説明

保冷容器

【課題】地面に置かれたり、積み重ねた状態であっても、フォークリフトにより容易に持ち上げることができる保冷容器を提供する。
【解決手段】底部11と、該底部11の左右の縁部に立設された左右の側壁12,12と、前記底部11の前後の縁部に立設された前後の側壁13,13とから、上側が開口された箱状に構成された容器本体10を備え、前記開口10Aからマグロを収容可能な発泡合成樹脂でなる保冷容器であって、前記底部11の底面に、フォークリフトの複数の爪が左側又は右側から挿入可能となるよう、上方側へ凹んだ複数の溝部22,22が左右の両端部に亘って形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグロを保冷輸送する際に使用する保冷容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マグロを収容して目的地へ輸送するための保冷容器としては、上側に形成された開口からマグロを収容するための箱状の保冷容器が提案されている。この保冷容器は、断熱性と軽量化に優れている発泡合成樹脂で形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−151421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、保冷容器に重量のあるマグロを収容すると、マグロが収容された保冷容器を地面(床面)に置いたり、先に置かれた保冷容器の上に積み重ねておく。そして、マグロの収容作業が終了すると、各保冷容器を他の場所へ移動させることが行われている。
【0005】
前記のように積み重ねた保冷容器を他の場所へ移動させるには、保冷容器をフォークリフトで移動させることが考えられるが、積み重ねた保冷容器のうちの最下段の保冷容器の底部と地面との間にフォークリフトの爪を入れることができない。特に、保冷容器が発泡合成樹脂からなっているため、フォークリフトの爪を最下段の保冷容器の底部と床面との間に無理矢理入れてしまうと、保冷容器の破損を招くことがある。そのため、作業者が、最上部に位置する保冷容器から順に一個ずつ持ち上げてから、フォークリフトの爪上に積み替えなければならない。この保冷容器は、重量のあるマグロが収容されていることから、保冷容器を持ち上げる作業が非常に重労働になり、改善の余地があった。
【0006】
因みに、移動用パレットの上に、保冷容器を置く又は複数の保冷容器を積み重ねておけば、移動用パレットをフォークリフトで容易に持ち上げて移動させることが考えられるが、多数の移動用パレットを用意しなければならず、コスト面において不利になるだけでなく、保冷容器よりも大きな寸法を有する移動用パレットを置いておくスペースも多く必要になる結果、使用し難いものである。
【0007】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、地面に置かれたり、積み重ねた状態であっても、破損を招くことなく、フォークリフトにより容易に持ち上げることができる保冷容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る保冷容器は、底部と、該底部の左右の縁部に立設された左右の側壁と、前記底部の前後の縁部に立設された前後の側壁とから、上側が開口された箱状に構成された容器本体を備え、前記開口からマグロを収容可能な発泡合成樹脂でなる保冷容器であって、前記底部の底面に、フォークリフトの複数の爪が左側又は右側から挿入可能となるよう、上方側へ凹んだ複数の溝部が左右の両端部に亘って形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、底部の底面に形成された溝部に、左側又は右側のどちら側からでもフォークリフトの複数の爪を保冷容器の破損を招くことなく挿入することができる。挿入後は爪を上方へ持ち上げることによって、保冷容器を容易に持ち上げることができる。
【0010】
また、本発明に係る保冷容器においては、前記底部と前記左右の側壁とを結ぶコーナー部のそれぞれの内側に、該底部の他の部分よりも上下方向において肉厚で前後方向に延びる肉厚補強部を備えていることが好ましい。
【0011】
かかる構成によれば、底部と前記左右の側壁とを結ぶコーナー部、つまりフォークリフトの爪を挿入する左右端部のそれぞれの内側に、該底部の他の部分よりも上下方向において肉厚で前後方向に延びる肉厚補強部を備えていれば、保冷容器そのものの保形強度を高めることができるだけでなく、爪が底部を突き破るなどのトラブルを回避することができ、耐久性に優れた保冷容器とすることができる。
【0012】
また、本発明に係る保冷容器においては、前記肉厚補強部が、左右端部側ほど肉厚となるように形成されていることが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、肉厚補強部が、左右端部側ほど肉厚となるように形成されていれば、フォークリフトの爪を挿入する左右端部の強度を他の部分に比べて高めることができながらも、左右端部以外の部分での軽量化を図ることができ、強度面及び取扱面のいずれの面においても有利になる。
【0014】
また、本発明に係る保冷容器においては、前記肉厚補強部が、内側に凹んだ湾曲面を前後方向に沿って有していることが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、肉厚補強部が、内側に凹んだ湾曲面を前後方向に沿って有していれば、フォークリフトの爪を挿入する左右の端部の強度を他の部分に比べて高めることができながらも、凹んだ分だけ軽量化を更に図ることができる。
【0016】
また、本発明に係る保冷容器においては、前記溝部の左右端部のそれぞれに、端部側ほど幅広となる前後一対の案内部を備えていることが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、端部側ほど幅広となる前後一対の案内部を備えていれば、フォークリフトの爪を溝部に対して正確な左右方向の位置合わせを行わなくても、案内部の案内作用によって、溝部にフォークリフトの複数の爪を迅速に挿入することができる。
【0018】
また、本発明に係る保冷容器においては、前記各案内部が、外側に凸となる湾曲面を有していることが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、各案内部が、外側に凸となる湾曲面を有していれば、爪の溝部の挿入口の幅を大きくしながらも、それに伴い爪の溝部の挿入口を構成する幅方向両端部のそれぞれの幅方向における案内部の厚みの減少量を、案内部が偏平面を有するように構成された場合に比べて少なく抑えることができる。
【0020】
また、本発明に係る保冷容器においては、前記容器本体が、前後方向に長い長方形状に構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
以上の如く、本発明によれば、底部の底面に形成された溝部を形成することによって、地面に置かれたり、積み重ねた状態であっても、破損を招くことなく、フォークリフトの爪を溝部に確実に挿入することができるので、フォークリフトの爪により容易に持ち上げることができる保冷容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る保冷容器の容器本体であって、(a)は平面図、(b)は同図(a)におけるA−A線断面図を示す。
【図2】同実施形態に係る保冷容器の容器本体であって、(a)は底面図、(b)は図1(a)におけるB−B線断面図を示す。
【図3】同実施形態に係る保冷容器の上蓋であって、(a)は底面図、(b)は同図(a)におけるC−C線断面図を示す。
【図4】同実施形態に係る保冷容器の上蓋であって、(a)は平面図、(b)は図3(a)におけるD−D線断面図を示す。
【図5】同実施形態に係る保冷容器の容器本体の斜視図を示す。
【図6】同実施形態に係る保冷容器を上下方向に1個積み重ねた状態の側面図を示す。
【図7】本発明の他の実施形態に係る保冷容器の容器本体の肉厚補強部の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る保冷容器の一実施形態について、図1〜図6を参酌して説明する。
【0024】
保冷容器1は、図1(a),(b)、図3(a),(b)及び図6に示すように、マグロMを上端の開口10Aから収容することができる箱型状の発泡合成樹脂でなる容器本体10と、この容器本体10の開口10Aを閉じて密閉状態にするための発泡合成樹脂でなる上蓋20とから構成されている。尚、発泡合成樹脂としては、特に限定されないが、例えば発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン等の各種発泡合成樹脂が利用できる。
【0025】
容器本体10は、図1(a),(b)及び図2(a),(b)に示すように、平面視略長方形状に形成され、マグロを載置する載置面11Aを備えた底部11と、底部11の一対の長辺である左右の縁部に上方に向けて立設された左右の側壁12,12と、底部11の一対の短辺である前後の縁部から上方に向けて立設された前後の側壁13,13とを備え、これら4つの側壁12,13の上部にマグロを出し入れするための前記開口10Aが形成されて構成されている。
【0026】
このように構成された容器本体10の内部構造について説明すれば、底部11と左右の側壁12,12とを結ぶコーナー部(底部11と左右の側壁12,12の間の稜部分)のそれぞれの内側に、内側(下方)に凹んだ湾曲面を有する肉厚補強部14が前後の側壁13,13に近い前後の部分を除く所定の長さに亘って設けられている。
【0027】
肉厚補強部14は、前後方向中央部分(底部11の長辺寸法の約3/5から1/4程度の長さの部分)14aと、その中央部分14aの前後端に連設され該中央部分14aよりも短い前側部分14b及び後側部分14bとを備えている。
【0028】
図1(a),(b)、図2(b)及び図5に示すように、中央部分14aは、左右端部側ほど底部11の厚みが肉厚となる(厚くなる)ように大きな径(例えば、R60〜R200)を有する円弧面に形成され、また、前側部分14b及び後側部分14bは、左右端部側ほど底部11の厚みが肉厚で(厚く)、かつ、中央部分14aよりも薄肉になるように中央部分14aの径よりも小さい径を有し、さらに前後の側壁13,13に向かって次第に円弧の径が小さくなる先窄まりの円弧面に形成されている。
【0029】
前記のように肉厚補強部14を底部11(の内面)に備えさせることによって、底部11の内面(載置面11A)を凹面形状に形成することができるので、マグロMを収容すると、底部11の内面でマグロMの荷重が分散された状態で支持され、マグロMの荷重が底部11の特定箇所に集中することが回避される。しかも、肉厚補強部14が底部11と左右の側壁12,12とを結ぶコーナー部の内側に前後方向に延びるように形成されることで、底部11及び左右の側壁12,12の保形強度が高められ、保冷容器1を前側と後側とで後述するフォークリフトの爪で持ち上げた場合に、保冷容器1が前後方向で撓む(変形する)ことを肉厚補強部14により抑制することができる。
【0030】
また、前後の側壁13,13の内面には、マグロMの頭部又は尾部が当たる部分に、発泡合成樹脂より硬質の板材で形成した補強板15(図1(b)に2点鎖線で図示している)が着脱可能に保持されている。補強板15は、前後の側壁13,13の底部から上方の所定位置まで内方へ突出して形成された保持部16によって着脱可能に保持されている。図1(b)では保持部16の高さが、前後の側壁13,13の底部から上端までの距離の略1/4の高さになっているが、補強板15を保持できるのであれば、どのような高さであってもよい。
【0031】
保持部16は、補強板15を前後方向の内方側から規制する前後規制部16aと、補強板15を左右両側から規制する左右規制部16b,16bとを有し、この前後規制部16a及び左右規制部16b,16bにより補強板15を上下方向に抜き挿し可能なポケット状の保持溝17を形成し、この保持溝17に補強板15の下端部分を挿し込むことで、前後の側壁13,13の内面に補強板15を着脱可能に保持している。補強板15の材質、厚み及び面方向の大きさは、収容するマグロMの大きさや重量に応じて任意に選択することができる。また、補強板15の材質としては、発泡合成樹脂より強度が高い材質、例えば、段ボール、プラスチック段ボール、各種プラスチック、ベニヤ板等が挙げられる。
【0032】
また、容器本体10の底部11の底面(外面)には、フォークリフトの左右の爪R,Rが左側又は右側から挿入可能となるよう、上方側へ凹んだ一対の溝部22,22が左右の両端部に亘って形成されている。それら溝部22,22は、容器本体10の前後方向中央位置から前後に同一距離隔てた位置にそれぞれ形成されているが、容器本体10の前後方向中央位置から前後に異なる距離となる位置にそれぞれ形成してもよい。いずれの場合でも、溝部22,22間の距離が、フォークリフトの左右の爪R,R同士の間隔と同じになるように溝部22,22の位置を形成することになる。また、一対の溝部22,22の形成位置が、前記肉厚補強部14の中でも最も肉厚部分となる中央部分14aの前後端よりも前後方向中央側に位置するように設定されている。さらにまた、溝部22,22の幅は、左右両端に形成される案内部22A,22Aを除く左右方向ほぼ全域に亘って同一の幅に形成され、その幅の大きさは、前記のようにフォークリフトの左右の爪R,Rが挿入できる大きさであれば、どのような大きさに設定してもよいが、フォークリフトの左右の爪R,Rの幅よりも大きな幅を有するように設定することが爪R,Rを挿入し易く好ましい。また、溝部22,22の深さ(高さ)は、フォークリフトの爪R,Rの厚みよりも大きく設定することが爪R,Rを挿入し易く好ましい。また、左右方向のどの位置においても溝部22,22の深さ(高さ)を同一深さに設定している。
【0033】
各溝部22の左右端部のそれぞれには、端部側ほど幅広となる前後一対の案内部22A,22Aが形成されている。それら案内部22A,22Aは、外側に凸となる湾曲面を有している。
【0034】
また、底部11の底面の四隅のそれぞれには、容器本体10を左右両側から両手で保持するための切欠部30が設けられている。切欠部30は、対向する2つの角が丸くなった略正方形状に凹んだ形状になっており、左右方向及び前後方向のいずれの方向からも指が入り易くなっている。また、底部11の底面の四隅以外の部分、つまり前後方向両端部のそれぞれには、左右方向に所定間隔を置いて正方形状の2個の凹部31,31が形成され、前後方向中央部には、4個の長方形状の凹部32が前後方向において2列に整列した状態で形成されており、容器本体10の軽量化を図ることができるようにしている。
【0035】
また、底部11の前後端部における左右端のそれぞれに、容器本体10に入れられた氷の融解水を外部に排出するための排出孔33が形成されている。この排出孔33は、底部11から一方の側壁12を貫通するように形成された貫通孔33Aと、貫通孔33Aに連通され一方の側壁12の下方に位置する底部11から下方(外部)へ排出するために該底部11に形成された外部排出用の孔33Bとを備えている。このように排出孔33を形成することによって、氷を入れて輸送する陸送用において融解水を容器外部へ排出することで、融解水にマグロが浸かって鮮度低下となることを回避することができて好ましいが、空輸用に用いる場合には、外部に融解水が排出されることがないようにしなければならないため、排出孔33が無い容器本体10に構成することになる。尚、排出孔33の形成位置は、具体的には、前側部分14b,14bの前端から前側の所定範囲及び後側部分14bの後端から後側の所定範囲にそれぞれ設定されているが、他の位置であってもよい。
【0036】
また、左右の側壁12,12及び前後の側壁13,13の上端面、即ち、容器本体10の上端面には、内縁全周に亘って上向きに突出する嵌合用凸条18が設けられている。
【0037】
一方、上蓋20は、図3(a),(b)及び図4(a),(b)に示すように、底面(下面、図3(b)では紙面の上側が上蓋20の下面になっている)が開口した箱状に形成されており、下端面の外縁全周に亘って下向きに突出する嵌合用凸条21が設けられ、この嵌合用凸条21を容器本体10の嵌合用凸条18の外側に嵌合することによって、上蓋20と容器本体10とが固定される。尚、前記凸条18,21が省略された(嵌合構造の無い)容器本体10及び上蓋20であってもよい。
【0038】
また、上蓋20を構成する前後の側壁20a,20aの下部には、指を入れることができるように前後方向内側に凹んだ凹部20Aが形成され、容器本体10に対して嵌合により固定されている上蓋20の前後の凹部20A,20Aに指を入れて上方に上蓋20を持ち上げることで、上蓋20を容易に容器本体10から取り外すことができる。
【0039】
また、上蓋20の上面には、底部11の底面のうちの外周縁を除いた内側部分が下方に突出した突出部34が内嵌する凹部20B(図3(b)参照)が形成されており、保冷容器1を上下方向に積み重ねたときに、下側の保冷容器1の上蓋20の凹部20Bに、上側の保冷容器1の底部11の突出部34が内嵌することによって、上側の保冷容器1が下側の保冷容器1に対して前後方向及び左右方向のいずれの方向にも位置ずれすることがないようにしている。突出部34は、2つの溝部22,22を挟んで前後方向に形成された3つの突出部34A,34B,34Cからなり、それら突出部のうちの前側の突出部34Aに前記2個の凹部31,31が形成され、中央の突出部34Bに前記4個の凹部32が形成され、後側の突出部34Cに前記2個の凹部31,31が形成されている。このように厚みが厚くなった突出部34A,34B,34Cに凹部31,32を形成することによって、容器本体10の保形強度が極端に低下することがなく、軽量化を図ることができるようになっている。
【0040】
上述のように構成された保冷容器1は、図1(a),(b)に示すように、容器本体10内にマグロMをまるごと収容するとともに、その上から保冷剤や氷(図示せず)などを詰め、容器本体10が上蓋20で密閉した状態にされ、その密閉状態で地面に置いたり、図6に示すように先に置かれた保冷容器1の上に積み重ねておく(図6では1個の保冷容器1を積み重ねて合計2個の保冷容器1としているが、2個以上積み重ねて3個以上の保冷容器1としてもよい)。マグロMの収容作業が終了すると、保冷容器1を他の場所へ移動させることになる。このとき、フォークリフトを利用して保冷容器1を他の場所へ移動させることができるようになっている。つまり、図6に示すように、フォークリフトの一対の爪R,Rを最下段に位置する容器本体10に形成された溝部22,22に左側(又は右側)から挿入することによって、爪R,Rが地面(床面)Fと容器本体10との間に位置させることができる。溝部22,22への爪R,Rの挿入時には、溝部22,22に対して爪R,Rを精度良く位置合わせしておかなくても、溝部22,22の幅広な一対の案内部22A,22Aに爪R,Rが当たって爪R,Rを溝部22,22へ案内することができ、爪R,Rを溝部22,22に迅速に挿入することができる。しかも、案内部22A,22Aが、外側に凸となる湾曲面を有していることから、例えば偏平面で案内部22A,22Aを構成している場合に比べて、案内部22A,22Aを外側に突出させている分、溝部22,22の幅方向における案内部22A,22Aの厚みの減少量を少なく抑えることができ、爪R,Rの溝部22,22の挿入口における強度低下を可及的に抑制することができる利点があるが、案内部22A,22Aを前記凸の湾曲面の無い偏平面で構成してもよい。この場合、溝部22,22は、左右両端のそれぞれに前後一対の角部を有し、かつ、左右方向に同一幅を有する溝に構成されている。ここでは、最下段に位置する容器本体10の溝部22,22に、フォークリフトの一対の爪R,Rを挿入しているが、2段目に位置する容器本体10の溝部22,22に、フォークリフトの一対の爪R,Rを挿入してもよい。この場合、最下段の保冷容器1の上蓋20の凹部20Bに、2段目の保冷容器1の突出部34A,34B,34Cが内嵌されていることから、2段目の容器本体10の案内部22A,22Aの深さ(高さ)が突出部34の高さ(上下方向の厚み)を差し引いた深さになるため、突出部34A,34B,34Cの高さを差し引いた状態で爪R,Rの厚みに対する案内部22A,22Aの深さを設定することになる。図6では、先に置かれた保冷容器1の上蓋20の上に、次の保冷容器1の容器本体10の底部11を載置したが、上蓋20を省略して先に置かれた保冷容器1の容器本体10の上に、次の保冷容器1の容器本体10の底部11を載置していき、最上段に位置する保冷容器1の容器本体10に上蓋20をする構成であってもよい。
【0041】
また、溝部22,22への爪R,Rの挿入時において、一対の案内部22A,22Aに爪R,Rを勢い良く当接させた場合でも、肉厚補強部14のうちの最も肉厚部分である中央部分14aにより容器本体10の保形強度が高められていることから、爪R,Rが容器本体10の底部11を突き破るなどのトラブルを回避することができる。特に、重量のあるマグロを収容した保冷容器1は更に重量が重くなるため、保冷容器1の軽量化を図ることが要望されている。しかしながら、容器本体10に溝部22,22を形成すると、その溝部22,22における底部11の肉厚が底部11の他の部分に比べて薄くなり、保形強度が低下する。そこで、軽量化を図りながらも、爪R,Rを挿入する溝部22,22の入口部分となる左右端部の補強を肉厚補強部14の中央部分14aで行うことによって、破損することのない耐久性に優れた保冷容器1を提供することができる。また、肉厚補強部14が、左右端部側ほど肉厚になっていることから、容器本体10の軽量化を更に図りつつ、爪R,Rを挿入する溝部22,22の入口部分となる左右端部の補強を行うことができる。しかも、肉厚補強部14が内側に凹んだ湾曲面に形成していることから、凹んだ分だけ軽量化を更に図ることができる。
【0042】
溝部22,22への爪R,Rの挿入が完了した後は、爪R,Rを上昇させることによって、2個の保冷容器1を持ち上げることができる。持ち上げた後は、フォークリフトを走行させて所定の位置まで移動させてから、爪R,Rを下降させることによって、2個の保冷容器1の所定位置への移動が完了する。
【0043】
前記移動後は、前述のようにフォークリフトを用いて例えばトラック等に保冷容器1を積み込んで消費地まで輸送されるようになっている。この保冷容器1では、輸送中に保冷容器1内のマグロMが前後方向に移動した場合、マグロMの鋭利な頭部又は尾部が、容器本体10の前後の側壁13,13の内面に設けられた補強板15,15に当たることとなり、マグロMの鋭利な頭部又は尾部が前後の側壁13,13に直接当たることはない。このため、前後の側壁13,13において亀裂が発生する等の不具合がなく、前後の側壁13,13の破損が防止されて保冷容器1の信頼性の向上が図れる。
【0044】
また、保冷容器1は、補強板15を容器本体10の保持部16に着脱可能に保持させているので、容器本体10の構造を簡単にして当該容器本体10の製造が容易に行えるとともに、輸送後においていつでも簡単に容器本体10から補強板15を取外すことができて補強板15の分離回収が簡単であり、洗浄作業や廃棄処分が容易に行える。
【0045】
更に、保冷容器1は、補強板15を容器本体10の保持部16に形成した保持溝17に挿し込んで保持させているので、補強板15の容器本体10への取付けを容易に行うことができるとともに、輸送時等に補強板15が前後方向及び左右方向に位置ずれする虞がない。
【0046】
また、前述したように容器本体10に一対の溝部22,22が形成されていることから、容器本体10の底面がフラットではない。このため、ローラコンベアなどを用いて容器本体10を搬送する場合に、容器本体10をスムーズに搬送することができない。これを解消するために、例えば一対の溝部22,22を埋めて容器本体10の底面(下面)をフラットにする溝部埋設用部材を設けて実施することもできる。
【0047】
尚、本発明に係る保冷容器は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0048】
例えば、実施形態で示した肉厚補強部14の形状を、図7に示す形状に構成してもよい。つまり、図7では、左右の側壁12と、底部11とを平面で結んだ平坦な傾斜面14cに形成しており、肉厚補強部14の形状は、図に示される形状以外の形状であってもよい。
【0049】
前記実施形態では、底部11の底面に、2個の溝部22,22が形成された容器本体10を示したが、フォークリフトの爪が3本以上ある場合には、その爪の本数に合わせて溝部を形成することになる。
【0050】
また、前記実施形態では、一対の溝部22,22の形成位置を、肉厚補強部14の中でも最も肉厚部分となる中央部分14aの前後端よりも中央側に位置するように設定したが、図1で示した中央部分14aを短くし、一対の溝部22,22が前側部分14b及び後側部分14bに位置するように一対の溝部22,22の形成位置を設定してもよい。また、肉厚補強部14が、厚みが前後方向において2段階で異なるように厚みの厚い中央部分14aとこれよりも厚みの薄い前側部分14b及び後側部分14bとから構成されているが、厚みが前後方向において3段階以上で異なるように構成されてもよいし、同一厚みに構成してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…保冷容器、10…容器本体、10A…開口、11…底部、11A…載置面、12,13…側壁、14…肉厚補強部、14a…中央部分、14b…前側部分(後側部分)、14c…傾斜面、15…補強板、16…保持部、16a…前後規制部、16b…左右規制部、17…保持溝、18…嵌合用凸条、20…上蓋、20A,20B…凹部、21…嵌合用凸条、22…溝部、22A,22A…案内部、30…切欠部、31,32…凹部、33…排出孔、33A…貫通孔、33B…孔、34…突出部、34A,34B,34C…突出部、M…マグロ、R,R…爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、該底部の左右の縁部に立設された左右の側壁と、前記底部の前後の縁部に立設された前後の側壁とから、上側が開口された箱状に構成された容器本体を備え、前記開口からマグロを収容可能な発泡合成樹脂でなる保冷容器であって、
前記底部の底面に、フォークリフトの複数の爪が左側又は右側から挿入可能となるよう、上方側へ凹んだ複数の溝部が左右の両端部に亘って形成されていることを特徴とする保冷容器。
【請求項2】
前記底部と前記左右の側壁とを結ぶコーナー部のそれぞれの内側に、該底部の他の部分よりも上下方向において肉厚で前後方向に延びる肉厚補強部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の保冷容器。
【請求項3】
前記肉厚補強部は、左右端部側ほど肉厚となるように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の保冷容器。
【請求項4】
前記肉厚補強部は、内側に凹んだ湾曲面を前後方向に沿って有していることを特徴とする請求項3に記載の保冷容器。
【請求項5】
前記溝部の左右端部のそれぞれには、端部側ほど幅広となる前後一対の案内部を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の保冷容器。
【請求項6】
前記各案内部が、外側に凸となる湾曲面を有していることを特徴とする請求項5に記載の保冷容器。
【請求項7】
前記容器本体が、前後方向に長い長方形状に構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の保冷容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−91810(P2012−91810A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239678(P2010−239678)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】