説明

保管庫

【課題】内部に保管する殺菌された内視鏡等の保管物を常時除菌しつつ、取り出し等のために扉開閉を行っても収納物を塵埃等で極力汚損させない浄化状態を保持することのできる保管庫の提供を目的とする。
【解決手段】扉2を備えた保管庫1に、保管庫内の空気を強制循環させる空気循環流路5を形成するとともに、循環空気の噴き出し口4を扉内方上部に配置し、保管庫底部方向に噴き出すことにより、扉を開けた際に保管庫の内と外を仕切る空気の層流を形成して外気の侵入を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、庫内の空気の浄化・脱臭・殺菌を行う保管庫に関し、特に医療器具の内視鏡等を収納・保管する大径な保管庫において、器具の取り出し等で扉を開閉しても収納する医療器具等を塵埃等で極力汚染させないように工夫を凝らした保管庫に関する。
【背景技術】
【0002】
病院等医療機関において医療器具の内視鏡は、使用された後に殺菌・消毒されて、塵埃や、細菌・ウィルス等が付着しないように、常に除菌されている状態で保管する必要がある。そのため、内視鏡専用の保管庫が設置されていることが多い。一般的な殺菌庫の場合には、紫外線ランプからなる殺菌灯や、オゾン発生手段を備えて除菌することが多いが、内視鏡にあっては柔軟性を備えるべく可撓性を有する合成樹脂材を用いており、これは紫外線やオゾンを浴びると経時的に酸化等により脆くなってひび割れが生じる等の劣化が進行することから、内視鏡用の保管庫としてはこれらの除菌手段を用いることは適切でなかった。
【0003】
また、保管庫の構造としては図3に示すごとく、前面に開閉自在な扉22を備え、内部に適宜な除菌手段を備えるとともに、内部の背面23に内視鏡24を懸架して保管する保管庫21が存在している。そして内視鏡24の取り出しに際しては、引き戸の扉22を開けて内視鏡24を取り出し、扉22を閉めるという動作を行うものである。
【特許文献1】特開2005−52199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の保管庫21にあっては、内部に除菌手段を備えているので扉22が閉まっている状態では、内視鏡24が除菌され続けられる好適な浄化状態であるが、ひとたび扉22が開けられると、大きく開いた開口部から保管庫21内に外気とともに多くの塵埃等が侵入する恐れがあった。これでは、せっかく除菌されていた内視鏡24が、扉22を開閉するたびに汚損されてしまうこととなり問題であった。
【0005】
そこで本発明にあっては、上述した課題を解決すべく、内部に保管する内視鏡等の保管物を常時除菌しつつ、取り出し等のために扉開閉を行っても保管物を塵埃等で極力汚損させずに浄化状態を保持することのできる保管庫の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の保管庫は、保管庫内に保管庫内の空気を強制循環させる空気循環流路を形成するとともに、循環空気の噴き出し口を保管庫の扉内方上部に配置し噴出空気を保管庫底部方向に噴き出させることにより、扉を開けた際に保管庫の内と外を仕切る空気の層流を形成し外気の侵入を防止することを特徴とする。
【0007】
また、空気循環流路は保管庫内背面部と上面部に連通形成し、保管庫内背面側に吸気口を、保管庫上面の扉内方上部に噴き出し口を形成するとともに、吸気口と噴き出し口との間に送風手段を設けたことを特徴とする。
【0008】
また、空気循環流路内には、光触媒と該光触媒を励起する紫外線ランプからなる殺菌手段を配設したことを特徴とする。
【0009】
また、保管庫背面の空気循環流路の中段及び/又は下段に循環空気の吸気口を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の保管庫は、保管庫内に保管庫内の空気を強制循環させる空気循環流路を形成するとともに、循環空気の噴き出し口を保管庫の扉内方上部に配置し噴出空気を保管庫底部方向に噴き出させることにより、扉を開けた際に保管庫の内と外を仕切る空気の層流を形成し、内部に収納した保管物を取り出すべく扉を開けても、扉内方上部から底部に向かって流れる空気の層流が、庫内への外気の侵入を妨げるカーテンのごとき作用を発揮することから、庫内に外気が侵入しない好適な浄化状態を保持することができる。
【0011】
また、空気循環流路は保管庫内背面部と上面部に連通形成し、保管庫内背面側に吸気口を、保管庫上面の扉内方上部に噴き出し口を形成するとともに、吸気口と噴き出し口との間に送風手段を設けたことで、空気循環流路を容易に形成することができ、また庫内の空気の流れを前面から下方へ、そして背面へとスムーズに導くことができ、これにより保管物を循環する空気の中に曝すことができる。
【0012】
また、空気循環流路内には、光触媒と該光触媒を励起する紫外線ランプからなる殺菌手段を配設したことで、噴き出し口からは除菌、消臭された清浄空気が噴き出され、保管物は好適な浄化状態に維持される。
【0013】
また、保管庫背面の空気循環流路の中段及び/又は下段に循環空気の吸気口を形成することで、保管庫の背面側を二重構造の空気流通の空気循環流路とすることができるとともに、中段や下段に循環空気を流通させて保管物を常に浄化空気下に位置させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1及び図2は、本発明に係る保管庫1を示しており、2は開閉自在な引き戸式の扉、3は保管庫1内の背面に懸架されて収納される内視鏡、4は保管庫1内の扉2近傍の上部にほぼ扉2の横幅にあわせて配置され、噴き出す空気の風速を上げるべく先端に向かって先細に形成された噴き出し口、5は保管庫1内の背面に設けた二重壁6で仕切られて形成される空気流通のための空気循環流路、7は二重壁6の中段及び下段に設けられた吸気口で、庫内の空気を空気循環流路5へと吸引する。8は、光触媒プレート9とこの光触媒を励起する紫外線を照射するとともに、この紫外線自身で殺菌する紫外線ランプ10とからなる殺菌手段、11は吸気口7から吸い込んだ空気を噴き出し口4から噴き出すべく空気循環流路5内に設けられた送風ファンである。
【0015】
前記殺菌手段8は、空気循環流路5の中途部分に位置し、並設する光触媒プレート9の相対向する面に、光触媒として酸化チタンを角柱状に結晶化させて生成し、その間に紫外線ランプ10を配置し、この空間に空気を流通させる構成としている。この殺菌手段8は、従来の光触媒のごとく酸化チタンにバインダーを混練して塗布する構成ではなく、結晶化させて生成させることですべて酸化チタンから構成することができ、かつその表面に角柱状に凹凸があることから表面積が増大し、アセトアルデヒド分解特性、ホルムアルデヒド分解性能などのガス成分の光触媒効果がきわめて高い。そして、殺菌手段8の紫外線ランプ10は、噴き出し口4や吸気口7から離れた空気循環流路5の中途部分に位置して庫内に紫外線を漏れ出すことがないので、内視鏡3の合成樹脂材等を劣化させる恐れはない。
【0016】
このような構造からなる本実施例の保管庫1にあっては、吸気口7から吸い込まれた庫内の空気は殺菌手段8で殺菌された後、送風ファン11によって噴き出し口4から保管庫1底部方向に噴き出させることにより、扉2を開けた際に保管庫1の内と外を仕切る空気の層流、すなわちエアーカーテンを形成し外気の侵入を防止するものである。そして、噴き出し口4から噴き出された空気は下段及び中段の吸気口7から空気循環流路5内に吸引され、循環しながら連続して除菌されるものである。
【0017】
なお、上述した実施例にあっては吸気口7を二重壁6の中段及び下段に配置し中段にては内視鏡3等の収納物付近の空気をも吸気する構成としたが、これに限定されることなく、下段のみや、中段のみに適宜に配置する構成としてもよいものである。これにより、下段や中段に循環空気を流通させて保管物を常に浄化空気中に位置させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の保管庫の一部切欠斜視図である。
【図2】本発明の保管庫の説明図である。
【図3】従来の保管庫の一部切欠斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
1 保管庫
2 扉
3 内視鏡
4 噴き出し口
5 空気循環流路
6 二重壁
7 吸気口
8 殺菌手段
9 光触媒プレート
10 紫外線ランプ
11 送風ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保管庫内に保管庫内の空気を強制循環させる空気循環流路を形成するとともに、循環空気の噴き出し口を保管庫の扉内方上部に配置し噴出空気を保管庫底部方向に噴き出させることにより、扉を開けた際に保管庫の内と外を仕切る空気の層流を形成し外気の侵入を防止することを特徴とする保管庫。
【請求項2】
空気循環流路は保管庫内背面部と上面部に連通形成し、保管庫内背面側に吸気口を、保管庫上面の扉内方上部に噴き出し口を形成するとともに、吸気口と噴き出し口との間に送風手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の保管庫。
【請求項3】
空気循環流路内には、光触媒と該光触媒を励起する紫外線ランプからなる殺菌手段を配設したことを特徴とする請求項1記載の保管庫。
【請求項4】
保管庫背面の空気循環流路の中段及び/又は下段に循環空気の吸気口を形成したことを特徴とする請求項2記載の保管庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−333954(P2006−333954A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159619(P2005−159619)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(591269712)アンデス電気株式会社 (33)
【Fターム(参考)】