説明

保持治具、一組の保持治具及び被粘着物保持装置

【課題】多数の被粘着物の形状が薄板状の直方体であっても、均一な起立状態で安定して粘着保持することのできる保持治具、一方の保持治具に粘着保持した多数の被粘着物を他方の保持治具に所望のように移し替えることができる一組の保持治具、及び、被粘着物保持装置を提供すること。
【解決手段】治具本体2と、治具本体2の表面に形成されて成る中間弾性部材3と、中間弾性部材3における治具本体2が形成されている面とは反対側の表面に形成されて成る粘着弾性部材4とを備え、中間弾性部材3は粘着弾性部材4よりも小さな硬度を有している保持治具、前記保持治具1を少なくとも1つ備えている一組の保持治具であって、一方の保持治具における粘着弾性部材は、他方の保持治具における粘着弾性部材よりも大きな粘着力を有している一組の保持治具、並びに、この一組の保持治具を備えた被粘着物保持装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持治具、一組の保持治具及び被粘着物保持装置に関し、さらに詳しくは、被粘着物の形状が薄板状の直方体であっても、多数の被粘着物を均一な起立状態で安定して粘着保持することができる保持治具、並びに、一方の保持治具に粘着保持した多数の被粘着物を他方の保持治具に所望のように移し替えることができる一組の保持治具及び被粘着物保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、チップコンデンサ等の小型部品等を製造する際等に、この小型部品等を製造可能な小型部品用部材等をその表面に粘着保持することのできる保持治具が用いられている。例えば、特許文献1に記載の保持治具は、「少なくとも表面部が粘着性を有するゴム弾性材で形成され、その粘着力により小型部品をその弾性材表面において密着保持可能であることを特徴とする」(特許文献1の請求項1参照)。
【0003】
例えば、チップコンデンサを製造するには、チップコンデンサは角柱体又は円柱体等における軸線方向の両端部に電極を形成して成るから、チップコンデンサを製造する際に使用される保持治具には、その表面に粘着保持した、角柱体又は円柱体等の小型部品用部材の下端面に一方の電極を形成した後に、その小型部品用部材を前記保持治具から離脱し、次いで、電極を形成して成る端面を再び保持治具の表面に密着保持させる必要がある。この必要に応える発明として、例えば、特許文献2に記載された小型部品チップ用ホルダがある。この特許文献2に記載された小型部品チップ用ホルダは、「互いに対向する第1及び第2の端面を有する小型部品チップを保持するための小型部品チップ用ホルダにおいて、前記小型部品チップ用ホルダは、第1部材と第2部材とを含み、前記第1部材は、前記小型部品チップを保持するための第1の粘着面を備え、前記第2部材は、前記小型部品チップの前記第2の端面に粘着して前記小型部品チップを保持するための、前記第1の粘着面が与える粘着力よりも強い粘着力を与える第2の粘着面を備えることを特徴とする」(特許文献2の請求項1参照。)。
【0004】
ところで、近年における電子機器の小型化及び高機能化の進展に伴い、チップコンデンサ等の小型部品のさらなる小型化へのニーズが益々高まっている。また、電子機器において使用される集積回路は、クロック周波数の高速化、低電圧化、及び大電流化へ向けて進展しており、このような進展傾向に対応するために、特に、集積回路に搭載されるデカップリングコンデンサにおいては、インダクタンスの低いことが必要とされる。このような要望に応える手段の1つとして、例えば、端子電極を従来のチップコンデンサにおける幅方向に形成する方法がある。つまり、これまでは角柱体(例えば、図9(A)に示されるL×W×T(mm)が、約0.8×約1.6×約0.8(mm))の形状を有するチップコンデンサにおける、長軸方向の両端部に電極が形成されて成るチップコンデンサであったのに対し、チップコンデンサの低インダクタンス化と電子機器の小型化へのニーズとにより、チップコンデンサの低背化(別言すると、チップコンデンサの薄型化)が進んでいる。低背化されたチップコンデンサの一例として、図9(B)に示されるL×W×T(mm)が、約0.8×約1.7×約0.5(mm)のチップコンデンサが挙げられる。
【0005】
したがって、このように低背化されたチップコンデンサを製造するのに適した保持治具が求められてきている。すなわち、例えば、従来の角柱体のチップコンデンサ用部材は、正方形の側面(図9(A)において、電極7が形成される前の側面Sに対応する。)を被粘着面として起立状態に粘着保持される。この被粘着面は、被粘着面に垂直な軸線、つまり図9(A)におけるW方向に平行な中心軸線に対してT方向とL方向との長さが同じ正方形であるので、従来の角柱体のチップコンデンサ用部材は、その被粘着面におけるいずれの方向にも傾斜しにくく、また、転倒又は傾倒もしにくかった。これに対して、低背化されたチップコンデンサ用部材は、長方形の側面(図9(B)において、電極7が形成される前の側面Sに対応する。)を被粘着面として起立状態に粘着保持される。この被粘着面は、被粘着面に垂直な軸線、つまり図9(B)におけるL方向に平行な中心軸線に対してW方向とT方向との長さが異なる長方形であり、しかも、チップコンデンサの低背化が進む程その長方形の縦横比が大きくなるので、低背化されたチップコンデンサ用部材は、被粘着面における短辺方向、つまり図9(B)におけるT方向に傾斜しやすく、また、転倒又は傾倒しやすい。それ故、従来の保持治具では、例えば低背化されたチップコンデンサのような薄板状の直方体を成す複数の被粘着物を所望のように粘着保持することができなかった。
【0006】
【特許文献1】特公平7−93247号公報
【特許文献2】特許第2682250号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の課題は、被粘着物の形状が薄板状の直方体であっても、多数の被粘着物を均一な起立状態で安定して粘着保持することができる保持治具を提供すること、一方の保持治具に粘着保持した多数の被粘着物を他方の保持治具に所望のように移し替えることができる一組の保持治具を提供すること、及び、この一組の保持治具を備えた被粘着物保持装置を提供すること、にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、治具本体と、前記治具本体における表面に形成されて成る中間弾性部材と、前記中間弾性部材における治具本体が形成されている面とは反対側の表面に形成されて成る粘着弾性部材とを備え、前記中間弾性部材は前記粘着弾性部材よりも小さな硬度を有していることを特徴とする保持治具であり、
請求項2は、前記中間弾性部材は、5〜20のデュロメータE硬度を有していることを特徴とする請求項1に記載の保持治具であり、
請求項3は、請求項1に記載の保持治具、及び、請求項1に記載の保持治具又は治具本体と前記治具本体における表面に形成されて成る粘着弾性部材とを有する保持治具を備えている一組の保持治具であって、
前記一組の保持治具のうちの一方の保持治具における粘着弾性部材は、他方の保持治具における粘着弾性部材よりも大きな粘着力を有していることを特徴とする一組の保持治具であり、
請求項4は、請求項3に記載の一組の保持治具を備えた被粘着物保持装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る保持治具は、治具本体と粘着弾性部材との間に中間弾性部材を有し、前記中間弾性部材は前記粘着弾性部材よりも小さな硬度を有しているので、保持治具に被粘着物を粘着保持する際に、被粘着物を保持治具に押圧したときに粘着弾性部材の押圧方向(厚さ方向)に生じる歪みを、中間弾性部材によって速やかに回復させることができる。したがって、粘着弾性部材の表面は、被粘着物の押圧前後において、その平滑さを維持することができるので、被粘着物の転倒又は傾倒を防止することができ、その結果、この発明に係る保持治具は多数の被粘着物を均一な起立状態で安定して粘着保持することができる。特に、被粘着物が低背化された低インダクタンスチップコンデンサ(以下においては、LICCと称する。)のように、転倒及び傾倒しやすい薄板状の直方体であっても、この発明に係る保持治具は、LICCの転倒及び傾倒を効果的に防止することができるから、従来の保持治具に比べて、より均一な起立状態で安定して粘着保持することができる。
【0010】
また、この発明に係る一組の保持治具及び被粘着物保持装置は、この発明に係る保持治具を少なくとも1つ備えているから、粘着保持された多数の被粘着物を他の保持治具に移し替えるときに、保持治具に粘着保持された多数の被粘着物を他の保持治具に押圧しても、この発明に係る保持治具の中間弾性部材によって、粘着弾性部材の押圧方向(厚さ方向)に生じる歪みを速やかに回復させることができると共に、粘着弾性部材と被粘着物との間にかかる押圧力を効果的に吸収することができる。したがって、この発明に係る一組の保持治具及び被粘着物保持装置によれば、一方の保持治具に粘着保持された被粘着物の安定な粘着保持状態を維持しつつ被粘着物を他方の保持治具に移し替えることができると共に、必要以上の応力が被粘着物にかかることなく、すべての被粘着物を他の保持治具にほぼ均一に押圧することができるから、最初に被粘着物を粘着保持させた保持治具に多数の被粘着物のほとんどを残存させることなく、他の保持治具に多数の被粘着物を粘着保持させることができる。その結果、この発明に係る一組の保持治具及び被粘着物保持装置は、均一な起立状態で安定して、ほとんどすべての被粘着物を移し替えることができる。
【0011】
したがって、この発明によれば、被粘着物の形状が薄板状の直方体であっても、多数の被粘着物を均一な起立状態で安定して粘着保持することができる保持治具、一方の保持治具に粘着保持した多数の被粘着物を他方の保持治具に所望のように移し替えることができる一組の保持治具、及び、この一組の保持治具を備えた被粘着物保持装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明に係る保持治具の一実施例である保持治具を、図を参照して、説明する。この保持治具1は、図1に示されるように、治具本体2と、治具本体2における表面の少なくとも一部に形成されて成る中間弾性部材3と、中間弾性部材3における治具本体2が形成されている面とは反対側の表面に形成されて成る粘着弾性部材4とを有し、粘着弾性部材4の粘着力で被粘着物を保持することができる。
【0013】
この発明における被粘着物は、この発明に係る保持治具に粘着保持されることにより、小型部品を製造することのできる小型部品用部材、例えば、小型器具用部材、小型機械要素用部材及び小型電子部品用部材等が挙げられる。また、小型部品の製造には小型部品の搬送工程等も含まれるから、被粘着物は、小型部品そのもの、例えば、小型器具、小型機械要素及び小型電子部品等も含まれる。したがって、この発明においては、小型部品と小型部品用部材とは明確に区別される必要はない。これら被粘着物の中でも、この発明に係る保持治具が粘着保持するのに好適な被粘着物として、小型電子部品及び/又は小型電子部品用部材等が挙げられる。小型電子部品及び小型電子部品用部材としては、例えば、コンデンサチップ(チップコンデンサとも称されることがある。)、インダクタチップ、抵抗体チップ等の完成品若しくは未完成品等、及び/又は、これらを製造可能な例えば、角柱体若しくは円柱体、一端部に鍔を有する角柱体若しくは円柱体、両端部に鍔を有する角柱体若しくは円柱体等が挙げられる。
【0014】
この発明に係る保持治具は、例えば、このような小型電子部品及び/又は小型電子部品用部材の粘着保持用として好適である。特に、この発明に係る保持治具は、少なくとも二箇所に導電性ペーストを塗布する必要のある小型電子部品用部材の粘着保持用として、さらに好適である。
【0015】
被粘着物に着目すると、従来のチップコンデンサ24は、図9(A)に示すように、底面Sを正方形とする角柱体(例えば、L×W×T(mm)が0.8×1.6×0.8(mm))の長軸方向(W方向)の両端部に電極7が形成されているのに対し、図9(B)に示すように、LICC25は、薄型化した角柱体の長軸方向(W方向)に沿って、この角柱体における厚さ方向に垂直な断面の長辺方向(図9(B)のL方向)における両端部に電極7が形成されている。さらに、図9(B)に示すように、LICCの低インダクタンス化と電子機器の小型化へのニーズとにより、LICC25の低背化(例えば、L×W×T(mm)が0.8×1.7×0.5(mm))が進んでおり、このような低背化したLICC25が実用化されつつある。そして、この発明に係る保持治具は、粘着弾性部材よりも小さな硬度の中間弾性部材を備えてなるから、前記したように、保持治具に被粘着物を粘着保持する際に、被粘着物を保持治具に押圧したときに粘着弾性部材の押圧方向(厚さ方向)及びこの押圧方向に垂直な方向(表面方向)に生じる歪みを中間弾性部材によって速やかに回復させることができ、その結果、多数の被粘着物を均一な起立状態で安定して粘着保持することができる。したがって、この発明に係る保持治具は、LICC25のように、形状が薄板状の直方体を有する小型電子部品用部材及び/又は小型電子部品の粘着保持用として特に好適である。
【0016】
前記保持治具1における前記治具本体2は、後述する中間弾性部材3と粘着弾性部材4とを保持又は支持する。治具本体2は、中間弾性部材3と粘着弾性部材4とを保持又は支持することができる限り種々の設計変更に基づく各種の形態にすることができる。例えば、保持治具1における治具本体2は、図1に示されるように、方形を成す盤状体に形成されている。
【0017】
治具本体2は、中間弾性部材3と粘着弾性部材4とを保持又は支持可能な厚さを有していればよいが、保持治具1の厚さを所定範囲に容易に調整することができる点で、治具本体2は平滑な表面を有しているのがよく、さらに、治具本体2は均一な厚さを有しているのがよい。
【0018】
治具本体2は、中間弾性部材3を形成する面に、中間弾性部材3との密着性を向上させるために、プライマー処理、コロナ処理、エッチング処理及び/又はプラズマ処理等が施されるのが好ましい。
【0019】
前記中間弾性部材3は、前記治具本体2と粘着弾性部材4との間であって治具本体2における表面の少なくとも一部に形成され、後述する粘着弾性部材4に生じる歪みを速やかに回復させる。例えば、中間弾性部材3は、図1に示されるように、方形の盤状体に成形される。
【0020】
中間弾性部材3は、所望の厚さを有していればよいが、保持治具1の厚さを所定範囲に容易に調整することができる点で、前記中間弾性部材3は均一な厚さを有しているのがよい。
【0021】
中間弾性部材3は、発泡体であってもよいし、未発泡体であってもよい。中間弾性部材3が発泡体である場合には、発泡体は、互いに他のセルに接することのない若しくは連通することのない状態(独立セル状態と称する。)であってもよく、他のセルに接し若しくは連通している状態(連通セル状態と称する。)であってもよく、又は、前記独立セル状態と前記連通セル状態とが共存する状態であってもよい。発泡体のセルは、その平均セル径が60〜800μmであるのが好ましい。未発泡体により形成される中間弾性部材3に比べて発泡体により形成される中間弾性部材3は、平滑な表面を有することができないものの、セル径が前記範囲内であれば、中間弾性部材3の表面の粗さが粘着弾性部材4の表面の平滑さに影響を与えないように、粘着弾性部材4の厚さを適宜調整することにより、粘着弾性部材4の表面の平滑さを維持することができる。なお、例えば、粘着弾性部材4の厚さが薄く調整され、その表面平滑度が中間弾性部材3の表面の粗さに影響される場合には、中間弾性部材3は、平滑な表面を有しているのがよい。
【0022】
この発明においては、発泡剤の発泡若しくは分解、又は、中空充填材の存在等によって中間弾性部材3の表面及び/又は内部に生じる中空領域をセルと称し、このセル径は、中間弾性部材3の表面又は任意の面で切断したときの切断面において、約20mmの領域を電子顕微鏡等で観察し、観察視野内に存在する各セルにおける開口部の最大長さを測定して、測定された最大長さを算術平均して得られた平均長さを平均セル径として、求めることができる。
【0023】
中間弾性部材3は、粘着弾性部材4よりも小さな硬度を有している。中間弾性部材3の硬度が粘着弾性部材4の硬度よりも小さいと、粘着弾性部材4に被粘着物を押圧したときに、粘着弾性部材4の押圧方向(厚さ方向)に生じる歪みを中間弾性部材3によって速やかに回復させることができ、粘着弾性部材4の表面は平滑さを維持することができる。したがって、保持治具1における粘着弾性部材4上に立設する多数の被粘着物が転倒又は傾倒することが防止され、均一な起立状態で保持治具1に保持されることができる。中間弾性部材3は、5〜20のデュロメータE硬度(JIS K6253)を有しているのが好ましく、5〜18のデュロメータE硬度を有しているのが特に好ましい。中間弾性部材3が前記範囲のデュロメータE硬度を有していると、被粘着物の押圧前後における粘着弾性部材4の表面平滑度をより一層正確に維持することができる。
【0024】
前記粘着弾性部材4は、前記中間弾性部材3における前記治具本体2が形成されている面とは反対側の表面の少なくとも一部に形成される。粘着弾性部材4は、多数の被粘着物を粘着により保持することができるように設計され、例えば、図1に示されるように、前記中間弾性部材3における表面の全体に方形の盤状体に成形されている。
【0025】
粘着弾性部材4は、被粘着物を粘着保持することのできる粘着力を有している。具体的には、粘着弾性部材4は、通常、1〜50g/mmの粘着力を有しているのがよく、7〜50g/mmの粘着力を有しているのがよりよい。
【0026】
ここで、粘着弾性部材4の粘着力は、以下のようにして求める。以下の粘着力の測定方法は、出願人により案出されたので、信越ポリマー法と称する。
【0027】
まず、粘着弾性部材4を水平に固定する吸着固定装置(例えば、商品名:電磁チャック、KET−1530B、カネテック(株)製)又は真空吸引チャックプレート等と、測定部先端に、直径10mmの円柱を成したステンレス鋼(SUS304)製の接触子を取り付けたデジタルフォースゲージ(商品名:ZP−50N、(株)イマダ製)とを備えた荷重測定装置を用意する。次いで、この荷重測定装置における吸着固定装置又は真空吸引チャックプレート上に粘着弾性部材4を固定し、測定環境を21±1℃、湿度50±5%に設定する。次いで、20mm/minの速度で粘着弾性部材4の被測定部位に接触するまで前記荷重測定装置に取り付けられた前記接触子を下降させ、次いで、この接触子を被測定部位に所定の荷重で被測定部に対して垂直に3秒間押圧する。ここで、前記所定の荷重を25g/mmに設定する。次いで、180mm/minの速度で前記接触子を被測定部位から引き離し、このときに前記デジタルフォースゲージにより測定される引き離し荷重を読み取る。この操作を、被測定部位の複数箇所で行い、得られる複数の引き離し荷重を算術平均し、得られる平均値を粘着弾性部材4の粘着力とする。なお、この測定方法は、手動で行ってもよいが、例えば、テストスタンド(例えば、商品名:VERTICAL MODEL MOTORIZED STAND シリーズ、(株)イマダ製)等の機器を用いて、自動で行ってもよい。
【0028】
粘着弾性部材4は、所望の厚さを有していればよいが、保持治具1の厚さを所定範囲に容易に調整することができ、被粘着物を均一に粘着保持することができる点で、粘着弾性部材4は平滑な表面を有しているのがよく、さらに、粘着弾性部材4は均一な厚さを有しているのがよい。
【0029】
粘着弾性部材4は、中間弾性部材3よりも大きな硬度を有している。粘着弾性部材4の硬度が中間弾性部材3よりも大きいと、粘着弾性部材4に被粘着物を押圧したときに、押圧方向(厚さ方向)に生じる歪みを、中間弾性部材3によって速やかに回復させることができ、粘着弾性部材4の表面は、被粘着物の押圧前後において、その平滑さを維持することができる。粘着弾性部材4の硬度(JIS K6253[デュロメータE])は、21〜80であるのが好ましく、30〜70であるのがより好ましい。粘着弾性部材4が前記硬度の範囲内にあると、粘着弾性部材4に被粘着物を押圧したときに、粘着弾性部材4の押圧方向(厚さ方向)に生じる歪みを、中間弾性部材3によって速やかに回復させることができ、被粘着物の押圧前後における粘着弾性部材4の表面の平滑度を、より一層正確に維持することができる。
【0030】
粘着弾性部材4と中間弾性部材3との厚さの比(粘着弾性部材4/中間弾性部材3)は、0.15〜6であるのが好ましく、0.25〜2であるのがより好ましい。粘着弾性部材4と中間弾性部材3との厚さの比が前記範囲内にあると、粘着弾性部材4に被粘着物を押圧したときに、被粘着物が粘着弾性部材4にめり込み過ぎることなく、また、被粘着物が粘着弾性部材4にめり込むことにより歪が生じたとしても、この歪が速やかに回復して、粘着弾性部材4の表面は平滑さを維持することができる。したがって、保持治具1における粘着弾性部材4上に立設する多数の被粘着物が転倒又は傾倒することがほとんどなく、均一な起立状態で保持治具1に保持される。中間弾性部材3及び粘着弾性部材4それぞれは、前記厚さの比を満たすように、それらの厚さが調整されるのが好ましく、例えば、通常、0.3〜2mmの範囲から適宜調整される。
【0031】
粘着弾性部材4と中間弾性部材3とのデュロメータE硬度の比(粘着弾性部材4/中間弾性部材3)は、1より大きく16以下であるのが好ましく、2以上5以下であるのがより好ましい。粘着弾性部材4と中間弾性部材3との硬度の比が前記範囲内にあると、粘着弾性部材4に被粘着物を押圧したときに、押圧方向(厚さ方向)に生じた粘着弾性部材4の歪みを、より一層速やかに回復させて、粘着弾性部材4の表面の平滑さを維持することができる。
【0032】
前記治具本体2は、中間弾性部材及び粘着弾性部材を保持又は支持可能な材料で形成されればよく、例えば、ステンレス鋼及びアルミニウム等の金属製プレート、アルミニウム箔及び銅箔等の金属箔、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリ塩化ビニル等の樹脂フィルム又は樹脂板、和紙、合成紙及びポリエチレンラミネート紙等の紙、並びに、布、ガラス繊維及びガラス板等のセラミックス、並びに、ガラスエポキシ樹脂板等の複合材料等を挙げることができる。さらに、治具本体2として、シート状物を複数積層して成る積層体とすることもできる。治具本体2は、金属、樹脂又はセラミックスからなる硬質材料で形成されるのが好適である。
【0033】
前記中間弾性部材3は、粘着弾性部材より小さな硬度を有する材料で形成されればよく、このような材料として、通常使用されるゴム組成物、例えば、発泡ゴム組成物及び液状ゴム組成物等を挙げることができる。
【0034】
前記中間弾性部材3が発泡ゴム組成物により形成される場合には、この発泡ゴム組成物は、ゴムと、発泡剤又は中空充填材と、所望により各種添加剤等とを含有する組成物であればよく、例えば、独立セル状態のセルを形成することのできる発泡シリコーンゴム系組成物及び発泡ウレタンゴム系組成物等が好ましく挙げられる。特に、独立セル状態のセルを形成することのできる発泡シリコーンゴム系組成物は、耐久性及び耐残留歪み特性等に優れ、粘着弾性部材4との接着性の点からも好適なゴム組成物である。このような発泡シリコーンゴム系組成物として、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が特に好ましい。
【0035】
付加反応型発泡シリコーンゴム組成物は、ビニル基含有シリコーン生ゴム(ア)と、シリカ系充填材(イ)と、発泡剤(ウ)と、付加反応架橋剤(エ)と、付加反応触媒(オ)と、反応制御剤(カ)とを含有し、所望により、さらに、有機過酸化物架橋剤と各種添加剤とを含有してもよい。
【0036】
前記ビニル基含有シリコーン生ゴム(ア)は、例えば、ミラブル型シリコーンゴム、熱架橋シリコーンゴム(HTV:High Temperature Vulcanizing)等が挙げられる。これらのビニル基含有シリコーン生ゴムは、後工程で、発泡剤及び付加反応架橋剤等をロールミル等で容易に混練りすることができるという特性を有し、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0037】
前記シリカ系充填材(イ)は、補強性を有する煙霧質シリカ又は沈降性シリカ等が挙げられ、一般式がRSi(OR’)で示されるシランカップリング剤で表面処理された、補強効果の高い表面処理シリカ系充填材が好ましい。ここで、前記一般式におけるRは、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N−フェニルアミノプロピル基又はメルカプト基等であり、前記一般式におけるR’はメチル基又はエチル基である。前記一般式で示されるシランカップリング剤は、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」及び「KBE402」等として、容易に入手することができる。このようなシランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面を処理することにより、得られる。シリカ系充填材の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、5〜100質量部であるのがよい。シリカ系充填材は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0038】
前記発泡剤(ウ)としては、従来、発泡ゴムに用いられる発泡剤であればよく、例えば、無機系発泡剤として、重炭酸ソーダ、炭酸アンモニウム等が挙げられ、有機系発泡剤として、ジアゾアミノ誘導体、アゾニトリル誘導体、アゾジカルボン酸誘導体等の有機アゾ化合物等が挙げられる。通常、ゴムに連続セルを形成する場合には無機系発泡剤が用いられ、独立セルを形成する場合には有機系発泡剤が用いられる。中間弾性部材3においては、発泡剤は、独立セル状態のセルを形成することができる点で、有機系発泡剤であるのがよく、具体的には、例えば、アゾジカルボン酸アミド、アゾビス−イソブチロニトリル等のアゾ化合物が好適に使用される。特に、ジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)が好適に使用できる。発泡剤の配合量は、発泡剤の種類によって相違するが、中間弾性部材3のデュロメータE硬度が5〜20となるように調整するのがよい。具体的には、例えば、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、3質量部以下であるのがよい。発泡剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0039】
前記付加反応架橋剤(エ)は、例えば、一分子中に2個以上のSiH基(SiH結合)を有する付加反応型の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができる。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、直鎖状、環又は分枝状のいずれであってもよい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.01〜20質量部であるのがよい。付加反応架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0040】
前記付加反応触媒(オ)は、例えば、周期律表第9属又は第10属の金属単体及びその化合物が挙げられ、より具体的には、シリカ、アルミナ又はシリカゲル等の担体上に吸着された微粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸六水塩とオレフィン又はジビニルジメチルポリシロキサンとの錯体、塩化白金酸六水塩のアルコール溶液等の白金系触媒、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられる。これら付加反応触媒の配合量は、触媒量で十分であり、通常、周期律表第9属又は第10属の金属量に換算して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物全体に対して、1〜1,000ppmであるのがよく、10〜500ppmであるのが特によい。付加反応触媒の配合量が、周期律表第9属又は第10属の金属量に換算して、1ppmより少ないと、ビニル基含有シリコーン生ゴムの架橋反応が十分に進行せず、ビニル基含有シリコーン生ゴムの硬化が不十分となることがあり、一方、1,000ppmを超えると、ビニル基含有シリコーン生ゴムの架橋反応を促進する能力が向上せず、かえって、経済性が低下することがある。付加反応触媒は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0041】
前記反応制御剤(カ)は、公知の反応制御剤を制限されることなく使用することができ、例えば、メチルビニルシクロテトラシロキサン、アセチレンアルコール類、シロキサン変性アセチレンアルコール、ハイドロパーオキサイド等が挙げられる。反応制御剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.1〜2質量部であるのがよい。反応制御剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0042】
前記有機過酸化物架橋剤は、単独でビニル基含有シリコーン生ゴムを架橋させることも可能であるが、付加反応架橋剤の補助架橋剤として併用すれば、シリコーンゴムの強度、歪み等の物性がより向上する。有機過酸化物架橋剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス−2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。有機過酸化物架橋剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.3〜10質量部であるのがよい。有機過酸化物架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0043】
前記各種添加剤は、例えば、炭酸カルシウム等の充填材、着色剤、難燃性向上剤等の添加剤、離型剤、アルコキシシラン、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシラン、両末端シラノール基封鎖低分子シロキサン等の分散剤、及び、得られるゴムの硬度を調整することのできる粉砕石英、珪藻土等の非補強性シリカ等が挙げられる。これらの各種添加剤は、所望の配合量で配合される。
【0044】
前記ビニル基含有シリコーン生ゴム(ア)、前記シリカ系充填材(イ)及び前記各種添加剤を含有するシリコーンゴム組成物として、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KEシリーズ」及び「KEGシリーズ」等を容易に入手することができる。
【0045】
ゴム組成物は、その比重は特に限定されないが、ゴム組成物の比重は中間弾性部材3の密度にもある程度影響を与えるから、要求される硬度に応じて、所定の比重に調整される。ゴム組成物の比重は、通常、1.00〜2.00であるのが好ましく、1.05〜1.50であるのがさらに好ましい。
【0046】
前記ゴム組成物が発泡ゴム組成物である場合には、ゴム組成物は、二本ロール、三本ロール、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分以上1時間以下にわたって、常温又は加熱下で混練して、得られる。
【0047】
前記ゴム組成物として発泡ゴム組成物を用いて中間弾性部材3を形成する場合には、例えば、前記発泡ゴム組成物を、押出成形による連続加熱成形、プレス、インジェクションによる型成形等によって、100〜400℃で、数分以上1時間以下加熱成形することによって、製造される。
【0048】
前記中間弾性部材が液状ゴム組成物により形成される場合には、この液状ゴム組成物を構成するゴムは、液状ゴムであればよく、例えば、シリコーンゴム若しくはシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロールヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等の液状ゴムが挙げられる。これらのゴムは、付加硬化型であるのが、加熱成形時の寸法精度に優れる点で、好ましい。
【0049】
液状ゴム組成物は、ゴムに加えて、通常、ゴム組成物に含有される各種添加剤を含有していてもよく、各種添加剤としては、例えば、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、硬化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、通常用いられる添加剤であってもよく、用途に応じて特別に用いられる添加剤であってもよい。
【0050】
液状ゴム組成物は、特に、付加硬化型液状シリコーンゴム組成物であるのが、表面が平滑な中間弾性部材3を容易に成形することができる点及び粘着弾性部材4との接着性が良好である点等から、好ましい。液状ゴム組成物は、例えば、一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン(A)と、一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)と、平均粒径が1〜30μmで、嵩密度が0.1〜0.5g/cmである無機質充填材(C)と、付加反応触媒(E)とを含有する付加硬化型液状シリコーンゴム組成物が挙げられる。
【0051】
前記オルガノポリシロキサン(A)としては、平均組成式(1)RSiO(4−a)/2で示される化合物が好適である。ここで、Rは、互いに同一又は異種の炭素原子数1〜10、好ましくは炭素原子数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.02の範囲の正数である。
【0052】
前記Rは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、β−フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、並びに、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換したクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基及びシアノエチル基等が挙げられる。
【0053】
は、そのうちの少なくとも2個は、炭素原子数2〜8、好ましくは炭素原子数2〜6のアルケニル基、特にビニル基であるのが好ましく、また、その90%以上がメチル基であるのが好ましい。前記アルケニル基の含有量は、オルガノポリシロキサン中1.0×10−6〜5.0×10−3mol/g、特に5.0×10−6〜1.0×10−3mol/gであることが好ましい。アルケニル基の量が1.0×10−6mol/gより少ないと、架橋が不十分でゲル状になることがあり、一方、5.0×10−3mol/gを超えると、圧縮永久ひずみが低下することがあるだけでなく、架橋後のゴムが脆くなることがある。前記アルケニル基は、分子鎖末端のケイ素原子に結合していても、分子鎖内のケイ素原子に結合していても、また、両者のケイ素原子に結合していてもよい。
【0054】
前記オルガノポリシロキサン(A)は、基本的には、ジオルガノシロキサン単位を繰り返し単位とする主鎖に、トリオルガノシロキシ基が結合した分子鎖両末端を有する直鎖状構造を有するが、部分的に分岐状構造又は環状構造等となっていてもよい。
【0055】
オルガノポリシロキサン(A)の重合度については、室温(25℃)で液状(例えば、25℃での粘度が100〜1,000,000mPa・s、好ましくは200〜100,000mPa・s程度)であればよく、平均重合度が100〜800であるのが好ましく、150〜600であるのが特に好ましい。平均重合度が100未満であると、架橋後のゴム弾性が不十分となることがあり、一方、800を超えると、オルガノポリシロキサン(A)が生ゴム状になり、圧縮永久ひずみが低下することがある。
【0056】
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、平均組成式(2)RSiO(4−b−c)/2で示され、一分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上(通常、3〜200個)、より好ましくは3〜100個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するものが好適に用いられる。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、その分子中に存在するケイ素原子に結合した水素原子が前記オルガノポリシロキサン(A)のケイ素原子に結合したアルケニル基とヒドロシリル付加反応して、架橋する硬化剤(架橋剤)として作用する。
【0057】
前記平均組成式(2)において、前記Rは炭素原子数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基である。また、bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cは0.8〜3.0を満足する正数である。前記Rは、前記前記Rと同様であるが、脂肪族不飽和基を有しないものが好ましい。また、bは好ましくは0.8〜2.0、cは好ましくは0.01〜1.0、b+cは好ましくは1.0〜2.5を満足する正数であり、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状、環状、分岐状又は三次元網目状のいずれの構造であってもよい。前記(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)が2〜300個、特に4〜150個程度の室温(25℃)で液状であるのが好ましい。なお、水素原子が結合するケイ素原子は、分子鎖末端、分子鎖内のいずれにあってもよく、両方にあってものであってもよい。
【0058】
前記ケイ素原子に結合した水素原子(Si−H)の含有量は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中0.001〜0.017mol/g、特に0.002〜0.015mol/gとすることが好ましい。前記水素原子の含有量が0.001mol/g未満であると、架橋が不十分でゲル状になることがあり、一方、0.017mol/gを超えると、架橋密度が高くなりすぎて、架橋後のゴムが脆くなることがある。
【0059】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)としては、例えば、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、及び、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C)SiO3/2単位とから成る共重合体等が挙げられる。
【0060】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)の配合量は、オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して0.1〜30質量部であるのが好ましく、0.3〜20質量部であるのが特に好ましい。前記配合量が0.1質量部未満であると、架橋が不十分でゲル状になり、ゴム状の硬化物を与えることができないことがあり、一方、30質量部を越えると、硬化物の強度と耐圧縮永久ひずみが著しく低下することがある。また、オルガノポリシロキサン(A)のアルケニル基に対するケイ素原子に結合した水素原子のモル比は、0.3〜5.0であるのが好ましく、0.5〜2.5であるのが特に好ましい。
【0061】
前記無機質充填材(C)は、低圧縮永久ひずみで安定させるのに重要な成分である。無機質充填材は、平均粒径が1〜30μm、好ましくは2〜20μm、嵩密度が0.1〜0.5g/cm、好ましくは0.15〜0.45g/cmである。平均粒径が1μmより小さいと歪が残り易くなることがあり、一方、30μmより大きいと中間弾性部材3の耐久性が低下することがある。また、嵩密度が0.1g/cmより小さいと圧縮永久ひずみが悪化することがあり、一方、0.5μmより大きいと中間弾性部材3の強度が不十分で耐久性が低下することがある。なお、平均粒径は、例えば、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、重量平均値(又はメジアン径)等として求めることができ、嵩密度は、JIS K 6223の見かけ比重の測定方法に基づいて求めることができる。
【0062】
このような無機質充填材としては、珪藻土、パーライト、マイカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、及び、中空フィラー等が挙げられるが、中でも珪藻土、パーライト及び発泡パーライトの粉砕物が好ましい。
【0063】
無機質充填材の配合量は、オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して5〜100質量部であるのが好ましく、10〜80質量部であるのが特に好ましい。前記配合量が5質量部未満であると、十分なローラ耐久性が発現しないことがあり、一方、100質量部を越えると、圧縮永久ひずみが低下すると共に、均一に配合することが困難になることがある。
【0064】
また、無機質充填材(C)は、シラン系カップリング剤又はその部分加水分解物、アルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解物、有機シラザン類、チタネート系カップリング剤、オルガノポリシロキサンオイル、加水分解性官能基含有オルガノポリシロキサン等により表面処理されてもよい。これらの表面処理は、無機質充填材自体を予め処理しても、又はオイルと無機質充填材との混合時に処理を行ってもよい。
【0065】
無機質充填材(C)の混合方法は、常温でプラネタリーミキサー又はニーダー等の機器を用いて、前記オルガノポリシロキサン(A)及び前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)と混合してもよいし、又は、100〜200℃の高温で混合してもよい。
【0066】
なお、前記無機質充填材(C)以外にも、例えば、石英粉、球状シリカ、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウム等の無機粉体を、低圧縮永久ひずみ、経時で安定した体積抵抗率、ローラ耐久性を損なわない範囲で添加してもよい。特に圧縮永久ひずみ及び体積抵抗率の経時変化に影響が大きいヒュームドシリカ及び沈降性シリカは、前記オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して、8質量部以下、特に0〜5質量部を配合するのが好ましい。
【0067】
前記付加反応触媒(E)としては、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、例えば、白金族金属量として、前記オルガノポリシロキサン(A)及びオルガノハイドロジェンポリシロキサン(E)の合計質量に対して、0.5〜1,000ppmであるのが好ましく、1〜500ppm程度であるのが特に好ましい。
【0068】
この付加硬化型液状シリコーンゴム組成物は、前記成分に加えて、低分子シロキサンエステル、シラノール、例えば、ジフェニルシランジオール等の分散剤、酸化鉄、酸化セリウム、オクチル酸鉄等の耐熱性向上剤、接着性及び成形加工性を向上させる各種カーボンファンクショナルシラン、難燃性を付与させるハロゲン化合物、各種反応制御剤等を本発明の目的を損なわない範囲で含有してもよい。
【0069】
前記液状ゴム組成物及び前記付加硬化型液状シリコーンゴム組成物は、二本ローラ、三本ローラ、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、ゴム及び所望により添加された各種添加剤等が均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分〜1時間、常温又は加熱下で混練して、得られる。
【0070】
前記液状ゴム組成物及び前記付加硬化型液状シリコーンゴム組成物は、金型に容易にかつ均質に注入することができる点で、例えば、25℃において、5〜500Pa・sの粘度を有しているのがよく、10〜200Pa・sの粘度を有しているのが特によい。前記液状ゴム組成物及び前記付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の粘度は、通常、それらに含まれる各成分の種類及び/又は配合量によって、調整することができる。必要により、溶剤等により、粘度を調整することもできる。
【0071】
前記ゴム組成物として液状ゴム組成物を用いて中間弾性部材3を形成する場合には、液状ゴム組成物を金型内に注入し、液状ゴム組成物が硬化可能な温度に加熱して成形される。液状ゴム組成物が硬化可能な温度は、液状ゴム組成物の種類等に応じて適宜選択されればよく、例えば、液状ゴム組成物として前記付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を使用する場合は、加熱温度は100〜300℃、好ましくは110〜200℃に設定することができる。加熱時間は、液状ゴム組成物の種類等に応じて適宜選択されればよく、例えば、液状ゴム組成物として前記付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を使用する場合は、加熱時間は1分間以上1時間以下、好ましくは3〜30分間に設定することができる。
【0072】
前記粘着弾性部材4は、粘着弾性部材4に前記粘着力を付与することのできる粘着性材料、又は、この粘着性材料の硬化物で形成されていればよく、粘着材料として、例えば、フッ素系樹脂又はフッ素系ゴム、フッ素系樹脂又はフッ素系ゴムを含有するフッ素系組成物、シリコーン樹脂又はシリコーンゴム、シリコーン樹脂又はシリコーンゴムを含有するシリコーン組成物、ウレタン系エラストマー、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合エラストマー等の各種エラストマー等が挙げられる。この中でも、シリコーンゴム、及び/又は、シリコーンゴムを含有する付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物及び過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物が好ましい。
【0073】
前記付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物としては、シリコーン生ゴム(a)と、架橋成分(b)と、粘着力向上剤(c)と、触媒(d)と、シリカ系充填材(e)とを含有する粘着性組成物を挙げることができる。
【0074】
前記シリコーン生ゴム(a)としては、(RSiO2/2)単位(Rは、炭化水素基を表す。)を含み、置換基を有していてもよいポリジメチルシロキサンの長鎖重合体等であればよく、例えば、付加反応により架橋可能なポリオルガノシロキサンを用いることができ、より具体的には、アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンを用いることができ、特に、下記(1)式で示されるアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンを好適に用いることができる。
【0075】
(3−a)SiO−(RXSiO)−(RSiO)−SiR(3−b) (1)式
ただし、(1)式中、Rは脂肪族不飽和結合を有することのない1価の炭化水素基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、Xはアルケニル含有有機基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、aは0〜3の整数、bは0〜3の整数、mは0以上の整数、nは100以上の整数であり、a、b及びmは同時に0とはならない。
【0076】
前記式(1)において、Rとしては、炭素数1〜10の前記炭化水素基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の直鎖又は分岐アルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基等が挙げられ、特にメチル基、フェニル基が好ましい。また、Xで示されるアルケニル基含有有機基としては、炭素数2〜10のアルケニル基含有有機基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基等の炭素二重結合含有炭化水素基、アクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基、メタクリロイルメチル基等の(メタ)アクリロイルアルキル基、シクロヘキセニルメチル基、シクロヘキセニルエチル基、シクロヘキセニルプロピル基等のシクロアルケニルアルキル基、ビニルオキシプロピル基等を挙げることができる。
【0077】
シリコーン生ゴム(a)は、オイル状、粘土状の性状を有していてもよく、その粘度は25℃において50mPa・s以上であるのが好ましく、特に100mPa・s以上であるのが好ましい。
【0078】
シリコーン生ゴム(a)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0079】
前記架橋成分(b)は、前記シリコーン生ゴム(a)と架橋反応可能な成分であり、例えば、1分子中にSi原子に結合したH原子を少なくとも2個以上、好ましくは3個以上有するSiH結合含有ポリオルガノシロキサン(以下、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと称することもある。)を用いることができる。
【0080】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、直鎖状、分枝状、環状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの中から適宜に選択して使用することができ、例えば、下記(2)式又は(3)式で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを好適例として挙げることができる。
【0081】
HcR(3−c)SiO−(HRSiO)−(RSiO)−SiR(3−d) (2)式
【0082】
【化1】

【0083】
前記(2)式及び(3)式において、Rは前記と同様の1価の炭化水素基であり、同一であっても異なっていてもよい。また、c及びdは0〜3の整数、x、y及びsは0以上の整数、rは1以上の整数であり、c、d及びxは同時に0とはならず、さらに、x+y≧0である。また、r+s≧3、好ましくは8≧r+s≧3である。
【0084】
これらのオルガノハイドロジェンポリシロキサンの中でも、オイル状の性状を有し、粘度が25℃において1〜5000mPa・sであるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
【0085】
架橋成分(b)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0086】
架橋成分(b)の配合割合は、適宜に選択可能であるが、前記シリコーン生ゴム(a)がアルケニル基を含有すると共に、前記架橋成分(b)がSiH結合を含有する場合には、シリコーン生ゴム(a)中のアルケニル基に対する架橋成分(b)中のSiH結合のモル比が0.5〜20であるのが好ましく、特に1〜15の範囲であるのが好ましい。このモル比が0.5未満では、後述する硬化後の架橋密度が低くなり、粘着弾性部材4の形状を保持しにくくなることがある。一方、前記モル比が20を超えると、粘着弾性部材4の粘着力が低下することがある。
【0087】
前記粘着力向上剤(c)は、粘着力を向上するために配合される成分であり、例えば、ポリオルガノシロキサンを用いることができ、特に、RSiO1/2単位及びSiO単位(ただし、Rは脂肪族不飽和結合を有しない1価の炭化水素基である。)を含有するものを好適に用いることができる。ここで、Rとしては、炭素数1〜10の置換基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の直鎖又は分岐アルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基等を例示でき、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0088】
粘着力向上剤(c)は、一般的に粘着性をより高度に確保するために、シリコーン生ゴム(a)及び架橋成分(b)とともに架橋反応を生じない、又は、生じ難い構造を有するものが好ましい。
【0089】
粘着力向上剤(c)としてポリオルガノシロキサンを用いる場合は、RSiO1/2単位/SiO単位のモル比が0.6〜1.7となるものが好ましい。このモル比が0.6未満では、粘着弾性部材4の粘着性が高くなり過ぎ、又はシリコーン生ゴム(a)と相溶し難くなって、シリコーン生ゴム(a)と粘着力向上剤(c)とが分離して粘着性を発現しなくなることがある。一方、前記モル比が1.7を超えると粘着弾性部材4の粘着力が低下することがある。
【0090】
なお、このポリオルガノシロキサンは、Si原子に結合するOH基を含有していてもよく、その場合、OH基含有量が0〜4.0モル%であるのが好ましい。
【0091】
Si原子に結合するOH基を含有するものを用いる場合、前記シリコーン生ゴム(a)として、下記(4)式に示されるポリオルガノシロキサンを含有するときには、前記シリコーン生ゴム(a)と粘着力向上剤(c)とが一部縮合反応物を形成していてもよい。
【0092】
(OH)RYSiO−(RXSiO)−(RSiO)−SiR(OH) (4)式
ただし、(4)式中、Rは脂肪族不飽和結合を有することのない1価の前記炭化水素基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、YはR又はアルケニル基含有有機基である。Xはアルケニル含有有機基である。また、pは1以上の整数、qは100以上の整数である。1価の炭化水素基及びアルケニル基含有有機基は前記したのと同様である。
【0093】
前記シリコーン生ゴム(a)と前記粘着力向上剤(c)との縮合反応物を形成するには、トルエン等の溶剤に溶解したシリコーン生ゴム(a)及び粘着力向上剤(c)の混合物を、アルカリ性触媒の存在下で、室温乃至還流下で反応させればよい。
【0094】
粘着力向上剤(c)は、一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0095】
粘着力向上剤(c)は、シリコーン生ゴム(a)/粘着力向上剤(c)の質量比として20/80〜80/20の範囲で用いるのが好ましく、特に、30/70〜70/30とするのが好適である。この範囲を超えて粘着力向上剤(c)が少ないと粘着性が不足しやすくなり、一方、多いと粘着弾性部材4が硬くなるとともに弾性力が強く、粘着弾性部材4が変形し難くなり、何れにおいても、小型電子部品を粘着保持しにくくなることがある。
【0096】
前記触媒(d)は、主として、前記シリコーン生ゴム(a)と前記架橋成分(b)との架橋反応を促進する触媒であり、通常、ハイドロサイレーションの触媒として使用されるものであればよく、例えば、白金化合物等が挙げられる。白金化合物としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物等が挙げられる。
【0097】
触媒(d)の配合割合は、前記シリコーン生ゴム(a)と前記架橋成分(b)との合計質量に対し、白金成分として1〜5,000ppmとするのが好ましく、特に5〜2,000ppmとすることが好適である。配合割合が1ppm未満では硬化性が低下して架橋密度が低くなって粘着弾性部材4の粘着力が低下することがあり、一方、5,000ppmを超えると処理浴の使用可能時間が短くなる場合がある。
【0098】
前記シリカ系充填材(e)は、前記各成分とともに添加され、粘着弾性部材4の機械的強度を補強するとともに、粘着弾性部材4を構成する成分、特に、粘着性を付与する粘着力向上剤(c)を粘着層に分散させて、小型電子部品の確実な粘着保持に寄与する成分である。
【0099】
シリカ系充填材(e)としては、シリカ、石英紛、珪藻土等が挙げられるが、好ましくはシリカである。好適なシリカとしては、BET法により測定されるその比表面積が50m/g以上、好ましくは100〜400m/gのシリカを挙げることができる。このような比表面積を有するシリカが付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物に含まれていると、粘着弾性部材4の引っ張り強度等の機械的強度を向上させることができると共に粘着性を付与する成分が脱離し難くなり、微細な削りカスやのり残りが生じ難くなる。なお、比表面積が400m/gを超えると、付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物の流動特性が低下することがあり、粘着弾性部材4の製造に時間がかかると共にコストが増大することがある。
【0100】
シリカ系充填材(e)としては、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ等の乾式法により合成されたシリカ、沈降シリカ、シリカゲル等の湿式法により合成されたシリカを挙げることができる。これらの中でも、前記比表面積を有するシリカを得やすい点で、ヒュームドシリカ、沈降シリカが好ましい。
【0101】
シリカ系充填材(e)は、一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。また、必要に応じて、シリカ系充填材(e)の表面を、例えば、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等の表面処理剤で処理したものを用いてもよい。
【0102】
シリカ系充填材(e)の配合割合は、前記シリコーン生ゴム(a)と前記粘着力向上剤(c)との合計100質量部に対して、1〜30質量部とするのが好ましく、5〜20質量部とするのがより好ましい。配合割合が1質量部未満であると、粘着弾性部材4の強度が低下して、十分な効果が得られ難くなり、また、使用時に微細な削りカスやのり残りが発生しやすくなることがある。一方、配合割合が30質量部を超えると、粘着弾性部材4の粘着力が低下することがある。
【0103】
さらに、この発明では、前記シリコーン生ゴム(a)から前記シリカ系充填材(e)の他に、適宜、任意成分を添加することが可能である。
【0104】
例えば、前記成分を混合する時の架橋反応を抑制するための反応制御剤を添加することができる。この反応制御剤としては、例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニルシクロヘキサノール、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ブチン、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ペンチン、3,5−ジメチル−3−トリメチルシロキシ−1−ヘキシン、1−エチニル−1−トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2−ジメチル−3−ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン等が挙げられる。
【0105】
この反応制御剤を添加する場合、その配合割合は、前記シリコーン生ゴム(a)と前記粘着力向上剤(c)との合計100質量部に対して、0〜5.0質量部とすることができ、特に0.05〜2.0質量部とするのが好ましい。この反応制御剤の配合割合が5.0質量部を超えると粘着性組成物の硬化時に硬化し難くなることがある。
【0106】
また、この反応制御剤の他にも、適宜、任意成分を添加することが可能であり、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルジフェニルシロキサン等の非反応性のポリオルガノシロキサン、非粘着性のシリコーンゴム組成物、塗工の際の粘度を下げるための溶剤として、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ヘキサン、オクタン、イソパラフィン等の脂肪族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤、染料、顔料等を使用することができる。
【0107】
前記シリコーン生ゴム(a)、架橋成分(b)、粘着力向上剤(c)、触媒(d)及びシリカ系充填材(e)を含有する組成物としては、適宜製造してもよく、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、前記シリカ系充填材(e)を含有しない組成物である信越化学工業株式会社製の商品名「KE1214」、「X−40−3098」等の「X−40系」及び「X−34−632A/B」等の「X−34系」組成物等が入手可能である。
【0108】
前記過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物は、シリコーン生ゴム(a)と、粘着力向上剤(c)と、シリカ系充填材(e)と、有機過酸化物(f)とを含有する粘着性組成物を挙げることができる。
【0109】
前記ゴムシリコーン生ゴム(a)としては、(RSiO2/2)単位(Rは、炭化水素基を表す。)を含み、置換基を有していてもよいポリシロキサンの長鎖重合体等であればよく、例えば、ポリジメチルシロキサン、その置換体等が挙げられる。このシリコーン生ゴム(a)の性状、粘度等は、前記付加反応硬化型粘着性組成物に含有されるシリコーン生ゴム(a)と基本的に同様である。シリコーン生ゴム(a)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0110】
過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物に含有される粘着力向上剤(c)及びシリカ系充填材(e)は、それぞれ、前記付加反応硬化型粘着性組成物に含有される粘着力向上剤(c)及びシリカ系充填材(e)と基本的に同様である。
【0111】
過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物に含有される有機過酸化物(f)は、主として、シリコーン生ゴム(a)同士を、又は、シリコーン生ゴム(a)と粘着力向上剤(c)とを架橋させる硬化剤であり、例えば、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類等が挙げられる。有機過酸化物(f)としては、ジアシルパーオキサイド類が好ましく、ベンゾイルパーオキサイドが特に好ましい。
【0112】
有機過酸化物(f)の配合割合は、シリコーン生ゴム(a)と粘着力向上剤(c)との合計質量に対し、0.2〜5.0質量部とするのが好ましく、特に0.5〜2.5質量部とすることが好適である。配合割合が、0.2質量部未満では硬化性が低下して架橋密度が低くなって粘着層の粘着力が低下することがあり、一方、5.0質量部を超えると、粘着性組成物によって形成される粘着弾性部材4の硬度が高くなり、粘着力が低下するという欠点が生じる場合がある。
【0113】
過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物には、さらに、シリコーン生ゴム(a)、粘着力向上剤(c)、シリカ系充填材(e)及び前記有機過酸化物(f)の他に、適宜、任意成分を添加することが可能である。任意成分としては、前記付加反応硬化型粘着性組成物で例示した成分が挙げられる。
【0114】
このような過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物としては、適宜製造してもよく、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、前記有機過酸化物(f)を含有しない組成物である、信越化学工業株式会社製の商品名「KR−101−10」、「KR−120」、「KR−130」及び「KR−140」等が入手可能である。
【0115】
例えば、粘着弾性部材4が前記付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物で形成される場合には、通常、80〜130℃で3〜40分加熱することにより、硬化される。また、粘着弾性部材4が前記過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物で形成される場合には、通常、100〜150℃で5〜20分加熱することにより、硬化される。なお、このようにして硬化された付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物及び過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物は、さらに、170〜220℃、2〜10時間の条件で二次加熱されてもよい。
【0116】
保持治具1は、治具本体2の表面の少なくとも一部に中間弾性部材3が前記ゴム組成物で形成されて、前記中間弾性部材3の表面の少なくとも一部に粘着弾性部材4が前記粘着性材料で形成されて、製造されることができる。例えば、保持治具1は、前記ゴム組成物と前記粘着性材料とを各々成形してシート状成形体を作製し、前記ゴム組成物により形成されたシート状成形体の両面、及び前記粘着性材料により形成されたシート状成形体の片面を研磨して、各々の研磨された面に接着剤又はプライマーを、スプレー法、浸漬法等によって塗布した後に接合し、次いで、この前記ゴム組成物により形成されたシート状成形体と前記粘着性材料により形成されたシート状成形体とが接合されて成るシート状成形体を治具本体2の表面の少なくとも一部に貼り付けて、製造されてもよい。また、保持治具1は、前記ゴム組成物と前記粘着性材料とを積層して加硫することによりシート状積層成形体を形成した後に、前記シート状積層成形体の両表面を研磨して、ゴム組成物により形成されて成る表面に接着剤又はプライマーを、スプレー法、浸漬法等によって塗布した後に、治具本体2の表面の少なくとも一部に貼り付けて、製造されてもよい。さらに、保持治具1は、治具本体2と中間弾性部材3と粘着弾性部材4とをトランスファー成形により一体に成型してもよい。
【0117】
前記プライマーとしては、特に限定されず、例えば、シランカップリング系プライマー等が挙げられる。また、接着剤としては、特に制限されないが、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、アミノ基及び/又は水酸基を有する接着剤が好適である。また、これらの樹脂を硬化させるための架橋剤として、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物等が用いられる。
【0118】
保持治具1の厚さを均一にするには、例えば、治具本体2を研磨、研削又は切削等により、治具本体2の厚さを均一にする方法、前記ゴム組成物及び前記粘着性材料からシート状成形体を作製し、このシート状成形体から均一な厚さを有する部分を切り出し、治具本体2に貼り付ける方法、中間弾性部材3及び/又は粘着弾性部材4を表面処理する方法、並びに、これらの方法を組み合わせた方法等が挙げられる。
【0119】
この発明に係る一組の保持治具の一実施例である一組の保持治具を、図を参照して、説明する。一組の保持治具5は、図2に示されるように、第1の保持治具1Aと第2の保持治具1Bとを備えている。そして、第1の保持治具1Aは、第1の治具本体2Aと、前記第1の治具本体2Aの表面の少なくとも一部に形成されて成る第1の中間弾性部材3Aと、前記第1の中間弾性部材3Aの表面に設けられ、被粘着物を粘着保持可能な第1の粘着弾性部材4Aとを備えて成り、第2の保持治具1Bは、第2の治具本体2Bと、前記第2の治具本体2Bの表面の少なくとも一部に形成されて成る第2の中間弾性部材3Bと、前記第2の中間弾性部材3Bの表面に設けられ、被粘着物を粘着保持可能な第2の粘着弾性部材4Bとを備えて成る。第1の保持治具1A及び第2の保持治具1Bは、前記保持治具1と基本的に同様に構成されており、中間弾性部材3A及び3Bそれぞれは、粘着弾性部材4A又は4Bよりも小さな硬度を有している。
【0120】
第1の粘着弾性部材4Aと第2の粘着弾性部材4Bとは、被粘着物を粘着保持することのできる粘着力、通常、1〜50g/mmの粘着力を有しているのがよく、7〜50g/mmの粘着力を有しているのが特によい。
【0121】
そして、第2の保持治具1Bにおける第2の粘着弾性部材4Bは、第1の粘着弾性部材4Aの粘着力よりも大きな粘着力を有する。第1の粘着弾性部材4A及び第2の粘着弾性部材4Bがこのような粘着力の関係を有することにより、第1の保持治具1Aにおける第1の粘着弾性部材4Aから第2の保持治具1Bにおける第2の粘着弾性部材4Bに被粘着物を移し替えることができる。第1の粘着弾性部材4Aから第2の粘着弾性部材4Bに被粘着物を脱落することなくスムーズに移し替えることができる点で、第1の粘着弾性部材4Aと第2の粘着弾性部材4Bとの粘着力の差は15〜43g/mmであるのが好ましく、18〜35g/mmであるのがより好ましく、20〜30g/mmであるのが特に好ましい。
【0122】
一組の保持治具5は、被粘着物を、第1の保持治具1Aに粘着保持させ、次いで、第2の保持治具1Bに移し替えて粘着保持させるのに好適に使用され、特に、形状が薄板状の直方体である小型電子部品用部材及び/又は小型電子部品を、第1の保持治具1Aに粘着保持させ、次いで、第2の保持治具1Bに移し替えて粘着保持させるのに好適に使用される。
【0123】
図2に示した例においては、第1の保持治具1Aと第2の保持治具1Bとは、いずれも本発明に係る保持治具1を使用しており、第1の保持治具1A及び第2の保持治具1Bは、治具本体2A及び2Bと粘着弾性部材4A及び4Bとの間に、粘着弾性部材4A及び4Bよりも小さな硬度を有する中間弾性部材3A及び3Bが形成されて成るが、一組の保持治具5において、第1の保持治具1A及び第2の保持治具1Bのいずれか一方が前記保持治具1であれば良く、他の一方は、中間弾性部材3を有しておらず、治具本体の表面に粘着弾性部材が形成されて成る保持治具、又は、中間弾性部材が粘着弾性部材の硬度以上の硬度を有する保持治具であってもよい。第1の保持治具1A及び第2の保持治具1Bのいずれかの保持治具がこの発明に係る保持治具であると、粘着保持された多数の被粘着物を第2の保持治具1Bに移し替えるときに、第1の保持治具1Aに粘着保持された多数の被粘着物を第2の保持治具1Bに押圧しても、この発明に係る保持治具の中間弾性部材によって、押圧方向に生じる粘着弾性部材4A及び4Bの歪みを速やかに回復させることができると共に、粘着弾性部材4A及び4Bと被粘着物との間にかかる押圧力を効果的に吸収することができる。したがって、この発明に係る一組の保持治具によれば、第1の保持治具1Aに粘着保持された被粘着物の安定な粘着保持状態を維持しつつ被粘着物を第2の保持治具1Bに移し替えることができると共に、必要以上の応力が被粘着物にかかることなく、すべての被粘着物を第2の保持治具1Bにほぼ均一に押圧することができるから、第1の保持治具1Aに多数の被粘着物のほとんどを残存させることなく、第2の保持治具1Bに多数の被粘着物を粘着保持させることができる。その結果、この発明に係る一組の保持治具によれば、均一な起立状態で安定して、大部分の被粘着物を第1の保持治具1Aから第2の保持治具1Bに移し替えることができる。それ故、LICCのように形状が薄板状の直方体である小型部品用部材であっても、品質精度の高い小型部品を製造することができる。多数の被粘着物を他方の保持治具に所望のように移し替えることができると共に、小型部品用部材から品質精度のより一層高い小型部品を製造することができる点で、第2の保持治具1Bが前記保持治具1とされるのが好ましく、第1の保持治具1A及び第2の保持治具1Bのいずれもが前記保持治具1とされるのがより好ましい。
【0124】
この発明に係る一実施例である被粘着物保持装置を、図を参照して、説明する。被粘着物保持装置10は、図3に示されるように、第1の保持治具1A及び第2の保持治具1Bを含む一組の保持治具を備え、被粘着物を粘着保持すると共に、第1の保持治具1Aから第2の保持治具1Bに被粘着物を移し替えることのできる装置である。被粘着物保持装置10が備える一組の保持治具は、前記一組の保持治具5と同様に構成されており、第1の保持治具1A及び第2の保持治具1Bのいずれもが前記保持治具1とされる例である。この被粘着物としては、形状が薄板状の直方体を有する小型電子部品用部材及び/又は小型電子部品が好適に使用される。
【0125】
被粘着物保持装置10は、図3に示されるように、第1の保持治具1Aと第2の保持治具1Bとが、第1の粘着弾性部材4Aと第2の粘着弾性部材4Bとが相対向するように配置可能に成っている。これにより、第1の保持治具1Aに粘着保持された被粘着物を第2の保持治具1Bに粘着保持された状態に移し替えることができる。このような第1の粘着弾性部材4Aと第2の粘着弾性部材4Bとの配置は、機械的構成からなる変位手段により実現されてもよく、手動により実現されてもよい。
【0126】
図3に示されるように、第1の保持治具1Aは、治具本体2Aにおける粘着弾性部材4Aが形成されていない表面側が、保持治具変位手段12から下方に延在する支持アーム13の先端に設けられた支持部材14に固定され、保持治具変位手段12に支持されている。
【0127】
この保持治具変位手段12は、軌条11に取り付けられ、この軌条11に沿って水平方向に運動可能に構成されると共に、支持アーム13を上下方向に運動可能に構成されている。したがって、この保持治具変位手段12に支持された第1の保持治具1Aは、保持治具変位手段12によって、水平方向及び上下方向に自在に移動可能と成っている。すなわち、被粘着物を懸垂保持する第1の粘着弾性部材4Aを有する第1の保持治具1Aは、例えば、導電性ペースト浴の上方に、又はその位置から導電性ペースト浴の上方以外の適宜の位置、例えば、第2の保持治具1Bの上方の位置に移送されることができると共に、第1の保持治具1Aは、第2の保持治具1Bに向けて下降させられ、また第2の保持治具1Bの粘着弾性部材4Bに被粘着物を保持させ替えた後、第1の保持治具1Aを第2の保持治具1Bから上昇させることができる。
【0128】
さらに、この保持治具変位手段12は、軌条11を中心軸にして軸回りに回転運動可能に構成されている。保持治具変位手段12がこのように回転運動可能であると、第1の保持治具1Aの状態を、被粘着物を粘着弾性部材4Aにより懸垂保持する状態、及び、被粘着物を第1の粘着弾性部材4Aにより立設保持する状態に所望のように変えることができるようになる。
【0129】
また、図3に示されるように、第2の保持治具1Bは、第2の治具本体2Bにおける第2の粘着弾性部材4Bが形成されていない表面側が、保持治具変位手段16から上方に延在する支持アーム17の先端に設けられた支持部材18に固定され、保持治具変位手段16に支持されている。
【0130】
この保持治具変位手段16は、軌条11とほぼ直交する軌条15に取り付けられ、この軌条15に沿って水平方向に運動可能に構成されると共に、支持アーム17を上下方向に運動可能に構成されている。したがって、この保持治具変位手段16に支持された第2の保持治具1Bは、保持治具変位手段16によって、水平方向及び上下方向に自在に移動可能とされている。すなわち、第2の保持治具1Bは、適宜の位置、例えば、第1の保持治具1Aの下方の位置に移送されることができると共に、第2の保持治具1Bは、第1の保持治具1Aに向けて上昇させられ、また前記第1の保持治具1Aにおける第1の粘着弾性部材4Aに粘着保持された被粘着物を保持させ替えた後、第2の保持治具1Bを第1の保持治具1Aから下降させることができる。
【0131】
さらに、この保持治具変位手段16は、軌条15を中心軸にして軸回りに回転運動可能に構成されている。保持治具変位手段16がこのように回転運動可能であると、第2の保持治具1Bの状態を、被粘着物を粘着弾性部材4Bにより立設保持する状態、及び、被粘着物を第2の粘着弾性部材4Bにより懸垂保持する状態に所望のように変えることができるようになる。
【0132】
前記保持治具変位手段12及び前記保持治具変位手段16における運動機構は、特に限定されず、例えば、駆動力を発生する駆動手段、例えば、モータと、このモータの出力を軌条11又は15、及び、支持アーム13又は17に伝達する伝達手段、例えば、歯車、ワイヤ等とを備えた運動機構が挙げられる。この運動機構は、通常のパソコン等によって、制御しても、手動で制御してもよい。
【0133】
図3に示されるように、この被粘着物保持装置10は、軌条11と軌条15が交差する位置近傍で、第1の保持治具1Aと第2の保持治具1Bとが、第1の粘着弾性部材4Aと第2の粘着弾性部材4Bとが相対向するように配置可能に成っている。これにより、第1の保持治具1Aに粘着保持された被粘着物を第2の保持治具1Bに移し替えることができる。
【0134】
次に、この発明に係る被粘着物保持装置10を用いて、形状が薄板状の直方体を有する小型電子部品用部材の一つであるLICC用部材に電極を形成して、LICCを製造する方法について説明し、併せてこの被粘着物保持装置10の作用について説明する。このLICC用部材6は、図4に示されるように、薄板状の直方体を成し、LICC8は、図9(B)に示されるように、このLICC用部材の長軸方向(W方向)に沿って、この角柱体における厚さ方向に垂直な断面の長辺方向(図9(B)のL方向)における両端部に電極7が形成されて成る。
【0135】
この発明の一例である被粘着物保持装置10を用いて、LICC用部材6に電極7を以下のようにして形成する。
【0136】
先ず、図3に示された保持治具変位手段12を軌条11を中心軸にして軸回りに回転運動させ、図4に示されるように、第1の粘着弾性部材4Aを上にした第1の保持治具1A上に立設配置板20を重ねる。この立設配置板20には、上部開口部に表面にかけて拡径したテーパ面21が形成されて成り、LICC用部材6を収容可能な貫通孔22である複数の配設孔22が形成されている。この立設配置板20の上面に多数のLICC用部材6を乱雑状態に頒布する。この立設配置板20に振動を加えると、LICC用部材6がテーパ面21に案内されるようにして配設孔22に収まる。この立設配置板20の厚みは、LICC用部材6の長さ(図9(B)におけるLに対応する。)よりも小さく設計されているので、配設孔22に収まったLICC用部材6は、その下端面(図9(B)において、電極7が形成される前の側面Sに対応する面。)が第1の粘着弾性部材4Aに接触し、その上端面が立設配置板20の上端面から突出した状態になっている。このとき、図4におけるLICC用部材6は、この角柱体における厚さ方向に垂直な側面(図9(B)における辺Lと辺Tとから画成される側面)のみが図示されている。
【0137】
次いで、図4に示されるように、平坦なプレス板23で、多数のLICC用部材6全ての突出頭部を、押圧する。そうすると、配設孔22に収容されているLICC用部材6の下端面が第1の粘着弾性部材4Aに僅かにめり込むと共に第1の粘着弾性部材4Aの粘着力によりLICC用部材6の下端部が第1の粘着弾性部材4Aに粘着する。このとき、第1の保持治具1Aは、第1の治具本体2Aと第1の粘着弾性部材4Aとの間に第1の中間弾性部材3Aを有しているので、LICC用部材6の突出頭部を押圧したときに生じた第1の粘着弾性部材4Aの押圧方向の歪を速やかに回復することができ、第1の粘着弾性部材4Aの表面は平滑さを維持する。したがって、図5に示されるように、第1の粘着弾性部材4Aにおける多数のLICC用部材6は、それらの突出端面の位置がほぼ同一平面内にある。その後、立設配置板20を除去する。次いで、保持治具変位手段12(図示せず。)を軌条11を中心軸にして軸回りに回転運動させ、図5に示されるように、第1の保持治具1Aを回転させて第1の粘着弾性部材4Aを下側に向けると、第1の粘着弾性部材4Aの下側面に多数のLICC用部材6が懸垂保持された状態になる。
【0138】
次いで、保持治具変位手段12(図示せず。)を軌条11(図示せず。)に沿って水平方向に運動させて、多数のLICC用部材6を第1の粘着弾性部材4Aに懸垂保持された状態のまま第1の保持治具1Aを導電性ペースト浴(図示せず。)の上方に水平移動させる。その後、保持治具変位手段12により支持アーム13(図示せず。)を下方向に運動させて、導電性ペースト浴に向かって第1の保持治具1Aを下降させる。第1の保持治具1Aを下降させて導電性ペースト浴にLICC用部材6の下端部を、浸漬させる。このとき、第1の粘着弾性部材4Aの表面に粘着保持されたLICC用部材6の下端部、すなわち、粘着端面とは反対側の端面がいずれも同一平面に位置しているから、多数のLICC用部材6それぞれは、それらの下端部における一定部分が導電性ペースト浴に浸漬される。浸漬後に、保持治具変位手段12により支持アーム13を上方向に運動させて、第1の保持治具1Aを上昇させる。そうすると、図6に示されるように、第1の粘着弾性部材4Aに懸垂保持された各LICC用部材6の下端部にほぼ均等な厚さの電極7が形成される。
【0139】
次いで、保持治具変位手段12を軌条11に沿って水平方向に運動させて、第2の保持治具1Bにおける第2の粘着弾性部材4Bの上方に、下端部に電極7を塗設した多数のLICC用部材6を第1の粘着弾性部材4Aに懸垂保持した第1の保持治具1Aを水平移動させる。次いで、図7に示されるように、保持治具変位手段12(図示せず。)により支持アーム13を下方向に運動させて、第2の保持治具1B向かって第1の保持治具1Aを下降させる。なお、この第2の保持治具1Bは第2の粘着弾性部材4Bを上にした状態で配置されている。
【0140】
図7に示されるように、保持治具変位手段12(図示せず。)により支持アーム13(図示せず。)を下方向に運動させて、第1の保持治具1Aを下降させ、第2の保持治具1Bにおける第2の粘着弾性部材4Bに、第1の保持治具1Aにおける第1の粘着弾性部材4Aに懸垂保持された多数のLICC用部材6の、電極7が形成された下端部を、粘着させる。このとき、第2の粘着弾性部材4Bは、第1の粘着弾性部材4Aの粘着力よりも大きな粘着力を有すると共に、第1の保持治具1Aにおける粘着弾性部材4Aの表面に粘着保持されたLICC用部材6の粘着端面とは反対側の端面が、いずれも同一平面に位置しているから、図7に示されるように、第1の粘着弾性部材4Aにおける多数のLICC用部材6はそれぞれ、それらの自由端、すなわち、底面がほぼ均一に第2の粘着弾性部材4Bに押圧される。さらに、第1の中間弾性部材3A及び第2の中間弾性部材3Bによって、第1の粘着弾性部材4A及び第2の粘着弾性部材4BとLICC用部材6との間にかかる押圧力が吸収されるので、必要以上の応力がLICC用部材6にかかることがなく、すべてのLICC用部材6をほぼ均一に押圧することができると共に、LICC用部材6が座屈又は屈曲などの変形を生じることを防止することができる。このとき、LICC用部材6を第2の粘着弾性部材4Bに押圧することにより第2の粘着弾性部材4Bの厚さ方向及びこの厚さ方向に垂直な表面方向に生じた歪が、第2の中間弾性部材3Bにより速やかに回復し、第2の粘着弾性部材4Bの表面は平滑さを維持することができるので、LICC用部材6が転倒又は傾倒することが防止され、均一な起立状態で安定して第2の保持治具1Bに粘着保持することができる。次いで、保持治具変位手段12(図示せず。)により支持アーム13(図示せず。)を上方向に運動させて、第1の保持治具1Aを上昇させると、LICC用部材6は電極7を介して第2の粘着弾性部材4Bに強固に粘着されているので、第1の保持治具1Aにおける第1の粘着弾性部材4AにLICC用部材6が残存することなく離脱する。このようにして、第1の保持治具1Aから第2の保持治具1Bに多数のLICC用部材6を脱落することなく所望のように移し替えることができる。
【0141】
次いで、保持治具変位手段16(図示せず。)を軌条15(図示せず。)を中心軸にして軸回りに回転運動させ、図8に示されるように、第2の保持治具1Bにおける第2の粘着弾性部材4Bに電極7を介してLICC用部材6を立設した状態で粘着保持している第2の保持治具1Bが、回転されてLICC用部材6が懸垂保持された状態にされる。
【0142】
次いで、保持治具変位手段16(図示せず。)を軌条15(図示せず。)に沿って水平方向に運動させて、多数のLICC用部材6を第2の粘着弾性部材4Bに懸垂保持された状態のまま第2の保持治具1Bを導電性ペースト浴(図示せず。)の上方に水平移動させる。その後、保持治具変位手段16(図示せず。)により支持アーム17(図示せず。)を下方向に運動させて、導電性ペースト浴に向かってこの第2の保持治具1Bを下降させる。第2の保持治具1Bを下降させて導電性ペースト浴にLICC用部材6の下端部を、浸漬させる。このとき、第2の保持治具1Bは、前記範囲の面精度を有しているから、多数のLICC用部材6それぞれは、それらの下端部における一定部分が導電性ペースト浴に浸漬される。浸漬後に、保持治具変位手段16(図示せず。)により支持アーム17(図示せず。)を上方向に運動させて、第2の保持治具1Bを上昇させる。そうすると、図8に示されるように、第2の保持治具1Bにおける第2の粘着弾性部材4Bに懸垂保持された各LICC用部材6の下端部にほぼ均等な厚さの電極7が形成される。
【0143】
第2の保持治具1Bにおける第2の粘着弾性部材4Bには、LICC用部材6それぞれの両端部にほぼ均等な大きさの電極7が形成されて成るLICC8が、懸垂された状態で粘着保持されている。この第2の保持治具1Bに粘着保持されたLICC8は、例えば、第2の粘着弾性部材4Bの下側面にストリッパ(図示せず。)を摺接することにより、第2の粘着弾性部材4Bに懸垂保持されていたLICC8が離脱し、落下する。
【0144】
このように、この発明に係る保持治具1又は一組の保持治具5を用いることにより、第1の保持治具1Aに粘着保持した多数のLICC用部材6を脱落することなく第2の保持治具1Bに所望のように移し替えることができると共に、均等な厚さを有する電極7が両端部に形成された品質精度の高いLICC8を容易に製造することができる。
【0145】
この発明に係る保持治具1、一組の保持治具5及び被粘着物保持装置10はそれぞれ、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
【0146】
例えば、前記保持治具1においては、治具本体2、中間弾性部材3、及び粘着弾性部材4はいずれも矩形に形成されているが、この発明において、治具本体、中間弾性部材、及び粘着弾性部材は、小型部品の製造に適した形状であればよく、被粘着物の形状、被粘着物保持装置の形状、製造工程、作業性等に応じて、任意の形状とされる。例えば、保持治具は、正方形、長方形、五角形、六角形等の多角形、円形、楕円形、不定形、又は、これらを組み合わせた形状等の板状体が挙げられる。また、治具本体2における中間弾性部材3及び粘着弾性部材4が形成されない一方の面側は、平面形状であっても、半円筒体等の立体形状であってもよい。前記保持治具1に粘着保持される被粘着物は、LICC用部材のような薄板状の直方体である小型部品用部材だけでなく、底面が正方形の角柱体及び円柱体等種々の形状を有する小型部品及び小型部品用部材等を挙げることができる。また、この発明に係る保持治具は、被粘着物の製造工程に加えて、搬送工程等において被粘着物を粘着保持する必要がある場合にも使用されることができる。
【0147】
前記一組の保持治具5においては、第1の保持治具1Aと第2の保持治具1Bとを備えているが、これらの保持治具に加えて、第3の保持治具等を備えていてもよい。この第3の保持治具は、治具本体と粘着弾性部材とにより形成されて成る従来の保持治具であってもよく、また、中間弾性部材が粘着弾性部材の硬度以上の硬度を有する保持治具であってもよいが、前記保持治具1であるのが好ましい。前記一組の保持治具5に粘着保持される被粘着物は、LICC用部材のような薄板状の直方体である小型部品用部材だけでなく、底面が正方形の角柱体及び円柱体等種々の形状を有する小型部品及び小型部品用部材等を挙げることができる。
【0148】
被粘着物保持装置10においては、第1の保持治具1Aと第2の保持治具1Bとを備えているが、3種類以上の保持治具を備えていてもよい。第3の保持治具は、治具本体と粘着弾性部材とにより形成されて成る従来の保持治具であってもよく、また、前記保持治具1であってもよいが、前記保持治具1であるのが好ましい。被粘着物保持装置10において粘着保持される被粘着物は、LICC用部材のような薄板状の直方体である小型部品用部材だけでなく、底面が正方形の角柱体及び円柱体等種々の形状を有する小型部品及び小型部品用部材等を挙げることができる。
【0149】
さらに、被粘着物保持装置10においては、軌条11と軌条15とがほぼ直角に交差するように配設されているが、軌条と軌条とは略平行に配設されていてもよい。
【0150】
また、被粘着物保持装置10においては、保持治具変位手段12及び16は軌条11及び15を中心軸にして軸回りに回転運動可能に構成されているが、これらの保持治具変位手段は回転運動不能に構成されてもよい。この場合には、第1の粘着弾性部材に被粘着物を粘着保持させた第1の保持治具を保持治具変位手段に支持させればよく、第2の粘着弾性部材に被粘着物を粘着保持した第2の保持治具を保持治具変位手段から取り外して、被粘着物を第2の粘着弾性部材から取り外せばよい。
【実施例】
【0151】
(実施例1)
ステンレス鋼板(SUS304製、厚さ0.5mm)から、一辺の長さが120mmである正方形の盤状体を切り出した。この盤状体における一方の表面をアセトン等の有機溶媒で脱脂処理した後、シリコーンゴム接着用プライマー(商品名「X−33−156−20」、信越化学工業株式会社製)を適量塗布して、治具本体Aを作製した。
【0152】
前記シリコーン生ゴム(a)、架橋成分(b)、粘着力向上剤(c)及び触媒(d)を含有するシリコーンゴム(商品名「X−34−632 A/B」、信越化学工業株式会社製)99質量%及び(e)成分としてシリカ系充填材(株式会社龍森製、商品名「クリスタライト」)1質量%を含有する付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物と、粘着力調整組成物として液状シリコーンゴム組成物(商品名「KE−1950/30 A/B」、信越化学工業株式会社製)とを配合した粘着性シリコーン組成物(付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物:液状シリコーンゴム組成物=50:50)を、10MPaの加圧下、120℃でプレス成形し、次いで、200℃、4時間の条件下、さらに硬化させて、一辺の長さが110mm、厚さ1.5mmの正方形になるように、粘着弾性部材Aを製造した。
【0153】
次いで、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム(ア)及びシリカ系充填剤(イ)を含有する付加反応型シリコーンゴム組成物(商品名「KE−904FU」、信越化学工業株式会社製)100質量部、(ウ)成分として発泡剤(商品名「KEP−13」、信越化学工業株式会社製)1.5質量部、(エ)成分として付加反応架橋剤(商品名「C−153A」、信越化学工業株式会社製)2質量部、(オ)成分として付加反応触媒としての白金触媒(商品名「C−153A」、信越化学工業株式会社製)2質量部、(カ)反応制御剤として「R−153A」、信越化学工業株式会社製)0.5質量部を二本ロールで十分混練して配合した付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を、10MPaの加圧下、120℃でプレス成形し、次いで、200℃、4時間の条件下、さらに硬化させて、一辺の長さが110mm、厚さ1.5mmの正方形になるように、中間弾性部材Aを製造した。なお、この中間弾性部材Aの内部に存在するセルの平均セル径を前記方法により測定したところ、250μmであった。
【0154】
次いで、製造した粘着弾性部材A及び中間弾性部材Aの両面を各々平面研削盤で研磨した後、中間弾性部材Aの片面にシリコーンゴム接着用プライマー(商品名「X−33−156−20」、信越化学工業株式会社製)を適量塗布して、このシリコーンゴム接着用プライマーを塗布した面に粘着弾性部材Aを重ね合わせて、粘着弾性部材Aと中間弾性部材Aとを接着した。
【0155】
次いで、前記治具本体Aのシリコーンゴム接着用プライマーが塗布された面に、粘着弾性部材Aと中間弾性部材Aとが接着されて成る積層成形体の中間弾性部材A側を重ね合わせて、この積層成形体と治具本体Aとを接着して、保持治具Aを製造した。
【0156】
(実施例2)
前記中間弾性部材Aを形成する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物に含まれる発泡剤の配合量を0.8質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、保持治具Bを製造した。なお、保持治具Bの中間弾性部材における平均セル径は130μmであった。
(実施例3)
前記中間弾性部材Aを形成する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物に含まれる発泡剤の配合量を1.2質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、保持治具Cを製造した。なお、保持治具Cの中間弾性部材における平均セル径は200μmであった。
(実施例4)
前記中間弾性部材Aを形成する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物に含まれる発泡剤の配合量を0.4質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、保持治具Dを製造した。なお、保持治具Dの中間弾性部材における平均セル径は70μmであった。
(実施例5)
前記中間弾性部材Aを形成する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物に含まれる発泡剤の配合量を3質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、保持治具Eを製造した。なお、保持治具Eの中間弾性部材における平均セル径は500μmであった。
【0157】
(実施例6)
前記中間弾性部材Aにおける付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を付加硬化型液状シリコーンゴム組成物(商品名「KE−1950/10 A/B」、信越化学工業株式会社製)に変更して中間弾性部材Fを製造した以外は、実施例1と同様にして、保持治具Fを製造した。なお、前記中間弾性部材Fは、金型を使用してLIMS成形により製造した。
(実施例7)
前記粘着弾性部材Aにおける付加反応硬化型粘着性シリコーンゴム組成物と液状シリコーンゴム組成物(商品名「KE−1950/30 A/B」、信越化学工業株式会社製)との配合量を90:10に変更して、粘着弾性部材Aよりも高粘着性の粘着弾性部材Gを製造した以外は、実施例1と同様にして、保持治具Gを製造した。
【0158】
(比較例1)
前記保持治具Aにおいて、前記治具本体Aのシリコーンゴム接着用プライマーが塗布された面に前記中間弾性部材Aを介在させることなく粘着弾性部材Aを重ね合わせて、前記治具本体Aと粘着弾性部材Aとを接着したこと以外は、実施例1と同様にして、保持治具Hを製造した。
(比較例2)
前記保持治具Gにおいて、前記治具本体Aのシリコーンゴム接着用プライマーが塗布された面に前記中間弾性部材Aを介在させることなく粘着弾性部材Gを重ね合わせて、前記治具本体Aと粘着弾性部材Gとを接着したこと以外は、実施例7と同様にして、保持治具Iを製造した。
【0159】
製造した保持治具A〜Iにおける各粘着弾性部材の粘着力を前記した方法により測定したところ、保持治具A〜F及びHにおける各粘着弾性部材の粘着力は15g/mmであり、保持治具G及びIにおける各粘着弾性部材の粘着力は40g/mmであった。
【0160】
保持治具A〜Iにおける各粘着弾性部材と同様にして厚さ10mmの試験片を作製して、この試験片の硬度をJIS K6253[デュロメータE]の規定に準じて測定し、測定された各硬度を、保持治具A〜Iにおける各粘着弾性部材のデュロメータE硬度とした。その結果を表1に示した。
【0161】
また、保持治具A〜Gにおける各中間弾性部材と同様にして厚さ10mmの試験片を作製して、この試験片の硬度をJIS K6253[デュロメータE]の規定に準じて測定し、測定された各硬度を、保持治具A〜Gにおける各中間弾性部材のデュロメータE硬度とした。その結果を表1に示した。
【0162】
【表1】

【0163】
表2に示す保持治具の組み合わせに従って、一組の保持治具を選択し、図3に示される被粘着物保持装置を組み立てた。被粘着物は、図9(B)に示されたLICC25と同様の形状を有し、L×W×T(mm)が0.8×1.7×0.5(mm)であるLICC用部材6を用いた。また、4,000個の配設孔22が形成された厚さ0.4mmの立設配置板20を準備した。この立設配置板20の各配設孔22は、縦0.9mm×横2mmであり、その上部開口部に表面にかけて拡径したテーパ面21を有している。
【0164】
表2に示す第1の保持治具1Aにおける第1の粘着弾性部材4A上にこの立設配置板20を重ね、立設配置板20の上面に多数のLICC用部材6を乱雑状態に頒布した。この状態で立設配置板20に振動を加え、LICC用部材6を配設孔22内に落下させた。このとき、LICC用部材6は、図9(b)に示されるLICC25の電極7を形成する前の側面Sを被粘着面として第1の粘着弾性部材上に位置し、かつ、前記被粘着面に対して反対側の面が立設配置板20の上端面から突出した状態になっていた。次いで、図4に示されるように、平坦なプレス板23でLICC用部材6全ての突出頭部を、第1の粘着弾性部材4AにLICC用部材6が100μm沈み込むように、3秒間押圧した。この後、プレス板23及び立設配置板20をLICC用部材6及び第1の粘着弾性部材4Aから離して、第1の粘着弾性部材4Aに4,000個のLICC用部材6をほぼ等間隔で立設保持した。
【0165】
次いで、第1の粘着弾性部材4Aに粘着保持されたLICC用部材6が懸垂状態になるように第1の保持治具1Aを回転させた(すなわち、図5に示される第1の保持治具1Aと同じ状態である。)。次いで、第1の保持治具1Aを、表2に示す第2の保持治具に向かって下降させ、第1の保持治具1Aに粘着保持されたLICC用部材6を、第2の保持治具1Bにおける第2の粘着弾性部材4BにLICC用部材6が100μm沈み込むように、押圧した。押圧後3秒が経過してから、第1の保持治具1Aを3mm/secの速度で上方に持ち上げて、第2の保持治具1Bから引き離した。
【0166】
(均一保持性の評価)
前記操作において、第1の保持治具1Aにおける第1の粘着弾性部材4Aにほぼ等間隔で立設保持されたLICC用部材6の粘着保持状態を、次の基準に基づいて目視により評価した。その結果を表2に示した。
○:ほぼすべてのLICC用部材6が、転倒又は傾倒することなく、均一な起立状態で安定して粘着保持されている。
△:ほとんどのLICC用部材6は、転倒も傾斜もしなかったが、少数のLICC用部材6が実用に支障の無い程度に傾倒している。
×:少数のLICC用部材6が、実用に支障のあるほど傾斜、又は転倒している。
【0167】
(転写不能割合の評価)
引き離された第1の保持治具1Aにおける第1の粘着弾性部材4Aに粘着保持されたまま、第2の保持治具1Bに移し替えられなかったLICC用部材6の数、及び、第1の粘着弾性部材4Aから脱落し、第2の粘着弾性部材4Bに粘着保持されなかったLICC用部材6の数をそれぞれ確認した。この操作を10回行い、その算術平均値を求め、LICC用部材6の総数に対する、移し替えられなかったLICC用部材6の数及び脱落したLICC用部材6の数の合計数の割合(転写不能割合と称する。)を求め、次の基準により評価した。その結果を表2に示した。
◎:転写不能割合が0.3%以下。
○:転写不能割合が0.3%を超え、0.5%以下。
△:転写不能割合が0.5%を超え、1.5%未満。
×:転写不能割合が1.5%以上。
【0168】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】図1は、この発明に係る保持治具の一実施例である保持治具を示す概略斜視図である。
【図2】図2は、この発明に係る一組の保持治具の一実施例である一組の保持治具を示す概略斜視図である。
【図3】図3は、この発明に係る被粘着物保持装置の一実施例である被粘着物保持装置を示す概略説明図である。
【図4】図4は、この発明に係る被粘着物保持装置の一実施例である被粘着物保持装置における第1の粘着弾性部材にLICC用部材を立設状態で粘着させる手順を説明するための概略断面説明図である。
【図5】図5は、この発明に係る被粘着物保持装置の一実施例である被粘着物保持装置における第1の保持治具によりLICC用部材を懸垂保持する状態を示す概略説明図である。
【図6】図6は、この発明に係る被粘着物保持装置の一実施例である被粘着物保持装置における第1の保持治具に、電極が形成されたLICC用部材を、懸垂保持した状態を示す概略説明図である。
【図7】図7は、この発明に係る被粘着物保持装置の一実施例である被粘着物保持装置における第1の保持治具に懸垂保持されたLICC用部材を、第2の保持治具に押圧した状態を示す概略説明図である。
【図8】図8は、この発明に係る被粘着物保持装置の一実施例である被粘着物保持装置における第2の保持治具に、両端部に電極を塗設して成るLICCを懸垂保持する状態を示す概略説明図である。
【図9】図9(A)は、従来のチップコンデンサの概略斜視図であり、図9(B)は、低背化したチップコンデンサの概略斜視図である。
【符号の説明】
【0170】
1、1A、1B 保持治具
2、2A、2B 治具本体
3、3A、3B 中間弾性部材
4、4A、4B 粘着弾性部材
5 一組の保持治具
6 LICC用部材
7 電極
8、25 LICC
9 従来の保持治具
10 被粘着物保持装置
11、15 軌条
12、16 保持治具変位手段
13、17 支持アーム
14、18 支持部材
20 立設配置板
21 テーパ面
22 貫通孔
23 プレス板
24 従来のチップコンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治具本体と、前記治具本体における表面に形成されて成る中間弾性部材と、前記中間弾性部材における治具本体が形成されている面とは反対側の表面に形成されて成る粘着弾性部材とを備え、前記中間弾性部材は前記粘着弾性部材よりも小さな硬度を有していることを特徴とする保持治具。
【請求項2】
前記中間弾性部材は、5〜20のデュロメータE硬度を有していることを特徴とする請求項1に記載の保持治具。
【請求項3】
請求項1に記載の保持治具、及び、請求項1に記載の保持治具又は治具本体と前記治具本体における表面に形成されて成る粘着弾性部材とを有する保持治具を備えている一組の保持治具であって、
前記一組の保持治具のうちの一方の保持治具における粘着弾性部材は、他方の保持治具における粘着弾性部材よりも大きな粘着力を有していることを特徴とする一組の保持治具。
【請求項4】
請求項3に記載の一組の保持治具を備えた被粘着物保持装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−105312(P2009−105312A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277448(P2007−277448)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【復代理人】
【識別番号】100118809
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 育男
【Fターム(参考)】