説明

保温装置

【課題】 配管の外周面に配置される各ヒータの連結部分や端子部分が、熱的影響により破損することを少なくし、耐久性の向上及び保守管理の容易化を図る。
【解決手段】 第1,第2ヒータ10,20の一端縁に設けた連結用突起11,21を金属板で形成した連結バー30によって電気的に連結する。この連結バー30の中間部は、湾曲形状に加工してある。また、第1,第2ヒータ10,20の他端縁に設けた端子部12,22に、金属板で形成した電線接続片13,23介して電線14,24を接続する。電線接続片13,23の本体部は、配管1の外形方向へ延びる長尺な棒状に形成されている。端子部12,22は、配管1の底部に配置し、各ヒータ10,20からの放射熱の影響を受けにくくしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発電システムにおいて、復水器と真空ポンプとを連通する配管のディヒューザ部に設けられた保温装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、火力発電システムにおいては、蒸気タービンから送られてくる高温の蒸気を、復水器で冷却して水に変換し再び循環させる系統が構築されている。復水器の内部は、蒸気の冷却効率を高めるために、真空ポンプによって真空吸引されている。真空ポンプには、エジェクタ式真空ポンプが用いられており、当該真空ポンプと復水器を連結する配管系統には、中間部にディヒューザが設けられている(例えば、特許文献1参照)。ディヒューザは、配管の内部に流れる気体を減速させて速度エネルギーを圧力に変換する機能を有し、円錐状の収れん部、それに連なる絞込部(のど部)、この絞込部から拡開していく発散部(ベンチュリ)、の各部を含んでいる。このうち、配管の直径が絞り込まれた絞込部では、温度低下に伴い配管内部で結露が生じやすい。そこで、この絞込部の外周面には、保温装置が設けられ配管内部の温度低下を抑制し、結露の防止対策を図っている(特許文献1の図3参照)。
【0003】
図5は、従来のディヒューザに設けられた保温装置の構造を示す横断面図、図6は、図5に示す従来装置の要部拡大断面図である。
ディヒューザの絞込部を形成する配管1には、その外周面に半円筒形状をした一対のヒータ板10,20が対称に配置されている。各ヒータ板10,20の近接する一端縁部には導電性の連結用突起11,21が設けてあり(図6(b)参照)、これらの連結用突起11,21をリード線300によって連結して、各ヒータ板10,20を電気的に導通している。また、各ヒータ板10,20の近接する他端縁部には導電性の端子部12,22が設けてあり(図6(a)参照)、これらの各端子部12,22にそれぞれリード線100,200が接続してある。それらのリード線100,200を介して各端子部12,22に電気が供給され、各ヒータ板10,20が発熱する。
ここで、各連結用突起11,21を連結するリード線300、及び各端子部12,22に接続したリード線100,200は、いずれも導電性の芯線をビニールで被覆した可撓導線が用いられていた。また、電気が供給される各端子部12,22は、配管1の頂部に配置されていた。
【特許文献1】特開2002−71279号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した構造の従来の保温装置では、各連結用突起11,21を連結するリード線300、及び各端子部12,22に接続されたリード線100,200のいずれもが、熱源である各ヒータ板10,20の近傍で接続されているため、各ヒータ板10,20からの放射熱によりこれらリード線100,200,300が熱疲労を引き起こし、比較的短期間で断線してしまう傾向があった。特に、各ヒータ板10,20の頂部に配置された端子部12,22は、各ヒータ板10,20からの放射熱が上昇していく通り途にあたるため、放射熱の影響を受けやすく、そこに接続されたリード線100,200は断線しやすい傾向にあった。
【0005】
リード線100,200,300が断線した場合、各ヒータ板10,20への電気の供給や導通が停止するため、配管1を保温することができなくなり、配管1内に結露が発生して効率的な真空吸引動作を阻害するおそれがあった。しかも、断線したリード線100,200,300の交換修理を短期間で実施しなければならず、作業効率も悪いという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、配管の外周面に配置される各ヒータの連結部分や端子部分が、熱的影響により破損するおそれを少なくした保温装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、復水器と真空ポンプとを連通する配管のディヒューザ部に設けられた保温装置であって、次の(イ)乃至(ト)の構成を備えることを特徴とする。
(イ)それぞれ半円筒形状をしており、ディヒューザ部を形成する円筒形状の配管外周面に、それぞれ対称に配置される導電性の第1,第2ヒータを有する。
(ロ)第1,第2ヒータの各両端縁部は、間隙を設けて近接配置されている。
(ハ)第1,第2ヒータの近接配置された各一端縁部に、導電性の連結用突起が設けてある。
(ニ)各連結用突起を、金属板で形成した連結バーで連結して電気的に接続する。
(ホ)第1,第2ヒータの近接配置された各他端縁部に、導電性の端子部が設けてある。
(ヘ)各端子部に、それぞれ金属材料で形成した電線接続片の一端部を固定するとともに、当該電線接続片の他端部を配管の外径方向へ引き延ばして配置する。
(ト)各電線接続片の他端部に電線を接続し、それら電線を介して各端子部に電気を供給する。
【0008】
上記構成の保温装置によれば、各連結用突起を、金属板で形成した連結バーで連結したので、熱的強度が高く耐久性の向上を図ることができる。
また、各端子部に、それぞれ金属板で形成した電線接続片を固定し、この電線接続片を介して各ヒータの外周面から外径方向に離間した位置で、電線を接続するように構成したので、各ヒータからの放射熱の影響を抑制し、電線の熱疲労を低減することができる。
【0009】
ここで、連結バーを構成する金属板の中間部を湾曲した構成とすれば、各ヒータの一端縁部に設けられた各連結用突起が温度変化により変位しても、連結バーの湾曲部分が柔軟に変形して連結用突起間の変位を吸収するので、連結バーによる各連結用突起の連結状態を維持することができる。
【0010】
また、各端子部を、配管の底部に配置した構成とすれば、各ヒータからの放射熱は上昇していくので、その通り途から各端子部を外して熱的影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、配管の外周面に配置される各ヒータの連結部分や端子部分が、熱的影響により破損することが少なく、耐久性の向上とともに、保守管理の容易化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る保温装置の構成を示す一部切欠正面図、図2は同じく横断面図である。
本実施形態に係る保温装置は、発電システムにおいて、復水器と真空ポンプとを連通する配管の途中に設けられたディヒューザ部(さらに詳しくは、内径が小さく絞り込まれた絞込部(のど部))を保温するものである。
【0013】
ディヒューザ部を構成する円筒形状の配管1の外周面には、第1,第2ヒータ10,20が配置されている。各ヒータ10,20は、それぞれ半円筒形状をした導電性の金属板で構成してあり、配管1の外周面を被覆するようにして対称に配置されている(図2参照)。ここで、第1,第2ヒータ10,20の各一端部は、わずかな間隙を設けて配管1の頂部に近接配置してある。一方、第1,第2ヒータ10,20の各他端部は、わずかな間隙を設けて配管1の底部に近接配置してある。
【0014】
第1,第2ヒータ10,20の一端部には、図3に拡大して示すように、導電性の連結用突起11,21がそれぞれ設けてあり、これら各連結用突起11,21が連結バー30で連結されている。これにより、連結バー30及び連結用突起11,21を介して、第1、第2ヒータ10,20が電気的に接続されている。
連結バー30は、矩形状の金属板(本実施形態では、銅板)で形成してあり、両端部がそれぞれ各連結用突起11,21の上端面にビス止めされている。この連結バー30は、芯線をビニールで被覆しただけのリード線に比べ、熱的強度が高く耐久性がある。よって、第1、第2ヒータ10,20からの放射熱を受けても熱疲労により破断することが少ない。
【0015】
また、連結バー30の中間部30aは、湾曲形状に加工してある。このように、連結バー30の中間部30aを湾曲した構成とすれば、温度変化によって各ヒータ10,20が周方向に伸縮し、それに伴い各連結用突起11,21の相対位置が変位しても、連結バー30の湾曲部分が柔軟に変形して連結用突起11,21間の変位を吸収するので、連結バー30による各連結用突起11,21の連結状態を維持することができる。
【0016】
また、第1,第2ヒータ10,20の他端部には、図4に拡大して示すように、導電性の端子部12,22がそれぞれ設けてあり、これら各端子部12,22に金属材料(本実施形態では、銅又は銅合金)でL字形に形成した電線接続片13,23の基部がビス止めしてある。さらに、電線接続片13,23の本体部は、配管1の外径方向へ延びる長尺な棒状に形成されており、その先端部に電線14,24がビス止めしてある。このようにして、電線14,24は電線接続片13,23を介し端子部12,22と電気的に接続される。よって、端子部12,22へ直に電線14,24を接続する構成に比べ、電線接続片13,23の長尺な本体部が介在する分だけ、電線14,24の接続部は各ヒータ10,20の外周面から離間しているので、各ヒータ10,20からの放射熱の影響が抑制されて熱疲労による破断の発生が少なくなる。
【0017】
また、各端子部12,22が、配管1の底部に配置されているので、各ヒータ10,20から上昇していく放射熱の影響を受けることが少ない。したがって、電線14,24の接続部が熱疲労により破断するおそれがいっそう少なくなる。
【0018】
配管1の周囲にはカバー40が設けてあり、このカバー40の底部に電線14,24を図示しない電源に導く保護管41が連結してある。電線14,24はこの保護管41の中空部内を通り電源に導かれる。
【0019】
上述した構成の保温装置は、電線14,24、電線接続片13,23及び端子部12,22を経由して第1、第2ヒータ10,20へ電気が供給される。これにより各ヒータ10,20が発熱して、配管1を外周面から保温する。その結果、配管1内の結露を防止することができる。
【0020】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、連結バー30の中間部30aは、連結用突起11,21から引張力又は圧縮力を受けたとき、柔軟に変形してそれらの力を吸収できる形状であれば、湾曲形状に限らず、波形に曲がった形状や矩形に折れ曲がった形状などに成形してもよい。
また、電線接続片13,23の長さは任意に設定できるが、好ましくはカバー40に囲まれた空間内に配置可能な範囲でできる限り、配管1の外径方向へ延ばしたほうが、第1,第2ヒータ10,20からの放射熱の影響が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る保温装置の構成を示す一部切欠正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る保温装置の構成を示す横断面図である。
【図3】図2に示された連結バーとその周辺の拡大断面図である。
【図4】図2に示された端子部とその周辺の拡大断面図である。
【図5】従来の保温装置を示す横断面図である。
【図6】図5に示す従来の保温装置の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1:配管、10:第1ヒータ、20:第2ヒータ、11,21:連結用突起、12,22:端子部、13,23:電線接続片、14,24:電線、30:連結バー、40:カバー、41:保護管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
復水器と真空ポンプとを連通する配管のディヒューザ部に設けられた保温装置であって、次の(イ)乃至(ト)の構成を備えることを特徴とする保温装置。
(イ)それぞれ半円筒形状をしており、前記ディヒューザ部を形成する円筒形状の配管外周面に、それぞれ対称に配置される導電性の第1,第2ヒータを有する。
(ロ)前記第1,第2ヒータの各両端縁部は、間隙を設けて近接配置されている。
(ハ)前記第1,第2ヒータの近接配置された各一端縁部に、導電性の連結用突起が設けてある。
(ニ)前記各連結用突起を、金属板で形成した連結バーで連結して電気的に接続する。
(ホ)前記第1,第2ヒータの近接配置された各他端縁部に、導電性の端子部が設けてある。
(ヘ)前記各端子部に、それぞれ金属材料で形成した電線接続片の一端部を固定するとともに、当該電線接続片の他端部を前記配管の外径方向へ引き延ばして配置する。
(ト)前記各電線接続片の他端部に電線を接続し、それら電線を介して各端子部に電気を供給する。
【請求項2】
請求項1の保温装置において、
前記連結バーを構成する金属板の中間部を湾曲形成したことを特徴とする保温装置。
【請求項3】
請求項1又は2の保温装置において、
前記各端子部を、前記配管の底部に配置したことを特徴とする保温装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−96009(P2010−96009A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264998(P2008−264998)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】