説明

信号処理方法、信号処理装置、およびコリオリ流量計

【課題】被測定流体の温度の変化、気泡の混入、気体から液体への急速な変化がある場合でも、常に一定の精度で計測することができ、高いフィルタリング能力をもち位相計測を少ない演算量で行うことのできる信号処理方法、信号処理装置、およびコリオリ流量計を提供する。
【解決手段】少なくとも1本、若しくは一対のフローチューブに作用するコリオリの力に比例した位相差及び/又は振動周波数を検出し、被計測流体の質量流量及び/又は密度を得るコリオリ流量計において,一対の振動検出センサの出力信号をA/D変換するA/D変換器と,デジタル信号を周波数変換する直交周波数変換器と,一対の振動検出センサから出力されるいずれかのデジタル信号に基づき周波数を計測する周波数計測器と,該デジタル周波数信号のθ(1−1/N)の周波数信号を生成する発信器とを備え,直交周波数変換器によって生成された信号を用いて位相差を得るようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流管に作用するコリオリの力に比例した位相差及び/又は振動周波数を検出することにより被計測流体の質量流量及び/又は密度を得るコリオリ流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
コリオリ流量計は、被測定流体の流通する流管の両端を支持し、その支持点回りに流管の流れ方向と垂直な方向に振動を加えたときに、流管(以下、振動が加えられるべき流管をフローチューブという)に作用するコリオリの力が質量流量に比例することを利用した質量流量計である。コリオリ流量計は周知のものであり、コリオリ流量計におけるフローチューブの形状は直管式と湾曲管式とに大別されている。
【0003】
そして、コリオリ流量計は、被測定流体が流れる測定管を両端で支持し、支持された測定管の中央部を支持線に対し、直角な方向に交番駆動したとき、測定管の両端支持部と中央部との間の対称位置に質量流量に比例した位相差信号を検出する質量流量計である。位相差信号は質量流量に比例している量であるが、駆動周波数を一定とすると、位相差信号は測定管の観測位置における時間差信号として検出することができる。
【0004】
測定管の交番駆動の周波数を測定管の固有の振動数と等しくすると、被測定流体の密度に応じた一定の駆動周波数が得られ、小さい駆動エネルギで駆動することが可能となることから、最近では測定管を固有振動数で駆動するのが一般的となっており、位相差信号は時間差信号として検出される。
【0005】
直管式のコリオリ流量計は、両端が支持された直管の中央部直管軸に垂直な方向の振動を加えたとき、直管の支持部と中央部との間でコリオリの力による直管の変位差、すなわち位相差信号が得られ、その位相差信号に基づいて質量流量を検知するように構成されている。このような直管式のコリオリ流量計は、シンプル、コンパクトで堅牢な構造を有している。しかしながら、高い検出感度を得ることができないという問題点もあわせ持っている。
【0006】
これに対して、湾曲管式のコリオリ流量計は、コリオリの力を有効に取り出すための形状を選択できる面で、直管式のコリオリ流量計よりも優れており、実際、高感度の質量流量を検出することができている。
そして、フローチューブを駆動するための駆動手段としては、コイルとマグネットの組み合わせで用いられることが一般的になっている。そのコイルとマグネットの取り付けに関しては、フローチューブの振動方向に対してオフセットしてない位置に取り付けることが、コイルとマグネットの位置関係のズレを最小にする上で好ましい。そこで、並列二本のフローチューブを備える湾曲管式のコリオリ流量計のような並列二本のフローチューブにあっては、コイルとマグネットとを挟み込む状態に取り付けられている。そのため、相対する二本のフローチューブの距離が少なくともコイルとマグネットとを挟み込む分だけ離れるような設計がなされている。
【0007】
二本のフローチューブがそれぞれ平行する面内に存在するコリオリ流量計であって、口径が大きいコリオリ流量計やフローチューブの剛性が高いコリオリ流量計の場合には、駆動手段のパワーを高める必要があることから、大きな駆動手段を二本のフローチューブの間に挟み込まなければならない。そのため、フローチューブの根元である固定端部においても、そのフローチューブ同士の距離が必然的に広くなるように設計されている。
【0008】
一般的に知られているU字管の測定チューブからなるコリオリ流量計1は、図16に示す如く、2本のU字管状の測定チューブ2,3の検出器4と、変換器5とを有して構成されている。
測定チューブ2,3の検出器4には、測定チューブ2,3を共振振動させる加振器6と、該加振器6によって振動したときに測定チューブ2,3の左側に生じる振動速度を検出する左速度センサ7と、該加振器6によって振動したときに測定チューブ2,3の右側に生じる振動速度を検出する右速度センサ8と、振動速度検出時の測定チューブ2,3内を流れる被測定流体の温度を検出する温度センサ9とを備えている。これら加振器6と、左速度センサ7と、右速度センサ8と、温度センサ9は、それぞれ変換器5に接続されている。
【0009】
このコリオリ流量計1の測定チューブ2,3内に流れる被測定流体は、測定チューブ2,3の右側(右速度センサ8が設置されている側)から左側(左速度センサ7が設置されている側)に流れるようになっている。
したがって、右速度センサ8によって検出される速度信号は、測定チューブ2,3に流入する被測定流体の入口速度信号となる。また、左速度センサ7によって検出される速度信号は、測定チューブ2,3から流出する被測定流体の出口速度信号となる。
なお、振動速度を検出する左速度センサ7、右速度センサ8は、各々加速度センサであっても、もちろんよい。
【0010】
コリオリ流量計変換器5は、図17に示す如きブロック構成を有している。
このコリオリ流量計変換器5は、駆動制御部10と、位相計測部11と、温度計測部12とによって構成されている。
すなわち、コリオリ流量計変換器5は、入出力ポート15を有している。この入出力ポート15には、駆動制御部10を構成する駆動信号出力端子16が設けられている。駆動制御部10は、測定チューブ2,3に取り付けられた加振器6に、所定のモードの信号を駆動信号出力端子16から出力し、測定チューブ2,3が共振振動させている。
【0011】
この駆動信号出力端子16には、増幅器17を介して、駆動回路18が接続されている。この駆動回路18においては、測定チューブ2,3を共振振動させる駆動信号を生成し、該駆動信号を増幅器17に出力する。この増幅器においては、入力した駆動信号を増幅して、駆動信号出力端子16に出力する。この駆動信号出力端子16においては、増幅器17から出力されてくる駆動信号を加振器6に出力する。
【0012】
また、入出力ポート15には、加振器6によって振動したときに測定チューブ2,3の左側に生じる振動速度の検出信号を入力する左速度信号入力端子19が設けられており、この左速度信号入力端子19は、位相計測部11を構成している。
また、入出力ポート15には、加振器6によって振動したときに測定チューブ2,3の右側に生じる振動速度の検出信号を入力する右速度信号入力端子20が設けられており、この右速度信号入力端子20は、位相計測部11を構成している。
【0013】
位相計測部11は、測定チューブ2,3に取り付けられた加振器6に、所定のモードの信号を駆動信号出力端子16から出力して、加振器6によって測定チューブ2,3を振動したときの一対の速度センサの振動信号をA/D変換しデジタル変換処理をした後、変換された信号の位相差を求めている。
左速度信号入力端子19には、増幅器21の入力端子が接続されており、この増幅器21の出力端子には、A/D変換器22が接続されている。このA/D変換器22においては、左速度信号入力端子19から出力される振動信号を増幅器21で増幅したアナログ信号をデジタル値に変換している。
A/D変換器22には、演算器23が接続されている。
【0014】
また、右速度信号入力端子20には、増幅器24の入力端子が接続されており、この増幅器24の出力端子には、A/D変換器25が接続されている。このA/D変換器25においては、右速度信号入力端子20から出力される振動信号を増幅器24で増幅したアナログ信号をデジタル値に変換している。
そして、A/D変換器25の出力されるデジタル信号は、演算器23に入力される。
【0015】
さらに、入出力ポート15には、温度センサ9からの検出値を入力する温度計測部11を構成する温度信号入力端子26が設けられている。温度計測部12は、測定チューブ2,3内に設けられ測定チューブ2,3内の温度を検出する温度センサ9による検出温度によってチューブ温度の補償を行っている。
この温度センサ9には、一般に抵抗型温度センサが用いられており、抵抗値を計測することによって温度を算出している。
温度信号入力端子26には、温度計測回路27が接続されており、この温度計測回路27によって温度センサ9から出力される抵抗値に基づいて測定チューブ2,3内の温度を算出している。この温度計測回路27において算出した測定チューブ2,3内の温度は、演算器23に入力されるようになっている。
【0016】
このようなコリオリ流量計1による位相計測方法は、測定チューブ2,3に取り付けられた加振器6から、測定チューブ2,3に1次モードで振動が与えられ、この振動が与えられた状態で、測定チューブ2,3内に被測定流体が流れると、測定チューブ2,3に位相モードが生成される。
したがって、コリオリ流量計1の右速度センサ8からの信号(入口速度信号)と左速度センサ7からの信号(出口速度信号)は、この2つの信号が重畳された形で出力される。この2つの信号が重畳された形で出力される信号は、流量信号だけでなく不要なノイズ成分を多く含んでおり、さらに計測流体の密度変化などによっても振動数が変化してしまう。
【0017】
そのために、左速度センサ7と右速度センサ8からの信号の内、不要な信号を取り除く必要がある。しかしながら、左速度センサ7と右速度センサ8からの信号の内、不要な信号を取り除き、位相を計算することは非常に難しい。
さらに、コリオリ流量計1は、非常に高精度な計測と高速な応答性を要求されることがしばしばある。この要求を満足するためには、非常に複雑な演算と高い処理能力をもった演算器を必要とし、コリオリ流量計1そのものが非常に高価なものになっている。
このようなことから、コリオリ流量計1には、常に計測周波数に合わせた最適なフィルタと高速な演算方法を併せ持った位相差計測方法の確立が必要とされている。
【0018】
従来の流量を計算するための位相差計測方法において、ノイズを除去するためのフィルタ処理方法としては、アナログフィルタを用いた方法と、デジタルフィルタを用いた方法とがある。
アナログフィルタを用いた方法は、比較的安価に構成できる(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。しかし、この特許文献1、特許文献2においてフィルタの能力を上げることには限界があり、コリオリ流量計のフィルタとしては、十分ではないという問題点がある。
【0019】
近年、デジタル信号処理を用いたコリオリ流量計が数多く開発されており、
従来の流量を計算するための位相差計測方法において、ノイズを除去するためのフィルタ処理方法としてデジタルフィルタを用いた方法が開発されている。
デジタル信号処理を用いたコリオリ流量計のタイプとしては、従来、フーリエ変換を用いて位相を計測する方法(例えば、特許文献3参照)、ノッチフィルタ、バンドパスフィルタなどのフィルタテーブルを持つことによって、入力周波数に併せた最適なテーブルを選択し、位相を計測する方法(例えば、特許文献4、特許文献5参照)などがある。
【0020】
《フーリエ変換を用いた位相計測方法》
フーリエ変換を用いた位相計測方法によるコリオリ流量計変換器は、図18に示す如きブロック構成を用いて行われる。
図18において、左速度センサ7によって検出される加振器6によって振動したときに測定チューブ2,3の左側に生じる振動速度の検出信号(出口側速度信号)を入力する入出力ポート15に設けられている左速度信号入力端子19には、ローパスフィルタ30が接続されている。このローパスフィルタ30は、加振器6によって測定チューブ2,3を振動したときに、測定チューブ2,3の左側に生じる振動速度を検出する左速度センサ7から出力される左速度信号(出口側速度信号)を周波数フィルタを通して、低い周波数の左速度信号(出口側速度信号)のみを取り出す回路である。
【0021】
このローパスフィルタ30には、A/Dコンバータ31が接続されている。このA/Dコンバータ31は、ローパスフィルタ30から出力されてくるアナログ信号である左速度信号をデジタル信号に変換するものである。このA/Dコンバータ31においてデジタル信号に変換された左速度信号は、位相差計測器32に入力される。
また、このA/Dコンバータ31には、タイミング発生器33が接続されている。このタイミング発生器33は、入力周波数のM倍(Mは自然数)のサンプリングのタイミングを生成するものである。
【0022】
一方、右速度センサ8によって検出される加振器6によって振動したときに測定チューブ2,3の右側に生じる振動速度の検出信号(入口側速度信号)を入力する入出力ポート15に設けられている右速度信号入力端子20には、ローパスフィルタ34が接続されている。このローパスフィルタ34は、加振器6によって測定チューブ2,3を振動したときに、測定チューブ2,3の右側に生じる振動速度を検出する右速度センサ8から出力される右速度信号(入口側速度信号)を周波数フィルタを通して、低い周波数の右速度信号(入口側速度信号)のみを取り出す回路である。
【0023】
このローパスフィルタ34には、A/Dコンバータ35が接続されている。このA/Dコンバータ35は、ローパスフィルタ34から出力されてくるアナログ信号である右速度信号をデジタル信号に変換するものである。このA/Dコンバータ35においてデジタル信号に変換された右速度信号は、位相差計測器32に入力される。
また、このA/Dコンバータ35には、タイミング発生器33が接続されている。このタイミング発生器33は、入力周波数のM倍(Mは自然数)のサンプリングのタイミングを生成するものである。
【0024】
また、右速度センサ8によって検出される加振器6によって振動したときに測定チューブ2,3の右側に生じる振動速度の検出信号(入口側速度信号)を入力する入出力ポート15に設けられている右速度信号入力端子20には、周波数計測器36が接続されている。この周波数計測器36は、右速度センサ8によって検出される加振器6によって振動したときに測定チューブ2,3の右側に生じる振動速度の検出信号(入口側速度信号)の周波数を計測するものである。
この周波数計測器36には、タイミング発生器33が接続されている。この周波数計測器36において計測された周波数は、タイミング発生器33に出力され、タイミング発生器33において入力周波数のM倍(Mは自然数)のサンプリングのタイミングが生成され、A/Dコンバータ31,35に出力される。
この位相差計測器32と、タイミング発生器33と、周波数計測器36とによって位相計測演算器40が構成されている。
【0025】
図18に示すように構成されるフーリエ変換を用いた位相計測方法においては、右速度センサ8からの入力信号(入口側速度信号)が、まず、周波数計測器36に入力され周波数が計測される。この周波数計測器36において計測された周波数は、タイミング発生器33に入力され、このタイミング発生器33においては、入力周波数のM倍(Mは自然数)のサンプリングのタイミングが生成され、A/Dコンバータ31,35に入力される。
また、A/Dコンバータ31においてデジタル信号に変換された測定チューブ2,3の左側に生じる振動速度の検出信号(出口側速度信号)と、A/Dコンバータ35においてデジタル信号に変換された測定チューブ2,3の右側に生じる振動速度の検出信号(入口側速度信号)は、位相差計測器32に入力される。そして、この位相差計測器32において、内蔵されるディスクリートフーリエ変換器でフーリエ変換され、その変換された信号の実数成分と虚数成分との比から位相差が演算される。
【0026】
《デジタルフィルタを用いた位相計測方法》
デジタルフィルタを用いた位相計測方法によるコリオリ流量計変換器は、図19,図20に示されるブロック構成図を用いて説明する。
デジタルフィルタには、ノッチフィルタやバンドパスフィルタなどの周波数選択手段があり、このノッチフィルタやバンドパスフィルタなどの周波数選択手段を用い入力信号のS/N比を向上させるものである。
図19には、デジタルフィルタとしてノッチフィルタを用いたコリオリ流量計変換器のブロック構成が示されている。
図19に図示の入出力ポート15、左速度信号入力端子19、右速度信号入力端子20、ローパスフィルタ30,34、A/Dコンバータ31,35は、図18に図示の入出力ポート15、左速度信号入力端子19、右速度信号入力端子20、ローパスフィルタ30,34、A/Dコンバータ31,35と同一の構成を有するものである。
【0027】
図19において、A/Dコンバータ31には、ノッチフィルタ51が接続されている。このノッチフィルタ51は、A/Dコンバータ31においてデジタル信号に変換された左速度信号を基に周波数を選択し、入力信号のS/N比を向上して出力するものである。
このノッチフィルタ51には、位相計測器52が接続されており、この位相計測器52は、ノッチフィルタ51によってS/N比を向上させた後のデジタル信号に変換された左速度信号の位相を計測するものである。
また、ノッチフィルタ51には、周波数計測器53が接続されている。この周波数計測器53は、ノッチフィルタ51によってS/N比を向上させた後のデジタル信号に変換された左速度信号の周波数を計測するものである。
そして、この周波数計測器53において計測された周波数は、ノッチフィルタ51に入力される。
【0028】
また、A/Dコンバータ35には、ノッチフィルタ54が接続されている。このノッチフィルタ54は、A/Dコンバータ31においてデジタル信号に変換された左速度信号を基に周波数を選択し、入力信号のS/N比を向上して出力するものである。
このノッチフィルタ54には、位相計測器52が接続されており、この位相計測器52は、ノッチフィルタ54によってS/N比を向上させた後のデジタル信号に変換された右速度信号の位相を計測するものである。
また、ノッチフィルタ54には、周波数計測器53において計測された周波数が、入力されるようになっている。
【0029】
図19において、クロック55は、同期を取るためのもので、A/Dコンバータ31,35に入力され、A/Dコンバータ31とA/Dコンバータ35の同期を取っている。
このノッチフィルタ51,54と、位相計測器52と、周波数計測器53と、クロック55とによって位相計測演算器50が構成されている。
【0030】
図20には、デジタルフィルタとしてバンドパスフィルタ(BPF)を用いたコリオリ流量計変換器のブロック構成が示されている。
図20に図示の入出力ポート15、左速度信号入力端子19、右速度信号入力端子20、ローパスフィルタ30,34、A/Dコンバータ31,35は、図19に図示の入出力ポート15、左速度信号入力端子19、右速度信号入力端子20、ローパスフィルタ30,34、A/Dコンバータ31,35と同一の構成を有するものである。
【0031】
図20において、A/Dコンバータ31には、バンドパスフィルタ(BPF)61が接続されている。このバンドパスフィルタ61は、A/Dコンバータ31においてデジタル信号に変換された加振器6によって測定チューブ2,3を振動したときに、測定チューブ2,3の左側に生じる振動速度を検出する左速度センサ7から出力される左速度信号(出口側速度信号)を、周波数フィルタを通して、設定された周波数の左速度信号(出口側速度信号)のみを取り出す回路である。
このバンドパスフィルタ61には、位相計測器62が接続されており、この位相計測器62は、バンドパスフィルタ61によってS/N比を向上させた後のデジタル信号に変換された左速度信号の位相を計測するものである。
【0032】
また、バンドパスフィルタ61には、周波数計測器63が接続されている。この周波数計測器63は、A/Dコンバータ31によってデジタル信号に変換され、バンドパスフィルタ61によってS/N比を向上させた後の左速度信号の周波数を計測するものである。
そして、この周波数計測器63において計測された周波数は、バンドパスフィルタ61に入力される。
【0033】
また、A/Dコンバータ35には、バンドパスフィルタ64が接続されている。このバンドパスフィルタ64は、A/Dコンバータ35においてデジタル信号に変換された加振器6によって測定チューブ2,3を振動したときに、測定チューブ2,3の右側に生じる振動速度を検出する右速度センサ8から出力される右速度信号(入口側速度信号)を、周波数フィルタを通して、設定された周波数の右速度信号(入口側速度信号)のみを取り出す回路である。
このバンドパスフィルタ64には、位相計測器62が接続されており、この位相計測器62は、バンドパスフィルタ64によってS/N比を向上させた後のデジタル信号に変換された左速度信号の位相を計測するものである。
【0034】
また、バンドパスフィルタ64には、周波数計測器63が接続されている。そして、この周波数計測器63において計測された周波数は、バンドパスフィルタ64に入力される。
図20において、クロック65は、同期を取るためのもので、クロック65からのクロック信号は、A/Dコンバータ31,35に入力され、A/Dコンバータ31とA/Dコンバータ35の同期を取っている。
このバンドパスフィルタ61,64と、位相計測器62と、周波数計測器63と、クロック65とによって位相計測演算器60が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】特開平2−66410号公報
【特許文献2】特表平10−503017号公報
【特許文献3】特許第2799243号公報
【特許文献4】特許第2930430号公報
【特許文献5】特許第3219122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
特許文献3に示すようなフーリエ変換を用いた位相計測方法にあっては、入力される振動速度の検出信号の入力周波数が一定である場合、周波数の選択においてフーリエ変換を用いるために、非常に周波数選択性の高い位相計測方法を行うことができる。
しかし、この特許文献3に示すようなフーリエ変換を使う方法にあっては、入力される振動速度の検出信号の入力周波数が、密度や温度などによって変化した場合、変換方法やサンプリングレートを変えなければならないために、演算周期や演算方法が変わり、測定値が変動し不安定になってしまう。
【0037】
さらに、特許文献3に示すようなフーリエ変換を使う方法にあっては、入力される振動速度の検出信号の入力周波数が、密度や温度などによって変化した場合、サンプリングレートを入力される振動速度信号の入力周波数に正確に同期させなければならないために、設計が非常に複雑なものになる。
このために被測定流体の温度や、気泡などが流体に混ざり密度が急激に変化した場合、極端に計測精度が落ちてしまうという問題点を有している。
加えて、特許文献3に示すようなフーリエ変換を使う方法にあっては、フーリエ変換を行うため、非常に演算処理が多くなってしまうという問題点を有している。
【0038】
特許文献4、特許文献5に示すようなノッチフィルタ、バンドパスフィルタなどのフィルタテーブルを持つことによって、入力周波数に併せた最適なテーブルを選択し、位相を計測する方法にあっては、サンプリングレートを固定することによって設計を単純化することができる。
しかし、特許文献4、特許文献5に示すようなデジタルフィルタを用いた位相計測方法も特許文献3に示すようなフーリエ変換を使う方法と同様に、入力周波数の変化に対して非常に多くのフィルタテーブルを持つこととなり、演算器のメモリの消費が大きくなってしまうという問題点を有している。
また、特許文献4、特許文献5に示すようなデジタルフィルタを用いた位相計測方法にあっては、入力周波数が急激に変化した場合に最適なフィルタを選択することが困難になってしまうという問題点を有している。
さらに、特許文献4、特許文献5に示すようなデジタルフィルタを用いた位相計測方法にあっては、周波数の選択能力を上げるために、非常に多くの演算をしなければならないという問題点を有している。
【0039】
この特許文献4、特許文献5に示すようなデジタルフィルタを用いた位相計測方法にあっては、以下に示す如き問題を有している。
(1)入力周波数の変化に対して精度良く追従することができない。すなわち、被測定流体の密度が急速に変化する気泡混入時での計測などを実現することが非常に困難である。
(2)周波数の選択能力を向上させるためには、非常に多くの演算をしなければならない。このため高速な応答性を実現させることが困難であり、短時間でのバッチ処理などに不向きである。
(3)演算器メモリの消費が大きく、設計が複雑になってしまう。したがって、回路構成や設計が複雑になり、コスト的に非常にデメリットになる。
【0040】
以上総合すると、従来のデジタルフィルタ処理による位相計測方法にあっては、いずれも測定チューブ2,3のチューブ振動数以外の帯域のノイズを取り除くため、常に測定チューブ2,3のチューブ周波数に追従するようにフィルタテーブルの切り替えや演算方法の変更、さらには、サンプリングレートの変更などを行う必要があるために、非常に複雑且つ高速性に欠ける演算を行わなければならないという問題点を有していた。
このため、加振器6によって測定チューブ2,3を振動したときに、測定チューブ2,3の右側に生じる振動速度を検出する右速度センサ8,測定チューブ2,3の左側に生じる振動速度を検出する左速度センサ7によって検出される振動速度信号の入力周波数が変動するたびに演算誤差を生じ易く、非常に計測精度が悪いものであるという問題点を有していた。
【0041】
本発明の目的は、被測定流体の温度が変化したり、被測定流体に気泡が混入したり、被測定流体が気体から液体に急速に変化した場合であっても、常に一定の精度で計測することができ、高いフィルタリング能力をもった位相計測を実現し、極めて少ない演算処理量で行うことのできる信号処理方法、信号処理装置、およびコリオリ流量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0042】
上記課題を解決するためなされた請求項1に記載の信号処理方法は、測定用の流管を構成する少なくとも一本、又は一対のフローチューブを駆動装置によって加振器を作動させ前記フローチューブを交番駆動し、該フローチューブを振動させて、前記フローチューブの左右に設けられる一対の振動検出センサである速度センサ若しくは加速度センサによって前記フローチューブに作用するコリオリの力に比例した位相差及び/又は振動周波数を検出することにより、被計測流体の質量流量及び/又は密度を得るコリオリ流量計において,
前記一対の振動検出センサのそれぞれから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する第1のステップと,
前記第1のステップにおいて変換された前記一対の振動検出センサに対応する2つのデジタル信号のそれぞれを周波数変換する第2のステップと,
前記第1のステップにおいて変換された前記一対の振動検出センサに対応する2つのデジタル信号のいずれかのデジタル信号に基づいて周波数を計測する第3のステップと,
前記第3のステップにおいて計測されるデジタル周波数信号の1/Nの周波数信号を生成する第4のステップとを備え,
前記第4のステップにおいて生成されたデジタル信号の1/Nの周波数信号を用いて前記一対の振動検出センサの検出信号の位相差を検出できるようにしたことを特徴としている。
【0043】
上記課題を解決するためなされた請求項2に記載の信号処理方法は、請求項1に記載の信号処理方法の周波数計測器から出力されるデジタル周波数信号θの1/Nの周波数信号を生成する過程において、θ/N=θ―θxとなるような周波数θxをもとめ周波数変換を行うようにしたことを特徴としている。
【0044】
上記課題を解決するためなされた請求項3に記載の信号処理方法は、請求項1に記載の信号処理方法において、前記周波数計測器から出力されるデジタル周波数信号θの1/Nの周波数信号が50Hz未満となるようにNを決定するようにしたことを特徴としている。
【0045】
上記課題を解決するためなされた請求項4に記載の信号処理装置は、測定用の流管を構成する少なくとも一本、又は一対のフローチューブを駆動装置によって加振器を作動させ前記フローチューブを交番駆動し、該フローチューブを振動させて、前記フローチューブの左右に設けられる一対の振動検出センサである速度センサ若しくは加速度センサによって前記フローチューブに作用するコリオリの力に比例した位相差及び/又は振動周波数を検出することにより、被計測流体の質量流量及び/又は密度を得るコリオリ流量計において,
前記一対の振動検出センサのそれぞれから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するためのA/D変換器と,
前記A/D変換器から出力される前記一対の振動検出センサに対応する2つのデジタル信号のそれぞれのデジタル信号を周波数変換する一対の直交周波数変換器と,
前記A/D変換器から出力される前記一対の振動検出センサに対応する2つのデジタル信号のいずれかのデジタル信号に基づいて周波数を計測する周波数計測器と,
前記周波数計測器から出力されるデジタル周波数信号のθ(1−1/N)の周波数信号を生成する発信器とを備え,
前記直交周波数変換器によって生成された信号を用いて位相差を得るようにしたことを特徴としている。
【0046】
上記課題を解決するためなされた請求項5に記載の信号処理装置は、請求項4に記載の信号処理装置のA/D変換器から出力される一対の振動検出センサである速度センサ若しくは加速度センサに対応する2つのデジタル信号のいずれかのデジタル信号に基づいて周波数を計測する周波数計測器において、PLL(Phase Locked Loop)を用いて周波数計測を行うようにしたことを特徴としている。
【0047】
上記課題を解決するためなされた請求項6に記載のコリオリ流量計は、測定用の流管を構成する少なくとも一本、又は一対のフローチューブを駆動装置によって加振器を作動させ前記フローチューブを交番駆動し該フローチューブを振動させて、振動検出センサによって前記フローチューブに作用するコリオリの力に比例した位相差及び/又は振動周波数を検出することにより、被計測流体の質量流量及び/又は密度を得るコリオリ流量計において,
前記一対の振動検出センサのそれぞれから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するためのA/D変換器と,
前記A/D変換器から出力される前記一対の振動検出センサに対応する2つのデジタル信号のそれぞれのデジタル信号を周波数変換する一対の直交周波数変換器と,
前記A/D変換器から出力される前記一対の振動検出センサに対応する2つのデジタル信号のいずれかのデジタル信号に基づいて周波数を計測する周波数計測器と,
前記周波数計測器から出力されるデジタル周波数信号のθ(1−1/N)の周波数信号を生成する発信器とを備え,
前記直交周波数変換器によって生成された信号を用いて位相差を得る信号処理装置を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0048】
コリオリ式流量計にはさまざまな測定管の形状がある。たとえば湾曲管のものやストレート管などである。また測定管を駆動するモードにおいても1次や2次のモードなどさまざまなモードにおいて駆動されるタイプが存在する。
【0049】
周知の如く振動管から得られる駆動周波数帯域は数十Hz〜数KHzに及ぶ、たとえばU字管を用いて1次のモードで測定管を振動させた場合、周波数は100Hz前後であり、またストレート形状の測定管を1次のモードで振動させた場合は500Hz〜1000Hz程度が実現されている。
しかし、ひとつの流量計変換器に於いて、コリオリ式流量計の位相計測を、数十Hz〜数KHzの周波数帯域で常に同様な処理を用いて位相計測を行うことは非常に困難で、数種のタイプに分けて設計する必要があった。
【0050】
本発明に係る信号処理方法によれば、同定のアルゴリズムに基づく有利な信号処理によって、上記の如き本質的な課題を払拭でき、かつ被測定流体の温度変化や、気泡混入、さらに被測定流体が気体から液体に急速に変化した場合であっても、常に安定した一定の精度で計測することができ、高いフィルタリング能力をもった位相計測を特長にして、高い性能を提供できる。
【0051】
本発明に係る信号処理装置によれば、被測定流体の温度が変化したり、被測定流体に気泡が混入したり、被測定流体が気体から液体に急速な変化があった場合であっても、常に一定の精度で安定した計測をすることができ、高いフィルタリング能力をもった位相計測を少ない演算処理量で行うことができる。
【0052】
本発明に係るコリオリ流量計によれば、被測定流体の温度が変化したり、被測定流体に気泡が混入したり、被測定流体が気体から液体に急速な変化があった場合であっても、常に一定の精度で安定した計測をすることができ、高いフィルタリング能力をもった位相計測を少ない演算処理量で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る信号処理方法、およびその装置の原理を示すブロック図である。
【図2】図1に図示の信号処理装置における駆動周波数が100Hzのコリオリ流量計と駆動周波数が1000Hzのコリオリ流量計の周波数波形を示す図である。
【図3】図1に図示の信号処理装置における駆動周波数が100Hzのコリオリ流量計の駆動周波数を分周したときの周波数波形を示す図である。
【図4】図1に図示の信号処理装置における駆動周波数が100Hzのコリオリ流量計の駆動周波数をシフトしたときの周波数波形を示す図である。
【図5】図1に図示の信号処理装置の具体的構成図である。
【図6】図5に図示のローパスフィルタから出力される測定チューブの左側に生じる振動速度の検出信号を示す図である。
【図7】図5に図示のA/Dコンバータにおいてから出力される図6に図示の信号を任意の一定周期でサンプリングしてデジタル信号化した信号を示す図である。
【図8】図5に図示の発信器から出力される発信周波数信号(θXn)を示す図である。
【図9】図5に図示の直交変調器の内部において生成したA/Dコンバータからの出力信号(cosθ)の90度シフト信号を示す図である。
【図10】図5に図示の直交変調器の内部において生成した発信器からの出力信号(cosθXn)の90度シフト信号を示す図である。
【図11】図5に図示の直交変調器において直交周波数変換をした信号を示す図である。
【図12】図5に図示の信号処理装置の具体的構成図のタイムチャートを示す図である。
【図13】図5に図示の信号処理装置の具体的構成図のタイムチャートを示す図である。
【図14】図5に図示の信号処理装置の具体的構成図の動作フローチャートである。
【図15】図5に図示の周波数計測器のブロック図である。
【図16】本発明が適用される一般的なコリオリ流量計の構成図である。
【図17】図16に図示のコリオリ流量計のコリオリ流量計変換器のブロック構成図である。
【図18】図17に図示のコリオリ流量計変換器のフーリエ変換を用いた位相計測方法を示すブロック図である。
【図19】図17に図示のコリオリ流量計変換器のノッチフィルタを用いた位相計測方法を示すブロック図である。
【図20】図17に図示のコリオリ流量計変換器のバンドパスフィルタを用いた位相計測方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明は、常に一定の精度で計測することができ、高いフィルタリング能力をもった位相計測を実現し、極めて少ない演算処理量で行うことができるという目的を、被測定流体の温度が変化したり、被測定流体に気泡が混入したり、被測定流体が気体から液体に急速に変化した場合においても、実現できるようにした。
【実施例1】
【0055】
以下、本発明を実施するための形態の実施例1について図1〜図13を用いて説明する。
図1は本発明に係る信号処理方法、およびその装置の原理図、図2は駆動周波数が100Hzのコリオリ流量計と駆動周波数が1000Hzのコリオリ流量計の周波数波形を示す図、図3は駆動周波数が100Hzのコリオリ流量計の駆動周波数を分周したときの周波数波形を示す図、図4は駆動周波数が100Hzのコリオリ流量計の駆動周波数をシフトしたときの周波数波形を示す図、図5は図1に図示の信号処理装置の具体的構成図、図6は図5に図示のローパスフィルタから出力される測定チューブの左側に生じる振動速度の検出信号を示す図、図7は図5に図示のA/Dコンバータから出力される図6に図示の信号を任意の一定周期でサンプリングしてデジタル信号化した信号を示す図、図8は図5に図示の発信器から出力される発信周波数信号(θXn)を示す図、図9は図5に図示の直交変調器の内部において生成したA/Dコンバータからの出力信号(cosθ)の90度シフト信号を示す図、図10は図5に図示の直交変調器の内部において生成した発信器からの出力信号(cosθXn)の90度シフト信号を示す図、図11は図5に図示の直交変調器において直交周波数変換をした信号を示す図、図12は図5に図示の信号処理装置の具体的構成図のタイムチャートを示す図、図13は図5に図示の信号処理装置の具体的構成図のタイムチャートを示す図である。
【0056】
図1には、本発明に係る信号処理方法、およびその装置の原理図が示されている。
図1において、加振器6によって測定チューブ2,3を振動したときに、測定チューブ2,3に生じる振動速度は、振動速度センサ70によって検出され、この検出された振動速度は、振動速度信号演算器80において演算処理される。この振動速度センサ70は、図16における左速度センサ7と右速度センサ8に相当している。
【0057】
振動速度信号演算器80は、直交変調器85と、発信器90と、位相計測器95とによって構成される。
直交変調器85は、振動速度センサ70によって検出される加振器6によって測定チューブ2,3を振動したときに測定チューブ2,3に生じる振動速度を直交変調するものである。この直交変調器85には、発信器90からの信号が入力されるようになっている。
そして、この直交変調器85において直交変調された信号は、直交変調器85の後段に設けられている位相計測器95に入力される。この位相計測器95は、振動速度センサ70からの速度信号をA/D変換しデジタル変換処理をした後、その位相差を求めるものである。
【0058】
図1に図示の信号処理方法、およびその装置は、入力信号を1/Nに直交周波数変換し、周波数変換後に位相計測を行うことによって、入力周波数の帯域を1/Nにし、かつ安定的な位相計測が行えるようにしたものである。
前述のように本発明では、センサから入力される位相/及び速度信号を周波数変換を用い1/N(Nは任意の数)の周波数に変換し、変換後の位相差を計測することにより、常に同じ帯域のフィルタを用いることで実現している。また測定流体の密度や温度などが変化することによる位相及び速度信号の周波数変化に対しても、計算精度や演算周期が影響をほとんど受けずに流量を計測することができる。
【0059】
例えば、図2に示すような駆動周波数が100Hzのコリオリ流量計においては、フィルタの周波数帯域を95〜105Hzとした場合、密度や温度の変化により駆動周波数がフィルタの周波数帯域の外に出てしまう場合がある。このため、その前後の周波数帯域のフィルタテーブル、例えば、85Hz〜95Hzと105Hz〜115Hzのテーブルが必要である。フィルタの周波数帯域を拡げれば少ない数のテーブルですむが、計測波形がノイズの多い位相及び速度信号となってしまうため、非常に計測精度を悪化させてしまう。
さらに駆動周波数が1000Hzのコリオリ流量計の位相及び速度信号を計測しようとした場合、サンプリングレートやフィルタテーブルを変えなければならないため、計算精度や演算周期が変化する。
【0060】
本発明に係る信号処理における駆動周波数が100Hzのコリオリ流量計では、図3に示すように、例えばNの値を4に設定することによって、センサから入力される位相及び速度信号が100Hzの場合、100/4の25Hzに周波数変換され、周波数変換した位相及び速度信号をフィルタリング後、位相計算を行う。
使用するフィルタの帯域は、20Hz〜30Hz程度の帯域を使用することによって、密度や温度の変化により駆動周波数が変化しても80Hz〜120Hzの帯域外であれば常に同じフィルタテーブルを用いることができるため、常に安定した計算精度と演算周期で計測をすることができる。
また、駆動周波数が1000Hzのコリオリ流量計では、Nの値を40に設定することによって駆動周波数が100Hzのコリオリ流量計とまったく同様なフィルタの帯域を用いて流量計測を行うことができる。
【0061】
さらに、本発明においては、図4に示すように、位相及び速度信号の1/N変換する方法において、入力周波数を分周せずに周波数シフトする方法がある。この図4に図示のコリオリ流量計の場合、入力周波数を分周せずに周波数シフトするために、フィルタリングの効果を損なわずに流量計算を行うことができるという特長を有している。
たとえば、図3に図示のコリオリ流量計のように入力される信号を全て1/N分周する場合は、ノイズ成分も同様に1/Nされてしまうため、フィルタリングの帯域を狭めてもあまり効果が期待できない。
したがって、図4に図示のコリオリ流量計のように、周波数シフトによって位相及び速度信号の1/N変換した場合、ノイズ成分も同時に周波数シフトされるが、フィルタの帯域を1/Nにすることができるため、周波数シフト前にくらべ非常に効果的なフィルタリングを行うことができる。
【0062】
図5には、図1に図示の信号処理装置の具体的構成が示されている。
図5において、レフトピックオフ(LPO)7(左速度センサ7に相当)には、ローパスフィルタ30が接続されている。すなわち、加振器6によって振動したときに測定チューブ2,3の左側に生じる振動速度の検出信号(出口側速度信号)をレフトピックオフ7が検出すると、この振動速度の検出信号(出口側速度信号)は、ローパスフィルタ30に入力される。
このローパスフィルタ30は、加振器6によって測定チューブ2,3を振動したときに、測定チューブ2,3の左側に生じる振動速度を検出する左速度センサ7から出力される左速度信号(出口側速度信号)を周波数フィルタを通して、低い周波数の左速度信号(出口側速度信号)のみを取り出す回路である。
【0063】
このローパスフィルタ30には、A/Dコンバータ31が接続されている。このA/Dコンバータ31は、ローパスフィルタ30から出力されてくるアナログ信号である左速度信号(出口側速度信号)をデジタル信号に変換するものである。このA/Dコンバータ31においてデジタル信号に変換された左速度信号(出口側速度信号)は、信号処理装置100に入力される。
【0064】
一方、ライトピックオフ(RPO)8(右速度センサ8に相当)には、ローパスフィルタ34が接続されている。すなわち、加振器6によって振動したときに測定チューブ2,3の右側に生じる振動速度の検出信号(入口側速度信号)をライトピックオフ8が検出すると、この振動速度の検出信号(入口側速度信号)は、ローパスフィルタ34に入力される。
このローパスフィルタ34は、加振器6によって測定チューブ2,3を振動したときに、測定チューブ2,3の右側に生じる振動速度を検出する右速度センサ8から出力される右速度信号(入口側速度信号)を周波数フィルタを通して、低い周波数の右速度信号(入口側速度信号)のみを取り出す回路である。
【0065】
このローパスフィルタ34には、A/Dコンバータ35が接続されている。このA/Dコンバータ35は、ローパスフィルタ34から出力されてくるアナログ信号である右速度信号(入口側速度信号)をデジタル信号に変換するものである。
また、この信号処理装置100は、A/Dコンバータ35に接続されている。この信号処理装置100は、右速度信号(入口側速度信号)、左速度信号(出口側速度信号)の各々を1/Nに直交周波数変換し、周波数変換後に位相計測を行うことによって、入力周波数の帯域を1/Nにし、かつ安定的な位相計測が行えるようにするものである。
【0066】
信号処理装置100においてA/Dコンバータ31からの信号は、直交変調器110が接続されている。この直交変調器110は、左速度信号(出口側速度信号)を1/Nに直交周波数変換するものである。
また、A/Dコンバータ31からの信号は、周波数計測器120にも接続されている。この周波数計測器120は、加振器6によって測定チューブ2,3を振動したときに、測定チューブ2,3の左側に生じる振動速度を検出する左速度センサ7から出力される左速度信号(出口側速度信号)をA/Dコンバータ31によってデジタル信号に変換された左速度信号(出口側速度信号)の周波数を計測するものである。
また、A/Dコンバータ35からの信号は、直交変調器130が接続されている。この直交変調器130は、右速度信号(入口側速度信号)を1/Nに直交周波数変換するものである。
【0067】
周波数計測器120において計測された周波数計測値は、発信器140に出力される。この発信器140は、周波数計測器120から出力される周波数計測値に基づいて、所定の周波数信号を発信出力するものである。
この発信器140の出力信号は、直交変調器110と直交変調器130に入力される。
この周波数計測器120→発信器140→直交変調器110によって搬送周波数を求め、A/Dコンバータ31からの入力される左速度信号(出口側速度信号)の入力周波数と発信器140から出力される出力周波数を直交変調器110で変調する。その結果得られる、つまり加法定理に基づく両入力信号の周波数の和と差のいずれかを用いて周波数をシフトさせる。そして変調周波数が、入力される左速度信号(出口側速度信号)の入力周波数の1/Nになるように発信器140の出力周波数をコントロールする。
このように発信器140がコントロールされると、この発信器140から出力される出力周波数によって、直交変調器110同様、直交変調器130においても、周波数変換を行った後の周波数が、A/Dコンバータ35から入力される右速度信号(入口速度信号)の入力周波数の1/Nになるように制御される。
【0068】
直交変調器110及び直交変調器130には、位相差計測器150が接続されている。この位相差計測器150は、直交変調器110から出力されてくるA/Dコンバータ31から入力される左速度信号(出口側速度信号)の入力周波数の1/Nの出力周波数信号と、直交変調器130から出力されてくるA/Dコンバータ35から入力される右速度信号(入口側速度信号)の入力周波数の1/Nの出力周波数信号とを用いて位相計測を行うものである。
このように構成することにより、本実施の形態によれば、入力周波数(左速度信号,右速度信号)を低い周波数帯域(1/Nの周波数)に変換することによって、入力周波数(左速度信号,右速度信号)の帯域を1/Nにし、フィルタのテーブル数を大幅に減らし、さらに位相計測処理をより効果的に行うことができる。
【0069】
A/Dコンバータ31とA/Dコンバータ35には、クロック160から、クロック信号が入力するようになっている。このクロック160は、A/Dコンバータ31とA/Dコンバータ35の出力の同期を取るもので、A/Dコンバータ31から出力される左速度信号のデジタル信号と、A/Dコンバータ35から出力される右速度信号のデジタル信号の同期を取るためのものである。
この直交変調器110と、周波数計測器120と、直交変調器130と、発信器140と、位相差計測器150と、クロック160とによって信号処理装置100が構成されている。
【0070】
次に、図5に図示の信号処理装置100における位相差計測演算の具体的な演算方法について説明する。
コリオリ流量計1の加振器6によって測定チューブ2,3を振動したときに、測定チューブ2,3に設けられる振動速度センサ70(レフトピックオフ7,ライトピックオフ8)からの出力信号(左速度信号,右速度信号)を図2に図示の如く、LPO、RPOの入力信号として得る。
このとき、LPO、RPOの入力信号を定義すると、(δφ:LPOとRPO間の位相差とする)
〔式1〕
ライトピックオフ : sin(θ) ………………(1)
〔式2〕
レフトピックオフ : sin(θ+δφ) ………………(2)
となる。
【0071】
この2つのセンサ(レフトピックオフ7,ライトピックオフ8)からの出力信号(左速度信号LPO,右速度信号RPO)は、コリオリ流量計1の変換器の内部のローバスフィルタ30,34をそれぞれ通って、A/D変換器31,35によってアナログ値からデジタル値に変換され、信号処理装置100に送られる。
この信号処理装置100は、前述した如く、直交変調器110,130と、周波数計測器120と、発信器140と、位相差計測器150の4つのブロックによって構成されており、レフトピックオフ7からの出力信号LPOと、ライトピックオフ8からの出力信号RPOの位相差を演算した後、周波数計測器120から出力される周波数信号と、温度センサ9によって検出される温度のデータをもとに流量信号に変換する。
【0072】
レフトピックオフ7によって検出された測定チューブ2,3の左側に生じる振動速度の検出信号(出口側速度信号)は、図5に図示のローパスフィルタ30に入力され、このローパスフィルタ30において、高調波ノイズを取り除きA/D変換時の折り返しノイズの影響を取り除いた、図6に示す如きsin信号(sinθ)が出力される。
このローパスフィルタ30から出力された図6に示す如きsin信号(sinθ)は、A/Dコンバータ31において、任意の一定周期でサンプリングしてデジタル信号化が行われ、図7に示す如きサンプリング信号(sinθ)が得られ、A/Dコンバータ31から出力される。
【0073】
このローパスフィルタ30から出力され、A/Dコンバータ31においてサンプリングされデジタル信号化が行われた図7に示す如き信号(sinθ)は、図5に図示の信号処理装置100の直交変調器110と周波数計測器120に入力される。そして、この直交変調器110には、発信器140から出力される発信器出力信号が入力される。
この発信器140においては、周波数計測部120から出力される出力信号周波数の計測値の入力によって、この出力信号周波数の計測値に基づいて、所望の周波数で発信器140における発信周波数信号(θXn)を発信し、発信出力レートを入力信号のA/Dコンバータ31におけるサンプリング周期と同じレートで図8に示す如きcos信号(cosθXn)を出力する。
【0074】
この直交変調器110においては、A/Dコンバータ31においてサンプリングされデジタル信号化が行われた図7に示す如き信号(sinθ)を入力すると、直交変調器110の内部において、A/Dコンバータ31からの入力信号(sinθ)を90度シフトして、図9に示す如き信号(cosθ)を生成する。また、直交変調器110においては、発信器140から出力される図8に示す如き信号(cosθXn)を入力すると、直交変調器110の内部において、発信器140からの入力信号(cosθXn)を90度シフトして、図10に示す如き信号(sinθXn)を生成する。
そして、この直交変調器110においては、A/Dコンバータ31からの入力信号(sinθ)の0度、90度の信号と、発信器140からの入力信号(cosθXn)の0度、90度の信号とを用いて、直交周波数変換をし、変調シフトして、A/Dコンバータ31からの入力信号(sinθ)の1/Nの信号(sinθcosθXn−cosθsinθXn)を図11に示す如く生成し、図5に図示の信号処理装置100の直交変調器110から出力する。
【0075】
コリオリ流量計1の加振器6によって測定チューブ2,3を振動したときに、測定チューブ2,3に設けられる振動速度センサ70(レフトピックオフ7,ライトピックオフ8)からの出力信号(左速度信号,右速度信号)は、図5に図示の信号処理装置100を構成する直交変調器110,130と、発信器140と、位相差計測器150と、周波数計測器120の4つのブロックにおいて、位相差が演算された後、周波数計測器120から出力される周波数信号と、温度センサ9によって検出される温度のデータをもとに流量信号に変換される。
【0076】
次に、図12,図13に示すタイムチャートを用いて、図5に図示の信号処理装置100における動作について説明する。
まず、図5に図示のローパスフィルタ30において、高調波ノイズを取り除きA/D変換時の折り返しノイズの影響を取り除くと、図6に示す如きsin信号(sinθ)が出力される。
この図6に示されるsin信号(sinθ)が出力されると、この図6に図示のsin信号(sinθ)がA/Dコンバータ31に入力される。そして、このA/Dコンバータ31においては、任意の一定周期でサンプリングしてデジタル信号化が行われ、図12(A)に示す如きサンプリング信号(Y1=sinθ)が得られ、A/Dコンバータ31から出力される。
【0077】
このA/Dコンバータ31から出力された図12(A)に図示のサンプリング信号(sinθ)は、図5に図示の信号処理装置100の直交変調器110と、周波数計測部120に入力される。
この信号処理装置100の周波数計測部120においては、A/Dコンバータ31によってデジタル信号に変換された左速度信号(出口側速度信号)の周波数を計測するものである。
この図5に図示の信号処理装置100の直交変調器110においては、A/Dコンバータ31によってデジタル信号に変換された左速度信号(出口側速度信号)が入力されると、内部において、A/Dコンバータ31からの入力信号(sinθ)を90度シフトして、図12(B)に示す如き信号(cosθ)を生成する。
【0078】
この信号処理装置100の周波数計測部120においては、A/Dコンバータ31から出力されるデジタル信号に基づいて計測された周波数信号が出力される。
この周波数計測部120から出力される出力信号周波数の計測値は、発信器120に入力され、この出力信号周波数が入力される発信器120においては、この出力信号周波数に基づいて、
θXn=θ×(1−1/N)
の式を満たす発信周波数信号(θXn)を発信し、発信出力レートを入力信号のA/Dコンバータ31におけるサンプリング周期と同じレートで図12(C)に示す如きcos信号(Y3=cosθXn)を出力する。
【0079】
この発信器120から出力される図12(C)に図示のcos信号(Y3=cosθXn)は、直交変調器110に入力される。この図12(C)に図示のcos信号(Y3=cosθXn)が入力されると、直交変調器110においては、発信器140からの入力される図12(C)に図示のcos信号(Y3=cosθXn)を90度シフトして、図12(D)に示す如きsin信号(Y4=sinθXn)を生成する。
【0080】
そして、この直交変調器110においては、A/Dコンバータ31からの入力信号(sinθ)の0度、90度の信号と、発信器140からの入力信号(cosθXn)の0度、90度の信号とを用いて、直交周波数変換をし、変調シフトして、A/Dコンバータ31からの入力信号(sinθ)の1/Nの信号(sinθcosθXn−cosθsinθXn)を図13(E)に示す如きsin信号(Y5=sinθcosθXn−cosθsinθXn=sin(θ/N))を生成する。この直交変調器110において生成された図13(E)に図示のsin信号(Y5=sinθcosθXn−cosθsinθXn=sin(θ/N))は、図5に図示の信号処理装置100の直交変調器110から出力されて、位相差計測器150に入力される。
【0081】
また、図5に図示のローパスフィルタ34において、高調波ノイズを取り除きA/D変換時の折り返しノイズの影響を取り除くと、sin信号(sin(θ+δφ))が出力される。
このローパスフィルタ34からsin信号(sin(θ+δφ))が出力されると、このsin信号(sin(θ+δφ))は、A/Dコンバータ35に入力される。そして、このA/Dコンバータ35においては、任意の一定周期でサンプリングしてデジタル信号化が行われる。
そして、このA/Dコンバータ35から出力されるサンプリング信号(sin(θ+δφ))は、直交変調器130の内部において、90度シフトして、cos信号(cos(θ+δφ))を生成する。
【0082】
また、発信器120から出力される図12(C)に図示のcos信号(Y3=cosθXn)は、直交変調器130に入力される。この図12(C)に図示のcos信号(Y3=cosθXn)が入力されると、直交変調器130においては、発信器140からの入力される図12(C)に図示のcos信号(Y3=cosθXn)を90度シフトして、図12(D)に示す如きsin信号(Y4=sinθXn)を生成する。
【0083】
そして、この直交変調器130においては、A/Dコンバータ35からの入力信号(sin(θ+δφ))の0度、90度の信号と、発信器140からの入力信号(cosθXn)の0度、90度の信号とを用いて、直交周波数変換をし、変調シフトして、A/Dコンバータ35からの入力信号(sinθ)の1/Nの信号として、図13(F)に示す如きsin信号(Y6=(sin(θ+δφ−θXn)=sin(θ/N+δφ))を生成する。この直交変調器130において生成された図13(F)に図示のsin信号(Y6=(sin(θ+δφ−θXn)=sin(θ/N+δφ))は、図5に図示の信号処理装置100の直交変調器130から出力されて、位相差計測器150に入力される。
【0084】
このように直交変調器110から出力される図13(E)に図示のsin信号(Y5=sin(θ/N))と、直交変調器130から出力される図13(F)に図示のsin信号(Y6=sin(θ/N+δφ))とは、共に位相差計測器150に入力される。
この位相差計測器150においては、直交変調器110から出力されて位相差計測器150に入力される図13(E)に図示のsin信号(Y5=sin(θ/N))と、直交変調器130から出力されて位相差計測器150に入力される図13(F)に図示のsin信号(Y6sin(θ/N+δφ))とに基づいて、図13(G)に示す如き信号(Y7=δφ)を、その位相差δφとして出力する。
【0085】
このように演算周期をサンプリング時間と同期させることによって、位相計測時のリアルタイム性をあげることができる。
また、一対の振動速度信号(sinθ,sin(θ+δφ))は、どちらも同じ処理を行い位相計算されるため演算誤差がほとんど無く、正確な位相計算を行うことができる。
【実施例2】
【0086】
以下、本発明を実施するための形態の実施例2について図14,図15を用いて説明する。
図14は図5に図示の信号処理装置の具体的構成図の動作フローチャートを示す図、図15は図5に図示の信号処理装置の周波数計測器のブロック図である。
【0087】
図14には、図5に図示の信号処理装置100に用いられる図1に図示の振動速度信号演算器80における位相差計測演算の直行周波数変調および位相計測におけるフローチャートが示されている。
図14において、ステップ200では、図1に図示の振動速度信号演算器80のパラメータを初期化する。このステップ200において振動速度信号演算器80のパラメータの初期化が行われると、ステップ210において、2つのセンサ(レフトピックオフ7,ライトピックオフ8)からの位相/及び速度信号をA/Dコンバータ31、A/Dコンバータ35によって任意のサンプリング周期でサンプリングし、このサンプリングしたデータからsin波形、cos波形を生成する。
【0088】
このステップ210においてsin波形、cos波形を生成すると、ステップ220において、周波数計測器120でサンプリングしたデータの周波数を計測し、その計測周波数を基にN値を決定する。
このステップ220においてN値を決定すると、ステップ230において、計測した周波数を設定した目標分周値Nで除算し、直交周波数変調後の周波数を決定する。
このステップ230において直交周波数変調後の周波数を決定すると、ステップ240において、参照信号発信器140よりsinの参照信号波形、cosの参照信号波形を生成し、参照波形を用いて直交周波数変調器110,130において直交周波数変調を行う。この結果、周波数変調を行った信号は入力周波数の1/Nの値となる。
【0089】
このステップ240において直交周波数変調を行うと、ステップ250において、直交周波数変調器110,130は、位相/及び速度信号をA/Dコンバータ31、A/Dコンバータ35によって任意のサンプリング周期でサンプリングした信号を入力周波数の1/Nの周波数のsin波形、cos波形を参照波形によって直交周波数変調して生成したsin信号、cos信号を位相差計測器150に送る。
このステップ250においてsin信号、cos信号を位相差計測器150に送ると、ステップ260において、位相差計測器150は、直交周波数変調器110,130から出力される周波数変調された1/Nの周波数の位相/及び速度信号のsin信号、cos信号を用いて位相差を計算する。そして、この周波数変換された位相/及び速度信号を用いて位相計測を行う。
【0090】
(1)周波数計測器
周波数の計測方法としては、本実施の形態においては、PLL(PLL; Phase-locked loop 位相同期回路)の原理を用いた方法を用いている。このPLLは、入力される交流信号と周波数が等しく、かつ位相が同期した信号を、フィードバック制御により別の発振器から出力する電子回路である。
このようにPLLは、もともと位相を同期するための回路で、入力信号に対して位相の同期した信号を作ることができるようになっている。
このPLLは、外部から入力された基準信号と、ループ内の発振器からの出力との位相差が一定になるよう、ループ内発振器にフィードバック制御をかけて発振させる発振回路で、演算器で構成することが比較的簡単で、さらに高速で演算することが可能である。
【0091】
周波数計測器120は、図15に示す如く構成されている。
すなわち、A/Dコンバータ31には、掛け算器121が接続されている。このA/Dコンバータ31からは、加振器6によって測定チューブ2,3を交番駆動したときに一対の測定チューブ2,3の左側に生じるコリオリの力に比例した位相差及び/又は振動周波数を有する振動速度の検出信号(出口側速度信号)をレフトピックオフ7で検出し、ローパスフィルタ30に入力され、低い周波数の左速度信号(出口側速度信号)のみが取り出され、デジタル信号に変換された左速度信号(出口側速度信号)sinθが出力されている。
そして、この掛け算器121は、A/Dコンバータ31によってデジタル信号に変換された左速度信号(出口側速度信号)sinθと、周波数計測用発信器123から出力される出力信号cosδの位相を比較し、ローパスフィルタ122に出力するものである。
【0092】
したがって、掛け算器121の出力端子には、ローパスフィルタ122が接続されている。このローパスフィルタ122は、掛け算器121から出力される出力信号を周波数フィルタを通して、低い周波数の信号のみ取り出すものである。
したがって、掛け算器121では左速度信号sinθと周波数計測用発信器出力cosδの積により、θとδの和及び差信号が生成されるが、ここでは、掛け算器121から出力される出力信号の中で差の成分のみを取り出している。
【0093】
また、ローパスフィルタ122には、周波数計測用発信器123が接続されている。この周波数計測用発信器123は、ローパスフィルタ122から出力される低い周波数の信号を基に位相データδを生成するものである。
そして、この周波数計測用発信器123においては、掛け算器121に出力信号cosδを出力し、この掛け算器121において、A/Dコンバータ31においてデジタル値に変換された入力データ(sinθ)の位相と、出力信号cosδの位相とが比較され、その差信号と和信号としてローパスフィルタ122から出力され、このローパスフィルタ122によって濾波出力される差の成分のみの出力データV(周波数演算関数V)が0になるように帰還ループが形成される。
【0094】
このような構成を数式的に表現すると、図15に図示の周波数計測器120のように入力信号をsinθ、周波数計測用発信器123の出力信号をcosδとおき、その2つの波形を掛け算器121において掛け算すると、
〔式3〕

となる。
【0095】
この掛け算値(sinθ・cosδ)をローパスフィルタ122に掛けると、このローパスフィルタ122によって高い周波数成分を除去され、ローパスフィルタ122からの出力される周波数演算関数Vは、
〔式4〕
V=sin(θ−δ) ………………(4)
となる。
この式(4)における(θ−δ)の値が十分小さい値(V≒0)のときは、周波数演算関数Vは、
〔式5〕
V=θ−δ≒0 ………………(5)
と近似することができる。
【0096】
ここで、周波数演算関数Vが0になるように、周波数計測用発信器123の出力信号の出力波形をコントロールすることによって、式(5)の位相θを求めることができる。
このような方法によって、計測サンプリング周期をTaとしたとき求めた周波数変換前の位相θを、次の式(6)、式(7)、式(8)を用いて演算することによって周波数fを求めることができる。
【0097】
〔式6〕

ΔTは時間変化をあらわし演算周期(サンプリングレート)と等しくなる。
よって位相θは、
〔式7〕
θ=2・π・f・Ta …………………(7)
但)Ta:時間変化(サンプリング周期)(sec)
f:入力周波数(Hz)
θ:位相変化(rad)
〔式8〕

このような計算を周波数計測器120において行うことによって、高速な周波数計測を行うことができる。
【0098】
(2)直交周波数変調器
図5において直交周波数変調器110,130は、それぞれ同じ構成となっており、各々入力された2つの信号の周波数差を求め出力し、さらにその信号に直交した信号を同時に生成し出力するものである。
すなわち、加振器6によって振動したときに測定チューブ2,3の左側に生じる振動速度の検出信号(出口速度信号)をレフトピックオフ7が検出し、このレフトピックオフ7が検出した振動速度の検出信号(出口側速度信号)は、ローパスフィルタ30に入力される。
【0099】
このローパスフィルタ30においては、左速度センサ7から出力される左速度信号(出口側速度信号)のうち、低い周波数の左速度信号(出口側速度信号)のみのアナログ信号を取り出し、A/Dコンバータ31によってデジタル信号に変換して直交周波数変調器110に入力される。
直交周波数変調器110においては、直交周波数変調器110に入力されるA/Dコンバータ31から出力される左速度センサ7で検出される左速度信号(出口側速度信号)と、周波数計測器120から出力される周波数計測値に基づいて、発信器140において発信出力される所定の周波数信号との周波数差を求めて、この周波数信号に直交した信号を同時に生成し出力する。
【0100】
また、加振器6によって測定チューブ2,3を振動したときに、測定チューブ2,3の右側に生じる振動速度の検出信号(入口側速度信号)をライトピックオフ8が検出し、このライトピックオフ8が検出した振動速度の検出信号(入口側速度信号)は、ローパスフィルタ34に入力される。
このローパスフィルタ34においては、右速度センサ7から出力される右速度信号(入口側速度信号)のうち、低い周波数の右速度信号(入口側速度信号)のみのアナログ信号を取り出し、A/Dコンバータ35によってデジタル信号に変換して直交周波数変調器130に入力される。
直交周波数変調器130においては、直交周波数変調器130に入力されるA/Dコンバータ35から出力される右速度センサ8で検出される右速度信号(入口側速度信号)と、周波数計測器120から出力される周波数計測値に基づいて、発信器140において発信出力される所定の周波数信号との周波数差を求めて、この周波数信号に直交した信号を同時に生成し出力する。
【0101】
振動速度の検出信号を検出する振動速度センサ(レフトピックオフ7,ライトピックオフ8)からの出力信号(左速度信号LPO,右速度信号RPO)と、直交周波数変調器(具体的には、直交周波数変調器110,130)に入力される発信器140からの出力される信号のそれぞれを、
〔式9〕
振動速度センサ信号: sin(θ)
発信器の出力信号 : cos(θ) ……………………(9)
とおく。
【0102】
すると、直交周波数変調器110,130においては、振動速度センサ(レフトピックオフ7,ライトピックオフ8)からの出力信号(左速度信号LPO,右速度信号RPO)と、直交周波数変調器(具体的には、直交周波数変調器110,130)に入力される発信器140からのそれぞれについて、式10、式11により、90°シフト信号が得られる。
〔式10〕
センサ信号 : sin(θ)
センサ信号90°シフト信号: cos(θ) …………………(10)
〔式11〕
発信器の出力信号 : sin(θ
発信器90°シフト信号: cos(θ) …………………(11)
【0103】
さらに、式(10),式(11)の各信号から周波数変換した信号と、周波数変換後の90゜シフト信号をより周波数差、つまり(θ―θ)成分が算出される。
〔式12〕

〔式13〕

したがって、周波数変調器110,130においては、A/Dコンバータ31,35からの入力信号周波数と、発信器140からの出力信号周波数との周波数差のIQ信号を生成し、各々の直交変調出力より送出される。
【0104】
(3)発信器
発信器140は、周波数計測器120の計測結果θに基づいて発信器140の周波数を制御する。
すなわち、発信器140は、加振器6によって測定チューブ2,3を振動したときにレフトピックオフ7によって検出され周波数変調器110に入力される測定チューブ2,3の左側に生じる振動速度の検出信号(出口側速度信号)の周波数θに比して直交変調器110の出力周波数が1/Nになるように発信器140出力cosθxnを確定させる。
この周波数変調器110と周波数変調器130とが同じく構成されているため、周波数変調器110から出力される周波数同様、周波数変調器130から出力される周波数は、加振器6によって測定チューブ2,3を振動したときにライトピックオフ8によって検出され周波数変調器130に入力される測定チューブ2,3の右側に生じる振動速度の検出信号(入口側速度信号)の周波数θに比して直交変調器130の出力周波数が1/Nとなる。
【0105】
この周波数変調器110と周波数変調器130は、式(12),式(13)に基づきそれぞれの周波数変調器に入力された2つの周波数の差を求めるように構成され、かつ左速度信号、右速度信号周波数に対して1/Nとなる条件を備えて次式(式14)が成り立つ。
〔式14〕

前述の如く発信器140出力cosθの確定にてθをコントロールすればよいことになる。
直交周波数変調器110,130の出力は、入力信号の1/Nになり、さらにレフトピックオフ7とライトピックオフ8のそれぞれの直交周波数変調器110,130の出力結果は、
〔式15〕

〔式16〕

と表される。
【0106】
コリオリ式流量計1の左速度センサ7の駆動周波数と、右速度センサ8の駆動周波数は、高いものでも1KHzである。したがって、いま、仮に、Nの値を32とした場合、直交周波数変調器110,130において変調出力される周波数は、30Hz程度になり、非常に低い周波数で、かつ狭い帯域のフィルタを用意するだけで良いことになる。
【0107】
式(15),式(16)においてN値は上記の如く流量計のタイプにより異なることになる。ここでNの取り扱いについての一例を以下に述べる。
センサの駆動周波数を50Hz〜1600Hzとし、変換器のフィルタ周波数帯域を10Hz〜40Hzとしたとき、以下の表のように決定することができる。
なお、N値とフィルタ帯域の設定条件として、直交変調後の周波数が50Hz〜60Hz(商用周波数)帯域と重ならないようにすることも重要である。
【0108】
駆動周波数 N値(分周値) 直交変調後の周波数
50Hz〜200Hz 5 10Hz〜40Hz
100Hz〜400Hz 10 10Hz〜40Hz
200Hz〜800Hz 20 10Hz〜40Hz
400Hz〜1600Hz 40 10Hz〜40Hz
【0109】
上記のようにN値を選択することによって位相計測時に用いるフィルタリング帯域を同一化し、駆動周波数(入力周波数)に影響されないフィルタリングが行える。
ただし、ここで述べたN値の取り扱いは具体例として挙げたものであり、実際のN値の取り扱いは、適応させるセンサや変換器で用いるフィルタの帯域などの設計条件によって異なることはいうまでもない。
【0110】
(4)位相計測器
直交周波数変調器の出力結果を以下に関係式に代入し算出すると、
〔式17〕

となる。
【0111】
ここで
〔式18〕

とすると、
〔式19〕

となり、位相差を求めることができる。
【0112】
また、別の計算方法では、
〔式20〕

及び、
〔式21〕

より、それぞれのアークタンジェントを計算し、その差をとることにより位相差を計算することができる。
【0113】
《周波数変換を用いた位相計測方法の特長》
本発明に係る位相計測システムの特徴は、直交周波数変調器(具体的には、直交周波数変調器110,130)に入力される振動速度の検出信号を検出する振動速度センサ(レフトピックオフ7,ライトピックオフ8)からの出力信号(左速度信号LPO,右速度信号RPO)の周波数とは無関係なサンプリング周期で振動速度センサ(レフトピックオフ7,ライトピックオフ8)からの出力信号(左速度信号LPO,右速度信号RPO)をサンプリングできるので、非常に構成が簡単で、フィルタのテーブルを大幅に減らすことができ、さらに誤差が少ない演算を可能とすることができる。
また、入力周波数による位相計測の帯域制限が殆ど無いため、さまざまな駆動周波数のセンサと結合することが可能であり、本システムにて多種に渉るタイプに適用させることができる利点を有する。更には入力周波数によって演算精度が影響されないため、常に高精度な位相計測が可能となる。
【実施例3】
【0114】
測定用の流管を構成する少なくとも一本、若しくは一対のフローチューブからなる測定チューブ2,3を駆動装置によって加振器6を作動させる。この加振器によって、少なくとも一本、若しくは一対のフローチューブからなる測定チューブ2,3を交番駆動して、このフローチューブを振動させる。
そして、フローチューブ2,3の左右に設けられるレフトピックオフ(LPO)7とライトピックオフ(RPO)8とによって構成される振動検出センサである一対の速度センサ若しくは加速度センサによって、少なくとも一本、若しくは一対のフローチューブからなる測定チューブ2,3に作用するコリオリの力に比例した位相差及び/又は振動周波数を検出することにより、被計測流体の質量流量及び/又は密度を得るコリオリ流量計が構成されている。
【0115】
このコリオリ流量計に、速度センサ若しくは加速度センサから検出される一対のフローチューブからなる測定チューブ2,3に作用するコリオリの力に比例した位相差及び/又は振動周波数の2つのアナログ入力信号のそれぞれをデジタル信号に変換して得る2つの流量信号の内、少なくとも一方のセンサ(例えば、レフトピックオフ7)から出力され、A/D変換器31を介してデジタル変換されたデジタル入力信号(出口側速度信号)の入力信号周波数に基づいて周波数を計測する周波数計測器120を設ける。
また、この周波数計測器120から出力されるデジタル周波数信号のθ(1−1/N)の周波数信号を生成発信して、出力する発信器140を設ける。
【0116】
さらに、一対の振動検出センサ(レフトピックオフ7,ライトピックオフ8)のそれぞれの速度センサ(例えば、レフトピックオフ7から入力される入力信号(出口側速度信号))を2つのA/Dコンバータ31,35によってそれぞれデジタル信号に変換する。そして、この入力信号周波数θを、発信器140から出力される出力周波数θXnを用いて、加算(又は減算)して、それぞれの周波数を直交変調する一対の直交周波数変換器110,130を設ける。
【0117】
またさらに、一対の直交周波数変換器110,130から一定の周波数信号に変換された周波数信号sinθ,sin(θ+δφ)の位相差の計測を行う位相差計測部150を設ける。
そして、直交変調器110から出力されてくるつまりは、A/Dコンバータ31から入力される左速度信号(出口側速度信号)の入力周波数の1/Nの出力周波数信号と、直交変調器130から出力されてくるつまりはA/Dコンバータ35から入力される右速度信号(入口側速度信号)の入力周波数の1/Nの出力周波数信号とを用いて位相差を得る信号処理装置100を設けてコリオリ流量計を構成する。
【符号の説明】
【0118】
1………………………コリオリ流量計
2,3…………………測定チューブ
4………………………検出器
5………………………変換器
6………………………加振器
7………………………左速度センサ
8………………………右速度センサ
9………………………温度センサ
10……………………駆動制御部
11……………………位相計測部
12……………………温度計測部
30,34……………ローパスフィルタ
31,35……………A/Dコンバータ
70……………………振動速度センサ
80……………………振動速度信号演算器
85……………………直交変調器
90……………………発信器
95……………………位相計測器
100…………………信号処理装置
110…………………直交変調器
120…………………周波数計測器
121…………………掛け算器
122…………………ローパスフィルタ
123…………………周波数計測用発信器
130…………………直交変調器
140…………………発信器
150…………………位相差計測器
160…………………クロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定用の流管を構成する少なくとも一本、又は一対のフローチューブを駆動装置によって加振器を作動させ前記フローチューブを交番駆動し、該フローチューブを振動させて、前記フローチューブの左右に設けられる一対の振動検出センサである速度センサ若しくは加速度センサによって前記フローチューブに作用するコリオリの力に比例した位相差及び/又は振動周波数を検出することにより、被計測流体の質量流量及び/又は密度を得るコリオリ流量計において,
前記一対の振動検出センサのそれぞれから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する第1のステップと,
前記第1のステップにおいて変換された前記一対の振動検出センサに対応する2つのデジタル信号のそれぞれを周波数変換する第2のステップと,
前記第1のステップにおいて変換された前記一対の振動検出センサに対応する2つのデジタル信号のいずれかのデジタル信号に基づいて周波数を計測する第3のステップと,
前記第3のステップにおいて計測されるデジタル周波数信号の1/Nの周波数信号を生成する第4のステップとを備え,
前記第4のステップにおいて生成されたデジタル信号の1/Nの周波数信号を用いて前記一対の振動検出センサの検出信号の位相差を検出できるようにしたことを特徴とする信号処理方法。
【請求項2】
前記周波数計測器から出力されるデジタル周波数信号θの1/Nの周波数信号を生成する過程において、θ/N=θ―θxとなるような周波数θxをもとめ周波数変換を行う請求項1に記載の信号処理方法。
【請求項3】
前記周波数計測器から出力されるデジタル周波数信号θの1/Nの周波数信号が50Hz未満となるようにNを決定する請求項1に記載の信号処理方法。
【請求項4】
測定用の流管を構成する少なくとも一本、又は一対のフローチューブを駆動装置によって加振器を作動させ前記フローチューブを交番駆動し、該フローチューブを振動させて、前記フローチューブの左右に設けられる一対の振動検出センサである速度センサ若しくは加速度センサによって前記フローチューブに作用するコリオリの力に比例した位相差及び/又は振動周波数を検出することにより、被計測流体の質量流量及び/又は密度を得るコリオリ流量計において,
前記一対の振動検出センサのそれぞれから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するためのA/D変換器と,
前記A/D変換器から出力される前記一対の振動検出センサに対応する2つのデジタル信号のそれぞれのデジタル信号を周波数変換する一対の直交周波数変換器と,
前記A/D変換器から出力される前記一対の振動検出センサに対応する2つのデジタル信号のいずれかのデジタル信号に基づいて周波数を計測する周波数計測器と,
前記周波数計測器から出力されるデジタル周波数信号のθ(1−1/N)の周波数信号を生成する発信器とを備え,
前記直交周波数変換器によって生成された信号を用いて位相差を得るようにしたことを特徴とする信号処理装置。
【請求項5】
前記A/D変換器から出力される前記一対の振動検出センサである速度センサ若しくは加速度センサに対応する2つのデジタル信号のいずれかのデジタル信号に基づいて周波数を計測する周波数計測器において、PLL(Phase Locked Loop)を用いて周波数計測を行う請求項4に記載の信号処理装置。
【請求項6】
測定用の流管を構成する少なくとも一本、又は一対のフローチューブを駆動装置によって加振器を作動させ前記フローチューブを交番駆動し該フローチューブを振動させて、振動検出センサによって前記フローチューブに作用するコリオリの力に比例した位相差及び/又は振動周波数を検出することにより、被計測流体の質量流量及び/又は密度を得るコリオリ流量計において,
前記一対の振動検出センサのそれぞれから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するためのA/D変換器と,
前記A/D変換器から出力される前記一対の振動検出センサに対応する2つのデジタル信号のそれぞれのデジタル信号を周波数変換する一対の直交周波数変換器と,
前記A/D変換器から出力される前記一対の振動検出センサに対応する2つのデジタル信号のいずれかのデジタル信号に基づいて周波数を計測する周波数計測器と,
前記周波数計測器から出力されるデジタル周波数信号のθ(1−1/N)の周波数信号を生成する発信器とを備え,
前記直交周波数変換器によって生成された信号を用いて位相差を得る信号処理装置を設けたことを特徴とするコリオリ流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−181306(P2010−181306A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25715(P2009−25715)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【特許番号】特許第4436882号(P4436882)
【特許公報発行日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000103574)株式会社オーバル (82)
【Fターム(参考)】