説明

信号・電力受信機

【課題】 充分な電力の受信および安定した高速データ転送を共に可能とする信号・電力受信機を提供する。
【解決手段】 図に示す信号・電力受信機は、データ受信用のアンテナ1と、電力受信用のアンテナ2とが個別に設けられている。データ受信用アンテナ1によって受信された信号は入力制限回路3によって信号レベルが所定レベル範囲内に制御され、データ処理回路5へ加えられる。電力受信用アンテナ2によって受信された交流電力は電源回路4によって直流電圧に変換され、各部へ供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてRFIDタグに用いられる信号・電力受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触ICカードシステム等に代表されるRFIDタグ・システムは、物品に貼付され、その物品のID等が記録されたRFIDタグと、そのIDを認識・制御するリーダライタにより構成される。RFIDタグはアンテナおよび受信回路からなる信号・電力受信回路と、データ処理回路と、メモリと、送信回路とを有し、アンテナ以外はICによって構成されている。そして、リーダライタから電力供給を受けると同時に、そのリーダライタとの間で無線によりデータの送受信を行う。
【0003】
RFIDタグにおいては、ICを充分に駆動する電力を受信するために、アンテナを受信信号に共振させ効率よく電力受信ができるように設計されている。しかしながら、RFIDタグの受信アンテナのQ(共振特性)を高く設計すると、図3(a)に示すように、感度−周波数特性が急峻となり、ICに供給される電力は増加するが、その反面、アンテナの受信周波数特性が狭帯域化しデータ転送速度への制約となってしまう。逆に、RFIDタグのアンテナのQを低く設計すると、図3(b)に示すように、受信特性が広帯域化し、データ転送速度を向上させることができるが、Qが低下することによりICへの供給電力が低下してしまう。このように、RFIDタグにおいては受信電力とデータ転送速度とがトレードオフの関係にあり、このため、従来は両特性を考慮して設計が行われていた。 なお、従来のRFIDタグ・システムに関する技術文献として特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平6−96300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のRFIDタグ・システムにおいては、26.48Kbps〜424Kbpsという比較的低い周波数がデータ送信に使用されており、この結果、上述した電力受信およびデータ受信を共に満足するアンテナを設計することが可能であった。しかしながら、近年、RFIDタグ・システムにおいても、高速なデータ転送が要求され、従来のRFIDタグの信号・電力受信機では、充分な電力受信を行って、かつ、高速データ転送の要求を満足するのが難しいという問題があった。
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、その目的は、充分な電力の受信および高速データ転送を共に可能とする信号・電力受信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明に係る信号・電力受信機の一つの態様は、データ受信用のアンテナと、電力受信用のアンテナと、前記電力受信用アンテナによって受信された交流電力を直流に変換する直流電源回路と、を具備することを特徴とする。
また、本発明に係る信号・電力受信機の他の態様は、データ受信用のアンテナと、電力受信用のアンテナと、前記データ受信用アンテナによって受信された信号のレベルを所定レベル範囲内に制御する入力制限回路と、前記電力受信用アンテナによって受電された交流電力を直流に変換する電源回路とを具備することを特徴とする。
【0006】
また、上記信号・電力受信機において、前記入力制限回路は、自動利得調整回路またはシャント回路によって構成されていることが好ましい
また、上記信号・電力受信機において、前記データ受信アンテナは、広帯域な周波数特性をもったアンテナによって構成されることが好ましい。
【0007】
また、上記信号・電力受信機において、前記電力受信アンテナは、搬送波周波数で共振する特性をもったアンテナによって構成されることが好ましい。
また、上記信号・電力受信機において、前記データ受信アンテナおよび前記電力受信アンテナは各々アンテナコイルによって構成され、前記データ受信アンテナのアンテナコイルの巻数より前記電力受信アンテナのアンテナコイルの巻数が多いことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、データ受信用アンテナと電力受信用アンテナとをそれぞれ個別に備えているので、充分な電力の受信および安定した高速データ転送を共に達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。図1はこの発明の一実施の形態による信号・電力受信機を適用したRFIDタグの構成を示すブロック図である。この図において、符号1はリーダライタ(図示略)から送信された無線変調信号を受信するデータ受信用アンテナ、2はリーダライタから送信された無線信号を受信する電力受信用アンテナである。データ受信用アンテナ1はQが低く、広帯域の受信特性を有しており、広帯域に変調信号を受信して高速データ転送ができるように設計されている。
【0010】
一方、電力受信用アンテナ2はQが高く、狭帯域の周波数特性を有しており、搬送波周波数で共振をとるように設計され、無線搬送波信号から効率的に電力を受信できるように設計されている。図2は13.56MHz帯のRFIDタグ・システムへ本発明を適用したアンテナの構成例を示す図であり、データ受信用アンテナコイル1および電力受信用アンテナコイル2を示してある。(a)は複数ターンの電力受信用アンテナコイル2の外側に、1ターンのデータ受信用アンテナコイル1が設けられている。また、(b)は複数ターンの電力受信用アンテナコイル2の内部に1ターンのデータ受信用アンテナコイル1が設けられている。
【0011】
なお、データ受信用アンテナコイル1は電力受信用アンテナコイル2の内側でも外側でもよく、また、別の場所に設置されていてもよい。また、電力受信用アンテナコイル2の大きさは内部回路へ供給する電力を考慮して決定し、データ受信用アンテナコイル1の大きさは通信速度によって要求される周波数帯域幅によって決めればよい。
【0012】
3は入力制限回路であり、AGC回路(自動利得調整回路)またはシャント回路によって構成され、規定以上のレベルの入力信号がデータ受信用アンテナコイル1によって受信された時、その信号レベルを規定レベル内に抑えてデータ処理回路5へ出力する。4は電源回路であり、電力受信用アンテナ2によって受信された交流電圧を直流に変換し、さらに安定化してデータ処理回路5へ出力する。上述したデータ受信用アンテナ1、電力受信用アンテナ2、入力制限回路3、電源回路4がこの発明の実施形態による信号・電力受信機を構成している。
【0013】
データ処理回路5はクロック再生回路6と、復調回路7と、ロジック制御部8とから構成されている。クロック再生回路6は入力制限回路3の出力信号からクロック信号を抽出し、復調回路7へ出力する。復調回路7は、入力制限回路3の出力信号およびクロック再生回路6から出力されるクロック信号に基づいて、リーダライタから送信されたデータを復調し、ロジック制御部8へ出力する。ロジック制御部8は復調回路7から出力されるデータをクロック再生回路6から出力されるクロック信号に基づいて読み込み、読み込んだデータを解読し、解読結果に従って所定のデータ処理を行う。例えば、内部のメモリに記憶されているIDを読み出し、変調回路9へ出力する。変調回路9は、ロジック制御部8の出力データに基づいて電力受信用アンテナ2の負荷を変動させ、該データをリーダライタへ送信する。
【0014】
このように、上述した回路構成は、データ受信用アンテナと電力受信用アンテナとをそれぞれ個別に備えている。この結果、従来は無線搬送波信号の受信効率と受信周波数特性の帯域幅とのトレードオフを考慮した設計が必要であったが、この回路構成によれば、それぞれのアンテナの周波数特性を独立して設計することができ電力受信用アンテナは内部回路へ供給する電力が充分受信できるように共振をとる設計とし、データ受信用アンテナは広帯域な受信特性を実現するような設計をすることができる。また、上記の回路によれば、入力制限回路3を備えており、リーダライタとRFIDタグとの間の距離にかかわらず、データを安定的に復元することが可能である。従来の回路によれば、入力制限回路を設けると、データを安定的に復元することが可能となるが、受信電力をも制限してしまうこととなり、内部回路を駆動する電力が不足してしまう問題があった。
【0015】
以上のように、上記の実施形態によれは、内部回路へ充分な電力を供給でき、しかも、高速データを安定的に復元することができるRFIDタグ・システムを構成することが可能となる。
なお、この発明は、上述したRFIDタグ・システムだけでなく、例えば、アクティブマトリックスの電子ペーパを無線で駆動するシステム等にも利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0016】
この発明は、RFIDタグ・システム等、電力および高速データを無線で送受信するシステムに用いて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の一実施形態による信号・電力受信回路を適用したRFIDタグの構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態におけるデータ受信用アンテナコイル1および電力受信用アンテナコイル2の構成例を示す図である。
【図3】アンテナの特性例を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
1…データ受信用アンテナ
2…電力受信用アンテナ
3…入力制限回路
4…電源回路
5…データ処理回路
6…クロック再生回路
7…復調回路
8…ロジック制御部
9…変調回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ受信用のアンテナと、
電力受信用のアンテナと、
前記電力受信用アンテナによって受信された交流電力を直流に変換する直流電源回路と、
を具備することを特徴とする信号・電力受信機。
【請求項2】
データ受信用のアンテナと、
電力受信用のアンテナと、
前記データ受信用アンテナによって受信された信号のレベルを所定レベル範囲内に制御する入力制限回路と、
前記電力受信用アンテナによって受信された交流電力を直流に変換する直流電源回路と、
を具備することを特徴とする信号・電力受信機。
【請求項3】
前記入力制限回路は、自動利得調整回路またはシャント回路によって構成されていることを特徴とする請求項2に記載の信号・電力受信機。
【請求項4】
前記データ受信アンテナは、広帯域な周波数特性をもったアンテナによって構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の信号・電力受信機。
【請求項5】
前記電力受信アンテナは、搬送波周波数で共振する特性をもったアンテナによって構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の信号・電力受信機。
【請求項6】
前記データ受信アンテナおよび前記電力受信アンテナは各々アンテナコイルによって構成され、前記データ受信アンテナのアンテナコイルの巻数より前記電力受信アンテナのアンテナコイルの巻数が多いことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の信号・電力受信機。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−110577(P2007−110577A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−301208(P2005−301208)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】