説明

信号伝送ケーブル、及び信号伝送ケーブルのグランド接続方法

【課題】信号線に流れる信号の無線特性を安定化させるために、その信号線と平行して配線されるグランド線に安定した低グランドレベルを確保できるようにする。
【解決手段】信号を伝送する信号線6と前記信号へのノイズの影響を防止するために信号線6と平行に配線されたグランド線7、8とを有し、信号線6とグランド線7、8がコネクタ基板3、4で両端を終端されている信号伝送ケーブル1であって、コネクタ基板3、4の位置を除くグランド線7、8の任意の位置に、そのグランド線7、8と電気的に接続するためのビア10を有するグランド層9が形成された中間基板5を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板相互間のインタフェースとなる信号伝送ケーブル、及び信号伝送ケーブルのグランド接続方法に係り、特に、フレキシブルケーブルを用いて基板相互間で制御信号を伝送するための信号伝送ケーブル、及び信号伝送ケーブルのグランド接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の基板の相互間を伝送する制御信号を接続するインタフェースとしては、フレキシブルケーブルによる信号伝送ケーブルが一般的となっている。特に、2つの筐体部分を折り畳む折畳型携帯電話や、2つの筐体部分をスライドさせるスライド型携帯電話などにおいては、液晶画面側筐体とキー側筐体との間の信号系統を接続する場合には、信号伝送ケーブルとして複数枚のフレキシブルケーブルを一束に重ねて用いている例が多く見受けられる。すなわち、携帯電話を薄型化したり、携帯電話の筐体間の可動部分を電気的に接続するための信号伝送ケーブルとしては、フレキシブルケーブルは必要不可欠な存在である。
【0003】
図4は、4層構成のフレキシブルケーブルからなる、関連技術としての信号伝送ケーブルの側面図である。図4に示すように、信号伝送ケーブル21は、4枚のフレキシブルケーブルを重ねて一束に束ねた4層構成のフレキシブルケーブル22の両端が、それぞれ、コネクタ基板23とコネクタ基板24とによって終端されている。そして、各層のフレキシブルケーブル22は、コネクタ基板23及びコネクタ基板24の部分でそれぞれの層とビア(スルーホールメッキ穴)によって電気的に接続をとることができる。
【0004】
図5は、図4に示す4層のフレキシブルケーブルからなる信号伝送ケーブルの構成図であり、(a)はフレキシブルケーブルの1層分の構成を示す平面図、(b)は(a)で示した構成と同じ構成が4層分重なっている状態を示す断面図である。すなわち、図5(a)に示すように、フレキシブルケーブル22は、4本の信号線25の両側にグランド線26、27が配線され、各信号線25及びにグランド線26、27の両端がコネクタ基板23及びコネクタ基板24に接続されている。そして、コネクタ基板23内において、グランド線26のD点とグランド線27のA点とが接続されて、グランドEに接地されている。また、コネクタ基板24内においても、同様に、グランド線26のF点とグランド線27のC点とが接続されて、グランドEに接地されている。このような構成は、フレキシブルケーブル22の4層分とも同じようになっている。
【0005】
また、図5(b)の4層のフレキシブルケーブル22の断面図に示すように、コネクタ基板23内において、信号線25(図示せず)の両サイドのグランド線26,27が4層分に亘ってビア28で接続され、グランドEに接地されている。同様にして、コネクタ基板24内においても、信号線25(図示せず)の両サイドのグランド線26,27が4層分に亘ってビア28で接続され、グランドEに接地されている。このようにして、各層のフレキシブルケーブル22において、両サイドに配線されたグランド線26、27によって信号線25の電波遮蔽を行っている。これにより、外部からの輻射電波に影響されて信号線25にノイズ妨害が生じることのないようにしたり、信号線25を伝送する制御信号が輻射電波として外部に漏れたりすることのないようにすることができる。なお、この状態では、グランド線26の途中のE点、及びグランド線27の途中のB点においては、各層同士のグランド線は接続されていない。
【0006】
図6は、図4に示すフレキシブルケーブルを折畳型携帯電話に適用したときの概念図である。すなわち、図6に示すように、複数本の信号線とその両サイドの2本のグランド線とで構成されるフレキシブルケーブル22が4層一束に重ねられ、コネクタ基板23、24を介して液晶画面側基板31とキー側基板32とに接続されている。このとき、折畳型携帯電話の液晶画面側基板31とキー側基板32をフレキシブルケーブル22で接続する場合は、液晶画面側基板31の端部とキー側基板32の端部にコネクタ基板23,24を設けてフレキシブルケーブル22を短くすれば、輻射電波によるノイズの影響を軽減することができる。しかし、折畳型携帯電話を折り畳むためにはフレキシブルケーブル22を長くしなければならないし、また、機構的な制約等によって、液晶画面側基板31の端部やキー側基板32の端部にコネクタ基板23、24を設けることができない場合がある。
【0007】
例えば、図6に示すように、コネクタ基板24はキー側基板32の基板端に設けられているが、コネクタ基板23は、液晶画面側基板31の中間部分に設けなければならない場合がある。このような場合はフレキシブルケーブル22が長くなる。このようにフレキシブルケーブル22が長くなると、そのフレキシブルケーブル22の信号線を伝送する制御信号がノイズ輻射の影響を受けやすくなり、結果的に、折畳型携帯電話の無線特性を劣化させる要因となる。
【0008】
すなわち、図5に示すように、コネクタ基板23とコネクタ基板24の中間部分では各層同士の電気的な接続をとることはできない。これにより、硬質の多層基板と比較すると、フレキシブルケーブル22が長くなるために、高速信号やクロック信号などを伝送するフレキシブルケーブル22の信号線から発生するノイズの輻射が増加してしまう。
【0009】
言い換えると、高速信号やクロック信号を伝送する信号線と平行にグランド線を配線することによってノイズの輻射や信号線同士の干渉を抑制しているが、他の信号線などの制約により、幅の細いグランドパターン(グランド線)しか形成できない場合がある。このような細いグランドパターンの場合はそのグランドパターンの配線インピーダンスが高くなるため、ノイズ輻射の抑制効果が少なくなってしまう。ここで、硬質の多層基板であれば、このような細いグランドパターンであっても、上下の基板層のグランドパターンをビアによって電気的な接続を行うことにより、単独の細いグランドバターンの配線インピーダンスを低くすることが可能となるので、ノイズ輻射の影響を抑制することができる。
【0010】
しかし、上下層同士の接続を行うことができない多層構成のフレキシブルケーブルでは、ビアによって上下層のグランドパターンを電気的に接続することができないため、ノイズ輻射による無線特性への悪影響が発生してしまう。特に、コネクタ基板23とコネクタ基板24との間の距離が長くなる場合、グランド線26,27のグランドインピーダンスが高くなって無線特性への悪影響が発生しやすくなる。すなわち、携帯電話の薄型化への貢献や可動部分における電気的な接続手段としてフレキシブルケーブルは必要不可欠な存在であるが、電気的特性の観点、特に、高周波信号を伝送する場合の電気的特性の観点から考えた場合には、グランドインピーダンスを低くして、安定したグランドレベルを確保できるような設計を行わないと、ノイズの輻射による無線特性の劣化が発生する。そのため、なんらかの対策手段を用いてフレキシブルケーブル22のグランドインピーダンスを低くする必要がある。
【0011】
そこで、スライド型携帯電話の上下筐体の回路基板間を接続するフレキシブルケーブルのほぼ中間部分のグランドパターンを接地することにより、グランドインピーダンスを低くする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、複数の信号線の両側のグランド線のほぼ中間部分に、電気的に露出したグランド接地部を設ける。一方、下筐体の回路基板におけるグランド層の所定位置に導電性クッションを設ける。これによって、上筐体と下筐体が所定の長さまでスライドされると、グランド線のグランド接地部が下筐体の導電性クッションに電気的に接続される。したがって、フレキシブルケーブルの中間部分のグランド線が導電性クッションを介して接地され、グランド線のグランドインピーダンスを下げて無線特性を良好にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−093998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記特許文献1の技術は、フレキシブルケーブルにおけるグランド線のグランド接続部が露出されていて、スライド型携帯電話の上筐体と下筐体がスライドするたびにグランド線のグランド接続部と下筐体の導電性クッションとが摺動を繰り返す。これによって、摺動の繰り返しにより摺動部分が劣化し、グランド接続部と導電性クッションとの間に接触不良が生じて、フレキシブルケーブルのグランド線に良好な接地状態が得られないことがある。
【0014】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、信号線に流れる制御信号の無線特性を安定化させるために、その信号線と平行して配線されるグランド線に安定した低グランドレベルを確保することができる信号伝送ケーブル、及び信号伝送ケーブルのグランド接続方を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、この発明の第1の構成は、信号を伝送する信号線と前記信号へのノイズの影響を防止するために前記信号線と平行に配線されたグランド線とを有し、前記信号線と前記グランド線がコネクタ基板で両端を終端されている信号伝送ケーブルであって、前記コネクタ基板の位置を除く前記グランド線の任意の位置に、そのグランド線と電気的に接続するためのビアを有するグランド層が形成された中間基板を備えてなることを特徴としている。
【0016】
この発明の第2の構成は、信号を伝送する信号線と前記信号へのノイズの影響を防止するために前記信号線と平行に配線されたグランド線とを有し、前記信号線と前記グランド線がコネクタ基板で両端を終端されている信号伝送ケーブルのグランド接続方法であって、前記コネクタ基板の位置を除く前記グランド線の任意の位置に中間基板を設け、その中間基板に形成されたグランド層のビアと前記グランド線とを電気的に接続する信号伝送ケーブルのグランド接続方法を有してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
この発明の構成によれば、フレキシブルケーブルの長さ方向の任意の位置に中間基板を設け、その中間基板のグランド層とフレキシブルケーブルのグランド線とを接続することにより、フレキシブルケーブルのグランド線のグランドインピーダンスを下げることができる。例えば、中間基板をフレキシブルケーブルの中央位置に設けて、中間基板のグランド層とフレキシブルケーブルのグランド線とを接続すれば、電気的なグランドインピーダンスを、フレキシブルケーブルの全長に相当する配線インピーダンスの半分にすることができる。これによって、フレキシブルケーブルの信号線を伝送する高速信号やクロック信号に対してノイズの輻射が抑えられる。その結果、フレキシブルケーブルの無線特性の劣化を回避したり、効果的なEMC(Electro Magnetic Compatibility:電磁環境適合性)対策を行って、ノイズ対策を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施形態1である信号伝送ケーブルの構成を示す側面図である。
【図2】同信号伝送ケーブルの構成を示す構成図であり、(a)は同信号伝送ケーブルの平面図、(b)は同信号伝送ケーブルの断面図である。
【図3】同信号伝送ケーブルを折畳型携帯電話に適用したときの概念図である。
【図4】4層構成のフレキシブルケーブルからなる、関連技術としての信号伝送ケーブルの側面図である。
【図5】同関連技術の信号伝送ケーブルの構成図であり、(a)は同関連技術の信号伝送ケーブルの平面図、(b)は同関連技術の信号伝送ケーブルの断面図である。
【図6】同関連技術の信号伝送ケーブルを折畳型携帯電話に適用したときの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明は、複数枚のフレキシブルケーブルを重ねて基板相互間で信号線及びグランド線を接続する構成のインタフェースにおいて、フレキシブルケーブルのほぼ中間部分に中間基板を設けてグランド層を形成している。そして、そのグランド層にビアを形成し、そのビアを介して中間基板のグランド層を各フレキシブルケーブルのグランド線に接続している。これによって、各フレキシブルケーブルのグランド線のグランドインピーダンスを低くすることができるので、各フレキシブルケーブルの信号線に流れる制御信号の無線特性を安定化させることができる。以下、図面を参照して、この発明の実施形態について詳細に説明する。
【実施形態1】
【0020】
図1は、この発明の実施形態である信号伝送ケーブルを示す側面図である。図1に示すように、信号伝送ケーブル1は、コネクタ基板3とコネクタ基板4を終端する4層構成のフレキシブルケーブル2の間に、コネクタ基板3,4と同様の多層基板からなる中間基板5を設けた構成となっている。信号伝送ケーブル1をこのような構成にすることにより、中間基板5にグランド層を設けてビアを形成することが可能になる。したがって、中間基板5のグランド層のビアと各層のフレキシブルケーブル2のグランド線とを電気的に接続することにより、フレキシブルケーブル2を構成する各層のグランド線のグランドインピーダンスを低くすることが可能となる。
【0021】
図2は、4層のフレキシブルケーブルからなる信号伝送ケーブル1の構成を示す構成図であり、(a)は最上層又は最下層のフレキシブルケーブルの構成を示す平面図、(b)はフレキシブルケーブルが4層分重なっている状態を示す断面図である。図2(a)に示すように、信号伝送ケーブル1は、4本の信号線6の両サイドにグランド線7、8が配線され、各信号線6及びにグランド線7、8の両端がコネクタ基板3及びコネクタ基板4に接続されている。
【0022】
さらに、この実施形態の信号伝送ケーブル1は、フレキシブルケーブル2の中間位置の近傍に中間基板5が設けられ、この中間基板5の部分にグランド層9が形成されている。中間基板5におけるグランド層9の形成は、図2(b)に示すように、最上層のフレキシブルケーブル2の上部と最下層のフレキシブルケーブル2の下部のみである。
【0023】
このような構成において、図2(a)に示すように、コネクタ基板3内において、グランド線7のD点とグランド線8のA点とが接続されて、グランドEに接地されている。また、コネクタ基板4内においても、同様に、グランド線7のF点とグランド線8のC点とが接続され、グランドEに接地されている。
【0024】
また、図2(b)に示すように、コネクタ基板3内において、フレキシブルケーブル2の4層分の信号線6の両サイドのグランド線7,8がビア10によって接続されて、グランドEに接地されている。さらに、コネクタ基板4内においても、同様に、フレキシブルケーブル2の4層分の信号線6の両サイドのグランド線7,8がビア10によって接続されて、グランドEに接地されている。
【0025】
さらに、この実施形態の信号伝送ケーブル1は、図2(a)に示すように、グランド線7,8のほぼ中央部分のB点、E点の付近に中間基板5が設けられてグランド層9が形成されている。このグランド層9は、図2(b)に示すように、4層の信号線6の両サイドのグランド線7,8を上下から挟むように、最上層のグランド線7,8の上部と最下層グランド線7,8の下部に形成されている。
【0026】
したがって、図2(b)に示すように、中間基板5における最上層のグランド層9と最下層のグランド層9を介して各層のグランド線7,8を接続するためのビア11を設けることができる。すなわち、この実施形態の信号伝送ケーブル1は、コネクタ基板3内及びコネクタ基板4内において、フレキシブルケーブル2の4層のグランド線7,8をコネクタ基板3のビア10によって接続することができると共に、フレキシブルケーブル2のほぼ中間位置(B点、E点付近の位置)に設けた中間基板5内において、グランド層9と4層のグランド線7,8とをビア11によって接続することができる。
【0027】
これによって、コネクタ基板3とコネクタ基板4とを接続する4層のフレキシブルケーブル2のグランド線7,8のグランドインピーダンスを低くすることができるので、グランド線7,8の間に配線されている信号線6の無線特性を良好に維持することが可能となる。なお、多層基板からなる中間基板5の全ての層にグランド層及びビアを設けて、全ての層のグランド層と各フレキシブルケーブル2のグランド線とを一括接続してもよい。
【0028】
図3は、図1に示すフレキシブルケーブルを折畳型携帯電話に適用したときの概念図である。すなわち、図3は、この実施形態の信号伝送ケーブル1が液晶画面側基板12とキー側基板13との間に接続されたときの折畳型携帯電話を示している。図3に示すように、液晶画面側基板12とキー側基板13は、液晶画面側基板12に接続されたコネクタ基板3とキー側基板13に接続されたコネクタ基板3との中間位置に中間基板5を備えたフレキシブルケーブル2によって接続されている。
【0029】
図3について、さらに詳しく説明すると、信号伝送ケーブル1は、複数本の信号線とその両サイドの2本のグランド線とで構成されるフレキシブルケーブル2が4層一束で多層に重ねられ、多層のフレキシブルケーブル2の中間部分に中間基板5を介在させた構成となっている。そして、フレキシブルケーブル2は、両端のコネクタ基板3、4を介して折畳型携帯電話の液晶画面側基板12とキー側基板13とに接続されている。このとき、折畳型携帯電話を折り畳むときの機構上の制約などから、コネクタ基板4はキー側基板13の基板端に設けられているが、コネクタ基板3は、液晶画面側基板12の中間部分に設けられている。
【0030】
このような場合はフレキシブルケーブル2の実際の長さは長くなるが、液晶画面側基板12の端部に中間基板5を設けているので、フレキシブルケーブル2におけるグランド線のグランドインピーダンスは、液晶画面側基板12のコネクタ基板3と中間基板5との間の長さ分の配線インピーダンス、及びキー側基板13のコネクタ基板4と中間基板5との間の長さ分の配線インピーダンスとなる。すなわち、中間基板5をフレキシブルケーブル2の中央部付近に設けることにより、グランド線のグランドインピーダンスをフレキシブルケーブル2の長さ分の配線インピーダンスの半分にすることができる。その結果、フレキシブルケーブル2の信号線を伝送する制御信号はノイズ輻射の影響を受けにくくなり、結果的に、折畳型携帯電話の無線特性を良好に維持することができる。
【0031】
すなわち、この実施形態の信号伝送ケーブル1を折畳型携帯電話に用いることにより、図3に示すように、液晶画面側基板12の端部の中間基板5でフレキシブルケーブル2のグランド接続を行うことができる。しかも、液晶画面側基板12のコネクタ基板3及びキー側基板13のコネクタ基板4の位置でフレキシブルケーブル2のグランド接続を行うことができる。その結果、液晶画面側基板12とキー側基板13との基板間を電気的に見たフレキシブルケーブル2のグランド線の長さは、見かけ上、2分の1の長さとなる。したがって、フレキシブルケーブル2のグランド線のインピーダンスが2分の1に下がるので、信号線のノイズの輻射が抑えられて、フレキシブルケーブル2における信号線の無線特性の劣化を回避することができる。
【0032】
さらに、フレキシブルケーブル2の層構成を4層から6層へと増加させ、増加した層をグランド層にすることにより、図2(b)に示すような最上層と最下層だけではなく、B点とE点のグランドも電気的に接続される。このグランド層を液晶画面側基板12のグランドと接続することで、コネクタ基板3とコネクタ基板4との間のグランドインピーダンスをさらに下げる効果がある。なお、グランド層と液晶画面側基板12との電気的な導通方法については、ガスケット、導電性WF、又は金具を用いた中継端子によるグランド接続などが一般的であるが、この限りではない。
【0033】
以上説明したように、この実施形態によれば、信号伝送ケーブル(つまり、フレキシブルケーブル)の信号線を流れる無線信号の無線特性の劣化を回避してEMC対策を行うことができる。すなわち、フレキシブルケーブルにおけるグランド線の電気的なグランドインピーダンスを、フレキシブルケーブルの実際の長さに相当する配線インピーダンスより下げることができるため、フレキシブルケーブルを伝送する高速信号やクロック信号の信号線からのノイズの輻射が抑えられる。この結果、フレキシブルケーブルの無線特性の劣化を回避したり、EMC対策に効果をもたらすことができる。
【0034】
また、この実施形態の信号伝送ケーブルの構成によれば、安定した無線・アンテナ特性を確保することができる。すなわち、中間基板に金具等を実装することにより、メイン基板等にパターニングされた安定したグランドラインに対して中間基板のグランド層を金具等で中継して接続することが可能となるため、グランドレベルの変動による特性変化が生じやすい無線信号特性やアンテナ特性に対して、安定した特性を確保することが可能となる。
【実施形態2】
【0035】
この発明に係る信号伝送ケーブルの実施形態2として、フレキシブルケーブルの中間部分に設けた中間基板に対して電気部品を搭載することができる。すなわち、中間基板は硬質の多層基板によって構成されているので電気部品を搭載することが可能となる。そのため、フレキシブルケーブルの信号線に対してコモンモードチョークなどのノイズ対策素子を実装したり、グランドに接続するための中継端子となる導電体部品、例えば、金具などを搭載することが可能となる。
【0036】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、この発明の具体的に構成は、これらの実施形態に限られるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもそれらはこの発明に含まれる。例えば、この実施形態では、フレキシブルケーブルを4層構成とした場合について、グランド線のグランドインピーダンスを低下させる手法について説明した。しかし、フレキシブルケーブルは4層に限ることはなく、1層であってもよいし、4層構成よりさらに多い多層構成であっても、前述と同様にグランドインピーダンスを低下させて無線特性の改善を図ることができる。また、この発明は、フレキシブルケーブルに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明は、グランド線のグランドインピーダンスを低下させて無線信号の耐ノイズ対策を図ることができるので、携帯電話、パソコン、デジタルカメラ、及び各種の無線機器などに有効に利用することができる。
【0038】
(付記1)
前記信号伝送ケーブルはフレキシブルケーブルであって、そのフレキシブルケーブルの中間位置付近に前記中間基板を設け、その中間基板に形成されたグランド層のビアと前記グランド線とを電気的に接続することを特徴とする、この発明の第2の構成に記載の信号伝送ケーブルのグランド接続方法。
【0039】
(付記2)
前記フレキシブルケーブルは厚み方向に束ねて多層で構成され、前記中間基板に形成されたグランド層のビアを、多層で構成された前記フレキシブルケーブルのそれぞれのグランド線へ一体的に接続することを特徴とする、この発明の第2の構成、又は付記1に記載の信号伝送ケーブルのグランド接続方法。
【0040】
(付記3)
前記中間基板は多層基板で構成され、前記グランド層は前記多層基板の1層以上で形成されていることを特徴とする、この発明の第2の構成、付記1又は2に記載の信号伝送ケーブルのグランド接続方法。
【0041】
(付記4)
前記中間基板は多層基板で構成され、前記グランド層は前記多層基板の全ての層で形成されていることを特徴とする、この発明の第2の構成、付記1、2又は3に記載の信号伝送ケーブルのグランド接続方法。
【0042】
(付記5)
前記フレキシブルケーブルを、2つの筐体部分を折り畳む折畳型携帯電話、又は、2つの筐体部分をスライドさせるスライド型携帯電話に用いることを特徴とする、この発明の第2の構成、付記1、2、3又は4に記載の信号伝送ケーブルのグランド接続方法。
【符号の説明】
【0043】
1、21 信号伝送ケーブル
2、22 フレキシブルケーブル
3、4、23、24 コネクタ基板
5 中間基板
6、25 信号線
7、8、26、27 グランド線
9 グランド層
10、11、28 ピア
12、31 液晶画面側基板
13、32 キー側基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を伝送する信号線と前記信号へのノイズの影響を防止するために前記信号線と平行に配線されたグランド線とを有し、前記信号線と前記グランド線がコネクタ基板で両端を終端されている信号伝送ケーブルであって、
前記コネクタ基板の位置を除く前記グランド線の任意の位置に、そのグランド線と電気的に接続するためのビアを有するグランド層が形成された中間基板を備えていることを特徴とする信号伝送ケーブル。
【請求項2】
前記信号伝送ケーブルはフレキシブルケーブルであって、そのフレキシブルケーブルの中間位置付近に前記中間基板が設けられ、その中間基板に形成されたグランド層のビアと前記グランド線とが電気的に接続されていることを特徴とする請求項1記載の信号伝送ケーブル。
【請求項3】
前記フレキシブルケーブルは厚み方向に束ねて多層で構成され、前記中間基板に形成されたグランド層のビアは多層で構成された前記フレキシブルケーブルのそれぞれのグランド線と一体的に接続されていることを特徴とする請求項2記載の信号伝送ケーブル。
【請求項4】
前記中間基板は多層基板で構成され、前記グランド層は前記多層基板の1層以上で形成されていることを特徴とする請求項1、2、又は3記載の信号伝送ケーブル。
【請求項5】
前記中間基板は多層基板で構成され、前記グランド層は前記多層基板の全ての層で形成されていることを特徴とする請求項1、2、又は3記載の信号伝送ケーブル。
【請求項6】
前記中間基板には電気部品が実装されていることを特徴とする請求項4、又は5記載の信号伝送ケーブル。
【請求項7】
前記電気部品は、前記信号線を伝送する信号に対してノイズ対策を行う電気部品であることを特徴とする請求項6記載の信号伝送ケーブル。
【請求項8】
前記電気部品は、前記グランド層をグランドに接続するための中継端子となる導電体部品であることを特徴とする請求項6記載の信号伝送ケーブル。
【請求項9】
前記フレキシブルケーブルは、2つの筐体部分を折り畳む折畳型携帯電話、又は、2つの筐体部分をスライドさせるスライド型携帯電話に用いられることを特徴とする請求項2乃至8のいずれか1に記載の信号伝送ケーブル。
【請求項10】
信号を伝送する信号線と前記信号へのノイズの影響を防止するために前記信号線と平行に配線されたグランド線とを有し、前記信号線と前記グランド線がコネクタ基板で両端を終端されている信号伝送ケーブルのグランド接続方法であって、
前記コネクタ基板の位置を除く前記グランド線の任意の位置に中間基板を設け、その中間基板に形成されたグランド層のビアと前記グランド線とを電気的に接続することを特徴とする信号伝送ケーブルのグランド接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−129438(P2011−129438A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288523(P2009−288523)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】