説明

修飾されたペプチド医薬品

【課題】ペプチドないしタンパク質のクリアランスの改善。
【解決手段】ペプチドないしタンパク質のC末端に部分CTP単位を付加するか、又は、ペプチドないしタンパク質の重要でない領域に完全CTP単位又は部分CTP単位を挿入する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、1991年10月4日提出の米国出願07/771,262の一部継続出願である。また、1989年2月21日提出の米国出願07/313,646の一部継続出願である、1990年6月1日提出の米国出願番号07/532,254の一部継続出願でもある。上記出願の開示は、本願中に引用をもって組み込まれている。
【政府の援助に対する確認】
【0002】
本発明は、国立衛生研究所により与えられたNIH契約番号NO1−HD−9−2922のもと、政府助成金によってなされたものである。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【技術分野】
【0003】
本発明は、生理活性のあるペプチド及びタンパク質医薬品の投与の分野に関する。更に詳しくは、本発明は、ヒトのコリオゴナドトロピン(絨毛性性腺刺激ホルモン)のカルボキシ末端側のペプチド又はそのフラグメントに相当する延長配列を含む修飾されたペプチド及びタンパク質の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
1990年9月7日公開のPCT出願WO90/09800では、多くの生殖ホルモンの修飾型について記載されている。同PCT出願に記載のように、ホルモン、サイトカイン、ホルモン調節因子等の任意の生理活性タンパク質は、そのタンパク質のカルボキシ末端に延長したアミノ酸を与えることによって、該タンパク質のクリアランスの性質が改良されるように修飾することができ、前記延長は、ヒトのコリオゴナドトロピン又はその変異体のカルボキシ末端のことである。本願で記載のように、カルボキシ末端ペプチド(CTP)に必要とされる部位は、ヒトのコリオゴナドトロピンのβサブユニットの112〜118番目の任意の1つの位置から145番目までである。PCT出願においてさらに説明されているように、CTP延長の変異体は、クリアランスの性質を変えることができるCTPの能力が破壊されることがないように、保存的なアミノ酸の置換によって得られる。112〜118番目から145番目までにわたる配列より短いフラグメントについては、特に開示されていないし、C−末端より他のところからの延長についても開示されていない。
【0005】
特にFSHのCTP延長したβサブユニットについての結果は、本願出願人による2つの論文にもまた記載されている。:LaPolt, P.S. et al.;Endocrinology(1992)131:2514-2520 及び Fares, F.A. et al.;Proc Natl Acad Sci USA(1992)89:4304-4308。両論文は、本願中に引用を持って組み込まれている。
【0006】
CTPが修飾されていないペプチドのC−末端の代わりに、N−末端につけられるか、又は両端につけられるか、もしくはペプチド内の任意の重要でない領域に置かれたときは、望まれるクリアランスの性質を変更することができることが分かり、しかしながら少なくとも1つのO−グリコシレーション部位を含んでいるはずのCTPの一部分又はそのフラグメントだけを用いても同一効果を与えるであろうことも分かってきた。望まれる効果は直列につなげられた延長が用いられたときに保持されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、生理活性を持つタンパク質及びペプチドの修飾型を提供し、該修飾型は、修飾されていないペプチド又はタンパク質よりもクリアランスの性質をより望ましいものに変える。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この修飾は、N−末端又はC−末端又は両端を含めて、ペプチド又はタンパク質の重要でない領域中に追加のアミノ酸配列を与えることを含むものであって、延長は少なくとも1つのCTP由来の配列を含む。CTP由来の配列は、天然型のアミノ酸配列112〜118番目の1つから145番目まで、又は本願中で定義しているようなその変異体であり、ペプチドのカルボキシ末端だけが延長されているときはこの配列のフラグメントのみ、もしくは該配列の直列につなげられた型でなければならない。
【0009】
従って、一つの視点では、本発明は、修飾されたタンパク質又はペプチド医薬品に関するものであって、該修飾は、タンパク質又はペプチドのアミノ酸配列に延長又は挿入することを含み、前記挿入又は延長は本質的にヒトのコリオゴナドトロピンβサブユニット又はその変異体のカルボキシ末端ペプチド(CTP)、又は少なくとも1つのO−グリコシレーション部位を含むその一部分に相当する少なくとも一つの配列からなる。前記一部分とは、前記CTPの118番目から145番目までのアミノ酸配列よりも少なくとも1アミノ酸少ないようなアミノ酸配列を含む。もし、生理活性ペプチド又はタンパク質のC−末端だけが延長されるとしたら、前記延長は、完全なCTP単位というよりむしろ本質的に前記一部分から成っていなければならない。
【0010】
他の視点では、本発明は、本発明に係る修飾されたタンパク質及びペプチドを産生するための組換体の材料及び方法に関し、またそれらを含む医薬品組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ヒトのコリオゴナドトロピン(hCG)は、ろ胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、及び甲状腺刺激ホルモン(TSH)をも含むファミリーの中の少なくとも4つの「生殖」(reproductive)ホルモンのうちの1つである。これらのホルモンは全て、与えられた種において、グループ内でアミノ酸配列が同一であるαサブユニット及びファミリーのメンバーによってアミノ酸配列が異なるβサブユニットを含む。hCGのβサブユニットは、該サブユニットが本願中でカルボキシ末端部分(CTP)として称されているC−末端におよそ34個の追加のアミノ酸を含むという点で、もう一方のβサブユニットよりも実質上大きく、このCTPが、他のゴナドトロピンと比較して、hCGの血清での半減期を比較的長くしている原因であると考えられている。(Matzuk, M. et al., Endocrinol(1989)126:376)。天然型のホルモンでは、該CTP延長は、4つのムチン様O−結合型オリゴ糖を含む。
【0012】
本願中で使用されているように、ヘテロダイマー型と同様に、ヒトのアルファサブユニット、及びヒトのFSH、LH、TSH及びCGベータサブユニットは、一般的にそれらの従来通りの定義のものであり、それ自体本分野で既知のアミノ酸配列を持つタンパク質、又はその対立遺伝子変異体、グリコシレーションの表現パターンにかかわらず天然型のタンパク質の活性を保持するように意図的に構成されたその突然変異タンパク質、又は天然型と、少なくとも90%のホモロジー、好ましくは95%のホモロジーを持つその突然変異型のことである。
【0013】
これらのペプチドの「天然」型は、ヒト組織より単離されたアミノ酸配列をもつものであり、それ自体既知の配列を持ち、又はその対立遺伝子変異体(allelic variants)を有している。
【0014】
これらのタンパク質の「突然変異タンパク質」型は、例えば部位特異的突然変異誘発又は他の組換操作により産生された、又は合成により調製されたアミノ酸配列の意図的変更ないし置換(alterations)がなされたものである。これらの変更ないし置換により、そのサブユニットの生理活性は保持されたままであり、及び/又はそのサブユニットは天然型と少なくとも90%ホモロジー、好ましくは95%ホモロジーを持つようなアミノ酸配列となるようにする。
【0015】
グリコシレーションのパターンが、質においても量においても両方で活性にかなりの影響を与えることが認められているが、便宜上、FSH、LH、TSH、及びCGベータサブユニットという用語は、「アルファサブユニット」と同様に、そのペプチドに特徴的なアミノ酸配列のことを意味する。ベータ鎖のみを言及するときは、例えば、それについては、FSHベータという用語にする。ヘテロダイマーに言及するときは、単純に「FSH]という用語が使用される。グリコシレーションパターンが、例えば、組換発現宿主又はグリコシレーション部位の変更によって、どのような影響を受けるかは脈絡(context)から明らかであろう。特定のグリコシレーションパターンを持つ糖タンパク質の型は、その旨記載される。
【0016】
本願中で使用されているように、「ペプチド」及び「タンパク質」は、それらの間での長さの区別は任意であるので、お互いに交換して使用される。
【0017】
ペプチド又はタンパク質の「重要でない(noncritical)」領域は、生理活性に必要とされない該分子の領域のことである。一般に、これらの領域は、結合部位、前駆体切断部位、及び触媒部位から除かれたところである。
【0018】
本願中で使用されているように、「CTP」単位は、C−末端側の112〜118番目の1つから145番目までにわたるヒトのコリオゴナドトロピンβサブユニットのカルボキシ末端側に見いだされるアミノ酸配列、又はその一部である。従って、それぞれ「完全な(complete)」CTP単位はCTPのN−末端に依存して、28〜34個のアミノ酸を含む。118〜145番目までの天然型の配列が図10に示されている。
【0019】
「部分(partial)」CTP単位は、112〜118番目の1つから145番目までに含まれるアミノ酸配列であるが、最も短い可能な「完全な」CTP単位(つまり、118〜145番目まで)から少なくとも1アミノ酸が欠失したアミノ酸配列である。本発明に係る「部分」CTP単位は少なくとも1つのO−グリコシレーション部位を含んでいなければならない。CTP単位は、4つの前記部位を含んでおり、それは、121番目(部位1)、127番目(部位2)、132番目(部位3)、138番目(部位4)のセリン残基である。本発明に有用なCTPの部分型は、天然のCTP配列中に現れる順に並べられた1以上の前記部位を含むであろう。従って、本発明に有用な「部分」型CTPは、全ての4つのグリコシレーション部位を含んでいても良く、或いは部位1、2、及び3;部位1、2、及び4;部位1、3、及び4;部位2、3、及び4;又は単に部位1及び2;1及び3;1及び4;2及び3;2及び4;又は3及び4;又は単に、部位1、2、3、又は4の1つだけを含んでいても良い。
【0020】
「直列」(tandem)延長は、挿入又は延長が少なくとも2つの「CTP単位」を含んでいることを意味する。各CTP単位は、完全なもの又はフラグメント、及び天然型又は変異体であっても良い。直列の延長又は挿入の中のCTP単位は全て同一であっても良い、もしくはお互いに異なっていても良い。従って、例えば、直列の延長又は挿入は、一般的に、部分−完全;部分−部分;部分−完全−部分;完全−完全−部分等であっても良く、前記の部分又は完全CTP単位はそれぞれ独立して変異体もしくは天然型配列であっても良い。変異体の性質については、以下で詳説する。
【0021】
[変異体]
「CTP単位」は、正確に天然型のCTP配列に対応するものであっても良く、又は、該配列中に含まれる1〜5アミノ酸が、その位置で天然のアミノ酸の保存的アナログにより置換されていて、累積的に行われた前記置換によりCTP単位の性質を与える安定性においては実質上変化を生じないような変異体であっても良い。「保存的アナログ」は、従来の意味通り、置換された残基が、置換がなされたアミノ酸と同一の一般的なアミノ酸のカテゴリーに入るようなアナログである。アミノ酸は、本分野で理解されているような、例えば、デイホッフ(Dayhoff, M)らにより、Atlas of Protein Sequences and Structure(1972)5:89-99 の中でそのようなグループに分類されている。一般に、酸性アミノ酸は1つのグループに分類され、塩基性アミノ酸は別のグループに;中性親水性アミノ酸は更に別のグループに分類される、等という具合である。
【0022】
更に詳しくは、アミノ酸残基は、一般に以下のような4つの主要な下位分類(subclass)をすることができる。
【0023】
酸性:残基は、生理的pHではHイオンを失うため、マイナスの電荷を帯び、ペプチドが生理的pHで水性の媒体中にあるとき、残基が含まれているペプチド中でのコンフォメーションにおける表面位置(surface positions)を求めて水溶液により引きつけられる。
【0024】
塩基性:残基は、生理的pHではHイオンと結合するため、プラスの電荷を帯び、ペプチドが生理的pHで水性の媒体中にあるとき、残基が含まれているペプチドの中でのコンフォメーションにおける表面位置を求めて水溶液により引きつけられる。
【0025】
中性/無極性:残基は、生理的pHでは帯電しておらず、ペプチドが水性の媒体中にあるとき、残基が含まれているペプチドのコンフォメーションにおける内側の位置(inner positions)を求めて水溶液から遠ざけられる。これらの残基は、本願中では「疎水性」とも呼ばれる。
【0026】
中性/極性:残基は、生理的pHでは帯電していないが、ペプチドが水性の媒体中にあるとき、残基が含まれているペプチドのコンフォメーションにおける外側の位置(outer positions)を求めて水溶液により引きつけられる。
【0027】
もちろん、個々の残基分子の統計的集まりでは、帯電している分子もあれば、そうでない分子もあり、より大きい又は少ない程度の水性の媒体への引力又は水性の媒体からの斥力があるだろう。「帯電した」の定義に合うように、個々の分子について有意なパーセンテージ(少なくともおよそ25%)が、生理的pHで帯電しているものとする。極性か又は無極性かの分類に必要とされる引力又は斥力の程度は、任意のものである。従って、本発明により特に意図されるアミノ酸は一方もしくはもう一方として分類されている。特に示されていないほとんどのアミノ酸は、既知の性質に基づいて分類することができる。
【0028】
アミノ酸残基は、環状か非環状か、及び芳香族かそうでないか、残基の側鎖置換基について自明の分類法に従って、及び小さいか大きいかにより、更に下位分類がなされる。もし、残基がカルボキシル炭素を含めて、全体で4炭素原子以下しか含んでいないなら、該残基は小さいものと考える。もちろん、小残基は、常に非芳香族である。
【0029】
天然に存在しているタンパク質中のアミノ酸に対して、前記スキームに従った下位分類は以下の通りである。
酸性:アスパラギン酸及びグルタミン酸;
塩基性/非環状:アルギニン、リジン;
塩基性/環状:ヒスチジン;
中性/極性/小:グリシン、セリン、システイン;
中性/無極性/小:アラニン;
中性/極性/大/非芳香族:スレオニン、アスパラギン、グルタミン;
中性/極性/大/芳香族:チロシン;
中性/無極性/大/非芳香族:バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン
中性/無極性/大/芳香族:フェニルアラニン、及びトリプトファン。
【0030】
遺伝子によりコードされる2級アミノ酸プロリンは、専門的には、中性/無極性/大/環状及び非芳香族のグループに含まれるが、ペプチド鎖の2次コンフォメーションに既知の影響を与えるため、特別な場合に当たり、従って、上記定義したグループの中には含められない。
【0031】
もし、本発明に係る修飾されたペプチドが、遺伝子の修飾により構成されるのなら、CTP単位は遺伝子にコードされたアミノ酸置換だけしか含んでいないだろう。しかしながら、もし、CTP単位が、標準的な、例えば、固相ペプチド合成法により合成され、そして、例えば、アクセプターであるペプチド又はタンパク質のC−末端側に、酵素的に結合されたとしたら、アミノイソブチリン酸(Aib)、フェニルグリシン(Phg)等のような遺伝子にコードされないアミノ酸が、それらのアナログ相当物にもまた置換することができる。
【0032】
これらの非コードアミノ酸は、例えば、ベータ−アラニン(beta-Ala)、又は、3-アミノプロピオン酸、4-アミノブチリン酸等の他のオメガ−アミノ酸、ザルコシン(Sar)、オルニチン(Orn)、シトルリン(Cit)、t-ブチルアラニン(t-BuA)、t-ブチルグリシン(t-BuG)、N-メチルイソロイシン(N-MeIle)、及びシクロヘキシルアラニン(Cha)、ノルロイシン(Nle)、システイン酸(Cya)、2-ナフチルアラニン(2-Nal);1,2,3,4,-テトラハイドロイソキノリン-3-カルボン酸(Tic);メルカプトバレリン酸(Mvl);β-2-チエニルアラニン(Thi);及びメチオニンサルフォキシド(MSO)を含む。これらもまた、便利なことに特定のカテゴリーに分類される。
【0033】
上記定義に基づくと、
Sar及びbeta-Ala及びAibは、中性/無極性/小;
t-BuA、t-BuG、N-MeIle、Nle、Mvl及びChaは、中性/無極性/大/非芳香族;
Ornは、塩基性/非環状;
Cyaは、酸性;
Cit、アセチル-Lys、及びMSOは、中性/極性/大/非芳香族;及び
Phg、Nal、Thi、及びTicは、中性/無極性/大/芳香族である。
【0034】
様々なオメガ−アミノ酸は、中性/無極性/小(beta-Ala、つまり、3-アミノプロピオン酸、4-アミノブチリン酸)又は大(他全て)のように、大きさに従って分類される。
【0035】
従って、遺伝子においてコードされているアミノ酸より他のアミノ酸置換もまた本発明の範囲内でペプチド化合物中に含めることができ、それらの構造に従って、この一般的なスキームの中で分類することができる。
【0036】
[CTP単位の好適な態様]
本発明に係るCTP単位に対して使用される表記は以下の通りである。:完全なCTP単位の一部分に対して、本願図11の中で表されているように、該部分に含まれる位置は、その番号によって表される。置換が存在しているときは、置換されたアミノ酸が、その位置を示す上付き文字とともに与えられる。従って、例えば、CTP(120〜143)は、120番目から143番目までにわたるCTP部分に相当する。CTP(120〜130;136〜143)は、天然型の配列の118〜119、131〜135、及び144〜145番目が欠失した融合アミノ酸配列に相当する。CTP(Arg122)は、122番目のリジン残基がアルギニンにより置換された変異体を意味する。CTP(Ile134)は、134番目のロイシンがイソロイシンにより置換された変異体を意味する。CTP(Val128Val142)は、2つの置換、1つは128番目のロイシン、もう1つは142番目のイソロイシンが置換されている変異体を表す。CTP(120〜143;Ile128Ala130)は、2つの置換が起こっているCTP単位の関連部分を表わす。
【0037】
以下に示す式のCTP単位が特に好ましい。
#1 CTP(116-132)
#2 CTP(118-128;130-135)
#3 CTP(117-142)
#4 CTP(116-130)
#5 CTP(116-123;137-145)
#6 CTP(115-133;141-145)
#7 CTP(117-140, Ser123Gln140
#8 CTP(125-143, Ala130
#9 CTP(135-145, Glu139
#10 CTP(131-143, Mvl142Cha143
#11 CTP(118-132)
#12 CTP(118-127)
#13 CTP(118-145)
#14 CTP(115-132)
#15 CTP(115-127)
#16 CTP(115-145)
#17 CTP(112-145)
#18 CTP(112-132)
#19 CTP(112-127)
【0038】
[修飾されたペプチド及びタンパク質]
生物学的に意味のある任意のペプチド又はタンパク質は、本発明の方法に従って修飾をうける。従って、そのβ鎖、インスリン;ヒトの成長ホルモン及び他の種の成長ホルモン;エンケファリン;ACTH;グルカゴン等を含めて、上記の4つのヒトの「生殖」ホルモンのようなペプチドホルモンが、修飾を行う候補の中に含められる。IL−2、IL−3及び過剰な追加のインターロイキンタンパク質のような様々なサイトカイン;様々なインターフェロン;腫瘍壊死因子等と同様に、インスリン様成長因子;表皮成長因子;酸性及び塩基性繊維芽細胞成長因子;血小板由来増殖因子のような様々な成長因子;顆粒球CSF、マクロファージ−CSF等のような様々なコロニー刺激因子が本発明の修飾対象としてもまた有用である。(半減期の非常に短い)tPA、ウロキナーゼ及びトロンビンのような酵素がまた修飾されても良い。黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH);ソマトスタチン;成長ホルモン放出因子(GHRF);及びエンドルフィンのような短いペプチド配列のものもまた本発明の方法を行うための候補である。胞肺界面活性化タンパク質;ナトリウム利尿性因子;接着物質;レセプターペプチド;一般的なレセプター結合リガンド;抗体及びそのフラグメント;のようなさらなるタンパク質薬剤、及び望ましい生物機能を持つ任意の他の有用なペプチド又はタンパク質が、本願中に記載の方法により修飾することができる。
【0039】
CTP単位(unit(s))が挿入されたペプチド又はタンパク質、又はCTP単位(unit(s))が延長として付加されたペプチド又はタンパク質は、生理活性が保持されている限り、もちろん通常生物学的に存在している型由来のものの修飾型でもありうるということは、注目すべきことである。
【0040】
生殖ホルモンのαサブユニットが、本発明に係るCTP単位による修飾にとって特に好ましい候補である。これは、修飾されたαサブユニットと対応するβサブユニットとをカップリングすることにより、生物活性が拡張された、完全セットのホルモン(hormones)が生成されるという利点を持つ。CTP単位又は直列でつなげられた単位はαサブユニットのカルボキシ末端又はアミノ末端のどちらか一方又は両方で融合されても良い。しかしながら、アミノ末端が好ましい。入手できる証拠から、アミノ末端はβサブユニットとのアセンブリーにも関わっておらず、レセプター結合決定因子とも結合していないことが示される。
【0041】
上記のように、CTP単位(unit(s))の挿入又は延長は、望まれる生理活性にとって重要でないようなペプチド又はタンパク質の領域の中で行わなければならない。従って、適当な折りたたみの誘導、レセプターへの結合、触媒活性等にとって重要な領域は避けられるべきである。同様に、タンパク質の3次元コンフォメーションを保証するために重要な領域は、避けられるべきである。重要でない領域の確認は、その候補となる領域を欠失又は修飾し、そして望まれる活性について適当なアッセイを行うことによって、簡単になされる。修飾により活性が失われる領域が重要な(critical)領域である。;変更ないし置換によって同一活性又は類似の活性を有しているような領域は重要でない領域であると考えられる。
【0042】
多くの場合、重要な領域の位置は既知である。例えば、α−サブユニットにとって、33〜59番目はシグナル伝達に必要な部分であると考えられており、カルボキシ末端側の20アミノ酸の範囲がシグナル伝達/レセプター結合に必要とされる。βサブユニットとのアセンブリーに重要な残基には、少なくとも33〜58番目、特に37〜40番目が含まれる。
【0043】
もし、アプローチング又はペプチド候補が充分に研究されていないなら、上記のように、重要でない領域は、望まれる活性について適当なアッセイを行う際にその候補となる領域を欠失又は修飾することによって確かめることができる。一般的なタンパク質にとっての出発点は、NRC末端である。;しかしながら、いくつかの特別の場合では、これらの出発点は、必ずしも成功の結果をもたらすのではない。N−末端及びC−末端自身に加えて、これら末端に近接する領域のところへの挿入もまた合理的な出発点を表す。CTP単位又はその一部の挿入のため、ある少数のアミノ酸が重要でない領域から欠失されても良い。本発明に係る修飾されたタンパク質及びペプチドの好ましい態様には以下のものが含まれる。
CGα(1-3)-CTP#1-(4-92)
CGα(1-3)-CTP#11-(4-92)
CGα(1-3)-CTP#12-(4-92)
CGα(1-92)-CTP#11
CGα(1-92)-CTP#12
CGα(1-3)-CTP#17(4-92)
CGα(1-3)-CTP#18(4-92)
CGα(1-3)-CTP#19(4-92)
FSHβ(1-111)-CTP#11
FSHβ(1-111)-CTP#12
FSHβ(1-111)-CTP#11-CTP#12
proinsulin(1-3)-CTP#5-CTP#6(4-end)
FSHβ(1-111)-CTP#13-CTP#13
TSHβ(1-110)-CTP#11
TSHβ(1-110)-CTP#12
LHβ(1-114)-CTP#14
LHβ(1-114)-CTP#15
LHβ(1-114)-CTP#16
LHβ(1-121)-CTP#11
LHβ(1-121)-CTP#12
LHβ(1-121)-CTP#13
tPA(1-2)-CTP#14(3-end)
tPA(1-2)-CTP#15(3-end)
tPA(1-2)-CTP#16(3-end)
hGH(1-4)-CTP#11(5-end)
hGH(1-4)-CTP#12(5-end)
hGH(1-4)-CTP#13(5-end)
IL-3(1-end)-CTP#14
IL-3(1-end)-CTP#15
IL-3(1-end)-CTP#16
【0044】
[カップルされた型]
本発明に係る修飾されたペプチド及びタンパク質は、一般にアミノ酸配列を誘導すると理解されている方法、例えばリン酸化、グリコシレーション、正常にグリコシレーションされた型の脱グリコシレーション、アミノ酸側鎖の修飾(例えば、プロリンからハイドロキシプロリンへの変換)及び一般的に起こることが分かっているそれらの翻訳後修飾という事象に類似した同様の修飾のような方法に従って、更にコンジュゲート又は誘導されても良い。
【0045】
一般的に本分野で既知のように、本発明に係る修飾されたペプチド及びタンパク質は、望まれる適用に応じてラベル、薬剤、標的剤、担体、固形支持体等にカップルされても良い。修飾された生物製剤のラベルされた型は、それらの代謝過程における運命を追跡するのに使用されても良い。;本目的に適当なラベルとしては、特に、ヨウ素131、テクネチウム99、インジウム111等のラジオアイソトープラベルが含まれる。該ラベルは、アッセイ系において修飾されたタンパク質又はペプチドの検出媒体としてもまた使用されて良い。;前記の場合には、酵素ラベル、蛍光ラベル、発色性ラベル等と同様にラジオアイソトープがまた使用されても良い。もし、ペプチド又はタンパク質がそれ自身抗体又はレセプターリガンドのような標的剤であるなら、そのようなラベルの使用は特に有用である。
【0046】
逆に、もし、修飾されたペプチド又はタンパク質が主として標的となるリガンドであり、代謝変更活性を比較的有しないなら、本発明に係る修飾された化合物は、抗炎症剤、抗生物質、毒素等のような適当な薬剤にコンジュゲートされても良い。本発明に係る修飾された化合物は、新しい修飾型と特異的に免疫反応性を示す抗体の調製の際、免疫原性を促進するような担体にまたカップルされても良い。本目的に適当な担体には、キーホールリムペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)及びジフテリアトキソイド等が含まれる。2価リンカーの使用を含めて、本発明に係る修飾されたペプチドを担体に結合させるための標準的なカップリング技術が使用される。
【0047】
同様の結合技術が、他とともに、本発明に係る修飾されたペプチド及びタンパク質を固形支持体にカップリングするために使用されても良い。カップルされると、これらの修飾されたペプチド及びタンパク質は、特定の反応を示すような望まれる成分の分離のためのアフィニティー試薬として使用することができる。
【0048】
[調製方法]
本発明の修飾されたペプチド及びタンパク質生理活性化合物を構成する方法は、本分野では良く知られている。前記のように、もし、遺伝子によりコードされるアミノ酸だけが含まれるとすれば、現在最も実際的なアプローチは、望まれるペプチドをコードしているDNAを修飾することによって、組換的にこれらの物質を合成することである。部位特異的ムタゲネシス(site-directed mutagenesis)、追加の配列の結合、及び適当な発現系の構成のための技術は、全てこれまで本分野では良く知られている。望まれるペプチド又はタンパク質をコードするDNAに付加されるべきCTP単位(unit(s))をコードするDNAは、標準的な固相法の技術を用いて、好ましくは、リゲーションが簡単になるように制限部位を含むように、最も便利なように合成的に構成され、そして候補ペプチド又はタンパク質をコードする配列にカップルされる。もし、候補ペプチド又はタンパク質をコードするDNAが、すでに包含されたコード配列の転写及び翻訳のための適当な制御要素を含む発現系の一部でないなら、修飾されたDNAコード配列がこのような特徴を提供してくれる。良く知られているように、発現系はバクテリアのような原核生物宿主、及び酵母、植物細胞、昆虫細胞、ほ乳類細胞、トリ細胞等の真核生物宿主を含めた、広範囲の多様な宿主と適合性のあるものが現在入手することができる。
【0049】
修飾されていないペプチドがα−サブユニットを含めた生殖ホルモンであるとき、該α−サブユニットが修飾されたものであろうが、修飾されていないものであろうが、その適当なαサブユニットの組換体の産生は、好ましくは「ミニ遺伝子」構成を用いて行われる。
【0050】
本願中で使用されているように、アルファサブユニット「ミニ遺伝子」は、マズック(Matzuk, M.M.)らにより、Mol Endocrinol(1988)2:95-100の中で開示されている遺伝子の構成を表しており、これにはpM2/CG alpha 又はpM2/alphaの構成について記載されている。この「ミニ遺伝子」の特徴は、エクソンIIIとエクソンIVとの間のイントロン配列だけが残っていて、全ての上流にあるイントロンは欠失している。記載されている特定の構成では、エクソンII由来のN−末端コード配列及びエクソンIIIの一部がcDNAから与えられ、XbaIの制限部位を通して直接エクソンIIIのコード配列に結合され、その結果エクソンIとIIの間及びエクソンIIとIIIの間のイントロンが欠失したものとなる。しかしながら、コード配列のシグナル3’と同様にエクソンIIIとIVの間のイントロンは残っている。その結果生じるミニ遺伝子は、都合の良いことに、BamHI/BglII断片として挿入することができる。もちろん、匹敵するミニ遺伝子を構成するため他の手段を取ることも可能であり、同定義は、コード配列がXbaI部位を通して結合される特定の構成に限定されるものではない。しかしながら、これは、遺伝子の構成にとって便利な手段であり、遺伝子の合成による調製又は部分的な合成による調製のような他のアプローチに対して特別の利点はない。同定義には、エクソンIIIとIVの間のイントロン又は任意の他のイントロンを保持している、かつ好ましくは他のイントロンは保持していないアルファサブユニットのコード配列を含む。
【0051】
組換体産生のため、発現系を使ってトランスフェクトされた宿主細胞が使用され、望まれるタンパク質を産生するように培養される。これらの用語は、本願中では以下のように使用される。
【0052】
「トランスフェクトされた」組換体宿主細胞、つまり本発明の組換体発現系でトランスフェクトされた細胞は、トランスフェクション、ウイルス感染等を含めて、それを導入する任意の便利な方法によって、同発現系を含むように変更された宿主細胞を意味する。「トランスフェクトされた」とは、該発現系を含む細胞を表し、該系は染色体へ組み込まれるかもしくは染色体外に存在するかのどちらかである。「トランスフェクトされた」細胞は、該発現系の含有に関して、安定かそうでないかのどちらかである。つまり、本発明の発現系でトランスフェクトされた組換体宿主細胞は、細胞が本来発現系を保持していないとき、この取り込みの様式によらず、該発現系を含むような操作が行われた結果、該発現系を含むようになった細胞を意味する。
【0053】
「発現系」は、発現すべきコード配列及びコード配列の発現を行うのに必要なそれらに付随する制御DNA配列を含むDNA配列を表す。代表的には、これら制御には、プロモーター、終結調節配列が含まれ、いくつかの場合では、オペレーター又は発現を調節するための他のメカニズムが含まれる。制御配列は、特定の標的組換体宿主細胞において機能的であるようにデザインされ、従って、宿主細胞は、構成された発現系において制御配列と適合性を持つように選ばれなければならない。
【0054】
本願中で使用されているように、「細胞」、「細胞培養物」、及び「細胞株」は、意味するところのニュアンスに特別の注意を払うことなく、お互いに交換して使用される。それらの間の区別が重要なときは、脈絡から明らかであろう。任意のものを意味することができるときは、全てが含められることを意図している。 生産されるタンパク質は、もし細胞内で産生されるなら、細胞のライゼートから、又は、もし分泌されるなら、培地から回収されるであろう。細胞培養物からの組換体タンパク質の回収のための技術は本分野では良く理解されており、これらのタンパク質はクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、選択的沈降等の既知の技術を使用して精製することができる。
【0055】
代わって、もし候補となる生物製剤が短いペプチドであるなら、もしくはサブユニットの酵素的トランスファーが行われ得るなら、本発明のCTP単位(unit(s))は、生体外で固相ペプチド合成技術を用いて直接に合成されても良く、またもし望まれるなら、これらの条件のもと、CTPサブユニットは遺伝子によりコードされるのでないアナログアミノ酸によって修飾されても良い。
【0056】
[抗体]
本発明に係る修飾されたペプチド及びタンパク質は、これらの新しい化合物と特異的に免疫反応性を示す抗体を作成するのに使用される。これらの抗体は、修飾されていないペプチド又はタンパク質の生理活性の性質に依存して多様な診断及び治療への適用の際に有用である。
【0057】
該抗体は、ウサギ、マウス、ヒツジ又はラットのようなほ乳類において標準的な免疫プロトコールを用いて一般に調製され、該抗体は十分な免疫化を保証するためにポリクローナル抗血清としてタイターが測定される。ポリクローナル抗血清は、例えばイムノアッセイに使用するために回収することができる。脾臓細胞又は末梢血白血球のような宿主より得られた抗体分泌細胞は、既知の技術を用いて不死化され、本発明に係る修飾されたペプチドに免疫特異的なモノクローナル抗体の産生についてスクリーニングすることができる。
【0058】
「修飾されたペプチドに対して免疫特異的」とは、アフィニティとノンアフィニティーを決定するために考慮される一般的なパラメーターの範囲内で、ペプチド又はタンパク質のCTP単位で修飾された型とは免疫反応性を示すが、修飾されていない部分とは免疫反応性を示さない抗体を意味する。特異性は相対的な用語であり、100倍又はそれより大きい免疫反応性の違いのような任意の限界値を選ぶことができると理解される。従って、本発明の中に含められる免疫特異的な抗体は修飾されていない型より修飾されたタンパク質又はペプチドと少なくとも100倍高い反応性を有するものである。
【0059】
[処方]
本発明に係る修飾されたペプチド又はタンパク質は、該修飾型に対応する修飾されていないペプチド又はタンパク質に対しての既知の方法に匹敵する方法を用いて処方され、投与される。従って、処方及び投与方法は、候補となる修飾されていない型によって多様であろう。しかしながら、修飾されたペプチド又はタンパク質において生物学的半減期が拡張されたことを考慮して、修飾されていない型と比較して、投与量レベル及び投与回数は減少できよう。
【0060】
本発明によれば、修飾されたペプチド及びタンパク質の処方は、レミントンズ・ファルマスーティカル・サイエンス、最新版、マックパブリッシングカンパニー、イーストン、PA(Remington's Pharmaceutical Sciences, latest edition, Mack Publishing Company, Easton, PA)の中で見いだされるような代表的なタンパク質又はペプチド薬剤の処方である。一般に、タンパク質又はペプチドは、代表的には、静脈内注射、筋肉注射、皮下注射、又は腹膜内注射によって、もしくは粘膜を通す又は皮膚を通すデリバリー(transmucosal or transdermal delivery)のための処方を用いて、投与される。該処方は、一般に胆汁酸塩やフシジン酸等の界面活性剤又は浸透剤を含む。該処方は、煙霧剤又は坐剤として、もしくは皮膚を通した投与の場合、皮膚貼付薬の形で投与される。
【0061】
もし、該処方が消化系における分解から本発明のペプチドをプロテクトするならば、経口投与もまた可能である。
【0062】
投与量及び処方における最適化は、ルーチンマターとして、及び本分野で一般になされていることとして行われる。
【実施例】
【0063】
以下の実施例は、本発明を詳しく説明するものであって、本発明を限定するものではない。
【0064】
[実施例1]2つのCTP単位を直列につなげた延長を持つヒトのβサブユニットの調製
図1A及び1Bは、発現ベクターの構成を示すものであって、ヒトFSHのβ−鎖は2つのCTP単位を含むように修飾されている。図1Bに示されているように、1つのCTP単位により延長されているヒトのFSH−βサブユニットの3’末端にあるHindIII部位は、ヒトのHCG−β遺伝子の3’末端からのCTPをカップルするのに使用され、延長されたβサブユニットが得られる。hFSH−β(CTP)2遺伝子は、発現ベクターpM2につながれて、ほ乳類細胞でFSH−βの延長型を産生することのできる発現系を得る。宿主発現ベクターの構成については、マズック(Matzuk, M.M.)らにより、Proc Natl Acad Sci USA(1987)84:6354-6358の中で、またマズック(Matzuk, M.M.)らにより、J Cell Biol(1988)106:1049-1059の中で記載されている。
【0065】
更に詳しくは、hCGβサブユニットのO-結合型末端領域の1単位を持つようなhFSHβキメラ(hFSHβ(CTP))を作成するために、HindIII部位が、hFSHβ遺伝子のコドン111番目、及びhCGβ遺伝子のコドン118番目のストップコドンのところに作成された(図1A)。hFSHβ遺伝子より得られたHindIII-HindIIIフラグメントは、CGβのBamHI-HindIIIフラグメントにフレームを合わせてつなげられた。該キメラ(hFSHβ(CTP))は接合点においてSer118からAla118への置換を含んでおり、オリゴヌクレオチド−ダイレクティッドムタゲネシス(oligonucleotide-directed mutagenesis)によって正しくされた。2つの直列につながれたCTP反復を含むキメラ(hFSHβ(CTP)2)は、hFSHβ(CTP)キメラのストップコドンに新しいHindIII部位を作成することによって構成された(図1B)。HindIII-HindIIIフラグメントは、hCGβから得られたBamHI-HindIIIフラグメントにつなげられた。生じたalaコドンは前記のようにセリンコドンに再置換することができる。
【0066】
真核生物発現ベクターpM2にhFSHβ(CTP)又はhFSHβ(CTP)2遺伝子を挿入するために、5’末端のHindIII部位が、クレノー(Klenow)及びBamHIオリゴヌクレオチドリンカーを用いてBamHI部位に変換され(図1C)、hFSHβCTP又はhFSHβ(CTP)2遺伝子を含むBamHI-BamHIフラグメントが、pM2のBamHI部位に挿入された。正しい配向は、制限酵素解析により確認され、エクソンIIIの完全な配列が配列分析されて、突然変異誘発の特異性が確認された。
【0067】
[実施例2]CTPを直列につながれた延長の効果
前記実施例1のようにして調製された2つのCTP単位によって延長されたβサブユニットを含むヒトのFSHが、ラットに投与された。24匹のスプラグーダーリィ(Sprague-Dawley)のメスラットが、本研究では使用された。12匹のラットは、MEM培地中で処方された10IUの修飾されていないFSHをそれぞれ注射された。12匹のラットはMEM培地中で処方されたhFSHβ(CTP)2を含む10IUのFSHを注射された。血清がすぐに、そして最初の1時間の間に数回、それ以後は2、4及び8時間後に回収された。該血清は、FSHホルモンにとって標準的なラジオイムノアッセイ技術を用いてアッセイされた。その結果から、血清中に存在する修飾されていないFSHの量は、8時間にわたる間で、およそ0.5IU/mlから0.05IU/mlより少ない量にまで減少するが、一方、2つのCTP単位を含む本発明の修飾されたFSHは、同期間の間およそ0.8IU/mlからおよそ0.5IU/mlまでと実質上変化がないままで保持されている。
【0068】
[実施例3]「部分」単位に相当するCTP単位の構成
ヒトのコリオゴナドトロピンβサブユニットをコードする遺伝子が、長末端反復(LTR)の下流にあるBamHI部位のところでプラスミドpM2(上記)に挿入された。BamHI/BglIIフラグメントが部位特異的ムタゲネシス(site-directed mutagenesis)のためにM13にサブクローン化された。ストップコドンが133番目のアルギニン残基の代わりに、又は128番目のロイシン残基の代わりに与えられる。突然変異のあるフラグメントはpM2の宿主ベクターに再挿入される。
【0069】
ヒトのCGβのトランケート型をコードするベクターがCHO細胞にトランスフェクトされ、トランスフェクトされた細胞は、培養され、35S−システインで7時間ラベルされた。ライゼート及び培地が調製され、CGβ抗血清で免疫沈降された。沈降物は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動が行われ、その結果は図2に示されている。図2では、カルボキシ末端によって、ライゼート及び培地のレーンはラベルされている。大部分のセリン−O−結合型グリコシレーションは、ちょうど分泌される前に行われるということは十分確立されている。従って、それが分泌されるときには、サブユニットの分子量の増加を反映するような移動度のシフトがある。ここで見られるように、hCGβの短い型ではライゼートから培地まで分子量のシフトにおける漸進的減少がみられる。本データにより、トランケートされたサブユニットの分泌型はより小さい分子量を示すことが示され、このことから、セリンのグリコシレーション部位が存在しないことが示される。
【0070】
[実施例4]修飾されたFSHβ及び他のペプチドの構成
「完全」型又は「部分」型に相当するCTP単位が、図1Aのように、FSHβと突然変異の入った又は入っていないhCGβ遺伝子の両方をHindIIIで切断し、生じたFSHの上流部分とCTP単位とをつなげることによって、FSHβにつなげられる。再結合により、CTP単位の118番目の位置にserからalaへの置換が起こっている。もし、望まれるなら、これは、図3に示したようにして、セリンコドンへ再置換することができる。
【0071】
同様に、ヒトのプロインスリン、成長ホルモン、α−サブユニットのC−末端延長型が完全又は部分型におけるCTP単位から調製される。
【0072】
CTP単位は、図4に示されているように、α−サブユニットのアミノ末端又はカルボキシ末端のどちらかに挿入することができる。例証されているように、hCGβの118〜145番目の位置の部分が挿入される。
【0073】
更に詳しくは、α−サブユニットのカルボキシ末端のところに「完全」又は「部分」CTP単位を含むキメラ(αC)を作成するために、アルファサブユニットとhCGβ遺伝子を含むBamHI-BglIII及びHindIII-BamHIフラグメントについてそれぞれポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が行われる。(Horton, R.M. et al., Gene(1989)77:51-59)。これは、図5に図示されている。
【0074】
示されているGHフラグメント、それはαミニ遺伝子から転写されたものだが(著者)(J Cell Biol(1988)106:1049-1059)、これはαサブユニットについて完全な翻訳配列を含んでおり、CGβサブユニットから得られたCTP配列を含むIJフラグメントは、別のPCR反応において増幅された。GHフラグメントを増幅するために使用されるプライマーHの3’末端はCTP配列の5’末端に相補的である。同様に、プライマーIの5’末端は、α配列の3’末端に相補的であった。従って、オーバーラップする2つの内部プライマーを使用することによって、GH及びIJフラグメントは、「粘着性末端(sticky ends)」を共有する。これらのフラグメントが、精製され、互いに混合され、PCR用の鋳型として使用された。オーバーラップ末端により、各フラグメントからの1本鎖がもう一方の鎖に対してプライマーとして働くようになり、G及びIプライマーを加えることによって、α−CTPキメラ遺伝子の増幅が可能になる。該α−CTP遺伝子はpM2のBamHI部位に挿入された。
【0075】
αCの構成に使用されたプライマーの配列は、以下の通りである。:(5’→3’)
H=GCCTTTGAGGAAGAGGAAGATTTGTGATAATAAC
I=GTTATTATCACAAATCTTCCTCTTCCTCAAAGGC
G=GTAAAACGACGGCCAGT
J=AACAGCTATGACCATG
【0076】
オリゴヌクレオチドG及びJはM13mp19(New England Biolabs 1992 catalogue #1201 and #1211)のプライミング用である。オリゴヌクレオチドG及びJは、それぞれポリリンカー領域の上流及び下流をプライムする。
【0077】
αCを構成するのに使用されるのと類似の方法で、CTPがαサブユニットのN-末端側のアミノ酸3/4結合の部分にまた挿入された(Cα;図6)。CTPは、3番目と4番目のアミノ酸の間にあるサブユニットの内部領域に挿入された(図6)。
Cαの構成に使用されたオリゴヌクレオチドプライマーの配列は次の通りである。;

(A) 5'-AGC GGA TAA CAA TTT CAC ACA GGA-3'
(E) 5'-CAT TCC GCT CCT GAT TCC TCT TCC TCA AAG-3'
(B) 3'-GTA AGG CGA GGA CTA AGG AGA AGG AGT TTC-5'
(C) 5'-CCG ATC CTC CCA CAA GTG CAG GAT TGC CCA-3'
(F) 3'-GGC TAG GAG GGT GTT CAC GTC CTA ACG GGT-5'
(D) 3'-ATT CTT GGA GTT CTA GGG GTC TTC GAAA-5'

オリゴヌクレオチドA及びDは、M13をプライムするのに使用される。
【0078】
ABフラグメントを増幅するのに使用されるプライマーBの3−末端は、CTP領域の5’−末端に相補的な配列を提供する。同様に、cdフラグメントを増幅するのに使用されるプライマーCの5’−末端は、α−サブユニット遺伝子のエクソン2の3’−末端に相補的である。該フラグメントは、ゲル精製され、PCRの鋳型として使用するために混合された。オーバーラップする末端によって、各フラグメント由来の1本鎖が、もう一方の鎖に対してプライマーとしてはたらくようになる。a及びdプライマーを加えることにより、完全なキメラを増幅することが可能となる。
【0079】
配向が正しいかは、制限酵素解析によって確認され、生じた修飾された遺伝子は、正しい置換であることを証明するために配列分析された。
【0080】
[実施例5]修飾されたホルモンの産生
修飾されたα−サブユニット(αC)をコードする遺伝子は、pM2のBamHI部位に挿入され、チャイニーズハムスターオバリーセルに単独でもしくはCGβ遺伝子とともにトランスフェクトされた。35Sシステインで安定クローンを連続的にラベルすることにより、修飾されたペプチドの分泌型は対応する修飾されていない型よりもゆっくりと移動することが示される。図7で、レーン1及び3は、それぞれ、修飾されていないα−サブユニット及びαCを産生する細胞のライゼートを表す。ここにレーン2及び4は、対応する上清である。修飾されたαCの分泌型は、野生型のαと比較するとライゼート型については移動度がかなり大きく変化しているので、分泌されたαCは、CTP延長によって与えられたO-結合型オリゴ糖を含んでいると結論することができる。
【0081】
CHO細胞をFSHβサブユニットとαC又はCαのどちらかとでコトランスフェクションを行うことによって、天然型のFSHに匹敵するくらいの効率で分泌されるダイマーが生成された。
【0082】
[実施例6]生理活性
天然型のFSH及びαC又はCαを持つFSHダイマーは、FSHのイムノラジオメトリックアッセイ及び二重抗体RIA(Diagnostic Products, Los Angels)を用いて、調製された培地中で定量された。これらのホルモンの生体外生物活性は、以前記載したように、顆粒膜細胞のアロマターゼバイオアッセイによって決定された(著者 J Biol Chem(1989)264:4764-4774; 著者 Endocrinology(1986)119:1570-1577)。天然型FSHによる及びαC及びCαFSHによるエストロゲン産生刺激は、3日間培養した後比較された。
【0083】
図8では、天然型FSH(黒丸)、αC−FSHβ(白四角)、及びFSHβ−CTPサブユニット/α(白三角)のステロイド合成の応答の様子を比較している。αサブユニットのカルボキシ末端にCTPが存在していると、生物応答がより低くなる(25〜50倍減少)ことが分かる。
【0084】
対照的に、αサブユニットのアミノ末端側にCTPが存在して(Cα)いても、FSHダイマーのレセプター結合又はステロイド合成に影響はなかった(図9)。天然型FSH(白丸)、天然型αとダイマー化されカルボキシ末端にCTP単位を持つ延長されたFSHβ(白三角)、Cαとダイマー化したFSHβサブユニット(黒丸)、及びCαとダイマー化したCTP延長されたβFSH(黒三角)、これらは全て類似の活性を示す。最適濃度での修飾型は、天然型より幾分高い活性を示す。予備結果より、Cαダイマーは天然型のホルモンに匹敵するくらいの生物活性を長時間作用アゴニストに与えることが示される。
【0085】
さらなる結果から、特にO-結合型の部位が不足している部分CTP配列を含む修飾されたタンパク質は、完全な長さのCTPを含むダイマーに匹敵するくらいの生物応答を誘導することが示されており、また抗原性がないことが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1A】図1Aは、一つ又は二つのCTP単位により延長されたヒトのFSHβサブユニットの構成を示す。
【図1B】図1Bは、一つ又は二つのCTP単位により延長されたヒトのFSHβサブユニットの構成を示す。
【図1C】図1Cは、発現ベクターpM2への延長FSHβサブユニットの挿入を示す。
【図2】図2は、ヒトのCGβの天然型及びトランケート型の発現ベクターを含むCHO細胞のライゼート及び培地の免疫沈降物について行われたSDS−PAGEから得られたゲルの写真である。
【図3】図3は、図1Aに記載のように、FSHβのカルボキシ末端に、115〜145番目に相当する1つのCTP単位を融合させる方法の詳細について示す。
【図4】図4は、αサブユニットのアミノ又はカルボキシ末端に、118〜145番目に相当するCTPサブユニットを挿入する位置を示す。
【図5】図5は、CTPによりカルボキシ末端のところで延長されたαサブユニット(αC)の構成を示す。
【図6】図6は、Cαの構成を図示するものであって、hCGβの118〜145番目に相当するCTP単位がαサブユニットの3番目と4番目のアミノ酸の間に挿入される。
【図7】図7は、天然型のαサブユニット及びαCの発現ベクターでトランスフェクトされたCHO細胞のラベルされたライゼート及び培地から得られたSDS−PAGEの結果を示す写真である。
【図8】図8は、天然型のFSH及び延長されたβサブユニット又はαCのどちらか又は両方を含むFSHの生体外生理活性を示すグラフである。
【図9】図9は、天然型のFSH及びCα又は両方を含むFSHの生体外生理活性を示すグラフである。
【図10】図10は、ヒトのCGβの118〜145番目までのアミノ酸配列及びその番号付けを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾されたペプチド医薬品であって、前記修飾は
(a) 「完全」又は「部分」CTP単位又は完全CTP単位の変異体を前記ペプチドのC−末端以外の重要でない領域に挿入すること、ここに、完全CTP単位は、ヒトコリオゴナドトロピンのβサブユニットのアミノ酸位置112〜118の1つから145からなること;
前記変異体は、1〜5の保存的置換を有する修飾された天然型の完全CTP配列であり;
前記部分CTP単位は、少なくとも1つのグリコシレーション部位を含むこと;
又は
(b) 部分CTP単位を前記ペプチドのC−末端に付加すること、この場合、該部分CTP単位は、アミノ酸位置が、ヒトコリオゴナドトロピンのβサブユニットの112〜132;115〜132;116〜132;又は118〜132;又は112〜127;115〜127;116〜127;又は118〜127からなること
を特徴とする修飾されたペプチド医薬品。
【請求項2】
前記重要でない領域は、前記ペプチドのN−末端の近傍にあること
を特徴とする請求項1に記載の修飾されたペプチド医薬品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の修飾されたペプチド医薬品と、製薬的に受け入れることのできる賦形剤とを含む医薬品組成物。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−133295(P2008−133295A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21365(P2008−21365)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【分割の表示】特願平6−523422の分割
【原出願日】平成6年4月13日(1994.4.13)
【出願人】(591003183)ワシントン ユニバーシティー (1)
【Fターム(参考)】