説明

保存用押し寿司

【課題】長期保存可能の保存用押し寿司を提供する。
【解決手段】米100重量部に対して0.29重量部以上0.32重量部以下のゼラチンを添加すると共に、0.39重量部以上0.54重量部以下の蜂蜜を添加した炊飯米を用いて押し寿司を形成し、合成樹脂フィルムで包んだ後に、水密性及び気密性を有する袋体に脱気密封し、これを冷凍する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍条件下で長期保存可能な保存用押し寿司に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、握り寿司は多くの場合において、寿司店等で寿司職人が調製した寿司をその場で食するか、または、容器に詰めて持ち帰り、店外で食するようにしていた。
【0003】
一方で、握り寿司は嗜好性の強さから、時間や場所を選ばずに好みの状態において食することができるよう保存方法が検討されており、保存手段の一つとして冷凍保存方法がある。
【0004】
しかし、握り寿司は冷凍保存法による長期保存を行うと、炊飯米(以後シャリともいう)が乾燥してスポンジ状となるので、解凍して食しても寿司本来の味とネタの新鮮さを味わうことができなかった。
【0005】
そこで、シャリの炊飯時にゼラチンとオリゴ糖とを添加することで、解凍しても十分に水分を含んだシャリとして食することのできる冷凍握り寿司の製造方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−316499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の冷凍握り寿司に係る上記方法を押し寿司に転用した場合、食する上で不具合が生じていた。
【0007】
すなわち、押し寿司は炊飯米と具材を詰めた型枠の中で押圧して成型するので、米粒同士が圧縮されて粘着し、べたついた食感のシャリとなってしまうのである。
【0008】
さらに、凍結障害防止のために添加したオリゴ糖が、起伏のない単調な甘みを炊飯米に付加することで、米粒本来の切れの良い甘みが平坦化してしまい、押し寿司全体の味のバランスを乱す恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1記載の本発明では、炊飯した炊飯米を押し型にネタと共に収納し、押し型内で押圧して押し寿司形状の押し寿司本体を形成し、押し型から押し寿司本体を抜去し、包装シートで包被した状態で冷凍したことを特徴とすることとした。
【0010】
また、請求項2記載の本発明では、前記炊飯米は、米100重量部に対し、水を120重量部以上125重量部以下と、ゼラチンを0.29重量部以上0.32重量部以下とを添加して炊飯したことを特徴とすることとした。
【0011】
また、請求項3記載の本発明では、前記炊飯米は、更に米100重量部に対し、0.39重量部以上0.54重量部以下の蜂蜜を添加したことを特徴とすることとした。
【0012】
また、請求項4記載の本発明では、前記押し寿司本体は、90℃以上105℃以下で2分間以上5分間以下の加熱を施していることを特徴とすることとした。
【0013】
また、請求項5記載の本発明では、前記押し寿司本体は、合成樹脂フィルムでラップ包装したことを特徴とすることとした。
【0014】
さらに、請求項6記載の本発明では、前記押し寿司本体を包被した包装シートの開口から脱気し、次いで前記開口を密封したことにも特徴を有する。
【発明の効果】
【0015】
(1)請求項1記載の本発明では、炊飯した炊飯米を押し型にネタと共に収納し、押し型内で押圧して押し寿司形状の押し寿司本体を形成し、押し型から押し寿司本体を抜去し、包装シートで包被した状態で冷凍したことで、冷凍保存時に炊飯米から水分が蒸散するのを防止することができる。これによって、解凍しても潤いのある押し寿司とすることができる。一方、包装シートが押し寿司本体と外界とを遮断するので、保存中や輸送中において、虫や埃などの汚染媒介物質の付着を防止することができる。
【0016】
(2)また、請求項2記載の本発明では、炊飯米は、米100重量部に対し、水を120重量部以上125重量部以下と、ゼラチンを0.29重量部以上0.32重量部以下とを添加して炊飯したことで、冷凍保存中において、炊飯米からの水分蒸散を防止できると共に、押し型内での押圧によって米粒同士が粘着することなく、シャリのべたついた食感を防ぐことができる。
【0017】
(3)また、請求項3記載の本発明では、炊飯米は、米100重量部に対し、0.39重量部以上0.54重量部以下の蜂蜜を添加したことで、炊飯米の旨味にコクを付与することができると共に、蜂蜜が含んでいるアミラーゼの効果で、炊飯米表面にできるα化デンプンの皮膜を消化して皮膜をなくすことができて、更に食感のべたつきを抑制することができる。さらに、蜂蜜はこくがあり、厚みのある甘みを有するので、炊飯米本来甘みを阻害することなく、味を引き立たせることができる。
【0018】
(4)また、請求項4記載の本発明では、押し寿司本体は、90℃以上105℃以下で2分間以上5分間以下の加熱を施していることで、冷凍保存条件下で所定期間微生物の増殖を抑えることができるので、保存性を向上することができる。また、過剰な加熱を防いで、熱による味や香りの変化を抑えることができる。
【0019】
(5)また、請求項5記載の本発明では、押し寿司本体は、合成樹脂フィルムでラップ包装したことで、例えば包装シートで包被した押し寿司本体に加熱する際に、包装シートが膨張して押し寿司本体との間に空間が生じても、合成樹脂フィルムによってネタと炊飯米とが離隔することが防止され、加熱時の型くずれを防ぐことができる。
【0020】
(6)さらに、請求項6記載の本発明では、包装シートで包被した押し寿司本体は、包装シート内を脱気し、密封していることで、包装シート内を空気が欠乏している状態にして、好気性微生物の繁殖を抑制することができる。また、包装シート内の酸素を除去することで、酸素と油分が連鎖的に反応する自動酸化を抑制して、押し寿司本体が保存期間中に変敗することを可及的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、成型した押し寿司である成型体を、包装シートで包被することで、水分の蒸散を抑えて、凍結保存後に解凍しても潤いのある炊飯米を喫食できるようにしたものである。また、包装シートが押し寿司を覆っていることで、凍結保存時における冷凍庫内の冷気が直接成型体にあたることで生じる、いわゆる凍結障害を防止することができる。
【0022】
さらに、炊飯米は米100重量部に対し、120重量部以上、125重量部以下の水と、0.29重量部以上、0.32重量部以下のゼラチンとを添加することで炊飯した炊飯米を成型して形成することを特徴とするものである。
【0023】
水は精白米に対して120重量部を下回ると炊飯米に芯が残り、125重量部を超えると成型時の押圧によって炊飯米同士が粘着しやすくなり、舌に炊飯米の粘着質の残存感があることから、食感上好ましくない。
【0024】
また、ゼラチンは米に対して0.29重量部を下回ると、炊飯米に含まれる水分の蒸散を効果的に防止することが困難となり、0.32重量部を超えると、加熱によって溶解したゼラチンが形成する炊飯米の表面の皮膜が厚さを増すことで、通常の押し寿司の米粒が持つコシのある食感が感じられず、ゼラチンゲルの食感を感じやすくなると共に、粘着性が増すことから、押圧して成型する押し寿司のシャリとしては違和感を感じるようになる。
【0025】
また、炊飯時に0.39重量部以上、0.54重量部以下の蜂蜜を添加することで、糖分が水分を蒸発しにくくして凍結保存時の冷凍焼けを防止すると共に、蜂蜜に含まれるアミラーゼの作用によってデンプンを消化し、柔らかな炊き上がりを可能としている。さらに、炊飯米表面に形成したα化デンプンの皮膜をアミラーゼが分解することによって、粘着性が減少してさらに食感を改善することができる。
【0026】
併せて、押し寿司本体は、90℃以上105℃以下で2分間以上5分間以下の加熱を施すことで、長期冷凍保存条件下での微生物による変敗を防止することができる。
【0027】
本加熱は、90℃未満であると冷凍条件下における長期間保存での良好な微生物抑制が期待できず、加熱温度が105℃を超えると、ネタなどの具材の風味が変化を起こしたり、いわゆるレトルト臭を生じたりするので、好ましくない。
【0028】
さらに、本加熱は、2分間未満では冷凍条件下における長期間保存での良好な微生物抑制が期待できず、加熱時間が5分間を超えると、ネタなどの具材の風味が変化を起こすので、好ましくない。
【0029】
押し寿司本体は、合成樹脂フィルムでラップ包装することにより、包装シートで包被した押し寿司本体を加熱する際に、炊飯米からネタが外れやすい押し寿司であっても、合成樹脂フィルムがネタと炊飯米を一体的に保持することによって、加熱時の型くずれを確実に防止することができる。
【0030】
さらに、包装シートで包被した押し寿司本体は、包装シート内の空気をバキュームシーラーのごとき脱気密封装置で脱気し、密封していることで、生育に酸素を要求する好気性微生物の繁殖を防ぐことができて、押し寿司本体が腐敗することを防止できる。
【0031】
また、包装シート内に残存した酸素によって押し寿司本体に含まれる具材の脂質が袋体内の酸素と反応することで生じる酸化を可及的に防止することができる。
【0032】
これらの本発明を実施した保存用押し寿司は、押し型内で押圧した炊飯米に凍結、解凍を施しても、押し寿司本来の食感を楽しむことができる。
【0033】
すなわち、押し寿司は押し型内で押圧することによって、炊飯米を押し潰すこととなり、更に潰れたまま凍結することとなるが、米粒を被覆するゼラチン薄膜に保持されたまま凍結した水分が、解凍によって潰れた炊飯米に浸透する。従って、炊飯米は浸透した水分を吸収して膨潤し、米本来の潤いと弾力性を回復し、優れた食感を保つことができて、押し寿司本来の食感を楽しむことができる。
【0034】
さらに、炊飯米表面には炊飯によってα化したデンプンの皮膜を形成するが、炊飯時に添加した蜂蜜がデンプン皮膜を分解するので、ゼラチンはデンプンが皮膜を形成していない米粒表面に薄膜を形成することができる。従って、解凍によって移行可能となったゼラチンの水分が、α化したデンプン皮膜によって阻害されることなく米粒内に浸透することができて、よりゼラチンの効果を引き出すことができる。
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0036】
図1は本発明の保存用押し寿司の製造工程をステップS1からステップS15に従って示したフローチャートである。
【0037】
まず、ステップS1では、米を所定の分量計量し、適宜水を加えて洗米を行う。洗米は手作業で行っても良いが、効率的に作業するには洗米機を使用して洗米することもできる。また、洗米は洗米汁(水を添加した洗米において得られる白濁した水)が透明になる程度まで繰り返すことで、炊飯米から糠臭を除くことができる。
【0038】
次に、ステップ2では、前述したように洗浄した米を炊飯釜に入れ、炊飯によって米を膨潤させるための水を添加する。加水量は、米計量時の重量を100重量部とした場合に対し、120重量部以上、125重量部以下の範囲内で加水する。加水量が120重量部未満では米が十分に膨潤されず炊飯米の米粒内に芯が残り、加水量が125重量部を超えると米が過剰に膨潤することで、炊飯米にべたつきが見られ、押し寿司のシャリの食感として好ましくない。
【0039】
ステップS3では、炊飯釜に、米計量時の重量を100重量部とした場合に対し、粉状のゼラチンを0.29重量部以上、0.32重量部以下の範囲内で添加する。ゼラチンの添加量は0.29重量部未満では、凍結保存時における酢飯の水分蒸発を有効に抑制することができず、0.32重量部を超えると炊飯米の米粒表面に形成されるゼラチン皮膜の厚みが大きくなることで、押し寿司の酢飯の食感として違和感が感じられる。
【0040】
また、後述するステップS5での水ひたし前に、米に対してゼラチンを添加することで、ゼラチンが水分を吸収し、炊飯時によりゼラチンを溶解しやすくすることができる。
【0041】
次に、ステップS4では、米計量時の重量を100重量部とした場合に対し、0.39重量部以上、0.54重量部以下の蜂蜜を添加する。この蜂蜜は凍結保存時の白蝋化など、いわゆる冷凍障害を防止すると共に、蜂蜜に含まれるアミラーゼの作用によって米粒内のデンプンを消化することで甘味を引き出し、さらに、ふっくらとした炊き上がりを可能とするものである。しかも、蜂蜜はコクのある複雑な甘みを有することから、米に添加して炊飯することで、炊き上がりの炊飯米の味に深みが出て、米本来の甘みを引き立たせることができる。
【0042】
本ステップもまた、後述するステップS5での水ひたし前に、米に対して蜂蜜を添加することで、蜂蜜に含まれるアミラーゼが米のデンプンを消化して、ふっくらした炊き上がりを可能とすると共に、蜂蜜自体を炊飯釜内に拡散しやすくすることができる。
【0043】
ステップS5では、炊飯釜内で、このように加水した米を静置して水ひたしを行う。水ひたしは20〜40分間で行う。20分未満では米粒内に水分が十分浸透せず、40分を超えると過剰に水分が浸透することで、炊飯米の食感にべたつきを生じさせることとなる。また、本水ひたしのステップは、ゼラチンを膨潤させると共に、蜂蜜中に含まれるアミラーゼを作用させるための工程としても機能する。
【0044】
なお、米は使用する時期や気温、湿度によって、米粒内の水分含量が変化するものであるから、食感を調整するために加水(ステップS2)の水量や、水ひたし(ステップS5)の水ひたし時間を調整することができる。例えば、水分が少ない米を炊飯する場合は、加水量を増やしたり、水ひたし時間を延長することで、米をふっくらと炊きあげることができ、水分が多い米を炊飯する場合は、加水量を減じたり、水ひたし時間を短縮することで、米が吸収する水分を減らしてべたつきを抑えることができる。
【0045】
次に、ステップS6では米、水、ゼラチン、蜂蜜を入れた炊飯釜を熱源上に静置することで炊飯を行う。炊飯は、電気炊飯器を用いることもできるが、ガス炊飯器を用いることが望ましい。これは、一般に電気炊飯器よりもガス炊飯器の方が熱の伝わりが良く、米粒のべたつきが防止できるためである。
【0046】
ステップS7では、炊飯を終えた炊飯米に対して合わせ酢を添加し、酢飯を調製する。合わせ酢の配合は各地方などの嗜好に合わせることができるが、米計量時の重量を100重量部とした場合に対して24重量部以上29重量部以下の範囲であることが官能的に望ましい。24重量部未満であると押し寿司の酢飯として良好な官能が得られず、29重量部を超えると、合わせ酢が炊飯米に対して水分を過剰に供給することとなるため、凍結時において酢飯に霜が発生するなどして良好な保存状態を保つことができない。
【0047】
ステップS8では、酢飯の放熱を行う。酢飯の放熱は、酢飯に送風し、同時に酢飯全体に風が行渡るように切返しを行うことが望ましい。
【0048】
炊飯後の酢飯が、室温±10℃の範囲内に到達することで、押し寿司に適した酢飯とすることができる。
【0049】
一方、ステップS9では、押し寿司のネタとなる具材を加熱処理する。特に加熱処理においては、具材を焼く、炙るなどすることで、具材表面に付着している微生物を可及的に殺菌し、初発菌数を少なく抑えることによって、具材の微生物汚染を長期保存期間にわたって防止することができる。
【0050】
また、押し寿司を官能的及び食感的に良好とするために香味具材を加えることができる。たとえば、香味具材はあらかじめ味付けや加熱などの処理を施して、酢飯と具材の間に挟み込んだり、酢飯に混ぜる等することができる。
【0051】
次に、ステップS10では、押し寿司を成型するために、具材、香味具材、酢飯等を型に入れ、板材を介して押圧することで、いわゆる押し寿司の形に成型し、型から抜去することで押し寿司本体を成型する。
【0052】
成型は合成樹脂製の枠のごとき押し型を用いてもよく、既存の押し寿司成型機のようなものを用いることで効率的に押し寿司を調製するようにしても良い。
【0053】
次に、ステップS11では、型抜きすることで押し寿司形に成型した押し寿司本体の全表面を、合成樹脂フィルムで密封するように包みこむ。
【0054】
さらに、ステップS12では、合成樹脂フィルムで包んだ押し寿司本体を、包装シートで包被する。包装シートで包被することによって、冷凍保存中の水分蒸散を防止することができて、押し寿司を食するまでの間、潤いを保つことができる。また、包装シートは氷点下の冷気が押し寿司に直接当たるのを防ぐことで、冷凍焼けなどの凍結障害を防止することができる。
【0055】
次に、ステップS13では、バキュームシーラーなどの脱気密封可能な装置にて処理することで、包装シートが押し寿司本体を包む合成樹脂フィルムに大気圧で密着した、いわゆる真空パック状の凍結保存体を形成する。
【0056】
ステップS14では、凍結保存体に対し、加熱することで殺菌を行う。本ステップでは、かならずしも完全な凍結保存体の殺菌(いわゆる滅菌)を目的としておらず、食した際の官能面を重視して、90℃以上105℃以下程度で3分間以上5分間以下の殺菌とする。
【0057】
ステップ15では、放置冷却で室温に近い温度とした後に、冷凍処理を施す。本ステップは、いわゆる粗熱を除去することが目的であるため、放置冷却に限らず、水や氷冷水に浸漬することで放熱しても良く、冷蔵条件下や冷凍条件下に凍結保存体を置くことで放熱しても良い。そして、凍結保存体を冷凍する。冷凍処理は、エアブラストによる方法や液体窒素による方法など公知の方法で行うことができるが、マイナス30℃以下の条件下で冷凍処理を行うことが好ましい。マイナス30℃を上回ると凍結が緩慢となり、氷結晶が生成して、食感に悪影響を及ぼす。
【0058】
上記に示したステップ1〜ステップ15に従うことによって、長期凍結保存期間中においても、酢飯からの水分の蒸散を防ぐと共に、長期保存の後に解凍しても押し寿司本来の良好な風味と食感とを保持した保存用押し寿司を調製することができる。
【0059】
次に図1に示すフローに従って保存用押し寿司を調製した実施例を示す。
【0060】
(実施例)
あらかじめ精白した精白米4.5kgを水道水にて洗米し、炊飯釜内に洗浄後の精白米と、5500mLの水と、13.75gの粉状ゼラチンと、21gの蜂蜜とを入れて、30分間静置する。30分間経過後、ガス炊飯釜にて炊飯して炊飯米を得て、この炊飯米に1200mLの合わせ酢を加えて混合することで酢飯とし、この酢飯を室温に冷却する。
【0061】
一方、具材13としてのサバ半身をあらかじめ焼き上げ、さらに、香味具材14としてのショウガについても、醤油、みりん、砂糖などを加えた調味液で煮るなどして、あらかじめ下ごしらえをしておく。
【0062】
次に、図2に示すように、具材13(焼きサバ)、香味具材14(ショウガ)、酢飯15、板材16の順に押し寿司の押し型11の収納凹部18に収納し、押し蓋12を押し型11の収納凹部18に嵌合して押圧する。
【0063】
押し蓋12にかけた圧力を解放し、収納凹部18に嵌合した押し蓋12を取外す。さらに、収納凹部に収納して押圧した具材13、香味具材14、酢飯15、板材16を押し型11から抜去して押し寿司本体17を成型する(図3)。なお、図3は説明の便宜のために、具材13(焼きサバ)を宙に浮かした状態で示しているが、実際は香味具材14を介して酢飯15に載置して、押し寿司本体17を形成している。
【0064】
次に、合成樹脂製フィルム22で押し寿司本体17を包被してラップ済み押し寿司19を形成し(図4)、さらにラップ済み押し寿司19を包装シート20で包被する。ここで、包装シート20は、好ましくは水密性及び気密性を有しているシートであって、さらに好ましくは、耐熱性及び耐冷性を備え持つシートが良い。
【0065】
包装シート20で包被したラップ済み押し寿司19を、包装シート20の開口部23から内部の空気を吸引しつつ密閉することで、いわゆる真空パック状態とした凍結保存体21を形成する(図5)。
【0066】
また、図6は図5に示した凍結保存体21をI−Iで切断した状態における、凍結保存体
21の断面図である。押し寿司本体17は、形状を安定させるための板材16の上に、酢飯15を載置し、酢飯15の上部には香味具材14を介して具材13を載置している。また、押し寿司本体17は、合成樹脂フィルム22で包被してラップ済み押し寿司19を形成し、さらにラップ済み押し寿司19を包装シート20で包被することにより、凍結保存体21を形成している。
【0067】
本凍結保存体21を沸騰水中に3分間浸漬して、水切りし、-40℃条件下に置くことで、冷却と凍結を連続的に行って、保存用押し寿司とする。
【0068】
次に、実施例で調製した保存用押し寿司について、蜂蜜を添加しないもの(以下蜂蜜無添加押し寿司という)と蜂蜜以外の甘味料としてシロップを添加したもの(以下シロップ添加押し寿司という)との比較試験を行った例を示す。
【0069】
(比較試験1)実施例で示した方法で調製した本発明に係る保存用押し寿司と、蜂蜜のみを添加しない以外は実施例で示した方法と同じ方法で調製した蜂蜜無添加押し寿司とを用い、解凍後の官能評価を行った。
【0070】
その結果、蜂蜜無添加押し寿司は本発明に係る保存用押し寿司に比して、酢飯15の米粒表面に滑らかさがなく、べたつきが見られた。
【0071】
これは、本発明に係る保存用押し寿司は、蜂蜜が含んでいるアミラーゼが炊飯時に米粒表面のα化デンプンの皮膜を消化することで、米粒表面に滑らかさを付与しているためであると思われる。
【0072】
(比較試験2)実施例で示した方法で調製した本発明に係る保存用押し寿司と、蜂蜜をシロップに代えて調製したシロップ添加押し寿司とについて、解凍した後の官能評価を行った。
【0073】
その結果、シロップ添加押し寿司は、本発明に係る保存用押し寿司に比して米にまろやかさがなく、平坦な甘味が感じられることから、違和感のある口当たりであった。
【0074】
これは、保存用押し寿司は蜂蜜を使用することによって、米本来の甘みを阻害せずに、むしろ引き立たせることで官能的に立体感を出し、押し寿司本来の旨味を助長すると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】押し寿司を製造する工程を示すフロー図である。
【図2】押し型に収納した食材を模式的に示した説明図である。
【図3】押し寿司から具材を剥がした状態を示す説明図である。
【図4】押し寿司本体の包装状態を示す説明図である。
【図5】凍結保存体を示す説明図である。
【図6】I−Iで切断した凍結保存体を示す断面図である。
【符号の説明】
【0076】
11 押し型
12 押し蓋
13 具材
17 押し寿司本体
20 包装シート
22 合成樹脂フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯した炊飯米を押し型にネタと共に収納し、押し型内で押圧して押し寿司形状の押し寿司本体を形成し、押し型から押し寿司本体を抜去し、包装シートで包被した状態で冷凍したことを特徴とする保存用押し寿司。
【請求項2】
前記炊飯米は、米100重量部に対し、水を120重量部以上125重量部以下と、ゼラチンを0.29重量部以上0.32重量部以下とを添加して炊飯したことを特徴とする請求項1記載の保存用押し寿司。
【請求項3】
前記炊飯米は、更に米100重量部に対し、0.39重量部以上0.54重量部以下の蜂蜜を添加したことを特徴とする請求項2記載の保存用押し寿司。
【請求項4】
前記押し寿司本体は、90℃以上105℃以下で2分間以上5分間以下の加熱を施していることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の保存用押し寿司。
【請求項5】
前記押し寿司本体は、合成樹脂フィルムでラップ包装したことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の保存用押し寿司。
【請求項6】
前記押し寿司本体を包被した包装シートの開口から脱気し、次いで前記開口を密封したことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の保存用押し寿司。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−238702(P2006−238702A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−54218(P2005−54218)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(504214914)有限会社ハマシンフーズ (1)
【Fターム(参考)】