係船装置
【目的】作業員が1人で各ロープリール又は錨鎖用ホイール等の巻取り装置の作動操作を行える簡潔な構成の係船装置を得ることを目的とする。
【構成】駆動操作具14にて駆動装置1の駆動力が入り切り及び変速操作されて伝達される駆動軸2により各々クラッチ7a・7b・7cを介して駆動される複数の巻取り装置4・5a・5bを設けると共に、各クラッチ7a・7b・7cを操作する複数のクラッチ操作具6a・6b・6cと各巻取り装置4・5a・5bを各々制動するブレーキ9a・9b・9cの複数のブレーキ操作具8a・8b・8cとを設けた係船装置において、複数の巻取り装置4・5a・5bの各クラッチ操作具6a・6b・6cと各ブレーキ操作具8a・8b・8cとの近傍に駆動操作具14若しくは駆動操作具14を連係機構を介して遠隔操作する補助駆動操作具12を配設した係船装置。
【構成】駆動操作具14にて駆動装置1の駆動力が入り切り及び変速操作されて伝達される駆動軸2により各々クラッチ7a・7b・7cを介して駆動される複数の巻取り装置4・5a・5bを設けると共に、各クラッチ7a・7b・7cを操作する複数のクラッチ操作具6a・6b・6cと各巻取り装置4・5a・5bを各々制動するブレーキ9a・9b・9cの複数のブレーキ操作具8a・8b・8cとを設けた係船装置において、複数の巻取り装置4・5a・5bの各クラッチ操作具6a・6b・6cと各ブレーキ操作具8a・8b・8cとの近傍に駆動操作具14若しくは駆動操作具14を連係機構を介して遠隔操作する補助駆動操作具12を配設した係船装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶を岸壁などに係船する際に用いる係船装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶を岸壁などに接岸する際には、特開2004−17690号公報に示すように、船首及び船尾から各々2本の係船ロープ(係留索)を岸壁側の4箇所の係船ビットに絡ませ、各ロープの張力を調整しながら巻き取ることにより、岸壁との距離を縮めると共に前後方向に移動させながら希望の位置に接岸する方法が一般的である。
これらの作業をするため、船舶の船首及び船尾にはドラム式ウインチが装備されており、一般的に係船装置と呼ばれている。尚、状況によりさらにロープの数を増やしたり沖側に投錨してその張力を利用することもある。
【0003】
船首の右舷及び左舷に設置される船首用係船装置の一般的な構造は、油圧を動力源として回転する駆動軸の外周部に、2台のロープリール及び1台の描鎖用ホイールが装備されており、各々手動式のクラッチレバーを左右に操作することにより嵌脱する噛み合いクラッチと、手回し式のブレーキハンドルを回すことにより作動するバンドブレーキが装着されている。そして、駆動軸を回転させる油圧の油路を変更操作する駆動操作レバーがあり、このレバーを前後に操作することにより、駆動軸の回転方向と速度をコントロールすることができるようになっている。尚、船尾用係船装置は、描鎖用ホイールが無いものが多いが、船首用係船装置とほぼ同じ構造である。
【0004】
次に、必要なロープリール又は描鎖用ホイールを駆動する操作手順を説明するが、係船装置の操作終了時には、全てのブレーキは通常作動させたまま終了するので、使用開始時は全てのブレーキは効いた状態である。まず、駆動しようとするロープリール又は錨鎖用ホイールのクラッチを入れるために、駆動操作レバーを操作して駆動軸をゆるやかに回し、クラッチの歯が噛み合う位置にくるとクラッチレバーを操作し、クラッチを入れる。クラッチが入ったことを確認後、ブレーキが効いた状態で回さないため直ちに駆動操作レバーをニュートラルに戻す。それからブレーキハンドルを回してブレーキを解除する。これら一連操作の後、駆動操作レバーを操作することにより必要なロープリール又は描鎖用ホイールを駆動することができる。
【0005】
一方、各ロープリールと描鎖用ホイールのクラッチを抜く場合には、該当するロープリール又は錨鎖用ホイールのブレーキハンドルを回してブレーキを掛け、駆動操作レバーを操作して駆動軸を直前に作動させていた方向と反対方向へ僅かに回しながら、同時にクラッチレバーをクラッチが抜ける方向に力を加え、クラッチが抜けると駆動操作レバーをニュートラルに戻す。
【0006】
このように係船装置を操作する作業は、駆動操作レバー、クラッチレバー及びブレーキハンドルを微妙なタイミングの一連操作又は同時操作をする必要がある。
【特許文献1】特開2004−17690
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら従来の係船装置においては、駆動操作レバー、クラッチレバー及びブレーキハンドルが構造的に離れた位置にある為に、複数人(2〜3人)の作業員が各レバーの位置に離れて立ち、互いに合図しながら操作している。その為に複数人の作業員が駆動操作レバー、クラッチレバー及びブレーキハンドルの操作をタイミング良く行う必要があるが、その操作連係が悪ければ誤操作による事故が発生する恐れがある。
また、駆動操作レバーを操作する操作員は、何れのロープリール又は錨鎖用ホイールを作動させる時も駆動操作レバーを操作しなければならないが、各ロープリール又は錨鎖用ホイールのクラッチレバー及びブレーキハンドルを操作する操作員は、自分が操作するロープリール又は錨鎖用ホイールを作動させる時だけ必要であり、他のロープリール又は錨鎖用ホイールを他の作業員が操作している時は何も作業をせず待機したままであり、非常に作業効率が悪い。
そこで本発明は、作業員が1人で各ロープリール又は錨鎖用ホイールの作動操作を行える簡潔な構成の係船装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、駆動操作具14により駆動装置1の駆動力が入り切り及び変速操作されて伝達される駆動軸2を設け、該駆動軸2により各々クラッチ7a・7b・7cを介して駆動される複数のロープや鎖等の巻取り装置4・5a・5bを設けると共に、各クラッチ7a・7b・7cを操作する複数のクラッチ操作具6a・6b・6cと各巻取り装置4・5a・5bを各々制動するブレーキ9a・9b・9cの複数のブレーキ操作具8a・8b・8cとを設けてなる係船装置において、複数の巻取り装置4・5a・5bの各クラッチ操作具6a・6b・6cと各ブレーキ操作具8a・8b・8cとの近傍に駆動操作具14若しくは駆動操作具14を連係機構を介して遠隔操作する補助駆動操作具12を配設した係船装置としたものである。
従って、巻取り装置4・5bを駆動しようとする場合は駆動操作具14を使用し、巻取り装置5aを駆動しようとする場合は補助駆動操作具12を使用することにより、必要なクラッチ操作及びブレーキ操作と駆動操作との連携操作が1人で操作可能となる。
【0008】
請求項2記載の発明は、複数の巻取り装置4・5a・5bを一列状に配置し、その内部に駆動軸2を貫通して設けると共に、各巻取り装置4・5a・5bの各々のクラッチ操作具6a・6b・6cと各々のブレーキ操作具8a・8b・8cとを一列状に配置した複数の巻取り装置4・5a・5bの一側方に向けて設けたレバーとし、該巻取り装置4・5a・5bの各レバーの近傍に駆動操作具14若しくは補助駆動操作具12を配設した請求項1記載の係船装置としたものである。
従って、いかなる巻取り装置を駆動する場合でも、一列状に配置した複数の巻取り装置の一側方にだけ作業員を1人配置すれば操作可能である。
【0009】
請求項3記載の発明は、複数の巻取り装置4・5a・5bの少なくとも一側方に各巻取り装置4・5a・5bを一列状に配置した方向と同方向に作業員の作業域を設け、該作業域上から容易に操作できる位置に各々のクラッチ操作具6a・6b・6cと各々のブレーキ操作具8a・8b・8cとその近傍に設けた駆動操作具14若しくは補助駆動操作具12を配設した請求項2記載の係船装置としたものである。
従って、1人の作業員により、作業域上の最小限の直線距離を移動するだけで駆動しようとする巻取り装置の操作が可能である。
【発明の効果】
【0010】
係船装置を操作する場合、通常、合図者を除き2人又は3人で操作する必要があったが、本装置を設置することにより1人で集中的に操作でき、安全性及び作業効率の向上並びに省力化が図れるという効果を低コストで実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、係船装置を操作するためのリモコン装置を、簡易な機械式連結機構を用いて実現していることを特徴としているが、以下はその実施例である。
【実施例1】
【0012】
本発明装置の1実施例として、船舶の船首船尾両舷に各1セット、計4セットの係船装置が設備され、船首側の係船装置の構成は、それぞれ2台のロープリール及び錨鎖用ホイール、船尾側はそれぞれ2台のロープリールで構成されていて、それら全ての係船装置に本リモコン装置を付帯させたものを説明する。
図1は、船首左舷係船機の平面図である。図2は、その左側面図。図3は、駆動操作レバーにリモコン装置を接続した状態の正面図である。図4は、係船装置を用いて船舶を接岸する作用説明用平面図である。図5は、接岸後の係留状態を示す平面図である。
【0013】
まず、本係船装置の構造を説明する。1は油圧モーターであり、駆動操作レバー14を持つ油圧制御弁10によりコントロールされ、減速機3を介して駆動軸2を回転させる。ロープリール5a、5b及び錨鎖用ホイール4への動力の伝達及び切断は、各々クラッチ操作レバー6a、6b及び6cの操作によりクラッチ7a、7b及び7cが嵌脱されて行なわれる。また、ブレーキ操作ハンドル8a、8b及び8cの操作により作動するブレーキ9a、9b及び9cが各々ロープリール5a、5b及び錨鎖用ホイール4に装着されている。また、クラッチ操作レバー6a及びブレーキ操作ハンドル8aの近傍に、駆動操作レバー14と同じ形状のリモコン操作レバー12が装備され、軸受け11にて支持された連結棒13により、駆動操作レバー14とリモコン操作レバー12とが連動するよう、図3に示すように機械的に接続されている。
【0014】
次に、本係船装置を操作しながら船舶を接岸係船する手順を説明する。船舶が指定された岸壁へ接岸しようとする場合、岸壁から数十メートル沖合いまでは、自力、又はタグボートの補助にて接近する。そこから本船の係船装置を使用するのであるが、船首船尾両舷のロープリールから1本づつ、計4本のロープを図4のように岸壁の係船ビットに絡ませる。ロープの先端を岸壁まで運ぶ方法は、小船を使用するか、案内用小ロープを本船から岸壁まで投げ送り、岸壁側の作業員の人力での引張り作業による。このとき本船側の係船機のロープリールのブレーキは緩められ、クラッチは脱状態、すなわちフリー状態で、岸壁での引張り作業を軽く、速く行えるようにしている。4本のロープを係船ビットに絡ませ終わると、本船側の係船装置の操作により本船を岸壁に近づける。本船の人員配置は、船橋に総指揮者が1名。船首側及び船尾側に各々合図者各1名、操作員各1名である。各係船機は、総指揮者の指示のもと、ロープが岸壁に繋がれたロープリールのクラッチが嵌められ、合図者の指示にてロープが巻かれていく。操作員は、右舷機と左舷機の中央に位置し、各々の駆動操作レバーは、両手で届く範囲にあるので、右舷機も左舷機も、1人で合図者の指示通り自由にコントロールできる。こうして4本のロープの張力を調整しながら巻き取ることで船体を岸壁に平行を保ったまま岸壁との距離を縮め、また、前後方向の移動も可能で目標地点へ接岸することができる。
【0015】
目標地点へ接岸後、さらに係船力を高めるため、他のロープリールに巻かれたロープを繰出し、同じ係船ビットに絡ませ、図5のように計8本のロープに同じ張力を掛けるのが一般的である。このとき、係船装置において必要な操作は、最初に駆動させたロープリールのブレーキを掛け、クラッチを抜き、隣のロープリールのクラッチを入れることであり、それから合図者の指示どうりにロープリールを巻いていく。ロープの張力の最終調整のため、ロープリールの駆動を何度か切り替える場合もある。
【0016】
このような操作において、リモコン装置がない場合、必要な一連の操作をするためには、通常2人又は3人の操作員が必要であったが、リモコン装置を付加することにより、1台又は併設された2台の係船装置のロープリールの駆動において、必要な一連の操作を1人で可能としたものである。
【0016】
作業域は、各操作具間に安全な作業床を設けることにより、作業員が安全な最小限の直線移動で全ての操作が可能となることに役立っている。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明装置の設置により、安全性及び作業効率の向上並びに省力化が図れる。また、リモコン装置は、油圧機構又は電気機器等の装置を用いることなく簡易な機械式連結機構を用いてこれを実現しているため、コスト的に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】船首左舷用の係船装置の平面図である。
【図2】船首左舷用の係船装置の左側面図である。
【図3】駆動操作レバーの正面図である。
【図4】係船装置を用いて船舶を接岸する作用説明用平面図である。
【図5】接岸後の係留状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 駆動装置(油圧モーター)
2 駆動軸
3 減速機
4 巻取り装置(錨鎖用ホイール)
5a・5b 巻取り装置(ロープリール)
6a・6b・6c クラッチ操作具(クラッチ操作レバー)
7a・7b・7c クラッチ(噛み合いクラッチ)
8a・8b・8c ブレーキ操作具(ブレーキ操作ハンドル)
9a・9b・9c ブレーキ(バンドブレーキ)
10 油圧制御弁
11 軸受け
12 補助駆動操作具(リモコン操作レバー)
13 連結棒
14 駆動操作具(駆動操作レバー)
15 駆動軸軸受け
16 油圧配管
17 フェアリーダー
18 防舷材
19 係船ビット
20 船首用係船装置
21 船尾用係船装置駆動操作レバー
22 ドラム
23 作業域(ステップ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶を岸壁などに係船する際に用いる係船装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶を岸壁などに接岸する際には、特開2004−17690号公報に示すように、船首及び船尾から各々2本の係船ロープ(係留索)を岸壁側の4箇所の係船ビットに絡ませ、各ロープの張力を調整しながら巻き取ることにより、岸壁との距離を縮めると共に前後方向に移動させながら希望の位置に接岸する方法が一般的である。
これらの作業をするため、船舶の船首及び船尾にはドラム式ウインチが装備されており、一般的に係船装置と呼ばれている。尚、状況によりさらにロープの数を増やしたり沖側に投錨してその張力を利用することもある。
【0003】
船首の右舷及び左舷に設置される船首用係船装置の一般的な構造は、油圧を動力源として回転する駆動軸の外周部に、2台のロープリール及び1台の描鎖用ホイールが装備されており、各々手動式のクラッチレバーを左右に操作することにより嵌脱する噛み合いクラッチと、手回し式のブレーキハンドルを回すことにより作動するバンドブレーキが装着されている。そして、駆動軸を回転させる油圧の油路を変更操作する駆動操作レバーがあり、このレバーを前後に操作することにより、駆動軸の回転方向と速度をコントロールすることができるようになっている。尚、船尾用係船装置は、描鎖用ホイールが無いものが多いが、船首用係船装置とほぼ同じ構造である。
【0004】
次に、必要なロープリール又は描鎖用ホイールを駆動する操作手順を説明するが、係船装置の操作終了時には、全てのブレーキは通常作動させたまま終了するので、使用開始時は全てのブレーキは効いた状態である。まず、駆動しようとするロープリール又は錨鎖用ホイールのクラッチを入れるために、駆動操作レバーを操作して駆動軸をゆるやかに回し、クラッチの歯が噛み合う位置にくるとクラッチレバーを操作し、クラッチを入れる。クラッチが入ったことを確認後、ブレーキが効いた状態で回さないため直ちに駆動操作レバーをニュートラルに戻す。それからブレーキハンドルを回してブレーキを解除する。これら一連操作の後、駆動操作レバーを操作することにより必要なロープリール又は描鎖用ホイールを駆動することができる。
【0005】
一方、各ロープリールと描鎖用ホイールのクラッチを抜く場合には、該当するロープリール又は錨鎖用ホイールのブレーキハンドルを回してブレーキを掛け、駆動操作レバーを操作して駆動軸を直前に作動させていた方向と反対方向へ僅かに回しながら、同時にクラッチレバーをクラッチが抜ける方向に力を加え、クラッチが抜けると駆動操作レバーをニュートラルに戻す。
【0006】
このように係船装置を操作する作業は、駆動操作レバー、クラッチレバー及びブレーキハンドルを微妙なタイミングの一連操作又は同時操作をする必要がある。
【特許文献1】特開2004−17690
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら従来の係船装置においては、駆動操作レバー、クラッチレバー及びブレーキハンドルが構造的に離れた位置にある為に、複数人(2〜3人)の作業員が各レバーの位置に離れて立ち、互いに合図しながら操作している。その為に複数人の作業員が駆動操作レバー、クラッチレバー及びブレーキハンドルの操作をタイミング良く行う必要があるが、その操作連係が悪ければ誤操作による事故が発生する恐れがある。
また、駆動操作レバーを操作する操作員は、何れのロープリール又は錨鎖用ホイールを作動させる時も駆動操作レバーを操作しなければならないが、各ロープリール又は錨鎖用ホイールのクラッチレバー及びブレーキハンドルを操作する操作員は、自分が操作するロープリール又は錨鎖用ホイールを作動させる時だけ必要であり、他のロープリール又は錨鎖用ホイールを他の作業員が操作している時は何も作業をせず待機したままであり、非常に作業効率が悪い。
そこで本発明は、作業員が1人で各ロープリール又は錨鎖用ホイールの作動操作を行える簡潔な構成の係船装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、駆動操作具14により駆動装置1の駆動力が入り切り及び変速操作されて伝達される駆動軸2を設け、該駆動軸2により各々クラッチ7a・7b・7cを介して駆動される複数のロープや鎖等の巻取り装置4・5a・5bを設けると共に、各クラッチ7a・7b・7cを操作する複数のクラッチ操作具6a・6b・6cと各巻取り装置4・5a・5bを各々制動するブレーキ9a・9b・9cの複数のブレーキ操作具8a・8b・8cとを設けてなる係船装置において、複数の巻取り装置4・5a・5bの各クラッチ操作具6a・6b・6cと各ブレーキ操作具8a・8b・8cとの近傍に駆動操作具14若しくは駆動操作具14を連係機構を介して遠隔操作する補助駆動操作具12を配設した係船装置としたものである。
従って、巻取り装置4・5bを駆動しようとする場合は駆動操作具14を使用し、巻取り装置5aを駆動しようとする場合は補助駆動操作具12を使用することにより、必要なクラッチ操作及びブレーキ操作と駆動操作との連携操作が1人で操作可能となる。
【0008】
請求項2記載の発明は、複数の巻取り装置4・5a・5bを一列状に配置し、その内部に駆動軸2を貫通して設けると共に、各巻取り装置4・5a・5bの各々のクラッチ操作具6a・6b・6cと各々のブレーキ操作具8a・8b・8cとを一列状に配置した複数の巻取り装置4・5a・5bの一側方に向けて設けたレバーとし、該巻取り装置4・5a・5bの各レバーの近傍に駆動操作具14若しくは補助駆動操作具12を配設した請求項1記載の係船装置としたものである。
従って、いかなる巻取り装置を駆動する場合でも、一列状に配置した複数の巻取り装置の一側方にだけ作業員を1人配置すれば操作可能である。
【0009】
請求項3記載の発明は、複数の巻取り装置4・5a・5bの少なくとも一側方に各巻取り装置4・5a・5bを一列状に配置した方向と同方向に作業員の作業域を設け、該作業域上から容易に操作できる位置に各々のクラッチ操作具6a・6b・6cと各々のブレーキ操作具8a・8b・8cとその近傍に設けた駆動操作具14若しくは補助駆動操作具12を配設した請求項2記載の係船装置としたものである。
従って、1人の作業員により、作業域上の最小限の直線距離を移動するだけで駆動しようとする巻取り装置の操作が可能である。
【発明の効果】
【0010】
係船装置を操作する場合、通常、合図者を除き2人又は3人で操作する必要があったが、本装置を設置することにより1人で集中的に操作でき、安全性及び作業効率の向上並びに省力化が図れるという効果を低コストで実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、係船装置を操作するためのリモコン装置を、簡易な機械式連結機構を用いて実現していることを特徴としているが、以下はその実施例である。
【実施例1】
【0012】
本発明装置の1実施例として、船舶の船首船尾両舷に各1セット、計4セットの係船装置が設備され、船首側の係船装置の構成は、それぞれ2台のロープリール及び錨鎖用ホイール、船尾側はそれぞれ2台のロープリールで構成されていて、それら全ての係船装置に本リモコン装置を付帯させたものを説明する。
図1は、船首左舷係船機の平面図である。図2は、その左側面図。図3は、駆動操作レバーにリモコン装置を接続した状態の正面図である。図4は、係船装置を用いて船舶を接岸する作用説明用平面図である。図5は、接岸後の係留状態を示す平面図である。
【0013】
まず、本係船装置の構造を説明する。1は油圧モーターであり、駆動操作レバー14を持つ油圧制御弁10によりコントロールされ、減速機3を介して駆動軸2を回転させる。ロープリール5a、5b及び錨鎖用ホイール4への動力の伝達及び切断は、各々クラッチ操作レバー6a、6b及び6cの操作によりクラッチ7a、7b及び7cが嵌脱されて行なわれる。また、ブレーキ操作ハンドル8a、8b及び8cの操作により作動するブレーキ9a、9b及び9cが各々ロープリール5a、5b及び錨鎖用ホイール4に装着されている。また、クラッチ操作レバー6a及びブレーキ操作ハンドル8aの近傍に、駆動操作レバー14と同じ形状のリモコン操作レバー12が装備され、軸受け11にて支持された連結棒13により、駆動操作レバー14とリモコン操作レバー12とが連動するよう、図3に示すように機械的に接続されている。
【0014】
次に、本係船装置を操作しながら船舶を接岸係船する手順を説明する。船舶が指定された岸壁へ接岸しようとする場合、岸壁から数十メートル沖合いまでは、自力、又はタグボートの補助にて接近する。そこから本船の係船装置を使用するのであるが、船首船尾両舷のロープリールから1本づつ、計4本のロープを図4のように岸壁の係船ビットに絡ませる。ロープの先端を岸壁まで運ぶ方法は、小船を使用するか、案内用小ロープを本船から岸壁まで投げ送り、岸壁側の作業員の人力での引張り作業による。このとき本船側の係船機のロープリールのブレーキは緩められ、クラッチは脱状態、すなわちフリー状態で、岸壁での引張り作業を軽く、速く行えるようにしている。4本のロープを係船ビットに絡ませ終わると、本船側の係船装置の操作により本船を岸壁に近づける。本船の人員配置は、船橋に総指揮者が1名。船首側及び船尾側に各々合図者各1名、操作員各1名である。各係船機は、総指揮者の指示のもと、ロープが岸壁に繋がれたロープリールのクラッチが嵌められ、合図者の指示にてロープが巻かれていく。操作員は、右舷機と左舷機の中央に位置し、各々の駆動操作レバーは、両手で届く範囲にあるので、右舷機も左舷機も、1人で合図者の指示通り自由にコントロールできる。こうして4本のロープの張力を調整しながら巻き取ることで船体を岸壁に平行を保ったまま岸壁との距離を縮め、また、前後方向の移動も可能で目標地点へ接岸することができる。
【0015】
目標地点へ接岸後、さらに係船力を高めるため、他のロープリールに巻かれたロープを繰出し、同じ係船ビットに絡ませ、図5のように計8本のロープに同じ張力を掛けるのが一般的である。このとき、係船装置において必要な操作は、最初に駆動させたロープリールのブレーキを掛け、クラッチを抜き、隣のロープリールのクラッチを入れることであり、それから合図者の指示どうりにロープリールを巻いていく。ロープの張力の最終調整のため、ロープリールの駆動を何度か切り替える場合もある。
【0016】
このような操作において、リモコン装置がない場合、必要な一連の操作をするためには、通常2人又は3人の操作員が必要であったが、リモコン装置を付加することにより、1台又は併設された2台の係船装置のロープリールの駆動において、必要な一連の操作を1人で可能としたものである。
【0016】
作業域は、各操作具間に安全な作業床を設けることにより、作業員が安全な最小限の直線移動で全ての操作が可能となることに役立っている。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明装置の設置により、安全性及び作業効率の向上並びに省力化が図れる。また、リモコン装置は、油圧機構又は電気機器等の装置を用いることなく簡易な機械式連結機構を用いてこれを実現しているため、コスト的に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】船首左舷用の係船装置の平面図である。
【図2】船首左舷用の係船装置の左側面図である。
【図3】駆動操作レバーの正面図である。
【図4】係船装置を用いて船舶を接岸する作用説明用平面図である。
【図5】接岸後の係留状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 駆動装置(油圧モーター)
2 駆動軸
3 減速機
4 巻取り装置(錨鎖用ホイール)
5a・5b 巻取り装置(ロープリール)
6a・6b・6c クラッチ操作具(クラッチ操作レバー)
7a・7b・7c クラッチ(噛み合いクラッチ)
8a・8b・8c ブレーキ操作具(ブレーキ操作ハンドル)
9a・9b・9c ブレーキ(バンドブレーキ)
10 油圧制御弁
11 軸受け
12 補助駆動操作具(リモコン操作レバー)
13 連結棒
14 駆動操作具(駆動操作レバー)
15 駆動軸軸受け
16 油圧配管
17 フェアリーダー
18 防舷材
19 係船ビット
20 船首用係船装置
21 船尾用係船装置駆動操作レバー
22 ドラム
23 作業域(ステップ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動操作具14により駆動装置1の駆動力が入り切り及び変速操作されて伝達される駆動軸2を設け、該駆動軸2により各々クラッチ7a・7b・7cを介して駆動される複数のロープや鎖等の巻取り装置4・5a・5bを設けると共に、各クラッチ7a・7b・7cを操作する複数のクラッチ操作具6a・6b・6cと各巻取り装置4・5a・5bを各々制動するブレーキ9a・9b・9cの複数のブレーキ操作具8a・8b・8cとを設けてなる係船装置において、複数の巻取り装置4・5a・5bの各クラッチ操作具6a・6b・6cと各ブレーキ操作具8a・8b・8cとの近傍に駆動操作具14若しくは駆動操作具14を連係機構を介して遠隔操作する補助駆動操作具12を配設したことを特徴とする係船装置。
【請求項2】
複数の巻取り装置4・5a・5bを一列状に配置し、その内部に駆動軸2を貫通して設けると共に、各巻取り装置4・5a・5bの各々のクラッチ操作具6a・6b・6cと各々のブレーキ操作具8a・8b・8cとを一列状に配置した複数の巻取り装置4・5a・5bの一側方に向けて設けたレバーとし、該巻取り装置4・5a・5bの各レバーの近傍に駆動操作具14若しくは補助駆動操作具12を配設したことを特徴とする請求項1記載の係船装置
【請求項3】
複数の巻取り装置4・5a・5bの少なくとも一側方に各巻取り装置4・5a・5bを一列状に配置した方向と同方向に作業者の作業域を設け、該作業域上から容易に操作できる位置に各々のクラッチ操作具6a・6b・6cと各々のブレーキ操作具8a・8b・8cとその近傍に設けた駆動操作具14若しくは補助駆動操作具12を配設したことを特徴とする請求項2記載の係船装置。
【請求項1】
駆動操作具14により駆動装置1の駆動力が入り切り及び変速操作されて伝達される駆動軸2を設け、該駆動軸2により各々クラッチ7a・7b・7cを介して駆動される複数のロープや鎖等の巻取り装置4・5a・5bを設けると共に、各クラッチ7a・7b・7cを操作する複数のクラッチ操作具6a・6b・6cと各巻取り装置4・5a・5bを各々制動するブレーキ9a・9b・9cの複数のブレーキ操作具8a・8b・8cとを設けてなる係船装置において、複数の巻取り装置4・5a・5bの各クラッチ操作具6a・6b・6cと各ブレーキ操作具8a・8b・8cとの近傍に駆動操作具14若しくは駆動操作具14を連係機構を介して遠隔操作する補助駆動操作具12を配設したことを特徴とする係船装置。
【請求項2】
複数の巻取り装置4・5a・5bを一列状に配置し、その内部に駆動軸2を貫通して設けると共に、各巻取り装置4・5a・5bの各々のクラッチ操作具6a・6b・6cと各々のブレーキ操作具8a・8b・8cとを一列状に配置した複数の巻取り装置4・5a・5bの一側方に向けて設けたレバーとし、該巻取り装置4・5a・5bの各レバーの近傍に駆動操作具14若しくは補助駆動操作具12を配設したことを特徴とする請求項1記載の係船装置
【請求項3】
複数の巻取り装置4・5a・5bの少なくとも一側方に各巻取り装置4・5a・5bを一列状に配置した方向と同方向に作業者の作業域を設け、該作業域上から容易に操作できる位置に各々のクラッチ操作具6a・6b・6cと各々のブレーキ操作具8a・8b・8cとその近傍に設けた駆動操作具14若しくは補助駆動操作具12を配設したことを特徴とする請求項2記載の係船装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2006−213515(P2006−213515A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59633(P2005−59633)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(503279828)浅川造船株式会社 (3)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(503279828)浅川造船株式会社 (3)
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