説明

信号伝送路

【課題】複数枚重ねられたフレキシブルフラットケーブルからなる信号伝送路において信号線によるEMIの低減と外部ノイズの抑制を安価に実施できる構成することを目的とする。
【解決手段】重ねられたフレキシブルフラットケーブル1A,1Bにおいて、1A上の信号線10に対向した1B上の対向部分を中心として水平方向にグランド線を配置する。その他の電源などの低速信号線12,13にはEMIの発生の少ない電源などの低速信号線を配置している。信号線がグランド線と隣接することでEMIの低減及び外部ノイズの抑制ができ、重ね合わせた際に左右どちらかにずれたとしても同様の効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器で用いられる信号伝送路に関し、特に電子機器の基板間で信号を伝送するために複数のフレキシブルフラットケーブルを用いた信号伝送路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の回路基板間で信号伝送を行うために信号伝送用のケーブルが用いられており、そのケーブルとして電子機器の小型化やケーブルが薄く柔軟性に富むなどの理由から平面状に所定間隔で導線を配置したフレキシブルフラットケーブル(一般にFFC(Flexible Flat Cable)と呼ばれる)の使用が増えてきている。
【0003】
このフレキシブルフラットケーブルは基板回路が複雑になり伝送する信号線が多くなると、その数に応じてフレキシブルフラットケーブルの表面積が大きくなり実装密度が低くなる。そこで、実装密度を高めるために導線の数が少なく幅が小さい複数枚のフレキシブルフラットケーブルを重ねて用いることが行われている。
【0004】
しかしながら、フレキシブルフラットケーブルを複数枚重ねて用いるとき、重ねられた導線同士が近接することでお互いに干渉しあい、フレキシブルフラットケーブルによって伝送された信号に影響し、電子機器が不具合を起こしてしまう。
【0005】
この問題に対して、一般的に薄いシールド材をフレキシブルフラットケーブルに施したり、フレキシブルフラットケーブル間に干渉材をおくことで適宜の距離を保ったりする方法があるが、コスト増や実装面積の増大といった問題が生じる。
【0006】
【特許文献1】特開2003−112424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2003−112424号公報では前記の課題に対して重ねられたフレキシブルフラットケーブルにおいて対向する導線パターンに同一極性の駆動信号を配置することで機器の誤動作の軽減を図っている。
【0008】
しかしながら、特開2003−112424号公報は他の駆動信号に対しての影響を軽減させることで動作の安定性を向上させる方法であり、クロック信号やデータ信号などの高速信号線により発生するEMIの低減や、信号線が電子機器の他の部分から生じる外来ノイズによって受ける影響を防ぐことはできない。
【0009】
また、同一極性パターンが対向する位置にあることが前提であるため、あらかじめずれることが分かっている場合を除くと外的要因によって重ねられたフレキシブルフラットケーブルが左右どちらかにずれた場合に対応することはできない。
【0010】
そこで本発明の課題は、重ねられた複数枚のフレキシブルフラットケーブルにおいて高速信号を伝送する際のEMIの低減や外来ノイズの抑制を安価にできる構成であって、外的要因によってずれる場合にも対応できる構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために本発明では複数枚の重ねられたフレキシブルフラットケーブルにおいて、信号線とグランド線を異なるフレキシブルフラットケーブルに振り分け、信号線の近傍に複数のグランド線を配置した構成を用いた。
【0012】
本発明によって、信号線はフレキシブルフラットケーブルが重ねられることでグランド線と近接することとなり、EMIを防止することができる。また、グランド線がシールド材に似た効果を発揮し、外来ノイズや信号同士の干渉によって生じるクロストークノイズの防止にも作用する。
【0013】
また、本発明において信号線と対向する対向部分にグランド線が配置され、さらに当該対向部分を中心として長手方向に複数のグランド線が配置したことを特徴とする。さらに好ましくは長手方向に1個ずつ設けるのがよい。
【0014】
この構成によればフレキシブルフラットケーブルが左右にずれて重ねられたとしても同様の効果を得ることができる。
【0015】
また、本発明において信号線と同一フレキシブルフラットケーブル内の隣り合う部分にグランド線を有することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば信号線を同一フレキシブルフラットケーブル内の隣接部分もグランド線を配置することでシールド効果を高めることが可能となる。
【0017】
また、本発明において信号線が複数本の信号ラインに分割して伝送されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば信号線を分割して伝送することにより信号線の劣化を抑制できる。特に高速伝送が必要なデータ信号やクロック信号を伝送する際にも確実に信号伝送できるとともに、EMI抑制が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図面を参照して、本発明に関わる信号伝送路を詳しく説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1(A)、図1(B)は本発明による第1実施形態の構成を示している。図1(A)は複数枚のフレキシブルフラットケーブル1A,1Bが重なった信号伝送路である。フレキシブルフラットケーブル1Aには信号線10が、フレキシブルフラットケーブル1Bにはフレキシブルフラットケーブル1Aと対向する位置から左右に1ピンずつ多くグランド線11が配置されている。また、EMIの低減・外来ノイズの抑制を考慮する必要性があまり生じない電源などの低速信号線12,13などを配置してある。
【0021】
図1(B)ではフレキシブルフラットケーブルが図1(A)の状態から1ピンずれて重ねられた状態を示す図である。1ピンずれた状態であっても、対象となる信号線10は対向するグランド線11と隣接する構成になっている。
【0022】
以上のような本実施形態の信号伝送路によれば、信号線10から生じるEMIはグランド線11によって抑制されることになる。また、グランド線11により外来ノイズが信号線10に与える影響を軽減することができるため信号を確実に伝送できる。図1(B)のように重ねられた際に何らかの外的要因によって1ピンずれてしまったとしても信号線はグランド線と隣接した状態となるので同様の効果が得られる。しかも本実施形態の構成はシールド材や干渉材などを用いずに対象となる信号線とその対向位置にグランドを配置すれば残りの導線パターンには電源などを配置できるので非常に安価に構成することができる。
【0023】
なお、第1実施形態では1ピンずれた場合にも対応するような構成となっているが状況に応じてずれる幅を考慮に入れてさらに複数ピンずれた場合に対応することも可能である。
【0024】
(第2実施形態)
図2は第2実施形態の構成を示している。ここに示すように本実施形態の信号伝送路では、3枚以上重ねられたフレキシブルフラットケーブルにおいて適用できるという点で第1実施形態と異なっている。ここでは3枚のフレキシブルフラットケーブル2A,2B,2Cが重ねられており、図に示すように信号線14がグランド線15によって上下で挟まれる構成になっている。
【0025】
このような、本実施形態の構成によれば、信号線が上下にグランド線で囲まれることで第1実施形態の効果に加え、さらにシールド効果を得ることができる。しかも本実施形態の構成も非常に安価で簡単に構成できる。
【0026】
(第3実施形態)
図3は第3実施形態の構成を示している。ここで示すように本実施形態の信号伝送路では第1実施形態と同様に重ねられたフレキシブルフラットケーブル3Bに信号線17と対向する位置にグランド線18を配置する構成になっている。異なる点として信号線17と同一フレキシブルフラットケーブル3A上に信号線17を挟むようにしてグランド線16を配置する構成になっている。
【0027】
第3実施形態の構成によれば、信号線17が通電時には左右のグランド線16および対向するグランド線18により第1実施形態の効果に加え、さらにEMIの低減や外来ノイズの影響に対して効果を向上させることができる。
【0028】
(第4実施形態)
図4は第4実施形態の構成を示している。第1実施形態と異なる点として本実施形態では、信号線が複数の信号ラインに分割されている。図4に示すように、信号伝送路では信号線が第1差動信号線19と第2差動信号線20に分割されて伝送されている。フレキシブルフラットケーブル4A,4Bが重ねられており、フレキシブルフラットケーブル4Aには第1差動信号線19と第2差動信号線20が配置されている。フレキシブルフラットケーブル4B内にはそれぞれの差動信号に対向する位置から左右に1ピンずつ多くグランド線21が配置されている。
【0029】
上述した第4実施形態では信号線が第1差動信号線19、第2差動信号線20として2つに分割されているが、これに限らず信号線が3つ以上に分割されていてもよい。
【0030】
本実施形態では、第1実施形態の効果に加えてこのように信号線を分割した差動信号にして伝送することで信号の劣化を防ぐことができ、特に高速伝送が必要なデータ信号やクロック信号などを伝送する際にも確実に伝送できるとともに、高速伝送によるEMIの抑制が可能となる。
【0031】
以上述べたように、本発明によれば、複数枚重ねられたフレキシブルフラットケーブルからなる信号伝送路において信号線、グランド線などの複数の導線を工夫して配置することで信号線により生じるEMIの軽減・外来ノイズの抑制を図ることができ、また、重ねる際に左右どちらかにずれたとしても同様の効果を得ることができるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形に係る信号伝送路におけるフレキシブルフラットケーブルの概略的な断面図。
【図2】本発明の第2実施形態に係る信号伝送路におけるフレキシブルフラットケーブルの概略的な断面図。
【図3】本発明の第3実施形態に係る信号伝送路におけるフレキシブルフラットケーブルの概略的な断面図。
【図4】本発明の第4実施形態に係る信号伝送路におけるフレキシブルフラットケーブルの概略的な断面図。
【符号の説明】
【0033】
10,14,17…信号線、11,15,16,18,21…グランド線、12,13…電源などの低速信号線、19…第1差動信号線、20…第2差動信号線、1A,1B,2A,2B,2C,3A,3B,4A,4B…フレキシブルフラットケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のフレキシブルフラットケーブルが重ね合わせた信号伝送路において、
前記信号伝送路には信号線の存在する第1のフレキシブルフラットケーブルと前記第1のフレキシブルフラットケーブルと接触して重ね合わせられる第2のフレキシブルフラットケーブルとを有し、前記第2のフレキシブルフラットケーブルを第1のフレキシブルフラットケーブルと重ね合わせた場合において、前記第2のフレキシブルフラットケーブルは前記第1のフレキシブルフラットケーブルの信号線の近傍に複数のグランド線を有することを特徴とする信号伝送路。
【請求項2】
請求項1に記載の信号伝送路において、
前記第2のフレキシブルフラットケーブルには、前記第1のフレキシブルフラットケーブルの信号線と対向する対向部分にグランド線が配置され、さらに当該対向部分を中心として水平方向に複数のグランド線が配置されたことを特徴とする信号伝送路。
【請求項3】
請求項2に記載の信号伝送路において、
前記水平方向に1つずつグランド線を配置したことを特徴とする信号伝送路。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の信号伝送路において、
前記第1のフレキシブルフラットケーブルは、前記信号線と隣り合う部分にグランド線を有することを特徴とする信号伝送路。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の信号伝送路において、
前記信号線が複数の信号ラインに分割されていることを特徴とする信号伝送路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−210605(P2008−210605A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45096(P2007−45096)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】