間の境界面に沿って密封状態で完全に拡散させるように更に機能する。接触面積が拡大することによって、熱伝導率は向上する。一実施例の屈曲自在のスペーサは、内側基板36を複数の部分に仕切る働きをする。
【0021】
更に別の実施形態において、側壁(図示せず)が設けられ、スポンジの周囲に格納構造を形成するために、側壁はヒートシンク及び電気アセンブリ基板と1つ以上の基板とに結合されてもよい。格納構造は液体金属の浸出を防止するのみならず、流体透過性部材に塵埃及び異物が集積するのも防止する。側壁を設ける代わりに、係止装置の全体又は一部を包囲するように筐体が係止装置に近接して配置されてもよい。
【0022】
図3を参照すると、基板22が互いに向かって押圧されるようにアクチュエータ20にトルクが加えられている。基板22が互いに近接するにつれて、流体透過性部材24は圧縮され、その結果、液体金属30は流体透過性部材24から搾り出され、可逆過程で係止装置16及びヒートシンク12と電気アセンブリ基板14との間に液体金属接触境界面38及び40のような流体接触境界面を形成する。可逆過程は、流体透過性部材24が圧縮状態から復元した場合に接触境界面38及び40を形成する液体金属が流体透過性部材24に戻れることを示す。流体接触境界面は金属バルク接触境界面より接触粗さ及び接触圧力が小さいので、電気アセンブリの熱抵抗は低下し、その結果、熱伝導性能は向上する。金属バルク接触境界面と比較して、液体金属接触境界面38及び40は電気アセンブリ10の熱抵抗を約10分の1に減少する。
【0023】
更に、一実施形態において、隣接する係止装置セットは互いに逆方向に動く。図3に示す実施例において、係止装置セットは、いくつかのスポンジ部分と、スポンジ部分を間に挟んで保持する2つの平坦な外側基板22とを有する。同時に、屈曲自在のスペーサは互いに引き離されるので、可撓性材料は引き伸ばされてほぼ平坦になり且つ液体金属境界面38、40と当接するようになる。流体透過性部材24から押し出された液体金属30は、屈曲自在のスペーサ32とシャシ12との間の境界面全体に沿って広がり、液体金属境界面38を形成することにより接触面積を拡大し、その結果、熱抵抗は更に減少される。
【0024】
一実施形態において、アクチュエータ20が初期位置に戻された場合、係止装置セットは当初の位置に戻り且つ流体透過性部材24は圧縮されていない初期状態に戻るので、液体金属30は毛管力によって流体透過性部材24の中に引き戻される。
【0025】
従って、一実施例に係る動作において、アクチュエータ20は1つ以上の基板と協働して流体透過性部材24を圧縮する。それにより、液体金属30は流体透過性部材から押し出されるので、液体金属30はヒートシンク12及び電気アセンブリ基板14の双方の表面に接触する。一実施例は、図1の場合のような復元(非係合)状態にある流体透過性部材24を示し、その場合、液体金属30とヒートシンク12又は電気アセンブリ基板14との接触は起こっていない。図3に示すような圧縮(係合)状態になると、流体透過性部材24はアクチュエータ20及び基板22により圧縮されるので、液体金属30はヒートシンク12及び電気アセンブリ基板14と接触する。一実施例におけるアクチュエータ20の運動量は、図3を参照して説明したように液体金属30がヒートシンク12及び電気アセンブリ基板14と接触するように流体透過性部材24を圧縮するために必要とされる量である。
【0026】
ナノ構造化熱伝導性スポンジ24を製造する方法の実施形態は多数ある。一実施形態において、図1〜図3の基板22のような基板がまず準備される。次に、Cu、Au、Ti、Ag、Ni、Pt、Pd又はそれらの任意の組成物のような金属ターゲットが基板22のような基板に対して必要な距離及び角度で配置される。次の処理において、金属ターゲットは抵抗加熱によって加熱されるか又は物理気相成長チャンバの中で電子ビーム又はアルゴンビームなどのイオンビームを照射される。距離、速度及び角度などの堆積条件が最適に設定された場合、金属原子は金属ターゲットから放出されて基板22のような基板の上に堆積し、残った金属ターゲットは流体透過性部材24を形成する。
【0027】
ナノ構造化熱伝導性スポンジ24を製造する方法の別の実施形態は、有機金属化合物などの前駆物質材料及び図1〜図3の基板22のような基板を準備することと、基板上に前駆物質材料を堆積させ且つ基板と反応させるために化学気相成長チャンバの中で前駆物質材料を蒸発させることと、堆積処理の最適化によって反応により流体透過性部材24を生成することとを含む。
【0028】
図5A〜5C及び図4を参照すると、ナノ構造化熱伝導性スポンジ24を製造する方法の更に別の実施形態は次のステップを含む。図5A〜図5Cは、製造処理における中間生成物を示す。ステップ43において、基板42及び基板42上に配置された複数の孔46を有する多孔質テンプレート44が準備される。次に、ステップ45において、金属材料48によって孔46を完全に充填するために、多孔質テンプレート44を介して金属材料48が電気めっきされる。ステップ47において、最後に多孔質テンプレート44は除去され、残された金属材料48は流体透過性部材24を形成する。
【0029】
ナノ構造化熱伝導性スポンジ24を製造する方法の更に別の実施形態において、2つの異なる金属から成る合金が基板上にまず堆積される。一方の金属はマトリクス(「マトリクス金属」と呼ばれる)であり且つ他方の金属はマトリクス金属の中に相互に接続する網状構造(「網目金属」と呼ばれる)を形成する。マトリクス金属を除去した後、網目金属は流体透過性部材24を形成する。一実施形態において、多孔質テンプレート44は多孔質ポリマー膜又はポリマー粒子の3次元凝集体である。
【0030】
一実施形態において、上記の各方法は、腐食又は酸化を防止するために熱伝導性スポンジをパッシベーション層で被覆する被覆処理を更に含む。パッシベーション層はAuから形成されてもよい。
【0031】
図6は、電気アセンブリにおける機械的結合及び熱接続を実現するための更に別の実施形態に係るウェッジロック50を示す。ウェッジロック50は、5つのウェッジ部分52、54、56、58及び60と、ウェッジ部分52、54、56、58及び60のうち少なくともいくつかの部分を始動するためのアクチュエータとして作用する軸62とを有する。一実施形態において、ウェッジロック50は、一体に取り付けられた少なくとも2つのウェッジ部分を含む。
【0032】
図6に示す実施例において、ウェッジ部分52、54、56、58及び60は、軸62にトルクが加えられた場合に互いに係合するように構成され且つウェッジ部分54及び58などの部分は、ウェッジの土台部分52、56及び60から離間してヒートシンク(図示せず)に向かって動く。ウェッジロック50の接触面64、66、68、70及び72は流体で飽和された流体透過性部分を使用する。図6に示す実施例において、流体透過性部分は液体金属76で飽和されたナノ構造化金属スポンジ74である。別の実施形態において、流体透過性部分は微細構造化材料から製造されてもよい。更なる実施形態において、流体透過性部分はAlN粒子球などの焼結粒子又はポリマーフォームから形成される。十分な熱伝導率及び圧縮性を有する他の多孔質ウィック構造も流体透過性部分の範囲内に入る。
【0033】
液体金属76は流体透過性部分を飽和させる流体の一例にすぎず、実際の必要条件に適合する表面張力及び熱伝導率を有する流体であれば、他の流体も本発明の範囲内に含まれることは容易に理解される。
【0034】
図6に示す実施例において、アクチュエータが係合した場合、ヒートシンク(図示せず)に近接するように接触面64及び66は構成され且つ液体金属76がヒートシンク(図示せず)と熱伝導関係で接触するように金属スポンジ74は圧縮される。一実施例において、土台ウェッジ部分52、56、60の接触面68、70、72は、アクチュエータが係合した場合にPCB、PWB及び回路カードなどの熱発生器(図示せず)に近接するように構成される。従って、アクチュエータが係合した場合、ウェッジロック50は、ウェッジロック50の一方の側の熱発生器(図示せず)からウェッジロック50の反対側のヒートシンク(図示せず)まで最適な状態で熱を消散させる。そのような構成において、ウェッジロック50は熱を消散させるための複数の熱伝導経路を規定する。
【0035】
一実施例によれば、土台ウェッジ部分52、56及び60はほぼ静止し且つ電気アセンブリ基板(図示せず)に近接しており、ウェッジ部分54及び58のみがヒートシンク(図示せず)に近接する位置まで動くように構成される。別の実施形態において、ウェッジ部分54及び58はほぼ静止し且つヒートシンクに近接しているが、土台ウェッジ部分52、56及び60は熱発生器(図示せず)に近接する位置まで動くように構成される。更に別の実施形態において、土台ウェッジ部分52、56及び60並びにウェッジ部分54及び58のすべてが若干動くように構成される。ウェッジ部分52、54、56、58及び60が動くことにより、液体金属76は金属スポンジ74から押し出され、可逆過程でウェッジ部分52、54、56、58及び60の表面64、66、68、70及び72の間に液体金属接触境界面(符号なし)を形成する。液体金属接触境界面は、ウェッジロック50の熱抵抗を大幅に減少することにより熱接続性能を向上する。
【0036】
一実施形態において、各ウェッジ部分52、54、56、58、60のすべての傾斜面は流体透過性構造を使用するように更に構成される。別の実施形態において、PCB、PWB及び回路カードなどの熱発生器と接触するいくつかのウェッジ部分は対応する傾斜面に流体透過性構造を含むが、その他のウェッジ部分は傾斜面に固体接触面を有する。更に別の実施形態において、各ウェッジ部分52、54、56、58及び60のすべての部分は、図3に示す構成のように流体透過性構造であるように構成される。
【0037】
図7は、本発明の更なる実施形態に従って電気アセンブリ基板77をヒートシンク78と機械的に結合し且つ熱接続するためにウェッジロック50を使用する電気アセンブリ75を示す。この実施例のヒートシンク78はヒートシンクシャシであるが、ヒートスプレッダ又はヒートスプレッダとヒートシンクシャシとの組み合わせなどの他の種類もヒートシンクの範囲内に含まれる。ヒートシンク78は溝穴80を規定し、電気アセンブリ基板77の縁部分82はウェッジロック50によりこの溝穴80に固着される。図7に示す実施例において、電気アセンブリ基板77の一方の面に複数の電気素子84が実装されている。図7では、ウェッジロック50は非係合状態にある。電気アセンブリ75は、係合中の損傷から電気アセンブリ基板77を保護するための取り付けロッド86を更に有する。
【0038】
尚、図7の符号88は図6の接触面68、70及び72を示し且つ図8の符号90は接触面64及び66を示す。
【0039】
図8は、電気アセンブリ基板77及びヒートシンク78と係合しているウェッジロック50を示す。図5及び図7を参照すると、接触面88及び90は、液体金属76で飽和されたナノ構造化金属スポンジであるように構成される。軸62はウェッジ部分52、54、56、58及び60を密着させるので、接触面88及び90はヒートシンク78及び取り付けロッド86とそれぞれ係合される。反動力によって接触面88及び90が圧縮されることにより、液体金属は搾り出され、可逆過程で第1の液体金属接触境界面92及び第2の液体金属接触境界面94を形成する。ウェッジロック50、電気アセンブリ基板77及びヒートシンク78に沿って液体金属接続が形成されるので、熱抵抗は減少し、最終的に熱伝導性能は向上する。軸62を逆方向に回すことにより、スポンジは圧縮状態から復元され、液体金属はスポンジに再び吸収される。ナノ構造金属スポンジの表面積は100μm〜100cmであってもよく且つ厚さは1μ〜1cmであってもよい。圧縮状態と弛緩状態との間の寸法変化は約1〜60%である。スポンジと固体表面との間の液体金属境界面の厚さは約0.5μm〜1mmである。
【0040】
一実施形態において、電気アセンブリ基板77、ヒートシンク78又はウェッジロック50に結合されてもよい図8の側壁96のような流体保持壁が存在する。この側壁は液体金属の浸出を防止するのみならず、塵埃及び異物がウェッジロック50に侵入するのも阻止する。側壁96は流体保持壁の単なる一例であり且つ流体を所定の位置に保持するための他の種類の要素も流体保持壁の範囲に含まれることが理解される。流体保持壁は、ウェッジロック50又は図1及び図3に符号10で示すような他の種類のロック部材の形状、大きさその他のパラメータに従って設計されてもよい。
【0041】
ヒートシンクを電気アセンブリ基板と接続するための係止装置に本発明が限定されないことは理解されるべきである。本発明は任意の伝導接続及び熱接続の用途に使用可能である。
【0042】
本発明のある特定の特徴のみを例示し且つ説明したが、当業者には多くの変形及び変更が考えられる。従って、添付の特許請求の範囲は本発明の真の精神の範囲内に入るそのような変形及び変更をすべて含むことを意図すると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0043】
10 電気アセンブリ
12 ヒートシンク
14 電気アセンブリ基板
16 係止装置
20 アクチュエータ
22 基板
24 流体透過性部材
26 孔
27 パッシベーション層
28 金属ワイヤ
30 液体金属
32 屈曲自在のスペーサ
34 内側部材
36 内側部材
38 液体金属接触境界面
40 液体金属接触境界面
42 基板
43 ステップ
44 多孔質テンプレート
45 ステップ
46 孔
47 ステップ
48 金属材料
50 ウェッジロック
52 ウェッジ部分
54 ウェッジ部分
56 ウェッジ部分
58 ウェッジ部分
60 ウェッジ部分
62 軸
64 接触面
66 接触面
68 接触面
70 接触面
72 接触面
74 スポンジ
75 電気アセンブリ
76 液体金属
77 電気アセンブリ基板
78 ヒートシンク
84 電気部材
86 取り付けロッド
88 接触面
90 接触面
92 液体金属接触境界面
94 液体金属接触境界面
96 側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気アセンブリ基板の熱管理を実行する係止装置において、
流体で飽和され且つ前記電気アセンブリ基板とヒートシンクとの間に配設された流体透過性部材と、
前記電気アセンブリ基板及び前記ヒートシンクに対してほぼ垂直であり且つ前記流体透過性部材が間に配設されている1対の係止装置基板と、
前記係止装置基板のうち少なくとも一方に結合されたアクチュエータとを具備し、
前記流体透過性部材から前記流体の一部を押し出し且つ可逆過程で前記電気アセンブリ基板と前記ヒートシンクとの間に少なくとも1つの流体接触境界面を形成するために前記係止装置基板のうち少なくとも一方により前記流体透過性部材を圧縮するように前記アクチュエータは構成されることを特徴とする係止装置。
【請求項2】
前記係止装置基板の間に位置し且つ前記流体透過性部材の中に配設された少なくとも1つのスペーサを更に具備し、前記スペーサは1つ以上の流体透過性セグメントを規定する、請求項1記載の係止装置。
【請求項3】
前記スペーサは1対のスペーサ基板を具備し、前記スペーサ基板は、前記スペーサの両端に配設されることにより前記スペーサ基板を接合する可撓性部材と平行であり且つ前記可撓性部材にごく近接し、前記スペーサ基板が前記アクチュエータにより移動され且つ前記可撓性部材が前記スペーサ基板の間で圧縮されるように前記スペーサ基板は前記アクチュエータに結合される、請求項2記載の係止装置。
【請求項4】
前記流体透過性部材は、流体が通過する孔を形成する複数の金属ワイヤを具備し且つ前記金属ワイヤの少なくとも一部はパッシベーション層を含む、請求項1又は請求項2の係止装置。
【請求項5】
前記金属ワイヤは、銅(Cu)、金(Au)、チタン(Ti)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)及びそれらの組成物のうち少なくとも1つから製造される、請求項4記載の係止装置。
【請求項6】
前記金属ワイヤは中空芯及びポリマー芯のうち一方を含む、請求項4記載の係止装置。
【請求項7】
前記流体透過性部材は複数の焼結粒子又はポリマーフォームから形成される、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の係止装置。
【請求項8】
前記流体は、ガリウム、インジウム、スズ、インダロイ、ガリンスタント及びそれらの組成物を含む液体金属である、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の係止装置。
【請求項9】
流体の浸出を防止する流体保持壁を更に備える、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の係止装置。
【請求項10】
熱を発生する電気回路基板と、
発生された熱を消散するために前記電気回路基板に結合されたヒートシンクと、
前記電気回路基板と前記ヒートシンクとの間に挿入され且つそれらの間に複数の接触境界面を備える係止装置とを具備し、
前記接触境界面のうち少なくとも1つは流体で飽和された流体透過性部材であり且つ前記係止装置により圧縮された場合に前記流体は前記接触境界面から搾り出され、可逆過程で少なくとも1つの流体接触境界面を形成することを特徴とする電気アセンブリ。
【請求項11】
前記係止装置は、各々が1つの流体透過性部分を備える複数のロックセットと、前記流体透過性部材を保持する少なくとも1つの基板と、流体の浸出を防止する少なくとも1つの流体保持壁と、前記基板に結合されたアクチュエータとを備える、請求項10記載の電気アセンブリ。
【請求項12】
前記流体透過性部材は、液体金属で飽和された少なくとも1つの微細構造化金属スポンジ又はナノ構造化金属スポンジを備える、請求項10又は請求項11記載の電気アセンブリ。
【請求項13】
前記係止装置は、互いに結合された複数のウェッジ部分を備える、請求項10乃至請求項12のいずれか1項記載の電気アセンブリ。
【請求項14】
前記ウェッジ部分は少なくとも1つの金属スポンジを備える、請求項13記載の電気アセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−249799(P2011−249799A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111953(P2011−111953)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】