説明

保冷容器、及び保冷容器用の中蓋

【課題】容器本体内に収容する内容物の大きさに関係なく、保冷効果を維持することが可能な保冷容器を提供する。
【解決手段】本発明に係る保冷容器1は、開口2aを具備した容器本体2と、容器本体2の開口2aを閉塞するように開閉可能に設けられた蓋体3と、容器本体内部に設置される中蓋10と、を有している。そして、中蓋10は、袋体11を有しており、袋体11を容器本体の内面に圧着することで、高さ方向に変位可能に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、魚釣りに携行される保冷容器、及びそのような保冷容器内に設置される中蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、保冷容器(クーラーボックスと称されることもある)は、断熱性を有する容器本体に蓋体を回動自在に装着した構造となっている。このような保冷容器は、容器本体内に氷や保冷剤などを収容することで、容器本体内の保冷効果を一定時間維持することが可能である。また、例えば、特許文献1には、容器本体の内面に段部を形成しておき、段部に保冷剤を有する中蓋の外縁を設置できるようにした保冷容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭56−92072号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した公知の保冷容器によれば、保冷剤を有する中蓋を設置することで、容器本体内の保冷効果を維持することは可能であるものの、容器本体内の空間に対して内容物が少ない場合、空気の対流が起こってしまい、保冷効果が低下する、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、容器本体内に収容する内容物の大きさに関係なく、保冷効果を維持することが可能な保冷容器、そのような保冷容器に用いられる中蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明に係る保冷容器は、開口を具備した容器本体と、容器本体の開口を閉塞するように開閉可能に設けられた蓋体と、前記容器本体内部に設置される中蓋と、を有する構成であって、前記中蓋は、外縁に圧着手段を有しており、前記圧着手段を容器本体の内面に圧着することで、高さ方向に変位可能に固定されることを特徴とする。
【0007】
上記した保冷容器は、中蓋が、外縁に設けられた圧着手段によって容器本体の内面に圧着する構成となっており、中蓋の位置を容器本体の高さ方向に沿って変位させ、任意の位置で固定することができる。このため、容器本体内の内容物が少ないときには、中蓋の位置を底側に移動させることで、空気の対流を減らし保冷効果を向上させることが可能となる。
【0008】
なお、上記した構成の中蓋は、例えば、その外縁側に空気を出入可能な袋体を設けることで、容器本体の内面との間で圧着状態を維持しつつ高さ方向に変位させることが可能である。この場合、中蓋の外縁に設けられる圧着手段については、中蓋全体として空気を出入可能な袋体とすること、或いは、断熱性を有する断熱材の外周(外縁)に空気を出入可能な袋体を設ける構造にすることで断熱性を高めることができ、保冷効果を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の保冷容器、及び中蓋によれば、容器本体内に収容する内容物の大きさに関係なく、保冷効果を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る保冷容器の一実施形態を示す斜視図。
【図2】(a)は保冷容器の容器本体内に設置される中蓋の構造を示す斜視図、(b)は図(a)のA−A線に沿った断面図
【図3】容器本体内に中蓋を設置した状態を示す断面図。
【図4】中蓋の第2の実施形態を示す斜視図。
【図5】(a)は中蓋の第3の実施形態を示す斜視図、(b)は図(a)のB−B線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1から図3は、本発明に係る保冷容器の一実施形態を示しており、図1は保冷容器の斜視図、図2(a)は保冷容器の容器本体内に設置される中蓋の構造を示す斜視図、(b)は図(a)のA−A線に沿った断面図、そして、図3は容器本体内に中蓋を設置した状態を示す断面図である。
【0012】
図1に示すように、保冷容器1は、内部空間2aを具備した略直方体形状に成形された容器本体2を備えている。容器本体2は、断熱性を有する素材で構成されており、その上端側には、ヒンジ構造によって容器本体2の開口2bを開閉するための蓋体3が回動可能に支持されている。また、容器本体2と蓋体3には、公知のように、蓋体3を閉じた際に両者の間を密にシールするシール部材5、及び開閉ロック機構2A,3Aなどが設けられている。さらに、容器本体2には、保冷容器1を持ち運びする際に把持される取手2Bが回動可能に支持されている。
【0013】
前記容器本体2の内部空間2aは、開口幅W、奥行きL、高さHの所定の大きさを有しており、実際の使用時では、内部空間2aに保冷性を有する部材、例えば、氷、保冷剤、ドライアイス等が収容される。そして、容器本体2の内部には、以下のような中蓋10が設置されるようになっている。
【0014】
中蓋10は、容器本体2の内部空間2aに対して、開口2bから挿脱できる大きさの矩形状に形成された本体11を有しており、本体11は、図3に示すように、容器本体2の内面に圧着(圧接)することで高さ方向に変位して固定できるように構成されている。すなわち、中蓋10には、容器本体2の内面のいずれの位置にも固定できるように、その外縁に圧着手段が設けられている。
【0015】
本実施形態では、中蓋10の本体11そのものが圧着手段としての機能を備えており、本体11は、空気を出入可能な袋体で形成されている。本体(袋体)11は、上面部12、下面部13、及び上面部と下面部とを連結する側壁部14とを備えた略直方体形状となっており、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、合成ゴム、オレフィン系エラストマー、ポリエチレン(PE)等によって形成されている。
【0016】
前記本体11は、その内部が空洞状に形成されており、前記上面部12に設けられた空気を出入するための出入口12aを介して空気を入れることで膨らむようになっている。なお、内部に空気が充填されることにより、本体11そのものが断熱効果を発揮することが可能となる。
【0017】
上記したように構成される本体11については、上面部12及び下面部13の肉厚T1が、側壁部14の肉厚T2に対して厚くなるように形成されていることが望ましい。このように形成することで、空気を入れた際、上下方向の変形(伸び)を抑制しつつ、水平方向に均等圧で膨らむことができ、容器本体2の内部空間2aに設置した際、周囲方向全てに亘って圧着して、その位置を確実に固定することが可能となる。
【0018】
また、本体11は、その内部に、多数の空気室(小空間)が生じるように形成されていることが望ましい。例えば、図2(a)の斜線で示すように、上面部12及び下面部13を、格子状の仕切部16を介して溶着したり、或いは、上面部12及び下面部13を、図2(a)の斜線部分で直接格子状に溶着することで、出入口12aを介して空気を入れた際、そのような仕切部16によって本体11内に多数の空気室17が生じるようになる。すなわち、このような多数の空気室17が存在することで、本体11の内部で空気が対流することが少なくなり、断熱効果を高めることが可能となる。なお、図2(a)で示すように、上面部12と下面部13との間に仕切部16を形成する場合、出入口12aから空気を注入した際、全ての空気室17に空気が行き渡るように、仕切部16には、適所に空気の抜け道が形成されている。
【0019】
上記した構成の保冷容器によれば、容器本体2内に収容される内容物の大きさによって中蓋10の位置を変えることができるため、保冷効果を長期に亘って維持することが可能となる。また、上記した中蓋10は、複数の空気室を具備し、中蓋そのものが断熱効果を有する構造となっているため、保冷効果をより長期に亘って維持することが可能となる。さらに、中蓋10は、その外縁が容器本体2の内面に圧着する構造であるため、移動時において水漏れを防止することも可能となる。
【0020】
次に、図4を参照して、中蓋の第2の実施形態について説明する。
本実施形態の中蓋20は、合成樹脂製、例えば、ポリアミド、合成ゴム、ポリエチレン等で形成された枠体21と、枠体21内に設けられて空気を出入可能な袋体22とを有している。この場合、袋体22は、上記した実施形態の本体(袋体)11と同様な構成を備えており、その上面には、空気を出し入れする出入口22aが設けられている。また、枠体21は、略直方体形状のフレーム構造となっており、前記保冷容器1の容器本体2の内部空間に出し入れできる大きさに形成されている。
【0021】
前記枠体21は、略ロの字型の水平フレーム21a,21bと、これらを4隅で連結する縦フレーム21cとを備えており、それぞれの水平フレーム21a,21bは、補強ブリッジ21dが橋設されて格子状に形成されている。そして、このような枠体21内に設けられた袋体22に空気を入れると、袋体22の一部が、枠体21の外周縁21eに沿って露出できるように構成されている。
【0022】
このように構成された中蓋20によれば、袋体22に空気を入れた際、その一部が枠体21の外周縁21eから露出して、容器本体2の内面の任意の位置に対して周囲方向全てに亘って圧着し、その位置を確実に固定することが可能となる。そして、このような中蓋20によれば、枠体21によって剛性が高まり、変形し難くなって、移動時などの衝撃に対しても中蓋がずれることを防止することが可能となる。
なお、このような構成では、枠体21の外周縁から圧着手段である袋体22が露出して容器本体2の内面に圧着できれば良く、その構造(フレーム構造)については適宜変形することが可能である。
【0023】
次に、図5(a)(b)を参照して、中蓋の第3の実施形態について説明する。
本実施形態の中蓋30は、容器本体2の開口の大きさに対応した断熱性を有する断熱材31を有している。断熱材31は、例えば、発泡ウレタンフォーム(高密度ウレタンフォーム)、発泡ポリスチレンなどの断熱性を有する材料で形成されており、その外周に、容器本体2の内面に圧着可能な圧着手段を設けた構成となっている。
【0024】
前記圧着手段は、略矩形の断熱材31の周囲を囲繞するように取着されたチューブ状の袋体32によって構成されており、その一部には、空気を出入するための出入口32aが設けられている。また、前記袋体32は、空気を入れることで弾性的に変形できるような素材、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、合成ゴム、発泡ゴム系の断熱材(NBR系)等によって形成されている。
【0025】
このように構成された中蓋30によれば、出入口32aを介して空気を入れると袋体32が膨出し、容器本体2の内面の任意の位置に対して周囲方向全てに亘って圧着して、その位置を確実に固定することが可能となる。そして、このような中蓋30によれば、開口を閉塞する断熱材31を備えていることで保冷効果に優れると共に、剛性が高まることで変形し難くなり、移動時などの衝撃に対しても中蓋がずれることを防止することが可能となる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記した中蓋については、予め保冷容器と共に販売される形態であっても良いし、容器本体とは別に中蓋単独で販売して、汎用の保冷容器に用いる形態であっても良い。また、本発明では、保冷容器については、特定の構成に限定されるものではない。さらに、中蓋については、開口領域を覆い、その周囲が容器本体の内面に圧着して中蓋の高さ位置を任意に変更できれば、圧着手段の構成についても適宜変形することが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 保冷容器
2 容器本体
2a 内部空間
2b 開口
3 蓋体
10,20,30 中蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を具備した容器本体と、容器本体の開口を閉塞するように開閉可能に設けられた蓋体と、前記容器本体内部に設置される中蓋と、を有する保冷容器であって、
前記中蓋は、外縁に圧着手段を有しており、前記圧着手段を容器本体の内面に圧着することで、高さ方向に変位可能に固定されることを特徴とする保冷容器。
【請求項2】
前記中蓋は、空気を出入可能な袋体で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の保冷容器。
【請求項3】
前記中蓋は、合成樹脂製の枠体と、枠体内に設けられて空気を出入可能な袋体と、を有し、前記袋体は、空気を入れた際、前記枠体の外周縁に沿って枠体から露出することを特徴とする請求項1に記載の保冷容器。
【請求項4】
前記中蓋は、断熱性を有する断熱材と、断熱材の外周に空気を出入可能な袋体とを有することを特徴とする請求項1に記載の保冷容器。
【請求項5】
内容物が収容される保冷容器の容器本体の内部に設置可能な中蓋であって、
前記中蓋は、前記容器本体の内部で高さ方向に変位した際、容器本体の内面に対して圧着可能な圧着手段を有することを特徴とする保冷容器用の中蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−131546(P2012−131546A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286157(P2010−286157)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】