説明

保温箱及びその製造方法

【課題】発泡性、熱融着性及び耐熱性に優れた保温材を提供することを課題とする。
【解決手段】断熱材としての保温箱が、炭素数10〜20の多環式テルペノールとメタクリル酸とのエステルに由来する成分及びスチレン系単量体に由来する成分を含む樹脂と、揮発性発泡剤とを含み、(1)前記樹脂が、前記エステルに由来する成分を、前記エステルに由来する成分とスチレン系単量体に由来する成分との合計100重量部に対して、1重量部より多く30重量部未満含み、(2)0.35〜6.00の範囲の吸光度比X(D1730/D1600)の表層を有し(D1730及びD1600は、赤外分光分析による赤外吸収スペクトル中、1730cm-1での吸光度及び1600cm-1での吸光度を意味する)、(3)前記吸光度比Xより小さい吸光度比Y(D1730/D1600)の中心部を有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡成形体からなることを特徴とする保温箱により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保温箱及びその製造方法に関する。本発明によれば、発泡性、熱融着性及び耐熱性に優れた保温箱及びその製造方法を提供できる。
【背景技術】
【0002】
保温箱として、合成樹脂製品が多く使用されている。中でも、保温性を高めて内容物をより長期に保存するために断熱材としての発泡成形体が多く用いられている(例えば、特開2005−225533号公報)。発泡成形体は、発泡性樹脂粒子を型内発泡成形することにより得られる。なお、型内発泡成形とは、発泡性ポリスチレン粒子のような発泡性樹脂粒子を加熱して予備発泡させ、得られた予備発泡粒子を金型のキャビティ内に充填し、予備発泡粒子を二次発泡させて予備発泡粒子同士を熱融着させることで発泡成形体を成形する成形方法をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−225533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
保温箱は熱が付与される状態下で使用されるため、寸法安定性を向上させる観点から高い耐熱性を有すること要求されている。上記公報の発泡成形体でもある程度の耐熱性を確保できるが、より高温下において使用される保温箱の寸法安定性を向上させるため、更なる耐熱性の向上が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者は、鋭意検討の結果、炭素数10〜20の多環式テルペノールとメタクリル酸とのエステル由来の樹脂成分を発泡性スチレン系樹脂粒子の表面付近にリッチに存在させることで、保温箱の耐熱性を向上できることを意外にも見出すことで本発明に至った。
【0006】
かくして本発明によれば、断熱材としての保温箱が、
炭素数10〜20の多環式テルペノールとメタクリル酸とのエステルに由来する成分及びスチレン系単量体に由来する成分を含む樹脂と、揮発性発泡剤とを含み、
(1)前記単量体混合物が、前記エステルに由来する成分を、前記エステルに由来する成分とスチレン系単量体に由来する成分との合計100重量部に対して、1重量部より多く30重量部未満含み、
(2)0.35〜6.00の範囲の吸光度比X(D1730/D1600)の表層を有し(D1730及びD1600は、赤外分光分析による赤外吸収スペクトル中、1730cm-1での吸光度及び1600cm-1での吸光度を意味する)、
(3)前記吸光度比Xより小さい吸光度比Y(D1730/D1600)の中心部を有する
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡成形体からなることを特徴とする保温箱が提供される。
【0007】
また、上記保温箱の製造方法であって、
水性媒体中で、種粒子に、前記炭素数10〜20の多環式テルペノールとメタクリル酸とのエステル及びスチレン系単量体を含む単量体混合物を吸収させる工程と、
吸収させた後又は吸収させつつ前記単量体混合物の重合を行うことでポリスチレン系樹脂粒子を得る工程と、
重合させた後又は重合させつつポリスチレン系樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸させて発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る工程と、
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させ、次いで発泡成形する工程とを含むことを特徴とする保温箱の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、炭素数10〜20の多環式テルペノールとメタクリル酸とのエステルに由来する樹脂成分を発泡性スチレン系樹脂粒子の表面付近にリッチに存在させることができる。この発泡性スチレン系樹脂粒子から、耐熱性、熱融着性及び成形性の良好な保温箱を得ることができる。
また、上記エステルが、イソボルニルメタクリレート、ボルニルメタクリレート、ノルボルニルメタクリレート、アダンマンチルメタクリレート、及びそれらの低級アルキル置換体から選択される単量体に由来する成分である場合、更に耐熱性が向上した保温箱を得ることができる。
更に、吸光度比Yが、0〜4.0の範囲である場合、上記エステルがより粒子表面付近にリッチに存在することになるため、発泡性を阻害することなく、耐熱性が向上した保温箱を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1の発泡性スチレン系樹脂粒子のマッピングイメージである。
【図2】実施例1の発泡性スチレン系樹脂粒子の中心からの距離と、吸光度比との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の断熱材としての保温箱は、炭素数10〜20の多環式テルペノールとメタクリル酸とのエステル由来の樹脂成分が、中心部より表層にリッチに存在(偏在)している発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡成形体からなる。
(炭素数10〜20の多環式テルペノールとメタクリル酸とのエステル)
炭素数10〜20の多環式テルペノールは、耐熱性を向上できさえすれば特に限定されず、有橋脂環式化合物とも称することができる。テルペノールを構成する環の数は、2以上であり、例えば、2〜6である。更に、橋の数は、環の数に応じて設定され、例えば、1〜3である。橋は交差していてもよく、交差していなくてもよい。具体的なテルペノールとしては、サンテノール、サビノール、ピノカルベオール、ミルテノール、ベルベノール、ツイルアルコール、ピノカンフェオール、ボルネオール、ノルボルネオール、イソボルネオール、フェンチルアルコール、イソフェンチルアルコール、アダマンタノール等が挙げられる。
【0011】
更に、好ましいエステルとしては、イソボルニルメタクリレート、ボルニルメタクリレート、ノルボルニルメタクリレート、アダンマンチルメタクリレート、及びそれらの低級アルキル置換体が挙げられる。低級アルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。これらエステルは、単独で用いられても、併用されてもよい。
なお、メタクリル酸のエステルは、スチレンとの共重合性が良好であり、かつ同種のアクリル酸のエステルと比較して、単体樹脂としてのガラス転移温度が高いため、発泡成形体の耐熱性の向上に適している。
【0012】
上記エステルに由来する成分の含有量は、そのエステルに由来する成分とスチレン系単量体に由来する成分との合計100重量部に対して、1重量部より多く30重量部未満である。1重量部以下では耐熱性が十分でない発泡成形体が生じることがあり、30重量部以上では発泡性及び熱融着性が低下することがある。好ましい含有量は2〜25重量部であり、より好ましい含有量は5〜20重量部である。
なお、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を構成する各成分の含有量は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造に使用される各成分に対応する各単量体の使用量とほぼ一致している。
【0013】
(スチレン系単量体)
発泡性スチレン系樹脂粒子は、上記エステルに由来する成分及びスチレン系単量体に由来する成分を含む樹脂から構成される。
スチレン系単量体としては、特に限定されず、公知のスチレン又はスチレン誘導体をいずれも使用できる。スチレン誘導体としては、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。これらスチレン系単量体は、単独で用いられても、併用されてもよい。
【0014】
(他の単量体)
スチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体を併用してもよい。ビニル系単量体としては、例えば、o−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン等のジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能性単量体;α−メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら他の単量体は、単独で用いられても、併用されてもよい。
他の単量体を使用する場合、他の単量体に由来する成分の含有量は、スチレン系単量体が、他の単量体との合計に対して、主成分となる量(例えば、50重量%以上)であることが好ましい。(メタ)アクリとは、メタクリ又はアクリを意味する。
【0015】
上記他の単量体の内、多官能性単量体は発泡成形体の外観を向上させることができる。外観を向上させるための多官能性単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレングリコールの繰り返し数が4〜16)、ジビニルベンゼンがより好ましく、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0016】
(吸光度比)
(1)表層の吸光度比
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、その表層を、赤外分光分析により測定して得られた赤外吸収スペクトルから、0.35〜6.00の範囲の1730cm-1及び1600cm-1の吸光度比X(D1730/D1600)を有している。好ましい吸光度比は、0.40〜5.50であり、1.00〜4.50がより好ましい。なお、表層は、粒子表面から深さ数μm(例えば、6μm)までの領域を含む。
吸光度比が、0.35より小さいと、表層における多環式テルペノールとメタクリル酸とのエステル由来の樹脂の比率が低下する。その結果、高温下での発泡成形体の寸法収縮が大きく所望の耐熱性が得られないことがある。吸光度比が4.50より大きいと、表層の耐熱性が高まりすぎて、発泡、成型時の熱で軟化せず、成形体の融着が阻害されることがある。
【0017】
ここで、本発明における赤外分光分析とは、全反射吸収(Attenuated Total Reflectance)を利用する一回反射型ATR法により赤外吸収スペクトルを測定する分析方法である。この分析方法は、高い屈折率を持つATRプリズムを試料に密着させ、ATRプリズムを通して赤外線を試料に照射し、ATRプリズムからの出射光を分光分析する方法である。
ATR法赤外分光分析は、試料とATRプリズムとを密着させるだけでスペクトルを測定できるという簡便さ、深さ数μmまでの表面分析が可能である等の理由で高分子材料等の有機物をはじめ、種々の物質の表面分析に広く利用されている。
【0018】
なお、赤外吸収スペクトルから得られる1730cm-1での吸光度D1730は、上記エステルに含まれるエステル基のC=O間の伸縮振動に由来する1730cm-1付近に現われるピークの高さをいう。また、赤外吸収スペクトルから得られる1600cm-1での吸光度D1600は、ポリスチレン系樹脂に含まれるベンゼン環の面内振動に由来する1600cm-1付近に現われるピークの高さをいう。
【0019】
吸光度比から上記エステル由来の樹脂とスチレン系単量体由来の樹脂との組成割合を求めることが可能である。例えば、吸光度比が0.35の場合には、上記エステル由来の樹脂が約1.2〜1.7重量%、スチレン系単量体由来の樹脂が約98.3〜98.8重量%、吸光度比が2.00の場合には上記エステル由来の樹脂が約8.0〜12.0重量%、スチレン系単量体由来の樹脂が約88.0〜92.0重量%、吸光度比が4.50の場合には上記エステル由来の樹脂が約18.0〜22.0重量%、スチレン系単量体由来の樹脂が約78.0〜82.0重量%であると算出できる。
【0020】
(2)表層と中心部の吸光度比の関係
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、表層の吸光度比Xより小さい、吸光度比Yの中心部を有している。この吸光度比の関係は、表層の上記エステル成分由来の樹脂の量が、中心部の上記エステル成分由来の樹脂の量より多いこと(リッチであること)を意味している。この関係を有することで、耐熱性を表層にリッチに存在する上記エステル成分由来の樹脂で確保しつつ、発泡性を中心部にリッチに存在するスチレン系単量体由来の樹脂で確保できる。吸光度比Yは、吸光度比Xと同様、1730cm-1及び1600cm-1の吸光度比(D1730/D1600)を意味している。なお、中心部は、粒子の中心を含む断面において、中心から半径30%以内の領域を意味する。
また、具体的な吸光度比Yの範囲は、0〜4.0であることが好ましく、0〜2.0であることがより好ましい。
【0021】
(揮発性発泡剤)
揮発性発泡剤は、従来からポリスチレン系樹脂の発泡に用いられているものであれば、特に限定されない。例えば、プロパン、イソブタン、n−ブタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−ペンタン等の炭素数5以下の脂肪族炭化水素等の揮発性発泡剤(物理型発泡剤)が挙げられる。この内、イソブタン、n−ブタン等のブタン系発泡剤が好ましい。
【0022】
揮発性発泡剤の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中における含有量は、少ないと、所望の密度の発泡成形体を得られないことがあると共に、型内発泡成形時の二次発泡力を高める効果が小さくなるため、発泡成形体の外観性が低下することがある。また、多いと、発泡成形体の製造工程における冷却工程に要する時間が長くなるため、生産性が低下することがある。これらの観点から、含有量は2.5〜7.0重量%の範囲が好ましく、2.7〜6.0重量%の範囲がより好ましい。
なお、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中における発泡剤の含有量は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を150℃の熱分解炉に入れ、この熱分解炉で発生した炭化水素量をクロマトグラフにて測定することで入手できる。
【0023】
(他の成分)
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には、物性を損なわない範囲内において、発泡助剤、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、結合防止剤、気泡調整剤、架橋剤、充填剤、滑剤、着色剤等の添加剤を添加してもよい。
また、ジンクステアレートのような粉末状金属石鹸類を発泡性スチレン樹脂粒子の表面に塗布しておいてもよい。塗布することで、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の予備発泡工程において、予備発泡粒子同士の結合を減少できる。
【0024】
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の形状)
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の形状は特に限定されないが、成形容易性の観点から球状であるのが好ましい。また、粒子径は、成形型内への充填性等を考慮すると、0.3〜2.0mmが好ましく、0.3〜1.4mmがより好ましい。更に、保温箱に用いられる場合には0.5〜1.0mmが好ましい。
【0025】
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法)
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法は、上記特定の吸光度比で、上記エステル由来の樹脂とスチレン系単量体由来の樹脂とを存在させることができさえすれば、特に限定されない。例えば、水性懸濁液中で、ポリスチレン系樹脂粒子(種粒子)に、単量体混合物を吸収させる工程と、吸収させた後又は吸収させつつ単量体混合物の重合を行う工程とを含む、いわゆるシード重合法により製造することが簡便である。単量体混合物とは、上記エステル、スチレン系単量体及び任意に他の単量体からなる混合物である。
なお、種粒子にポリスチレン系樹脂粒子を使用する場合、スチレン系単量体に由来する成分の含有量には、種粒子の量も含まれる。
【0026】
(1)ポリスチレン系樹脂粒子(種粒子)
スチレン系単量体としては、特に限定されず、公知のスチレン又はスチレン誘導体をいずれも使用できる。スチレン誘導体としては、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。これらスチレン系単量体は、単独で用いられても、併用されてもよい。
【0027】
スチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体を併用してもよい。ビニル系単量体としては、例えば、o−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン等のジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能性単量体;α−メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら他の単量体は、単独で用いられても、併用されてもよい。
他の単量体を使用する場合、他の単量体の使用量は、スチレン系単量体が、他の単量体との合計に対して、主成分となる量(例えば、50重量%以上)であることが好ましい。
【0028】
上記他の単量体の内、発泡成形体の外観向上の観点から多官能性単量体が好ましい。多官能性単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレングリコールの繰り返し数が4〜16)、ジビニルベンゼンがより好ましく、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
また、種粒子は一部又は全部にポリスチレン系樹脂回収品を用いることができる。
【0029】
種粒子の平均粒子径は、作製する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径等に応じて適宜調整できる。例えば、種粒子の平均粒子径は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径の40〜70%とすることができる。具体的には、平均粒子径が1.0mmの発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を作製する場合には、平均粒子径が0.4〜0.7mm程度の種粒子を用いることが好ましい。
種粒子の重量平均分子量は、特に限定されないが、15万〜70万が好ましく、更に好ましくは20万〜50万である。
【0030】
種粒子は、特に限定されず、公知の方法により製造できる。例えば、懸濁重合法や、押出機で原料樹脂を溶融混練後、ストランド状に押し出し、所望の粒子径でカットする方法が挙げられる。
種粒子は、懸濁重合法やカットする方法で得られた粒子に、水性媒体中で、スチレン系単量体を含浸・重合させることにより得られる粒子であってもよい。水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。この方法で用いられるスチレン系単量体の量は、粒子100重量部に対して、7.0〜100.0重量部の範囲とできる。7.0重量部未満の場合は成形時の耐熱性が低下することがあり、100.0重量部を超えると発泡性が低下することがある。
【0031】
スチレン系単量体としては、スチレン、又はスチレン誘導体が挙げられる。スチレン誘導体としては、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。これらの中でもスチレンが好ましい。
スチレン系単量体の重合は、例えば、60〜150℃で、2〜20時間加熱することにより行うことができる。
【0032】
スチレン系単量体は、通常重合開始剤の存在下で重合する。重合開始剤は、通常スチレン系単量体と同時に懸濁重合法やカットする方法で得られた粒子に含浸させる。重合開始剤としては、従来からスチレン系モノマーの重合に用いられているものであれば、特に限定されない。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−t−ブチルパーオキシブタン、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられ、得られるポリスチレン系樹脂のZ平均分子量Mzや重量平均分子量Mwを調整して残存モノマーを低減させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が80〜120℃にある異なった二種以上の重合開始剤を併用することが好ましい。なお、重合開始剤は単独で用いても二種以上併用してもよい。重合開始剤の使用量は、スチレン系単量体100重量部に対して、例えば0.01〜2.00重量部の範囲である。
【0033】
更に、スチレン系単量体の小滴及び種粒子を水性媒体中に分散させるために、懸濁安定剤を用いてもよい。懸濁安定剤としては、従来からスチレン系モノマーの懸濁重合に用いられているものであれば、特に限定されない。例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等の難溶性無機化合物等が挙げられる。懸濁安定剤の使用量は、種粒子100重量部に対して、例えば0.1〜5.0重量部の範囲である。
【0034】
そして、懸濁安定剤として難溶性無機化合物を用いる場合には、アニオン界面活性剤を併用するのが好ましい。このようなアニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシルアミノ酸又はその塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルフォン酸塩等のスルフォン酸塩;高級アルコール硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩;アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩等が挙げられる。界面活性剤の使用量は、懸濁安定剤100重量部に対して、例えば0.5〜20.0重量部の範囲である。
【0035】
(2)単量体混合物の吸収・重合工程
水性媒体中で、種粒子に単量体混合物を吸収させる。また、単量体混合物の重合は、単量体混合物を吸収させた後に行ってもよく、吸収させつつ行ってもよい。重合によりポリスチレン系樹脂粒子が得られる。
水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。また、重合開始剤、懸濁安定剤及び界面活性剤を、上記項目(1)と同様、使用してもよい。また、単量体混合物の重合も、上記項目(1)と同様の条件で行うことができる。
【0036】
(3)揮発性発泡剤の含浸工程
ポリスチレン系樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸させることで、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が得られる。揮発性発泡剤の含浸は、重合させた後に行ってもよく、重合させつつ行ってもよい。
含浸は、それ自体公知の方法により行うことができる。例えば、重合中での含浸は、重合反応を密閉容器中で行い、容器中に揮発性発泡剤を圧入することにより行うことができる。重合終了後の含浸は、密閉容器中で、揮発性発泡剤を圧入することにより行われる。
【0037】
なお、前記ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤及び発泡助剤を含浸させる際の温度は、低いと、ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤及び発泡助剤を含浸させるのに要する時間が長くなって生産効率が低下することがあり、又、高いと、ポリスチレン系樹脂粒子同士が融着して結合粒が発生することがあるので、60〜120℃が好ましく、70〜100℃がより好ましい。
【0038】
(予備発泡粒子及び発泡成形体)
更に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、公知の方法で所定の嵩密度(例えば、10〜300kg/m3)に予備発泡させることで予備発泡粒子とすることができる。
更に、予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、再度加熱して予備発泡粒子を発泡させながら、発泡粒同士を熱融着させることで、耐熱性に優れた発泡成形体を得ることができる。
【0039】
加熱用の媒体は水蒸気が好適に使用される。発泡成形体の密度は10〜300kg/m3が好ましい。10kg/m3より低密度にすると十分な強度が得られないことがある。300kg/m3より高密度では軽量化ができないことや、ポリエチレン系樹脂発泡成形体の特徴のひとつである弾性等が十分に発揮できないことがある。更に、保温材として用いられる場合には14〜33kg/m3が好ましい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例によって本発明の具体例を示すが、以下の実施例は本発明の例示にすぎず、本発明は以下の実施例のみに限定されない。なお、以下において、特記しない限り、「部」及び「%」は重量基準である。
以下の実施例、比較例において、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径、吸光度比、発泡性、熱融着性、耐熱性、総合評価は、次の測定方法及び評価基準により測定及び評価した。
【0041】
<平均粒子径の測定方法>
試料約50gをロータップ型篩振とう機(飯田製作所社製)を用いて、篩目開き3.35mm、2.80mm、2.36mm、2.00mm、1.70mm、1.40mm、1.18mm、1.00mm、0.85mm、0.71mm、0.60mm、0.50mm、0.425mm、0.355mm、0.300mm、0.250mm、0.212mm、0.180mmのJIS標準篩で5分間分級する。篩網上の試料重量を測定し、その結果から得られた累積重量分布曲線を元にして累積重量が50%となる粒子径(メディアン径)を平均粒子径として求める。
【0042】
<吸光度比>
(1)粒子表層の吸光度比X(D1730/D1600)は下記の要領で測定される。
即ち、無作為に選択した10個の各樹脂粒子の表面について、ATR法赤外分光分析により粒子表層分析を行って赤外吸収スペクトルを得る。この分析では、粒子表面から数μmまでの深さの範囲の赤外吸収スペクトルが得られる。
各赤外吸収スペクトルから吸光度比(D1730/D1600)をそれぞれ算出し、表面について算出した吸光度比の相加平均を吸光度比Xとする。
吸光度D1730及びD1600は、Nicolet社から商品名「フーリエ変換赤外分光分析計 MAGMA560」で販売されている測定装置を用いて測定する。
【0043】
なお、赤外吸収スペクトルから得られる1600cm-1での吸光度D1600は、ポリスチレン系樹脂に含まれるベンゼン環の面内振動に由来する1600cm-1付近に現れるピークの高さをいう。
また、赤外吸収スペクトルから得られる1730cm-1での吸光度D1730は、アクリル酸エステルに含まれるエステル基のC=O間の伸縮振動に由来する1730cm-1付近に現れるピークの高さをいう。
【0044】
(2)粒子中心部の吸光度比Y(D1730/D1600)は下記の要領で測定される。
即ち、無作為に選択した10個の各樹脂粒子の中心を通って切断した粒子スライスサンプルについて、顕微IRイメージングによる断面マッピング測定により粒子スライスサンプル全体の赤外吸収スペクトルの吸光度比イメージを得る。
各赤外吸収スペクトルから中心部の吸光度D1730及びD1600をそれぞれ抽出し、吸光度比(D1730/D1600)を算出する。算出した吸光度比の相加平均を吸光度比Yとする。中心部は、粒子の中心を含む粒子スライスサンプルにおいて、中心から半径30%以内の領域を意味する。
吸光度D1730及びD1600は、Perkin Elmer社から商品名「高速IRイメージングシステム Spectrum Spotlight 300」で販売されている装置を用いて粒子断面のイメージング図を得、このイメージング図中の粒子の中心部にて観察された赤外吸収スペクトルから得られる。
【0045】
<発泡性>
樹脂粒子5gを0.02MPaの蒸気にて3分間加熱し、得られた発泡粒子の嵩体積をメスシリンダーにて測定する。測定された嵩体積を粒子重量で除して得られた値を、発泡粒子の嵩倍数とする。この嵩倍数が所望の発泡倍数に満たない場合、所望の発泡倍数の発泡粒が得られない場合や、発泡に時間が掛かり、成形時に粒子内部の発泡剤が不足し、成形体の外観や融着が悪化することがある。
この実施例では、40倍以上を「○」とし、それ未満を「×」とする。
【0046】
<熱融着性>
縦300mm×幅400mm×高さ30mmの板状発泡成形体を24時間乾燥させた後、長さ方向の中央部で半分に破断する。その破断面における発泡粒子について、100〜150個の任意の範囲について粒子内で破断している粒子の数(a)と粒子どうしの界面で破断している粒子の数(b)とを数える。得られた数値を式[(a)/((a)十(b))]×100に代入して得られた値を融着率(%)とする。
評価基準は、融着率70%以上を良好(○)とし、70%未満を不良(×)として評価する。
【0047】
<耐熱性>
発泡成形体から、縦120mm×横120mm×高さ30mmの直方体形状の試験片を切り出す。この試験片について、90℃にて168時間に亘って放置した後の加熱寸法変化率をJIS K6767:1999(高温時の寸法安定性:B法)に準拠して測定する。なお、加熱寸法変化率が±1.0%以内の場合を「○」とし、加熱寸法変化率が−1.0%を下回るか或いは1.0%を上回っている場合を「×」とする。
【0048】
<総合評価>
発泡性、熱融着性及び耐熱性の評価中に1つでも「×」があるものは、総合評価を「×」とし、1つも「×」がないものは、総合評価を「○」とする。
【0049】
実施例1
(種粒子の製造)
内容量100リットルの攪拌機付き重合容器に、水40000g、懸濁安定剤として第三リン酸カルシウム100g及びアニオン界面活性剤としてドデシルベンゼンスルフォン酸カルシウム2.0gを供給し攪拌しながらスチレン40000g並びに重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド96.0g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート28.0gを添加した上で90℃に昇温して重合した。そして、この温度で6時間保持し、更に、125℃に昇温してから2時間後に冷却してポリスチレン系樹脂粒子(a)を得た。
前記ポリスチレン系樹脂粒子(a)を篩分けし、種粒子として粒子径0.5〜0.71mmのポリスチレン系樹脂粒子(b)を得た。
次に、内容量5リットルの攪拌機付き重合容器内に、水2000g、前記ポリスチレン系樹脂粒子(b)500g(100重量部)、懸濁安定剤としてピロリン酸マグネシウム6.0g及びアニオン界面活性剤としてドデシルベンゼンスルフォン酸カルシウム0.3gを供給して攪拌しながら72℃に昇温した。
【0050】
(第1重合工程)
次に、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド4.5g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート1.1gをスチレン210g(42重量部)に溶解させたものを前記5リットルの重合容器に供給してから、72℃で60分保持して反応液を得た。
【0051】
(第2重合工程)
60分経過後に反応液を110℃まで150分で昇温しつつ、かつスチレン1190g(218重量部)とイソボルニルメタクリレート200g(40重量部)の混合モノマーを150分で重合容器内にポンプで一定量ずつ供給した。次いで、120℃に昇温して2時間経過後に冷却し、ポリスチレン系樹脂粒子(c)を得た。
【0052】
(揮発性発泡剤含浸)
続いて、別の内容量5リットルの攪拌機付き重合容器に、水2200g、ポリスチレン系樹脂粒子(C)1800g、懸濁安定剤としてピロリン酸マグネシウム6.0g及びドデシルベンゼンスルフォン酸カルシウム0.4gを供給して攪拌しながら70℃に昇温した。次に、発泡助剤としてシクロヘキサン9.0gを重合容器内に入れて密閉し100℃に昇温した。次に、揮発性発泡剤としてn−ブタン144gをポリスチレン系樹脂粒子(C)が入った重合容器内に圧入して3時間保持することで発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。保持後、30℃以下まで冷却した上で、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を重合容器内から取り出し、乾燥させた上で13℃の恒温室内に5日間放置した。
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のマッピングイメージを図1に、粒子中心からの距離と、吸光度D1720及びD1601並びに吸光度比との関係を表1に、粒子中心からの距離と吸光度比との関係を図2に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
図1、図2及び表1から、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は表層にイソボルニルメタクリレート由来の成分がリッチに存在していることが分かる。図1では、表層から中心部へ向かって吸光度比が低下していることが色分けされて示されている。
【0055】
(予備発泡)
続いて、ジンクステアレート及びヒドロキシステアリン酸トリグリセリドからなる表面処理剤で、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面を被覆処理した。処理後、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、予備発泡装置にて嵩密度0.02g/cm3に発泡させた後、20℃で24時間熟成することで、予備発泡粒子を得た。
【0056】
(発泡成形体の製造)
内寸300mm×400mm×30mmの直方体形状のキャビティを有する成形型を備えた発泡ビーズ自動成形機(積水工機製作所社製 商品名「エース3型」)のキャビティ内に予備発泡粒子を充填した。充填後、予備発泡粒子を、ゲージ圧0.07Mpaの水蒸気で15秒間加熱成形に付した。次に、キャビティ内の発泡体を5秒間水冷した後、減圧下にて放冷(冷却工程)することで発泡成形体を得た。
【0057】
実施例2
第2重合工程のスチレン系単量体量を238重量部とし、メタクリル酸エステル量を20重量部とすること以外は、実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を得た。
実施例3
第2重合工程のスチレン系単量体量を178重量部とし、メタクリル酸エステル量を80重量部とすること以外は、実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を得た。
実施例4
第2重合工程のスチレン系単量体量を246重量部とし、メタクリル酸エステル量を12重量部とすること以外は、実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を得た。
【0058】
実施例5
(種粒子の製造)
実施例1と同様にして粒子径0.5〜0.71mmのポリスチレン系樹脂粒子(b)を得た。
次に、内容量5リットルの攪拌機付き重合容器内に、水2000g、前記ポリスチレン系樹脂粒子(b)500g、懸濁安定剤としてピロリン酸マグネシウム6.0g及びアニオン界面活性剤としてドデシルベンゼンスルフォン酸カルシウム0.3gを供給して攪拌しながら90℃に昇温した。
【0059】
(重合工程)
次に、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド4.5g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート1.1gをスチレン1300g(260重量部)とイソボルニルメタクリレート200g(40重量部)の混合モノマーに溶解させたものを前記5リットルの重合容器に210分でポンプで一定量ずつ供給した。供給後、更に90分間90℃に保った後、120℃に昇温して2時間経過後に冷却することで、ポリスチレン系樹脂粒子(c)を得た。
実施例1ではスチレンを2段階で重合させていたが(2段法)、この実施例ではスチレンを1段階で重合させた(1段法)。
【0060】
(揮発性発泡剤含浸)
実施例1と同様にして、揮発性発泡剤を含浸させることで、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
(予備発泡)
続いて、実施例1と同様に、被覆処理した後、予備発泡装置にて嵩密度0.02g/cm3に予備発泡した後に20℃で24時間熟成して予備発泡粒子を得た。
(発泡成形体の製造)
得られた予備発泡粒子から実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
【0061】
実施例6
イソボルニルメタクリレートをアダマンチルメタクリレートに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を得た。
実施例7
第1重合工程のスチレン42重量部をスチレン20重量部及びイソボルニルメタクリレート50重量部の混合物とし、第2重合工程のスチレンを170重量部及びイソボルニルメタクリレートを60重量部とすること以外は、実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を得た。
実施例8
第1重合工程のスチレン42重量部をスチレン22重量部及びイソボルニルメタクリレート20重量部の混合物とすること以外は、実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を得た。
【0062】
比較例1
第2重合工程のスチレン系単量体量を138重量部とし、メタクリル酸エステル量を120重量部とすること以外は、実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子及び予備発泡粒子を得た。予備発泡粒子を用いて発泡成形体を得ようとしたが、粒子同士の融着性が低く、耐熱性を評価しうる発泡成形体を得ることができなかった。
比較例2
第2重合工程のスチレン系単量体量を254重量部とし、メタクリル酸エステル量を4重量部とすること以外は、実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を得た。
【0063】
比較例3
第1重合工程のスチレン42重量部をスチレン10重量部及びイソボルニルメタクリレート80重量部の混合物とし、第2重合工程のスチレンを120重量部及びイソボルニルメタクリレートを90重量部とすること以外は、実施例1と同様にして、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を得た。
実施例1〜8及び比較例1〜3の発泡性スチレン系樹脂粒子の吸光度比、発泡成形体の発泡性、熱融着性及び耐熱性の評価結果を表2に示す。なお、表2中、実施例6のイソボルニルメタクリレート含有量は、アダマンチルメタクリレート含有量を意味する。
【0064】
【表2】

【0065】
表2から、実施例1〜8の発泡成形体は収縮もなく、熱融着性の良好なものであった。イソボルニルメタクリレートの添加量が多い比較例1及び3では、十分な発泡性、熱融着性及び耐熱性を備えた発泡成形体は得られず、添加量が少ない比較例2では、十分な耐熱性を備えた発泡成形体は得られなかった。比較例3では、表層及び中心部に存在するイソボルニルメタクリレートの量も多くなるため、所望の発泡倍数を得ることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材としての保温箱が、
炭素数10〜20の多環式テルペノールとメタクリル酸とのエステルに由来する成分及びスチレン系単量体に由来する成分を含む樹脂と、揮発性発泡剤とを含み、
(1)前記樹脂が、前記エステルに由来する成分を、前記エステルに由来する成分とスチレン系単量体に由来する成分との合計100重量部に対して、1重量部より多く30重量部未満含み、
(2)0.35〜6.00の範囲の吸光度比X(D1730/D1600)の表層を有し(D1730及びD1600は、赤外分光分析による赤外吸収スペクトル中、1730cm-1での吸光度及び1600cm-1での吸光度を意味する)、
(3)前記吸光度比Xより小さい吸光度比Y(D1730/D1600)の中心部を有する
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡成形体からなることを特徴とする保温箱。
【請求項2】
前記エステルに由来する成分が、イソボルニルメタクリレート、ボルニルメタクリレート、ノルボルニルメタクリレート、アダンマンチルメタクリレート、及びそれらの低級アルキル置換体から選択される単量体に由来する成分である請求項1に記載の保温箱。
【請求項3】
前記吸光度比Yが、0〜4.0の範囲である請求項1又は2に記載の保温箱。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の保温箱の製造方法であって、
水性媒体中で、種粒子に、前記炭素数10〜20の多環式テルペノールとメタクリル酸とのエステル及びスチレン系単量体を含む単量体混合物を吸収させる工程と、
吸収させた後又は吸収させつつ前記単量体混合物の重合を行うことでポリスチレン系樹脂粒子を得る工程と、
重合させた後又は重合させつつポリスチレン系樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸させて発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る工程と、
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させ、次いで発泡成形する工程とを含むことを特徴とする保温箱の製造方法。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−231915(P2011−231915A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105436(P2010−105436)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】