説明

保持シール材、保持シール材の製造方法及び排ガス浄化装置

【課題】 取り扱い時におけるマット同士の幅方向での位置ずれを効果的に防止するとともに、排ガス浄化装置として用いられた場合に排ガス処理体の保持力が高い状態を維持することができ、排ガスの漏出を防止することができる保持シール材を提供すること。
【解決手段】 本発明の保持シール材は、無機繊維からなる平面視矩形のマットが複数積層されて構成されており、上記複数のマットのそれぞれの長手方向の長さは、積層されるにつれて順次長くなり、上記複数のマット同士は、上記マットの長手方向に垂直な幅方向に延在する固定部で互いに固定されているとともに、上記固定部の両端部が上記マットの長側面から離間して形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持シール材、保持シール材の製造方法及び排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、パティキュレートマター(以下、PMともいう)が含まれており、近年、このPMが環境や人体に害を及ぼすことが問題となっている。また、排ガス中には、COやHC、NOx等の有害なガス成分も含まれていることから、この有害なガス成分が環境や人体に及ぼす影響についても懸念されている。
【0003】
そこで、排ガス中のPMを捕集したり、有害なガス成分を浄化したりする排ガス浄化装置として、炭化ケイ素やコージェライトなどの多孔質セラミックからなる排ガス処理体と、排ガス処理体を収容するケーシングと、排ガス処理体とケーシングとの間に配設される無機繊維集合体からなる保持シール材とから構成される排ガス浄化装置が種々提案されている。この保持シール材は、自動車の走行等により生じる振動や衝撃により、排ガス処理体がその外周を覆うケーシングと接触して破損するのを防止することや、排ガス処理体とケーシングとの間から排ガスが漏れることを防止すること等を主な目的として配設されている。
【0004】
ここで、内燃機関については、燃費の向上を目的として理論空燃比に近い条件で運転するため、排ガスが高温化、高圧下している傾向にある。排ガス浄化装置に高温、高圧の排ガスが到達すると、排ガス処理体とケーシングとの熱膨張率の差によってこれらの間の間隔が変動することもあることから、保持シール材には多少の間隔の変動によっても変化しない排ガス処理体の保持力が要求される。また、排ガス処理体の排ガス処理性能を有効に機能させるために、排ガス処理体を保温する保温性能を有する保持シール材への要求も高まりつつある。
【0005】
これらの要求を満たすために、近年では、保持シール材の厚さを厚くして保温性能を高めようとする設計手法もとられている。こうした保持シール材において、保持力の要因たる無機繊維の反発力を確保するには、保持シール材の単位体積あたりの重量を高くする必要がある。
【0006】
しかし、無機繊維集合体の厚さを厚くするにつれ、厚さ方向での剥離強度を高めるために製造過程において行われるニードリング処理では充分な剥離強度を得にくくなり、保持シール材を巻き付けた排ガス処理体をケーシングへ圧入する際に保持シール材の著しい剪断変形等が生じることもあった。
【0007】
一方、保持シール材ごとの厚さを変更するのではなく、従来と同等の重量を有するマットを複数枚組み合わせすることで高重量にした保持シール材も提案されている。このような保持シール材としては、耐熱性のマットを複数枚積層して構成され、各マットは、積層状態で排ガス処理体に巻き付けた際、それぞれに緩みなく巻き付けることができるとともに、両端部に形成された嵌合部同士が互いに嵌合する長さに設定された保持シール材が開示されている(特許文献1)。
【0008】
【特許文献1】特開2007−218221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、特許文献1の保持シール材では、複数のマットを積層した場合に問題となるマット同士の相互の幅方向での位置ずれを防止するために、ミシン縫いによる固定部を設けている。しかし、この固定部は、マットの幅方向の全体に渡って設けられており、固定部の両端部が、マットの長手方向に平行な長辺を含む面(以下、長側面ともいう)にまで達している。
そのため、保持シール材を排ガス処理体に巻き付けたり、搬送したりする等して取り扱う際に長側面が擦れたり、長側面近傍に応力が負荷されたりすることにより、ミシン縫いによって形成された固定部の端部でミシン糸がほつれてしまう。このため、ミシン糸のほつれを起点として固定部が破損し、マット同士の相互の幅方向での位置ずれを防止することができなくなるという問題がある。
【0010】
また、固定部を形成するために長側面を含むマットの幅方向の全体がミシン縫いされており、長側面を構成する無機繊維の一部が破断して、該無機繊維の強度が低くなっている。このような保持シール材を排ガス処理体に巻き付け、ケーシングに圧入すると、長側面を中心として亀裂が発生し、保持シール材が破損してしまう。また、たとえマットに亀裂が発生しないにしても、長側面を構成する一部の無機繊維の破断により長側面の耐風蝕性が低くなっているので、排ガスの流動に伴って長側面が風蝕されやすくなる。
このような保持シール材の破損や、風蝕が発生すると、排ガス処理体の保持力が低下して排ガス処理体が脱落したり、排ガス処理体とケーシングとの間から排ガスが漏出したりするという問題がある。
【0011】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、取り扱い時におけるマット同士の幅方向での位置ずれを効果的に防止するとともに、排ガス浄化装置として用いられた場合に排ガス処理体の保持力が高い状態を維持することができ、排ガスの漏出を防止することができる保持シール材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための請求項1に記載の保持シール材は、無機繊維からなる平面視矩形のマットが複数積層されて構成されており、上記複数のマットのそれぞれの長手方向の長さは、積層されるにつれて順次長くなり、上記複数のマット同士は、上記マットの長手方向に垂直な幅方向に延在する固定部で互いに固定されているとともに、上記固定部の両端部が上記マットの長側面から離間して形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項1に記載の保持シール材では、上記複数のマット同士は、上記マットの長手方向に垂直な幅方向に延在する固定部で互いに固定されているので、上記マット同士の相互の幅方向での位置ずれを防止することができる。
【0014】
さらには、上記固定部の両端部が上記マットの長側面から離間して形成されているので、上記固定部がミシン縫いにより形成されている場合には、上記保持シール材を取り扱う際に上記長側面が擦れたり、上記長側面近傍に応力が負荷されたりしても、上記固定部の両端部でミシン糸がほつれにくい。このため、ミシン糸のほつれを起点とする上記固定部の破損の発生を抑制し、上記マット同士の相互の幅方向での位置ずれを防止することができる。
このように、請求項1に記載の保持シール材では、取り扱い時における上記マット同士の幅方向での位置ずれを防止することができるため、排ガス処理体への巻き付けの際の取り扱い性が良好となり、作業性が向上することになる。
なお、上記固定部がミシン縫いにより形成されている場合には、固定部を形成するためのミシン縫いの本数(回数)は、一本であってもよいし、複数本であってもよい。
ここで、固定部が一本のミシン縫いから形成されていると、一般的には、複数本のミシン縫いから形成された場合に比べてミシン糸のほつれによる固定部の破損が発生しやすくなると考えられる。というのも、複数本のミシン縫いのうちでミシン糸のほつれが発生していないミシン縫いが残っていれば固定部の破損につながらないのに対し、固定部が一本のミシン縫いから形成されていると、取り扱い時におけるミシン糸のほつれが固定部の破損に直結してしまうためである。また、複数本のミシン縫いであれば、一本のミシン縫いあたりに負荷される応力が分散されて小さくなるのに対し、一本のミシン縫いでは、複数本のミシン縫いのように、取り扱い時に負荷される応力が分散されず大きくなってしまうためである。
しかし、請求項1に記載の保持シール材では、上記固定部の両端部が上記マットの長側面から離間して形成されているので、ミシン糸がほつれにくくなっている。従って、請求項1に記載の保持シール材においては、固定部が一本のミシン縫いから形成された場合に特に、本発明の効果を好適に発揮することができる。
【0015】
また、上記マットの長側面がミシン縫いされていないので、上記長側面を構成する無機繊維の一部に破断が発生しておらず、該無機繊維の強度が低下していない。そのため、請求項1に記載の保持シール材を排ガス処理体に巻き付けてケーシングに圧入しても、上記長側面を中心として亀裂が発生することなく、上記保持シール材の破損を防止することができる。
また、上記長側面を構成する無機繊維の一部に破断が発生していないので、上記長側面が他の部分と同等の耐風蝕性を有している。そのため、排ガスの流動に伴う上記長側面の風蝕を防止することができる。
このように、請求項1に記載の保持シール材では、上記長側面がミシン縫いされておらず、上記長側面を構成する無機繊維の一部に破断が発生していないので、保持シール材の破損及び風蝕を防止することができる。そのため、請求項1に記載の保持シール材を用いた排ガス浄化装置では、排ガス処理体の保持力が高い状態を維持することができるし、排ガスの漏出を防止することもできる。
【0016】
請求項2に記載の保持シール材では、請求項1に記載の保持シール材において、上記固定部の第一の端部と上記マットの第一の長側面との最短距離を第一の最短距離とし、上記固定部の第二の端部と上記マットの第二の長側面との最短距離を第二の最短距離とした場合の上記第一の最短距離と上記第二の最短距離との合計が、上記マットの幅方向の長さの0.5〜50%となっている。そのため、上記固定部の両端部においてそれぞれ上記固定部の端部と上記マットの長側面との間隔が充分確保されるので、本発明の効果を享受するのに特に適している。
これに対して、上記第一の最短距離と上記第二の最短距離との合計が、上記マットの幅方向の長さの0.5%未満であると、固定部の端部とマットの長側面との間隔を充分に確保することができなくなる場合がある。
一方、上記第一の最短距離と上記第二の最短距離との合計が、上記マットの幅方向の長さの50%を超えると、固定部の形成される範囲が狭すぎることがあり、マットの長側面側からマットがめくれ上がることがある。
なお、本明細書において、最短距離とは、固定部の端部とマットの長側面との間の間隔のうち、最も短い間隔を示すこととする。
【0017】
請求項3に記載の保持シール材は、請求項1又は2に記載の保持シール材において、上記固定部が屈曲点と変曲点のうち、少なくとも一つを有している。そのため、上記マット同士をより強固に固定することができる。
【0018】
請求項4に記載の保持シール材によると、請求項1〜3に記載の保持シール材において、上記マットの厚さが1.5〜15mmであることから、充分な保持力を維持しつつ、上記マットの厚さが厚くなりすぎた際の内周側部分でのしわや外周側部分での引っ張り応力を防止することができる。
【0019】
請求項5に記載の保持シール材のように、請求項1〜4のいずれかに記載の保持シール材において、上記マットが上記長手方向に垂直な幅方向でニードリング処理されていると、ニードリング処理した部分で上記マットの幅方向に折り目がついたようになることから、排ガス処理体に巻き付けやすくなる。
【0020】
請求項6に記載の保持シール材では、請求項1〜5のいずれかに記載の保持シール材において、上記固定部がミシン糸でのミシン縫いにより形成されていることから、簡便に上記固定部を形成することができ、かつ、強固に上記マット同士を固定することができる。
【0021】
請求項7に記載の保持シール材では、請求項6に記載の保持シール材において、上記ミシン縫いが本縫いであるので、取扱いの際の多少の振動等でも縫い目がほつれにくく、しっかりと上記マット同士を固定することができる。
【0022】
請求項8に記載の保持シール材では、請求項6又は7に記載の保持シール材において、上記ミシン縫いの始点及び終点のうち少なくとも一方で返し縫いされているので、縫い目がほつれにくく、強固な固定を長期間維持することができる。
【0023】
請求項9に記載の保持シール材のように、請求項6〜8のいずれかに記載の保持シール材においては、上記ミシン縫いの縫い目長さが1〜100mmであってもよい。
【0024】
請求項10に記載の保持シール材では、請求項6〜9のいずれかに記載の保持シール材において、上記ミシン糸が木綿又はポリエステルからなることから、排ガス処理体に巻き付けて排ガス浄化装置に組み付けた後に、内燃機関の最初の運転によって排出された高温の排ガスで上記ミシン糸が焼失する。ここで、上記固定部が排ガス処理装置への組み付け後にも残っていると、その部分で局所的な応力が発生して保持シール材が損傷することもあるが、焼失すると、このおそれはなくなるので、長期間安定して保持シール材としての機能を発揮することができる。
【0025】
請求項11に記載の保持シール材のように、請求項6〜10のいずれかに記載の保持シール材において、上記ミシン糸の直径を0.1〜5mmとすると、上記ミシン糸が切断されにくく、縫い付けの際の縫い目付近を構成する無機繊維への損傷を最小限に抑えながら上記固定部を形成することができる。
【0026】
請求項12に記載の保持シール材によると、請求項6〜11のいずれかに記載の保持シール材において、上記ミシン糸の色は、透明以外であり、かつ、上記マットの色と異なっている。そのため、上記固定部を形成したか否かを確認するための視認性を向上させることにより、作業上の効率を向上させることができる。
【0027】
請求項13に記載の保持シール材の製造方法は、長手方向の長さが長くなる順に複数のマットを積層し、積層した上記複数のマット同士を固定部で固定する保持シール材の製造方法であって、上記マットの長手方向に垂直な幅方向に延在するように、かつ、上記マットの長側面から両端部が離間するように上記固定部を形成して上記マット同士を固定することを特徴とする。
請求項13に記載の保持シール材の製造方法では、上述した工程を行うことにより、請求項1に記載の保持シール材を好適に製造することができる。
【0028】
請求項14に記載の保持シール材の製造方法では、請求項13に記載の保持シール材の製造方法において、上記固定部の第一の端部と上記マットの第一の長側面との最短距離を第一の最短距離とし、上記固定部の第二の端部と上記マットの第二の長側面との最短距離を第二の最短距離とした場合の上記第一の最短距離と上記第二の最短距離との合計が、上記マットの幅方向の長さの0.5〜50%となるように上記固定部を形成する。
請求項14に記載の保持シール材の製造方法では、上述した工程を行うことにより、請求項2に記載の保持シール材を好適に製造することができる。
【0029】
請求項15に記載の保持シール材の製造方法では、請求項13又は14に記載の保持シール材の製造方法において、屈曲点と変曲点のうち、少なくとも一つを有するように上記固定部を形成する。
請求項15に記載の保持シール材の製造方法では、上述した工程を行うことにより、請求項3に記載の保持シール材を好適に製造することができる。
【0030】
請求項16に記載の保持シール材の製造方法では、請求項13〜15のいずれかに記載の保持シール材の製造方法において、上記マットの厚さが1.5〜15mmである。
請求項16に記載の保持シール材の製造方法では、上述した工程を行うことにより、請求項4に記載の保持シール材を好適に製造することができる。
【0031】
請求項17に記載の保持シール材の製造方法では、請求項13〜16のいずれかに記載の保持シール材の製造方法において、上記マットに上記長手方向に垂直な幅方向でニードリング処理を行う。
請求項17に記載の保持シール材の製造方法では、上述した工程を行うことにより、請求項5に記載の保持シール材を好適に製造することができる。
【0032】
請求項18に記載の保持シール材の製造方法では、請求項13〜17のいずれかに記載の保持シール材の製造方法において、ミシン糸で上記マット同士をミシン縫いすることにより上記固定部を形成する。
請求項18に記載の保持シール材の製造方法では、上述した工程を行うことにより、請求項6に記載の保持シール材を好適に製造することができる。
【0033】
請求項19に記載の保持シール材の製造方法では、請求項18に記載の保持シール材の製造方法において、上記ミシン縫いを本縫いにより行う。
請求項19に記載の保持シール材の製造方法では、上述した工程を行うことにより、請求項7に記載の保持シール材を好適に製造することができる。
【0034】
請求項20に記載の保持シール材の製造方法では、請求項18又は19に記載の保持シール材の製造方法において、上記ミシン縫いの始点及び終点のうち少なくとも一方を返し縫いする。
請求項20に記載の保持シール材の製造方法では、上述した工程を行うことにより、請求項8に記載の保持シール材を好適に製造することができる。
【0035】
請求項21に記載の保持シール材の製造方法では、請求項18〜20のいずれかに記載の保持シール材の製造方法において、上記ミシン縫いの縫い目長さが、1〜100mmとなるように上記マット同士を縫合する。
請求項21に記載の保持シール材の製造方法では、上述した工程を行うことにより、請求項9に記載の保持シール材を好適に製造することができる。
【0036】
請求項22に記載の保持シール材の製造方法では、請求項18〜21のいずれかに記載の保持シール材の製造方法において、上記ミシン糸が木綿又はポリエステルからなる。
請求項22に記載の保持シール材の製造方法では、上述した工程を行うことにより、請求項10に記載の保持シール材を好適に製造することができる。
【0037】
請求項23に記載の保持シール材の製造方法では、請求項18〜22のいずれかに記載の保持シール材の製造方法において、上記ミシン糸の直径が0.1〜5mmである。
請求項23に記載の保持シール材の製造方法では、上述した工程を行うことにより、請求項11に記載の保持シール材を好適に製造することができる。
【0038】
請求項24に記載の保持シール材の製造方法では、請求項18〜23のいずれかに記載の保持シール材の製造方法において、上記ミシン糸の色が透明以外であり、かつ、上記マットの色と異なっている。
請求項24に記載の保持シール材の製造方法では、上述した工程を行うことにより、請求項12に記載の保持シール材を好適に製造することができる。
【0039】
請求項25に記載の排ガス浄化装置は、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状の排ガス処理体と、上記排ガス処理体を収容するケーシングと、上記排ガス処理体と上記ケーシングとの間に配設され、上記排ガス処理体を保持する保持シール材とからなる排ガス浄化装置であって、上記保持シール材は、請求項1〜12のいずれかに記載の保持シール材であることを特徴とする。
請求項25に記載の排ガス浄化装置では、保持シール材を構成するマットの長側面がミシン縫いされておらず、長側面を構成する無機繊維の一部に破断が発生していない。そのため、排ガス処理体の保持力が高い状態を維持することができるし、排ガスの漏出を防止することもできる。
【0040】
請求項26に記載の排ガス浄化装置は、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状の排ガス処理体と、上記排ガス処理体を収容するケーシングと、上記排ガス処理体と上記ケーシングとの間に配設され、上記排ガス処理体を保持する保持シール材とからなる排ガス浄化装置であって、上記保持シール材は、請求項13〜24のいずれかに記載の保持シール材であることを特徴とする。
請求項26に記載の排ガス浄化装置では、保持シール材を構成するマットの長側面がミシン縫いされておらず、長側面を構成する無機繊維の一部に破断が発生していない。そのため、排ガス処理体の保持力が高い状態を維持することができるし、排ガスの漏出を防止することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
(第一実施形態)
以下、本発明の保持シール材及び保持シール材の製造方法の一実施形態である第一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の保持シール材を模式的に示す斜視図である。図1に示したように、本実施形態の保持シール材10では、所定の長手方向の長さ(以下、単に全長ともいう。図1中、矢印L、Lで示す)、幅(図1中、矢印Wで示す)及び厚さ(図1中、矢印Tで示す)を有する平面視略矩形の2枚のマット11、21が積層されている。
以下の説明では、マット11の長手方向に平行な側面12aと、マット21の長手方向に平行な側面22aとを第一の長側面ということとする。また、マット11の長手方向に平行な側面12bと、マット21の長手方向に平行な側面22bとを第二の長側面ともいうこととする。
また、マット11の長手方向に垂直な側面12c、12dと、マット21の長手方向に垂直な側面22c、22dとを短側面ともいうこととする。
【0042】
保持シール材10においては、マット21の全長Lがマット11の全長Lより長くなっている。
さらには、マット11、21のそれぞれの厚さは、1.5〜15mmとなっている。
なお、図1に示した保持シール材10では2枚のマット11、21が積層されているが、積層するマットの数は特に限定されず、3枚以上であってもよい。
【0043】
また、マット11、21は、ともに無機繊維からなるものである。
なお、マット11、21を構成する無機繊維としては、特に限定されず、アルミナ−シリカ繊維であってもよく、アルミナ繊維、シリカ繊維等であってもよい。耐熱性や耐風蝕性等、シール材に要求される特性等に応じて変更すればよい。アルミナ−シリカ繊維を無機繊維として用いる場合には、例えば、アルミナとシリカとの組成比が、60:40〜80:20の繊維を用いることができる。
【0044】
このような保持シール材10を排ガス処理体に巻き付ける場合の詳細については後述するが、保持シール材10の長手方向を巻き付け方向として、マット11の短側面12cと12dとを当接させ、マット21の短側面22cと22dとを当接させるようにして保持シール材10を排ガス処理体に巻き付けることになる。
ここで、マット11、21の短側面12c、22cには、凸部13a、23aがそれぞれ形成されており、他方の短側面12d、22dには、凹部13b、23bがそれぞれ形成されている。そのため、保持シール材10を巻き付けた際には、マット11の凸部13a及び凹部13b、並びに、マット21の凸部23a及び凹部23bが、ちょうど互いに嵌合することになる。
【0045】
また、マット11、21は、無機繊維から構成された素地マットに対してニードリング処理を施して得られるニードルマットである。なお、ニードリング処理とは、ニードル等の繊維交絡手段を素地マットに対して抜き差しすることをいう。マット11、21では、比較的平均繊維長の長い無機繊維がニードリング処理により3次元的に交絡している。なお、交絡構造を呈するために、無機繊維はある程度の平均繊維長を有しており、例えば、無機繊維の平均繊維長は、50μm〜100mm程度であればよい。
【0046】
本実施形態の保持シール材には、保持シール材の嵩高さを抑えたり、排ガス処理装置の組み立て前の作業性を高めたりするために、さらに有機バインダー等のバインダーが含まれていてもよい。
【0047】
本実施形態の保持シール材では、マット11、12の長手方向に垂直な幅方向に延在している固定部30で、マット11とマット21とが互いに固定されている。
【0048】
固定部30の詳細について、図2を参照しつつ説明する。
図2は、図1に示す本実施形態の保持シール材のA−A線断面図である。
図2に示したように、固定部30は、ミシン糸31a(上糸)、31b(下糸)での本縫い(ミシン縫い)により形成されている。
【0049】
ミシン糸31a、31bは、木綿又はポリエステルからなる直径0.1〜5mmのミシン糸である。また、その色は、透明以外であり、かつ、マット11、21の色と異なっている。例えば、マット11、21が白色である場合、ミシン糸31a、31bの色は、赤色、青色、黄色、緑色、黒色等であってもよい。
【0050】
また、ミシン縫いの始点及び終点を含む領域32a、32bでは、返し縫いされている。
さらには、縫い目長さ(図2中、両矢印Xで示す)が、1〜100mmとなっている。
【0051】
さらに、固定部30の第一の端部30aは、マット11、21の第一の長側面12a、22aから離間して形成されており、また、第二の端部30bについても、マット11、21の第二の長側面12b、22bから離間して形成されている。
そして、固定部30の第一の端部30aとマット11、21の第一の長側面12a、22aとの最短距離(図2中、両矢印Yで示す)と、固定部30の第二の端部30bとマット11、21の第二の長側面12b、22bとの最短距離(図2中、両矢印Y´で示した長さ)との合計は、マット11、21の幅方向(図2中、両矢印Wで示す)の長さの0.5〜50%となっている。
【0052】
次に、本実施形態の保持シール材を用いた本実施形態の排ガス浄化装置の構成について図3(a)及び図3(b)を用いて説明する。
図3(a)は、本実施形態の排ガス浄化装置を模式的に示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)に示した排ガス浄化装置のB−B線断面図である。
図3(a)及び図3(b)に示したように、排ガス浄化装置40は、多数のセル51がセル壁52を隔てて長手方向に並設された柱状の排ガス処理体50と、排ガス処理体50を収容するケーシング60と、排ガス処理体50とケーシング60との間に配設され、排ガス処理体50を保持する保持シール材10とから構成されている。
ケーシング60の端部には、必要に応じて、内燃機関から排出された排ガスを導入する導入管と排ガス浄化装置を通過した排ガスが外部に排出される排出管とが接続されることになる。
なお、本実施形態の排ガス浄化装置40では、図3(b)に示すように、排ガス処理体50として、各々のセルにおけるいずれか一方が封止材53によって目封じされたハニカムフィルタを用いている。
【0053】
上述した構成を有する排ガス浄化装置40を排ガスが通過する場合について図3(b)を用いて以下に説明する。
図3(b)に示したように、内燃機関から排出され、排ガス浄化装置40に流入した排ガス(図3(b)中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、ハニカムフィルタ50の排ガス流入側端面50aに開口した一のセル51に流入し、セル51を隔てるセル壁52を通過する。この際、排ガス中のPMがセル壁52で捕集され、排ガスが浄化されることとなる。浄化された排ガスは、排ガス流出側端面50bに開口した他のセル51から流出し、外部に排出される。
【0054】
次に、排ガス浄化装置40を構成するハニカムフィルタ及びケーシングについて図4(a)、図4(b)を用いて説明する。
なお、保持シール材10の構成については、既に述べているので省略する。
図4(a)は、本実施形態の排ガス浄化装置を構成するハニカムフィルタを模式的に示す斜視図であり、図4(b)は、本実施形態の排ガス浄化装置を構成するケーシングを模式的に示す斜視図である。
【0055】
図4(a)に示したように、ハニカムフィルタ50は、主に多孔質セラミックからなり、その形状は円柱状である。また、ハニカムフィルタ50の外周には、ハニカムフィルタ50の外周部を補強したり、形状を整えたり、ハニカムフィルタ50の断熱性を向上させたりする目的で、シール材層54が設けられている。
なお、ハニカムフィルタ50の内部の構成については、上述した本実施形態の排ガス浄化装置の説明で既に述べたとおりである(図3(b)参照)。
【0056】
次いで、ケーシング60について説明する。図4(b)に示すケーシング60は、主にステンレス等の金属からなり、その形状は、円筒状である。また、その内径は、ハニカムフィルタ50の端面の直径とハニカムフィルタ50に巻き付けられた状態の保持シール材10の厚さとを合わせた長さより若干短くなっており、その長さは、ハニカムフィルタ50の長手方向(図4(a)中、矢印aの方向)における長さと略同一となっている。
【0057】
次に、本実施形態の保持シール材及び排ガス浄化装置の製造方法を説明する。
はじめに、保持シール材の製造方法について説明する。
【0058】
(1)まず、保持シール材を構成するマットとして全長の異なる二つのニードル処理マットを用意する。ニードル処理マットは、上述したニードリング処理を素地マットに施すことで作製することができる。素地マットでは、所定の平均繊維長を有する無機繊維が紡糸工程を経て緩く絡み合っている。この緩く絡み合った無機繊維に対してニードリング処理を施すことで、複雑に無機繊維が絡み合い、バインダーが存在しなくてもある程度の形状維持が可能な交絡構造を有するマットを作製することができる。
【0059】
なお、ニードリング処理は、例えば、ニードリング装置を用いて行うことができる。ニードリング装置は、素地マットを支持する支持板と、この支持板の上方に設けられ、突き刺し方向(素地マットの厚さ方向)に往復移動可能なニードルボードとで構成されている。ニードルボードには、多数のニードルが取り付けられている。このニードルボードを支持板に載せた素地マットに対して移動させ、多数のニードルを素地マットに対して抜き差しすることで、素地マットを構成する無機繊維を複雑に交絡させることができる。ニードリング処理の回数やニードル数は、目的とする嵩密度や目付量等に応じて変更すればよい。
【0060】
(2)次に、ニードル処理マットを所定の大きさに裁断した後に、得られた裁断マットにバインダー液を吹きかけてバインダーを付着させる。
このようにすることで、後の工程を経て作製されるマットにおいて、無機繊維同士の交絡構造をより強固なものとすることができるとともに、嵩高さを抑えることができる。
【0061】
バインダー液としては、アクリル系樹脂等のバインダーを水に分散させて調製したエマルジョンを用いることができる。このバインダー液をスプレー等を用いて裁断マット全体に均一に吹きかけて、バインダーを付着させる。
【0062】
(3)その後、バインダー液に含まれる水分を除去するために、バインダーを付着させた裁断マットを乾燥させる。このとき必要に応じてバインダーを付着させた裁断マットを圧縮させながら乾燥させてもよい。乾燥条件としては、例えば、95〜150℃で1〜30分間乾燥させればよい。
上述した工程を経ることで、本実施形態の保持シール材を構成する全長の長いマットと全長の短いマットとを作製することができる。なお、作製されるマットの厚さは、1.5〜15mmとなる。
【0063】
(4)このようにして作製した二枚のマットを、全長が長くなる順で、又は、短くなる順で積層する。代表的な積層手順としては、例えば、最も全長の長いマットを初めに敷き、積層するにつれて全長が短くなるように、かつ、積層される全長の短いマットがその下にある全長の長いマットの両端から飛び出さないように順次マットを積層していく方法が挙げられる。
【0064】
(5)次に、透明以外であり、かつ、マットの色と異なっており、木綿又はポリエステルからなる直径0.1〜5mmのミシン糸を準備する。このミシン糸を用いて積層した二枚のマットを始点を含む領域での返し縫い、本縫い、終点を含む領域での返し縫いの順に直線状にミシン縫いし、縫い目長さが1〜100mmとなるように縫合して固定部を形成する。この際、固定部がマットの長手方向に垂直な幅方向に延在するようにしてマット同士をする。さらには、固定部の第一の端部とマットの第一の長側面との最短距離を第一の最短距離とし、固定部の第二の端部とマットの第二の長側面との最短距離を第二の最短距離とした場合の第一の最短距離と第二の最短距離との合計が、マットの幅方向の長さの0.5〜50%となるように固定部を形成する。
このようにして二枚のマットを互いに固定することで、本実施形態の保持シール材を製造することができる。
【0065】
次いで、排ガス浄化装置の製造方法について図面を参照して説明する。
図5は、本実施形態の排ガス浄化装置を製造する手順を模式的に示した斜視図である。
【0066】
従来公知の方法により作製した円柱形状のハニカムフィルタ50の外周に上記工程で製造した保持シール材10のマット11の凸部13aと凹部13bとが嵌合するようにして巻き付ける。さらに、マット21の凸部23aと凹部23bとが嵌合するようにして巻き付ける。
そして、図5に示したように、保持シール材10を巻き付けたハニカムフィルタ50を所定の大きさを有する円筒状であって、主に金属等からなるケーシング60に圧入することで排ガス浄化装置を製造する。
なお、ケーシング60の内径は、保持シール材10を巻き付けたハニカムフィルタ50の保持シール材10の厚さを含めた最外径より少し小さくなっている。そのため、圧入後には、保持シール材が圧縮して所定の反発力(すなわち、ハニカムフィルタを保持する力)を発揮することができる。
【0067】
以下に、本実施形態の保持シール材及び排ガス浄化装置の作用効果について列挙する。
(1)本実施形態の保持シール材では、二枚のマット同士がマットの長手方向に垂直な幅方向に延在する固定部で互いに固定されているので、各マットが互いに幅方向に位置ずれすることを防止することができる。
また、固定部の両端部がマットの第一の長側面及び第二の長側面から離間して形成されているので、保持シール材を取り扱う際にこれらの長側面が擦れたり、これらの長側面近傍に応力が負荷されたりしても、ミシン縫いによって形成された固定部の両端部でミシン糸がほつれにくい。これによっても、ミシン糸のほつれを起点とする固定部の破損の発生を抑制し、マット同士の相互の幅方向での位置ずれを防止することができる。
このように、本実施形態の保持シール材では、取り扱い時におけるマット同士の相互の幅方向での位置ずれを防止することができるので、排ガス処理体への巻き付けの際の取り扱い性が良好となり、作業性が向上することになる。
【0068】
(2)さらに、マットの第一の長側面及び第二の長側面がミシン縫いされていないので、これらの長側面を構成する無機繊維の一部に破断が発生しておらず、該無機繊維の強度が低下していない。そのため、本実施形態の保持シール材を排ガス処理体に巻き付けてケーシングに圧入しても、第一の長側面及び第二の長側面を中心として亀裂が発生することなく、保持シール材の破損を防止することができる。
また、マットの第一の長側面及び第二の長側面を構成する無機繊維の一部に破断が発生していないので、これらの長側面が他の部分と同等の耐風蝕性を有している。そのため、排ガスの流動に伴う第一の長側面及び第二の長側面の風蝕を防止することができる。
従って、本実施形態の保持シール材を用いた本実施形態の排ガス浄化装置では、排ガス処理体の保持力が高い状態を維持することができるし、排ガスの漏出を防止することもできる。
【0069】
(3)本実施形態の保持シール材では、第一の最短距離と第二の最短距離との合計が、マットの幅方向の長さの0.5〜50%となっており、固定部の両端部においてそれぞれ固定部の端部とマットの長側面との間隔が充分確保されているので、上述した(1)、(2)の作用効果を好適に享受することができる。
【0070】
(4)本実施形態の保持シール材では、固定部がマットの長手方向に垂直な幅方向に延在している。そのため、保持シール材を巻き付ける際に、特に外周側部分での引っ張り応力によって巻き付けにくくなるのを防止することにより、保持シール材の巻き付け性を確保することができる。また、マットの第一の長側面及び第二の長側面側からマットがめくれ上がるのを防止することができ、マット同士の位置ずれをよりしっかりと抑制することができる。
【0071】
(5)本実施形態の保持シール材では、マットの厚さが1.5〜15mmであることから、充分な保持力を維持しつつ、マットの厚さが厚くなりすぎた際の内周側部分でのしわや外周側部分での引っ張り応力を防止することができる。
【0072】
(6)本実施形態の保持シール材では、マットが長手方向に垂直な幅方向でニードリング処理されているので、ニードリング処理した部分でマットの幅方向に折り目がついたようになることから、排ガス処理体に巻き付けやすくなる。
【0073】
(7)本実施形態の保持シール材では、固定部がミシン糸でのミシン縫いにより形成されていることから、簡便に固定部を形成することができ、かつ、強固にマット同士を固定することができる。
【0074】
(8)本実施形態の保持シール材では、ミシン縫いが本縫いであるので、取扱いの際の多少の振動等でも縫い目がほつれにくく、しっかりとマット同士を固定することができる。
【0075】
(9)本実施形態の保持シール材では、ミシン縫いの始点及び終点のうち少なくとも一方で返し縫いされているので、縫い目がほつれにくく、強固な固定を長期間維持することができる。
【0076】
(10)本実施形態の保持シール材のように、ミシン縫いの縫い目長さが1〜100mmであっても本発明の効果を好適に享受することができる。
【0077】
(11)本実施形態の保持シール材では、ミシン糸が木綿又はポリエステルからなることから、排ガス処理体に巻き付けて排ガス浄化装置に組み付けた後に、内燃機関の最初の運転によって排出された高温の排ガスでミシン糸が焼失する。ここで、固定部が排ガス処理装置への組み付け後にも残っていると、その部分で局所的な応力が発生して保持シール材が損傷することもあるが、焼失すると、このおそれはなくなるので、長期間安定して保持シール材としての機能を発揮することができる。
【0078】
(12)本実施形態の保持シール材では、ミシン糸の直径が0.1〜5mmとなっているので、ミシン糸が切断することがなく、縫い付けの際の縫い目付近への損傷を最小限に抑えながら固定部を形成することができる。
【0079】
(13)本実施形態の保持シール材では、ミシン糸の色が透明以外であり、かつ、マットの色と異なっている。そのため、固定部を形成したか否かを確認するための視認性を向上させることにより、作業上の効率を向上させることができる。
【0080】
(14)本実施形態の保持シール材の製造方法では、上述した(1)〜(13)の作用効果を発揮することができる本実施形態の保持シール材を好適に製造することができる。
【0081】
以下、本発明の第一実施形態をより具体的に開示した実施例を示すが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0082】
(実施例1)
アルミナ−シリカ組成を有するアルミナ繊維からなる素地マットとして、組成比がAl:SiO=72:28である素地マットを用意した。この素地マットに対してニードリング処理を施すことで、ニードル処理マットを作製した。
【0083】
次に、ニードル処理マットを所定の大きさに裁断した。得られた裁断マットのアルミナ繊維量に対し3.0重量%となるように、裁断マットに対してスプレーを用いてバインダー液を均一に吹き付けることで、バインダーを付着させた。
なお、バインダー液としては、アクリル系樹脂を水に充分に分散させることで、アクリル系樹脂エマルジョンを調製したものを用いた。
【0084】
その後、バインダーを付着させた裁断マットを140℃で5分間、乾燥させることにより、平面視寸法で全長1054mm×幅295mm×厚さ6.5mmであって、嵩密度が0.15g/cm、目付量が1160g/mのマット11を作製した。
【0085】
さらに、全長を1100mmとしたこと以外は上記手順と同様に、マット11の外側に位置するマット21を作製した。
【0086】
このようにして作製した二枚のマットを、積層される全長の短いマットがその下にある全長の長いマットの両端から飛び出さないような位置で順に積層した。
【0087】
次いで、木綿からなる直径1mmの赤色のミシン糸を準備した。
このミシン糸を用いて、積層した二枚のマットを始点を含む領域での返し縫い、本縫い、終点を含む領域での返し縫いの順に直線状にミシン縫いし、縫い目長さが10mmとなるように縫合して固定部を形成した。この際、固定部がマットの長手方向に垂直な幅方向に延在するようにしてマット同士を縫合した。また、返し縫いの長さは、それぞれ3mmとした。さらには、固定部の端部とマットの長側面との最短距離が両端部でそれぞれ10mmとなるように、即ち、第一の最短距離と第二の最短距離との合計が、マットの幅方向の長さの22%(第一の最短距離、第二の最短距離がともにマットの幅方向の長さの11%)となるように、マットの第一の長側面及び第二の長側面から両端部が離間するようにして固定部を形成した。
このようにして二枚のマットを互いに固定して実施例1の保持シール材を製造した。
【0088】
(実施例2、3及び4)
第一の最短距離と第二の最短距離との合計が、実施例2、3及び4でそれぞれマットの幅方向の長さの0.5%(第一の最短距離又は第二の最短距離のマットの幅方向の長さに対する割合:0.25%)、2%(同:1%)、40%(同:20%)となるように保持シール材を製造したこと以外は、実施例1と同様にして保持シール材を製造した。
【0089】
実施例1〜4の保持シール材では、第一の長側面及び第二の長側面がミシン縫いされておらず、長側面を構成する無機繊維の一部に破断が発生していないので、実施例1〜4の保持シール材を用いた排ガス浄化装置では、排ガス処理体の保持力が高い状態を維持することができると考えられる。さらには、排ガスの漏出を防止することができると考えられる。
【0090】
(比較例1)
固定部の両端部が長側面まで達するようにマット同士を縫合して固定部を形成することにより、マットの幅方向の全体に渡って固定部が設けられた保持シール材としたこと以外は、実施例1と同様にして保持シール材を製造した。
【0091】
比較例1の保持シール材では、固定部を形成するために第一の長側面及び第二の長側面を含むマットの幅方向の全体がミシン縫いされており、長側面を構成する無機繊維の一部が破断して長側面の強度が低くなっていると推測される。そのため、このような保持シール材を排ガス処理体に巻き付けてケーシングに圧入すると、長側面を中心として亀裂が発生し、保持シール材が破損すると推測される。また、たとえマットに亀裂が発生しないとしても、長側面を構成する無機繊維の一部が破断しており、耐風蝕性が低くなっているので、排ガスの流動に伴って長側面が風蝕されると考えられる。
従って、比較例1に記載の保持シール材を用いた排ガス浄化装置では、保持シール材の破損や、風蝕により排ガス処理体の保持力が低下し、排ガス処理体が脱落したり、排ガス処理体とケーシングとの間から排ガスが漏出したりすると考えられる。
【0092】
実施例1〜4及び比較例1で製造した保持シール材の特性について、実施例1〜4及び比較例1で製造した保持シール材に対応する固定部が形成されたサンプルを作製して、解糸試験を行うことにより評価した。
これについて、図面を用いて以下に説明する。
図6(a)は、解糸試験用サンプルを模式的に示す斜視図であり、図6(b)は、解糸試験装置の説明図である。
【0093】
(サンプル作製)
まず、図6(a)に示すように、実施例1で作製したマット11を幅10mm×長さ60mmに切り出してマット片2a、2bを作製した。
次に、一方のマット片2aの端面3a(3b)と他方のマット片2bの端面3c(3d)との間の距離を20mmとして(マット片同士が積層した部分の長さが40mmとなるように)互いに重ねた。
続いて、マット片2a、2b同士を長さ方向に沿って直線状にミシン縫い(本縫い)することにより固定部4を形成した。このとき、マット片2a(2b)の端面3b(3c)と固定部4の端部4b(4a)との最短距離のマット片2a、2b同士が積層した部分の長さに対する割合が所定の値となるようにミシン縫いしてサンプル2とした。ここでは、試験例1〜5として、それぞれ実施例1〜4及び比較例1に相当するサンプルを作製した。
具体的には、試験例1〜5として、マット片2a(2b)の端面3b(3c)と固定部4の端部4b(4a)との最短距離の合計をそれぞれ、マット片2a、2b同士が積層した部分の長さの22%、0.5%、2%、40%、0%とした。
なお、試験例1〜4では、固定部の端部とマット片の端面との最短距離が両端部で同じ長さとなるようにサンプルを作製した。
また、マット片2a、2bのうち、マット片2a、2b同士が積層していない部分が把持部5a、5bとなる。
【0094】
(解糸試験)
解糸試験について説明する。
図6(b)に示す解糸試験装置80は、インストロン型万能材料試験機(インストロン社製、5567)を用いたものであり、図示しない試験機本体に固定された下チャック81aと鉛直方向に移動する上チャック81bとからなる。下チャック81a及び上チャック81bは、それぞれサンプル2の把持部5a及び5bを把持する把持部82a及び82bを有している。
【0095】
この解糸試験装置80を用いた試験方法は、次の通りである。
上述した工程を経て作製されたサンプル2の把持部5a及び5bのうち、一方の把持部5aを下チャック81aの把持部82aで把持し、他方の把持部5bを上チャック81bの把持部82bで把持した。
この状態で、上チャック81bを鉛直方向上方(図6(b)中、矢印Cで示した方向)に移動させてサンプル2に荷重を負荷していった。この操作は、サンプル2の固定部4が破損し、ミシン糸がほつれてマット片2a、2bが剥離するか、または、マット片2a、2bが破断するまで行った。
その結果を表1に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
表1に示したように、試験例1〜4では、いずれもマット片が破断するまで荷重を負荷したものの、サンプルの固定部には破損が発生せず、固定部の両端部でミシン糸のほつれが発生しなかった。
そのため、試験例1〜4に相当する実施例1〜4の保持シール材で固定部が幅方向に延在している場合には、マット同士の相互の幅方向での位置ずれを防止することができると推定される。
このように、実施例1〜4の保持シール材においては、保持シール材を排ガス処理体に巻き付けたり、搬送したりする等して取り扱う際に長側面が擦れたり、長側面近傍に応力が負荷されたりしても、固定部の両端部でミシン糸がほつれないと考えられる。このため、排ガス処理体への巻き付けの際の取り扱い性が良好となり、作業性が向上すると考えられる。
【0098】
一方、試験例5では、マット片が破断する前に、固定部の両端部を中心としてミシン糸のほつれが発生して固定部が破損した。
そのため、試験例5に相当する比較例1の保持シール材では、固定部が幅方向に延在していたとしても、マット同士の相互の幅方向での位置ずれを防止することができなくなると推定される。
【0099】
(その他の実施形態)
本発明の保持シール材における固定部は、上述したミシン縫いよって形成されていてもよいし、ニードリング、接着材、ステープル、ピン、テープ等の当該分野で周知の方法によって形成されていてもよい。
なお、接着材を用いる場合には、例えば、上記固定部の位置に対応するように何らかの目印(例えば、マットの側面側の固定部に対応する位置に積層方向に平行な棒を立てる等して)を付しておき、この目印に沿って上下2枚のマットを接着材で順次固定させていけばよい。
【0100】
本発明の保持シール材において、固定部は、マットの長手方向に垂直な幅方向に延在していればよく、具体的な形状としては、上述したように直線状であってもよいし、屈曲点と変曲点のうち、少なくとも一つを有する形状であってもよい。屈曲点と変曲点のうち、少なくとも一つを有する形状としては、例えば、円弧状、波線状、ジグザク状、C字型、V字型、U字型、W字型、L字型、X字型、S字型、矩形状、楕円状等が挙げられる。
このような形状の固定部をミシン縫いで形成する場合には、上述したいずれかの形状となるようにミシン縫いを行えばよいし、また、ミシンに上述した形状の縫い目を形成する機能が備えつけられている場合には、該機能を利用してミシン縫いを行えばよい。
また、固定部を接着材により形成する場合には、上述したいずれかの形状に接着材をマットに塗布し、マット同士を接着すればよい。
【0101】
本発明の保持シール材において、マット同士を固定する方法としてミシンを用いた場合、ミシン糸の材質としては、上述した木綿、ポリエステルの他に、例えば、レーヨン、キュプラ、アセテート等のセルロース系繊維、ナイロン、テトロン、アクリル、ビニロン、オペロン、ポリエチレン、テフロン(登録商標)、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の合成繊維、絹等の天然繊維等が挙げられる。
【0102】
本発明の保持シール材においてミシン縫いを行う場合、ミシン糸の撚り方は特に限定されず、単糸段階で下撚りや、合糸後に上撚りを入れてもよい。また、Z撚り(左撚り)でもよくS撚り(右撚り)でもよいが、ミシンの釜の回転による撚り戻りを防止するために、上撚りをZ撚りとすることが望ましい。
【0103】
本発明の保持シール材において、マット材同士を固定する方法としてミシン縫いを用いた場合、縫合方法としては、上述した本縫いに限られず、例えば、しつけ縫い等であってもよい。
これらの中では、本縫いがより好ましい。マット材同士をより確実に固定することができるからである。
【0104】
本発明の保持シール材において、積層させるマットの数は、上述した二枚に限られず、保持シール材に求められる保持力や保温性能に応じて増減自在である。
【0105】
上記積層させるマットの相対位置は、上述したように、積層される全長の短いマットがその下にある全長の長いマットの両端から飛び出さないような位置であってもよく、互いに長手方向にずれて全長の長いマット両端から飛び出すような位置であってもよい。
【0106】
本発明の保持シール材の短側面に形成された凹部及び凸部の形状は、凹部と凸部とが嵌合することができる形状であれば特に限定されないが、一組の凹部及び凸部からなる場合には、一方の短側面の一部に幅10mm×長さ10mm〜幅300mm×長さ100mmの大きさに渡って突出した凸部が形成されており、他方の短側面の一部にそれに嵌合する形状の凹部が形成されていることが望ましい。このような凹部及び凸部の形状を有する保持シール材を用いて排ガス浄化装置を製造する場合には、保持シール材で排ガス処理体を確実に保持することができるので、取り扱い性に優れることとなる。
また、上記保持シール材の短側面には、上述した互いに嵌合する複数の凹部及び凸部が形成されていてもよいし、凹部及び凸部が形成されていなくてもよい。
【0107】
本発明の保持シール材において、無機繊維の平均繊維長は、30μm〜120mmであることが望ましく、50μm〜100mmであることがより望ましい。
【0108】
本発明の保持シール材において、無機繊維の平均繊維径は、2μm〜12μmであることが望ましく、3μm〜10μmであることがより望ましい。
【0109】
本発明の保持シール材に含まれるバインダーの量は、0.2〜20重量%であることが望ましく、0.5〜15重量%であることがより望ましく、1〜12重量%であることがさらに望ましい。バインダーの量が0.2重量%未満であると、保持シール材の嵩密度が低くなりすぎることがあり、保持シール材のケーシングへの圧入性が低下する場合がある。また、バインダー量が少なすぎるため、無機繊維を充分に接着することができなくなることがあり、無機繊維が飛散することがある。一方、バインダーの量が20重量%を超えると排ガス浄化装置として用いた場合に、排出される排ガス中の有機成分の量が増加することになるので、環境に負荷がかかることになる。
【0110】
本発明の保持シール材の目付量は、特に限定されないが、200〜2000g/mであることが望ましく、300〜1900g/mであることがより望ましい。
また、嵩密度についても、特に限定されないが、0.10〜0.30g/cmであることが望ましい。
【0111】
本発明の保持シール材の製造に用いられるバインダーとしては、上述したアクリル系樹脂に限られず、例えば、アクリルゴム等のゴム、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコール等の水溶性有機重合体、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等であってもよい。これらの中では、アクリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴムが特に好ましい。
【0112】
本発明の保持シール材の製造に用いられるバインダー液には、上述したバインダーが複数種類含まれていてもよい。
また、上記バインダー液としては、上述したバインダーを水に分散させて得られるエマルジョンに限られず、上述したバインダーを水又は有機溶媒に溶解させた溶液等であってもよい。
【0113】
また、上記バインダー液には、さらに無機バインダーが含まれていてもよい。無機バインダーとしては、例えば、アルミナゾル、シリカゾル等が挙げられる。
【0114】
本発明の保持シール材の各マットの厚さについては、互いに略同じであってもよいし、異なっていてもよい。保持シール材に要求される柔軟性や保持力等を考慮して、適宜変更することができる。
【0115】
本発明の排ガス浄化装置を構成するケーシングの材質は、耐熱性を有する金属であれば特に限定されず、具体的には、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属類が挙げられる。
【0116】
本発明の排ガス浄化装置の製造方法において円筒状のケーシングを用いて排ガス浄化装置を製造する場合には、排ガス処理体の端面の直径と排ガス処理体に巻き付けられた状態の保持シール材の厚さを合わせた長さより大きい内径を有するケーシングの内部に保持シール材が巻き付けられた排ガス処理体を挿入した後、プレス機等によりケーシングを外周側から圧縮する所謂サイジング方式で排ガス浄化装置を製造してもよい。
【0117】
本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体は、図4(a)に示したような全体がコージェライト等からなる一の焼結体で構成された一体型排ガス処理体であってもよく、あるいは、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された炭化ケイ素等からなるハニカム焼成体が、接着材層を介して複数個結束されて得られる集合型排ガス処理体であってもよい。
【0118】
本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体には触媒を担持させてもよい。このような触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、バリウム等のアルカリ土類金属、又は、金属酸化物等が挙げられる。これらの触媒は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0119】
また、上記金属酸化物としては、PMの燃焼温度を低下させることができるものであれば特に限定されず、例えば、CeO、ZrO、FeO、Fe、CuO、CuO、Mn、MnO、組成式A1−nCO(式中、AはLa、Nd、Sm、Eu、Gd又はYであり、Bはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、CはMn、Co、Fe又はNiであり、0≦n≦1である)で表される複合酸化物等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよいが、少なくともCeOを含むものであることが望ましい。
このような金属酸化物を担持させることにより、PMの燃焼温度を低下させることができる。
【0120】
上記排ガス処理体に触媒を担持させる方法としては、例えば、触媒が含まれた溶液を排ガス処理体に含浸させた後に加熱する方法や、排ガス処理体の表面にアルミナ膜からなる触媒担持層を形成し、このアルミナ膜に触媒を担持させる方法等が挙げられる。
アルミナ膜を形成する方法としては、例えば、Al(NO等のアルミニウムを含有する金属化合物溶液を排ガス処理体に含浸させて加熱する方法、アルミナ粉末を含有する溶液を排ガス処理体に含浸させて加熱する方法等が挙げられる。
また、アルミナ膜に触媒を担持させる方法としては、例えば、貴金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は、金属酸化物を含む溶液等をアルミナ膜が形成された排ガス処理体に含浸させて加熱する方法等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の保持シール材を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示す本発明の保持シール材のA−A線断面図である。
【図3】図3(a)は、本発明の排ガス浄化装置を模式的に示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)に示した排ガス浄化装置のB−B線断面図である。本実施形態の排ガス浄化装置を構成するハニカムフィルタを模式的に示す斜視図である。
【図4】図4(a)は、本発明の排ガス浄化装置を構成するハニカムフィルタを模式的に示す斜視図であり、図4(b)は、本発明の排ガス浄化装置を構成するケーシングを模式的に示す斜視図である。
【図5】本発明の排ガス浄化装置を製造する手順を模式的に示した斜視図である。
【図6】図6(a)は、解糸試験用サンプルを模式的に示す斜視図であり、図6(b)は、解糸試験装置の説明図である。
【符号の説明】
【0122】
10 保持シール材
11、21 マット
30 固定部
30a、30b 端部
12a、12b、22a、22b 長側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維からなる平面視矩形のマットが複数積層されて構成されており、
前記複数のマットのそれぞれの長手方向の長さは、積層されるにつれて順次長くなり、
前記複数のマット同士は、前記マットの長手方向に垂直な幅方向に延在する固定部で互いに固定されているとともに、前記固定部の両端部が前記マットの長側面から離間して形成されていることを特徴とする保持シール材。
【請求項2】
前記固定部の第一の端部と前記マットの第一の長側面との最短距離を第一の最短距離とし、前記固定部の第二の端部と前記マットの第二の長側面との最短距離を第二の最短距離とした場合の前記第一の最短距離と前記第二の最短距離との合計が、前記マットの幅方向の長さの0.5〜50%となっている請求項1に記載の保持シール材。
【請求項3】
前記固定部は、屈曲点と変曲点のうち、少なくとも一つを有している請求項1又は2に記載の保持シール材。
【請求項4】
前記マットの厚さは、1.5〜15mmである請求項1〜3のいずれかに記載の保持シール材。
【請求項5】
前記マットは、前記長手方向に垂直な幅方向でニードリング処理されている請求項1〜4のいずれかに記載の保持シール材。
【請求項6】
前記固定部は、ミシン糸でのミシン縫いにより形成されている請求項1〜5のいずれかに記載の保持シール材。
【請求項7】
前記ミシン縫いは、本縫いである請求項6に記載の保持シール材。
【請求項8】
前記ミシン縫いの始点及び終点のうち少なくとも一方では、返し縫いされている請求項6又は7に記載の保持シール材。
【請求項9】
前記ミシン縫いの縫い目長さは、1〜100mmである請求項6〜8のいずれかに記載の保持シール材。
【請求項10】
前記ミシン糸は、木綿又はポリエステルからなる請求項6〜9のいずれかに記載の保持シール材。
【請求項11】
前記ミシン糸の直径は、0.1〜5mmである請求項6〜10のいずれかに記載の保持シール材。
【請求項12】
前記ミシン糸の色は、透明以外であり、かつ、前記マットの色と異なっている請求項6〜11のいずれかに記載の保持シール材。
【請求項13】
長手方向の長さが長くなる順に複数のマットを積層し、
積層した前記複数のマット同士を固定部で固定する保持シール材の製造方法であって、
前記マットの長手方向に垂直な幅方向に延在するように、かつ、前記マットの長側面から両端部が離間するように前記固定部を形成して前記マット同士を固定することを特徴とする保持シール材の製造方法。
【請求項14】
前記固定部の第一の端部と前記マットの第一の長側面との最短距離を第一の最短距離とし、前記固定部の第二の端部と前記マットの第二の長側面との最短距離を第二の最短距離とした場合の前記第一の最短距離と前記第二の最短距離との合計が、前記マットの幅方向の長さの0.5〜50%となるように前記固定部を形成する請求項13に記載の保持シール材の製造方法。
【請求項15】
屈曲点と変曲点のうち、少なくとも一つを有するように前記固定部を形成する請求項13又は14に記載の保持シール材の製造方法。
【請求項16】
前記マットの厚さは、1.5〜15mmである請求項13〜15のいずれかに記載の保持シール材の製造方法。
【請求項17】
前記マットに前記長手方向に垂直な幅方向でニードリング処理を行う請求項13〜16のいずれかに記載の保持シール材の製造方法。
【請求項18】
ミシン糸で前記マット同士をミシン縫いすることにより前記固定部を形成する請求項13〜17のいずれかに記載の保持シール材の製造方法。
【請求項19】
前記ミシン縫いは、本縫いにより行う請求項18に記載の保持シール材の製造方法。
【請求項20】
前記ミシン縫いの始点及び終点のうち少なくとも一方を返し縫いする請求項18又は19に記載の保持シール材の製造方法。
【請求項21】
前記ミシン縫いの縫い目長さが、1〜100mmとなるように前記マット同士を縫合する請求項18〜20のいずれかに記載の保持シール材の製造方法。
【請求項22】
前記ミシン糸は、木綿又はポリエステルからなる請求項18〜21のいずれかに記載の保持シール材の製造方法。
【請求項23】
前記ミシン糸の直径は、0.1〜5mmである請求項18〜22のいずれかに記載の保持シール材の製造方法。
【請求項24】
前記ミシン糸の色は、透明以外であり、かつ、前記マットの色と異なっている請求項18〜23のいずれかに記載の保持シール材の製造方法。
【請求項25】
多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状の排ガス処理体と、
前記排ガス処理体を収容するケーシングと、
前記排ガス処理体と前記ケーシングとの間に配設され、前記排ガス処理体を保持する保持シール材とからなる排ガス浄化装置であって、
前記保持シール材は、請求項1〜12のいずれかに記載の保持シール材であることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項26】
多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状の排ガス処理体と、
前記排ガス処理体を収容するケーシングと、
前記排ガス処理体と前記ケーシングとの間に配設され、前記排ガス処理体を保持する保持シール材とからなる排ガス浄化装置であって、
前記保持シール材は、請求項13〜24のいずれかに記載の保持シール材の製造方法で製造した保持シール材であることを特徴とする排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−264187(P2009−264187A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112825(P2008−112825)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】