説明

保護用ボディギアにおける磁気的な衝撃吸収

【課題】保護用ボディギアおよびその内部で使用される衝撃吸収構造体を提供すること。
【解決手段】保護シェル102;該シェル102の内側表面に接続された、着用者の頭と接触するための内部裏打ち104;ならびに該シェル102と該内部裏打ち104との間に配置された、間隔を空けた第一の磁気要素106および第二の磁気要素108であって、該第一の磁気要素106と該第二の磁気要素108とが、該内部裏打ち104と該シェル102との間で相互に反発するように配向している、第一の磁気要素106および第二の磁気要素108を備える、衝撃吸収ヘルメット100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護用ボディギア(特に、ヘルメット)、およびその内部で使用される衝撃吸収構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツの試合中または他の身体活動中に、個人はしばしば、衝撃力に曝露され、この衝撃力は、少なくとも部分的に吸収されなければ、重篤な傷害を引き起こし得る。従って、彼らは通常、保護用のスポーツ用品(例えば、ヘルメット、シールド、肘当ておよび膝当てなど)を着用する。このような保護用品は代表的に、衝撃吸収構造体を備え、これらの衝撃吸収構造体は、衝撃力に応答して弾性変形および/または塑性変形し、これによって、この衝撃を機械的に吸収する。例えば、多くのヘルメットは、硬質または半硬質の外側シェルと、このヘルメットを着用者の頭に適合させる内側裏打ちとの間に配置された、破砕可能な発泡体層を有する。より最近のヘルメットの設計は、連続層の代わりに、流体を満たされた不連続な圧縮セルを特徴とし、これらの圧縮セルは、セルの囲いの開口部を通して流体を抵抗的に排出することにより、衝撃を吸収する。
【0003】
不運なことに、機械的な吸収機構は本質的に、吸収構造体の磨耗および裂けを受けやすく、その結果、これらの保護機構の性能が経時的に損なわれ、そしてその保護用品の頻繁な交換が必要になる。圧縮セルの設計も同様に、破壊されやすい。なぜなら、排出流体の剪断応力が排出開口部分または弁の周囲の材料を脆化させて割れさせ得るか、または他の様式でその機械的一体性を失わせ得るからである。
【0004】
さらに、機械的な衝撃吸収機構は、最終的に「底をつく」傾向、すなわち、それ以上は力を吸収し得ない圧縮状態に達する傾向がある。その結果として、これらの機構は一般に、特定の範囲の力(この範囲外では、これらの機構の有効性がかなり低下する)のために設計される必要がある。広い範囲の衝撃力に適応するために、衝撃力が増加すると共に抵抗が増加する吸収機構を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
保護シェル;
該シェルの内側表面に接続された、着用者の頭と接触するための内部裏打ち;ならびに
該シェルと該内部裏打ちとの間に配置された、間隔を空けた第一の磁気要素および第二の磁気要素であって、該第一の磁気要素と該第二の磁気要素とが、該内部裏打ちと該シェルとの間で相互に反発するように配向している、第一の磁気要素および第二の磁気要素
を備える、衝撃吸収ヘルメット。
(項目2)
前記シェル上および前記裏打ち上に機械的拘束具をさらに備え、該機械的拘束具は、前記第一の磁気要素と前記第二の磁気要素とを横方向に整列させるためのものである、上記項目に記載のヘルメット。
(項目3)
前記機械的拘束具は、前記磁気要素間の特定の閾値を越えた距離において、該磁気要素の横方向の動きを防止する、上記項目のうちのいずれかに記載のヘルメット。
(項目4)
前記第一の磁気要素と前記第二の磁気要素とが、実質的に逆の極性を有し、そして前記シェルと前記内部裏打ちとの間に配置された圧縮セルの対向する内部表面に取り付けられている、上記項目のうちのいずれかに記載のヘルメット。
(項目5)
前記衝撃吸収セルが実質的に管状であり、そして前記第一の磁気要素および前記第二の磁気要素が、実質的に管状の該セルの内部床および内部天井にそれぞれ取り付けられている、上記項目のうちのいずれかに記載のヘルメット。
(項目6)
前記第一の磁気要素および前記第二の磁気要素がディスク形状である、上記項目のうちのいずれかに記載のヘルメット。
(項目7)
前記第一の要素および前記第二の要素が、予測される最大の力を超えない衝撃力に応答して、該第一の磁気要素と該第二の磁気要素との間の接触を防止するために充分な磁気強度を有する、上記項目のうちのいずれかに記載のヘルメット。
(項目8)
第一の磁気要素および第二の磁気要素の複数の分布した対を備える、上記項目のうちのいずれかに記載のヘルメット。
(項目9)
前記磁石が、前記内部裏打ちおよび前記シェルを垂直に通る軸に沿って間隔を空けている、上記項目のうちのいずれかに記載のヘルメット。
(項目10)
保護シェル;
該シェルの内側表面に接続された、着用者の身体と接触するための内部裏打ち;ならびに
該シェルと該内部裏打ちとの間に配置された、間隔を空けた第一の磁気要素および第二の磁気要素であって、該第一の磁気要素と該第二の磁気要素とが、該内側裏打ちと該シェルとの間で相互に反発するように配向している、第一の磁気要素および第二の磁気要素
を備える、保護用ボディギア。
(項目11)
前記シェル上および前記裏打ち上に機械的拘束具をさらに備え、該機械的拘束具は、前記第一の磁気要素と前記第二の磁気要素とを横方向に整列させるためのものである、上記項目に記載のボディギア。
(項目12)
前記機械的拘束具は、前記磁気要素間の特定の閾値を越えた距離において、該磁気要素の横方向の動きを防止する、上記項目のうちのいずれかに記載のボディギア。
(項目13)
前記第一の磁気要素と前記第二の磁気要素とが、実質的に逆の極性を有し、そして前記シェルと前記内部裏打ちとの間に配置された圧縮セルの対向する内部表面に取り付けられている、上記項目のうちのいずれかに記載のボディギア。
(項目14)
前記衝撃吸収セルが実質的に管状であり、そして前記第一の磁気要素および前記第二の磁気要素が、実質的に管状の該セルの内部床および内部天井にそれぞれ取り付けられている、上記項目のうちのいずれかに記載のボディギア。
(項目15)
前記第一の磁気要素および前記第二の磁気要素がディスク形状である、上記項目のうちのいずれかに記載のボディギア。
(項目16)
前記第一の要素および前記第二の要素が、予測される最大の力を超えない衝撃力に応答して、該第一の磁気要素と該第二の磁気要素との間の接触を防止するために充分な磁気強度を有する、上記項目のうちのいずれかに記載のボディギア。
(項目17)
第一の磁気要素および第二の磁気要素の複数の分布した対を備える、上記項目のうちのいずれかに記載のボディギア。
(項目18)
前記磁石が、前記内部裏打ちおよび前記シェルを垂直に通る軸に沿って間隔を空けている、上記項目のうちのいずれかに記載のボディギア。
【0006】
(摘要)
磁気反発力が、保護用ボディギア(例えば、ヘルメット)における衝撃吸収のために利用され得る。
【0007】
(要旨)
本発明は一般に、衝撃を吸収するため(または衝撃の吸収を補助するため)に、磁力を利用する。特定の実施形態において、ヘルメットまたは他の着用可能な保護用物品における保護構造体は、この保護用物品の外側表面に対して実質的に垂直な軸に沿って分離された、対向する2個以上の磁石を備える。すなわち、これらの磁石は、予測される方向でこの物品に付与される衝撃力が、これらの磁石を互いの方に押すように配向される(「実質的に垂直」とは、軸配向が、表面に対する完全な垂直から30°未満、好ましくは10°未満、より好ましくは3°未満ずれることを示すことを意味する)。磁石は、これらの磁石の間の磁力が互いに反発する場合、「逆」であるか、または「実質的に逆の極性」を有する、との用語が本明細書中で使用される(好ましくは、磁力線は、これらの磁石間の空間内で実質的に逆平行である。すなわち、180°から45°未満、好ましくは15°未満、より好ましくは5°未満ずれた角度を含む)。有利なことに、磁場を用いる衝撃吸収は、機械的な衝撃吸収とは異なり、可動部品の磨耗および裂けに曝されず、従って、これらの保護構造体のかなり延長した寿命をもたらし得る。さらに、磁石間の反発力は、これらの磁石が互いに接近するにつれて増大し、その結果、衝撃力の増大と共に抵抗が増大し、そして広い範囲の衝撃力が、効果的に吸収され得る。さらに、これらの磁石が互いに非常に近くなると、その反発力は、これらの磁石間での横方向の移動を引き起こす傾向がある(例えば、最小の残余の誤整列または故意の誤整列に起因する)。従って、この保護構造体は、これらの2つの磁石を完全に圧縮して物理的に接触させるよりもむしろ、これらの2つの磁石を横方向にずらす。これは一般に、衝撃力の散逸に寄与する望ましい効果である。
【0008】
1つの局面において、本発明は、種々の実施形態において、衝撃吸収ヘルメットを提供し、この衝撃吸収ヘルメットは、保護シェル、このシェルの内側表面に接続された内部裏打ち(着用者の頭と接触するためのもの)、およびこのシェルとこの内部裏打ちとの間に配置された1対の磁気要素を備える。これらの磁気要素は、間隔を空けており(例えば、この内部裏打ちとこのシェルとを垂直に通る軸に沿って)、そしてこれらの磁石がこの内部裏打ちとこのシェルとの間で互いに反発するように配向される。それらの磁気強度は、衝撃力が予測される最大の力を超えない限り、これらの磁石間の接触を防止するために充分であり得る。
【0009】
いくつかの実施形態において、このヘルメットは、このシェル上およびこの裏打ち上に機械的拘束具をさらに備え、この機械的拘束具は、これらの磁気要素を横方向に整列させるためのものである。これらの機械的拘束具は、少なくともこれらの磁石間の、特定の閾値を越える距離において、これらの磁気要素の横方向の動きを防止し得る。代替的に、または加えて、これらの機械的拘束具は単に、制限された量の横方向の動き(この量は、磁石間のいずれの距離においても、相互の反発を有意に損なうには不充分である)を可能にするために充分な可撓性を示し得る。いくつかの実施形態において、これらの磁気要素は、実質的に逆の極性を有し、そしてシェルと内部裏打ちとの間に配置された圧縮セルの対向する内部表面に設置される。この圧縮セルは、実質的に管状であり得(すなわち、頂壁と底壁とが、それらの外周に沿って、側壁構造体によって接続されている)、そしてその内部床および天井にそれぞれ設置された2個の磁気要素を有し得る。これらの磁気要素は、ディスク形状であり得る。このヘルメットは、対向する磁気要素の、複数の分布した対を備え得る。
【0010】
別の局面において、本発明は、保護用ボディギアに関し、この保護用ボディギアは、保護シェル、この裏打ちの内側表面に接続された内部裏打ち、および1対の磁気要素を備える。これらの磁気要素は、互いに反発する配向で、この内側裏打ちとこのシェルとの間に配置される。このボディギアは、例えば、チェストシールド、膝当て、肘当て、腰当て、またはアームシールドを備え得るか、またはこれらからなり得る。ヘルメットに関連して上に記載された磁気的衝撃吸収構造体の特徴が、他のボディギアにも同様に適用され得る。
【0011】
上記のことは、以下の発明の詳細な説明から、特に、図面と合わせて考慮される場合に、より容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、1つの実施形態による、裏打ちとシェルとの間の複数対の対向する磁石を備える、保護用ギアの一部分の断面である。
【図2】図2Aおよび図2Bは、1つの実施形態による、包埋された磁石を有する圧縮セルの、それぞれ断面図および斜視図である。
【図3】図3は、1つの実施形態による、磁石整列足場の斜視図である。
【図4】図4は、1つの実施形態による、複数の分布した圧縮セルを有する保護用ヘルメットの立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(詳細な説明)
本明細書に従う保護用ボディギアは一般に、逆の極性の永久磁石を利用して、衝撃力を磁気的に吸収する。これらの磁石は、天然に存在する磁気材料(例えば、鉄、ニッケル、コバルト、またはガドリニウム(19℃未満の温度では強磁性であり、そしてこれより高温では強い常磁性である、希土類金属))、あるいは人工の合金または複合材料(例えば、希土類金属合金(例えば、ネオジム−鉄−ホウ素およびサマリウム−コバルト)、酸化鉄セラミック(フェライト)、アルニコ(アルミニウム、ニッケル、およびコバルトを添加された鉄合金)、または射出成形されたかもしくは可撓性の、樹脂もしくはビニルと磁性粉末との複合材料)から作製され得る。任意の特定の用途のための磁気材料は、過度の実験なしに、必要とされる磁気強度、機械的特性、市販での利用可能性および種々の材料の価格に基づいて選択され得る。例えば、希土類磁石は一般に、最も強い磁場(例えば、1.4テスラを超える)を発生させるが、一般に脆性であり、そして腐食を受けやすく、保護コーティングを必要とする。アルニコ磁石は、腐食抵抗性であり、そして焼結されると優れた機械的特性を有し得、そして鋳造されると高い磁場強度および複雑な形状を有し得る。可撓性の射出成形された磁石は一般に、強度がより低いが、複雑かつ柔軟な形状の低費用での製造が可能であり、従って、磁石が着用者の特定の解剖学的領域に合うことを必要とする衣類における使用のために、望ましくあり得る。一般に、磁石の型、サイズ、形状、および強度は、意図される用途に基づいて、当業者により容易に選択され得る。例えば、特定のスポーツにおいて使用されるヘルメット(この場合、予測される最大衝撃力が合理的に決定され得る)については、充分な磁気強度を有する磁石が、予測される最大の力以下の衝撃力に応答して、磁石間の接触を防止するように選択され得る。本発明の実施形態における使用に適合可能な永久磁石は、種々の製造業者から市販で容易に入手可能である。
【0014】
いくつかの実施形態において、これらの磁石は、衝撃吸収用品内で、衝撃力に曝露される外部シェルと、着用者と接触する内側裏打ちとの間に位置する。例えば、図1は、層状の保護用物品100を概略的に図示し、この保護用物品は、シェル102および着用者の身体Bに実質的に合う裏打ち104、ならびにシェル102と裏打ち104との間に配置されたそれぞれの圧縮セル110内の数対の対向する磁石106、108を備える。磁石106、108は、シェル102の外側表面に付与される衝撃力Fの垂直成分Fを吸収するように、整列および配向される。すなわち、一般に、対向する磁石106、108の幾何中心は、シェル表面に対して局部的に垂直な幾何軸112に沿って離される。次いで、この垂直な力の成分Fは、対向する磁石106、108を互いの方に移動させる傾向があり、そしてその反発する磁力は、このような動きに抵抗し、これによって、衝撃を吸収する。
【0015】
これらの磁石は、圧縮可能な整列状態で保持され得るか、またはこれらの磁石間の横方向の移動を制限するガイド構造体が、これらの磁石のそれぞれの幾何中心を、これらの分離の軸112上またはその近くに維持し得る。図示される実施形態において、磁石106、108の整列は、各対の一方の磁石106をそれぞれの圧縮セル110の底に取り付け、そして他方の磁石108をそれぞれの圧縮セル110の天井に取り付け、そしてセル110を、裏打ち104の外側表面およびシェル102の内側表面に付着させることによって、達成される。いくつかの実施形態において、磁石間の横方向の移動は、シェルに対する接線方向の力の散逸を可能にする目的で、(少なくとも特定の限度内で)可能にされる。このような横方向の移動は、例えば、接線方向の力に応答して横方向にずれる整列構造体を提供し、これによってシェルが裏打ちに対して横方向に移動することを可能にすることによって、容易にされ得る。特定の実施形態において、横方向の移動は、対向する磁石が所定の閾値を超える距離にある限り妨げられ、そして磁石間の距離がこの閾値内に入ると可能にされる。このような機能は、充分に高い衝撃力においてのみ曲がり、そして/または横方向にずれる、ガイド構造体を用いて達成され得る。
【0016】
図2Aおよび図2Bは、例示的な衝撃吸収セル200(これは、セル110の代わりに使用され得る)をより詳細に図示する。セル200は、囲い202を備え、この囲いは、管状の側壁構造体208によって接続された、実質的に平行な頂部プレート204および底部プレート206を形成する。図示されるように、頂部プレート204および底部プレート206は円形であり得、そして接続する側壁構造体208は、回転対称であり得る。しかし、囲いの形状は、重要ではない。他の幾何学的形状もまた可能である(例えば、頂部プレートおよび底部プレートは、矩形であり得、そして4つの壁セグメントを有する側壁構造体によって接続され得る)。囲い202は、ポリマー材料(例えば、熱可塑性物質)から作製され得、そして1つの部品としてかまたは複数の部品として、射出成型され得る。例えば、頂部プレート204および側壁構造体208は、1つの成形された単位を形成し得、これが、別の成形された底部プレート206に、熱的に結合されるか、接着されるか、または他の方法で取り付けられる。
【0017】
囲い202は、半可撓性のフランジまたはリップ210(頂部プレート204および底部プレート206の内部表面から突出する)を備え得、このフランジまたはリップは、磁石106、108に適合し、そしてこれらの磁石を少なくとも部分的に囲み、これによって、これらの磁石をプレート204、206の内部表面に対して保持する。この構成は、予め製造された磁石を一工程で(例えば、これらの磁石を内部表面とリップとの間の空間にプレスばめすることにより)挿入することを容易にする。あるいは、これらの磁石は、例えば、頂部プレートおよび底部プレートに螺合され得るか、接着され得るか、またはクランプされ得るか、あるいは当業者に容易に明らかになる種々の他の方法のいずれかで付着され得る。
【0018】
図2Aおよび図2Bに図示されるように、これらの磁石は、実質的にディスク形状であり得る。すなわち、このディスクの厚さより大きい寸法の、平坦な、実質的に平行な頂表面および底表面(これらの表面は、円形であってもよいが、必ずしもそうでなくてもよい)を有し得る。この形状は、磁石間の空間における磁場の高度な均質性をもたらし、このことは、少なくとも最初の圧縮段階中に、均一な抵抗を与えるために有利であり得る。さらに、薄いディスク形状の磁石は、保護構造体の全体の厚さを最小にする役に立ち、このことは、例えばヘルメットにおいて、ヘルメットの嵩高さを減少させるために望ましい。しかし、他の磁石の形状もまた使用され得る。例えば、いくつかの実施形態において、これらの磁石は、球状または半球状であってもよい。半球状である場合、その平坦な表面が圧縮セルの囲いに取り付けられ、そしてその湾曲した表面が互いに面して、これらの磁石が互いに接近するにつれて着実に増大する磁気反発をもたらす。特定の実施形態において、これらの2つの対向する磁石は、異なるが相補的な形状を有する。例えば、一方の磁石は椀状の形状であり得、そしてその凹状の表面で、対向する球状の磁石に面し得る。この球状の磁石は、この椀の内側に嵌るサイズにされており、対向する磁石表面間に均一なギャップを残す。
【0019】
磁気的な衝撃吸収は、種々の機械的な衝撃吸収機構と組み合わせられ得る。例えば、図2Aおよび図2Bに図示される実施形態において、囲い202の側壁208は、少なくとも最初の段階中に、それ自体がセル200の圧縮に抵抗し得、これによって、衝撃吸収に寄与し得る。さらに、セル200は、流体(例えば、空気)を含み得、この流体は、囲い(代表的に、頂部壁204または底部壁206)の1つ以上の開口部212を通って抵抗的に排出されて、さらなる吸収機構を提供する。
【0020】
磁石を整列させる構造体は、必ずしも、磁石106、108を完全に囲む必要はない。むしろ、いくつかの実施形態において、磁石106、108は、開いた枠または足場に付着され得る。その1つの例が、図3に図示されている。整列足場300は、数本の脚を備え得、これらの脚は、例えば、星型またはリング型の頂部分および底部分によって接続されており、この頂部分および底部分に、磁石106、108が取り付けられる。図示される例においては、3本の脚が、およそY字型の頂部分および底部分の3つの端部に接続されている。磁石106、108が互いに近付くように押されるにつれて、整列足場300の脚が曲がり得る。この足場はまた、これらの脚が1つの側にいくらか傾斜することを可能にし得、2つの磁石間での横方向の動きをもたらし得る。従って、この足場は、望ましくは、衝撃力に抵抗することを補助するために充分に堅いが、壊れることなく曲がったり移動したりするために充分に可撓性である。図3に図示される足場300のような整列構造体は、例えば、射出成形されたプラスチックで低費用で製造され得るが、種々の他の材料(例えば、薄い金属シートが挙げられる)から作製されてもよい。整列構造体およびガイド構造体の他の構造的実施もまた想定される。例えば、磁石は、ばね構造体のループ内に、このばねの両端で保持され得る。
【0021】
上記のような磁気的な衝撃吸収構造体は、種々の用途(例えば、保護用ボディギア、乗物のダッシュボード、および衝撃吸収座席が挙げられる)において有利に使用され得る。図4は、1つの例示的な用途として、シェルとヘルメット裏打ちとの間に分布した複数の圧縮セル402を備える保護用ヘルメット400を図示する。各圧縮セル402は、例えば、図2Aおよび図2Bに関して上で記載されたように、逆の極性の1対の磁石を備え得る。いくつかの用途(例えば、膝当て)において、1対の磁石が使用され得る。さらに、いくつかの実施形態において、1個の磁石が、複数の、代表的にはより小さい磁石に対向し得る。
【0022】
本発明の特定の実施形態が上に記載された。しかし、本発明はこれらの実施形態に限定されずむしろ、本明細書中に明示的に記載されるものに対する付加および改変もまた、本発明の範囲内に含まれることが、明らかに留意される。さらに、本明細書中に記載される種々の実施形態の特徴は、一般に、相互に排他的ではなく、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の順列および組み合わせで(このような順列または組み合わせが本明細書中で明示されていない場合でさえも)存在し得ることが理解されるべきである。実際に、本明細書中に記載されるもののバリエーション、改変物、および他の実施は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者に想到する。従って、本発明は、上記例示的な説明のみによって規定されるべきではない。
【符号の説明】
【0023】
100 保護用物品
102 シェル
104 裏打ち
106、108 磁石
110 圧縮セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護シェル;
該シェルの内側表面に接続された、着用者の頭と接触するための内部裏打ち;ならびに
該シェルと該内部裏打ちとの間に配置された、間隔を空けた第一の磁気要素および第二の磁気要素であって、該第一の磁気要素と該第二の磁気要素とが、該内部裏打ちと該シェルとの間で相互に反発するように配向している、第一の磁気要素および第二の磁気要素
を備える、衝撃吸収ヘルメット。
【請求項2】
前記シェル上および前記裏打ち上に機械的拘束具をさらに備え、該機械的拘束具は、前記第一の磁気要素と前記第二の磁気要素とを横方向に整列させるためのものである、請求項1に記載のヘルメット。
【請求項3】
前記機械的拘束具は、前記磁気要素間の特定の閾値を越えた距離において、該磁気要素の横方向の動きを防止する、請求項2に記載のヘルメット。
【請求項4】
前記第一の磁気要素と前記第二の磁気要素とが、実質的に逆の極性を有し、そして前記シェルと前記内部裏打ちとの間に配置された圧縮セルの対向する内部表面に取り付けられている、請求項1に記載のヘルメット。
【請求項5】
前記衝撃吸収セルが実質的に管状であり、そして前記第一の磁気要素および前記第二の磁気要素が、実質的に管状の該セルの内部床および内部天井にそれぞれ取り付けられている、請求項4に記載のヘルメット。
【請求項6】
前記第一の磁気要素および前記第二の磁気要素がディスク形状である、請求項5に記載のヘルメット。
【請求項7】
前記第一の要素および前記第二の要素が、予測される最大の力を超えない衝撃力に応答して、該第一の磁気要素と該第二の磁気要素との間の接触を防止するために充分な磁気強度を有する、請求項1に記載のヘルメット。
【請求項8】
第一の磁気要素および第二の磁気要素の複数の分布した対を備える、請求項1に記載のヘルメット。
【請求項9】
前記磁石が、前記内部裏打ちおよび前記シェルを垂直に通る軸に沿って間隔を空けている、請求項1に記載のヘルメット。
【請求項10】
保護シェル;
該シェルの内側表面に接続された、着用者の身体と接触するための内部裏打ち;ならびに
該シェルと該内部裏打ちとの間に配置された、間隔を空けた第一の磁気要素および第二の磁気要素であって、該第一の磁気要素と該第二の磁気要素とが、該内側裏打ちと該シェルとの間で相互に反発するように配向している、第一の磁気要素および第二の磁気要素
を備える、保護用ボディギア。
【請求項11】
前記シェル上および前記裏打ち上に機械的拘束具をさらに備え、該機械的拘束具は、前記第一の磁気要素と前記第二の磁気要素とを横方向に整列させるためのものである、請求項10に記載のボディギア。
【請求項12】
前記機械的拘束具は、前記磁気要素間の特定の閾値を越えた距離において、該磁気要素の横方向の動きを防止する、請求項11に記載のボディギア。
【請求項13】
前記第一の磁気要素と前記第二の磁気要素とが、実質的に逆の極性を有し、そして前記シェルと前記内部裏打ちとの間に配置された圧縮セルの対向する内部表面に取り付けられている、請求項10に記載のボディギア。
【請求項14】
前記衝撃吸収セルが実質的に管状であり、そして前記第一の磁気要素および前記第二の磁気要素が、実質的に管状の該セルの内部床および内部天井にそれぞれ取り付けられている、請求項13に記載のボディギア。
【請求項15】
前記第一の磁気要素および前記第二の磁気要素がディスク形状である、請求項14に記載のボディギア。
【請求項16】
前記第一の要素および前記第二の要素が、予測される最大の力を超えない衝撃力に応答して、該第一の磁気要素と該第二の磁気要素との間の接触を防止するために充分な磁気強度を有する、請求項10に記載のボディギア。
【請求項17】
第一の磁気要素および第二の磁気要素の複数の分布した対を備える、請求項10に記載のボディギア。
【請求項18】
前記磁石が、前記内部裏打ちおよび前記シェルを垂直に通る軸に沿って間隔を空けている、請求項10に記載のボディギア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−108207(P2013−108207A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−254462(P2012−254462)
【出願日】平成24年11月20日(2012.11.20)
【出願人】(512300333)ジーナス, エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】