説明

保守管理システム

【課題】通信回線を介して状態情報を取得不可な保守対象装置に対しても通信回線を介して状態情報を取得可能な保守対象装置と同様な保守管理システムを適用し、両者の運用の相違を極小化して、ユーザにとっては装置の運転停止時間の低減、保守担当会社にとっては業務効率の向上を図れる保守管理システムを提供する。
【解決手段】部品情報を記憶した部品情報記憶手段31を備えた保守部品30を、当該保守部品が用いられる保守対象装置10に容器検出のための情報を出力する接続情報出力手段502を備えた部品格納容器50に格納し、保守対象装置10に設けた部品情報取得手段13で部品情報記憶手段31からの部品情報を取得する保守管理システム1において、部品格納容器に保守支援情報を記憶した書換え可能な保守情報記憶手段51を設け、保守情報記憶手段51に記憶された保守支援情報を保守対象装置側で保守情報取得手段を用いて取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保守部品を備えた保守対象装置の保守管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
保守部品を備えた保守対象装置の1つとして、複写機、プリンタ、ファクシミリやこれらの複数の機能を備えた複合機等の、電子写真方式を利用した画像形成装置は広く普及している。これら画像形成装置では、カラー化が進んできており、その構造や動作が複雑化しており、安定な動作を維持するために、定期的に保守点検を行うことが一般的に行われている。保守点検は、通紙枚数などの使用量に応じた保守部品となる消耗品の補給や交換以外に、使用モードや用紙特性、環境条件などに依存する早期劣化といった通常予期せぬ故障が少なくない。
【0003】
このような場合、異常を発見した装置使用者(以下「ユーザ」と記す)からの通知により、故障発生後に保守を行う事後保全となる。特に画像上の異常の場合、故障モードに対する要因は複数あることが多く、ユーザから通知を受けた時点では即座に原因部品を特定できないことがある。画像形成装置では、感光体、現像ユニット、定着ローラなどの大きくて嵩張る部品やユニットが多い。またカラー画像形成装置ではイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色数分の交換ユニットを必要とする場合もある。このため、保守要員は全ての部品やユニットを携行してユーザを訪問する必要があるが、現実には難しく、例えできたとしても不用在庫を抱えることになり経済的に無駄が多い。
【0004】
そこで、現実的には、ユーザからの通知後に行う最初の訪問では、故障した装置の現象確認と原因の特定及び処置の決定を行い、部品交換が必要な場合は、その後に部品調達をした上で再度ユーザを訪問して部品交換を行うことになる。具体的には、図18に示すような手順で行われる。この手順では、画像形成装置10の通紙枚数などの動作量を、電話回線などを通じて情報管理装置20が監視することによって、トナーや用紙などの消耗品の補給と感光体などの交換を故障よりも前に事前に行なう。故障発生の場合は、ユーザが検出して、保守部門へ通知(ステップST1)することによって、保守部門の保守要因となる。保守部門による最初の訪問時には現象確認と原因特定のみを行なう(ステップST2)。そして、部品管理部門への部品発注(ステップST3)、部品配送(ステップST4)を経て、後日、再訪問を行なう。この再訪問で、保守作業を実施(ステップST5)し、部品回収(ステップST5,6)を行うことが多い。このことは、ユーザにとっては装置の稼動停止に伴う業務の停滞、保守要員にとっては保守業務の効率低下といった問題発生につながる。
【0005】
従って、これら保守管理の改善のためには、ユーザからの通知の段階で原因や対処法が分かることや最初の訪問時に必要な部品を携行できるようになることが望まれる。
【0006】
このような要望に対して近年、装置の状態をセンサなどによって監視しながら、近い将来に発生するであろう故障を予測する手法が提案されている。その一つに「MTS」(Maharanobis-Taguchi-System)と称する、製品の状態情報をマハラノビス距離という単一の尺度で表す手法がある。これらの手法によれば、故障が発生する時期とその故障を引き起こす部位や特性を予測することができるので、上記課題の解決に有効である。故障予測手法としては、例えば、特許文献1が挙げられる。引用文献1では、画像形成装置の状態と関連がある複数種類の情報を取得し、取得した複数種類の情報から指標値Dを算出し、算出した指標値Dの時間変化のデータに基づいて、その後の画像形成装置の状態の変化を判定する。複数種類の情報は、画像形成装置に設けたセンサで検出した検出値、画像形成装置の制御に用いる制御パラメータの値、及び画像形成対象の入力画像に関する情報の少なくとも一つの情報を含む。これらの手法によれば、故障が発生する時期とその故障を引き起こす部位(特性)を予測することができるので、上記課題の解決に寄与する。
【0007】
特許文献2には、消耗品情報に応じたサービスを提供する画面情報を受信し、これに基づいてサービスを要求する内容が、引用文献3には、保守部品を格納する部品格納容器を用いて保守部品をユーザに保守要員と個別に配送する構成が記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開2003-001909号公報
【特許文献2】特開2005-059303号公報
【特許文献3】特開2007-199942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで保守要員の保守業務を考えてみると、保守要員各々が担当する地域を抱え定期的な保守(予防保全)を主に行いながら巡回しており、これら予防保全に必要な保守部品を携行するために、都市部と郊外とを問わず移動手段は基本的に自動車になる。
【0010】
都市部では一つの建物内に複数の製品が設置されることも多く、ユーザ(保守対象)間の移動距離は大きくない。つまり保守拠点から担当地域まで移動してしまえば、担当地域内は徒歩が可能な場合も多く、ここでの自動車は、主に保守拠点から担当地域までの部品の搬送と一時格納の手段として利用されていることになる。保守には30〜60分程度の時間を費やすことが多いから、都市部の道路事情や発達した交通網を考慮すると、担当地域内の移動手段としてはあまり効率が良くない。
【0011】
一方、郊外では、比較的広範囲に製品を使用する場所が分散し、部品が配送保管される保守拠点からユーザ(保守対象)までの移動だけでなく、保守要員のユーザ(保守対象)間の移動にも時間がかかる。従って、相対的に移動に要する時間割合が大きいので、計画外に発生する事後保全は、徒に移動時間(距離)を増やす結果を招いてしまう。
【0012】
故障予測を行うに当たっては、保守対象の装置の状態情報を取得して然るべき演算を行うことにより状態の変化を検出することが必要であり、演算を行うための基本情報として、多くの装置から様々な状態情報を取得してデータベースを構築、維持することが、予測精度を確保するためには不可欠である。そのためには、多くの装置から状態情報を取得できるネットワークや電話回線といった通信回線の活用が極めて有効である。
【0013】
しかしながら、装置の状態情報をユーザ外の保守担当会社に送ることは、ユーザには分からない電子化されたデータを送受信することであり、特に個人情報や機密情報を扱うユーザにとっては機密漏洩発生の要因となることを懸念して画像形成装置に対する通信装置の接続を拒絶される場合も多い。そうなると、画像形成装置から通信回線を経由して直接情報取得を行うことはできなくなるので、多くの装置から状態情報を取得して故障予測に役立てるという目的を達するためには大きな障害となる。この結果、このような通信機能を装備しない装置のユーザに対しては、従来通りの事後保全による対応となってしまい、ユーザにとっては装置の運転停止時間の増大、保守担当会社にとっては業務効率の低下といった、双方に不利益を生じてしまうことになる。
【0014】
特許文献1では、格納装置に格納された消耗品の情報を読み取り、その情報を在庫情報として保守担当会社等に送信しているが、この格納装置はユーザ側に設置され、消耗品の在庫を管理するものとして利用されているに過ぎず、ユーザと保守部門間を行き来するツールボックス的な運用ではない。
【0015】
特許文献2では、消耗品情報に応じたサービスを提供する画面情報を受信し、これに基づいてサービスを要求しているが、消耗品購入時に必要な商品番号などの情報と発注手続きをweb上で提供するものであり、通信回線を使うことを前提としたユーザ向けとなっている。また、保守実施に必要な最新の手順情報を保守要員に提示するものではなく、確実な保守実施と保守要員の携行品を削減することにはつながらない。
【0016】
特許文献3では、保守部品を格納する部品格納容器を用いているので、部品配送回収者と保守実施者を分離することができ、保守効率向上を図ることができるが、保守対象装置と管理する装置とが通信可能な環境にあることを前提としている。このため、保守対象装置との通信環境に不備がある場合や、通信回線が整っていない環境においては、依然として部品配送回収者と保守実施者を分離することが出来ない。
【0017】
以上のような背景から、本発明は、通信回線を介して状態情報を取得できない保守対象装置に対しても、通信回線を介して状態情報を取得できる保守対象装置と同様な保守管理システムを適用して、両者の運用の相違を極小化することによって、ユーザにとっては装置の運転停止時間の低減、保守担当会社にとっては業務効率の向上を図れる保守管理システムを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、部品情報を記憶した部品情報記憶手段を備えた保守部品と、保守部品が格納され、当該保守部品が用いられる保守対象装置に容器検出のための情報を出力する接続情報出力手段を備えた部品格納容器と、保守対象装置に設けられ、部品情報記憶手段からの部品情報を取得する部品情報取得手段とを備えた保守管理システムにおいて、部品格納容器に設けられ、保守支援情報を記憶した書き換え可能な保守情報記憶手段と、保守対象装置側で、保守情報記憶手段に記憶された保守支援情報を取得する保守情報取得手段を有することを特徴としている。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の保守管理システムにおいて、接続情報出力手段から出力された情報から保守対象装置に対する部品格納容器の接続状態を検出する容器接続検出手段と、保守対象装置に部品格納容器を固定状態とするロック手段と、容器接続検出手段により部品格納容器が保守対象装置に接続されていることが検出されたときにロック手段を作動して部品格納容器を保守対象装置に固定する制御部とを有することを特徴としている。
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の保守管理システムにおいて、保守支援情報は、部品格納容器に対応するように情報管理装置によって生成され、ロック手段による部品格納容器の固定状態を解除する認証コード情報を含んでいることを特徴としている。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1、2または3記載の保守管理システムにおいて、保守支援情報は、保守作業手順を示す情報を含むことを特徴としている。
請求項5に記載の発明は、請求項4記載の保守管理システムにおいて、保守対象装置は、各種情報を表示可能な操作表示部を有し、保守情報取得手段がこの操作表示部であることを特徴としている。
請求項6に記載の発明は、請求項4記載の保守管理システムにおいて、保守対象装置は外部接続端子を有し、保守情報取得手段は、外部接続端子を介して保守作業手順を示す情報を取得し、取得した保守作業手順の内容を表示する外部端末装置であることを特徴としている。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の何れかに記載の保守管理システムにおいて、保守対象装置に対する通信が可能か否かを判定するとともに、当該判定結果に基づき保守情報記憶手段に対する保守支援情報の書き込みの有無を決定する手段を有することを特徴としている。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7の何れかに記載の保守管理システムにおいて、保守対象装置の動作状態に関する情報を取得して状態を表す指標値を算出し、算出した指標値を監視することによって得られる情報から故障発生時期と故障発生部位とを予測し、予測した結果を保守対象装置の使用者に報知する故障予測手段を有し、故障予測手段が保守対象装置に設けられていることを特徴としている。
【0021】
請求項9に記載の発明は、請求項8記載の保守管理システムにおいて、故障予測手段が保守対象装置に着脱可能であることを特徴としている。
【0022】
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9の何れかに記載の保守管理システムにおいて、保守対象装置は、保守部品を有する画像形成装置であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、部品情報を記憶した部品情報記憶手段を備えた保守部品を部品格納容器に格納し、部品格納容器に設けた接続情報出力手段から出力される容器検出のための情報を、保守対象装置に設けた部品情報取得手段で取得するとともに、保守支援情報を記憶した書き換え可能な保守情報記憶手段を部品格納容器に設け、保守対象装置側の保守情報取得手段で保守情報記憶手段に記憶された保守支援情報を取得する。このため、従来のように通信回線を介して状態情報を取得できない装置であっても、部品格納容器に設けた保守情報記憶手段からは保守支援情報を、部品情報記憶手段からは部品情報をそれぞれ保守対象装置側で取得でき、ユーザにとっては装置の運転停止時間の低減、保守担当会社にとっては部品配送回収と保守実施を分離による業務効率の向上を図ることができる。
また、保守要員は、部品調達や部品搬送から解放されるため、保守実施に専念でき、保守作業を効率的に行える。部品の配送回収と保守実施を分離することで、保守部品を携行する必要が無くなるので、保守要員の負担が軽減するとともに、移動手段として車の必要が無くなり、道路混雑の緩和に繋がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した一実施の形態について図面を用いて説明する。本形態では、保守対象機器として電子機器(ここでは、画像形成装置10)の保守管理を行なう場合に用いる保守管理システム1として説明する。本実施形態に係る保守管理システム1は、図1に示すように、画像形成装置10と情報管理装置20及び保守部品30及び保守部品30を格納する部品格納容器(以下単に「容器」と記す)50を備えている。保守対象機器としては、画像形成装置10以外に、例えば、ネットに接続されない(或いは接続されることが少ない)据え置きの機器を考えると、工場内の製造装置、家庭電化製品、LAN環境内で動作するコンピュータやその周辺機器(画像形成装置もその一つ)が挙げられる。また、自動車などの車両についても、移動体ではあるが本システムの保守対象機器の適用範囲である。
【0025】
まず、図1を用いて保守管理システム1全体の流れの概要を説明する。
本形態に係る画像形成装置10は、装置使用者となるユーザの下で稼動しながらその内部に持つ動作情報(稼動量、センサ情報など)を取得し、所定の算法(アルゴリズム)によって稼動状態を指標化して自らの状態を監視する。ここで所定期間内に故障することが予測された場合、その故障の発生時期と発生部位を特定し、ユーザに対して保守が必要になったことを報知する(ステップ1)。これを受けて、ユーザは保守担当会社の保守部門に保守を要求する(ステップ2)。この要求は電話、ファクシミリなどの、画像形成装置10とは接続関係にない通信回線を用いて行う。
【0026】
保守要求を受けた保守部門は、自身が保有するあるいは外部に設置している情報管理装置20を介して部品管理部門に部品配送要求を行う(ステップ3,4)。部品管理部門は在庫に基づいて配送日情報を情報管理装置20に通知し(ステップ5)、保守対象となる画像形成装置10に対応する保守部品30を容器50に格納するとともに、保守の実施に必要な保守支援情報を容器50に設けた保守情報記憶手段51に記憶させた後、保守要求をしてきたユーザに配送する(ステップ7)。配送日情報は情報管理装置20を通じて保守部門に通知される(ステップ6)。
【0027】
保守部品30が格納された容器50が、部品配送要員(部品管理部門)からユーサに配送されると、部品配送要員(部品管理部門)あるいはユーザによって画像形成装置10に容器50が接続され、そのときに画像形成装置10が容器50内の部品情報を取得照合する。その上で、部品配送要員(部品管理部門)が情報管理装置20に対し着荷通知を行う(ステップ8)。通知を受けた報管理装置20は保守部門に着荷通知し(ステップ9)、この情報に基づいて、保守要員が(保守部門)容器50を配送されたるユーザの元に出向き保守を実施する(ステップ10)。つまり、保守要員にとっては、部品調達や部品搬送から解放されるため、保守実施に専念でき、保守作業を効率的に行える。
【0028】
保守を実施されて容器50内の保守部品30と交換された交換部品30Aは、保守要員により容器50に格納され、再び画像形成装置10に接続される。画像形成装置10は、接続された容器50内の交換部品30Aの情報を取得し、部品回収待ち状態に移る。保守要員は容器50を画像形成装置10に接続したのち、情報管理装置20に対し部品回収要求を行う(ステップ11)。
【0029】
情報管理装置20は部品回収要求を受けて、回収部門(ここではリサイクル部門)に部品回収を指示(通知)する(ステップ12)。回収部門は回収要員を回収先のユーザに出向き、画像形成装置10から交換部品30Aが格納された容器50を回収し(ステップ13)、情報管理装置20に回収完了通知を行う(ステップ14)。回収完了通知を受けた情報管理装置20は、保守部門に対して回収完了を通知し(ステップ15)、必要があれば保守部門からユーザに結果報告がなされる。
【0030】
本形態において、保守部門の機能は、保守計画策定と実施(保守要員の派遣)であり、部品管理部門の機能は、保守部品30の在庫管理と保守部品30が入った容器50の発送である。また、リサイクル部門の機能は、交換部品30Aが入れられた容器50の回収と回収した部品の再生にあり、部品管理部門からの発注に応じて部品管理部門に再生品の納品も行う。
【0031】
保守管理システム1で用いる画像形成装置10と容器50の機能について、図2を用いて説明する。この保守管理システム1の特徴は、画像形成装置10が自身の故障発生時期や故障発生部位の予測を行う故障予測手段40を備えているとともに、保守支援情報を書き換え可能な保守情報記憶手段51を容器50に設けているとともに、画像形成装置10側に、保守情報記憶手段51に記憶された保守支援情報を取得する保守情報取得手段を有する点にある。図2は、画像形成装置10と故障予測手段40と容器50の概略構成を示すものである。
【0032】
本形態において画像形成装置10はカラー画像形成装置であって、画像形成部11の他に、画像形成部11の状態を示す動作情報を各種センサから取得する状態情報取得部12を有する。従来の構成では、状態情報取得部12で取得した動作情報を通信手段の一形態であるネットワークや電話回線を介して、故障予測を行う情報処理装置20へ送信していたが、通信環境が整わない場合や情報漏洩を危惧するユーザではこのような形態を採ることができない場合が多い。
【0033】
このため、本形態では、故障予測手段40を画像形成装置10に備えるようにしている。この故障予測手段40の設置形態としては、画像形成装置10に対して組み込んで設置してもよいが、画像形成装置10に対して着脱可能なオプション扱いとしてもよい。このように、画像形成装置10に対して着脱可能なオプション扱いとすると、通常のネットワーク経由で故障予測を行う従来の画像形成装置のコスト上昇を抑えることができる。つまり、従来の通信回線によって故障診断情報を得る画像形成装置が故障した場合に、この故障予測手段40を当該装置に設置することで、通信回線に故障や不具合が発生した場合でも、保守部品30の配送から回収までを行うことができる。
【0034】
画像形成部11は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーを用いて潜像を現像して用紙に転写し、用紙に転写されたトナー像を定着装置で定着して印刷物を得る周知の機能を備えたものである。画像形成部11としてはブラックのトナーだけを用いたモノクロ対応のものであってもよい。この場合画像形成装置はモノクロ機となる。
【0035】
画像形成装置10は、状態情報取得部12、部品情報取得手段13、操作表示部14、制御部となる情報処理部15、容器接続検出手段16及びロック手段駆動部17を備えている。
【0036】
状態情報取得部12は、画像形成部11に設けた図示しないセンサからの各種動作情報を取得するものである。部品情報取得手段13は、保守部品30や交換部品30Aに設けられた部品情報記憶手段31からの部品情報を取得する機能と、保守情報記憶手段51に書き込まれている保守支援情報を取得する保守情報取得手段としても機能する。保守情報取得手段としては、部品情報取得手段13と併用する形態に限定されるものではなく、部品情報取得手段13と個別に設ける形態であってもよい。
【0037】
操作表示部14は、画像形成装置10の動作に関わるスイッチと各種情報が表示可能な液晶タッチパネルで構成されている。情報処理部15は、状態情報取得部12で取得した保守部品情報の取得や配送された保守部品の情報を確認する機能を備えている。容器接続検出手段16は、画像形成装置10に容器50が接続されたことを検出するものである。ロック手段駆動部17は、画像形成装置10に容器50を固定するロック手段となるストッパ32を作動する電源である。
【0038】
画像形成装置10には、容器50を係止する複数の容器取付部101,101と、容器接続検出のためのコネクタ102とを備えている。これらの構造を画像形成装置10の外壁面や内壁面に複数備えることにより、ユーザの設置環境に合わせた容器50の配置と、複数の交換部品30がある場合に容器50の分散による配置自由度を確保することができる。
【0039】
容器50は、内部に保守部品30や交換部品30Aを収納可能な大きさの箱形状であって、画像形成装置10に係止するための係止手段となるフック501と、容器50の接続を検出するためのコネクタ502とを有し、画像形成装置10に取り付け可能とされている。
【0040】
本形態では、フック501は容器50の左右2ケ所に配設されている。フック501とコネクタ502は、図4に示す連動機構503によって連動するように構成されている。フック501は容器50に揺動可能とされている。コネクタ502は容器50の内外に進退可能とされている。連動機構503は、フック501が容器取付部101に固定される方向に揺動するとコネクタ502を容器50から外方に進出してコネクタ102と接続し、フック501を容器50の占有面積内に揺動するとコネクタ502を容器50内に収納してコネクタ102との接続を解除するように構成されている。
【0041】
このため、フック501を容器50の占有面積内に位置させるとコネクタ502も容器50内に収納されるので、搬送時には容器50は単純な箱形状になるので、搬送時の破損防止と搬送車の収納効率を向上させることができる。これらの構造を画像形成装置10の外壁面や内壁面に複数備えることで、ユーザの設置環境に合わせた容器50の配置と、複数の保守部品がある場合の容器分散による配置自由度の確保ができる。
【0042】
図3に示すように、容器50は、本体52と蓋部分53の二分割構成とされていて、蓋部分53の揺動中心が画像形成装置10との接触面54側に配置されている。このため、画像形成装置10に取り付けられた状態では蓋部分53が画像形成装置10と干渉して開けることができないので、部品流出の危険を回避することができる。
【0043】
また、コネクタ502とコネクタ102が接続されて容器50の検出が画像形成装置10側で行われると、コネクタ502の内部にある図示しない駆動手段(モータやソレノイドなど)によって、図5に示すようにストッパ32が画像形成装置10の内部に向かって作動する。ストッパ32を作動する駆動手段への電力は、コネクタ102とコネクタ502を介して画像形成装置10のロック手段駆動部17から供給される。これにより、容器50内の保守部品30に対して、配送要員、保守要員以外のアクセスが禁止されるので、部品配送から保守実施まで間に不適切な保守や部品流出の危険を回避することができる。画像形成装置10が故障して保守部品30から部品情報を得られない場合を想定すると、容器50の外装を透明材や半透明材としたり、視認用の開口を形成して、内容物を配送要員、保守要員が外部から認識できるようにするのが好ましい。
【0044】
図2に示すように、故障予測手段40は、状態情報取得部12から取得した多次元の状態情報を記憶する状態情報記憶部41と、図6に示すような所定のアルゴリズムに従って指標値Dを算出する指標値算出部42と、この指標値Dを監視することによって画像形成装置10の状態を判定する状態判定部43と、情報処理部44を備えている。
【0045】
故障予測手段40は、図6に示すように、状態情報記憶部41に記憶されたデータから指標値Dを指標値算出部42で算出し、算出した指標値Dを予め設定した閾値Aと状態判定部43で比較し、指標値D>閾値Aの場合には、情報処理部44で予測故障モードを特定し、処置方法を決定し故障予測内容、すなわち、故障が近いことを、操作表示部14などを介してユーザに報知する。また、指標値Dの増大を招いた要因を情報処理部44で抽出することにより、故障部位が推定する。このようにして、画像形成装置10の故障予測が故障予測手段40で実行される。
【0046】
次に、画像形成装置10の故障発生を予測する算法(アルゴリズム)の一例として、MTSに基づく方法を以下に述べる。(参考文献:日本規格協会発行「MTシステムにおける技術開発」)尚、故障予測アルゴリズムは、MTSに限るものではないことを明記しておく。
(指標値の算出)
指標値(ここではDで表す)の算出は、本出願人から出願されている特願2003−184929号に記載の方法を用いて行われる。すなわち、ここでは、状態情報記憶部41に記憶された画像形成装置の状態を表す各種センサの情報、稼動情報などの多次元データを用い、入力する複数の情報それぞれに対して互いに異なる座標軸を設定した多次元空間を定義し、その多次元空間での距離を算出する。この距離が指標値Dとなる。Dを指標値に使うことにより、図7に示すように所定時間後の装置の故障有無や画像ランクが判定できる。そして、実際に異常が発生する(危険性が高くなる)までの期間が時間的猶予となる。
(処置方法の決定)
処置方法の決定は次の工程で行われる。
状態情報記憶部41に格納された指標値算出用項目の全項目を使って指標値を算出する。
項目を1つずつ除きそれぞれについて指標値D'を算出する。
算出したそれぞれの指標値D'を比較し、指標値D'を増大させる項目を抽出する(すなわち、指標値の増大に対して寄与率の大きい項目を選び出す)。
指標値D'を増大させる項目を抽出するによって修復すべき特性(=部品)が判明するので予め設定した処置方法(交換/調整/清掃など)を参照することによって処置方法を決定できる。
【0047】
上述の方法はあくまでも一例であって、これ以外にも、2水準系の直交表を利用して組み合わせた項目で指標値D'を算出してもよい。直交表とは、実験計画法などで利用される「条件の組み合わせ表」で、実験回数を節約し且つノイズに対して安定な結果を得るためのツールである。例えば、パラメータが5種類あって、それぞれに水準が3つある場合、実験で最適条件を求めようとすれば、まともにやると3=243通りの実験をしなければならないが、直交表を使えば実験回数を減らすことができる。また、ノイズ情報も各実験に均等に含まれるため、安定な(再現性が高い)結果が得られる。この場合は、実地運用段階で、状態の変化に伴って指標値が変化したときにその変化をもたらしたパラメータ(原因項目)を抽出する、あるいは逆に、開発実験段階で、指標値の変化に影響を与えない不要なパラメータを抽出して除くのが目的で、そのツールとして使用する。この直交表を用いることにより、総当たり式に計算する方法に比べて計算回数を節約しつつ安定な結果を得ることができるという利点がある。このような手順によって、故障予測から処置方法の決定までが実行される。
【0048】
容器50は保守部品30を収容(格納)し、保守部品30はその部品情報(部品番号や製造番号など)を記憶した部品情報記憶手段31を有している。部品情報記憶手段31の例としては、ICタグと呼ばれる小型のICチップやバーコードといった周知のものがある。前者は保守部品30と無線方式によって通信を行い、後者は保守部品30と光学的な読み取り装置により非接触で情報を読み取る。形態としては、部品情報を画像形成装置10に備える受信装置で直接取得する方法、一旦容器50内の受信装置で受信した情報を有線式で取得する方法がある。何れの方法も、容器50が画像形成装置10に接続されたことをトリガとして受信装置となる部品情報取得手段13が動作を開始する。
【0049】
部品情報記憶手段31として、バーコードを用いた場合の容器50の実施例を図8に示す。便宜上、交換部品30の形状を箱形に描いているが、これは必ずしも梱包状態を示すものではない。部品に貼付されたバーコードラベル610の情報をバーコードリーダ55で読み取って、画像形成装置10と接続されたコネクタ502,102や無線を介して画像形成装置10の部品情報取得手段13に供給することができる。
【0050】
容器50に設けた保守情報記憶手段51には、図1の部品管理部門において、容器50に収納した保守部品30に対応する保守支援情報が電子データとして書き込まれる。保守支援情報には、ストッパ32による容器50のロック状態を解除する認証コード情報(保守実施時と部品回収時に使用する)と、格納した保守部品に該当する保守手順情報、ソフトウェアの更新情報(故障予測に必要な状態情報記憶部41の更新情報など)と、特殊工具や治具などの保守実施に関連する情報やツール情報が含まれている。
【0051】
保守情報記憶手段51としては、EEPROMやその1つであるフラッシュメモリ、光ディスク、光磁気ディスク、ハードディスクが挙げられる。
【0052】
これら保守支援情報の内、認証コード情報は情報管理装置20によって保守発生の度に生成され、保守情報記憶手段51に記憶されるとともに、保守要員や回収要員が所持するそれぞれのモニタを備えた外部端末装置60でも取得し、当該認証コード情報を画像形成装置10の操作表示部14から入力することによってロック状態を解除する。つまり、ここでは、保守情報記憶手段51に記憶された認証コード情報と操作表示部14から入力された認証コード情報とを比較し、両者が一致したときにストッパ32による容器50のロック状態を解除するようにしている。
【0053】
容器50に収納した保守部品30に該当する保守手順情報は、画像形成装置10を経由して操作表示部14上に表示させることによって利用可能となり、操作表示部14が画像形成装置10側の保守情報取得手段となる。この場合、操作表示部14の駆動系を画像形成部11と別電源とすることで、画像形成部11が作動していても、安定して操作表示部14上に保守手順情報を表示することができるので好ましい。
【0054】
あるいは、図2に示すように、画像形成装置10にUSB端子などの周知の規格化された外部接続端子18を設け、この外部接続端子18を介して保守作業手順を示す情報を外部端末装置60で取得し、外部端末装置60のモニタに保守作業手順を表示するようにしてもよい。この場合、外部端末装置60が画像形成装置側の保守情報取得手段として機能することとなる。
【0055】
このため、画像形成装置10の操作表示部14を利用できない場合でも、保守手順情報の表示手段を確保することができ、保守手順情報の表示手段を安価に構成することができる。
【0056】
また、保守手順情報を操作表示部14や外部端末装置60のモニタに表示させることで、容器50に表示手段などの壊れやすい装置を常備する必要が無くなるので、配送時の過剰な緩衝材が不要となるとともに容器50の電気的構造が複雑にならないので、コスト低減を図ることができる。
【0057】
なお、本構成は、故障予測に基づいているが、従来からある動作量(通紙枚数など)監視に基づく部品交換に対しても、部品配送を保守要員から分離するという点で有効である。
【0058】
(処理手順)
以下、部品配送時の処理、保守(部品交換)時の処理、部品回収時の処理を、図9に従って説明する。この場合、画像形成装置10は操作表示部14を介してガイダンス表示を出力する。
【0059】
図12は操作表示部14に表示される表示画面70を示す。図12に示す状態は、通常動作時の表示画面70の表示内容であり、最上段の表示領域71に時刻表示が出力されている。この表示領域71に各種ガイダンス表示が行われる。表示画面70は、保守時に所定の操作により保守用の表示に切り換えることができる。
【0060】
図13には、故障が予測、通知されてから部品回収終了までの表示内容の遷移を示す。図中、左側は通常動作時に最上段の表示領域71に表示されるユーザ向けの表示であり、右側は保守関係者が所定の操作によって切り換える保守用の表示である。この保守用の表示は、保守関係者(配送要員,保守要員,回収要員)が操作可能である。電話などの手段によってユーザが保守要求をする場合、予測された故障箇所や必要な保守部品に関する情報をコード化して、保守部門が適確な行動をとれるようにする必要がある。
【0061】
本形態では、図13において、画像形成装置10の故障予測手段40の指標値算出部42が算出した指標値Dを監視することによって、状態判定部43が画像形成装置10の状態変化を事前に察知し、所定の閾値Aを越えた場合に故障発生の可能性を操作表示部14に表示することでユーザに故障予測内容を通知する。この場合、状態判定部23が推定した故障部位に対して、故障予測手段40の情報処理部24は、これに対処するための部品を特定する。情報処理部24により対処するための部品が特定されると、情報処理部15は、その情報を受けて、表示画面70に図13に示すガイダンス表示701を出力する。このガイダンスには「サービスに連絡してください」等のメッセージとともに、サービスコードが表示される。このため、ユーザは、操作表示部14に表示されたサービスコードを、電話などを介して保守部門に通知する。
【0062】
このように、部品情報を記憶した部品情報記憶手段31を備えた保守部品30を容器50に格納してユーザに配送し、容器50に設けたコネクタ502から出力する容器検出のための情報を、コネクタ102を介して画像形成装置10に設けた部品情報取得手段13で取得するとともに、保守支援情報を記憶した書き換え可能な保守情報記憶手段51を容器50に設け、保守対象装置側の保守情報取得手段13で保守情報記憶手段31に記憶された保守支援情報を取得する。また、装置の故障予測手段40を画像形成装置10が備えているので、従来のように通信回線を介して状態情報を取得できない装置であっても、容器50に設けた保守情報記憶手段51から保守支援情報を画像形成装置10側で取得できるので、部品配送回収と保守実施を分離し、保守効率向上を図ることができる。また、部品配送回収と保守実施が分離できるので、保守担当者を部品調達や部品搬送から解放でき、保守実施者は保守実施に専念でき、保守効率向上を図ることができる。さらに、部品配送回収と保守実施を分離することによって、保守担当者が部品を携行する必要が無くなるので、移動手段として車の必要が無くなり、道路混雑の緩和に繋がる。
【0063】
本形態では、故障予測手段40を画像形成装置10に設けているので、従来のネットワーク経由で故障予測をする場合に比べて、運用規模が個々の画像形成装置10に分散される。このため、小さい処理機能で済むので、製造時のコストをシステム全体で抑えることができる。また、ネットワーク環境が利用可能か否かで生じる、故障予測の部品コスト差を抑えられるとともに、画像形成装置10の設置環境の変化に対応することができる。
【0064】
故障予測手段40を画像形成装置10に対して着脱可能としているので、不要な場合には装着しなくて済み、画像形成装置10のコストを抑制でき、ユーザのコスト負担を軽減することができる。また、この故障予測手段40を、例えば特許文献3に記載のような、従来のネットワーク経由で故障予測をする画像形成装置に適用すれば、ネットワーク環境に不備が発生した場合でも、故障予測を画像形成装置側で予測でき、保守部品の配送遅れを防止でき、画像形成装置10の稼動停止時間を短くすることができ、業務効率が向上する。
【0065】
また、故障予測手段40を従来のネットワーク経由で故障予測をする画像形成装置に適用する場合、画像形成装置10に対する情報管理装置20から通信が可能か否かを判定し、当該判定結果に基づき保守情報記憶手段51に対する保守支援情報の書き込みの有無を決定するようにしてもよい。この決定手段は情報管理装置20が備えていて、画像形成装置10に対する通信にエラーが発生すると保守情報記憶手段51に保守支援情報を書込んで配送するようにすれば、ネットワークに不具合が発生した場合でも、適切な保守支援情報を提供でき、保守品質を安定化できるとともに、保守部品30の配送や回収を行えるので保守管理システム1の安定性を向上することができる。
【0066】
このように特許文献3に記載の保守管理システムと本願で提案している故障予測手段40を画像形成装置10に装備した保守管理システム1とを併用する場合、運用システムの切り替えは、特許文献3に記載されている顧客データベースの情報を基や上述のように通信確認結果により行えばよい。
【0067】
<部品配送時の処理>
まず、図9を用いて部品配送時に行われる処理を説明する。
ユーザに配送された容器50が画像形成装置10に取り付けられると、画像形成装置10の容器接続検出手段16は、コネクタ502とコネクタ102の接続によって容器50を検出する(ステップS1)。そして、画像形成装置10は、部品情報取得手段13により部品情報の取得処理が実行される(ステップS2)。本形態では、上述のように、バーコードリーダ55で読み取ることで、部品情報と保守支援情報を容器50から取得する。
【0068】
次に、情報処理部15は、故障部位の予測結果によって取得した交換すべき部品情報との照合を行なう(ステップS3)。情報処理部15は、情報処理部44から受信して記憶していた部品情報と、部品情報取得手段13により取得された部品情報とを照合に用いる。
【0069】
そして、情報処理部15において部品が正しいと判定された場合、情報処理部15はロック手段駆動部17により電源を供給し、ロック手段となるストッパ32を作動させる(ステップS4)。このとき、所定の操作によって保守用の表示に切り換えた場合、表示画面70には、図13に示すガイダンス表示702が出力される。更に、ユーザ向けの表示に切り換えた場合にはガイダンス表示703が出力される。配送要員は、携行する外部端末機器60から情報管理装置20に対して配送終了通知を行う(ステップS5)。
【0070】
このように、保守部品30が格納された容器50がユーザに配送されて画像形成装置10に装着されると、ストッパ32によって装着状態に固定されるため、部品配送から保守実施まで間に不適切な保守や部品流出の危険を回避することができる。
【0071】
<保守時の処理>
次に、図10を用いて、保守(部品交換)時に行われる処理を説明する。
保守要員が、操作表示部14に対して所定の操作を行う。画像形成装置10の情報処理部15は、表示画面70に、図13に示すガイダンス表示704を出力する。これに応じて、保守要員は、情報管理装置20を経由して取得した認証コードを画像形成装置10の操作表示部14から入力する。
この場合、画像形成装置10の情報処理部15は、図10において認証コードを取得する(ステップS11)。情報処理部15は容器50から取得した認証コードとの照合ができた場合、情報処理部15は、図13の表示画面70にガイダンス表示705を出力する。そして、情報処理部15は、ロック手段駆動部17により電源を供給し、ストッパ32による容器50のロック状態を解除する(ステップS12)。この解除動作によって、保守要員が容器50の取り外しと保守部品30の取り出しとを行えるようになる。
【0072】
保守部品30の取り出しが行なわれた場合、情報処理部15は、容器接続検出手段16により保守部品30の取り出し(容器50の取り外し)を検知する(ステップS13)。そして、保守要員により保守(例えば部品交換)が実施される(ステップS14)。
【0073】
保守終了後、保守要員は、交換した交換部品30Aを入れた容器50を再び画像形成装置10に取り付ける。この場合、情報処理部15は、容器接続検出手段16により交換部品30Aの入った容器50の接続を検知する(ステップS15)。この場合も、部品情報取得手段13により交換された交換部品30Aから部品情報を取得し(ステップS16)、配送した保守部品30と互換性のある交換部品30Aであるかの照合が行われる(ステップS17)。
【0074】
部品交換が行われたことが確認されると、情報処理部15はロック手段駆動部17により電源を供給し、ストッパ32を作動させる(ステップS18)。保守要員は、携行する外部端末機器60から情報管理装置20に対して保守終了通知を行う(ステップS19)。
【0075】
この場合には、情報処理部15は、図13の表示画面70にガイダンス表示706を出力し、ユーザ向けの表示に切り換えられた場合にはガイダンス表示707を出力する。
【0076】
<部品回収時の処理>
図11を用いて部品回収時に行われる処理を説明する。
回収要員が、操作表示部14に対して所定の操作を行うと、画像形成装置10の情報処理部15は、表示画面70を保守用の表示に切り換え、図13に示すガイダンス表示708を出力する。これに応じて、回収要員は、情報管理装置20を経由して取得した、容器50に対応した認証コードを画像形成装置10の操作表示部14から入力する。この場合、画像形成装置10の情報処理部15は、認証コードを取得する(ステップS21)し、認証コードの照合ができた場合、情報処理部15は、表示画面70にガイダンス表示709を出力するとともに、ロック手段駆動部17により電源を供給し、ストッパ32を解除する(ステップ22)。容器50が取り外されると、容器接続検出手段16によって取り外しが検出される(ステップS23)。そして、情報処理部15は、表示画面70がユーザ向けの表示に切り換えられた場合には、ガイダンス表示710を出力する。回収要員は、携行する外部端末機器60から情報管理装置20に対して保守完了通知を行う(ステップS24)。
【0077】
このように、ユーザに配送されて画像形成装置10にストッパ32で固定された容器50は、保守発生の都度、新たに生成される認証コードを入力しなければ解除できないので、ストッパ32の解除が不適切に行われ、不適切な保守や部品流出の発生を防止することができる。
【0078】
また、交換部品30Aが入れられた容器50も、ストッパ32によって画像形成装置10に装着状態にロックされるため、保守実施から回収までの間に部品流出の危険を回避して、部品回収率を向上させることができる。
【0079】
図14,図15は、故障予測手段40によって故障発生が予測された場合に、ユーザから保守部門へ保守要求する別な形態を示す。ネットワーク環境にない画像形成装置10から保守情報を取得するには、信頼性の高い情報伝達手段を使って、対象機番や作業対象部位、保守部品などの詳細情報を正確に取得する必要がある。
【0080】
しかし、上述したようにユーザがこれらの情報を電話などの手段によって保守部門に連絡することは大きな負担となる。そこで、故障予測手段40によって故障発生が予測された場合には、画像形成装置10の画像形成部11をプリンタとして作動し、保守要求の内容を、図15に示すような所定形式で出力するようにしてもよい。この場合、情報処理部15は、故障予測手段40によって故障発生が予測された場合には、図14に示す操作画面80を操作表示部14に表示し、ユーザが操作画面80に表示されるOKスイッチ81を操作することで、図15に示す保守要求の内容を所定形式で出力するプリントすることができる。
【0081】
このように所定形式で出力した図15に示す保守要求票85は、ユーザがファクシミリ装置によって送信すれば、ユーザの負担を最小限に抑えながら保守部門は必要な情報を得ることができる。画像形成装置10がファクシミリ機能を備えている場合には、保守要求票書85をプリントするのではなく、ダイレンクトに保守部門に対してファクシミリ送信するようにしてもよい。この場合には、保守部門のファクシミリの番号を予め登録しておくことで、故障発生が予測された場合には自動的に保守部門に保守要求票書85を送信することができるので、ユーザの煩わしさがなくなり、使い勝手がよくなる。
【0082】
ここでは、操作画面80を操作表示部14に表示したが、画像形成装置10にユーザが使用しているコンピュータが接続されていて、画像形成装置10の制御ソフトウェア(プリンタドライバ)がインストールされている場合には、その機能を用いて保守要求票書85を出力するようにしてもよい。
【0083】
図16は、保守部門に保守要求する更に別な形態を示す。この形態は、画像形成装置10にユーザが使用しているコンピュータが接続されていて、画像形成装置10の制御ソフトウェア(プリンタドライバ)がインストールされていることが前提となる。
【0084】
保守要員による保守が必要な故障が予測された場合は、コンピュータにインストールされた画像形成装置10の制御ソフトウェア(プリンタドライバ)が表示する画面90上に電子メール生成ボタン91を生成し、ユーザに保守担当会社への連絡を促すメッセージを表示する。表示データの確認を経てユーザが電子メール生成ボタン91を操作すると、図15に示す文字データのみの内容が記載された保守要求票書85がメール作成ソフトウェアに生成表示され、コンピュータから保守部門へ送信される。
【0085】
本形態では、電子メールデータの生成と送信はコンピュータ側で行われ、画像形成装置10側はコンピュータに故障予測手段40によって故障発生が予測された結果データ(フラグ情報と予測故障モード情報及び対処情報)を送信するのみで、インターネットなどの外部通信網に接続されるわけではない。つまり、画像形成装置10の情報が直接外部に出て行くことはなく、ソフトウェア上の操作のみで必要情報が保守部門送信されるので、ユーザ機密漏洩を心配することなく、その負担を更に軽減されることになる。
【0086】
図17は、保守情報記憶手段51に記憶された保守支援情報の一つである、保守要員が部品交換する場合の保守手順情報の内容を示すもので、1手順毎に詳細な作業内容を明示し、基本的に専門知識が無くても実行可能な内容とされている。その内容は、1手順毎にチェックが可能である。逆に言えば、背景となる技術的なノウハウを開示する必要がない。これによって、保守作業が標準化されて熟練を要せず迅速な作業が可能になると同時に、画像形成装置10内部にある技術情報(やノウハウ)が流出することを防止することができる。これら保守手順情報は、操作表示部14に表示してもよいし、保守要員が携帯している外部端末装置60のモニタに表示する形態としてもよい。
【0087】
このように、保守支援情報が保守作業手順を示す情報の場合、部品毎に予め必要な保守手順情報を保守情報記憶手段51に記憶することで、情報検索の必要が無く容易に保守手順を知ることができる。また、保守情報記憶手段51に書き込まれる保守作業手順情報は、ユーザに配送した保守部品30に対応する内容に保守発生の度に書き換えせれるので、保守情報記憶手段51が備えるべき記憶容量が小さくて済み、安価に構成できる。
【0088】
上記形態において、保守情報記憶手段51に記憶された保守支援情報は、画像形成装置10が一般的に備える操作表示部14を利用して表示するようにしているので、容器50に表示手段を備える必要がなく、容器50が安価軽量に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施形態である保守管理システム全体の流れを示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態である保守管理システムの主要機能を説明するブロック図である。
【図3】本発明に係る保守管理システムで用いる部品格納容器の構成と、この容器と保守対象装置との接続を説明するための分解斜視図である。
【図4】部品格納容器に設けられたコネクタの構成を示す一部破断拡大斜視図である。
【図5】部品格納容器に設けたロック手段の構成とロック動作を示す拡大斜視図である。
【図6】故障予測手段で行われる故障予測処理内容を示すフローチャートである。
【図7】故障予測手段で算出する指標値の推移と閾値の例を示す図である。
【図8】保守部品から部品情報を読み取る構成の一形態を示す斜視図である。
【図9】保守管理システムで部品配送時に行われる処理内容を示すフローチャートである。
【図10】保守管理システムで部品交換時に行われる処理内容を示すフローチャートである。
【図11】保守管理システムで部品回収時に行われる処理内容を示すフローチャートである。
【図12】操作表示部に表示される画面の一形態を示す図である。
【図13】保守管理システムの故障発生から回収に至るまでに操作表示部に表示される画面内容の変移を示す図である
【図14】故障発生が予測された場合に、ユーザから保守部門へ保守要求する操作画面を示す図である。
【図15】図14に示す画面の操作によって画像形成装置から出力された保守要求内容の一形態を示す図である。
【図16】故障発生が予測された場合に、ユーザから保守部門へ保守要求する別の手法の操作画面を示す図である。
【図17】保守情報取得手段で取得されて表示される保守支援情報の1つである保守手順の画面遷移を示す図である。
【図18】従来の保守管理システムの全体の流れを示す概略図である。
【符号の説明】
【0090】
1 保守管理システム
10 保守対象装置
13 部品情報取得手段(保守情報取得手段)
14 操作表示部(保守情報取得手段)
15 制御部
16 容器接続検出手段
18 外部接続端子
20 決定手段
30 保守部品
31 部品情報記憶手段
32 ロック手段
40 故障予測手段
50 部品格納容器
51 保守情報記憶手段
60 外部端末装置(保守情報取得手段)
502 接続情報出力手段(コネクタ)
D 指標値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品情報を記憶した部品情報記憶手段を備えた保守部品と、
前記保守部品が格納され、当該保守部品が用いられる保守対象装置に容器検出のための情報を出力する接続情報出力手段を備えた部品格納容器と、前記保守対象装置に設けられ、前記部品情報記憶手段からの部品情報を取得する部品情報取得手段とを備えた保守管理システムにおいて、
前記部品格納容器に設けられ、保守支援情報を記憶した書き換え可能な保守情報記憶手段と、
前記保守対象装置側で、前記保守情報記憶手段に記憶された保守支援情報を取得する保守情報取得手段を有することを特徴とする保守管理システム。
【請求項2】
前記接続情報出力手段から出力された情報から前記保守対象装置に対する前記部品格納容器の接続状態を検出する容器接続検出手段と、
前記保守対象装置に前記部品格納容器を固定状態とするロック手段と、
前記容器接続検出手段により前記部品格納容器が前記保守対象装置に接続されていることが検出されたときに前記ロック手段を作動して前記部品格納容器を前記保守対象装置に固定する制御部とを有することを特徴とする請求項1記載の保守管理システム。
【請求項3】
前記保守支援情報は、前記部品格納容器に対応するように情報管理装置によって生成され、前記ロック手段による前記部品格納容器の固定状態を解除する認証コード情報を含んでいることを特徴とする請求項2記載の保守管理システム。
【請求項4】
前記保守支援情報は、保守作業手順を示す情報を含むことを特徴とする請求項1、2または3記載の保守管理システム。
【請求項5】
前記保守対象装置は、各種情報を表示可能な操作表示部を有し、
前記保守情報取得手段は、前記操作表示部であることを特徴とする請求項4記載の保守管理システム。
【請求項6】
前記保守対象装置は、外部接続端子を有し、
前記保守情報取得手段は、前記外部接続端子を介して保守作業手順を示す情報を取得し、取得した保守作業手順の内容を表示する外部端末装置であることを特徴とする請求項4記載の保守管理システム。
【請求項7】
前記保守対象装置に対する通信が可能か否かを判定するとともに、当該判定結果に基づき前記保守情報記憶手段に対する保守支援情報の書き込みの有無を決定する手段を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の保守管理システム。
【請求項8】
前記保守対象装置の動作状態に関する情報を取得して状態を表す指標値を算出し、算出した指標値を監視することによって得られる情報から故障発生時期と故障発生部位とを予測し、予測した結果を保守対象装置の使用者に報知する故障予測手段を有し、
前記故障予測手段が前記保守対象装置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の保守管理システム。
【請求項9】
前記故障予測手段が前記保守対象装置に着脱可能であることを特徴とする請求項8記載の保守管理システム。
【請求項10】
前記保守対象装置は、保守部品を有する画像形成装置であることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の保守管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−128302(P2010−128302A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304431(P2008−304431)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】