説明

保冷具

【課題】安価でかさばらず、しかも保冷効果の高い取手付きの飲料用缶若しくは飲料用容器用の保冷具を提供すること。
【解決手段】保冷具1は、飲料用缶若しくは飲料用容器を収容する収容部2を有した断熱カバー本体3と、当該断熱カバー本体3の外側において当該断熱カバー本体3を保持する取手付きのフレーム4を有しており、前記断熱カバー本体3には、前記飲料用缶若しくは飲料容器の飲み口部に対応した切り欠き7が設けられていることを特徴とする。また、前記断熱カバー本体3若しくはフレーム4には、少なくとも前記飲料用缶の上部外周と弾力的に密着し外気の進入を制限するシールド部が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用缶若しくは飲料用容器に装着する取手付きの保冷具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来特許文献1記載の缶入り飲料のジョッキ風保冷容器が知られている。当該缶入り飲料のジョッキ風保冷容器は、内側筒体と外側筒体との間に減圧状態の密閉空間等による断熱層を形成したものであり、内側筒体の内面を缶収容部として缶入り飲料を収容するものである。また、外側筒体の外周面には取手(8)が設けられている。
当該ジョッキ風保冷容器は、そもそも2重構造の飲料用ジョッキとしての構造を備えたものであり、言うなれば断熱構造を備えた飲料用ジョッキの中に缶入り飲料を収容するようにしたものである。したがって、断熱効果は高いと思われるが、高価でかさばるものである。
また、特許文献2には、矩形状に裁断された発泡樹脂シートにアルミ箔を蒸着した断熱シート体によって形成された巻装具であって、容器周面に水平状に巻着して使用するものが記載されている。当該保冷具は、上記のような構造を有しているので、安価でかさばらず簡易的な保冷具としては便利なものである。しかし、簡易的な保冷具であっても、保冷効果はできるだけ高いものであることが好ましい。
【特許文献1】実用新案登録第3014815号公報
【特許文献2】実用新案登録第3132559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記課題に鑑み発明したものであって、安価でかさばらず、しかも保冷効果の高い取手付きの飲料用缶若しくは飲料用容器用の保冷具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために本願請求項1記載の発明は以下の構成を有する。すなわち、
飲料用缶若しくは飲料用容器を収容する収容部を有した断熱カバー本体と、当該断熱カバー本体の外側において当該断熱カバー本体を保持する取手付きのフレームを有しており、
前記断熱カバー本体には、前記飲料用缶若しくは飲料容器の飲み口部に対応した切り欠きが設けられていることを特徴とする保冷具。
【0005】
また、本願請求項2記載の発明は、以下の構成を有する。すなわち、請求項1記載の保冷具であって、
前記断熱カバー本体若しくはフレームには、少なくとも前記飲料用缶の上部外周と弾力的に密着し外気の進入を制限するシールド部が設けられていることを特徴とする。
【0006】
また、本願請求項3記載の発明は、以下の構成を有する。すなわち、請求項2記載の保冷具であって、
前記フレームは、前記断熱カバー本体の底部を支える基台部、および前記断熱カバー本体のシールド部に対応した外周壁部を拘束する拘束部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る保冷具は、前記特許文献1記載のジョッキ風保冷容器のように2重構造によって空間を形成するものではないので、製造コストが安価であり、かさばらず未使用時に必要とする収容スペースも少ないという効果を有している。
また、断熱カバーの内側面に外気の進入を阻害するシールド部を設けたので、断熱二重構造を有する断熱容器に近似した保冷効果を有するという効果を有している。
また、断熱カバーの外側面を取手付きのフレームによって拘束し、かつ当該フレームの拘束力を前記シールドに対する押圧力として作用させることで、内部の密閉性を高め保冷若しくは保温性を向上させることができるという効果を有している。
さらに、軟質の断熱カバーに剛性の高い取手を設けることができるとともに、断熱カバーの底壁を支持する支持板(基台部)によって当該保冷具をテーブル上等に安定して載置することができるという効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、本発明に係る取手付きの飲料用缶若しくは飲料用容器の保冷具(以下単に「保冷具」という。)1の外観図である。保冷具1は、内部に収容部2を設けた円筒状の断熱カバー本体3と、当該断熱カバー本体3に装着するフレーム4によって構成されている。
【0009】
本実施の形態における断熱カバー本体3は、発泡性樹脂若しくは発泡性ゴムによる成形によって、有底筒状の軟質体として一体形成されたものである。そして、成型素材には、形状を保持できる程度の剛性を保ちつつ比重が最も軽くなるように、添加する発泡剤の割合が調節されたものが使用される。
収容部2の内径は、一例として一般的な350mlビール缶の外径よりもやや大きい66〜70mmに形成されている。また、筒状を成す側壁部および底壁部は、約5mm程度の肉厚に形成されている。
【0010】
収容部2の内壁面には、図2(a)に示した断面図のように、1または2以上の環状の突出部5(5a、5b、5c)が設けられている。そして、少なくとも1つの突出部5(5a)は、収容部2の上部開口よりもやや低い位置に設けられている。なお、他の突出部5(5b、5c・・)を設ける場合には、底壁に亘ってほぼ均等の間隔を成すように設けられる。
開口部近辺に設けた突出部5aは、図2(b)に示すように、収容部2内にビール缶等の飲料用缶Bを収容した際に、当該飲料用缶Bの外周壁に当接して、新たな外気が飲料用缶Bの外周壁に接触するのを防止するシールドとしての作用を有するものである。そして、中間部から底部にかけて設けた他の突出部5b、5c・・は、収容部2の内壁と飲料用缶Bの外周壁との間に形成された空間をさらに複数個の小空間6(6a、6b、6c)に区切る作用を有する。
【0011】
本発明に係る保冷具1は、主として冷えた缶ビール等の飲料を保冷することを目的としたものであるが、保冷効果を維持するには外気と飲料用缶Bとの間で行われる熱交換(伝熱)を阻害する必要がある。物質間で行われる熱の伝達は、放射(輻射)、伝導、対流の3要素によって行われる。
前記突出部5は、収容部2の内部と外気とを遮断することによって、新たな空気の進入および入れ換え(対流)を防止するので、前記伝熱の3要素の内の対流による伝熱を阻害することができる。さらに、収容部2の内壁と飲料用缶Bの外周壁との間に形成した空間を複数個に区切ることによって収容部2内で生じる大きな空気の対流を制限してデッドエア(対流しない空気)を形成することで保冷効果を高めている。
また、前記突出部5は新たな外気の進入を防止するものであるから、内部で生じる結露を最小限にするものである。結露は水蒸気の凝固であるから凝固熱によって収容物が暖められることになるので、収容物表面に生じる水の凝固を制限することによって保冷効果を維持することができるようになっている。
【0012】
さらに、飲料用缶Bの外周面と断熱カバー本体3は、前記突出部5を介して接触するものであるから、僅かな面積で接触するようになっている。したがって、飲料用缶Bの外周面から断熱カバー本体3に直接的に伝導される熱量を極力制限することができ、これにより断熱効果を高く維持することができるようになっている。そして、断熱カバー本体3の内面に金属光沢を有する反射素材をコーティングした場合には、放射による伝熱をも制限することができる。以上全ての構成を備えた場合には、伝熱の3要素である放射、伝導、対流の全てを考慮した保冷(保温)効果を得ることが出来るようになっている。
【0013】
また、断熱カバー本体3の外周壁の上端縁には、長さ20〜30mm、深さ10mm程度の切欠部7が形成されている。当該切欠部7は、飲料用缶Bの飲口部8に対応して設けたものであり、飲料用缶Bに唇を付ける際に妨げとならないように設けたものである。なお、当該断熱カバー本体3に設けた切欠部7と180度位置を異ならせた位置に、もう一つの同様の切欠部(図示せず)を設けてもよい。このようにすることにより、右手でフレーム4を把持する場合および左手でフレーム4を把持する場合の何れであっても、飲料用缶Bの向き(角度)を適宜変えることによって、支障なく飲料用缶Bに唇を付けて飲料を飲用することができるものである。
さらに、断熱カバー本体3の底壁9は、その底面が平坦となるように形成されており、飲料用缶Bを収容した状態であっても自立するようになっている。本発明に係る保冷具1は、断熱カバー本体3と次に詳述するフレーム4によって構成されるものであるが、フレーム4を装着せず断熱カバー本体3のみの使用をも可能としているものである。
【0014】
前記断熱カバー本体3の外周部には、合成樹脂による一体成形によって形成されたフレーム4が着脱可能に装着されるようになっている。本実施の形態に係るフレーム4は、主に断熱カバー本体3の上部外周を覆う上部環状体10と、下端部外周を覆う下部環状体11と、これら上部環状体10と下部環状体11との連結部材を兼ねた取手12によって形成されている。
上部環状体10は、幅約20〜30mm程度の帯状の環状部材であり、断熱カバー本体3の開口部近辺に設けた突出部5aと同じ高さに配置されている。そして、当該部位の断熱カバー本体3の外周を僅かに締め付けるような状態で装着されるような内径に形成されている。
これは、断熱カバー本体3内に飲料用缶Bを収容した際、開口部近辺の突出部5aと飲料用缶Bとの当接を隙間無く確実なものとするためであり、外周壁の弾性を利用して突出部5aを密着させ、気密性(シールド効果)を得ることができるようになっている。
【0015】
下部環状体11は、断熱カバー本体3との間にやや遊度を設けた状態で、断熱カバー本体3の外周を覆うようになっている。また、下部環状体11の下端には、断熱カバー本体3の底壁9を支える支持板(基台部)16が設けられている。当該支持板16は、中央を円形にくり抜いた円板形状を成している。前記取手12は、断熱カバー本体3の長手方向である上下方向に沿って設けられたコ字状の板状部材であり、手指で握ることができる把持部13を設けたものである。
【0016】
また、前記構造のフレーム4は、上部環状体10と下部環状体11の周壁の一部を屈曲部14として開閉するように形成されている。図3は、屈曲部14を回動中心としてフレーム4を開いた状態を表している。このような構造を採用することにより、フレーム4を成形する際にスライド型のような複雑な金型を形成する必要がなく、成型品としてもかさばらず、安価に製造することができるようになっている。
【0017】
また、前記上部環状体10には、前記断熱カバー本体3の外周壁の上端縁に形成した切欠部7と同位置に、切欠部7と同様の形状を成す切欠部15を設けている。
図4は、保冷具1の使用状態を表している。同図に示すように、保冷具1の使用状態において、飲料用缶Bの飲み口部付近の断熱カバー本体3およびフレーム4がともに切り欠かれており、飲料用缶Bに対する唇部の接触を妨げないようになっている。
なお、前述したように断熱カバー本体3に前記切欠部7とは異なる位置に他の切欠部を設ける場合には、上部環状体10にも、この位置に対応したもう一つの切欠部を設ける(図示せず)。これによって本願発明に係る保冷具を、右利き用あるいは左利き用の何れにも使用することができるものである。
また、保冷具1に装着するものは飲料用缶に限らず、コップ等の飲料用容器であっても構わないものである。また、上述した例は主として保冷について説明したが、本発明は保温にも適用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、飲料用缶やコップ等の飲料用容器を保冷若しくは保温することができる断熱具に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る保冷具の外観斜視図である。
【図2】本発明に係る保冷具に用いる断熱カバーの説明図である。
【図3】本発明に係る保冷具の説明図である。
【図4】本発明に係る保冷具の使用状態に関する説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 保冷具
2 収容部
3 断熱カバー本体
4 フレーム
5(5a、5b、5c) 突出部(シールド部)
6(6a、6b、6c) 小空間
7 切欠部
8 飲口部
9 底壁
10 上部環状体(拘束部)
11 下部環状体
12 取手
13 把持部
14 屈曲部
15 切欠部
16 支持板(基台部)
B 飲料用缶


【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料用缶若しくは飲料用容器を収容する収容部を有した断熱カバー本体と、当該断熱カバー本体の外側において当該断熱カバー本体を保持する取手付きのフレームを有しており、
前記断熱カバー本体には、前記飲料用缶若しくは飲料容器の飲み口部に対応した切り欠きが設けられていることを特徴とする保冷具。
【請求項2】
前記断熱カバー本体若しくはフレームには、少なくとも前記飲料用缶の上部外周と弾力的に密着し外気の進入を制限するシールド部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の保冷具。
【請求項3】
前記フレームは、前記断熱カバー本体の底部を支える基台部、および前記断熱カバー本体のシールド部に対応した外周壁部を拘束する拘束部を有していることを特徴とする請求項2記載の保冷具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−64767(P2010−64767A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231665(P2008−231665)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(508274116)
【Fターム(参考)】