説明

信号再生装置

【課題】 信号選択操作が行なわれたときに、選択された一連信号の再生が開始されるまでに再生待ち時間が発生することを防止することが出来る信号再生装置1を提供する。
【解決手段】 本発明に係る信号再生装置1は、HDD装置11、メモリ12及びシステムコントローラ10を具えている。メモリ12には、複数の一連信号の先頭部分を格納するための第1格納領域と、1つの一連信号の先頭部分以外の残部分を格納するための第2格納領域とが併設されている。前記コントローラ10は、信号選択操作が行なわれたとき、メモリ12の第1格納領域から選択された一連信号の先頭部分を読み出して再生する動作を開始し、該動作中に、HDD装置11から前記選択された一連信号の残部分を読み出してメモリ12の第2格納領域に格納し、前記選択された一連信号の先頭部分の再生が終了した後、メモリ12の第2格納領域から該一連信号の残部分を読み出して再生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブ(HDD)装置などの信号格納装置に格納されている一連の信号を再生することが可能な信号再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、HDD装置を内蔵して、該HDD装置に格納されている音楽データの再生が可能なハードディスクプレーヤが知られている。
ハードディスクプレーヤにおいては、ユーザにより再生キーが押下されると、HDD装置から1曲分の音楽データが読み出され、読み出された音楽データは内蔵メモリに一旦格納された後、該メモリから読み出される。読み出された音楽データは、所定のデータ処理が施された後、内蔵するスピーカ或いは接続されているヘッドフォンに供給され、スピーカ或いはヘッドフォンから音声として出力される。
ところで、上記ハードディスクプレーヤにおいては、音楽データの再生中にスキップ操作を行なうことによって、再生中の曲から該操作回数に応じた数だけ先の曲の音楽データを再生することが可能となっている。
しかしながら、上記ハードディスクプレーヤにおいては、HDD装置の消費電力を節減すべく、HDD装置から1曲分の音楽データを読み出してから次に音楽データを読み出すまでHDD装置をスタンバイ状態に設定することとしているため、HDD装置がスタンバイ状態に設定されている状態でスキップ操作が行なわれた場合には、HDD装置をスタンバイ状態から起動して該HDD装置から音楽データを読み出さねばならず、該音楽データの再生が開始されるまでに約10秒と長い再生待ち時間が発生する問題があった。
【0003】
そこで、例えばフラッシュメモリを内蔵して、HDD装置から読み出した複数曲分の音楽データを該メモリに一旦格納した後、該メモリから順次読み出すハードディスクプレーヤが知られている。
図7は、この種のハードディスクプレーヤの再生時においてフラッシュメモリのデータ内容が変化している例を表わしている。尚、以下の説明では、6曲分の音楽データをフラッシュメモリに格納することが出来るものとする。
プレーヤ本体に電源が投入された後、再生キーが押下されると、HDD装置から6曲分の音楽データ1〜6が読み出されて、同図(a)の如くフラッシュメモリに格納された後、該メモリから1曲目の音楽データ1を読み出して再生する動作が開始される。
その後、1曲目の音楽データ1の再生が終了すると、同図(b)の如くフラッシュメモリから2曲目の音楽データ2を読み出して再生する動作が開始される。又、この動作中に、フラッシュメモリから1曲目の音楽データ1が消去された後、HDD装置からフラッシュメモリに格納されていない7曲目の音楽データ7が読み出されて該メモリに格納される。
更に、2曲目の音楽データ2の再生が終了すると、同図(c)の如くフラッシュメモリから3曲目の音楽データ3を読み出して再生する動作が開始される。又、この動作中に、フラッシュメモリから2曲目の音楽データ2が消去された後、HDD装置から8曲目の音楽データ8が読み出されて該メモリに格納される。
【0004】
上述の如く、フラッシュメモリには常に、再生中の音楽データと、該音楽データよりも再生順序の遅い5曲分の音楽データとが格納されているので、音楽データの再生が終了したとき、次の曲の音楽データをHDD装置から読み出す必要はなく、該音楽データの再生が開始されるまでに再生待ち時間が発生することはない。
又、例えば、2曲目の音楽データの再生中であってフラッシュメモリに図7(b)に示す如く2〜7曲目の音楽データ2〜7が格納されている状態でスキップ操作が3回行なわれた場合には、5曲目の音楽データ5をHDD装置から読み出すことなく該音楽データをフラッシュメモリから読み出して再生することが出来、再生待ち時間は発生しない。
但し、上述の状態でスキップ操作が6回以上行なわれた場合には、8曲目以降の音楽データはフラッシュメモリに格納されていないため、HDD装置を起動して、該HDD装置から該音楽データを読み出してフラッシュメモリに格納した後、該音楽データをフラッシュメモリから読み出して再生する。
【0005】
図8及び図9は、フラッシュメモリを具えたハードディスクプレーヤにおいて実行される再生手続きを表わしている。
プレーヤ本体の電源がオンに設定されると、図示の如く、先ずステップS31にて、ユーザにより再生キーが押下されたか否かを判断し、ノーと判断された場合にはステップS31にて同じ判断を繰り返す。一方、ユーザにより再生キーが押下されてステップS31にてイエスと判断された場合には、ステップS32に移行してHDD装置を起動した後、ステップS33にて、HDD装置から6曲分の音楽データを読み出してフラッシュメモリに転送し、次にステップS34では、フラッシュメモリから1曲目の音楽データを読み出して再生する動作を開始する。
【0006】
その後、ステップS35では、ユーザによりスキップ操作が行なわれたか否かを判断し、ノーと判断された場合には図9のステップS41に移行して、1曲分の音楽データの再生が終了したか否かを判断し、ノーと判断された場合には図8のステップS35に戻ってスキップ操作が行なわれたか否かの判断を行なう。
その後、1曲分の音楽データの再生が終了すると、図9のステップS41にてイエスと判断されてステップS42に移行し、再生が終了した曲はHDD装置に格納されている最後の曲であるか否かを判断する。
【0007】
再生が終了した曲がHDD装置に格納されている最後の曲でない場合には、ステップS43に移行して、フラッシュメモリから再生が終了した曲の次の曲の音楽データを読み出して再生する動作を開始する。次にステップS44では、フラッシュメモリから再生が終了した曲の音楽データを消去し、続いてステップS45では、HDD装置をスタンバイ状態から起動した後、ステップS46では、HDD装置からフラッシュメモリに格納されている最も再生順序の遅い曲の次の曲の音楽データを読み出してフラッシュメモリに転送する。その後、図8のステップS35に戻ってスキップ操作が行なわれたか否かの判断を行なう。
【0008】
上述の如く音楽データが再生されている状態で、ユーザによりスキップ操作が行なわれると、ステップS35にてイエスと判断されてステップS36に移行し、スキップ操作により選択された曲の音楽データがフラッシュメモリに格納されているか否かを判断する。ここで、イエスと判断された場合には、ステップS40に移行して、フラッシュメモリから前記選択された曲の音楽データを読み出して再生する動作を開始した後、図9のステップS41に移行する。
一方、図8のステップS36にてノーと判断された場合には、ステップS37に移行して、フラッシュメモリから音楽データを消去する。次に、ステップS38にてHDD装置をスタンバイ状態から起動した後、ステップS39に移行して、HDD装置から前記選択された曲を含む6曲分の音楽データを読み出してフラッシュメモリに転送する。その後、ステップS40にてフラッシュメモリから前記選択された曲の音楽データを読み出して再生する動作を開始した後、図9のステップS41に移行する。
その後、HDD装置に格納されている最後の曲の音楽データの再生が終了すると、ステップS42にてイエスと判断されてステップS47に移行し、再生動作を停止して図8のステップS31に戻り、再生キーの押下に待機する。
【0009】
尚、記録/再生データを入出力するデータ専用のインターフェースと、該データ以外のコマンドやアドレスを入出力するインターフェースとを具え、記録及び再生を同時に行なうことが可能なハードディスク装置が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−195031号公報[G11B 20/10]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、フラッシュメモリを具えた上記従来のハードディスクプレーヤにおいては、各曲について全ての音楽データがフラッシュメモリに格納されるため、フラッシュメモリに格納できる曲数が少なく、上述の如くスキップ操作により選択された曲の音楽データがフラッシュメモリに格納されていないために再生待ち時間が発生する事態が頻繁に起こる問題があった。
本発明の目的は、スキップ操作などの信号選択操作が行なわれたときに、該操作により選択された一連信号の再生が開始されるまでに再生待ち時間が発生することを防止することが出来る信号再生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る信号再生装置は、複数の一連信号が格納されている信号格納装置と、信号格納装置から読み出された一連信号を格納するためのバッファメモリと、信号格納装置に格納されている一連信号を該装置から読み出してバッファメモリに一旦格納した後、該バッファメモリから読み出して再生する信号処理回路とを具えている。そして、前記バッファメモリには、複数の一連信号の先頭部分を格納するための第1格納領域と、少なくとも1つの一連信号の全て或いは先頭部分以外の残部分を格納するための第2格納領域とが併設されており、前記信号処理回路は、
複数の一連信号の先頭部分がバッファメモリの第1格納領域に格納されている状態で信号選択操作が行なわれたとき、該第1格納領域から選択された一連信号の先頭部分を読み出して再生する第1信号処理手段と、
第1信号処理手段の動作中に、信号格納装置から前記選択された一連信号の全て或いは先頭部分以外の残部分を読み出してバッファメモリの第2格納領域に格納する第2信号処理手段と、
第1信号処理手段の動作が終了した後に、バッファメモリの第2格納領域から前記選択された一連信号の残部分を読み出して再生する第3信号処理手段
とを具えている。
【0012】
上記本発明に係る信号再生装置のバッファメモリには、複数の一連信号の先頭部分を格納するための第1格納領域と、少なくとも1つの一連信号の全て或いは先頭部分以外の残部分を格納するための第2格納領域とが併設されている。ここで、一連信号の先頭部分のデータ量は、バッファメモリからの一連信号の先頭部分の読出しにかかる時間が信号格納装置から該一連信号の全て或いは残部分を読み出してバッファメモリに格納するのにかかる時間よりも長くなる様に設定される。
ユーザにより信号選択操作が行なわれると、先ず、バッファメモリの第1格納領域から選択された一連信号の先頭部分を読み出して再生する動作が開始される。ここで、バッファメモリの第1格納領域には一連信号の先頭部分のみが格納されるので、該領域に先頭部分を格納できる一連信号の数は多く、選択された一連信号の先頭部分が格納されていないという事態の可能性は極めて低い。
そして、前記選択された一連信号の先頭部分の再生動作中に、信号格納装置から該一連信号の全て或いは先頭部分以外の残部分が読み出されてバッファメモリの第2格納領域に格納され、その後、該一連信号の先頭部分の再生が終了すると、バッファメモリの第2格納領域から該一連信号の残部分が読み出されて再生される。
上記本発明に係る信号再生装置によれば、信号再生操作が行なわれたとき、選択された一連信号の先頭部分を信号格納装置から読み出す必要はなく、該一連信号の再生が開始されるまでに再生待ち時間は発生しない。
【0013】
具体的には、バッファメモリの第1格納領域には、再生中の一連信号よりも再生順序の早い1或いは複数の一連信号の先頭部分と、再生順序の遅い1或いは複数の一連信号の先頭部分とが格納される。
【0014】
上記具体的構成によれば、未だ再生の行なわれていない一連信号を選択する操作、及び既に再生が終了した一連信号を選択する操作の何れの操作が行なわれた場合であっても、再生待ち時間を発生させることなく該一連信号の再生を開始することが出来る。
【0015】
又、具体的には、前記信号処理回路は、
第3信号処理手段の動作中に、前記選択された一連信号に応じて、信号格納装置からバッファメモリの第1格納領域に格納されている一連信号以外の1或いは複数の一連信号の先頭部分を読み出して該第1格納領域に格納する第4信号処理手段
を具えている。
【0016】
上記具体的構成によれば、信号選択操作が行なわれたときに、選択された一連信号がバッファメモリの第1格納領域に格納されていないという事態の可能性を低下させることが出来る。
【0017】
更に具体的には、前記信号処理回路は、
1つの一連信号の再生が終了したとき、バッファメモリの第1格納領域から該一連信号よりも再生順序の遅い1つの一連信号の先頭部分を読み出して再生する第5信号処理手段と、
第5信号処理手段の動作中に、信号格納装置から再生順序の遅い前記1つの一連信号の全て或いは先頭部分以外の残部分を読み出してバッファメモリの第2格納領域に格納する第6信号処理手段と、
第5信号処理手段の動作が終了した後に、バッファメモリの第2格納領域から再生順序の遅い前記1つの一連信号の残部分を読み出して再生する第7信号処理手段と、
第7信号処理手段の動作中に、信号格納装置からバッファメモリの第1格納領域に格納されている一連信号よりも再生順序の遅い1つの一連信号の先頭部分を読み出して該第1格納領域に格納する第8信号処理手段
を具えている。
【0018】
上記具体的構成においては、1つの一連信号の再生が終了したとき、先ず、バッファメモリの第1格納領域から該一連信号よりも再生順序の遅い1つの一連信号の先頭部分を読み出して再生する動作が開始される。
そして、該再生動作中に、信号格納装置から前記1つの一連信号の全て或いは先頭部分以外の残部分が読み出されてバッファメモリの第2格納領域に格納され、その後、該一連信号の先頭部分の再生が終了すると、バッファメモリの第2格納領域から該一連信号の残部分を読み出して再生する動作が開始される。そして、該再生動作中に、信号格納装置からバッファメモリの第1格納領域に格納されている一連信号よりも再生順序の遅い1つの一連信号の先頭部分が読み出されて該第1格納領域に格納される。
上記具体的構成によれば、1つの一連信号の再生が終了したとき、次の一連信号の先頭部分を信号格納装置から読み出す必要はなく、該一連信号の再生が開始されるまでに再生待ち時間は発生しない。
【0019】
更に又、具体的には、再生中の一連信号からスキップ操作の回数に応じた数の一連信号を飛ばして再生を行なうスキップ再生が可能であって、前記信号処理回路は、
スキップ操作の回数が所定数を超える度に、信号格納装置からバッファメモリの第1格納領域に格納されている一連信号以外の前記所定数の一連信号の先頭部分を読み出して該第1格納領域に格納する第9信号処理手段
を具えている。
【0020】
上記具体的構成によれば、スキップ操作が前記所定数以上行なわれた場合であっても、該操作により選択された一連信号の先頭部分を信号格納装置から読み出す必要はなく、再生待ち時間を発生させることなく該一連信号の再生を開始することが出来る。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る信号再生装置によれば、信号選択操作が行なわれたときに、該操作により選択された一連信号の再生が開始されるまでに再生待ち時間が発生することを防止することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を、図1に示すハードディスクプレーヤ(1)に実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
図1に示すハードディスクプレーヤ(1)は、システムコントローラ(10)を具え、該コントローラ(10)に対して、HDD装置(11)とフラッシュメモリ(12)とが接続されている。フラッシュメモリ(12)としては、例えば、不揮発性のNAND型フラッシュメモリが採用される。
該ハードディスクプレーヤ(1)には、外部入出力端子(17)が配備されており、前記システムコントローラ(10)は、該入出力端子(17)とパーソナルコンピュータ(3)とがUSBケーブルなどのシリアルケーブル(図示省略)により接続された状態で、該コンピュータ(3)から転送されてきた音楽データを前記HDD装置(11)に格納する。尚、ネットワークを経由して転送されてくる音楽データをHDD装置(11)に格納することも可能である。又、メモリカードをカードスロット(図示省略)に装填した状態で、該カードに記録されている音楽データをHDD装置(11)に格納することも可能である。
又、該ハードディスクプレーヤ(1)には、スピーカ(15)及びヘッドフォン出力端子(16)が配備されており、システムコントローラ(10)は、HDD装置(11)に格納されている音楽データを該装置(11)から読み出してフラッシュメモリ(12)に一旦格納した後、該メモリ(12)から読み出してDAコンバータ(13)に供給する。DAコンバータ(13)から得られるアナログ音声信号は、パワーアンプ回路(14)に供給されて増幅された後、スピーカ(15)或いはヘッドフォン出力端子(16)に接続されているヘッドフォン(2)に供給され、スピーカ(15)或いはヘッドフォン(2)から音声として出力される。
【0023】
上記フラッシュメモリ(12)には、図2に示す如く、複数曲分の音楽データの先頭部分(以下、先頭データという)を格納するための第1データ格納領域(12a)と、1曲分の音楽データの先頭部分以外の残部分(以下、残データという)を格納するための第2データ格納領域(12b)とが併設されている。先頭データのデータ量は、フラッシュメモリ(12)からの先頭データの読出しにかかる時間が、HDD装置(11)を起動して該HDD装置(11)から残データを読み出してフラッシュメモリ(12)に格納するのにかかる時間よりも長くなる様に設定される。又、第2データ格納領域(12b)は、1曲分の音楽データの格納が可能な程度の容量を有している。
【0024】
以下の説明では、音楽データは、MP3(MPEG-1 Audio Layer 3)方式によりフォーマットされており、1曲の音楽データは5MBのデータ量を有するものとする。又、フラッシュメモリ(12)は32MBの容量を有しており、第1データ格納領域(12a)は27MB、第2データ格納領域(12b)は5MBの容量を有しているものとする。更に、各曲の先頭データは20秒分のデータから構成され、フラッシュメモリ(12)の第1データ格納領域(12a)には80曲分の先頭データを格納出来るものとする。
図3は、音楽データの再生時において上記フラッシュメモリ(12)のデータ内容が変化している例を表わしている。
同図(a)の如く、40曲目の音楽データ40の再生開始時には、フラッシュメモリの第1データ格納領域に該音楽データを含む前後80曲分の音楽データ1〜80の先頭データが格納されており、39曲目の音楽データ39の再生が終了すると、第1データ格納領域から40曲目の先頭データ40を読み出して再生する動作が開始される。そして、この動作中に、第2データ格納領域から該データの再生前に再生されていた39曲目の残データが消去された後、該領域に再生中の曲である40曲目の残データ40が格納される。その後、前記先頭データ40の再生が終了すると、引き続いて、第2データ格納領域から40曲目の残データ40を読み出して再生する動作が開始される。そして、この動作中に、第1データ格納領域から、その時点で第1データ格納領域に格納されている最も再生順序の早い曲である1曲目の先頭データ1が消去された後、同図(b)の如く、その時点で第1データ格納領域に格納されている最も再生順序の遅い曲の次の曲である81曲目の先頭データ81がその消去領域に格納される。
【0025】
その後、40曲目の音楽データ40の再生が終了すると、第1データ格納領域から41曲目の先頭データ41を読み出して再生する動作が開始される。そして、この動作中に、第2データ格納領域から40曲目の残データが消去された後、該領域に41曲目の残データ41が格納される。その後、前記先頭データ41の再生が終了すると、引き続いて、第2データ格納領域から41曲目の残データ41を読み出して再生する動作が開始される。そして、この動作中に、第1データ格納領域から2曲目の先頭データ2が消去された後、同図(c)の如く、82曲目の先頭データ82がその消去領域に格納される。
【0026】
上述の如く、フラッシュメモリ(12)の第1データ格納領域には常に、再生中の曲の前後80曲の先頭データが格納されているので、音楽データの再生が終了したとき、次の曲の音楽データをHDD装置(11)から読み出してフラッシュメモリ(12)に格納する必要はなく、再生待ち時間を発生させることなく該音楽データの再生を開始することが出来る。尚、各曲の先頭データのデータ量は、上述の如く、フラッシュメモリ(12)からの先頭データの読出しにかかる時間がHDD装置(11)から残データを読み出してフラッシュメモリ(12)に格納するのにかかる時間よりも長くなる様に設定されているので、先頭データの再生が終了した時点では、フラッシュメモリ(12)に対する残データの格納動作は終了しており、先頭データに連続して残データの再生を開始することが出来る。従って、1曲の音楽データの再生中に無音時間が発生することはない。
【0027】
図4は、スキップ操作に応じて上記フラッシュメモリ(12)のデータ内容が変化している例を表わしている。
40曲目の音楽データ40の再生中であって、同図(a)の如く、フラッシュメモリの第1データ格納領域に1〜80曲目の先頭データ1〜80が格納されると共に第2データ格納領域に40曲目の残データ40が格納されている状態で、スキップ操作が10回行なわれると、第1データ格納領域から該操作により選択された50曲目の先頭データ50を読み出して再生する動作が開始される。そして、この動作中に、第2データ格納領域から該データの再生前に再生されていた40曲目の残データが消去された後、同図(b)の如く、該領域に再生中の曲である50曲目の残データ50が格納される。その後、前記先頭データ50の再生が終了すると、引き続いて、第2データ格納領域から50曲目の残データ50を読み出して再生する動作が開始される。そして、この動作中に、第1データ格納領域から、再生中の曲である50曲目の前後80曲以外の曲である1〜10曲目の先頭データ1〜10が消去された後、その時点で第1データ格納領域に格納されている最も再生順序の遅い曲より後の81〜90曲目の先頭データ81〜90がその消去領域に格納される。
【0028】
上述の如く、フラッシュメモリ(12)の第1データ格納領域には常に、再生中の曲の前後80曲と多数の先頭データが格納されているので、ユーザによりスキップ操作が行なわれたとき、該操作により選択された曲の先頭データがフラッシュメモリ(12)の第1データ格納領域に格納されていない事態の可能性は極めて低い。該先頭データが第1データ格納領域に格納されている場合には、該先頭データをHDD装置(11)から読み出してフラッシュメモリ(12)に格納する必要はなく、再生待ち時間を発生させることなくスキップ操作により選択された曲の音楽データの再生を開始することが出来る。
【0029】
図5及び図6は、上記システムコントローラ(10)によって実行される再生手続きを表わしている。
プレーヤ本体の電源がオンに設定されると、図示の如く、先ずステップS1にて、ユーザにより再生キーが押下されたか否かを判断し、ノーと判断された場合にはステップS1にて同じ判断を繰り返す。一方、ユーザにより再生キーが押下されてステップS1にてイエスと判断された場合には、ステップS2に移行してHDD装置を起動した後、ステップS3にて、HDD装置から1曲分の全データと79曲分の先頭データを読み出してフラッシュメモリに転送する。ここで、先頭データはフラッシュメモリの第1データ格納領域に格納される一方、残データは第2データ格納領域に格納される。次にステップS4では、フラッシュメモリの第1データ格納領域から1曲目の先頭データを読み出して再生する動作を開始する。その後、前記先頭データの再生が終了すると、ステップS5にて、フラッシュメモリの第2データ格納領域から1曲目の残データを読み出して再生する動作を開始する。
【0030】
続いてステップS6では、ユーザによりスキップ操作が行なわれたか否かを判断し、ノーと判断された場合には図6のステップS18に移行して、1曲分の音楽データの再生が終了したか否かを判断し、ノーと判断された場合には図5のステップS6に戻ってスキップ操作が行なわれたか否かの判断を行なう。
その後、1曲分の音楽データの再生が終了すると、図6のステップS18にてイエスと判断されてステップS19に移行し、再生が終了した曲はHDD装置に格納されている最後の曲であるか否かを判断する。
【0031】
再生が終了した曲がHDD装置に格納されている最後の曲でない場合には、ステップS20に移行して、フラッシュメモリの第1データ格納領域から再生が終了した曲の次の曲の先頭データを読み出して再生する動作を開始する。
続いてステップS21では、フラッシュメモリの第2データ格納領域から再生が終了した曲の残データを消去した後、ステップS22では、HDD装置をスタンバイ状態から起動し、次にステップS23では、HDD装置から再生中の曲の残データを読み出してフラッシュメモリに転送する。ここで、該残データは、フラッシュメモリの第2データ格納領域に格納される。
その後、再生中の曲の先頭データの再生が終了すると、ステップS24にて、フラッシュメモリの第2データ格納領域から該曲の残データを読み出して再生する動作を開始し、続いてステップS25では、フラッシュメモリの第1データ格納領域から最も再生順序の早い曲の先頭データを消去した後、ステップS26では、HDD装置からフラッシュメモリの第1データ格納領域に格納されている最も再生順序の遅い曲の次の曲の先頭データを読み出してフラッシュメモリに転送する。ここで、該先頭データは、フラッシュメモリに第1データ格納領域に格納される。その後、図5のステップS6に戻ってスキップ操作が行なわれたか否かの判断を行なう。
【0032】
上述の如く音楽データが再生されている状態で、ユーザによりスキップ操作が行なわれると、ステップS6にてイエスと判断されてステップS7に移行し、スキップ操作の回数が40回を超えたか否かを判断し、ノーと判断された場合はステップS8に移行して、フラッシュメモリの第1データ格納領域からスキップ操作により選択された曲の先頭データを読み出して再生する動作を開始する。
続いてステップS9では、フラッシュメモリの第2データ格納領域から、前記曲が再生される前に再生されていた曲の残データを消去した後、ステップS10にてHDD装置をスタンバイ状態から起動し、次にステップS11では、HDD装置から再生中の曲の残データを読み出してフラッシュメモリに転送する。ここで、該残データは、フラッシュメモリの第2データ格納領域に格納される。
【0033】
その後、再生中の曲の先頭データの再生が終了すると、ステップS12にて、フラッシュメモリの第2データ格納領域から該曲の残データを読み出して再生する動作を開始し、続いてステップS13では、フラッシュメモリの第1データ格納領域から、再生中の曲を含む前後80曲以外の曲の先頭データを消去する。次に、ステップS14では、HDD装置から、再生中の曲を含む前後80曲の内、フラッシュメモリに格納されていない曲の先頭データを読み出してフラッシュメモリに転送する。ここで、これらの先頭データは、フラッシュメモリの第1データ格納領域に格納される。次に、図6のステップS18に移行して、1曲分の音楽データの再生が終了したか否の判断を行なう。
【0034】
スキップ操作中にスキップ操作の回数が40回を超えると、ステップS7にてイエスと判断されてステップS15に移行し、フラッシュメモリの第1データ格納領域から40曲分の先頭データを消去する。その後、ステップS16にて、HDD装置をスタンバイ状態から起動し、次にステップS17では、HDD装置からフラッシュメモリの第1データ格納領域に格納されている先頭データ以外の40曲分の先頭データを読み出してフラッシュメモリに転送した後、ステップS7に戻ってスキップ操作の回数が40回を超えたか否かの判断を繰り返す。
【0035】
その後、HDD装置に格納されている最後の曲の音楽データの再生が終了すると、図6のステップS19にてイエスと判断されてステップS27に移行し、再生動作を停止して図5のステップS1に戻り、再生キーの押下に待機する。
【0036】
本発明に係るハードディスクプレーヤ(1)においては、上述の如く、スキップ操作が行なわれたとき、再生待ち時間を発生させることなく該操作により選択された曲の音楽データの再生を開始することが出来る。
又、図3に示す如く、フラッシュメモリ(12)の第1データ格納領域には、再生中の曲よりも再生順序の遅い曲のみならず、再生順序の早い曲の先頭データも格納されているので、ユーザにより再生済みの曲を選択する操作が行なわれた場合にも、HDD装置から該選択された曲の先頭データを読み出す必要はなく、再生待ち時間を発生させることなく該曲の音楽データの再生を開始することが出来る。
更に、スキップ操作の回数が40回を超える度に、HDD装置からフラッシュメモリの第1データ格納領域に格納されている先頭データ以外の40曲分の先頭データが読み出されて該第1データ格納領域に格納されるので、40回以上のスキップ操作が行なわれた場合であっても、HDD装置から該操作により選択された曲の先頭データを読み出す必要はなく、再生待ち時間を発生させることなく該曲の音楽データの再生を開始することが出来る。
【0037】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
例えば、上記実施の形態においては、バッファメモリとしてフラッシュメモリ(12)を採用しているが、これに限らず、その他の周知の揮発性或いは不揮発性の半導体メモリを採用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を実施したハードディスクプレーヤの構成を表わすブロック図である。
【図2】上記ハードディスクプレーヤのフラッシュメモリの格納領域を表わす図である。
【図3】上記ハードディスクプレーヤの再生時においてフラッシュメモリのデータ内容が変化している例を表わす図である。
【図4】スキップ操作に応じてフラッシュメモリのデータ内容が変化している例を表わす図である。
【図5】上記ハードディスクプレーヤにおいて実行される再生手続きの前半を表わすフローチャートである。
【図6】上記手続きの後半を表わすフローチャートである。
【図7】従来のハードディスクプレーヤの再生時においてフラッシュメモリのデータ内容が変化している例を表わす図である。
【図8】上記ハードディスクプレーヤにおいて実行される再生手続きの前半を表わすフローチャートである。
【図9】上記手続きの後半を表わすフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
(1) ハードディスクプレーヤ
(10) システムコントローラ
(11) HDD装置
(12) フラッシュメモリ
(12a) 第1データ格納領域
(12b) 第2データ格納領域
(13) DAコンバータ
(14) パワーアンプ回路
(15) スピーカ
(2) ヘッドフォン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の一連信号が格納されている信号格納装置と、信号格納装置から読み出された一連信号を格納するためのバッファメモリと、信号格納装置に格納されている一連信号を該装置から読み出してバッファメモリに一旦格納した後、該バッファメモリから読み出して再生する信号処理回路とを具えている信号再生装置において、前記バッファメモリには、複数の一連信号の先頭部分を格納するための第1格納領域と、少なくとも1つの一連信号の全て或いは先頭部分以外の残部分を格納するための第2格納領域とが併設されており、前記信号処理回路は、
複数の一連信号の先頭部分がバッファメモリの第1格納領域に格納されている状態で信号選択操作が行なわれたとき、該第1格納領域から選択された一連信号の先頭部分を読み出して再生する第1信号処理手段と、
第1信号処理手段の動作中に、信号格納装置から前記選択された一連信号の全て或いは先頭部分以外の残部分を読み出してバッファメモリの第2格納領域に格納する第2信号処理手段と、
第1信号処理手段の動作が終了した後に、バッファメモリの第2格納領域から前記選択された一連信号の残部分を読み出して再生する第3信号処理手段
とを具えていることを特徴とする信号再生装置。
【請求項2】
バッファメモリの第1格納領域には、再生中の一連信号よりも再生順序の早い1或いは複数の一連信号の先頭部分と、再生順序の遅い1或いは複数の一連信号の先頭部分とが格納される請求項1に記載の信号再生装置。
【請求項3】
前記信号処理回路は、
第3信号処理手段の動作中に、前記選択された一連信号に応じて、信号格納装置からバッファメモリの第1格納領域に格納されている一連信号以外の1或いは複数の一連信号の先頭部分を読み出して該第1格納領域に格納する第4信号処理手段
を具えている請求項1又は請求項2に記載の信号再生装置。
【請求項4】
前記信号処理回路は、
1つの一連信号の再生が終了したとき、バッファメモリの第1格納領域から該一連信号よりも再生順序の遅い1つの一連信号の先頭部分を読み出して再生する第5信号処理手段と、
第5信号処理手段の動作中に、信号格納装置から再生順序の遅い前記1つの一連信号の全て或いは先頭部分以外の残部分を読み出してバッファメモリの第2格納領域に格納する第6信号処理手段と、
第5信号処理手段の動作が終了した後に、バッファメモリの第2格納領域から再生順序の遅い前記1つの一連信号の残部分を読み出して再生する第7信号処理手段と、
第7信号処理手段の動作中に、信号格納装置からバッファメモリの第1格納領域に格納されている一連信号よりも再生順序の遅い1つの一連信号の先頭部分を読み出して該第1格納領域に格納する第8信号処理手段
を具えている請求項1乃至請求項3の何れかに記載の信号再生装置。
【請求項5】
再生中の一連信号からスキップ操作の回数に応じた数の一連信号を飛ばして再生を行なうスキップ再生が可能であって、前記信号処理回路は、
スキップ操作の回数が所定数を超える度に、信号格納装置からバッファメモリの第1格納領域に格納されている一連信号以外の前記所定数の一連信号の先頭部分を読み出して該第1格納領域に格納する第9信号処理手段
を具えている請求項1乃至請求項4の何れかに記載の信号再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−54011(P2006−54011A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235909(P2004−235909)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(397016699)三洋テクノ・サウンド株式会社 (16)
【Fターム(参考)】