修飾型シャペロニン10
【課題】免疫調節活性を有するが、タンパクフォールディング活性を欠いているか又は実質的に欠いている単離されたシャペロニン10ポリペプチドの提供。
【解決手段】対応する野生型シャペロニン10ポリペプチドと比較して、ルーフβ−ヘアピン領域に1つ以上のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加を含み、免疫調節活性を有する、単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【解決手段】対応する野生型シャペロニン10ポリペプチドと比較して、ルーフβ−ヘアピン領域に1つ以上のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加を含み、免疫調節活性を有する、単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャペロニン10ポリペプチド、及びそれをコードする核酸に関する。本発明は、さらに、免疫調節活性を呈するシャペロニン10ポリペプチド、それを使用する方法、及びかかるポリペプチドを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱ショックタンパク質10(Hsp10)や妊娠早期因子(EPF)としても知られる哺乳類のシャペロニン10(Cpn10)は典型的には、シャペロニン60(Cpn60;Hsp60)と共にタンパク質のフォールディングに関与するミトコンドリア内の「分子シャペロン」タンパク質として特徴付けられる。Cpn10及びCpn60は各々、細菌のタンパク質GroES及びGroELのホモログである。GroESとCpn10は各々7員環にオリゴマー化し、各々、14個のGroEL又は7個のCpn60分子から構成されるバレル状構造の上に蓋として結合し、変性タンパク質を複合体に繋留する(非特許文献1及び2)。
【0003】
Cpn10タンパク質は種間で高度に保存され、ヒトCpn10はウシCpn10と100%同一であり、ラットCpn10とは1つの位置のアミノ酸のみが相違する。ヒトCpn10は、Escherichia coli由来GroESと30%の配列同一性(60%の相同性)を有する。大腸菌GroESの7量体結晶構造が過去に報告されている(非特許文献3の図1A参照)。Cpn10/GroESタンパク質は基本的に3つの異なる構造の領域、すなわち逆平行β−バレル領域、並びにそれに隣接する「ルーフβ−ヘアピンループ」領域及び「可動ループ」領域からなる。可動ループ領域はCpn60/GroELとの相互作用を仲介し、ゆえにCpn60/GroELとの複合体の形成、及び「分子シャペロン」、すなわちタンパク質フォールディング活性にとり重要である。
【0004】
しかしながら、Cpn10は分子シャペロンとしてのその細胞内の役割に加え、細胞表面(非特許文献4参照)及び細胞外流体中(非特許文献5参照)にも存在することが解明され、免疫反応の制御因子としての役割が次第に認識されつつある。例えばCpn10は、自己免疫性脳脊髄炎、遅延型過敏症、及び同種移植片拒絶のモデル実験において、免疫抑制活性を有することが実証されている(非特許文献5及び6)。
【0005】
また、本発明者らは最近、多数のヒト及びマウスのin vitro試験系及びマウス疾患モデルにおいて、Cpn10がNF−kBのLPS誘発活性を阻害し、LPS誘発によるTNFα及びRANTES分泌を減少させ、IL−10産生を亢進し得ることを実証しており(非特許文献7及び特許文献1、これらの開示事項は本願明細書でも参照により援用する)、Cpn10が自己免疫疾患及び炎症性疾患の治療のための免疫治療薬としての有用性を発揮しうることを示唆している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Bukau及びHorwich、1998年、Cell、92巻、351−366ページ
【非特許文献2】Harti及びHayer−Hartl、2002年、Science、295巻、1852−1858ページ
【非特許文献3】Xuら、1997、Nature、388巻、741−750ページ
【非特許文献4】Bellesら、1999年、Infect.lmmun.、67巻、4191−4200ページ
【非特許文献5】Shinら、2003年、J.Biol.Chem.、278巻、7606−7616ページ
【非特許文献5】Zhangら、2003、J.Neuro.Sci.、212巻、3746ページ
【非特許文献6】Mortonら、2000、Immunol.Cell Biol.、78巻、603−607
【非特許文献7】Johnsonら、2005年、J.Biol.Chem.、280巻、4037−4047ページ
【特許文献1】国際特許出願PCT/AU2005/000041号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この免疫調節活性の仲介に関与するCpn10分子内の部位は未だ同定されていない。
【0008】
本発明は、Cpn10分子の修飾、及び免疫調節活性に及ぼすこれらの組換えの効果に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、野生型Cpn10と比較して1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は付加を含んでなるCpn10ポリペプチドの提供に関し、これらのポリペプチドは免疫調節活性を呈することを特徴とする。
【0010】
本発明の第1の態様は、免疫調節活性を有するが、タンパク質フォールディング活性を欠くか又は実質的に欠く、単離されたCpn10ポリペプチドの提供に関する。
【0011】
本発明の第2の態様は、免疫調節活性を有する単離されたCpn10ポリペプチドの提供に関し、当該ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドと比較し可動ループ領域において1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は付加を含むことを特徴とする。
【0012】
当該Cpn10ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性のレベルと少なくとも同等の免疫調節活性を示しうる。
【0013】
一実施形態において、Cpn10ポリペプチドの可動ループ領域におけるIMLトリペプチドの1つ以上の残基は、荷電残基で置換されてもよい。
【0014】
別の実施形態において、IMLトリペプチドを含むCpn10ポリペプチドは、トリペプチドEEEで置換されてもよい。EEEトリペプチドを含む当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号39に記載のものであってもよい。当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号40に示すヌクレオチド配列によってコードされてもよい。
【0015】
さらに別の実施形態において、IMLトリペプチドを含むCpn10ポリペプチドは、トリペプチドIIIで置換されてもよい。IIIトリペプチドを含む当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号37に記載のものであってもよい。当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号38に示すヌクレオチド配列によってコードされてもよい。
【0016】
さらなる別の実施形態において、IMLトリペプチドを含むCpn10ポリペプチドは、トリペプチドIFIで置換されてもよい。IFIトリペプチドを含む当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号35に記載のものであってもよい。当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号36に示すヌクレオチド配列によってコードされてもよい。
【0017】
本発明の第3の態様は、免疫調節活性を有する単離されたCpn10ポリペプチドの提供に関し、当該ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドの可動ループ領域を実質的に欠くことを特徴とする。
【0018】
一実施形態において、可動ループ領域を実質的に欠く当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号3又は24に示すアミノ酸配列を含む。この可動ループ領域を実質的に欠く当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号4、5又は25に示すヌクレオチド配列によってコードされてもよい。
【0019】
当該Cpn10ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性のレベルと少なくとも同等の免疫調節活性を示しうる。
【0020】
本発明の第4の態様は、免疫調節活性を有する単離されたCpn10ポリペプチドの提供に関し、前記ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドと比較しルーフβ−ヘアピン領域において1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は付加を含むことを特徴とする。
【0021】
当該Cpn10ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性のレベルと少なくとも同等の免疫調節活性を示しうる。
【0022】
本発明の第5の態様は、免疫調節活性を有する単離されたCpn10ポリペプチドの提供に関し、前記ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドのルーフβ−ヘアピン領域を実質的に欠くことを特徴とする。
【0023】
一実施形態において、ルーフβ−ヘアピン領域(配列番号13)を実質的に欠く当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号6又は26に示すアミノ酸配列を含む。このルーフβ−ヘアピン領域を実質的に欠く当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号7、8又は27に示すヌクレオチド配列によってコードされてもよい。
【0024】
当該Cpn10ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性のレベルと少なくとも同等の免疫調節活性を示し得る。
【0025】
本発明の第6の態様は、免疫調節活性を有する単離されたCpn10ポリペプチドの提供に関し、前記ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドと比較し可動ループ領域とルーフβ−ヘアピン領域において1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は付加を含むことを特徴とする。
【0026】
本発明の第7の態様は、単離されたCpn10ポリペプチドの提供に関し、前記ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドの可動ループ領域とルーフβ−ヘアピン領域の双方を実質的に欠くことを特徴とする。
【0027】
この単離されたCpn10ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性のレベルと少なくとも同等の免疫調節活性を示しうる。
【0028】
一実施形態において、当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号9又は28に示すアミノ酸配列を含む。当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号10又は29に示すヌクレオチド配列によってコードされてもよい。
【0029】
本発明の第8の態様は、免疫調節活性を有する単離されたCpn10ポリペプチドの提供に関し、前記ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドと比較し追加的なN末端アラニン残基が欠失していることを特徴とする。
【0030】
当該Cpn10ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドと比較し、N末端のアセチル基を欠いてもよい。このCpn10ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性のレベルと比較し低減した免疫調節活性のレベルを示しうる。
【0031】
一実施形態において、追加的なN末端アラニン残基が欠失しているCpn10ポリペプチドは、配列番号23に示すアミノ酸配列を含んでもよい。この追加的なN末端アラニン残基が欠失しているCpn10ポリペプチドは、配列番号44に示すヌクレオチド配列によってコードされてもよい。
【0032】
本発明の第9の態様は、免疫調節活性を有する単離されたCpn10ポリペプチドの提供に関し、当該Cpn10ポリペプチドのN末端は、細菌のCpn10のN末端で実質的に置換されていることを特徴とする。
【0033】
当該細菌のCpn10はGroESであってもよい。
【0034】
当該Cpn10ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性のレベルと比較し低減した免疫調節活性のレベルを示しうる。
【0035】
一実施形態において、当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号14に示すアミノ酸配列を含んでもよい。当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号43に示すヌクレオチド配列によってコードされてもよい。
【0036】
本発明の第10の態様は、免疫調節活性を有する単離Cpn10ポリペプチドの提供に関し、対応する野生型Cpn10ポリペプチドと比較し、グリシン残基により、Cpn10ポリペプチドの追加的なN末端アラニン残基が置換されていることを特徴とする。
【0037】
当該Cpn10ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性のレベルと比較し低減した免疫調節活性のレベルを示しうる。
【0038】
一実施形態において、当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号30に示すアミノ酸配列を含んでもよい。当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号31に示すヌクレオチド配列によってコードされてもよい。
【0039】
本発明の第11の態様は、上記第1から第10の態様のいずれかに係るCpn10ポリペプチドをコードする単離された核酸の提供に関する。
【0040】
本発明の第12の態様は、1つ以上の調節配列に制御可能に連結した状態で第11の態様に係る核酸を含んでなる発現コンストラクトの提供に関する。
【0041】
本発明の第13の態様は、上記第1から第10の態様のうちのいずれかのポリペプチドを発現する、又は第11の態様の核酸若しくは第9の態様を発現する発現コンストラクトを含んでなる宿主細胞の提供に関する。
【0042】
本発明の第14の態様は、第1から第10の態様のうちのいずれかのポリペプチドと選択的に結合する抗体の提供に関する。
【0043】
本発明の第15の態様は、第1から第10の態様のうちのいずれかのポリペプチド、第11の態様の核酸、第12の態様の発現コンストラクト、又は第14の態様の抗体を含んでなる医薬組成物の提供に関する。
【0044】
当該医薬組成物は、さらに1つ以上の薬剤を含んでもよい。例えば、複数の硬化症の治療のため、当該組成物は有効量のIFNβをさらに含んでもよい。
【0045】
本発明の第16の態様は、被験者に有効量の第1から第10の態様のうちのいずれかのCpn10ポリペプチド又は有効量の第11の態様の核酸を投与するステップを含む、被検者の治療方法の提供に関する。
【0046】
この治療により、被験者の免疫反応が調節されうる。免疫反応は、Toll様受容体のシグナリングの調節を介して調節されうる。
【0047】
本発明の第17の態様は、被験者の疾患又は症状を治療又は予防する方法の提供に関し、当該方法は、有効量の上記第1から第10の態様のうちのいずれかのCpn10ポリペプチド又は第11の態様の核酸を被験者に投与することを含んでなる。
【0048】
当該疾患、障害又は症状は、急性若しくは慢性の炎症性疾患、喘息、アレルギー、多発性硬化症、GVHD、又は感染症から選択されてもよい。当該感染症は細菌感染又はウィルス感染から生じるものでもよい。当該細菌はグラム陰性菌でもよい。
【0049】
本発明の第18の態様は、被験者における、又はその少なくとも1つの細胞、組織若しくは器官におけるTLR4シグナリングを調節する方法の提供に関し、当該方法は、有効量の上記第1から第10の態様のうちのいずれかのCpn10ポリペプチド又は第11の態様の核酸を投与することを含んでなる。
【0050】
典型的には、Cpn10はアゴニストの誘発によるTLR4シグナリングを制御する。
【0051】
本発明の第19の態様は、被験者における、又はその少なくとも1つの細胞、組織、若しくは器官における1つ以上の免疫調節物質の産生及び/又は分泌を調節する方法の提供に関し、当該方法は、有効量の上記第1から第10の態様のうちのいずれかのCpn10ポリペプチド又は第11の態様の核酸を投与することを含んでなる。
【0052】
当該Cpn10は、TLR4からのシグナリングを調節してもよい。
【0053】
免疫調節物質は、炎症促進性のサイトカイン若しくはケモカイン、又は抗炎症性のサイトカイン若しくはケモカインであってもよい。当該サイトカイン又はケモカインは、TNF−α、IL−6、RANTES、IL−10、TGF−β、又は1型インターフェロンから選択されてもよい。当該1型インターフェロンは、IFNα又はIFNβであってもよい。
【0054】
本発明の第20の態様は、上記第1から第10の態様のうちのいずれかのポリペプチドに結合する化合物を同定する方法の提供に関し、当該方法は以下のステップを含んでなる。(a)候補化合物を前記ポリペプチドと接触させるステップ、及び(b)候補化合物と前記ポリペプチドとの複合体の形成をアッセイするステップ。
【0055】
複合体形成のアッセイは、競合的結合アッセイ又はツーハイブリッドアッセイであってもよい。
【0056】
本発明の第21の態様は、第1から第10の態様のうちのいずれかのポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法の提供に関し、当該方法は、次のステップを含んでなる。
(a)前記ポリペプチド、及びヌクレオチド、又はそれらの混合物に対する候補化合物の相互作用を可能にするのに適切な条件下で、前記ポリペプチドを前記候補化合物と接触させるステップと、
(b)前記ポリペプチドの活性をアッセイするステップ。
【0057】
当該ポリペプチドの活性のアッセイは、標識した基質を添加し、その標識した基質の変化を測定することを含んでもよい。
【0058】
また、本発明には、上記の態様及び実施形態に係る修飾Cpn10ポリペプチド及びポリヌクレオチドの変異体、誘導体、相同体、類似体、及び断片が包含される。
【0059】
上記の態様及び実施形態では、Cpn10ポリペプチド及びポリヌクレオチドは、任意の動物から調製してもよく、組換DNA技術を用いて調製してもよく、又は合成してもよい。典型的には、当該Cpn10は真核生物由来のCpn10である。
【0060】
上記の態様では、当該野生型Cpn10ポリペプチドは、配列番号1又は21に示すアミノ酸配列を含むヒトCpn10ポリペプチドであってもよい。
【0061】
上記の態様では、当該野生型Cpn10ポリペプチドは、配列番号2又は22に示すヌクレオチド配列によってコードされてもよい。
【0062】
上記の態様及び実施形態では、当該Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性は、ポリペプチドの7量体の産生を伴ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】A.逆平行β−バレル、「ルーフ」β−ヘアピンループ、及び可動ループ領域を示す大腸菌Cpn10(GroES)の結晶構造。Cpn10は、7つの同じ10kDaサブユニットからなる。B.野生型ヒトCpn10モノマーのアミノ酸配列。予測された18アミノ酸の可動ループを太字イタリックで示す。予測された14アミノ酸のルーフβ−ヘアピンを太字アンダーラインで示す。
【図2】TLR4シグナリングに及ぼすヒトAla−Cpn10及び大腸菌GroESの効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH001)によるLPS−誘発HIV−LTR活性の用量応答性の阻害(NFkB活性の間接的な測定)。大腸菌GroESではかかる阻害が見られなかった。パネルBは、パネルAの結果から算出した、LPSのみで産生されたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは4つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。RLU=相対光単位。NFkB活性は5ng/mlのリポ多糖(LPS)で誘発した。
【図3】SDS−PAGEゲル。ゲルAからOまで(Hを除く)についてのレーン構成:レーン1は分子量マーカー(kDa);レーン2−6はそれぞれ60μg、6μg、3μg、1.2μg、及び0.3μgのCpn10。A.精製Ala−Cpn10(CH001)をクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。B.精製Ala−Cpn10(CH003)をクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。C.精製Ala−Cpn10−EEE−cHisをクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。D.精製Ala−Cpn10−cHisをクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。E.精製Ala−Cpn10−IFIをクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。F.精製Ala−Cpn10−IIIをクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。G.精製Ala−Cpn10−Δmlをクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。H.Cpn10−Δml(レーン2)の部分的グルタルアルデヒド架橋により、銀染色した4〜12%SDS−PAGEゲル上に7つの明確なバンドが示され、分子が7量体であることを示す。レーン1は分子量マーカー(kDa)。I.精製Ala−Cpn10−Δroofのクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。J.精製Ala−Cpn10−β−バレルのクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。K.精製大腸菌GroESのクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。L.精製Cpn10−NtermESのクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。M.精製大腸菌GroESのクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。N.精製Gly−Cpn10のクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。
【図4−1】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10、Ala−Cpn10−III、Ala−Cpn10−IFI、Ala−Cpn10−EEE−cHis、及びAla−Cpn10−cHisの効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH001)、Ala−Cpn10のC末端ヘキサヒスチジンタグ(Ala−Cpn10−cHis)、及び多くの可動ループ変異体によるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルB、D、F、Hは、パネルA、C、E、Gの結果から算出した、LPSのみで産生されたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは4つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。RLU=相対光単位NFkB活性は5ng/mlのリポ多糖(LPS)で誘発した。
【図4−2】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10、Ala−Cpn10−III、Ala−Cpn10−IFI、Ala−Cpn10−EEE−cHis、及びAla−Cpn10−cHisの効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH001)、Ala−Cpn10のC末端ヘキサヒスチジンタグ(Ala−Cpn10−cHis)、及び多くの可動ループ変異体によるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルB、D、F、Hは、パネルA、C、E、Gの結果から算出した、LPSのみで産生されたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは4つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。RLU=相対光単位NFkB活性は5ng/mlのリポ多糖(LPS)で誘発した。
【図4−3】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10、Ala−Cpn10−III、Ala−Cpn10−IFI、Ala−Cpn10−EEE−cHis、及びAla−Cpn10−cHisの効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH001)、Ala−Cpn10のC末端ヘキサヒスチジンタグ(Ala−Cpn10−cHis)、及び多くの可動ループ変異体によるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルB、D、F、Hは、パネルA、C、E、Gの結果から算出した、LPSのみで産生されたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは4つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。RLU=相対光単位NFkB活性は5ng/mlのリポ多糖(LPS)で誘発した。
【図4−4】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10、Ala−Cpn10−III、Ala−Cpn10−IFI、Ala−Cpn10−EEE−cHis、及びAla−Cpn10−cHisの効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH001)、Ala−Cpn10のC末端ヘキサヒスチジンタグ(Ala−Cpn10−cHis)、及び多くの可動ループ変異体によるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルB、D、F、Hは、パネルA、C、E、Gの結果から算出した、LPSのみで産生されたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは4つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。RLU=相対光単位NFkB活性は5ng/mlのリポ多糖(LPS)で誘発した。
【図5】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10及びAla−Cpn10Δmlの効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH001)及びAla−Cpn10−ΔmlによるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルBは、パネルAの結果から算出した、LPSのみで産生させたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは4つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。RLU=相対光単位。NFkB活性は5ng/mlのリポ多糖(LPS)で誘発した。
【図6】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10とAla−Cpn10Δroofと大腸菌GroESの効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH001)及びAla−Cpn10−ΔroofによるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルBは、パネルAの結果から算出した、LPSのみで産生させたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは6つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。CPS=毎秒の相対カウント。NFkB活性は5ng/mlのリポ多糖(LPS)で誘発した。
【図7】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10及びAla−Cpn10−β−バレルの効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH001)及びAla−Cpn10−β−バレルによるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルBは、パネルAの結果から算出した、LPSのみで産生させたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは6つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。CPS=毎秒の相対カウント。NFkB活性は、5ng/mlのリポ多糖(LPS)で誘発した。
【図8】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10及びCpn10−NtermESの効果。ヒト野生型Cpn10(バッチCH001)によるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。Cpn10−NtermESではかかる阻害が見られなかった。パネルBは、パネルAの結果から算出した、LPSのみで産生させたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは6つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。CPS=毎秒の相対カウント。SD=標準偏差。NFkB活性は6ng/mlのリポ多糖(LPS)で誘発した。
【図9】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10とX−Cpn10の効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH003)及びX−Cpn10によるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルBは、パネルAの結果から算出した、LPSのみで産生させたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは6つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。CPS=毎秒の相対的カウント。NFkB活性は5ng/mlのリポ多糖(LPS)で誘発した。
【図10】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10及びGly−Cpn10の効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH003)及びGly−Cpn10によるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルBは、パネルAの結果から算出した、LPSのみで産生させたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは6つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。CPS=毎秒の相対カウント。NFkB活性は5ng/mlのリポ多糖(LPS)で誘発した。
【図11】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10及びAla−Cpn10−Δmlの効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH003)及びAla−Cpn10−ΔmlによるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルBは、パネルAの結果から算出した、LPSのみで産生させたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の抑制率を示す。LPSのみのサンプルは6つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。CPS=毎秒の相対カウント。NFkB活性は5ng/mlの超高純度リポ多糖(LPS)で誘発した。
【図12】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10とAla−Cpn10−Δroofの効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH003)及びAla−Cpn10−ΔroofによるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルBは、パネルAの結果から算出した、LPSのみで産生させたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の抑制率を示す。LPSのみのサンプルは6つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。CPS=毎秒の相対カウント。NFkB活性は5ng/mlの超高純度リポ多糖(LPS)で誘発した。
【図13】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10及びAla−Cpn10−β−バレルの効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH003)及びAla−Cpn10−β−バレルによるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルBは、パネルAの結果から算出した、LPSのみで生成したルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは6つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。CPS=毎秒の相対カウントNFkB活性は5ng/mlの超高純度リポ多糖(LPS)で誘発した。
【図14】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10及びGly−Cpn10の効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH003)及びGly−Cpn10によるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルBは、パネルAの結果から算出した、LPSのみで産生させたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは6つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。CPS=毎秒の相対カウント。NFkB活性は5ng/mlの超高純度リポ多糖(LPS)で誘発した。
【図15−1】内毒血症の炎症モデルマウスにおけるCpn10活性。Cpn10及びCpn10変異体は、LPS誘発による血清中へのTNF−α、IL−10、及びIL−6の産生を低下させた。「IPS攻撃」(表1、グループ1、3、5、7、9、及び11参照)又は「生理食塩水コントロール」(表1、グループ2、4、6、8、10、及び12参照)のマウスからの血清を、CBA(「方法」を参照)を用いて炎症関連のサイトカインについて分析した。A、B)TNF−α、C、D)IL−6、及びE、F)IL−10サイトカインのレベルを、表示した各グループの平均(水平バー)と共にプロットした。テューキーのpost−hoc試験を用いた一方向ANOVA分析を各々のデータセットに関して行った。このデータの統計的有意性を括弧内に示す(p<0.05)(詳しくは本文を参照)。
【図15−2】内毒血症の炎症モデルマウスにおけるCpn10活性。Cpn10及びCpn10変異体は、LPS誘発による血清中へのTNF−α、IL−10、及びIL−6の産生を低下させた。「IPS攻撃」(表1、グループ1、3、5、7、9、及び11参照)又は「生理食塩水コントロール」(表1、グループ2、4、6、8、10、及び12参照)のマウスからの血清を、CBA(「方法」を参照)を用いて炎症関連のサイトカインについて分析した。A、B)TNF−α、C、D)IL−6、及びE、F)IL−10サイトカインのレベルを、表示した各グループの平均(水平バー)と共にプロットした。テューキーのpost−hoc試験を用いた一方向ANOVA分析を各々のデータセットに関して行った。このデータの統計的有意性を括弧内に示す(p<0.05)(詳しくは本文を参照)。
【図15−3】内毒血症の炎症モデルマウスにおけるCpn10活性。Cpn10及びCpn10変異体は、LPS誘発による血清中へのTNF−α、IL−10、及びIL−6の産生を低下させた。「IPS攻撃」(表1、グループ1、3、5、7、9、及び11参照)又は「生理食塩水コントロール」(表1、グループ2、4、6、8、10、及び12参照)のマウスからの血清を、CBA(「方法」を参照)を用いて炎症関連のサイトカインについて分析した。A、B)TNF−α、C、D)IL−6、及びE、F)IL−10サイトカインのレベルを、表示した各グループの平均(水平バー)と共にプロットした。テューキーのpost−hoc試験を用いた一方向ANOVA分析を各々のデータセットに関して行った。このデータの統計的有意性を括弧内に示す(p<0.05)(詳しくは本文を参照)。
【図16】アセチル−Cpn10、Ala−Cpn10、及びGly−Cpn10のN末端の図。
【発明を実施するための形態】
【0064】
(定義)
本願明細書の文脈において、用語「含む」は、「主として含むが、必ずしも単独ではない」ことを意味する。さらに、「含有する」や「含んでなる」のような「含む」の変形は、相応に変化した意味を有する。
【0065】
Cpn10ポリペプチドに関する本願明細書における用語「野生型」には、それらの天然又は非天然の形態におけるポリペプチドが包含される。例えば、天然のヒトCpn10は、そのN末端がアセチル化されているが、本発明において用語「野生型」を用いる場合、アセチル化された形態又はアセチル化されていない形態のポリペプチドが包含される。さらに野生型Cpn10ポリペプチドは、N末端に更なるアラニン(A)残基を含んでもよい(国際公開第2004/041300号、この開示事項は本願明細書でも参照により援用される)。
【0066】
用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって相互に結合したアミノ酸から構成されるポリマーを意味する。用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本願明細書において相互に交換可能に用いられるが、本発明における「ポリペプチド」の用語は、全長のタンパク質の一部を構成するという意味において用いられうる。
【0067】
本願明細書における用語「ポリヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド塩基、又は公知の天然ヌクレオチドの類似体からなる一本鎖又は二重鎖のポリマーのことを指し、この用語は、他に明記がなければ、特定の配列に加え、それに対して相補的な配列をも包含する。用語「ポリヌクレオチド」及び「核酸」は、本願明細書において相互に交換可能に用いられる。
【0068】
用語「単離」は、対象の分子がその自然環境又は宿主から取り出され、付随の不純物が低減又は除去され、問題の分子が存在する支配的な分子種となっている(すなわち分子ベースで組成物/サンプル中の他の個々の種よりも豊富である)状態のことを意味する。典型的には、実質的に純粋な画分とは、対象の種が、存在する全ての高分子種の少なくとも約30%(分子ベース)を占める組成物である。一般に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全ての高分子種の約80超〜90%を含んでなる。最も好ましくは、対象の分子種は、実質的に同質になる(不純物が通常の検出方法では組成物中に検出できない程度)まで精製され、その組成物は実質的に単一の高い分子種からなる。
【0069】
本願明細書における用語「実質的」とは、大部分ではあるが必ずしも全てではないことを意味し、従って、対応する野生型ポリペプチドの構成領域を「実質的」に欠く組換ポリペプチドというときは、その組換ポリペプチドはその構成領域の一部を保持している場合もある。例えば、対応する野生型ポリペプチドの構成領域を「実質的」に欠く組換ポリペプチドは約50%以下の構成領域の配列を保持してもよいが、典型的には除かれる配列領域に比例して、当該構成領域は構造的及び/又は機能的に不活性となる。
【0070】
本願明細書における用語「保存的アミノ酸置換」とは、ポリペプチド鎖(タンパク質の一次配列)の中で1つのアミノ酸を同様な特性を有する別のアミノ酸と置換又は交換することを指す。例えば、荷電アミノ酸のグルタミン酸(Glu)を類似の荷電アミノ酸のアスパラギン酸(Asp)に置換することがその保存的アミノ酸置換である。
【0071】
本願明細書における用語「治療」、「治療する」及びこれらの変形は、疾患状態又は症候を治療する、疾患の確立を防止する、あるいは、形はどうあれ何らかの方法により疾患又は他の不都合な症状の進行を防止、後退、遅延又は好転させるための全ての任意の方法を指す。
【0072】
本願明細書における用語「有効量」には、その意味中に、所望の治療又は予防効果を提供するための薬剤又は化合物の、毒性はないが十分な量という意味が包含される。必要とされる正確な量は、治療される種類、被験者の年齢及び健康状態、治療される症状の重症度、投与される具体的な薬剤、及び投与方法等の因子に依存して、被験者ごとに異なる。このため、正確な「有効量」を特定することはできない。しかしながら、ある特定の場合には、適切な「有効量」は所定の実験のみを用いて当業者が定めてもよい。
【0073】
本願明細書における用語「調節する」、「調節」、及びこれらの変形は、本発明の特定の分子又は薬剤の存在下での分子の活性、生成、分泌、又は機能のレベルが、その分子又は薬剤が存在しない場合のその活性、生成、分泌、又は他の機能と比較して増加又は減少することを指す。これらの用語は、増加若しくは減少のいずれの定量化も暗示するものではない。当該調節は、所望の結果を生じるのに十分な程度であってもよく、また直接又は間接的な調節であってもよい。
【0074】
(配列の参照)
表1.下記の参照用の表中に、本願明細書の全体を通して用いるCpn10ポリペプチドに付した名称を示す。この表は、本願明細書に開示のCpn10ポリペプチドの特徴及びそれらの対応するアミノ酸及び核酸の配列番号の記載を含む。
【0075】
【表1】
【0076】
Cpn10は、10kDaの同一サブユニット7個のドーム形状である。ドーム内は多くの電荷を有して親水性である。各々のCpn10サブユニットは、2つの大きな伸展部分が突出した不規則なβ−バレル形状を形成する。第1の伸展部分は、7量体の中心部に延び、ドーム様の構造を形成するβ−ヘアピンループである。興味深いことに、GroES(大腸菌Cpn10)のルーフ部分は生理条件下で陰性荷電であるが、哺乳類Cpn10は陽性荷電しており、一方、ルーフの大部分はバクテリオファージCpn10(Gp31)から完全に失われている。この分子は、ドーム基部から延長しCpn60との相互作用を仲介する、フレキシブルな18アミノ酸可動ループである別の伸展部分も有する。部位特異的変異により、Cpn60との相互作用にとって決定的な、可動ループ内の種々の残基、すなわち、実際のCpn60結合サイトを構成する可動ループ基部の3つの疎水性残基(30−IML−32)、及び可動ループの柔軟性を制限する2つの残基(26−T及び33−P)が同定されてきた(Richardsonら、J.Biol.Chem.、276巻、4981−4987ページ、2001年)。この結果、Cpn60とのCpn10の会合は、Cpn10の18アミノ酸可動ループにより仲介される(図1D参照)。大腸菌GroESにおいては、Cpn60/GroEL−結合サイトのトリペプチドの疎水性はより低く(25−IVL−27)、可動ループは哺乳類Cpn10よりも柔軟である。このような変化により、GroESのCpn60/GroELに対する親和性は減少しており、Cpn10及びGreESがGroELに対して機能する一方で、GroESはCpn60との相互作用を生成することはできない。
【0077】
細胞外Cpn10が免疫調節効果を発生するメカニズムはCpn60を含むという仮説から出発し、本発明者らは可動ループ領域を目標としてCpn10の部位特異的変異体を作製し、本願明細書において、Cpn60との相互作用を損なわせる変異によっても免疫調節活性が保持されることを証明する。
【0078】
従って、本発明の一態様においては、免疫調節活性を示すが、実質的にタンパクフォールディング活性を欠いている、単離Cpn10ポリペプチドを提供する。
【0079】
本願明細書においてはまた、Cpn10の可動ループ領域の本質的な部分及び/又はCpn10のルーフβ−ヘアピン領域を欠失しても、Cpn10がToll様受容体TLR4からのシグナリングを調節する能力が消滅しないことを証明する。
【0080】
従って、本願発明は、対応する野生型Cpn10ポリペプチドと比較して、可動ループ領域とルーフβ−ヘアピン領域の1つ又は両方において、1つ以上のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加を含んでなる、免疫調節活性を有する単離Cpn10ポリペプチドも提供する。Cpn10の可動ループ及びルーフループの欠失は、本願明細書において開示のように、Ala−Cpn10−β−バレルポリペプチドと呼ぶ。
【0081】
本発明はまた、対応する野生型Cpn10ポリペチドと比較して、可動ループ領域とルーフβ−ヘアピン領域の1つ又は両方を実質的に欠いている、単離Cpn10ポリペプチドを提供する。
【0082】
本願明細書に記載のように、本発明者らは、TLRシグナリングの調節として決定しうるヒトCpn10に起因する免疫調節効果を、大腸菌GroESに導入できないことも証明した。さらに、ヒトCpn10のN末端残基が、それに対応する大腸菌GroES由来N末端残基で置換されているCpn10ポリペプチドが活性を有さないことは、Cpn10のN末端が免疫調節活性に必須であることを証明している。
【0083】
本願明細書において後述するように、本発明者らはまた、Cpn10のN末端にグリシン残基を付加すると免疫調節活性が増大することを証明した。アラニン残基又はグリシン残基等、アセチル基と構造上の相同性が得られるアセチル基又はアミノ酸が存在すると、Cpn10の免疫調節活性が増大すると考えられる。
【0084】
(ポリペプチド)
本願明細書に記載のように、本発明には典型的には、対応する野生型Cpn10ポリペプチドと比較して1つ以上のアミノ酸欠失、付加又は置換を含んでなり、免疫調節活性を有するCpn10ポリペプチドが包含される。典型的には前記野生型Cpn10は真核生物由来の任意のCpn10ポリペプチドである。例えば、Cpn10は、酵母(Saccharomyces cerevisiae等)、線虫(Caenorhabditis elegans等)、カエル(Xenopus tropicalis等)、ニワトリ(Gallus gallus等)、ゼブラフィッシュ(Danio terio等)、ハエ(Drosphila melanogaster等のコバエ等)、植物(Arabidopsis thaliana等)又は哺乳類由来であってもよい。哺乳類Cpn10は霊長類、ネズミ、ヒツジ、ウシ、イヌ、ネコ、ブタ又はウマの由来であってもよい。あるいは、Cpn10は古細菌由来であってもよい。特定の実施形態において、当該Cpn10はヒトCpn10である。野生型のヒトCpn10は配列番号1又は21で示されうる。野生型ヒトCpn10をコードするヌクレオチド配列は、配列番号2又は22で示されるか、又は配列番号2又は22とハイブリダイズするための十分な同一性を示すものでもよい。
【0085】
本発明は、本願明細書に記載される野生型Cpn10ポリペプチドの修飾体に関するが、それ以外にもN末端又はC末端において1つ以上のアミノ酸残基を付加、欠失、又は置換して修飾した野生型分子も包含される。例えば、アミノ酸付加は、Cpn10ポリペプチド又はその断片と第2のポリペプチド又はペプチド(例えばポリヒスチジンタグ)との融合、マルトース結合タンパクとの融合、グルタチオンS転移酵素との融合、緑色蛍光タンパク質との融合、あるいは、FLAG又はc−myc等との融合により得られる。例えば、野生型ヒトCpn10ポリペプチドは更なるグリシン(G)残基の付加を含んでなってもよい。前記Cpn10ポリペプチドはN末端にメチオニンイニシエータを有してもよく、有さなくてもよい。
【0086】
ヒトCpn10に基づくか又は本質的に由来する、本発明の免疫調節Cpn10ポリペプチドにおいては、当該ポリペプチドは典型的には、N末端配列MAGQAFRKFL、任意に1つ以上の上述の修飾を含んでなる。
【0087】
本願明細書に開示のように、本発明のポリペプチドは、可動ループ領域及びルーフβ−ヘアピン領域のいずれか又は両方に、又は複数のアミノ酸の付加、欠失、又は置換を含んでなる。一実施形態において、1つ以上のアミノ酸置換は、例えばCpn60との相互作用の原因となるトリペプチド領域内の可動ループ領域で起こり、改変ポリペプチドは、免疫調節活性は維持されるがタンパクフォールディング活性は有さなくなる。別の実施形態において、Cpn10ポリペプチドは、例えば、配列番号3又は24で表すように可動ループ領域を、あるいは、例えば、配列番号6又は26で表すようにルーフβ−ヘアピン領域を、あるいは配列番号9又は28で表すように可動ループ領域及びルーフβ−ヘアピン領域の両方を、本質的に欠く。
【0088】
本願明細書に定義のように、可動ループ又はルーフβ−ヘアピンを構成するアミノ酸は、配列に基づいて定義され、大腸菌Cpn10すなわちGroESの結晶構造が知られている。真核生物Cpn10ポリペプチドの可動ループ及びルーフβ−ヘアピン領域は、進化においてCpn10配列が保存され予想される3次元タンパク構造が保存される見地から、同等であると予想された。しかしながら、真核生物Cpn10ポリペプチドの可動ループ及びルーフβ−ヘアピン領域の正確な境界は、GroESとはやや異なるようである。
【0089】
本願明細書に使用の用語「変異体」は、実質的に類似の配列を指す。通常、ポリペプチド配列変異体は、一般に同等の生物活性を有する。さらに、これらのポリペプチド配列変異体は、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を共有してもよい。同様に、用語「変異体」の意味には、本発明のポリペプチドのホモログも含まれる。ホモログは、典型的には異種由来のポリペプチドであるが、本質的に同一の生物学的機能、又は本発明に開示の対応するポリペプチドとしての活性を共有している。
【0090】
さらに、用語「変異体」には本発明のポリペプチドのアナログも包含され、用語「アナログ」は本発明のポリペプチド誘導体であり、当該誘導体は、実質的に同一の機能を有するように、又は複数のアミノ酸残基の付加、欠失、置換を含んでなるポリペプチドのことを意味する。用語「保存的アミノ酸置換」は、ポリペプチド鎖(タンパク質の一次配列)の中の1つのアミノ酸を、同様な特性を有する別のアミノ酸と置換又は交換することを指す。
【0091】
本発明には、本願明細書に開示のポリペプチドの断片も包含される。用語「断片」は、本発明のポリペプチド又はそれらの変異体の構成物をコードするか又は構成物である、ポリペプチド分子を指す。典型的には、当該断片は、構成物であるポリペプチドに共通の定性的な生物活性を有する。当該ペプチド断片は、約5〜約150アミノ酸長、約5〜約100アミノ酸長、約5〜約50アミノ酸長、又は約5〜約25アミノ酸長であってもよい。あるいは、当該ペプチド断片は約5〜約15アミノ酸長であってもよい。
【0092】
上述の、又は複数のアミノ酸残基の付加、欠失、置換によりN−及び/又はC末端が修飾されたCpn10ポリペプチドも本発明の範囲に包含される。
【0093】
(Cpn10の調製)
本発明によれば、Cpn10ポリペプチドは、当技術分野に周知の組み換えDNA及び分子生物学における標準的な技術を用いて調製してもよい。例えば、Sambrookら、”Molecular Cloning:A Laboratory Manual”、Cold Spring Harbor、New York、1989年、及び、Ausubelら、”Current Protocols in Molecular Biology”、Greene Publ. Assoc. and Wiley−Intersciences、1992年、等の標準テキストからガイダンスを入手してもよい。Mortonら、2000年(Immunol.Cell Biol.、78巻、603−607ページ)、Ryanら、1995年(J.Biol.Chem.、270巻、22037−22043ページ)、及びJohnsonら、2005年(J.Biol.Chem.、280巻、4037−4047ページ)に記載の方法はCpn10ポリペプチド精製の適切な例であるが、当業者であれば、本発明は用いた精製法若しくは調製法、あるいは本発明の方法及び組成物に係るCpn10調製に利用しうる他のいかなる方法であってもよく、限定されないことを理解するであろう。Cpn10ペプチドは、endoLys−C、endoArg−C、endoGlu−C、及びstaphylococcus V8−protease等の1つ以上のプロテイナーゼによるタンパク分解により調製してもよい。消化されたペプチド断片は、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により精製してもよい。
【0094】
本発明のCpn10ポリペプチド精製は、大量生産用にスケールアップしてもよい。例えば、本発明者らは本願明細書に記載のように、大腸菌のバッチ発酵により高純度の臨床グレードCpn10ポリペプチドを大量(グラム単位で)生産するバイオプロセスを開発した。
【0095】
本発明のCpn10ポリペプチド、並びにその断片及び変異体は、当技術分野において公知の標準的な液相又は固相化学的方法により合成してもよい。例えば、Steward及びYoung(J.M.Steward及びJ.D.Young、”Solid Phase Peptide Synthesis(第2版)”、Pierce Chemical Co.、米国イリノイ州、1984年、に記載の固相化学的手法に従い、当該分子を合成してもよい。
【0096】
一般的に、このような合成法は、又は複数のアミノ酸又は適切に保護されたアミノ酸を順次付加してペプチド鎖を伸長させることを含んでなる。典型的には、最初のアミノ基又はカルボキシ基を適切な保護基により保護する。次いで、保護されたアミノ酸を、非反応性の固体支持体に結合させるか、又はアミド結合生成に適した条件下において、相補的(アミノ又はカルボキシ)基を適切に保護された、配列における次のアミノ酸を付加することにより溶液中で反応させる。次いで、この新たに付加したアミノ酸残基から保護基を除去し、次の(保護された)アミノ酸を添加し、同様の反応を以降続ける。所望のアミノ酸を全て結合させた後、全ての残りの保護基、必要であれば全ての固体支持体を、逐次又は平行して除去し、最終的なポリペプチドを得る。
【0097】
関連技術分野における当業者に周知の技術を用いてCpn10のアミノ酸変異を行ってもよい。適切な読み枠が維持される限り、ヌクレオチドの付加、欠失又は置換(保存的及び/又は非保存的)等の任意のヌクレオチド変異導入を行い、その結果としてアミノ酸を変異させてもよい。例示される当該技術としては、ランダム変異導入、部位特異的変異導入、オリゴヌクレオチド媒介又はポリヌクレオチド媒介による変異導入、現存の又は人為的に設けた制限酵素部位を用いた特定の領域の欠失、並びにポリメラーゼ連鎖反応が挙げられる。
【0098】
本発明のCpn10ポリペプチドを用いて免疫調節活性を生じさせる際、Cpn10の7量体を形成させてもよい。本発明の実施に際して免疫調節活性を試験する場合、当業者に公知の多数の技術のうちのいずれか1つを用いてもよい。本願明細書に例示のように、Cpn10の免疫調節活性は、当該ポリペプチドがToll様受容体TLR4からのシグナル伝達を調節する能力を、例えばルシフェラーゼ・バイオアッセイを用いて、典型的にはリポポリサッカライド等のTLR4アゴニストの存在下において測定することにより解析できる。その代替法として、又はその方法に加えて、例えば末梢血単核細胞等の細胞中でのNF−kB産生又はサイトカイン産生等をインビトロ、エクスビボ若しくはインビボアッセイ等の他のアッセイを行って免疫調節活性を解析してもよい。
【0099】
(ポリヌクレオチド)
本発明の実施形態は、上述のCpn10をコードする単離ポリヌクレオチド並びに当該ポリヌクレオチドの変異体及び断片を提供する。野生型Cpn10をコードするヌクレオチド配列は配列番号2又は22で示されるか、又は配列番号2又は22の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0100】
とりわけ、本発明のCpn10−NtermESポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号43として示されるか、又は配列番号43の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0101】
本発明のAla−Cpn10ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号22として示されるか、又は配列番号22の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0102】
本発明のAla−Cpn10−Δmlポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号25として示されるか、又は配列番号25の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0103】
本発明のAla−Cpn10−Δroofポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号27として示されるか、又は配列番号27の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0104】
本発明のCpn10β−バレルポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号10として示されるか、又は配列番号10の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。本発明のAla−Cpn10β−バレルポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号29として示されるか、又は配列番号29の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0105】
本発明のGly−Cpn10ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号31として示されるか、又は配列番号31の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0106】
本発明のAla−Cpn10−IFIポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号36として示されるか、又は配列番号36の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0107】
本発明のAla−Cpn10−IIIポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号38として示されるか、又は配列番号38の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0108】
本発明のAla−Cpn10−EEE−cHisポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号40として示されるか、又は配列番号40の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0109】
本発明のAla−Cpn10−cHisポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号42として示されるか、又は配列番号42の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0110】
Cpn10−Δmlポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は本発明の中で考慮され、配列番号4又は5として示されるか、又は配列番号4又は5の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0111】
Cpn10−Δroofポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は本発明の中で考慮され、配列番号7又は8として示されるか、又は配列番号7又は8の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0112】
Cpn10β−バレルポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は本発明の中で考慮され、配列番号10として示されるか、又は配列番号10の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0113】
上記のポリペプチドに関して、本願明細書で使用する用語「変異体」とは、実質的に類似する配列のことを指す。一般的に、ポリヌクレオチド配列変異体は、定性的な生物活性を共有するポリペプチドをコードする。さらに、これらのポリヌクレオチド配列変異体は少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を共有してもよい。同様に、用語「変異体」の意味には、本発明のポリヌクレオチドのホモログも包含される。ホモログとは典型的には、異種由来のポリヌクレオチドであるが、本質的に同一の生物学的機能を共有するポリヌクレオチドである。
【0114】
本発明のポリヌクレオチドの断片もまた本発明に包含される。用語「断片」は、本発明のポリヌクレオチドの構成物をコードするか又は本発明のポリヌクレオチドの構成物である、核酸分子を指す。ポリヌクレオチドの断片は、必ずしも生物活性を保持するポリペプチドをコードしない。例えば、当該断片はむしろハイブリダイゼーションプローブ又はPCRプライマーとして有用である。当該断片は本発明のポリヌクレオチドに由来してもよく、あるいは、例えば化学合成等の他の手段により合成してもよい。本発明のポリヌクレオチド及びその断片を用いて、当業者に公知の技術に使用されるアンチセンス分子を調製してもよい。
【0115】
従って、本発明には、本発明のポリヌクレオチドの配列に基づく、プライマー又はプローブとして用いられるオリゴヌクレオチド及び断片が包含される。オリゴヌクレオチドとは、PCR等の核酸増幅での使用に適切な短い核酸残基の配列であり、典型的には少なくとも約10ヌクレオチド〜約50ヌクレオチド長、より典型的には約15ヌクレオチド〜約30ヌクレオチド長である。当該プローブは様々な長さのヌクレオチド配列であり、例えば約10ヌクレオチド〜数千ヌクレオチド長を有し、典型的にはハイブリダイゼーションによるホモログ配列の検出に用いられる。配列間の相同性(配列の同一性)は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーにより主に決定される。とりわけ、プローブとして用いられるヌクレオチド配列は、低いストリンジェンシー、中度のストリンジェンシー、又は高いストリンジェンシー下で、本願明細書に開示のポリヌクレオチドのホモログ又は他の変異体に対してハイブリダイズしてもよい。ストリンジェンシーの低いハイブリダイゼーション条件は、50℃、2×SSC中でなされるハイブリダイゼーションに対応してもよい。当技術分野に公知の条件及び反応は多数存在し、それらを用いてハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを変化させてもよい。例えば、特定の核酸に対してハイブリダイズさせる核酸の長さ及び性質(DNA、RNA、塩基組成)、塩又は他の成分(ホルムアミド、硫酸デキストラン、ポリエチレングリコール等)の濃度、並びにハイブリダイゼーション及び/又は洗浄ステップ時の温度変化等が挙げられる。例えば、ハイブリダイゼーションフィルターを、少なくとも55℃(低ストリンジェンシー)、少なくとも60℃(中度のストリンジェンシー)、少なくとも65℃(中度/高いストリンジェンシー)、少なくとも70℃(高いストリンジェンシー)又は少なくとも75℃(非常に高いストリンジェンシー)の温度で、2×SSC中で30分間、2回洗浄してもよい。
【0116】
特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドをベクター中にクローニングしてもよい。当該ベクターは、プラスミドベクター、ウィルスベクター、又は外来配列の挿入、真核生物細胞への導入及び導入された配列の発現に好適な任意の他の担体であってもよい。典型的には当該ベクターは真核生物で発現するベクターであり、プロモータ、エンハンサ、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナル及び転写終結配列等の発現制御配列及びプロセシング配列を含んでもよい。
【0117】
(抗体)
本発明は、本発明のCpn10ポリペプチドに選択的に結合する抗体、並びにその断片及びアナログを提供する。好適な抗体としてはポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、単鎖、Fab断片、及びFab発現ライブラリが挙げられるが、限定されない。本発明の抗体は、Cpn10ポリペプチド、その断片若しくはアナログのアゴニスト若しくはアンタゴニストとして作用してもよい。
【0118】
好適な抗体は、本発明のCpn10ポリペプチドの別々の領域又は断片、とりわけ免疫調節活性の供与、及び/又はパートナー又は基質との結合に関与するそれらから調製される。抗原性Cpn10ポリペプチドは少なくとも5個の、好適には少なくとも10個のアミノ酸を含んでなる。
【0119】
適切な抗原を産生させる方法は、当業者にとり自明である。例えば、抗Cpn10モノクローナル抗体(典型的にはFab部分を含む)は”Antibodies−A Laboratory Manual”、Harlow及びLane編集、Cold Spring Harbor Laboratory、米国ニューヨーク、1988年に記載のハイブリドーマ技術を用いて調製してもよい。
【0120】
本質的に、本発明のCpn10ポリペプチド、その断片又はアナログに対するモノクローナル抗体の調製は、培養液中の連続培養細胞を用いる任意の抗体分子の産生方法を用いてもよい。これらの方法としては、Kohlerら(Nature、256巻、495−497ページ、1975年)が開発した最初のハイブリドーマ技術、並びにトリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、Immunology Today、4巻、72ページ、1983年)、及びEBVハイブリドーマ技術(Coleら、”Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy”、77−96ページ、Alan R.Liss, Inc.、1985年)等が挙げられる。不死化した抗体生産細胞株は、細胞融合以外の技術(例えば発ガン性DNAによるB細胞の直接転換、又はEpstein−Barrウィルスの形質移入等)により作製することもできる例えば、M.Schreierら、”Hybridoma Techniques”、1980年;Hammerlingら、”Monoclonal Antibodies and T−cell Hybridomas”、1981年;Kennettら、”Monoclonal Antibodies”、1980年、を参照。
【0121】
要約すると、モノクローナル抗体を生成するハイブリドーマの生成手段であり、骨髄腫(myeloma)又は他の不死化細胞株を、その認識因子結合部分、又は認識因子、又は起源特異的なDNA結合部分を免疫された、哺乳類の脾臓由来のリンパ球と融合する。本発明の実施に有用なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、存在する認識因子と免疫反応する能力、及び標的細胞において特異的な転写活性を抑制する能力を基に同定される。
【0122】
本発明の実施に有用なモノクローナル抗体は、適切な抗原特異性を有する抗体分子を分泌するハイブリドーマを含有する培地を含んでなるモノクローナルハイブリドーマ培養液を培養することにより調製できる。当該培養液は、ハイブリドーマが抗体分子を培養液中に分泌するのに適する条件下で十分な期間維持する。次いで抗体含有培養液を回収する。さらに抗体分子を公知の技術により単離することができる。
【0123】
同様に、本発明のCpn10、あるいはその断片又はアナログに対するポリクローナル抗体の調製に用いられる公知の種々の手順が存在する。Cpn10ポリクローナル抗体を調製する場合、限定されないが、ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ他の種々の宿主動物を、Cpn10ポリペプチドあるいはその断片又はアナログの注射により免疫してもよい。さらに、Cpn10ポリペプチドあるいはその断片又はアナログを、ウシ血清アルブミン(BSA)又はキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)等の免疫キャリアとコンジュゲートしてもよい。同様に、免疫応答を増強させるために、フロイント(完全及び不完全)のアジュバント、水酸化アルミニウム等のミネラルゲル、リゾレシチン等の界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、並びにヒト用の有用なアジュバントとしてBCG(bacille Calmette−Guerin)及びCorynebacterium parvum等の種々のアジュバントを用いてもよいが、これらに限定されない。
【0124】
また、所望の抗体のスクリーニングは当業者に公知の種々の方法により実施できる。抗体の免疫学的な特異的結合に関するアッセイとしては、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着法)、サンドイッチイムノアッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、in situイムノアッセイ、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集反応アッセイ、補体結合反応アッセイ、免疫蛍光アッセイ、プロテインAアッセイ及び免疫電気泳動アッセイ等(例えば、Ausubelら編集、1994年、”Current Protocols in Molecular Biology”、1巻、John Wiley&Sons,Inc.、New Yorkを参照)が挙げられるが、これらに限定されない。抗体結合は、抗Cpn10一次抗体上の検出可能な標識によって検出してもよい。あるいは、抗Cpn10抗体は、適切に標識した二次抗体又は試薬との結合によって検出してもよい。イムノアッセイにおいて結合を検出するための種々の方法が当業者に公知であり、本発明の範囲内に包含される。
【0125】
本発明の抗体を、当業者に周知の診断方法及びキットに用いて体液又は組織中のCpn10を定性的に検出若しくは定量することができ、あるいは当該抗体を、種々の疾病、障害又は症状の治療のための方法及び組成物に使用してもよい。
【0126】
本発明のCpn10ポリペプチドあるいはその断片又はアナログを免疫源として産生させた抗体(又はその断片)は、Cpn10との結合親和性を有する。好適には、当該抗体(又はその断片)は、約105M−1以上、好適には約106M−1以上、より好適には約107M−1以上、最も好適には約108M−1以上の結合親和性又は結合活性を有する。
【0127】
本発明に係る抗体を十分な量で調製するために、血清フリー培地を用いたバッチ培養により抗体を生産してもよい。培養後、クロマトグラフィー及びウィルス不活性化/除去工程を組み合わせた多段階工程を経て抗体を精製してもよい。例えば、まず抗体をプロテインAアフィニティカラムにより分離し、次いで溶媒/界面活性剤で処理し、あらゆる脂質エンベロープを有するウィルスを不活性化する。さらなる精製を行う場合、典型的にはアニオン及びカチオン交換クロマトグラフィーを用いて残余タンパク、溶媒/界面活性剤及び核酸を除去してもよい。精製した抗体を、ゲル濾過カラムを用いてさらに精製し、0.9%生理食塩水中懸濁液としてもよい。次いで、処方したバルク調製液を滅菌し、ウィルスをフィルタ除去して懸濁液を調製してもよい。
【0128】
(アゴニスト及びアンタゴニスト)
抗Cpn10抗体そのもの以外にも、本発明のポリペプチド並びにその断片及び変異体は、Cpn10と相互作用する化合物又は薬剤のスクリーニング及び同定に特に有用である。とりわけ、望ましい化合物はCpn10の免疫調節活性を調節する化合物である。かかる化合物は、Cpn10の免疫調節活性を、活性化、増加、阻害又は抑制することを通じて調節する。適切な化合物は、Cpn10と直接的(例えば結合)又は間接的に相互作用することによって影響を及ぼす。
【0129】
本発明のCpn10ポリペプチドと結合若しくは相互作用する化合物、具体的にはCpn10の活性を調節する化合物は、種々の適切な方法により同定してもよい。相互作用及び/又は結合は、競合結合アッセイ又はツーハイブリッドアッセイを用いて測定してもよい。
【0130】
例えば、ツーハイブリッドアッセイは、タンパク−タンパク相互作用の検出に典型的に用いられる、酵母ベースの遺伝子アッセイ系(Fields及びSong、1989年)である。要約すると、このアッセイは転写活性化因子のマルチドメイン性を利用するアッセイである。例えば、公知の転写活性化因子のDNA結合ドメインが本発明のCpn10ポリペプチドあるいはその断片又は変異体と融合し、転写活性化因子の活性化ドメインが候補タンパクと融合する。候補タンパクとCpn10ポリペプチドあるいはその断片又は変異体との相互作用により、転写活性因子のDNA結合ドメインと活性化ドメインが近接する。それにより転写活性因子によって活性化された特定のレポーター遺伝子の転写により、その相互作用を検出することが可能となる。
【0131】
あるいは、アフィニティクロマトグラフィを用いてCpn10の結合パートナーを同定してもよい。例えば、本発明のCpn10ポリペプチドあるいはその断片又は変異体を支持体(セファロース等)に固定化し、細胞可溶化液をカラムに通過させる。次いで、固定化したCpn10ポリペプチドあるいはその断片又は変異体に結合するタンパク質をカラムから溶出して同定してもよい。最初に、かかるタンパクを例えばN末端アミノ酸シーケンシングにより同定してもよい。
【0132】
あるいは、上述の技法の変形例として、Cpn10ポリペプチドあるいはその断片又は変異体を、アルカリホスファターゼ等の検出可能なタグと融合させることにより融合タンパクを調製し、Flanagan及びLeder、1990年、に記載の免疫沈降法の変形法を実施してもよい。
【0133】
Cpn10活性を調節する化合物を検出する方法は、Cpn10ポリペプチドを候補化合物及び適切な標識基質と結合させる操作と、当該基質の変化を基にしてCpn10に対する当該化合物の効果(時間の関数として計測してもよい)をモニターする操作を含んでなる。適切な標識物質としては、例えば比色測定、放射測定、蛍光測定、又は蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)ベースの方法のために標識された物質を含んでなる。
【0134】
本発明のCpn10ポリペプチド並びに適切な断片及び変異体を用いて、候補化合物のCpn10との結合能若しくは相互作用能をハイスループットスクリーニングで試験してもよい。かかる候補化合物をさらに、機能性Cpn10に対してスクリーニングし、Cpn10活性への当該化合物の効果を測定してもよい。
【0135】
なお、上述の方法は、本発明のCpn10ポリペプチド並びにその断片及び変異体と相互作用するか、又はその活性を調節しうる化合物を同定するために用いる方法の若干例に過ぎない。他の適切な方法も当業者に公知であり、また本発明の範囲内に包含される。
【0136】
上述の方法により、化合物がCpn10活性を活性化する(アゴニスト)か、又は抑制する(アンタゴニスト)かのいずれであるかを同定することができる。例えば、当該化合物は抗体、低分子量ペプチド、核酸、又は非タンパク性有機分子でもよい。
【0137】
上述の方法によるスクリーニングのための有望なCpn10活性調節剤は、当業に公知の無数の技法により生成されうる。例えば、種々の形態のコンビナトリアルケミストリーを用いて、推定上の非タンパク性調節剤を調製してもよい。さらに、核磁気共鳴法(NMR)及びX線結晶解析等の技術を用いてCpn10ポリペプチド、その断片及び変異体の構造をモデリングし、コンピュータを用いて可能な調節剤を予測してもよい。
【0138】
(組成物及び投与経路)
本発明のCpn10ポリペプチド及びポリヌクレオチドは、治療薬としても有用である。例えば、これらの分子の用途としては、被検者に対して治療的有効量の当該分子を投与して被検者の疾病又は症状の治療又は予防を行うことが挙げられる。典型的には、当該疾病及び症状は、被検者の免疫応答を調節することにより治療できるものである。当該疾病及び症状の例としては、急性又は慢性的炎症疾患、喘息、過敏症、多発性硬化症、GVHD及び感染症が挙げられるがこれらに限定されない。当該感染症は細菌又はウィルス感染により生じうる。従って、Cpn10ポリペプチド及びポリヌクレオチドを含んでなる、疾病又は症状の治療又は予防用の薬理学的に有用な化合物が考慮される。
【0139】
また、抗Cpn10抗体等の、本発明のCpn10ポリペプチドのアゴニスト及びアンタゴニストは、治療薬としても有用である。従って、本発明には、当該アゴニスト及びアンタゴニスト並びにそれを含んでなる薬理学的組成物を用いる治療法も包含される。
【0140】
一般的に、本発明に係る方法への使用に適切な組成物は、当業者に公知の方法及び手順に従って調製してもよく、従って薬理学的に許容できる担体、希釈剤及び/又はアジュバントを含んでもよい。
【0141】
組成物は標準的な経路で投与されてもよい。一般的に、当該組成物は非経口的(例えば、静脈内、脊髄内、皮下、又は筋肉内)、経口的、又は局所的な投与経路により投与される。投与は全身投与又は局所投与であってもよい。任意の所与の状況において採用される投与経路は、治療しようとする症状の性質、症状の重篤さの程度、供給される特定の化合物の必要量、及び当該化合物による副作用等の数多くの要因に依存する。
【0142】
通常、当業者に公知の方法に従って適切な化合物は調製されてもよく、薬理学的に許容できる希釈剤、アジュバント及び/又は賦形剤を含んでもよい。希釈剤、アジュバント及び/又は賦形剤は、当該組成物の他の成分と適合性を有するという意味で「許容できる」ものでなくてはならず、その受容者に有害であってはならない。
【0143】
薬理学的に許容できる担体又は希釈剤としては、脱塩水又は蒸留水;生理食塩水;ピーナッツ油、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、とうもろこし油、ゴマ油、落花生種(arachis)油又はココナツ油等の植物油;シリコーン油(メチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサン及びメチルフェニルポリシロキサン等のポリシロキサン類を含む);揮発性シリコーン類;液状パラフィン、ソフトパラフィン又はスクアラン等の鉱物油;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム又はヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;エタノール又はイソプロパノール等の低級アルカノール;低級アラルカノール;低級ポリアルキレングリコール又は低級アルキレングリコール(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール又はグリセリン);パルミチン酸イソプロピル、ミスチリン酸イソプロピル又はオレイン酸エチル等の脂肪酸エステル;ポリビニルピリドン;寒天;カラギーナン;トランガカントゴム又はアラビアゴム及びワセリンが挙げられる。典型的には、1つ以上の担体は組成物の10重量%〜99.9重量%を構成する。
【0144】
本発明の組成物は、注射投与に適切な形態、経口投与に適切な剤形(例えばカプセル、錠剤、カプレット、エリキシル剤等)、局所投与に適切な軟膏、クリーム又はローションの形態、点眼に適した形態、鼻腔内又は経口吸引等の吸引投与に適したエアロゾル形態、非経口投与(すなわち皮下、筋肉内又は静脈注射)に適した形態であってもよい。
【0145】
注射可能な溶液又は懸濁液、毒性を有さず非経口投与に許容できる希釈剤又は担体としては、リンガー液、等張生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、エタノール及び1,2プロピレングリコール等が挙げられる。
【0146】
経口使用のための適切な担体、賦形剤及びアジュバントの例としては、ピーナッツ油、液状パラフィン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、トラガカントゴム、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、ゼラチン及びレシチンが挙げられる。これらに加えて、経口投与用の製剤には適切な香料及び着色剤を含有させてもよい。カプセルの形態で用いる場合は、カプセルは崩壊を遅延するモノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセリン等の化合物でコーティングしてもよい。
【0147】
アジュバントは、典型的には軟化剤、乳化剤、濃化剤、保存料、殺菌剤及び緩衝剤を含んでなる。
【0148】
経口投与用の固形剤には、ヒトへの投与及び獣医学的に薬理学的に許容できる結合剤、甘味料、崩壊剤、希釈剤、香料、コーティング剤、保存料、潤滑剤及び/又は時間遅延剤を含有させてもよい。適切な結合剤としては、アラビアゴム、ゼラチン、コーンスターチ、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース又はポリエチレングリコールが挙げられる。適切な甘味料としてはショ糖、乳糖、ブドウ糖、アスパルテーム又はサッカリンが挙げられる。適切な崩壊剤としてはコーンスターチ、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、グアーガム、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸又は寒天が挙げられる。適切な希釈剤としては乳糖、ソルビトール、マンニトール、デキストロース、カオリン、セルロース、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム又はリン酸二カルシウムが挙げられる。好適な香料としては、ハッカ油、冬緑油、サクランボ、オレンジ又はラズベリー香料が挙げられる。好適なコーティング剤としては、アクリル酸及び/又はメタクリル酸及び/又はそれらのエステルの重合体又は共重合体、ロウ、脂肪アルコール、ゼイン、シェラック又はグルテンが挙げられる。好適な保存料としては、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、α−トコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン又は亜硫酸水素ナトリウムが挙げられる。好適な潤滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウム又はタルクが挙げられる。好適な時間遅延剤としては、モノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセリンが挙げられる。
【0149】
経口投与用の液体製剤は、上述の薬剤に加えて液体担体を含有してもよい。好適な液体担体としては、水、オリーブ油、ピーナッツ油、ゴマ油、ヒマワリ油、サフラワー油、落花生種(arachis)油、ヤシ油等の油、流動パラフィン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、脂肪アルコール、トリグリセリド又はそれらの混合物が挙げられる。
【0150】
経口投与用の懸濁液は、分散剤及び/又は懸濁化剤をさらに含有してもよい。好適な懸濁化剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム又はアセチルアルコールが挙げられる。適切な分散剤としては、レシチン、ステアリン酸等の脂肪酸のポリオキシエチレンエステル、ポリオキシエチレンソルビトールモノ又はジオレアート、ステアラート又はラウラート、ポリオキシエチレンソルビタンモノ又はジオレアート、ステアラート又はラウラート等が挙げられる。
【0151】
経口投与用のエマルジョンは、さらに又は複数の乳化剤を含有してもよい。好適な乳化剤としては、上記に例示した分散剤、又はアラビアゴム又はトラガカントゴム等の天然ゴムが挙げられる。
【0152】
非経口投与可能な組成物の調製方法は当業者に公知であり、例えば、”Remington’s Pharmaceutical Science”、第15版、Mack Publishing Company、Easton、米国ペンシルバニア州により多くの詳細が記載され、本願明細書において参照することにより援用する。
【0153】
本発明に係る局所投与用製剤は、有効成分、並びに1つ以上の許容できる担体及び任意の他の治療用薬効成分を含んでなる。局所投与に適した製剤としては、例えば眼、耳又は鼻への投与用のリニメント剤、ローション、クリーム、軟膏剤又はペースト剤、並びに液滴等の、皮膚を通過して治療を要する部位への輸送に適する液体又は半流動体の製剤が挙げられる。
【0154】
本発明に係る液滴は、滅菌された水溶液若しくは油性溶液、又は懸濁液を含有してもよい。これらは、抗菌剤及び/又は抗真菌剤及び/又は他の任意の適切な保存料を含有する水溶液に有効成分を溶解させ、適宜界面活性剤を添加して調製してもよい。次いで得られた溶液をろ過して浄化し、適切な容器に移して滅菌してもよい。滅菌は、オートクレーブ又は90〜100℃に半時間維持することにより、又はろ過後により達成してもよく、次いで無菌技術による容器への移動に続く。液滴への添加に適切な抗菌剤又は抗真菌剤の例としては、フェニル水銀の硝酸塩又は酢酸塩(0.002%)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)及び酢酸クロルヘキシジン(0.01%)が挙げられる。油性溶液の製剤にとり好適な溶媒としては、グリセロール、希釈アルコール及びプロピレングリコールが挙げられる。
【0155】
本発明に係るローションとしては、皮膚又は眼への滴下に適しているものが挙げられる。点眼剤には適宜殺菌剤を含有する滅菌水溶液を含有させてもよく、上記の液滴の製剤化に関する方法と同様に調製してもよい。皮膚への塗布用のローション又はリニメント剤はまた、アルコール又はアセトン等の皮膚の乾燥を促進し、冷却する物質、及び/又はグリセロール又はヒマシ油若しくは落花生種油(arachis)等のオイル等の保湿剤を含有してもよい。
【0156】
本発明に係るクリーム、軟膏剤又はペースト剤は、外用有効成分を含有する半固体製剤である。これらは、微細に粉体化された形態の有効成分を、単独で、又は当該有効成分を含有する水性若しくは非水性溶媒中の溶液若しくは懸濁液の状態で、グリス状又は非グリス状の基材と混合して調製してもよい。当該基材は、硬質・軟質・液状パラフィン等の炭化水素、グリセロール、ビーズワックス、金属石鹸;粘性物質;アーモンド油、トウモロコシ油、落花生種(arachis)油、ヒマ油又はオリーブ油等の天然起源の油;羊毛脂又はその誘導体、又はステアリン酸又はオレイン酸等の脂肪酸、並びにプロピレングリコール又はマクロゴール等のアルコールが挙げられる。
【0157】
当該組成物には、ソルビタンエステル又はそのポリオキシエチレン誘導体、アニオン性、カチオン性又は非イオン性界面活性剤等の任意の適切な界面活性剤を添加してもよい。天然ガム、セルロース誘導体、又はケイ質シリカ等の無機物質の懸濁剤、及びラノリン等の他の成分を含有させてもよい。
【0158】
当該組成物はリポソームの形態で投与してもよい。リポソームは、一般的にリン脂質又は他の脂質に由来し、水溶性溶媒中に分散した単層又は多層の水和液晶により形成される。毒性がなく、生理学的に許容でき、代謝され、リポソームを形成できる脂質が使用できるリポソームの形態の組成物は、安定剤、保存料、賦形剤等を含有してもよい。好適な脂質は、リン脂質及びホスファチヂルコリン(レシチン)であり、それらは天然由来でも合成物でもよい。リポソーム調製法は当業に公知であり、特に本件に関しては、Prescott編集、”Methods in Cell Biology”、14巻、Academic Press、New York、N.Y.、1976年、33ページ以下(本願明細書に援用する)を参照されたい。
【0159】
当該組成物はポリエチレングリコール(PEG)誘導体のアレーとコンジュゲートさせてもよい。タンパクへのPEG付加(PEG化)は、血漿クリアランス速度を低下させるための確立された方法であり、これによりタンパクの効力は増加する(Nucciら、1991年、Adv.Drug Del.、Rev.6、133ページ)。さらなるPEG化の利点としては、タンパクがより安定化し、免疫原性が低下し、溶解度が上昇し、タンパク分解に対する感受性が低下すること等が挙げられる。PEG分子は(OCH3CH2)n−OHの基本繰り返し構造を有し、分子量に従って分類される。PEG誘導体はタンパク質とコンジュゲートすることにより水力学的な半径を増大させ、半減期の増加は通常、付加したPEG鎖のサイズと直接に相関する(Sheffield W.、2001年、Curr.Drug Targets Cardiovasc.Haematol.Disord.、1巻、1−22ページ)。
【0160】
当該組成物はマイクロパーティクルの形態で投与してもよい。従来、ポリアクチド(PLA)、ポリアクチド−コ−グリコリド(PLGA)、及びエプシロン−カプロラクタム(ε−カプロラクトン)から調製される生分解性のマイクロパーティクルが、血漿中の半減期を長期化して有効性を持続させるための薬剤担体として広範に用いられている(R.Kumar, M.、2000年、J.Pharm.Pharmaceut.Sci.、3巻、2号、234−258ページ)。マイクロパーティクルは従来、ワクチン、抗体、及びDNA等の種々の薬剤候補物の輸送用に調製されている。さらにこれらの調製物は、種々の非経口的な輸送経路(皮下注射、静脈内注射及び吸引等)用に開発・改良がなされている。
【0161】
当該組成物は、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、並びに有機溶媒若しくは混合有機溶媒を含んでなる制御放出マトリクスと組み合わせてもよい。また、ポリマー添加物を放出制御剤として担体に添加して、さらに粘度を高めて放出速度を低下させてもよい。SAIBは周知の食品添加物である。これは非常に高い親水性を有し、名目上6個のイソブチル酸エステルと2個の酢酸エステルの比率で完全にエステル化したショ糖誘導体である。混合エステルとしてのSAIBは結晶化しないが、透明で粘性の液体として存在する。SAIBを、エタノール又はベンジルアルコール等の薬理学的に許容できる有機溶媒と混合すると、混合物の粘性が、注射可能な程度まで低下する。薬理活性成分をSAIB輸送用の担体に添加し、SAIB溶液又は懸濁液の処方を調製してもよい。この製剤を皮下注射すると、溶媒がマトリクスから拡散し、SAIB−薬剤又はSAIB−薬剤−ポリマー混合物が、in situでデポーが形成される。
【0162】
本発明においては、被検者への分子及び薬剤の投与は治療的であってもよく、又は予防的であってもよい。治療用途では、すでに疾病に罹患している患者に対し、少なくとも疾病及び合併症を治癒する又は部分的に抑止するのに十分量な量の組成物を投与する。当該組成物は、患者を効果的に治療するための十分な量の分子又は薬剤を提供しなければならない。
【0163】
特定の患者に対する治療上有効な投与レベルは、治療しようとする障害及びその障害の重篤度;使用する分子又は薬剤の活性;使用する組成物;年齢、体重、健康状態、患者の性別及び食事;投与時間;投与経路;分子又は薬剤の排出速度;治療期間;治療と組み合わせて又は治療と同時に使用する薬剤、並びに医学分野で周知の他の関連する要因等に依存する。
【0164】
当業者であれば、ルーチン実験により疾病又は症状の治療に要する薬剤又は組成物の、有効かつ毒性を生じさせない量を決定することができる。
【0165】
一般的に、有効な投与量は、24時間あたり体重kgあたり約0.0001mg〜約1000mg、典型的には24時間あたり体重kgあたり約0.001mg〜約750mg、24時間あたり体重kgあたり約0.01mg〜約500mg、24時間あたり体重kgあたり約0.1mg〜約500mg、24時間あたり体重kgあたり約0.1mg〜約250mg、24時間あたり体重kgあたり約1.0mg〜約250mgの範囲と考えられる。より典型的には、有効な服用量は、24時間あたり体重kgあたり約1.0mg〜約200mg、24時間あたり体重kgあたり約1.0mg〜約100mg、24時間あたり体重kgあたり約1.0mg〜約50mg、24時間あたり体重kgあたり約1.0mg〜約25mg、24時間あたり体重kgあたり約5.0mg〜約50mg、24時間あたり体重kgあたり約5.0mg〜約20mg、24時間あたり体重kgあたり約5.0mg〜約15mgの範囲と考えられる。
【0166】
あるいは、有効な投与量は、500mg/m2以下である。一般的に、有効な投与量は、約25〜約500mg/m2、好適には約25〜約350mg/m2、より好適には約25〜約300mg/m2、より好適には約25〜約250mg/m2、より好適には約50〜約250mg/m2、より好適には約75〜約170mg/m2の範囲と考えられる。
【0167】
典型的には、治療用途において、当該治療は疾病状態である期間全体にわたり行われる。
【0168】
さらに、当業者であれば、各々の投与における最適な量及び間隔が、治療しようとする疾病状態の性質及び程度、投与の形態、経路及び部位、並びに治療しようとする個人の状態により決定されることは自明であろう。同様に、かかる最適条件は通常の技法によっても決定できる。
【0169】
当業者であれば、所定の日数の間における1日あたりの当該組成物の投与回数等、最適な治療計画を、治療計画を決定するための通常の試験を用いて当業者が決定できることを認識するであろう。
【0170】
本発明の実施形態には、Cpn10をコードするポリヌクレオチドの投与も包含される。その場合、当該ポリヌクレオチドは典型的にはプロモータに制御可能に連結し、それにより適切なポリペプチド配列が産生され、結果的に被検者に対して当該ポリヌクレオチドが投与される。当該ポリヌクレオチドは、ベクター中に存在する形で被検者に投与されてもよい当該ベクターは、プラスミドベクター、ウィルスベクター、又は外来配列の挿入、真核生物細胞への導入及び導入された配列の発現に好適な任意の他の担体であってもよい。典型的には当該ベクターは真核生物用の発現ベクターであり、プロモータ、エンハンサ、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナル及び転写終結配列等、発現制御配列及びプロセシング配列を含んでもよい。投与される核酸コンストラクトは、裸のDNAから構成されてもよく、又は1つ以上の薬理学的に許容できる担体と共に組成物の形態であってもよい。
【0171】
当業者であれば、本発明のCpn10ポリペプチドは、本発明の方法に従ってそれ単独で、又は1つ以上の追加的な薬剤と組み合わせて投与してもよいことを理解するであろう。例えば、本発明のCpn10ポリペプチドは、TLR受容体(TLR4等)を刺激しうる又は複数のアゴニストと共に投与してもよい。さらに本発明には、疾病及び障害に対する他の治療的アプローチとの組み合わせで本発明のCpn10ポリペプチドを用いる複合療法が包含される。例えば、Cpn10ポリペプチドは、IFNβ又はIFNα等の1型インターフェロンを伴う治療法に感受性のウィルス性疾患の治療に有用であり、本発明のCpn10ポリペプチドは、多発性硬化症等の自己免疫疾患の治療においてIFNβとの組み合わせで使用できる。
【0172】
かかる複合療法においては、用いられる各成分は、同時に、任意の順序で連続的に、又は別々のタイミングで投与し、所望の効果を得ることができる。あるいは、これらの成分を単一のユニットドーズ中に組み合わせて製剤化してもよい。別々に投与する場合には、同一の投与経路により各成分を投与することが好適であるが、必ずしもそうである必要はない。
【0173】
以下、具体的な実施例を参照して本発明を記載するが、如何なる意味においても、これらにより本発明の範囲が限定されると解釈すべきでない。
【実施例】
【0174】
(実施例1:Cpn10ポリペプチドの生成に用いられる遺伝子的パラメータ)
表2に、遺伝子的パラメータ、具体的には下記のCpn10ポリペプチドの調製に使用される発現系(すなわちプラスミドの名称、抗生物質による選抜、及び宿主細胞)を記載する。
【0175】
表2:Cpn10ポリペプチドの調製に用いる遺伝子的パラメータ
【0176】
【表2】
【0177】
(実施例2:Cpn10ポリペプチドの調製プロセス)
Cpn10の調製プロセスをさらに詳細に説明するため、Ala−Cpn10の調製プロセスを例示する。
【0178】
まず、N末端に付加的なアラニン残基(Ala−Cpn10_pPL550)を有するヒトCpn10をコードする熱誘導による発現プラスミドを、Somodevilla−Torresら(2003、Prot.Exp.Purif.、32巻、276−287ページ)から入手した。次いで、プラスミドベクターを大腸菌株XL1−Blue(Stratagene)に導入して形質転換し、1つのクローンを選択し、マスターセルバンクとして確立した。
【0179】
次いで、基本的にRyanら(1995、J.Biol.Chem.、270巻、22037−22043ページ)に記載の方法に従い、大腸菌中でAla−Cpn10を産生させた。また、Macro−Prep High Q(BioRad)に結合しなかった物質を、S−セファロース、次いでゲル濾過(Superdex 200、Amersham Biosciences)によってさらに精製した。50mMトリスHCl(pH7.6)及び150mM NaCl緩衝液中の精製Cpn10を、メーカーの使用説明書(Pall Corporation、Ann Arbor、米国ミシガン州、Cat No.MSTG5E3)に従って、0.2mm Mustang E膜を備えたAcrodiscを用いて濾過して残留するエンドトキシンを除去し、−70℃で保存した。Cpn10の純度は、SDS−PAGEにより99%超と測定された。アリコートを使用前に一度解凍した。
【0180】
大部分のヒトCpn10ポリペプチドは、GroEL媒介によるロダネーゼのリフォールディングアッセイにおいて大腸菌GroES(Brinkerら、2001年、Cell、107巻、223−233ページ)(データ示さず)と同様のモル活性を示した。Cpn10のLPS汚染は、Limulus Amebocyte Lysateアッセイ(BioWhittaker、Walkersville、米国ミズリー州)により、精製Cpn10タンパク質1mgあたり0.03EU/mg未満と測定された。
【0181】
上記のような調製プロセスから得られたCpn10ポリペプチドの純度は、バッチごとに質量分析によって評価した。下記の表3に示すように、予測質量と計算出質量は一致した。
【0182】
表3.Cpn10ポリペプチドの質量スペクトルデータと理論pI
【0183】
【表3】
【0184】
(実施例3:免疫調節活性Cpn10ポリペプチドを測定するためのRAW264−HIV−LTR−LUCバイオアッセイ)
Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性を、基本的に国際特許出願PCT/AU2005/000041号に記載の方法に従い、HAW264−HIV−LTRルシフェラーゼバイオアッセイを用いて試験した。
【0185】
このアッセイでは、リポ多糖(LPS)の存在下における、Cpn10又はその変異体、ミュータント、若しくは誘導体による、Toll様受容体のTLR4からのシグナリング調節活性を測定する。
【0186】
RAW264−HIV−LTR−LUC細胞を液体窒素ストックから融解して再培養した後、G418(200mg/ml)の存在中で5日間培養し、75cm2フラスコ(Greiner Labortechnik、Frickenhausen、ドイツ)中で懸濁培養した。RAW264−HIV−LTR−LUC細胞を繰り返しピペッティングして分散させ、24ウェルのプレートに2.5×105細胞/ウェルで蒔き、一晩インキュベートした(37℃、5%CO2)。大腸菌由来の粗LPS(Cat.No.L−6529、Strain 055:B5、Sigma)及び大腸菌由来の超高純度LPS(Cat.No.tlrl−pelps、Strain 0111:B4、Invivogen)を滅菌蒸留水に溶解させ、それぞれ1mg/ml又は5mg/mlに調製し、ガラスバイアル中において4℃で保存した。使用直前に溶液を激しくボルテックスし、アリコートを採取した。所定の濃度でLPSを添加する前に、Cpn10を細胞と共に2時間プレインキュベートした。さらに2時間インキュベートした後、接着細胞をルシフェラーゼアッセイ(Luciferase Assay System、Promega、Madison、米国ウィスコンシン州)用に処理した。ルシフェラーゼ活性は、Turner Designs Luminometer TD 20/20(RLU)又はPerkin−Bmer Wallace Victor 2 Multilabel Counter(CPS)のいずれかを用いて測定した。
【0187】
(実施例4:インビトロでのGroEL媒介によるロダネーゼリフォールディングアッセイを用いた、Cpn10ポリペプチドのコシャペロン活性の分析)
分子シャペロンとして作用し、GroELと共にタンパク質をフォールディングするCpn10ポリペプチドの能力を、Weber F.及びHayer−Hartl M.K.(Chaperon in Protocols、Ed Schneider C.、Humana Press Inc.、2000年、117−126ページ)に記載の適切な方法を用い、インビトロでのロダネーゼのリフォールディングをアッセイすることによって測定した。未変性のウシのロダネーゼ(30μM、SIGMA)を、5M 塩酸グアニジン及び8mM DTTを含む20mM MOPS−KOH(pH7.5)、100mM KCl、及び20mM MgCl2溶液(バッファA)中で変性させ、次いでロダネーゼの最終濃度が400nMとなるように、変性剤からGroEL(400nM)を含むバッファA中に希釈した(75倍)。GroELは、迅速かつ安定に変性ロダネーゼ(D−Rho)と結合し、一方、バッファのみではD−Rhoはミスフォールディングし、凝集した(すなわち非効率的な自発的リフォールディング)。予め形成させた安定GroEL結合ロダネーゼ複合体に、Cpn10(下記参照)及びATP(20.6mM)を添加することにより、効率的にリフォールディングが進行した。Cpn10の非存在下でATPを添加すると、D−Rhoはフォールディング能力が喪失された状態でGroELへの着脱サイクルを生じさせ、結局はミスフォールディング及び凝集を生じさせた(この反応は適切なアッセイブランクとして有用である)。各々のフォールディング反応液は全体で290μLであり、所定の時点(すなわち0、15、30、45、60、75、90分)でアリコートを30μL採取し、70μLのロダネーゼ活性のアッセイ混合物(57.1mM KH2PO4(pH7.5)、71.4mM EDTA、71.4mM チオ硫酸ナトリウム、及び71.4mM KCN)と6分間混合した。ATPを用いたリフォールディング反応の開始前に採取したアリコート30μLを、T=0分のリフォールディング時点とした。ロダネーゼ活性アッセイ混合物中のEDTAはMg2+イオンをキレートするため、GroELのATP結合を妨げ、結果としてフォールディング反応が直ちに停止した。次いで、15体積%のホルムアルデヒドを50μL添加し(最終濃度5体積%)、6分後にロダネーゼ活性を停止させた。
【0188】
ロダネーゼは、チオ硫酸塩とシアン化物からのチオシアニド(Rhodanid)の形成を触媒する。チオシアニドは、硝酸第二鉄の存在時に赤い鉄錯体を形成し、比色分析(吸光度450nm)で容易に検出される。ロダネーゼ活性の測定(150μL)では、硝酸第二鉄試薬150μL(64.5mM硝酸第二鉄及び9.2体積%の硝酸)の添加により発色させる。ロダネーゼ活性の測定は、96ウェルのマイクロプレート中、A450nmの測定により行う。
【0189】
典型的なロダネーゼのフォールディング反応は、フォールディングされたロダネーゼの収量が最大となるまでの間、時間経過に対するロダネーゼ活性(すなわち、フォールディングされたロダネーゼ)の指数関数的傾斜として示される。一定量のGroEL(400nM)及びロダネーゼ(400nM)においては、GroEL(14量体)に対するCpn10(7量体)モル濃度が同等(すなわち、400nM)に達するまで、Cpn10増加に伴う直線的な関係(ロダネーゼ活性と時間の間の関係)が観察された。Cpn10濃度が400nMを上回ると、ロダネーゼ活性の増加は迅速に最大に達した。アッセイは、5つのスタンダード(二重)及び試験サンプル(二重)で構成した。Cpn10スタンダードの濃度は、0nM、140nM、250nM、280nM、及び350nMとした。30、45、60、75、及び90分の時点でのロダネーゼ活性(すなわち、Cpn10活性)の測定値の平均値を算出した。0nMのCpn10スタンダードはアッセイのバックグラウンド活性の適切な測定値として役立つため、0nMのCpn10スタンダードについての吸光度の測定値を、全ての他の測定された吸光度(又は活性値)から差し引いた。バックグラウンド補正後、280nMのCpn10スタンダードの吸光度の測定値を100%活性とし、全ての他の吸光度測定値を、100%スタンダードに対する相対的活性%として変換した。異常値のデータ点は、追加試験における測定値との比較によって除外し、二重の測定値間の30%を超える偏差は許容範囲外と見なした。許容範囲内のデータを用い、5つのスタンダードの濃度、すなわち0nMのCpn10(0%活性)、140nMのCpn10(50%活性)、250nMのCpn10(89.3%活性)、280nMのCpn10(100%活性)、及び350nMのCpn10(125%活性)を用いて、較正曲線(直線)を作成した。ロダネーゼ活性(すなわちCpn10活性)をCpn10濃度に対してプロットした。アッセイバイアスの補正のため、試験サンプルによる活性%の値を、線形の較正曲線から得られた式を用いて再計算した。
【0190】
シャペロニンの濃度を、オリゴマータンパク質の分子量(MW)から計算し、一方、ロダネーゼではモノマーのMWから計算した。すなわち、大腸菌GroEL 14量体(SwissProt P06139)=800,766.4g/mol、ヒトCpn10 7量体(SwissProt Q04984)=76,100.5g/mol、及びウシロダネーゼ単量体(SwisProt P00586)=33,164.6g/molである。
【0191】
表4に、Ala−Cpn10活性に対するパーセンテージとしてバッチごとに計算したCpn10ポリペプチドのリフォールディング活性を示す。
【0192】
表4.Cpn10ポリペプチドのリフォールディング活性
【0193】
【表4】
【0194】
(実施例5:大腸菌GroESはLPS媒介によるHIV−LTR活性を阻害しない)
組換え型大腸菌GroESを精製し、実質的にエンドトキシン汚染を含まない(0.14EU/mg)ことが示された(図3K参照)。精製GroESを、上記のように、Ala−Cpn10との比較で、RAW264.7−HIV−LTR−LUC阻害アッセイにおいて試験した。図2に示すように、試験した濃度(25−100μg/ml)のいずれにおいても、GroESは、HIV−LTRのLPS誘発活性を阻害しなかった。これらの結果は、Cpn10について観察された免疫調節活性が、実際の有意な生物学的効果であることを裏付ける。
【0195】
(実施例6:ヒトCpn10変異体の構築)
(IMU23−25の部位特異的変異体)
可動ループ領域の疎水性IML部分(残基23−25)を変異導入し、Cpn10とCpn60との間の相互作用の強度(表1参照)を変化させた。IMLを、Cpn60との相互作用を撹乱させると予測される荷電トリペプチドEEEで置換し、また、IMLを、疎水性を高めることによってCpn10のCpn60との相互作用を潜在的に強化するものと予想されるIII又はIFI部分として変異させた。図3C、E、及びFに、Ala−Cpn10−EEE−cHis、Ala−Cpn10−IFI、Ala−Cpn10−IIIの精製を示すSDS−PAGEゲルを示す。
【0196】
Ala−Cpn10−III、Ala−Cpn10−IFI、及びAla−Cpn10−EEE−cHisを、表1において説明した相補的プライマーペアを用い、メーカーの使用説明書に従って、Quick Change Site−Directed Mutagenesis (Stratagene)により作製した。Ala−Cpn10−IIIとAla−Cpn10−IFIについては、Ala−Cpn10_pPL550プラスミドをDNA鋳型として使用した。Ala−Cpn10−EEE−cHisについては、Ala−Cpn10−cHis_pET23プラスミドをDNA鋳型として使用した(下記参照)。
【0197】
(Ala−Cpn10)
Ala−Cpn10を構成すると予測されるアミノ酸配列を、配列番号21に示す。Ala−Cpn10をコードする合成DNA配列(配列番号22)を、pPL550プラスミドのNcoI及びEcoRl部位に挿入した(Somodevilla−Torresら、2003年、Prot.Exp.Purif.、32巻、276−287ページ)。バッチCH001とCH003におけるAla−Cpn10の精製を示すSDS−PAGEゲルを、図3のAとBにそれぞれ示す。
【0198】
(Ala−Cpn10−cHis)
Ala−Cpn10−cHisを構成すると予測されるアミノ酸配列を、配列番号41に示す。Ala−Cpn10−cHisをコードする合成DNA配列(配列番号42)を、終止コドン以外のAla−Cpn10のDNA配列(配列番号22)を、pET23aプラスミド(Novagen)のNdeI及びXhol部位に挿入して調製した。当該クローニングにより、Ala−Cpn10のC末端にヘキサヒスチジンのタグが付与される。図3Dに、Ala−Cpn10−cHisの精製を示すSDS−PAGEゲルを示す。
【0199】
(Ala−Cpn10−Δml)
Cpn10の可動ループ領域(配列番号12)から16のアミノ酸を除去し、Ala−Cpn10−Δml(配列番号24)と称する86アミノ酸の変異体を作製した。Ala−Cpn10−Δmlをコードする合成DNA配列(配列番号25)を、pPL550プラスミドのNcoI及びEcoRI部位に挿入した(Somodevilla−Torresら、2003、Prot.Exp.Purif.32巻、276−287ページ)。可動ループはCpn10ポリペプチド鎖の中央に位置するため、可動ループの2つの残基(両端の1つの残基)を残してN末端フラグメントとC末端フラグメントを連結させた状態にすることで、適切なフォールディングと7量体の形成がなされた。
【0200】
図3Gに、Ala−Cpn10−Δmlの精製を示すSDS−PAGEゲルを示す。Ala−Cpn10−Δmlの部分的なグルタルアルデヒド架橋(図3H、レーン2)により、銀染色した4〜12%SDS−PAGEゲル上で7つの明瞭なバンドが検出され、分子が7量体構造を有することが示された。全量で300μlのPBS(pH7.4)中で、580μgの量のAla−Cpn10−Δmlを、25℃で30分間にわたり、0.01重量%のグルタルアルデヒド(APS)と共にインキュベートした。15μlの2M トリスHCl(pH8.0)の添加によって反応をクエンチした。反応混合物の100μlのアリコートを、Superdex 200 HR 10/30(GE Biosciences)限外濾過カラムを用い、0.5ml/分の流速でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で分離させた。非架橋Cpn10オリゴマーと同じ滞留時間で溶出されたピークを、0.5mlずつ2つのフラクションに回収し、次いでSDS−PAGE及び銀染色によって解析した。
【0201】
(Ala−Cpn10−Δroof)
β−ヘアピン領域(配列番号13)から7アミノ酸を欠失させ、Ala−Cpn10−Δroofと称する95アミノ酸の変異体を作製した。Ala−Cpn10−Δroofをコードする合成DNA配列(配列番号27)を、pPL550プラスミドのNcoI及びEcoRI部位に挿入した(Somodevilla−Torresら、2003年、Prot.Exp.Purif.、32巻、276−287ページ)。Ala−Cpn10−Δroofのアミノ酸配列を配列番号26に示す。さらに、このポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを配列番号27に示す。図3Jに、Ala−Cpn10−Δroofの精製を示すSDS−PAGEゲルを示す。(Ala−Cpn10−β−バレル)Ala−Cpn10−β−バレルを構成すると予測されるアミノ酸配列を、配列番号28に示す。図3Dに、Cpn10−β−barrelの精製を示すSDS−PAGEゲルを示す。Ala−Cpn10−β−バレルをコードする合成DNA配列(配列番号29)を、pPL550プラスミドのNcoI及びEcoRI部位に挿入した(Somodevilla−Torresら、2003年、Prot.Exp.Purif.、32巻、276−287ページ)。図3Jに、Cpn10−β−バレルの精製を示すSDS−PAGEゲルを示す。
【0202】
(Gly−Cpn10)
Gly−Cpn10を構成すると予測されるアミノ酸配列を、配列番号30に示す。Gly−Cpn10をコードする合成DNA配列(配列番号31)をpET30aプラスミドに挿入した。図3Nに、Gly−Cpn10の精製を示すSDS−PAGEゲルを示す。
【0203】
(X−Cpn10)
X−Cpn10を構成すると予測されるアミノ酸配列を配列番号23に示す。X−Cpn10をコードする合成DNA配列(配列番号44)を、pPL550プラスミドのNcoI及びEcoRI部位に挿入した(Somodevilla−Torresら、2003年、Prot.Exp.Purif.、32巻、276−287ページ)。図3Mに、X−Cpn10の精製を示すSDS−PAGEゲルを示す。
【0204】
(GroES)
大腸菌GroES(SwissProt P05380)を構成すると予測されるアミノ酸配列を、配列番号11に示す。GroESをコードする合成DNA配列(配列番号34)を、pET11aプラスミドに挿入した。図3Kに、GroESの精製を示すSDS−PAGEゲルを示す。
【0205】
(Cpn10−NtermES)
Cpn10−NtermESを構成すると予測されるアミノ酸配列を、配列番号14に示す。ヒトX−Cpn10の残基1−AGQAFRKFL−9(配列番号23)を、大腸菌GroESの残基1−MNIR4(配列番号11)で置換し、Cpn10−NtermESタンパク質を作製した。Cpn10−NtermESをコードする合成DNA配列(配列番号43)を、pET23aプラスミドに挿入した。図3Lに、Cpn10−NtermESの精製を示すSDS−PAGEゲルを示す。
【0206】
(実施例7:Cpn10のIMLトリペプチドの変異体の活性)
可動ループのIMLトリペプチド(Cpn60との相互作用、さらにはタンパク質のフォールディングに極めて重要)の変異体を作製し、可動ループのCpn60との相互作用を撹乱又は強化した(実施例6参照)。
【0207】
EEE可動ループを有するAla−Cpn10タンパク質変異体(Ala−Cpn10−EEE−cHis)では、インビトロにおけるロダネーゼリフォールディングのプロセスの際、Cpn10のGroEL(大腸菌Cpn60)と共に機能する活性が損なわれたが、IIIとIFI変異体では活性が維持された(表3参照)。
【0208】
以上の結果から、GroELへのAla−Cpn10−EEE−cHisの親和性が顕著に低下することが示された。タンパク質のフォールディングアッセイとは対照的に、RAW264.7−HIV−LTR−LUC阻害アッセイでは、全てのトリペプチド変異体(Ala−Cpn10−cHisを含む)が、Ala−Cpn10と同様な活性を示してTLR4シグナリングを調節できることが示され、すなわちCpn10のこの免疫調節活性にとり、可動ループ(すなわちCpn60)が重要ではないことが示唆された(図4B、D、F、及びH参照)。
【0209】
(実施例8:Ala−Cpn10−Δmlは、ロダネーゼのリフォールディングにおいてGroELと協働しない。)
可動ループ領域(及び従ってCpn60)が免疫調節活性に必要でないことを確認するため、16アミノ酸を可動ループ領域(配列番号12)から欠失させ、Ala−Cpn10−Δmlと称する86アミノ酸の変異体を作製した(実施例6参照)。Ala−Cpn10−Δmlのアミノ酸配列を、配列番号24に示す。
【0210】
Ala−Cpn10−Δmlが、ロダネーゼ再フォールディングのプロセスにおいてGroEL(大腸菌Cpn60)と共に生産的に機能する性能について試験した。ポジティブコントロールとして、Ala−Cpn10を同じアッセイ系に添加すると、約100%の活性を示した(表3参照)。Ala−Cpn10−Δmlの活性は約0%の活性と測定され、すなわちGroELとは相互作用せず、従ってタンパク質のフォールディングのプロセスの際にコシャペロンとして機能しないことが示された。なお、Ala−Cpn10とAla−Cpn10−Δmlのポリペプチドの双方を同じモル濃度として試験を行った。
【0211】
(実施例9:Ala−Cpn10−Δmlは、HIV LTRのLPS誘発活性を阻害する)
Ala−Cpn10−Δmlを、Ala−Cpn10との比較において、RAW264.7−HIV−LTR−LUC阻害アッセイにおいて試験した。このアッセイにおいて、ルシフェラーゼレポーターはNFKBシグナル伝達と間接的に連結しており、NFKBはLPSによって誘導される一次転写因子である。ルシフェラーゼ活性は、使用した測定方法に応じて、相対光単位(RLU)又はカウント/秒(CPS)として測定した。図5A及び5Bに示すように、Ala−Cpn10−Δmlは、1−100μg/mlの濃度範囲で、LPS誘発によるHIV−LTRの活性化を阻害した。これは単独のアッセイであるが、2つの反復した実験を別なマイクロタイタープレートで行い、やはり同様の活性が示された。このデータセットにおいて、Ala−Cpn10−Δmlは、Ala−Cpn10と比較して一貫して大きい阻害活性を有することが観察された。
【0212】
上記の実施例8に記載のように、Ala−Cpn10−Δmlは、ロダネーゼのリフォールディングのプロセスにおいて、GroELのコシャペロンとして機能できなかった。しかしながら、LPSの存在下でのRAW264.7−HIV−LTR−LUC阻害アッセイに使用した場合、Ala−Cpn10−Δmlによる活性は、Ala−Cpn10と同等のレベルとして観察された。すなわち、Ala−Cpn10−Δmlは用量依存的にHIV−LTRレポーターのLPS誘発による活性化を阻害した。これらの結果は、TLR4シグナリングを調節するCpn10の機能においては、Cpn60は全く関与しないことを示すものであった。
【0213】
(実施例10:Ala−Cpn10−Δroofは、HIV LTRのLPS誘発による活性化を阻害する。)
Cpn10のβ−ヘアピンルーフループ領域(図1参照)は、哺乳類において正味の正電荷を有するが、多くの細菌においては正味の負電荷を有する(大腸菌GroESが代表例)。興味深いことに、バクテリオファージT4もまた、大腸菌GroELと共にT4主要カプシドタンパク質Gp23をフォールディングする機能を有する固有のCpn10(Gp31)を持つ。なお、GroES及びCpn10はいずれもこの機能を有さない。Gp31とCpn10/GroESの間の主な相違点は、Gp31がルーフβ−ヘアピンループを完全に欠くことであり、Gp31の異常な機能及び性能の理由ともなりうる(Huntら、1997年、Cell、90巻、361−371ページ)。
【0214】
Cpn10免疫調節活性に対するルーフβ−ヘアピン領域の関与を解析するため、7つのアミノ酸をβ−ヘアピン領域(配列番号13)から除去し、Ala−Cpn10−Δroofと称する95アミノ酸の変異体を作製した(実施例6参照)。Ala−Cpn10−Δroofのアミノ酸配列を、配列番号26に示す。
【0215】
Ala−Cpn10−Δroofを、Ala−Cpn10及び大腸菌GroESとの比較において、LPSの存在下、RAW264.7−HIV−LTR−LUC阻害アッセイにおいて試験した。図6に示すように、Ala−Cpn10−Δroofは、50−100μg/mlの濃度範囲で、HIV−LTRのLPS誘発活性を阻害した。これは単独のアッセイであるが、2つの反復した実験を別なマイクロタイタープレート上で実施し、同様の活性が示された。このデータセットにおいて、Ala−Cpn10−Δroofは、Ala−Cpn10の約80%の活性を一貫して有することが観察された。これらの結果は、Cpn10によるTLR4シグナリングの調節が、分子の機能的ルーフβ−ヘアピン領域が存在しない場合でも生じうることを示すものである。
【0216】
(実施例11:Ala−Cpn10−β−バレル変異体は、免疫調節活性を示す)
上記実施例9及び10に記載のデータの裏付けとして、本発明者らは、可動ループとβ−ヘアピンルーフループの双方を欠くヒトAla−Cpn10変異体を作製した(「Ala−Cpn10−β−バレル」、配列番号28、実施例6参照)。興味深いことに、Ala−Cpn10−β−バレル変異体は、Ala−Cpn10とAla−Cpn10−Δml変異体に比較し、ゲル濾過クロマトグラフィーにおいて若干大きい分子として溶出された。このことから、当該ルーフがサブユニットを強固に結合した高次構造中に保持することを助長すると示唆される。一方、可動ループは7量体を不安定にしてその分解を促進するが、それにもかかわらず当該7量体は分解された個々のモノマーよりもエネルギー的に安定である。
【0217】
Ala−Cpn10−β−バレルのポリペプチドを、Ala−Cpn10及び大腸菌GroESとの比較において、LPSの存在下で、RAW264.7−HIV−LTR−LUC阻害アッセイにおいて試験した。図7に示すように、この変異体は、TLR4シグナリングの調節において、Ala−Cpn10の活性に対して約50%の活性を示し、すなわち当該免疫調節活性は、β−ヘアピンルーフループに部分的に寄与するか、又は7量体の安定性に起因することが示唆された。なお、得られた結果は2つの独立した実験結果に基づくものである。
【0218】
(実施例12:N末端Cpn10変異体の免疫調節活性)
Cpn10のN末端は、(サイトゾル中での合成後の)ミトコンドリアマトリクスのターゲティングを補助することが知られている。しかしながら、殆どのミトコンドリアマトリクスのタンパク質は、切断可能なN末端のターゲティング配列を有するものの、Cpn10のN末端は切断されず、さらなる機能を有することを示唆する。
【0219】
本発明者らは、インビトロにおける免疫反応を調節するヒトCpn10のN末端変異体の性能を検討した。試験した変異体(本願明細書において「Cpn10−NtermES」と称する)は、ヒトN末端配列「MAGQAFRKFL」の位置において、大腸菌GroESからのN末端配列「MNIR」を有する。Cpn10−NtermESのアミノ酸配列を配列番号14に示す。
【0220】
Cpn10−NtermESは、シャペロン媒介によるロダネーゼのリフォールディングにおいて、Ala−Cpn10の活性に対してわずか約12%の活性を示した(GroELと協働、表3参照)。しかしながら、ゲル濾過クロマトグラフィーを行った結果、GroEL(Cpn60)との結合時には、Cpn10−NtermESは可動ループを備えた無傷の7量体であることが確認された(データ示さず)。
【0221】
図8A及び8Bに示すように、Cpn10−NtermES変異体は、Ala−Cpn10で観察される活性と対照的に、HIV−TLRのLPS誘発による活性を免疫学的に調節する機能を喪失していた。このことは、TLR4を伴うCpn10の免疫調節活性にとり、Cpn10のN末端が必要であることを示唆する。従って、大腸菌(GroES)のように、ES−Nterm−Cpn10は、LPSによって誘発されるNF−kB(すなわちTLR4調節)を抑制できなかった(図8B参照)。
【0222】
(実施例13:X−Cpn10における、HIV LTRのLPS誘発による活性化阻害能の低下)
X−Cpn10を、Ala−Cpn10との比較において、RAW264.7−HIV−LTR−LUC阻害アッセイを用いて試験した。実施例6で議論したように、X−Cpn10は、追加的なN末端アラニン残基及び天然ヒトCpn10に存在するアセチル基を欠く。このアッセイにおいて、ルシフェラーゼレポーターを、NFkBシグナル伝達と間接的にリンクさせた。NFkBは、LPSによって誘発される一次転写因子である。ルシフェラーゼ活性は、使用した測定方法に応じて、相対光単位(RLU)又はカウント/秒(CPS)として測定した。図9A及び9Bに示すように、X−Cpn10は、HIV−LTRのLPS誘発活性を部分的に阻害した(Ala−又はGly−Cpn10活性の約50%)。このデータセットにおいて、アラニン等のCpn10のN末端上の付加的な残基は、TLR4シグナリングの免疫調節活性に関与しうることが観察された。
【0223】
(実施例14:Gly−Cpn10はHIV LTRのLPS誘発による活性化を阻害する)
Gly−Cpn10を、Ala−Cpn10との比較において、RAW264.7−HIV−LTR−LUC阻害アッセイを用いて試験した。実施例6で議論したように、Gly−Cpn10は、Ala−Cpn10の追加的なN末端アラニン残基をグリシン残基で置換している。このアッセイにおいて、ルシフェラーゼレポーターを、NFkBシグナル伝達と間接的にリンクさせた。NFkBは、LPSによって誘発される一次転写因子である。ルシフェラーゼ活性は、使用した測定方法に応じて、相対光単位(RLU)又はカウント/秒(CPS)として測定した。図10A及び10Bに示すように、Gly−Cpn10は、HIV−LTRのLPS誘発による活性化を、Ala−Cpn10よりも大きい規模で阻害した。
【0224】
図16に示すように、アセチル基は構造的にアラニン残基よりもグリシン残基と類似する。従って、アセチルCpn10ポリペプチド(すなわち、天然のCpn10)の活性はGly−Cpn10の活性と同程度であると考察される。
【0225】
(実施例15:RAW264.7−HIV−LTR−LUC阻害アッセイにおける超高純度LPSの使用)
図5−7及び10に示すデータは、上記のRAW264.7−HIV−LTR−LUC阻害アッセイにおいて、粗LPSを用いることによって得た。図11−14では、TLR4に特異的な超高純度LPSを使用した結果を示す。図11(Ala−Cpn10Δml)、図12(Ala−Cpn10Δroof)、図13(Ala−Cpn10−β−バレル)、及び図14(Gly−Cpn10)の結果は、図5−7、及び10において示した対応するデータと非常に類似するものである。このことは、Cpn10による免疫調節活性を解析するために本願明細書において使用され開示されたアッセイデータが、TLR4に特異的に由来するデータであることを示す。
【0226】
(実施例16:マウス内毒血症の試験)
種々のCpn10ポリペプチド(すなわち、Ala−Cpn10−Δml、Ala−Cpn10−Δroof、及びX−Cpn10)のインビトロ免疫調節活性が、インビボ活性を反映するか否かを解析するため、敗血症モデルマウスを用い、内毒血症の試験を行った。
【0227】
Cpn10分子の仮定された活性領域を系統的に変異又は欠失させることにより、かつ多数の生物から得たCpn10のホモログを試験することにより、最適な活性にとり必要となる最小限の構造領域及び/又は配列モチーフを解明することができ、最終的に、治療用途により有力な分子の設計が可能となる。これまで、免疫調節活性についてのこれらの領域の重要性を調査するため、Cpn10におけるいくつかのバリエーション又は変異体を作製した(図1参照)。
【0228】
上記のインビトロの試験から、Ala−Cpn10に対して、Cpn10の可動ループ又はルーフループ領域に欠失のあるコンストラクト(すなわちそれぞれAla−Cpn10−ΔmlとAla−Cpn10−Δroof)は、TLR4とLPSとの結合に応答したNFkB活性の低下に関して、同程度の活性を示すことが観察されている。他方で、非アセチル化Cpn10(X−Cpn10)では、このインビトロ活性評価を用いた場合、NFkB活性を下方調節する性能が顕著に低下していた。
【0229】
本試験において、多数のCpn10変異体が、炎症(すなわち内毒血症)のインビボモデルにおいて、Ala−Cpn10に対して同様な活性を有することが見出された。マウスの内毒血症モデルを用いて、LPS誘発による炎症性サイトカインの産生を低下させるCpn10の能力を測定した。
【0230】
(実施例16a:マウス内毒血症試験に用いた材料及び方法)
以下のマウス内毒血症の試験に使用した材料及び方法を、下記の実施例17a(1)〜17(a)2に記載する。
【0231】
(実施例16a(1):内毒血症の試験に使用したマウス)
本試験は、84匹のメスBalb/cマウスを用いて行った。いずれも成体であり(>9週齢、平均体重約20g(0.02kg))、1つの群あたり7匹のマウスとして、12群に分けた(表5参照)。マウスを12/12の明/暗サイクル条件下において収容し、標準的な実験動物用飼料(Specialty Feeds、Glen Forrest、オーストラリア)及び水を自由に摂取させた。各マウスの体重を注射の前に測定した。下記に示す要領(表5参照)で、尾静脈からの静脈(IV)ルートを経て注射を行った。
【0232】
(実施例16a(2) マウス内毒血症の試験に用いて薬剤/溶液)
実施例16a(1)マウス内毒血症の試験に使用した薬剤/溶液を以下((A)から(H)に掲げる)に示す。(A)タンパク質製剤バッファ(FB):このバッファは、本試験のネガティブコントロールであり、50mMのトリスHCl(pH7.6)と150mM NaClを含む(<0.02EU/ml)。このバッファは、試験物質として、またポジティブコントロール及び試験サンプルの希釈用液として使用する。(B)Ala−Cpn10:このCpn10ポリペプチドは、本試験のポジティブコントロールであり、5mg/mlのストック濃度を有する(<0.01EU/mg)。400μlのタンパク質溶液を1.6mlの製剤バッファ中に希釈することによって、1mg/mlの試験用溶液を調製した。(C)Ala−Cpn10−Δml:このCpn10ポリペプチドは、3.5mg/ml(<0.03EU/mg)のストック濃度を有する。571μlのタンパク質溶液を1.429mlの製剤バッファ中に希釈することによって、1mg/mlの試験用溶液を調製した。(D)Ala−Cpn10−Δroof:このCpn10ポリペプチドは、4.2mg/mlのストック濃度を有する(<0.1EU/mg)。タンパク質溶液477μlを1.523mlの製剤バッファ中に希釈することによって、1mg/mlの試験用溶液を調製した。(F)X−Cpn10:このCpn10ポリペプチドのストック濃度は5mg/mlである(<0.04EU/mg)。400μlのタンパク質溶液を1.6mlの製剤バッファ中に希釈することにより、1mg/mlの試験用溶液を調製した。(G)エンドトキシン:リポ多糖(LPS)をSigma Chemical Company(Cat.No.L6529)から入手した。使用の直前に、バイアルの内容物(1mg)を1mlの無菌の生理食塩水中で再調製した。各群への注射の前に、当該内容物を無菌の生理食塩水中に100μg/mlまでさらに希釈(1/10)した。(H)エンドトキシンコントロール:注射用の無菌生理食塩水を、900mg/ml(0.9%)の濃度で、Pfizer、オーストラリア(Cat. No. DW−SC0010)から入手した(<0.01EU/ml)。
【0233】
(実施例16b:マウス内毒血症の試験において行った薬剤投与及び採血)
マウスの異なる群における薬剤投与の手順は、表5に示す通りである(下記参照)。投与はいずれも、ある拘束したマウスに対する意識下での100μlの尾静脈注射により行った。LPS用量はいずれも10μg/マウスとした。Cpn10変異体はいずれも100μg/マウス(体積100μL)で注射した。
【0234】
下記表5に採血の手順を概説する。血液サンプルは、ハロタン麻酔(Zeneca Ltd.、Macclesfield、イギリス)(SOP ET−011)下における心臓穿刺又は死後の心臓切開による出血から採取した。抗凝固剤(血塊活性剤)を含まない小児科用血清チューブ(Greiner−bio−one、USA、Cat# 450401)中に血液を採取した。サンプルを室温に約5分間放置して凝集させ、室温にて5分間、12000rpmの遠心分離(Biofuge 13、Heraeus Instruments)を行った。血清を新しいチューブに移し、−20℃に置き、ドライアイス上へ移した。
【0235】
全ての薬剤投与と採血の時間を臨床記録シート(Form IMVS 2061/A)に記録した。同じ記録シートを使用し、実験の全体を通した一般的条件をモニターした。
【0236】
表5.Cpn10内毒血症の試験手順
【0237】
【表5】
【0238】
(実施例16c:サイトメトリックビーズアレイ(CBA)分析)
炎症関連のサイトカインのレベルにおける変化を評価するため、血清サンプルについてマウスの炎症CBA分析(Cat#552364、BD Biosdences)を行った。すなわち、LPS投与マウス(表5、群1、3、5、7、9、及び11)又は生理食塩水対照マウス(表5、群2、4、6、8、10、及び12)から調製したTNFα、IL6、IL−10、MCP−1、IL12p70、IFN−γ血清を、必要により、分析前にアッセイ希釈剤に希釈した(LPS処理群について5倍、生理食塩水対照について2倍)。各サンプルを、CBAソフトウェアを備えたBD FACS−Array装置を用い、メーカーの使用説明書に従って、2回試験した。
【0239】
(実施例16d:サイトカインレベルの低下率の測定)
下記の式を使用し、LPS感作マウスに及ぼすCpn10処理の効果を測定した。Cpn10変異体で予備処理したマウス(すなわち試験群)の予備処理していないマウス(すなわち対照群)に対するLPS誘発サイトカインの低下率を、次の式に従って計算した。
低下%=100−[(試験群の平均サイトカインレベル/対照群の平均サイトカインレベル)×100]
【0240】
(実施例16e:ELISA分析)
CBA分析を裏付けるため、メーカーの使用説明書に従ってR&D Systems Duoset ELISAキット(Cat#DY410)を用い、マウスTNF−α ELISAを行った。希釈剤としてPBS+10%FCSを用い、サンプルとスタンダードを希釈(3倍希釈)した。サンプルを2回試験した。
【0241】
(実施例16f:臨床的観察)
表5に記載の種々の群のマウスの挙動を、LPS又は生理食塩水の注射後90分間以内又は心臓穿刺による出血の前に解析した。表6に全ての観察を記録してまとめた。観察は、LPS/生理食塩水の注射の直後と心臓穿刺(C.P.)によるマウスの出血の前に行った。臨床的観察の比較は、群1、2、又は3に関して行った。通常、LPSのみで処理したマウス(群1)は、注射後15分間以内にLPS誘発による敗血症を示した。LPS処理のマウスでは移動性の低下を示し、刺激(例えば騒音又は接触)に対する応答が少なかった。下痢や毛の乱れのようなLPS感作によるいくつかの典型的な悪影響は、本試験においてはいずれのマウスにも観察されなかった。このことは、この試験に使用したLPSのロットが相対的に高い効果を有することを反映していると考えられる。生理食塩水処理の対照マウス(群2)は、刺激に対する応答が大きく、通常の応答性と移動性を示した。
【0242】
Cpn10と種々のCpn10変異体で予備処理したマウスは、未処理のLPS対照群と比較し、LPS感作に応答して、若干異なる挙動を示した。Ala−Cpn10とAla−Cpn10−Δroofで予備処理したマウス(群3と7)は落ち着きが少なく、刺激に対して若干敏感に反応するが、観察した期間全体にわたり群がり続けた。興味深いことに、Ala−Cpn10−Δmlで予備処理したマウス(群5)は、若干活発であり、観察期間の全体を通してそれ程群がらなかった。また、Acetyl−Cpn10で予備処理したマウス(群9)のLPS感作の効果は、他の群で観察されたものと異なるように見受けられた。これらのマウスを観察したところ、LPS注射後の最初の30〜45分間に、群3と類似の挙動を示したが、これらのマウスは、観察期間の終わりに向かうにつれて回復し、移動性と俊敏さが向上した。これに対し、X−Cpn10で予備処理したマウスは、群1と非常に似た挙動を示した。これらのマウスは極度に不活発であり、刺激に対する応答が少なく、殆どの観察期間において群れをなした。Cpn10変異体の生理食塩水による各対照群(すなわち、群4、6、8、10、及び12)では、未処理の生理食塩水群(群2)における対照動物に類似の有害な臨床症状が存在しないことが示された。
【0243】
LPSで感作されたマウスでは、一般に血圧が降下する(敗血症に関連する症状)典型的な症状を示すため、出血が困難となる。これらのマウスでは、心臓穿刺による出血は遅く、LPSを投与されなかったマウスと比較して血液の回収量が少なくなる。直接の心臓穿刺によって出血させることができなかったマウスについては、死後の心臓切開による出血を行った。LPS投与マウスに対してCpn10処理を行った場合、Cpn10処理マウスにおける血液回収への影響や改良が見られなかったが、LPS対照動物と比較し、Cpn10処理マウスからの血液は、一般に、心臓切開による出血を行うことなく、直接の心臓穿刺によって回収することができると認められた。本試験において、各マウスから少なくとも血液400μLを回収した。通常の出血と回収からの逸脱はいずれも、該当する臨床的記録シートに記録した。
【0244】
表6.種々のCpn10で予備処理した後にLPS/生理食塩水の注射をしたマウスの臨床的観察
【0245】
【表6】
【0246】
(実施例16g:マウスにおけるサイトカインの減少)
LPS感作マウス(図15参照)におけるTNF−α、IL−6、及びIL−10サイトカインの平均レベルを示す。Cpn10で処理しなかった動物に対して炎症促進性サイトカインの低下において統計的有意性を示すCpn10処理群を星印で表示する。予備処理しなかったマウス(表5に示す)と比較した、種々のCpn10で予備処理したマウスにおいて分析した種々のサイトカインの低下率を括弧内に表示する。
【0247】
表7.種々のCpn10変異体で処理したLPS感作マウスにおけるLPS誘発による炎症促進性サイトカインレベルの平均と低下率
【0248】
【表7】
【0249】
(血清のサイトカインレベルについてのCBA分析)
各マウスからの血清サンプルを、循環炎症促進性サイトカインの検出用のBD Mouse炎症CBAアッセイを用いて分析した。このアッセイは、試験サンプル中のTNFα、IL−6、IL−10、IL−12p70、MCP−1、及びIFN−γサイトカインを検出する。分析は、アッセイの限界内での最適な検出のために、連続的に希釈したサンプル(実施例16a参照)について行った。全てのサンプルを2回試験した。
【0250】
サイトカインTNF−α、IL−6、及びIL−10の相対的発現をこのマウスの敗血症モデルにおける炎症の指標とし、対照郡に対するCpn10処理群のそれらのレベルを解析した。この内毒血症の試験の時間枠(90分間のLPS投与)において、IFNγ、MCP−1、及びIL−12p70サイトカインのレベルは、一般にこのアッセイの検出限界外にあるため、データをここには示さない。ゆえにこれらのサイトカインは、本試験において検討しなかった。CBAの結果を解析する前に、本発明者らは、反復の間の一貫性に基づくデータの有意性が、標準曲線の線形範囲のどの部分に該当するかを評価した。極端な異常値は、分析から除外した。
【0251】
本試験における種々の群のマウスでの循環TNF−α、IL−6、及びIL−10の絶対値と平均を図15に示す。予想通り、TNF−α、IL−6、及びIL−10サイトカインの平均レベルは、それらの生理食塩水の対照と比較し、LPSで感作されたマウス血清中で誘発された数値よりも高かった(それぞれ図15A、C、E対B、E、F)。このことは、本試験において使用した量のLPSが、炎症反応を誘発し、これらのサイトカインのバックグラウンドレベルが、これらのマウスにおいて十分に低かったことを示す。いくつかの生理食塩水の対照サンプル(図15F、「X−Cpn10+生理食塩水」)において検出されたIL−10のレベルは、LPS感作の対照(すなわち、群1の「FB+LPS」)と同等に高かった。これらのサンプルでは、より濃縮した形態で分析を行ったため、内在性の血清因子がアッセイの読み取りを妨害し、ゆえにこのデータの不正確の原因となったことが考えられる。データはまた、LPSで感作されたマウスをCpn10タンパク質で処理したとき、Cpn10で予備処理されていないマウスに比較して、血清TNF−α、IL−6、及びIL−10サイトカインのレベルを低下させることを示した(それぞれ図15A、C、及びE)。各サイトカインプロフィールについて、一方向のANOVA分析(Tukeyのpost−hoc試験)を行った。この分析により、種々の群におけるIL−10サイトカインレベルではないTNF−α及びIL−6レベルの平均のいくつかが、統計的に異なることを見出した(図15A、C、及びE)。プロット上に示された平均サイトカインレベルの明らかな低下にもかかわらず、IL−10サイトカインレベルにおいて、統計的差異がないことは、対照群のみにおけるIL−10サイトカインの大きな変動によるものと考えられる(図15E、「FB+LPS」)。サンプリング集団を増やして試験結果の統計的有意性を改良するのが今後の課題である。
【0252】
Tukeyのpost−hoc試験は、Ala−Cpn10−Δroof又はX−Cpn10のいずれかで予備処理した群(すなわち、群7と11)における平均のTNF−α及びIL−6サイトカインのレベルが、未処理群(すなわち、群1)に対して統計的に低いことを示した(表7)。しかしながら、いくつかの群において、炎症促進性サイトカインにおける統計的に有意な低下(未処理群に対する)は、1つのサイトカインのプロフィールにおいてのみ観察された。例えば、Ala−Cpn10−Δml予備処理群では平均TNF−αが低下したが、未処理群に対するIL−6サイトカインレベルの低下は観察されず、Ala−Cpn10予備処理群(表7)についてその逆であった。さらに、統計分析では、Cpn10変異体の予備処理した群の平均サイトカインレベルが相互に異なることは見出されなかった。
【0253】
いくつかのCpn10変異体による予備処理群でのみ、統計的に有意な低下を示したが、全体的な傾向としては、全てのCpn10変異体において、LPS感作マウスにおける炎症関連のサイトカインのレベルが低下したことを示した。これらのマウスにおいて、TNF−α、IL−6、及びIL−10サイトカインのレベルが全体として約30〜50%低下した(表7)。
【0254】
(議論及び結論)
本試験は、種々のCpn10ポリペプチド(すなわち、Ala−Cpn10、Ala−Cpn10−Δml、Ala−Cpn10−Δroof、及びX−Cpn10)によるマウスの予備処理が、LPS誘発による内毒血症の臨床的効果を低下することを示した。LPSのみを投与されたマウスでは、内毒血症の典型的な症状(すなわち活動、応答、及び俊敏さの低下)を示した。他方で、いずれかのCpn10タンパク質で予備処理したマウスではLPS感作による影響が少ない(すなわち刺激に対する高い応答性、及び機動性)ことが観察された(表6)。
【0255】
炎症関連のサイトカインについてのCBA分析は、LPS注射前の全てのCpn10変異体予備処理マウスの血清中においては、LPSのみを投与されたマウスの血清と比較し、TNF−α、IL−6、及びIL−10サイトカインレベルが低いことを示した。予想通り、Ala−Cpn10で予備処理したマウスは、本発明者らの先の結果(Johnsonら、2005)と一致し、TNF−α及びIL−6サイトカインのレベル低下を示した。本はつめいの結果は、Ala−Cpn10により、全てのTLRアゴニストに応答したIL−10産生が低下することを示唆する。本発明者らはさらに、多数のCpn10変異体(表7)で予備処理したマウスにおけるこれらの炎症関連のサイトカインのレベルが、同様に低下することを確認した。統計分析は、未処理群と比較し、TNF−αとIL−6サイトカインのレベルの低下が、いくつかのCpn10変異体予備処理群においてのみ有意であることを示したが(図15A及びC、表7)、全体の傾向としては、本試験において使用した全てのCpn10タンパク質が、LPS炎症反応を下方調節することを示した。
【0256】
インビボの内毒血症の結果は、検討した全てのCpn10ポリペプチド(すなわち、Ala−Cpn10、Ala−Cpn10−Δml、Ala−Cpn10−Δroof、及びX−Cpn10)がAla−Cpn10に対して同様な活性を示した。このことは、Cpn10の可動ループ又はルーフループ領域が、TLR4−LPSの結合に応答する調節にとって必要ではないことを裏付けるものである。X−Cpn10のインビトロ活性において観察される変動は、Cpn10変異体で予備処理した群の間の平均サイトカインレベルが統計的に有意差を示さなかったため、内毒血症の試験において評価できなかった。
【0257】
(実施例17:大腸菌バッチ培養液からのCpn10の精製)
Cpn10ポリペプチド調製用のバイオプロセスを開発した。下記に示すように、このプロセスを用いて、100Lの大腸菌培養液から約20gの組換え型ヒトCpn10(>99%純度、≦0.03EU/mgのエンドトキシン、及び≦155.3pg/mgのDNA)を調製した。このプロセスを以下に概説する。
【0258】
(発酵)
AlaCpn10_pPL550プラスミドを有する大腸菌XL1−Blue株を含むバイアルを、マスターセルバンク(上記の「一般的方法」参照)から取り出し、30℃にて抗生物質を添加せずにSoya Brothで一晩「前培養」した。次に、上記の培地と成長温度のパラメータに設定した100Lのバイオリアクター用の種培養液を調製した。この種アリコートを、動物由来の生成物を含まず、かつ抗生物質を添加しない、大豆ベースのペプトンリッチな最少培地(BresaGen、SA、オーストラリア)100Lを仕込んだバイオリアクター中に添加した。バイオリアクターの培養ではバッチのフィードを必要とせず、培養温度を増殖期全体にわたり30±1℃に維持した。アンモニアを添加してpHを7.0±0.2に維持した。Cpn10の誘導は、温度を42℃にシフトさせてOD600値=10の時点で行い、42±0.1℃でさらに3時間インキュベートし、OD600値が20〜25に到達した時に終了させた。
【0259】
(細胞の溶解及び可溶化液の調製)
培養終了後3時間以内に、細菌細胞(約3.5kgの湿重量)を遠心分離(5,000×g)してペレットを調製し、25mM トリスHCl(pH8.0)中に再懸濁し、APV Gaulin Model 30CD圧力ホモジナイザー(APV、USA)を48.2MPa(7000psi)で3回通すことによって溶解させた。細胞残渣を沈殿させた後、細菌可溶化液に含まれる可溶性Cpn10を、フロースルーWestfalia MSB−7遠心分離機を用いて回収した。約20Lの透明な可溶化液を4℃で一晩保存した。
【0260】
(Cpn10の精製)
Big Bead Sulfopropyl−Sepharose(BBSP)カチオン交換、Q−Sepharose Fast Flow(QFF)アニオン交換、及びHigh Performance Sepharose SP(HPSP)カチオン交換クロマトグラフィーを含んでなる3つの後続プロセスを行い、Cpn10を精製した。K−prime 40−II Bioprocess Unit (Millipore)を用い、クロマトグラフィーを行った。
【0261】
(クロマトグラフィーカラム、容器、及びバッファの脱パイロジェン化)
全てのイオン交換クロマトグラフィーのカラムを1M NaOHで洗浄して脱パイロジェンし、溶出液が所定のバッファのpHと伝導率となるまでバッファで平衡化した。バッファの保存、及び種々の精製工程におけるカラム溶出液の貯留に使用した全ての容器はパイロジェンを含有しなかった。精製に使用した全てのバッファは、注射用蒸留水(WFI)を用いて調製した。
【0262】
(Big Bead Sulfopropyl−Sepharoseクロマトグラフィー)
25mM トリスHCl(pH8.0)(バッファA)を用い、毎時75cmの一定流速、樹脂1Lあたり10g以下のCpn10のローディング速度で、予め平衡化したBBSPカチオン交換カラム(BPG300/500、8.6LBBSP SP−Sepharose resin、GE Biosciences)に20〜40分間かけて可溶化液を添加した。バッファAで洗浄した後、捕捉されたCpn10を150mM NaClを含むバッファAを用いて溶出し、1Lの画分を回収した。SDS−PAGE分析は、BBSPプールが95%超の純度であることを示した。
【0263】
(Q−Sepharose Fast Flowクロマトグラフィー)
BBSP溶出液を、室温にて15倍容のバッファAで2回バッファ交換して脱塩した。第1の透析工程を2〜3時間実施した後、新たなバッファAのタンクに移し、一晩透析を行った。透析バッグからタンクバッファへのNaClの再分配は、較正済のスタンダードに対する透析液の導電率を測定することによってモニターした(Cyberscan 100、Eutech Instruments、シンガポール)。透析したBBSPプールは、毎時75cmの線流速、1Lの樹脂あたり15g以下のCpn10の負荷割合で、バッファAの中で予め平衡化した4.7LのQFFアニオン交換樹脂(GE Biosciences)を充填したBPG 200/500カラムに添加した。Cpn10を含有するQFFアニオン交換のフロースルー画分を回収した。ローディング条件下では、大腸菌細胞タンパク質、核酸、及びエンドトキシンの大部分はマトリクスに依然結合していた。
【0264】
(Sulfopropyl−Sepharose高性能クロマトグラフィー)
QFFフロースルーを、1.67LのSPHP樹脂(GE Biosciences)を充填したBPG100/500カラム(50mMトリスHCl(pH7.6)(バッファB)で予め平衡化)を用い、樹脂1Lあたり15〜20gのCpn10を添加した。結合したCpn10を、15Lの0〜120mMのNaCl(直線勾配)で溶出し、0.5Lの画分を回収した。この画分を、限外濾過クロマトグラフィー(SEC)、HPLC、及びSDS−PAGE分析に従ってプールした。Cpn10タンパク質とNaClイオンの濃度を、それぞれ、280nmでのUV吸光度とイオン選択電極法(IDEXX、オーストラリア)によって測定した。
【0265】
(調製)
プールしたSPHP画分の伝導率測定とNa+及びCl−イオン測定の組み合わせに基づいて、バッファを150mM NaClを含む50mMのトリスHCl(pH7.6)となるように最終調整した。調製したCpn10を、無菌条件下で0.2μmのフィルタを通して濾過した。濾過した溶液を、パイロジェンを含まない500mlプラスチックボトル中に、各ボトルあたり500mlずつ、合計2.5gのCpn10となるように分配した。
【0266】
(SDS−PAGE分析)
大腸菌細胞の可溶化液とクロマトグラフィーの画分のSDS PAGE分析を、メーカーの手順書に従いNuPAGE 4−12% Bis−Tris勾配ゲル(Invitrogen、Carlsbad、米国カリフォルニア州)を用いて行った。ゲルをクーマシーブリリアントブルー染色し、各ゲル中にCpn10タンパク質と分子量マーカーが含まれるようにした。
【0267】
(分光測定による精製Cpn10の定量化)
精製Cpn10の濃度を、0.353mg−1mL−1cm−1の吸光係数を用い、280nmにおいてUV吸光度(BioRad SmartSpec−3000分光光度計)により測定した。BioRad SmartSpec−3000は通常、ウシ血清アルブミン(Pierce)に基づいた場合に0.59のA280nm値を示すが、文献値は0.67である(Pierce technical resource No.TR0006.0)ことに留意すべきである。
【0268】
表8に、上記精製プロセス全体を通じてのCpn10純度及び収率を示す。(A)において、全体のタンパク質濃度はBCAタンパク質アッセイ(Sigma)によって測定し、Cpn10純度は、各精製工程後の細胞可溶化液とCpn10含有画分の濃度測定によって測定した。(B)3つのCpn10精製からの最終的な純度及び収率の比較を示す。各精製物は、大腸菌バッチ培養液100Lから調製した。全ての調製物をクーマシー染色によるSDS−PAGEで解析した結果、99%超の最終的なCpn10純度であった。エンドトキシン単位(EU)は、1mgのCpn10あたりのEUとして表し、DNA濃度は1mgのCpn10あたりのpgとして表す。
【0269】
【表8】
【0270】
【表9】
【0271】
(実施例18:組成物)
本発明に係る分子及び薬剤、並びに本発明の方法により同定される物質を用いて、種々の疾病の状態及び症状の治療又は予防を行ってもよい。かかる分子及び薬剤は、単独で投与してもよいが、典型的にはそれらは医薬組成物として投与する。
【0272】
本願明細書に記載の本発明を実施する最良の態様に従い具体的な好ましい組成物を以下に記載する。以下は、組成物の単なる説明に役立つ例示的多様であると解釈すべきであって、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0273】
(実施例18(a):非経口投与用の組成物)
無菌緩衝水1mL及び適切な薬剤又は分子1mgを含む態様で筋肉内注射用の組成物を調製した。
【0274】
同様に、点滴用の組成物の場合は、無菌リンガー溶液250ml及び適切な薬剤又は分子5mgを含有してもよい。
【0275】
(実施例18(b):注射可能な非経口組成物)
10体積%のポリエチレングリコール及び水に、1重量%の適切な薬剤又は分子を混合することにより、注射投与に適する組成物を調製した。この溶液は、濾過滅菌することができる。
【0276】
(実施例18(c):カプセル組成物)
カプセル形態に適切な薬剤又は分子の組成物を、標準的な2片の硬ゼラチンカプセル内に、粉末の形態の薬剤又は分子50mg、ラクトース100mg、タルク35mg、及びステアリン酸マグネシウム10mgを充填して調製した。
【0277】
(実施例18(d):点眼用組成物)
点眼薬として輸送される典型的な組成物を下記に概説する。
適切な薬剤又は組成物 0.3g
ヒドロキシ安息香酸メチル 0.005g
ヒドロキシ安息香酸プロピル 0.06g
純水 約100.00mlまで
【0278】
ヒドロキシ安息香酸メチル及びヒドロキシ安息香酸プロピルを75℃で70mlの純水に溶解し、得られた溶液を冷却した。次いで、適切な薬剤又は分子を添加し、膜フィルター(0.22μmの気孔サイズ)で濾過して溶液を滅菌し、無菌容器中に無菌でパックした。
【0279】
(実施例18(e):吸入投与用の組成物)
容積20〜30mlのエアロゾル容器に、適切な薬剤又は化合物10mg及びポリソルベート85又はオレイン酸等、0.5〜0.8重量%の潤滑剤との混合物を、フレオン等の噴霧剤中に分散させ、鼻腔内又は経口吸入のいずれかの投与に適切なエアロゾル容器に注入した。
【0280】
(実施例18(f):軟膏組成物)
軟膏として輸送するための典型的な組成物を、適切な薬剤又は分子1.0gを白色軟パラフィン100.0g中に添加して調製し、分散され、滑らかで、かつ均一な生成物を得た。
【0281】
(実施例18(g):局所用クリーム組成物)
局所用クリームとしての輸送用の典型的な組成物を以下に概説する。
適切な薬剤又は分子 1.0g
Polawax GP 200 25.0g
無水ラノリン 3.0g
白ロウ 4.5g
ヒドロキシ安息香酸メチル 0.1g
脱イオン水又は無菌水を添加して 100.0g
【0282】
ポーラワックス、ビーズワックス、及びラノリンを共に60℃に加熱し、ヒドロキシ安息香酸メチルの溶液を添加し、高速で撹拌してホモジナイズした。次いで温度を50℃まで低下させた。次いで薬剤又は分子を添加して全体的に分散させ、遅い速度で撹拌しながら組成物を冷却した。
【0283】
(実施例18(h):局所用ローション組成物)
局所ローションとしての輸送用の典型的な組成物を以下に概説する。
適切な薬剤又は分子 1.2g
ソルビタンモノラウレート 0.8g
ポリソルベート20 0.7g
セトステアリルアルコール 1.5g
グリセリン 7.0g
ヒドロキシ安息香酸メチル 0.4g
無菌水を添加して 約100.00ml
【0284】
ヒドロキシ安息香酸メチル及びグリセリンを、75℃の70mlの水に溶解させた。ソルビタンモノラウレート、ポリソルベート20、及びセトステアリルアルコールを共に75℃で溶解し、水溶液に添加した。得られたエマルジョンをホモジナイズし、連続的に撹拌しながら冷却し、残りの水の中に薬剤と分子を添加し、懸濁液とした。全ての懸濁液を撹拌してホモジナイズした。
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャペロニン10ポリペプチド、及びそれをコードする核酸に関する。本発明は、さらに、免疫調節活性を呈するシャペロニン10ポリペプチド、それを使用する方法、及びかかるポリペプチドを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱ショックタンパク質10(Hsp10)や妊娠早期因子(EPF)としても知られる哺乳類のシャペロニン10(Cpn10)は典型的には、シャペロニン60(Cpn60;Hsp60)と共にタンパク質のフォールディングに関与するミトコンドリア内の「分子シャペロン」タンパク質として特徴付けられる。Cpn10及びCpn60は各々、細菌のタンパク質GroES及びGroELのホモログである。GroESとCpn10は各々7員環にオリゴマー化し、各々、14個のGroEL又は7個のCpn60分子から構成されるバレル状構造の上に蓋として結合し、変性タンパク質を複合体に繋留する(非特許文献1及び2)。
【0003】
Cpn10タンパク質は種間で高度に保存され、ヒトCpn10はウシCpn10と100%同一であり、ラットCpn10とは1つの位置のアミノ酸のみが相違する。ヒトCpn10は、Escherichia coli由来GroESと30%の配列同一性(60%の相同性)を有する。大腸菌GroESの7量体結晶構造が過去に報告されている(非特許文献3の図1A参照)。Cpn10/GroESタンパク質は基本的に3つの異なる構造の領域、すなわち逆平行β−バレル領域、並びにそれに隣接する「ルーフβ−ヘアピンループ」領域及び「可動ループ」領域からなる。可動ループ領域はCpn60/GroELとの相互作用を仲介し、ゆえにCpn60/GroELとの複合体の形成、及び「分子シャペロン」、すなわちタンパク質フォールディング活性にとり重要である。
【0004】
しかしながら、Cpn10は分子シャペロンとしてのその細胞内の役割に加え、細胞表面(非特許文献4参照)及び細胞外流体中(非特許文献5参照)にも存在することが解明され、免疫反応の制御因子としての役割が次第に認識されつつある。例えばCpn10は、自己免疫性脳脊髄炎、遅延型過敏症、及び同種移植片拒絶のモデル実験において、免疫抑制活性を有することが実証されている(非特許文献5及び6)。
【0005】
また、本発明者らは最近、多数のヒト及びマウスのin vitro試験系及びマウス疾患モデルにおいて、Cpn10がNF−kBのLPS誘発活性を阻害し、LPS誘発によるTNFα及びRANTES分泌を減少させ、IL−10産生を亢進し得ることを実証しており(非特許文献7及び特許文献1、これらの開示事項は本願明細書でも参照により援用する)、Cpn10が自己免疫疾患及び炎症性疾患の治療のための免疫治療薬としての有用性を発揮しうることを示唆している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Bukau及びHorwich、1998年、Cell、92巻、351−366ページ
【非特許文献2】Harti及びHayer−Hartl、2002年、Science、295巻、1852−1858ページ
【非特許文献3】Xuら、1997、Nature、388巻、741−750ページ
【非特許文献4】Bellesら、1999年、Infect.lmmun.、67巻、4191−4200ページ
【非特許文献5】Shinら、2003年、J.Biol.Chem.、278巻、7606−7616ページ
【非特許文献5】Zhangら、2003、J.Neuro.Sci.、212巻、3746ページ
【非特許文献6】Mortonら、2000、Immunol.Cell Biol.、78巻、603−607
【非特許文献7】Johnsonら、2005年、J.Biol.Chem.、280巻、4037−4047ページ
【特許文献1】国際特許出願PCT/AU2005/000041号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この免疫調節活性の仲介に関与するCpn10分子内の部位は未だ同定されていない。
【0008】
本発明は、Cpn10分子の修飾、及び免疫調節活性に及ぼすこれらの組換えの効果に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、野生型Cpn10と比較して1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は付加を含んでなるCpn10ポリペプチドの提供に関し、これらのポリペプチドは免疫調節活性を呈することを特徴とする。
【0010】
本発明の第1の態様は、免疫調節活性を有するが、タンパク質フォールディング活性を欠くか又は実質的に欠く、単離されたCpn10ポリペプチドの提供に関する。
【0011】
本発明の第2の態様は、免疫調節活性を有する単離されたCpn10ポリペプチドの提供に関し、当該ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドと比較し可動ループ領域において1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は付加を含むことを特徴とする。
【0012】
当該Cpn10ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性のレベルと少なくとも同等の免疫調節活性を示しうる。
【0013】
一実施形態において、Cpn10ポリペプチドの可動ループ領域におけるIMLトリペプチドの1つ以上の残基は、荷電残基で置換されてもよい。
【0014】
別の実施形態において、IMLトリペプチドを含むCpn10ポリペプチドは、トリペプチドEEEで置換されてもよい。EEEトリペプチドを含む当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号39に記載のものであってもよい。当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号40に示すヌクレオチド配列によってコードされてもよい。
【0015】
さらに別の実施形態において、IMLトリペプチドを含むCpn10ポリペプチドは、トリペプチドIIIで置換されてもよい。IIIトリペプチドを含む当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号37に記載のものであってもよい。当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号38に示すヌクレオチド配列によってコードされてもよい。
【0016】
さらなる別の実施形態において、IMLトリペプチドを含むCpn10ポリペプチドは、トリペプチドIFIで置換されてもよい。IFIトリペプチドを含む当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号35に記載のものであってもよい。当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号36に示すヌクレオチド配列によってコードされてもよい。
【0017】
本発明の第3の態様は、免疫調節活性を有する単離されたCpn10ポリペプチドの提供に関し、当該ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドの可動ループ領域を実質的に欠くことを特徴とする。
【0018】
一実施形態において、可動ループ領域を実質的に欠く当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号3又は24に示すアミノ酸配列を含む。この可動ループ領域を実質的に欠く当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号4、5又は25に示すヌクレオチド配列によってコードされてもよい。
【0019】
当該Cpn10ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性のレベルと少なくとも同等の免疫調節活性を示しうる。
【0020】
本発明の第4の態様は、免疫調節活性を有する単離されたCpn10ポリペプチドの提供に関し、前記ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドと比較しルーフβ−ヘアピン領域において1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は付加を含むことを特徴とする。
【0021】
当該Cpn10ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性のレベルと少なくとも同等の免疫調節活性を示しうる。
【0022】
本発明の第5の態様は、免疫調節活性を有する単離されたCpn10ポリペプチドの提供に関し、前記ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドのルーフβ−ヘアピン領域を実質的に欠くことを特徴とする。
【0023】
一実施形態において、ルーフβ−ヘアピン領域(配列番号13)を実質的に欠く当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号6又は26に示すアミノ酸配列を含む。このルーフβ−ヘアピン領域を実質的に欠く当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号7、8又は27に示すヌクレオチド配列によってコードされてもよい。
【0024】
当該Cpn10ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性のレベルと少なくとも同等の免疫調節活性を示し得る。
【0025】
本発明の第6の態様は、免疫調節活性を有する単離されたCpn10ポリペプチドの提供に関し、前記ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドと比較し可動ループ領域とルーフβ−ヘアピン領域において1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は付加を含むことを特徴とする。
【0026】
本発明の第7の態様は、単離されたCpn10ポリペプチドの提供に関し、前記ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドの可動ループ領域とルーフβ−ヘアピン領域の双方を実質的に欠くことを特徴とする。
【0027】
この単離されたCpn10ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性のレベルと少なくとも同等の免疫調節活性を示しうる。
【0028】
一実施形態において、当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号9又は28に示すアミノ酸配列を含む。当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号10又は29に示すヌクレオチド配列によってコードされてもよい。
【0029】
本発明の第8の態様は、免疫調節活性を有する単離されたCpn10ポリペプチドの提供に関し、前記ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドと比較し追加的なN末端アラニン残基が欠失していることを特徴とする。
【0030】
当該Cpn10ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドと比較し、N末端のアセチル基を欠いてもよい。このCpn10ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性のレベルと比較し低減した免疫調節活性のレベルを示しうる。
【0031】
一実施形態において、追加的なN末端アラニン残基が欠失しているCpn10ポリペプチドは、配列番号23に示すアミノ酸配列を含んでもよい。この追加的なN末端アラニン残基が欠失しているCpn10ポリペプチドは、配列番号44に示すヌクレオチド配列によってコードされてもよい。
【0032】
本発明の第9の態様は、免疫調節活性を有する単離されたCpn10ポリペプチドの提供に関し、当該Cpn10ポリペプチドのN末端は、細菌のCpn10のN末端で実質的に置換されていることを特徴とする。
【0033】
当該細菌のCpn10はGroESであってもよい。
【0034】
当該Cpn10ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性のレベルと比較し低減した免疫調節活性のレベルを示しうる。
【0035】
一実施形態において、当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号14に示すアミノ酸配列を含んでもよい。当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号43に示すヌクレオチド配列によってコードされてもよい。
【0036】
本発明の第10の態様は、免疫調節活性を有する単離Cpn10ポリペプチドの提供に関し、対応する野生型Cpn10ポリペプチドと比較し、グリシン残基により、Cpn10ポリペプチドの追加的なN末端アラニン残基が置換されていることを特徴とする。
【0037】
当該Cpn10ポリペプチドは、対応する野生型Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性のレベルと比較し低減した免疫調節活性のレベルを示しうる。
【0038】
一実施形態において、当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号30に示すアミノ酸配列を含んでもよい。当該Cpn10ポリペプチドは、配列番号31に示すヌクレオチド配列によってコードされてもよい。
【0039】
本発明の第11の態様は、上記第1から第10の態様のいずれかに係るCpn10ポリペプチドをコードする単離された核酸の提供に関する。
【0040】
本発明の第12の態様は、1つ以上の調節配列に制御可能に連結した状態で第11の態様に係る核酸を含んでなる発現コンストラクトの提供に関する。
【0041】
本発明の第13の態様は、上記第1から第10の態様のうちのいずれかのポリペプチドを発現する、又は第11の態様の核酸若しくは第9の態様を発現する発現コンストラクトを含んでなる宿主細胞の提供に関する。
【0042】
本発明の第14の態様は、第1から第10の態様のうちのいずれかのポリペプチドと選択的に結合する抗体の提供に関する。
【0043】
本発明の第15の態様は、第1から第10の態様のうちのいずれかのポリペプチド、第11の態様の核酸、第12の態様の発現コンストラクト、又は第14の態様の抗体を含んでなる医薬組成物の提供に関する。
【0044】
当該医薬組成物は、さらに1つ以上の薬剤を含んでもよい。例えば、複数の硬化症の治療のため、当該組成物は有効量のIFNβをさらに含んでもよい。
【0045】
本発明の第16の態様は、被験者に有効量の第1から第10の態様のうちのいずれかのCpn10ポリペプチド又は有効量の第11の態様の核酸を投与するステップを含む、被検者の治療方法の提供に関する。
【0046】
この治療により、被験者の免疫反応が調節されうる。免疫反応は、Toll様受容体のシグナリングの調節を介して調節されうる。
【0047】
本発明の第17の態様は、被験者の疾患又は症状を治療又は予防する方法の提供に関し、当該方法は、有効量の上記第1から第10の態様のうちのいずれかのCpn10ポリペプチド又は第11の態様の核酸を被験者に投与することを含んでなる。
【0048】
当該疾患、障害又は症状は、急性若しくは慢性の炎症性疾患、喘息、アレルギー、多発性硬化症、GVHD、又は感染症から選択されてもよい。当該感染症は細菌感染又はウィルス感染から生じるものでもよい。当該細菌はグラム陰性菌でもよい。
【0049】
本発明の第18の態様は、被験者における、又はその少なくとも1つの細胞、組織若しくは器官におけるTLR4シグナリングを調節する方法の提供に関し、当該方法は、有効量の上記第1から第10の態様のうちのいずれかのCpn10ポリペプチド又は第11の態様の核酸を投与することを含んでなる。
【0050】
典型的には、Cpn10はアゴニストの誘発によるTLR4シグナリングを制御する。
【0051】
本発明の第19の態様は、被験者における、又はその少なくとも1つの細胞、組織、若しくは器官における1つ以上の免疫調節物質の産生及び/又は分泌を調節する方法の提供に関し、当該方法は、有効量の上記第1から第10の態様のうちのいずれかのCpn10ポリペプチド又は第11の態様の核酸を投与することを含んでなる。
【0052】
当該Cpn10は、TLR4からのシグナリングを調節してもよい。
【0053】
免疫調節物質は、炎症促進性のサイトカイン若しくはケモカイン、又は抗炎症性のサイトカイン若しくはケモカインであってもよい。当該サイトカイン又はケモカインは、TNF−α、IL−6、RANTES、IL−10、TGF−β、又は1型インターフェロンから選択されてもよい。当該1型インターフェロンは、IFNα又はIFNβであってもよい。
【0054】
本発明の第20の態様は、上記第1から第10の態様のうちのいずれかのポリペプチドに結合する化合物を同定する方法の提供に関し、当該方法は以下のステップを含んでなる。(a)候補化合物を前記ポリペプチドと接触させるステップ、及び(b)候補化合物と前記ポリペプチドとの複合体の形成をアッセイするステップ。
【0055】
複合体形成のアッセイは、競合的結合アッセイ又はツーハイブリッドアッセイであってもよい。
【0056】
本発明の第21の態様は、第1から第10の態様のうちのいずれかのポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法の提供に関し、当該方法は、次のステップを含んでなる。
(a)前記ポリペプチド、及びヌクレオチド、又はそれらの混合物に対する候補化合物の相互作用を可能にするのに適切な条件下で、前記ポリペプチドを前記候補化合物と接触させるステップと、
(b)前記ポリペプチドの活性をアッセイするステップ。
【0057】
当該ポリペプチドの活性のアッセイは、標識した基質を添加し、その標識した基質の変化を測定することを含んでもよい。
【0058】
また、本発明には、上記の態様及び実施形態に係る修飾Cpn10ポリペプチド及びポリヌクレオチドの変異体、誘導体、相同体、類似体、及び断片が包含される。
【0059】
上記の態様及び実施形態では、Cpn10ポリペプチド及びポリヌクレオチドは、任意の動物から調製してもよく、組換DNA技術を用いて調製してもよく、又は合成してもよい。典型的には、当該Cpn10は真核生物由来のCpn10である。
【0060】
上記の態様では、当該野生型Cpn10ポリペプチドは、配列番号1又は21に示すアミノ酸配列を含むヒトCpn10ポリペプチドであってもよい。
【0061】
上記の態様では、当該野生型Cpn10ポリペプチドは、配列番号2又は22に示すヌクレオチド配列によってコードされてもよい。
【0062】
上記の態様及び実施形態では、当該Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性は、ポリペプチドの7量体の産生を伴ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】A.逆平行β−バレル、「ルーフ」β−ヘアピンループ、及び可動ループ領域を示す大腸菌Cpn10(GroES)の結晶構造。Cpn10は、7つの同じ10kDaサブユニットからなる。B.野生型ヒトCpn10モノマーのアミノ酸配列。予測された18アミノ酸の可動ループを太字イタリックで示す。予測された14アミノ酸のルーフβ−ヘアピンを太字アンダーラインで示す。
【図2】TLR4シグナリングに及ぼすヒトAla−Cpn10及び大腸菌GroESの効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH001)によるLPS−誘発HIV−LTR活性の用量応答性の阻害(NFkB活性の間接的な測定)。大腸菌GroESではかかる阻害が見られなかった。パネルBは、パネルAの結果から算出した、LPSのみで産生されたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは4つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。RLU=相対光単位。NFkB活性は5ng/mlのリポ多糖(LPS)で誘発した。
【図3】SDS−PAGEゲル。ゲルAからOまで(Hを除く)についてのレーン構成:レーン1は分子量マーカー(kDa);レーン2−6はそれぞれ60μg、6μg、3μg、1.2μg、及び0.3μgのCpn10。A.精製Ala−Cpn10(CH001)をクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。B.精製Ala−Cpn10(CH003)をクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。C.精製Ala−Cpn10−EEE−cHisをクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。D.精製Ala−Cpn10−cHisをクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。E.精製Ala−Cpn10−IFIをクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。F.精製Ala−Cpn10−IIIをクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。G.精製Ala−Cpn10−Δmlをクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。H.Cpn10−Δml(レーン2)の部分的グルタルアルデヒド架橋により、銀染色した4〜12%SDS−PAGEゲル上に7つの明確なバンドが示され、分子が7量体であることを示す。レーン1は分子量マーカー(kDa)。I.精製Ala−Cpn10−Δroofのクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。J.精製Ala−Cpn10−β−バレルのクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。K.精製大腸菌GroESのクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。L.精製Cpn10−NtermESのクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。M.精製大腸菌GroESのクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。N.精製Gly−Cpn10のクーマシーブリリアントブルー染色した4〜12%SDS−PAGEゲル。
【図4−1】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10、Ala−Cpn10−III、Ala−Cpn10−IFI、Ala−Cpn10−EEE−cHis、及びAla−Cpn10−cHisの効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH001)、Ala−Cpn10のC末端ヘキサヒスチジンタグ(Ala−Cpn10−cHis)、及び多くの可動ループ変異体によるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルB、D、F、Hは、パネルA、C、E、Gの結果から算出した、LPSのみで産生されたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは4つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。RLU=相対光単位NFkB活性は5ng/mlのリポ多糖(LPS)で誘発した。
【図4−2】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10、Ala−Cpn10−III、Ala−Cpn10−IFI、Ala−Cpn10−EEE−cHis、及びAla−Cpn10−cHisの効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH001)、Ala−Cpn10のC末端ヘキサヒスチジンタグ(Ala−Cpn10−cHis)、及び多くの可動ループ変異体によるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルB、D、F、Hは、パネルA、C、E、Gの結果から算出した、LPSのみで産生されたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは4つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。RLU=相対光単位NFkB活性は5ng/mlのリポ多糖(LPS)で誘発した。
【図4−3】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10、Ala−Cpn10−III、Ala−Cpn10−IFI、Ala−Cpn10−EEE−cHis、及びAla−Cpn10−cHisの効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH001)、Ala−Cpn10のC末端ヘキサヒスチジンタグ(Ala−Cpn10−cHis)、及び多くの可動ループ変異体によるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルB、D、F、Hは、パネルA、C、E、Gの結果から算出した、LPSのみで産生されたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは4つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。RLU=相対光単位NFkB活性は5ng/mlのリポ多糖(LPS)で誘発した。
【図4−4】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10、Ala−Cpn10−III、Ala−Cpn10−IFI、Ala−Cpn10−EEE−cHis、及びAla−Cpn10−cHisの効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH001)、Ala−Cpn10のC末端ヘキサヒスチジンタグ(Ala−Cpn10−cHis)、及び多くの可動ループ変異体によるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルB、D、F、Hは、パネルA、C、E、Gの結果から算出した、LPSのみで産生されたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは4つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。RLU=相対光単位NFkB活性は5ng/mlのリポ多糖(LPS)で誘発した。
【図5】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10及びAla−Cpn10Δmlの効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH001)及びAla−Cpn10−ΔmlによるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルBは、パネルAの結果から算出した、LPSのみで産生させたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは4つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。RLU=相対光単位。NFkB活性は5ng/mlのリポ多糖(LPS)で誘発した。
【図6】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10とAla−Cpn10Δroofと大腸菌GroESの効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH001)及びAla−Cpn10−ΔroofによるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルBは、パネルAの結果から算出した、LPSのみで産生させたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは6つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。CPS=毎秒の相対カウント。NFkB活性は5ng/mlのリポ多糖(LPS)で誘発した。
【図7】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10及びAla−Cpn10−β−バレルの効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH001)及びAla−Cpn10−β−バレルによるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルBは、パネルAの結果から算出した、LPSのみで産生させたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは6つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。CPS=毎秒の相対カウント。NFkB活性は、5ng/mlのリポ多糖(LPS)で誘発した。
【図8】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10及びCpn10−NtermESの効果。ヒト野生型Cpn10(バッチCH001)によるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。Cpn10−NtermESではかかる阻害が見られなかった。パネルBは、パネルAの結果から算出した、LPSのみで産生させたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは6つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。CPS=毎秒の相対カウント。SD=標準偏差。NFkB活性は6ng/mlのリポ多糖(LPS)で誘発した。
【図9】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10とX−Cpn10の効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH003)及びX−Cpn10によるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルBは、パネルAの結果から算出した、LPSのみで産生させたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは6つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。CPS=毎秒の相対的カウント。NFkB活性は5ng/mlのリポ多糖(LPS)で誘発した。
【図10】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10及びGly−Cpn10の効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH003)及びGly−Cpn10によるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルBは、パネルAの結果から算出した、LPSのみで産生させたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは6つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。CPS=毎秒の相対カウント。NFkB活性は5ng/mlのリポ多糖(LPS)で誘発した。
【図11】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10及びAla−Cpn10−Δmlの効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH003)及びAla−Cpn10−ΔmlによるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルBは、パネルAの結果から算出した、LPSのみで産生させたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の抑制率を示す。LPSのみのサンプルは6つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。CPS=毎秒の相対カウント。NFkB活性は5ng/mlの超高純度リポ多糖(LPS)で誘発した。
【図12】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10とAla−Cpn10−Δroofの効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH003)及びAla−Cpn10−ΔroofによるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルBは、パネルAの結果から算出した、LPSのみで産生させたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の抑制率を示す。LPSのみのサンプルは6つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。CPS=毎秒の相対カウント。NFkB活性は5ng/mlの超高純度リポ多糖(LPS)で誘発した。
【図13】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10及びAla−Cpn10−β−バレルの効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH003)及びAla−Cpn10−β−バレルによるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルBは、パネルAの結果から算出した、LPSのみで生成したルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは6つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。CPS=毎秒の相対カウントNFkB活性は5ng/mlの超高純度リポ多糖(LPS)で誘発した。
【図14】TLR4シグナリングに及ぼすAla−Cpn10及びGly−Cpn10の効果。ヒトAla−Cpn10(バッチCH003)及びGly−Cpn10によるLPS誘発HIV−LTR活性の用量応答性阻害。パネルBは、パネルAの結果から算出した、LPSのみで産生させたルシフェラーゼのレベルに対するルシフェラーゼ活性(NFkB活性)の阻害率を示す。LPSのみのサンプルは6つの反復試験の平均であり、他のサンプルはいずれも2つの反復試験の平均である。CPS=毎秒の相対カウント。NFkB活性は5ng/mlの超高純度リポ多糖(LPS)で誘発した。
【図15−1】内毒血症の炎症モデルマウスにおけるCpn10活性。Cpn10及びCpn10変異体は、LPS誘発による血清中へのTNF−α、IL−10、及びIL−6の産生を低下させた。「IPS攻撃」(表1、グループ1、3、5、7、9、及び11参照)又は「生理食塩水コントロール」(表1、グループ2、4、6、8、10、及び12参照)のマウスからの血清を、CBA(「方法」を参照)を用いて炎症関連のサイトカインについて分析した。A、B)TNF−α、C、D)IL−6、及びE、F)IL−10サイトカインのレベルを、表示した各グループの平均(水平バー)と共にプロットした。テューキーのpost−hoc試験を用いた一方向ANOVA分析を各々のデータセットに関して行った。このデータの統計的有意性を括弧内に示す(p<0.05)(詳しくは本文を参照)。
【図15−2】内毒血症の炎症モデルマウスにおけるCpn10活性。Cpn10及びCpn10変異体は、LPS誘発による血清中へのTNF−α、IL−10、及びIL−6の産生を低下させた。「IPS攻撃」(表1、グループ1、3、5、7、9、及び11参照)又は「生理食塩水コントロール」(表1、グループ2、4、6、8、10、及び12参照)のマウスからの血清を、CBA(「方法」を参照)を用いて炎症関連のサイトカインについて分析した。A、B)TNF−α、C、D)IL−6、及びE、F)IL−10サイトカインのレベルを、表示した各グループの平均(水平バー)と共にプロットした。テューキーのpost−hoc試験を用いた一方向ANOVA分析を各々のデータセットに関して行った。このデータの統計的有意性を括弧内に示す(p<0.05)(詳しくは本文を参照)。
【図15−3】内毒血症の炎症モデルマウスにおけるCpn10活性。Cpn10及びCpn10変異体は、LPS誘発による血清中へのTNF−α、IL−10、及びIL−6の産生を低下させた。「IPS攻撃」(表1、グループ1、3、5、7、9、及び11参照)又は「生理食塩水コントロール」(表1、グループ2、4、6、8、10、及び12参照)のマウスからの血清を、CBA(「方法」を参照)を用いて炎症関連のサイトカインについて分析した。A、B)TNF−α、C、D)IL−6、及びE、F)IL−10サイトカインのレベルを、表示した各グループの平均(水平バー)と共にプロットした。テューキーのpost−hoc試験を用いた一方向ANOVA分析を各々のデータセットに関して行った。このデータの統計的有意性を括弧内に示す(p<0.05)(詳しくは本文を参照)。
【図16】アセチル−Cpn10、Ala−Cpn10、及びGly−Cpn10のN末端の図。
【発明を実施するための形態】
【0064】
(定義)
本願明細書の文脈において、用語「含む」は、「主として含むが、必ずしも単独ではない」ことを意味する。さらに、「含有する」や「含んでなる」のような「含む」の変形は、相応に変化した意味を有する。
【0065】
Cpn10ポリペプチドに関する本願明細書における用語「野生型」には、それらの天然又は非天然の形態におけるポリペプチドが包含される。例えば、天然のヒトCpn10は、そのN末端がアセチル化されているが、本発明において用語「野生型」を用いる場合、アセチル化された形態又はアセチル化されていない形態のポリペプチドが包含される。さらに野生型Cpn10ポリペプチドは、N末端に更なるアラニン(A)残基を含んでもよい(国際公開第2004/041300号、この開示事項は本願明細書でも参照により援用される)。
【0066】
用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって相互に結合したアミノ酸から構成されるポリマーを意味する。用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本願明細書において相互に交換可能に用いられるが、本発明における「ポリペプチド」の用語は、全長のタンパク質の一部を構成するという意味において用いられうる。
【0067】
本願明細書における用語「ポリヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド塩基、又は公知の天然ヌクレオチドの類似体からなる一本鎖又は二重鎖のポリマーのことを指し、この用語は、他に明記がなければ、特定の配列に加え、それに対して相補的な配列をも包含する。用語「ポリヌクレオチド」及び「核酸」は、本願明細書において相互に交換可能に用いられる。
【0068】
用語「単離」は、対象の分子がその自然環境又は宿主から取り出され、付随の不純物が低減又は除去され、問題の分子が存在する支配的な分子種となっている(すなわち分子ベースで組成物/サンプル中の他の個々の種よりも豊富である)状態のことを意味する。典型的には、実質的に純粋な画分とは、対象の種が、存在する全ての高分子種の少なくとも約30%(分子ベース)を占める組成物である。一般に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全ての高分子種の約80超〜90%を含んでなる。最も好ましくは、対象の分子種は、実質的に同質になる(不純物が通常の検出方法では組成物中に検出できない程度)まで精製され、その組成物は実質的に単一の高い分子種からなる。
【0069】
本願明細書における用語「実質的」とは、大部分ではあるが必ずしも全てではないことを意味し、従って、対応する野生型ポリペプチドの構成領域を「実質的」に欠く組換ポリペプチドというときは、その組換ポリペプチドはその構成領域の一部を保持している場合もある。例えば、対応する野生型ポリペプチドの構成領域を「実質的」に欠く組換ポリペプチドは約50%以下の構成領域の配列を保持してもよいが、典型的には除かれる配列領域に比例して、当該構成領域は構造的及び/又は機能的に不活性となる。
【0070】
本願明細書における用語「保存的アミノ酸置換」とは、ポリペプチド鎖(タンパク質の一次配列)の中で1つのアミノ酸を同様な特性を有する別のアミノ酸と置換又は交換することを指す。例えば、荷電アミノ酸のグルタミン酸(Glu)を類似の荷電アミノ酸のアスパラギン酸(Asp)に置換することがその保存的アミノ酸置換である。
【0071】
本願明細書における用語「治療」、「治療する」及びこれらの変形は、疾患状態又は症候を治療する、疾患の確立を防止する、あるいは、形はどうあれ何らかの方法により疾患又は他の不都合な症状の進行を防止、後退、遅延又は好転させるための全ての任意の方法を指す。
【0072】
本願明細書における用語「有効量」には、その意味中に、所望の治療又は予防効果を提供するための薬剤又は化合物の、毒性はないが十分な量という意味が包含される。必要とされる正確な量は、治療される種類、被験者の年齢及び健康状態、治療される症状の重症度、投与される具体的な薬剤、及び投与方法等の因子に依存して、被験者ごとに異なる。このため、正確な「有効量」を特定することはできない。しかしながら、ある特定の場合には、適切な「有効量」は所定の実験のみを用いて当業者が定めてもよい。
【0073】
本願明細書における用語「調節する」、「調節」、及びこれらの変形は、本発明の特定の分子又は薬剤の存在下での分子の活性、生成、分泌、又は機能のレベルが、その分子又は薬剤が存在しない場合のその活性、生成、分泌、又は他の機能と比較して増加又は減少することを指す。これらの用語は、増加若しくは減少のいずれの定量化も暗示するものではない。当該調節は、所望の結果を生じるのに十分な程度であってもよく、また直接又は間接的な調節であってもよい。
【0074】
(配列の参照)
表1.下記の参照用の表中に、本願明細書の全体を通して用いるCpn10ポリペプチドに付した名称を示す。この表は、本願明細書に開示のCpn10ポリペプチドの特徴及びそれらの対応するアミノ酸及び核酸の配列番号の記載を含む。
【0075】
【表1】
【0076】
Cpn10は、10kDaの同一サブユニット7個のドーム形状である。ドーム内は多くの電荷を有して親水性である。各々のCpn10サブユニットは、2つの大きな伸展部分が突出した不規則なβ−バレル形状を形成する。第1の伸展部分は、7量体の中心部に延び、ドーム様の構造を形成するβ−ヘアピンループである。興味深いことに、GroES(大腸菌Cpn10)のルーフ部分は生理条件下で陰性荷電であるが、哺乳類Cpn10は陽性荷電しており、一方、ルーフの大部分はバクテリオファージCpn10(Gp31)から完全に失われている。この分子は、ドーム基部から延長しCpn60との相互作用を仲介する、フレキシブルな18アミノ酸可動ループである別の伸展部分も有する。部位特異的変異により、Cpn60との相互作用にとって決定的な、可動ループ内の種々の残基、すなわち、実際のCpn60結合サイトを構成する可動ループ基部の3つの疎水性残基(30−IML−32)、及び可動ループの柔軟性を制限する2つの残基(26−T及び33−P)が同定されてきた(Richardsonら、J.Biol.Chem.、276巻、4981−4987ページ、2001年)。この結果、Cpn60とのCpn10の会合は、Cpn10の18アミノ酸可動ループにより仲介される(図1D参照)。大腸菌GroESにおいては、Cpn60/GroEL−結合サイトのトリペプチドの疎水性はより低く(25−IVL−27)、可動ループは哺乳類Cpn10よりも柔軟である。このような変化により、GroESのCpn60/GroELに対する親和性は減少しており、Cpn10及びGreESがGroELに対して機能する一方で、GroESはCpn60との相互作用を生成することはできない。
【0077】
細胞外Cpn10が免疫調節効果を発生するメカニズムはCpn60を含むという仮説から出発し、本発明者らは可動ループ領域を目標としてCpn10の部位特異的変異体を作製し、本願明細書において、Cpn60との相互作用を損なわせる変異によっても免疫調節活性が保持されることを証明する。
【0078】
従って、本発明の一態様においては、免疫調節活性を示すが、実質的にタンパクフォールディング活性を欠いている、単離Cpn10ポリペプチドを提供する。
【0079】
本願明細書においてはまた、Cpn10の可動ループ領域の本質的な部分及び/又はCpn10のルーフβ−ヘアピン領域を欠失しても、Cpn10がToll様受容体TLR4からのシグナリングを調節する能力が消滅しないことを証明する。
【0080】
従って、本願発明は、対応する野生型Cpn10ポリペプチドと比較して、可動ループ領域とルーフβ−ヘアピン領域の1つ又は両方において、1つ以上のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加を含んでなる、免疫調節活性を有する単離Cpn10ポリペプチドも提供する。Cpn10の可動ループ及びルーフループの欠失は、本願明細書において開示のように、Ala−Cpn10−β−バレルポリペプチドと呼ぶ。
【0081】
本発明はまた、対応する野生型Cpn10ポリペチドと比較して、可動ループ領域とルーフβ−ヘアピン領域の1つ又は両方を実質的に欠いている、単離Cpn10ポリペプチドを提供する。
【0082】
本願明細書に記載のように、本発明者らは、TLRシグナリングの調節として決定しうるヒトCpn10に起因する免疫調節効果を、大腸菌GroESに導入できないことも証明した。さらに、ヒトCpn10のN末端残基が、それに対応する大腸菌GroES由来N末端残基で置換されているCpn10ポリペプチドが活性を有さないことは、Cpn10のN末端が免疫調節活性に必須であることを証明している。
【0083】
本願明細書において後述するように、本発明者らはまた、Cpn10のN末端にグリシン残基を付加すると免疫調節活性が増大することを証明した。アラニン残基又はグリシン残基等、アセチル基と構造上の相同性が得られるアセチル基又はアミノ酸が存在すると、Cpn10の免疫調節活性が増大すると考えられる。
【0084】
(ポリペプチド)
本願明細書に記載のように、本発明には典型的には、対応する野生型Cpn10ポリペプチドと比較して1つ以上のアミノ酸欠失、付加又は置換を含んでなり、免疫調節活性を有するCpn10ポリペプチドが包含される。典型的には前記野生型Cpn10は真核生物由来の任意のCpn10ポリペプチドである。例えば、Cpn10は、酵母(Saccharomyces cerevisiae等)、線虫(Caenorhabditis elegans等)、カエル(Xenopus tropicalis等)、ニワトリ(Gallus gallus等)、ゼブラフィッシュ(Danio terio等)、ハエ(Drosphila melanogaster等のコバエ等)、植物(Arabidopsis thaliana等)又は哺乳類由来であってもよい。哺乳類Cpn10は霊長類、ネズミ、ヒツジ、ウシ、イヌ、ネコ、ブタ又はウマの由来であってもよい。あるいは、Cpn10は古細菌由来であってもよい。特定の実施形態において、当該Cpn10はヒトCpn10である。野生型のヒトCpn10は配列番号1又は21で示されうる。野生型ヒトCpn10をコードするヌクレオチド配列は、配列番号2又は22で示されるか、又は配列番号2又は22とハイブリダイズするための十分な同一性を示すものでもよい。
【0085】
本発明は、本願明細書に記載される野生型Cpn10ポリペプチドの修飾体に関するが、それ以外にもN末端又はC末端において1つ以上のアミノ酸残基を付加、欠失、又は置換して修飾した野生型分子も包含される。例えば、アミノ酸付加は、Cpn10ポリペプチド又はその断片と第2のポリペプチド又はペプチド(例えばポリヒスチジンタグ)との融合、マルトース結合タンパクとの融合、グルタチオンS転移酵素との融合、緑色蛍光タンパク質との融合、あるいは、FLAG又はc−myc等との融合により得られる。例えば、野生型ヒトCpn10ポリペプチドは更なるグリシン(G)残基の付加を含んでなってもよい。前記Cpn10ポリペプチドはN末端にメチオニンイニシエータを有してもよく、有さなくてもよい。
【0086】
ヒトCpn10に基づくか又は本質的に由来する、本発明の免疫調節Cpn10ポリペプチドにおいては、当該ポリペプチドは典型的には、N末端配列MAGQAFRKFL、任意に1つ以上の上述の修飾を含んでなる。
【0087】
本願明細書に開示のように、本発明のポリペプチドは、可動ループ領域及びルーフβ−ヘアピン領域のいずれか又は両方に、又は複数のアミノ酸の付加、欠失、又は置換を含んでなる。一実施形態において、1つ以上のアミノ酸置換は、例えばCpn60との相互作用の原因となるトリペプチド領域内の可動ループ領域で起こり、改変ポリペプチドは、免疫調節活性は維持されるがタンパクフォールディング活性は有さなくなる。別の実施形態において、Cpn10ポリペプチドは、例えば、配列番号3又は24で表すように可動ループ領域を、あるいは、例えば、配列番号6又は26で表すようにルーフβ−ヘアピン領域を、あるいは配列番号9又は28で表すように可動ループ領域及びルーフβ−ヘアピン領域の両方を、本質的に欠く。
【0088】
本願明細書に定義のように、可動ループ又はルーフβ−ヘアピンを構成するアミノ酸は、配列に基づいて定義され、大腸菌Cpn10すなわちGroESの結晶構造が知られている。真核生物Cpn10ポリペプチドの可動ループ及びルーフβ−ヘアピン領域は、進化においてCpn10配列が保存され予想される3次元タンパク構造が保存される見地から、同等であると予想された。しかしながら、真核生物Cpn10ポリペプチドの可動ループ及びルーフβ−ヘアピン領域の正確な境界は、GroESとはやや異なるようである。
【0089】
本願明細書に使用の用語「変異体」は、実質的に類似の配列を指す。通常、ポリペプチド配列変異体は、一般に同等の生物活性を有する。さらに、これらのポリペプチド配列変異体は、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を共有してもよい。同様に、用語「変異体」の意味には、本発明のポリペプチドのホモログも含まれる。ホモログは、典型的には異種由来のポリペプチドであるが、本質的に同一の生物学的機能、又は本発明に開示の対応するポリペプチドとしての活性を共有している。
【0090】
さらに、用語「変異体」には本発明のポリペプチドのアナログも包含され、用語「アナログ」は本発明のポリペプチド誘導体であり、当該誘導体は、実質的に同一の機能を有するように、又は複数のアミノ酸残基の付加、欠失、置換を含んでなるポリペプチドのことを意味する。用語「保存的アミノ酸置換」は、ポリペプチド鎖(タンパク質の一次配列)の中の1つのアミノ酸を、同様な特性を有する別のアミノ酸と置換又は交換することを指す。
【0091】
本発明には、本願明細書に開示のポリペプチドの断片も包含される。用語「断片」は、本発明のポリペプチド又はそれらの変異体の構成物をコードするか又は構成物である、ポリペプチド分子を指す。典型的には、当該断片は、構成物であるポリペプチドに共通の定性的な生物活性を有する。当該ペプチド断片は、約5〜約150アミノ酸長、約5〜約100アミノ酸長、約5〜約50アミノ酸長、又は約5〜約25アミノ酸長であってもよい。あるいは、当該ペプチド断片は約5〜約15アミノ酸長であってもよい。
【0092】
上述の、又は複数のアミノ酸残基の付加、欠失、置換によりN−及び/又はC末端が修飾されたCpn10ポリペプチドも本発明の範囲に包含される。
【0093】
(Cpn10の調製)
本発明によれば、Cpn10ポリペプチドは、当技術分野に周知の組み換えDNA及び分子生物学における標準的な技術を用いて調製してもよい。例えば、Sambrookら、”Molecular Cloning:A Laboratory Manual”、Cold Spring Harbor、New York、1989年、及び、Ausubelら、”Current Protocols in Molecular Biology”、Greene Publ. Assoc. and Wiley−Intersciences、1992年、等の標準テキストからガイダンスを入手してもよい。Mortonら、2000年(Immunol.Cell Biol.、78巻、603−607ページ)、Ryanら、1995年(J.Biol.Chem.、270巻、22037−22043ページ)、及びJohnsonら、2005年(J.Biol.Chem.、280巻、4037−4047ページ)に記載の方法はCpn10ポリペプチド精製の適切な例であるが、当業者であれば、本発明は用いた精製法若しくは調製法、あるいは本発明の方法及び組成物に係るCpn10調製に利用しうる他のいかなる方法であってもよく、限定されないことを理解するであろう。Cpn10ペプチドは、endoLys−C、endoArg−C、endoGlu−C、及びstaphylococcus V8−protease等の1つ以上のプロテイナーゼによるタンパク分解により調製してもよい。消化されたペプチド断片は、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により精製してもよい。
【0094】
本発明のCpn10ポリペプチド精製は、大量生産用にスケールアップしてもよい。例えば、本発明者らは本願明細書に記載のように、大腸菌のバッチ発酵により高純度の臨床グレードCpn10ポリペプチドを大量(グラム単位で)生産するバイオプロセスを開発した。
【0095】
本発明のCpn10ポリペプチド、並びにその断片及び変異体は、当技術分野において公知の標準的な液相又は固相化学的方法により合成してもよい。例えば、Steward及びYoung(J.M.Steward及びJ.D.Young、”Solid Phase Peptide Synthesis(第2版)”、Pierce Chemical Co.、米国イリノイ州、1984年、に記載の固相化学的手法に従い、当該分子を合成してもよい。
【0096】
一般的に、このような合成法は、又は複数のアミノ酸又は適切に保護されたアミノ酸を順次付加してペプチド鎖を伸長させることを含んでなる。典型的には、最初のアミノ基又はカルボキシ基を適切な保護基により保護する。次いで、保護されたアミノ酸を、非反応性の固体支持体に結合させるか、又はアミド結合生成に適した条件下において、相補的(アミノ又はカルボキシ)基を適切に保護された、配列における次のアミノ酸を付加することにより溶液中で反応させる。次いで、この新たに付加したアミノ酸残基から保護基を除去し、次の(保護された)アミノ酸を添加し、同様の反応を以降続ける。所望のアミノ酸を全て結合させた後、全ての残りの保護基、必要であれば全ての固体支持体を、逐次又は平行して除去し、最終的なポリペプチドを得る。
【0097】
関連技術分野における当業者に周知の技術を用いてCpn10のアミノ酸変異を行ってもよい。適切な読み枠が維持される限り、ヌクレオチドの付加、欠失又は置換(保存的及び/又は非保存的)等の任意のヌクレオチド変異導入を行い、その結果としてアミノ酸を変異させてもよい。例示される当該技術としては、ランダム変異導入、部位特異的変異導入、オリゴヌクレオチド媒介又はポリヌクレオチド媒介による変異導入、現存の又は人為的に設けた制限酵素部位を用いた特定の領域の欠失、並びにポリメラーゼ連鎖反応が挙げられる。
【0098】
本発明のCpn10ポリペプチドを用いて免疫調節活性を生じさせる際、Cpn10の7量体を形成させてもよい。本発明の実施に際して免疫調節活性を試験する場合、当業者に公知の多数の技術のうちのいずれか1つを用いてもよい。本願明細書に例示のように、Cpn10の免疫調節活性は、当該ポリペプチドがToll様受容体TLR4からのシグナル伝達を調節する能力を、例えばルシフェラーゼ・バイオアッセイを用いて、典型的にはリポポリサッカライド等のTLR4アゴニストの存在下において測定することにより解析できる。その代替法として、又はその方法に加えて、例えば末梢血単核細胞等の細胞中でのNF−kB産生又はサイトカイン産生等をインビトロ、エクスビボ若しくはインビボアッセイ等の他のアッセイを行って免疫調節活性を解析してもよい。
【0099】
(ポリヌクレオチド)
本発明の実施形態は、上述のCpn10をコードする単離ポリヌクレオチド並びに当該ポリヌクレオチドの変異体及び断片を提供する。野生型Cpn10をコードするヌクレオチド配列は配列番号2又は22で示されるか、又は配列番号2又は22の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0100】
とりわけ、本発明のCpn10−NtermESポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号43として示されるか、又は配列番号43の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0101】
本発明のAla−Cpn10ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号22として示されるか、又は配列番号22の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0102】
本発明のAla−Cpn10−Δmlポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号25として示されるか、又は配列番号25の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0103】
本発明のAla−Cpn10−Δroofポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号27として示されるか、又は配列番号27の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0104】
本発明のCpn10β−バレルポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号10として示されるか、又は配列番号10の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。本発明のAla−Cpn10β−バレルポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号29として示されるか、又は配列番号29の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0105】
本発明のGly−Cpn10ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号31として示されるか、又は配列番号31の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0106】
本発明のAla−Cpn10−IFIポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号36として示されるか、又は配列番号36の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0107】
本発明のAla−Cpn10−IIIポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号38として示されるか、又は配列番号38の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0108】
本発明のAla−Cpn10−EEE−cHisポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号40として示されるか、又は配列番号40の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0109】
本発明のAla−Cpn10−cHisポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号42として示されるか、又は配列番号42の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0110】
Cpn10−Δmlポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は本発明の中で考慮され、配列番号4又は5として示されるか、又は配列番号4又は5の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0111】
Cpn10−Δroofポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は本発明の中で考慮され、配列番号7又は8として示されるか、又は配列番号7又は8の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0112】
Cpn10β−バレルポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は本発明の中で考慮され、配列番号10として示されるか、又は配列番号10の配列とハイブリダイズするための十分な配列同一性を有する。
【0113】
上記のポリペプチドに関して、本願明細書で使用する用語「変異体」とは、実質的に類似する配列のことを指す。一般的に、ポリヌクレオチド配列変異体は、定性的な生物活性を共有するポリペプチドをコードする。さらに、これらのポリヌクレオチド配列変異体は少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を共有してもよい。同様に、用語「変異体」の意味には、本発明のポリヌクレオチドのホモログも包含される。ホモログとは典型的には、異種由来のポリヌクレオチドであるが、本質的に同一の生物学的機能を共有するポリヌクレオチドである。
【0114】
本発明のポリヌクレオチドの断片もまた本発明に包含される。用語「断片」は、本発明のポリヌクレオチドの構成物をコードするか又は本発明のポリヌクレオチドの構成物である、核酸分子を指す。ポリヌクレオチドの断片は、必ずしも生物活性を保持するポリペプチドをコードしない。例えば、当該断片はむしろハイブリダイゼーションプローブ又はPCRプライマーとして有用である。当該断片は本発明のポリヌクレオチドに由来してもよく、あるいは、例えば化学合成等の他の手段により合成してもよい。本発明のポリヌクレオチド及びその断片を用いて、当業者に公知の技術に使用されるアンチセンス分子を調製してもよい。
【0115】
従って、本発明には、本発明のポリヌクレオチドの配列に基づく、プライマー又はプローブとして用いられるオリゴヌクレオチド及び断片が包含される。オリゴヌクレオチドとは、PCR等の核酸増幅での使用に適切な短い核酸残基の配列であり、典型的には少なくとも約10ヌクレオチド〜約50ヌクレオチド長、より典型的には約15ヌクレオチド〜約30ヌクレオチド長である。当該プローブは様々な長さのヌクレオチド配列であり、例えば約10ヌクレオチド〜数千ヌクレオチド長を有し、典型的にはハイブリダイゼーションによるホモログ配列の検出に用いられる。配列間の相同性(配列の同一性)は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーにより主に決定される。とりわけ、プローブとして用いられるヌクレオチド配列は、低いストリンジェンシー、中度のストリンジェンシー、又は高いストリンジェンシー下で、本願明細書に開示のポリヌクレオチドのホモログ又は他の変異体に対してハイブリダイズしてもよい。ストリンジェンシーの低いハイブリダイゼーション条件は、50℃、2×SSC中でなされるハイブリダイゼーションに対応してもよい。当技術分野に公知の条件及び反応は多数存在し、それらを用いてハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを変化させてもよい。例えば、特定の核酸に対してハイブリダイズさせる核酸の長さ及び性質(DNA、RNA、塩基組成)、塩又は他の成分(ホルムアミド、硫酸デキストラン、ポリエチレングリコール等)の濃度、並びにハイブリダイゼーション及び/又は洗浄ステップ時の温度変化等が挙げられる。例えば、ハイブリダイゼーションフィルターを、少なくとも55℃(低ストリンジェンシー)、少なくとも60℃(中度のストリンジェンシー)、少なくとも65℃(中度/高いストリンジェンシー)、少なくとも70℃(高いストリンジェンシー)又は少なくとも75℃(非常に高いストリンジェンシー)の温度で、2×SSC中で30分間、2回洗浄してもよい。
【0116】
特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドをベクター中にクローニングしてもよい。当該ベクターは、プラスミドベクター、ウィルスベクター、又は外来配列の挿入、真核生物細胞への導入及び導入された配列の発現に好適な任意の他の担体であってもよい。典型的には当該ベクターは真核生物で発現するベクターであり、プロモータ、エンハンサ、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナル及び転写終結配列等の発現制御配列及びプロセシング配列を含んでもよい。
【0117】
(抗体)
本発明は、本発明のCpn10ポリペプチドに選択的に結合する抗体、並びにその断片及びアナログを提供する。好適な抗体としてはポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、単鎖、Fab断片、及びFab発現ライブラリが挙げられるが、限定されない。本発明の抗体は、Cpn10ポリペプチド、その断片若しくはアナログのアゴニスト若しくはアンタゴニストとして作用してもよい。
【0118】
好適な抗体は、本発明のCpn10ポリペプチドの別々の領域又は断片、とりわけ免疫調節活性の供与、及び/又はパートナー又は基質との結合に関与するそれらから調製される。抗原性Cpn10ポリペプチドは少なくとも5個の、好適には少なくとも10個のアミノ酸を含んでなる。
【0119】
適切な抗原を産生させる方法は、当業者にとり自明である。例えば、抗Cpn10モノクローナル抗体(典型的にはFab部分を含む)は”Antibodies−A Laboratory Manual”、Harlow及びLane編集、Cold Spring Harbor Laboratory、米国ニューヨーク、1988年に記載のハイブリドーマ技術を用いて調製してもよい。
【0120】
本質的に、本発明のCpn10ポリペプチド、その断片又はアナログに対するモノクローナル抗体の調製は、培養液中の連続培養細胞を用いる任意の抗体分子の産生方法を用いてもよい。これらの方法としては、Kohlerら(Nature、256巻、495−497ページ、1975年)が開発した最初のハイブリドーマ技術、並びにトリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、Immunology Today、4巻、72ページ、1983年)、及びEBVハイブリドーマ技術(Coleら、”Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy”、77−96ページ、Alan R.Liss, Inc.、1985年)等が挙げられる。不死化した抗体生産細胞株は、細胞融合以外の技術(例えば発ガン性DNAによるB細胞の直接転換、又はEpstein−Barrウィルスの形質移入等)により作製することもできる例えば、M.Schreierら、”Hybridoma Techniques”、1980年;Hammerlingら、”Monoclonal Antibodies and T−cell Hybridomas”、1981年;Kennettら、”Monoclonal Antibodies”、1980年、を参照。
【0121】
要約すると、モノクローナル抗体を生成するハイブリドーマの生成手段であり、骨髄腫(myeloma)又は他の不死化細胞株を、その認識因子結合部分、又は認識因子、又は起源特異的なDNA結合部分を免疫された、哺乳類の脾臓由来のリンパ球と融合する。本発明の実施に有用なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、存在する認識因子と免疫反応する能力、及び標的細胞において特異的な転写活性を抑制する能力を基に同定される。
【0122】
本発明の実施に有用なモノクローナル抗体は、適切な抗原特異性を有する抗体分子を分泌するハイブリドーマを含有する培地を含んでなるモノクローナルハイブリドーマ培養液を培養することにより調製できる。当該培養液は、ハイブリドーマが抗体分子を培養液中に分泌するのに適する条件下で十分な期間維持する。次いで抗体含有培養液を回収する。さらに抗体分子を公知の技術により単離することができる。
【0123】
同様に、本発明のCpn10、あるいはその断片又はアナログに対するポリクローナル抗体の調製に用いられる公知の種々の手順が存在する。Cpn10ポリクローナル抗体を調製する場合、限定されないが、ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ他の種々の宿主動物を、Cpn10ポリペプチドあるいはその断片又はアナログの注射により免疫してもよい。さらに、Cpn10ポリペプチドあるいはその断片又はアナログを、ウシ血清アルブミン(BSA)又はキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)等の免疫キャリアとコンジュゲートしてもよい。同様に、免疫応答を増強させるために、フロイント(完全及び不完全)のアジュバント、水酸化アルミニウム等のミネラルゲル、リゾレシチン等の界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、並びにヒト用の有用なアジュバントとしてBCG(bacille Calmette−Guerin)及びCorynebacterium parvum等の種々のアジュバントを用いてもよいが、これらに限定されない。
【0124】
また、所望の抗体のスクリーニングは当業者に公知の種々の方法により実施できる。抗体の免疫学的な特異的結合に関するアッセイとしては、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着法)、サンドイッチイムノアッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、in situイムノアッセイ、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集反応アッセイ、補体結合反応アッセイ、免疫蛍光アッセイ、プロテインAアッセイ及び免疫電気泳動アッセイ等(例えば、Ausubelら編集、1994年、”Current Protocols in Molecular Biology”、1巻、John Wiley&Sons,Inc.、New Yorkを参照)が挙げられるが、これらに限定されない。抗体結合は、抗Cpn10一次抗体上の検出可能な標識によって検出してもよい。あるいは、抗Cpn10抗体は、適切に標識した二次抗体又は試薬との結合によって検出してもよい。イムノアッセイにおいて結合を検出するための種々の方法が当業者に公知であり、本発明の範囲内に包含される。
【0125】
本発明の抗体を、当業者に周知の診断方法及びキットに用いて体液又は組織中のCpn10を定性的に検出若しくは定量することができ、あるいは当該抗体を、種々の疾病、障害又は症状の治療のための方法及び組成物に使用してもよい。
【0126】
本発明のCpn10ポリペプチドあるいはその断片又はアナログを免疫源として産生させた抗体(又はその断片)は、Cpn10との結合親和性を有する。好適には、当該抗体(又はその断片)は、約105M−1以上、好適には約106M−1以上、より好適には約107M−1以上、最も好適には約108M−1以上の結合親和性又は結合活性を有する。
【0127】
本発明に係る抗体を十分な量で調製するために、血清フリー培地を用いたバッチ培養により抗体を生産してもよい。培養後、クロマトグラフィー及びウィルス不活性化/除去工程を組み合わせた多段階工程を経て抗体を精製してもよい。例えば、まず抗体をプロテインAアフィニティカラムにより分離し、次いで溶媒/界面活性剤で処理し、あらゆる脂質エンベロープを有するウィルスを不活性化する。さらなる精製を行う場合、典型的にはアニオン及びカチオン交換クロマトグラフィーを用いて残余タンパク、溶媒/界面活性剤及び核酸を除去してもよい。精製した抗体を、ゲル濾過カラムを用いてさらに精製し、0.9%生理食塩水中懸濁液としてもよい。次いで、処方したバルク調製液を滅菌し、ウィルスをフィルタ除去して懸濁液を調製してもよい。
【0128】
(アゴニスト及びアンタゴニスト)
抗Cpn10抗体そのもの以外にも、本発明のポリペプチド並びにその断片及び変異体は、Cpn10と相互作用する化合物又は薬剤のスクリーニング及び同定に特に有用である。とりわけ、望ましい化合物はCpn10の免疫調節活性を調節する化合物である。かかる化合物は、Cpn10の免疫調節活性を、活性化、増加、阻害又は抑制することを通じて調節する。適切な化合物は、Cpn10と直接的(例えば結合)又は間接的に相互作用することによって影響を及ぼす。
【0129】
本発明のCpn10ポリペプチドと結合若しくは相互作用する化合物、具体的にはCpn10の活性を調節する化合物は、種々の適切な方法により同定してもよい。相互作用及び/又は結合は、競合結合アッセイ又はツーハイブリッドアッセイを用いて測定してもよい。
【0130】
例えば、ツーハイブリッドアッセイは、タンパク−タンパク相互作用の検出に典型的に用いられる、酵母ベースの遺伝子アッセイ系(Fields及びSong、1989年)である。要約すると、このアッセイは転写活性化因子のマルチドメイン性を利用するアッセイである。例えば、公知の転写活性化因子のDNA結合ドメインが本発明のCpn10ポリペプチドあるいはその断片又は変異体と融合し、転写活性化因子の活性化ドメインが候補タンパクと融合する。候補タンパクとCpn10ポリペプチドあるいはその断片又は変異体との相互作用により、転写活性因子のDNA結合ドメインと活性化ドメインが近接する。それにより転写活性因子によって活性化された特定のレポーター遺伝子の転写により、その相互作用を検出することが可能となる。
【0131】
あるいは、アフィニティクロマトグラフィを用いてCpn10の結合パートナーを同定してもよい。例えば、本発明のCpn10ポリペプチドあるいはその断片又は変異体を支持体(セファロース等)に固定化し、細胞可溶化液をカラムに通過させる。次いで、固定化したCpn10ポリペプチドあるいはその断片又は変異体に結合するタンパク質をカラムから溶出して同定してもよい。最初に、かかるタンパクを例えばN末端アミノ酸シーケンシングにより同定してもよい。
【0132】
あるいは、上述の技法の変形例として、Cpn10ポリペプチドあるいはその断片又は変異体を、アルカリホスファターゼ等の検出可能なタグと融合させることにより融合タンパクを調製し、Flanagan及びLeder、1990年、に記載の免疫沈降法の変形法を実施してもよい。
【0133】
Cpn10活性を調節する化合物を検出する方法は、Cpn10ポリペプチドを候補化合物及び適切な標識基質と結合させる操作と、当該基質の変化を基にしてCpn10に対する当該化合物の効果(時間の関数として計測してもよい)をモニターする操作を含んでなる。適切な標識物質としては、例えば比色測定、放射測定、蛍光測定、又は蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)ベースの方法のために標識された物質を含んでなる。
【0134】
本発明のCpn10ポリペプチド並びに適切な断片及び変異体を用いて、候補化合物のCpn10との結合能若しくは相互作用能をハイスループットスクリーニングで試験してもよい。かかる候補化合物をさらに、機能性Cpn10に対してスクリーニングし、Cpn10活性への当該化合物の効果を測定してもよい。
【0135】
なお、上述の方法は、本発明のCpn10ポリペプチド並びにその断片及び変異体と相互作用するか、又はその活性を調節しうる化合物を同定するために用いる方法の若干例に過ぎない。他の適切な方法も当業者に公知であり、また本発明の範囲内に包含される。
【0136】
上述の方法により、化合物がCpn10活性を活性化する(アゴニスト)か、又は抑制する(アンタゴニスト)かのいずれであるかを同定することができる。例えば、当該化合物は抗体、低分子量ペプチド、核酸、又は非タンパク性有機分子でもよい。
【0137】
上述の方法によるスクリーニングのための有望なCpn10活性調節剤は、当業に公知の無数の技法により生成されうる。例えば、種々の形態のコンビナトリアルケミストリーを用いて、推定上の非タンパク性調節剤を調製してもよい。さらに、核磁気共鳴法(NMR)及びX線結晶解析等の技術を用いてCpn10ポリペプチド、その断片及び変異体の構造をモデリングし、コンピュータを用いて可能な調節剤を予測してもよい。
【0138】
(組成物及び投与経路)
本発明のCpn10ポリペプチド及びポリヌクレオチドは、治療薬としても有用である。例えば、これらの分子の用途としては、被検者に対して治療的有効量の当該分子を投与して被検者の疾病又は症状の治療又は予防を行うことが挙げられる。典型的には、当該疾病及び症状は、被検者の免疫応答を調節することにより治療できるものである。当該疾病及び症状の例としては、急性又は慢性的炎症疾患、喘息、過敏症、多発性硬化症、GVHD及び感染症が挙げられるがこれらに限定されない。当該感染症は細菌又はウィルス感染により生じうる。従って、Cpn10ポリペプチド及びポリヌクレオチドを含んでなる、疾病又は症状の治療又は予防用の薬理学的に有用な化合物が考慮される。
【0139】
また、抗Cpn10抗体等の、本発明のCpn10ポリペプチドのアゴニスト及びアンタゴニストは、治療薬としても有用である。従って、本発明には、当該アゴニスト及びアンタゴニスト並びにそれを含んでなる薬理学的組成物を用いる治療法も包含される。
【0140】
一般的に、本発明に係る方法への使用に適切な組成物は、当業者に公知の方法及び手順に従って調製してもよく、従って薬理学的に許容できる担体、希釈剤及び/又はアジュバントを含んでもよい。
【0141】
組成物は標準的な経路で投与されてもよい。一般的に、当該組成物は非経口的(例えば、静脈内、脊髄内、皮下、又は筋肉内)、経口的、又は局所的な投与経路により投与される。投与は全身投与又は局所投与であってもよい。任意の所与の状況において採用される投与経路は、治療しようとする症状の性質、症状の重篤さの程度、供給される特定の化合物の必要量、及び当該化合物による副作用等の数多くの要因に依存する。
【0142】
通常、当業者に公知の方法に従って適切な化合物は調製されてもよく、薬理学的に許容できる希釈剤、アジュバント及び/又は賦形剤を含んでもよい。希釈剤、アジュバント及び/又は賦形剤は、当該組成物の他の成分と適合性を有するという意味で「許容できる」ものでなくてはならず、その受容者に有害であってはならない。
【0143】
薬理学的に許容できる担体又は希釈剤としては、脱塩水又は蒸留水;生理食塩水;ピーナッツ油、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、とうもろこし油、ゴマ油、落花生種(arachis)油又はココナツ油等の植物油;シリコーン油(メチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサン及びメチルフェニルポリシロキサン等のポリシロキサン類を含む);揮発性シリコーン類;液状パラフィン、ソフトパラフィン又はスクアラン等の鉱物油;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム又はヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;エタノール又はイソプロパノール等の低級アルカノール;低級アラルカノール;低級ポリアルキレングリコール又は低級アルキレングリコール(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール又はグリセリン);パルミチン酸イソプロピル、ミスチリン酸イソプロピル又はオレイン酸エチル等の脂肪酸エステル;ポリビニルピリドン;寒天;カラギーナン;トランガカントゴム又はアラビアゴム及びワセリンが挙げられる。典型的には、1つ以上の担体は組成物の10重量%〜99.9重量%を構成する。
【0144】
本発明の組成物は、注射投与に適切な形態、経口投与に適切な剤形(例えばカプセル、錠剤、カプレット、エリキシル剤等)、局所投与に適切な軟膏、クリーム又はローションの形態、点眼に適した形態、鼻腔内又は経口吸引等の吸引投与に適したエアロゾル形態、非経口投与(すなわち皮下、筋肉内又は静脈注射)に適した形態であってもよい。
【0145】
注射可能な溶液又は懸濁液、毒性を有さず非経口投与に許容できる希釈剤又は担体としては、リンガー液、等張生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、エタノール及び1,2プロピレングリコール等が挙げられる。
【0146】
経口使用のための適切な担体、賦形剤及びアジュバントの例としては、ピーナッツ油、液状パラフィン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、トラガカントゴム、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、ゼラチン及びレシチンが挙げられる。これらに加えて、経口投与用の製剤には適切な香料及び着色剤を含有させてもよい。カプセルの形態で用いる場合は、カプセルは崩壊を遅延するモノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセリン等の化合物でコーティングしてもよい。
【0147】
アジュバントは、典型的には軟化剤、乳化剤、濃化剤、保存料、殺菌剤及び緩衝剤を含んでなる。
【0148】
経口投与用の固形剤には、ヒトへの投与及び獣医学的に薬理学的に許容できる結合剤、甘味料、崩壊剤、希釈剤、香料、コーティング剤、保存料、潤滑剤及び/又は時間遅延剤を含有させてもよい。適切な結合剤としては、アラビアゴム、ゼラチン、コーンスターチ、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース又はポリエチレングリコールが挙げられる。適切な甘味料としてはショ糖、乳糖、ブドウ糖、アスパルテーム又はサッカリンが挙げられる。適切な崩壊剤としてはコーンスターチ、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、グアーガム、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸又は寒天が挙げられる。適切な希釈剤としては乳糖、ソルビトール、マンニトール、デキストロース、カオリン、セルロース、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム又はリン酸二カルシウムが挙げられる。好適な香料としては、ハッカ油、冬緑油、サクランボ、オレンジ又はラズベリー香料が挙げられる。好適なコーティング剤としては、アクリル酸及び/又はメタクリル酸及び/又はそれらのエステルの重合体又は共重合体、ロウ、脂肪アルコール、ゼイン、シェラック又はグルテンが挙げられる。好適な保存料としては、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、α−トコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン又は亜硫酸水素ナトリウムが挙げられる。好適な潤滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウム又はタルクが挙げられる。好適な時間遅延剤としては、モノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセリンが挙げられる。
【0149】
経口投与用の液体製剤は、上述の薬剤に加えて液体担体を含有してもよい。好適な液体担体としては、水、オリーブ油、ピーナッツ油、ゴマ油、ヒマワリ油、サフラワー油、落花生種(arachis)油、ヤシ油等の油、流動パラフィン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、脂肪アルコール、トリグリセリド又はそれらの混合物が挙げられる。
【0150】
経口投与用の懸濁液は、分散剤及び/又は懸濁化剤をさらに含有してもよい。好適な懸濁化剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム又はアセチルアルコールが挙げられる。適切な分散剤としては、レシチン、ステアリン酸等の脂肪酸のポリオキシエチレンエステル、ポリオキシエチレンソルビトールモノ又はジオレアート、ステアラート又はラウラート、ポリオキシエチレンソルビタンモノ又はジオレアート、ステアラート又はラウラート等が挙げられる。
【0151】
経口投与用のエマルジョンは、さらに又は複数の乳化剤を含有してもよい。好適な乳化剤としては、上記に例示した分散剤、又はアラビアゴム又はトラガカントゴム等の天然ゴムが挙げられる。
【0152】
非経口投与可能な組成物の調製方法は当業者に公知であり、例えば、”Remington’s Pharmaceutical Science”、第15版、Mack Publishing Company、Easton、米国ペンシルバニア州により多くの詳細が記載され、本願明細書において参照することにより援用する。
【0153】
本発明に係る局所投与用製剤は、有効成分、並びに1つ以上の許容できる担体及び任意の他の治療用薬効成分を含んでなる。局所投与に適した製剤としては、例えば眼、耳又は鼻への投与用のリニメント剤、ローション、クリーム、軟膏剤又はペースト剤、並びに液滴等の、皮膚を通過して治療を要する部位への輸送に適する液体又は半流動体の製剤が挙げられる。
【0154】
本発明に係る液滴は、滅菌された水溶液若しくは油性溶液、又は懸濁液を含有してもよい。これらは、抗菌剤及び/又は抗真菌剤及び/又は他の任意の適切な保存料を含有する水溶液に有効成分を溶解させ、適宜界面活性剤を添加して調製してもよい。次いで得られた溶液をろ過して浄化し、適切な容器に移して滅菌してもよい。滅菌は、オートクレーブ又は90〜100℃に半時間維持することにより、又はろ過後により達成してもよく、次いで無菌技術による容器への移動に続く。液滴への添加に適切な抗菌剤又は抗真菌剤の例としては、フェニル水銀の硝酸塩又は酢酸塩(0.002%)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)及び酢酸クロルヘキシジン(0.01%)が挙げられる。油性溶液の製剤にとり好適な溶媒としては、グリセロール、希釈アルコール及びプロピレングリコールが挙げられる。
【0155】
本発明に係るローションとしては、皮膚又は眼への滴下に適しているものが挙げられる。点眼剤には適宜殺菌剤を含有する滅菌水溶液を含有させてもよく、上記の液滴の製剤化に関する方法と同様に調製してもよい。皮膚への塗布用のローション又はリニメント剤はまた、アルコール又はアセトン等の皮膚の乾燥を促進し、冷却する物質、及び/又はグリセロール又はヒマシ油若しくは落花生種油(arachis)等のオイル等の保湿剤を含有してもよい。
【0156】
本発明に係るクリーム、軟膏剤又はペースト剤は、外用有効成分を含有する半固体製剤である。これらは、微細に粉体化された形態の有効成分を、単独で、又は当該有効成分を含有する水性若しくは非水性溶媒中の溶液若しくは懸濁液の状態で、グリス状又は非グリス状の基材と混合して調製してもよい。当該基材は、硬質・軟質・液状パラフィン等の炭化水素、グリセロール、ビーズワックス、金属石鹸;粘性物質;アーモンド油、トウモロコシ油、落花生種(arachis)油、ヒマ油又はオリーブ油等の天然起源の油;羊毛脂又はその誘導体、又はステアリン酸又はオレイン酸等の脂肪酸、並びにプロピレングリコール又はマクロゴール等のアルコールが挙げられる。
【0157】
当該組成物には、ソルビタンエステル又はそのポリオキシエチレン誘導体、アニオン性、カチオン性又は非イオン性界面活性剤等の任意の適切な界面活性剤を添加してもよい。天然ガム、セルロース誘導体、又はケイ質シリカ等の無機物質の懸濁剤、及びラノリン等の他の成分を含有させてもよい。
【0158】
当該組成物はリポソームの形態で投与してもよい。リポソームは、一般的にリン脂質又は他の脂質に由来し、水溶性溶媒中に分散した単層又は多層の水和液晶により形成される。毒性がなく、生理学的に許容でき、代謝され、リポソームを形成できる脂質が使用できるリポソームの形態の組成物は、安定剤、保存料、賦形剤等を含有してもよい。好適な脂質は、リン脂質及びホスファチヂルコリン(レシチン)であり、それらは天然由来でも合成物でもよい。リポソーム調製法は当業に公知であり、特に本件に関しては、Prescott編集、”Methods in Cell Biology”、14巻、Academic Press、New York、N.Y.、1976年、33ページ以下(本願明細書に援用する)を参照されたい。
【0159】
当該組成物はポリエチレングリコール(PEG)誘導体のアレーとコンジュゲートさせてもよい。タンパクへのPEG付加(PEG化)は、血漿クリアランス速度を低下させるための確立された方法であり、これによりタンパクの効力は増加する(Nucciら、1991年、Adv.Drug Del.、Rev.6、133ページ)。さらなるPEG化の利点としては、タンパクがより安定化し、免疫原性が低下し、溶解度が上昇し、タンパク分解に対する感受性が低下すること等が挙げられる。PEG分子は(OCH3CH2)n−OHの基本繰り返し構造を有し、分子量に従って分類される。PEG誘導体はタンパク質とコンジュゲートすることにより水力学的な半径を増大させ、半減期の増加は通常、付加したPEG鎖のサイズと直接に相関する(Sheffield W.、2001年、Curr.Drug Targets Cardiovasc.Haematol.Disord.、1巻、1−22ページ)。
【0160】
当該組成物はマイクロパーティクルの形態で投与してもよい。従来、ポリアクチド(PLA)、ポリアクチド−コ−グリコリド(PLGA)、及びエプシロン−カプロラクタム(ε−カプロラクトン)から調製される生分解性のマイクロパーティクルが、血漿中の半減期を長期化して有効性を持続させるための薬剤担体として広範に用いられている(R.Kumar, M.、2000年、J.Pharm.Pharmaceut.Sci.、3巻、2号、234−258ページ)。マイクロパーティクルは従来、ワクチン、抗体、及びDNA等の種々の薬剤候補物の輸送用に調製されている。さらにこれらの調製物は、種々の非経口的な輸送経路(皮下注射、静脈内注射及び吸引等)用に開発・改良がなされている。
【0161】
当該組成物は、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)、並びに有機溶媒若しくは混合有機溶媒を含んでなる制御放出マトリクスと組み合わせてもよい。また、ポリマー添加物を放出制御剤として担体に添加して、さらに粘度を高めて放出速度を低下させてもよい。SAIBは周知の食品添加物である。これは非常に高い親水性を有し、名目上6個のイソブチル酸エステルと2個の酢酸エステルの比率で完全にエステル化したショ糖誘導体である。混合エステルとしてのSAIBは結晶化しないが、透明で粘性の液体として存在する。SAIBを、エタノール又はベンジルアルコール等の薬理学的に許容できる有機溶媒と混合すると、混合物の粘性が、注射可能な程度まで低下する。薬理活性成分をSAIB輸送用の担体に添加し、SAIB溶液又は懸濁液の処方を調製してもよい。この製剤を皮下注射すると、溶媒がマトリクスから拡散し、SAIB−薬剤又はSAIB−薬剤−ポリマー混合物が、in situでデポーが形成される。
【0162】
本発明においては、被検者への分子及び薬剤の投与は治療的であってもよく、又は予防的であってもよい。治療用途では、すでに疾病に罹患している患者に対し、少なくとも疾病及び合併症を治癒する又は部分的に抑止するのに十分量な量の組成物を投与する。当該組成物は、患者を効果的に治療するための十分な量の分子又は薬剤を提供しなければならない。
【0163】
特定の患者に対する治療上有効な投与レベルは、治療しようとする障害及びその障害の重篤度;使用する分子又は薬剤の活性;使用する組成物;年齢、体重、健康状態、患者の性別及び食事;投与時間;投与経路;分子又は薬剤の排出速度;治療期間;治療と組み合わせて又は治療と同時に使用する薬剤、並びに医学分野で周知の他の関連する要因等に依存する。
【0164】
当業者であれば、ルーチン実験により疾病又は症状の治療に要する薬剤又は組成物の、有効かつ毒性を生じさせない量を決定することができる。
【0165】
一般的に、有効な投与量は、24時間あたり体重kgあたり約0.0001mg〜約1000mg、典型的には24時間あたり体重kgあたり約0.001mg〜約750mg、24時間あたり体重kgあたり約0.01mg〜約500mg、24時間あたり体重kgあたり約0.1mg〜約500mg、24時間あたり体重kgあたり約0.1mg〜約250mg、24時間あたり体重kgあたり約1.0mg〜約250mgの範囲と考えられる。より典型的には、有効な服用量は、24時間あたり体重kgあたり約1.0mg〜約200mg、24時間あたり体重kgあたり約1.0mg〜約100mg、24時間あたり体重kgあたり約1.0mg〜約50mg、24時間あたり体重kgあたり約1.0mg〜約25mg、24時間あたり体重kgあたり約5.0mg〜約50mg、24時間あたり体重kgあたり約5.0mg〜約20mg、24時間あたり体重kgあたり約5.0mg〜約15mgの範囲と考えられる。
【0166】
あるいは、有効な投与量は、500mg/m2以下である。一般的に、有効な投与量は、約25〜約500mg/m2、好適には約25〜約350mg/m2、より好適には約25〜約300mg/m2、より好適には約25〜約250mg/m2、より好適には約50〜約250mg/m2、より好適には約75〜約170mg/m2の範囲と考えられる。
【0167】
典型的には、治療用途において、当該治療は疾病状態である期間全体にわたり行われる。
【0168】
さらに、当業者であれば、各々の投与における最適な量及び間隔が、治療しようとする疾病状態の性質及び程度、投与の形態、経路及び部位、並びに治療しようとする個人の状態により決定されることは自明であろう。同様に、かかる最適条件は通常の技法によっても決定できる。
【0169】
当業者であれば、所定の日数の間における1日あたりの当該組成物の投与回数等、最適な治療計画を、治療計画を決定するための通常の試験を用いて当業者が決定できることを認識するであろう。
【0170】
本発明の実施形態には、Cpn10をコードするポリヌクレオチドの投与も包含される。その場合、当該ポリヌクレオチドは典型的にはプロモータに制御可能に連結し、それにより適切なポリペプチド配列が産生され、結果的に被検者に対して当該ポリヌクレオチドが投与される。当該ポリヌクレオチドは、ベクター中に存在する形で被検者に投与されてもよい当該ベクターは、プラスミドベクター、ウィルスベクター、又は外来配列の挿入、真核生物細胞への導入及び導入された配列の発現に好適な任意の他の担体であってもよい。典型的には当該ベクターは真核生物用の発現ベクターであり、プロモータ、エンハンサ、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナル及び転写終結配列等、発現制御配列及びプロセシング配列を含んでもよい。投与される核酸コンストラクトは、裸のDNAから構成されてもよく、又は1つ以上の薬理学的に許容できる担体と共に組成物の形態であってもよい。
【0171】
当業者であれば、本発明のCpn10ポリペプチドは、本発明の方法に従ってそれ単独で、又は1つ以上の追加的な薬剤と組み合わせて投与してもよいことを理解するであろう。例えば、本発明のCpn10ポリペプチドは、TLR受容体(TLR4等)を刺激しうる又は複数のアゴニストと共に投与してもよい。さらに本発明には、疾病及び障害に対する他の治療的アプローチとの組み合わせで本発明のCpn10ポリペプチドを用いる複合療法が包含される。例えば、Cpn10ポリペプチドは、IFNβ又はIFNα等の1型インターフェロンを伴う治療法に感受性のウィルス性疾患の治療に有用であり、本発明のCpn10ポリペプチドは、多発性硬化症等の自己免疫疾患の治療においてIFNβとの組み合わせで使用できる。
【0172】
かかる複合療法においては、用いられる各成分は、同時に、任意の順序で連続的に、又は別々のタイミングで投与し、所望の効果を得ることができる。あるいは、これらの成分を単一のユニットドーズ中に組み合わせて製剤化してもよい。別々に投与する場合には、同一の投与経路により各成分を投与することが好適であるが、必ずしもそうである必要はない。
【0173】
以下、具体的な実施例を参照して本発明を記載するが、如何なる意味においても、これらにより本発明の範囲が限定されると解釈すべきでない。
【実施例】
【0174】
(実施例1:Cpn10ポリペプチドの生成に用いられる遺伝子的パラメータ)
表2に、遺伝子的パラメータ、具体的には下記のCpn10ポリペプチドの調製に使用される発現系(すなわちプラスミドの名称、抗生物質による選抜、及び宿主細胞)を記載する。
【0175】
表2:Cpn10ポリペプチドの調製に用いる遺伝子的パラメータ
【0176】
【表2】
【0177】
(実施例2:Cpn10ポリペプチドの調製プロセス)
Cpn10の調製プロセスをさらに詳細に説明するため、Ala−Cpn10の調製プロセスを例示する。
【0178】
まず、N末端に付加的なアラニン残基(Ala−Cpn10_pPL550)を有するヒトCpn10をコードする熱誘導による発現プラスミドを、Somodevilla−Torresら(2003、Prot.Exp.Purif.、32巻、276−287ページ)から入手した。次いで、プラスミドベクターを大腸菌株XL1−Blue(Stratagene)に導入して形質転換し、1つのクローンを選択し、マスターセルバンクとして確立した。
【0179】
次いで、基本的にRyanら(1995、J.Biol.Chem.、270巻、22037−22043ページ)に記載の方法に従い、大腸菌中でAla−Cpn10を産生させた。また、Macro−Prep High Q(BioRad)に結合しなかった物質を、S−セファロース、次いでゲル濾過(Superdex 200、Amersham Biosciences)によってさらに精製した。50mMトリスHCl(pH7.6)及び150mM NaCl緩衝液中の精製Cpn10を、メーカーの使用説明書(Pall Corporation、Ann Arbor、米国ミシガン州、Cat No.MSTG5E3)に従って、0.2mm Mustang E膜を備えたAcrodiscを用いて濾過して残留するエンドトキシンを除去し、−70℃で保存した。Cpn10の純度は、SDS−PAGEにより99%超と測定された。アリコートを使用前に一度解凍した。
【0180】
大部分のヒトCpn10ポリペプチドは、GroEL媒介によるロダネーゼのリフォールディングアッセイにおいて大腸菌GroES(Brinkerら、2001年、Cell、107巻、223−233ページ)(データ示さず)と同様のモル活性を示した。Cpn10のLPS汚染は、Limulus Amebocyte Lysateアッセイ(BioWhittaker、Walkersville、米国ミズリー州)により、精製Cpn10タンパク質1mgあたり0.03EU/mg未満と測定された。
【0181】
上記のような調製プロセスから得られたCpn10ポリペプチドの純度は、バッチごとに質量分析によって評価した。下記の表3に示すように、予測質量と計算出質量は一致した。
【0182】
表3.Cpn10ポリペプチドの質量スペクトルデータと理論pI
【0183】
【表3】
【0184】
(実施例3:免疫調節活性Cpn10ポリペプチドを測定するためのRAW264−HIV−LTR−LUCバイオアッセイ)
Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性を、基本的に国際特許出願PCT/AU2005/000041号に記載の方法に従い、HAW264−HIV−LTRルシフェラーゼバイオアッセイを用いて試験した。
【0185】
このアッセイでは、リポ多糖(LPS)の存在下における、Cpn10又はその変異体、ミュータント、若しくは誘導体による、Toll様受容体のTLR4からのシグナリング調節活性を測定する。
【0186】
RAW264−HIV−LTR−LUC細胞を液体窒素ストックから融解して再培養した後、G418(200mg/ml)の存在中で5日間培養し、75cm2フラスコ(Greiner Labortechnik、Frickenhausen、ドイツ)中で懸濁培養した。RAW264−HIV−LTR−LUC細胞を繰り返しピペッティングして分散させ、24ウェルのプレートに2.5×105細胞/ウェルで蒔き、一晩インキュベートした(37℃、5%CO2)。大腸菌由来の粗LPS(Cat.No.L−6529、Strain 055:B5、Sigma)及び大腸菌由来の超高純度LPS(Cat.No.tlrl−pelps、Strain 0111:B4、Invivogen)を滅菌蒸留水に溶解させ、それぞれ1mg/ml又は5mg/mlに調製し、ガラスバイアル中において4℃で保存した。使用直前に溶液を激しくボルテックスし、アリコートを採取した。所定の濃度でLPSを添加する前に、Cpn10を細胞と共に2時間プレインキュベートした。さらに2時間インキュベートした後、接着細胞をルシフェラーゼアッセイ(Luciferase Assay System、Promega、Madison、米国ウィスコンシン州)用に処理した。ルシフェラーゼ活性は、Turner Designs Luminometer TD 20/20(RLU)又はPerkin−Bmer Wallace Victor 2 Multilabel Counter(CPS)のいずれかを用いて測定した。
【0187】
(実施例4:インビトロでのGroEL媒介によるロダネーゼリフォールディングアッセイを用いた、Cpn10ポリペプチドのコシャペロン活性の分析)
分子シャペロンとして作用し、GroELと共にタンパク質をフォールディングするCpn10ポリペプチドの能力を、Weber F.及びHayer−Hartl M.K.(Chaperon in Protocols、Ed Schneider C.、Humana Press Inc.、2000年、117−126ページ)に記載の適切な方法を用い、インビトロでのロダネーゼのリフォールディングをアッセイすることによって測定した。未変性のウシのロダネーゼ(30μM、SIGMA)を、5M 塩酸グアニジン及び8mM DTTを含む20mM MOPS−KOH(pH7.5)、100mM KCl、及び20mM MgCl2溶液(バッファA)中で変性させ、次いでロダネーゼの最終濃度が400nMとなるように、変性剤からGroEL(400nM)を含むバッファA中に希釈した(75倍)。GroELは、迅速かつ安定に変性ロダネーゼ(D−Rho)と結合し、一方、バッファのみではD−Rhoはミスフォールディングし、凝集した(すなわち非効率的な自発的リフォールディング)。予め形成させた安定GroEL結合ロダネーゼ複合体に、Cpn10(下記参照)及びATP(20.6mM)を添加することにより、効率的にリフォールディングが進行した。Cpn10の非存在下でATPを添加すると、D−Rhoはフォールディング能力が喪失された状態でGroELへの着脱サイクルを生じさせ、結局はミスフォールディング及び凝集を生じさせた(この反応は適切なアッセイブランクとして有用である)。各々のフォールディング反応液は全体で290μLであり、所定の時点(すなわち0、15、30、45、60、75、90分)でアリコートを30μL採取し、70μLのロダネーゼ活性のアッセイ混合物(57.1mM KH2PO4(pH7.5)、71.4mM EDTA、71.4mM チオ硫酸ナトリウム、及び71.4mM KCN)と6分間混合した。ATPを用いたリフォールディング反応の開始前に採取したアリコート30μLを、T=0分のリフォールディング時点とした。ロダネーゼ活性アッセイ混合物中のEDTAはMg2+イオンをキレートするため、GroELのATP結合を妨げ、結果としてフォールディング反応が直ちに停止した。次いで、15体積%のホルムアルデヒドを50μL添加し(最終濃度5体積%)、6分後にロダネーゼ活性を停止させた。
【0188】
ロダネーゼは、チオ硫酸塩とシアン化物からのチオシアニド(Rhodanid)の形成を触媒する。チオシアニドは、硝酸第二鉄の存在時に赤い鉄錯体を形成し、比色分析(吸光度450nm)で容易に検出される。ロダネーゼ活性の測定(150μL)では、硝酸第二鉄試薬150μL(64.5mM硝酸第二鉄及び9.2体積%の硝酸)の添加により発色させる。ロダネーゼ活性の測定は、96ウェルのマイクロプレート中、A450nmの測定により行う。
【0189】
典型的なロダネーゼのフォールディング反応は、フォールディングされたロダネーゼの収量が最大となるまでの間、時間経過に対するロダネーゼ活性(すなわち、フォールディングされたロダネーゼ)の指数関数的傾斜として示される。一定量のGroEL(400nM)及びロダネーゼ(400nM)においては、GroEL(14量体)に対するCpn10(7量体)モル濃度が同等(すなわち、400nM)に達するまで、Cpn10増加に伴う直線的な関係(ロダネーゼ活性と時間の間の関係)が観察された。Cpn10濃度が400nMを上回ると、ロダネーゼ活性の増加は迅速に最大に達した。アッセイは、5つのスタンダード(二重)及び試験サンプル(二重)で構成した。Cpn10スタンダードの濃度は、0nM、140nM、250nM、280nM、及び350nMとした。30、45、60、75、及び90分の時点でのロダネーゼ活性(すなわち、Cpn10活性)の測定値の平均値を算出した。0nMのCpn10スタンダードはアッセイのバックグラウンド活性の適切な測定値として役立つため、0nMのCpn10スタンダードについての吸光度の測定値を、全ての他の測定された吸光度(又は活性値)から差し引いた。バックグラウンド補正後、280nMのCpn10スタンダードの吸光度の測定値を100%活性とし、全ての他の吸光度測定値を、100%スタンダードに対する相対的活性%として変換した。異常値のデータ点は、追加試験における測定値との比較によって除外し、二重の測定値間の30%を超える偏差は許容範囲外と見なした。許容範囲内のデータを用い、5つのスタンダードの濃度、すなわち0nMのCpn10(0%活性)、140nMのCpn10(50%活性)、250nMのCpn10(89.3%活性)、280nMのCpn10(100%活性)、及び350nMのCpn10(125%活性)を用いて、較正曲線(直線)を作成した。ロダネーゼ活性(すなわちCpn10活性)をCpn10濃度に対してプロットした。アッセイバイアスの補正のため、試験サンプルによる活性%の値を、線形の較正曲線から得られた式を用いて再計算した。
【0190】
シャペロニンの濃度を、オリゴマータンパク質の分子量(MW)から計算し、一方、ロダネーゼではモノマーのMWから計算した。すなわち、大腸菌GroEL 14量体(SwissProt P06139)=800,766.4g/mol、ヒトCpn10 7量体(SwissProt Q04984)=76,100.5g/mol、及びウシロダネーゼ単量体(SwisProt P00586)=33,164.6g/molである。
【0191】
表4に、Ala−Cpn10活性に対するパーセンテージとしてバッチごとに計算したCpn10ポリペプチドのリフォールディング活性を示す。
【0192】
表4.Cpn10ポリペプチドのリフォールディング活性
【0193】
【表4】
【0194】
(実施例5:大腸菌GroESはLPS媒介によるHIV−LTR活性を阻害しない)
組換え型大腸菌GroESを精製し、実質的にエンドトキシン汚染を含まない(0.14EU/mg)ことが示された(図3K参照)。精製GroESを、上記のように、Ala−Cpn10との比較で、RAW264.7−HIV−LTR−LUC阻害アッセイにおいて試験した。図2に示すように、試験した濃度(25−100μg/ml)のいずれにおいても、GroESは、HIV−LTRのLPS誘発活性を阻害しなかった。これらの結果は、Cpn10について観察された免疫調節活性が、実際の有意な生物学的効果であることを裏付ける。
【0195】
(実施例6:ヒトCpn10変異体の構築)
(IMU23−25の部位特異的変異体)
可動ループ領域の疎水性IML部分(残基23−25)を変異導入し、Cpn10とCpn60との間の相互作用の強度(表1参照)を変化させた。IMLを、Cpn60との相互作用を撹乱させると予測される荷電トリペプチドEEEで置換し、また、IMLを、疎水性を高めることによってCpn10のCpn60との相互作用を潜在的に強化するものと予想されるIII又はIFI部分として変異させた。図3C、E、及びFに、Ala−Cpn10−EEE−cHis、Ala−Cpn10−IFI、Ala−Cpn10−IIIの精製を示すSDS−PAGEゲルを示す。
【0196】
Ala−Cpn10−III、Ala−Cpn10−IFI、及びAla−Cpn10−EEE−cHisを、表1において説明した相補的プライマーペアを用い、メーカーの使用説明書に従って、Quick Change Site−Directed Mutagenesis (Stratagene)により作製した。Ala−Cpn10−IIIとAla−Cpn10−IFIについては、Ala−Cpn10_pPL550プラスミドをDNA鋳型として使用した。Ala−Cpn10−EEE−cHisについては、Ala−Cpn10−cHis_pET23プラスミドをDNA鋳型として使用した(下記参照)。
【0197】
(Ala−Cpn10)
Ala−Cpn10を構成すると予測されるアミノ酸配列を、配列番号21に示す。Ala−Cpn10をコードする合成DNA配列(配列番号22)を、pPL550プラスミドのNcoI及びEcoRl部位に挿入した(Somodevilla−Torresら、2003年、Prot.Exp.Purif.、32巻、276−287ページ)。バッチCH001とCH003におけるAla−Cpn10の精製を示すSDS−PAGEゲルを、図3のAとBにそれぞれ示す。
【0198】
(Ala−Cpn10−cHis)
Ala−Cpn10−cHisを構成すると予測されるアミノ酸配列を、配列番号41に示す。Ala−Cpn10−cHisをコードする合成DNA配列(配列番号42)を、終止コドン以外のAla−Cpn10のDNA配列(配列番号22)を、pET23aプラスミド(Novagen)のNdeI及びXhol部位に挿入して調製した。当該クローニングにより、Ala−Cpn10のC末端にヘキサヒスチジンのタグが付与される。図3Dに、Ala−Cpn10−cHisの精製を示すSDS−PAGEゲルを示す。
【0199】
(Ala−Cpn10−Δml)
Cpn10の可動ループ領域(配列番号12)から16のアミノ酸を除去し、Ala−Cpn10−Δml(配列番号24)と称する86アミノ酸の変異体を作製した。Ala−Cpn10−Δmlをコードする合成DNA配列(配列番号25)を、pPL550プラスミドのNcoI及びEcoRI部位に挿入した(Somodevilla−Torresら、2003、Prot.Exp.Purif.32巻、276−287ページ)。可動ループはCpn10ポリペプチド鎖の中央に位置するため、可動ループの2つの残基(両端の1つの残基)を残してN末端フラグメントとC末端フラグメントを連結させた状態にすることで、適切なフォールディングと7量体の形成がなされた。
【0200】
図3Gに、Ala−Cpn10−Δmlの精製を示すSDS−PAGEゲルを示す。Ala−Cpn10−Δmlの部分的なグルタルアルデヒド架橋(図3H、レーン2)により、銀染色した4〜12%SDS−PAGEゲル上で7つの明瞭なバンドが検出され、分子が7量体構造を有することが示された。全量で300μlのPBS(pH7.4)中で、580μgの量のAla−Cpn10−Δmlを、25℃で30分間にわたり、0.01重量%のグルタルアルデヒド(APS)と共にインキュベートした。15μlの2M トリスHCl(pH8.0)の添加によって反応をクエンチした。反応混合物の100μlのアリコートを、Superdex 200 HR 10/30(GE Biosciences)限外濾過カラムを用い、0.5ml/分の流速でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で分離させた。非架橋Cpn10オリゴマーと同じ滞留時間で溶出されたピークを、0.5mlずつ2つのフラクションに回収し、次いでSDS−PAGE及び銀染色によって解析した。
【0201】
(Ala−Cpn10−Δroof)
β−ヘアピン領域(配列番号13)から7アミノ酸を欠失させ、Ala−Cpn10−Δroofと称する95アミノ酸の変異体を作製した。Ala−Cpn10−Δroofをコードする合成DNA配列(配列番号27)を、pPL550プラスミドのNcoI及びEcoRI部位に挿入した(Somodevilla−Torresら、2003年、Prot.Exp.Purif.、32巻、276−287ページ)。Ala−Cpn10−Δroofのアミノ酸配列を配列番号26に示す。さらに、このポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを配列番号27に示す。図3Jに、Ala−Cpn10−Δroofの精製を示すSDS−PAGEゲルを示す。(Ala−Cpn10−β−バレル)Ala−Cpn10−β−バレルを構成すると予測されるアミノ酸配列を、配列番号28に示す。図3Dに、Cpn10−β−barrelの精製を示すSDS−PAGEゲルを示す。Ala−Cpn10−β−バレルをコードする合成DNA配列(配列番号29)を、pPL550プラスミドのNcoI及びEcoRI部位に挿入した(Somodevilla−Torresら、2003年、Prot.Exp.Purif.、32巻、276−287ページ)。図3Jに、Cpn10−β−バレルの精製を示すSDS−PAGEゲルを示す。
【0202】
(Gly−Cpn10)
Gly−Cpn10を構成すると予測されるアミノ酸配列を、配列番号30に示す。Gly−Cpn10をコードする合成DNA配列(配列番号31)をpET30aプラスミドに挿入した。図3Nに、Gly−Cpn10の精製を示すSDS−PAGEゲルを示す。
【0203】
(X−Cpn10)
X−Cpn10を構成すると予測されるアミノ酸配列を配列番号23に示す。X−Cpn10をコードする合成DNA配列(配列番号44)を、pPL550プラスミドのNcoI及びEcoRI部位に挿入した(Somodevilla−Torresら、2003年、Prot.Exp.Purif.、32巻、276−287ページ)。図3Mに、X−Cpn10の精製を示すSDS−PAGEゲルを示す。
【0204】
(GroES)
大腸菌GroES(SwissProt P05380)を構成すると予測されるアミノ酸配列を、配列番号11に示す。GroESをコードする合成DNA配列(配列番号34)を、pET11aプラスミドに挿入した。図3Kに、GroESの精製を示すSDS−PAGEゲルを示す。
【0205】
(Cpn10−NtermES)
Cpn10−NtermESを構成すると予測されるアミノ酸配列を、配列番号14に示す。ヒトX−Cpn10の残基1−AGQAFRKFL−9(配列番号23)を、大腸菌GroESの残基1−MNIR4(配列番号11)で置換し、Cpn10−NtermESタンパク質を作製した。Cpn10−NtermESをコードする合成DNA配列(配列番号43)を、pET23aプラスミドに挿入した。図3Lに、Cpn10−NtermESの精製を示すSDS−PAGEゲルを示す。
【0206】
(実施例7:Cpn10のIMLトリペプチドの変異体の活性)
可動ループのIMLトリペプチド(Cpn60との相互作用、さらにはタンパク質のフォールディングに極めて重要)の変異体を作製し、可動ループのCpn60との相互作用を撹乱又は強化した(実施例6参照)。
【0207】
EEE可動ループを有するAla−Cpn10タンパク質変異体(Ala−Cpn10−EEE−cHis)では、インビトロにおけるロダネーゼリフォールディングのプロセスの際、Cpn10のGroEL(大腸菌Cpn60)と共に機能する活性が損なわれたが、IIIとIFI変異体では活性が維持された(表3参照)。
【0208】
以上の結果から、GroELへのAla−Cpn10−EEE−cHisの親和性が顕著に低下することが示された。タンパク質のフォールディングアッセイとは対照的に、RAW264.7−HIV−LTR−LUC阻害アッセイでは、全てのトリペプチド変異体(Ala−Cpn10−cHisを含む)が、Ala−Cpn10と同様な活性を示してTLR4シグナリングを調節できることが示され、すなわちCpn10のこの免疫調節活性にとり、可動ループ(すなわちCpn60)が重要ではないことが示唆された(図4B、D、F、及びH参照)。
【0209】
(実施例8:Ala−Cpn10−Δmlは、ロダネーゼのリフォールディングにおいてGroELと協働しない。)
可動ループ領域(及び従ってCpn60)が免疫調節活性に必要でないことを確認するため、16アミノ酸を可動ループ領域(配列番号12)から欠失させ、Ala−Cpn10−Δmlと称する86アミノ酸の変異体を作製した(実施例6参照)。Ala−Cpn10−Δmlのアミノ酸配列を、配列番号24に示す。
【0210】
Ala−Cpn10−Δmlが、ロダネーゼ再フォールディングのプロセスにおいてGroEL(大腸菌Cpn60)と共に生産的に機能する性能について試験した。ポジティブコントロールとして、Ala−Cpn10を同じアッセイ系に添加すると、約100%の活性を示した(表3参照)。Ala−Cpn10−Δmlの活性は約0%の活性と測定され、すなわちGroELとは相互作用せず、従ってタンパク質のフォールディングのプロセスの際にコシャペロンとして機能しないことが示された。なお、Ala−Cpn10とAla−Cpn10−Δmlのポリペプチドの双方を同じモル濃度として試験を行った。
【0211】
(実施例9:Ala−Cpn10−Δmlは、HIV LTRのLPS誘発活性を阻害する)
Ala−Cpn10−Δmlを、Ala−Cpn10との比較において、RAW264.7−HIV−LTR−LUC阻害アッセイにおいて試験した。このアッセイにおいて、ルシフェラーゼレポーターはNFKBシグナル伝達と間接的に連結しており、NFKBはLPSによって誘導される一次転写因子である。ルシフェラーゼ活性は、使用した測定方法に応じて、相対光単位(RLU)又はカウント/秒(CPS)として測定した。図5A及び5Bに示すように、Ala−Cpn10−Δmlは、1−100μg/mlの濃度範囲で、LPS誘発によるHIV−LTRの活性化を阻害した。これは単独のアッセイであるが、2つの反復した実験を別なマイクロタイタープレートで行い、やはり同様の活性が示された。このデータセットにおいて、Ala−Cpn10−Δmlは、Ala−Cpn10と比較して一貫して大きい阻害活性を有することが観察された。
【0212】
上記の実施例8に記載のように、Ala−Cpn10−Δmlは、ロダネーゼのリフォールディングのプロセスにおいて、GroELのコシャペロンとして機能できなかった。しかしながら、LPSの存在下でのRAW264.7−HIV−LTR−LUC阻害アッセイに使用した場合、Ala−Cpn10−Δmlによる活性は、Ala−Cpn10と同等のレベルとして観察された。すなわち、Ala−Cpn10−Δmlは用量依存的にHIV−LTRレポーターのLPS誘発による活性化を阻害した。これらの結果は、TLR4シグナリングを調節するCpn10の機能においては、Cpn60は全く関与しないことを示すものであった。
【0213】
(実施例10:Ala−Cpn10−Δroofは、HIV LTRのLPS誘発による活性化を阻害する。)
Cpn10のβ−ヘアピンルーフループ領域(図1参照)は、哺乳類において正味の正電荷を有するが、多くの細菌においては正味の負電荷を有する(大腸菌GroESが代表例)。興味深いことに、バクテリオファージT4もまた、大腸菌GroELと共にT4主要カプシドタンパク質Gp23をフォールディングする機能を有する固有のCpn10(Gp31)を持つ。なお、GroES及びCpn10はいずれもこの機能を有さない。Gp31とCpn10/GroESの間の主な相違点は、Gp31がルーフβ−ヘアピンループを完全に欠くことであり、Gp31の異常な機能及び性能の理由ともなりうる(Huntら、1997年、Cell、90巻、361−371ページ)。
【0214】
Cpn10免疫調節活性に対するルーフβ−ヘアピン領域の関与を解析するため、7つのアミノ酸をβ−ヘアピン領域(配列番号13)から除去し、Ala−Cpn10−Δroofと称する95アミノ酸の変異体を作製した(実施例6参照)。Ala−Cpn10−Δroofのアミノ酸配列を、配列番号26に示す。
【0215】
Ala−Cpn10−Δroofを、Ala−Cpn10及び大腸菌GroESとの比較において、LPSの存在下、RAW264.7−HIV−LTR−LUC阻害アッセイにおいて試験した。図6に示すように、Ala−Cpn10−Δroofは、50−100μg/mlの濃度範囲で、HIV−LTRのLPS誘発活性を阻害した。これは単独のアッセイであるが、2つの反復した実験を別なマイクロタイタープレート上で実施し、同様の活性が示された。このデータセットにおいて、Ala−Cpn10−Δroofは、Ala−Cpn10の約80%の活性を一貫して有することが観察された。これらの結果は、Cpn10によるTLR4シグナリングの調節が、分子の機能的ルーフβ−ヘアピン領域が存在しない場合でも生じうることを示すものである。
【0216】
(実施例11:Ala−Cpn10−β−バレル変異体は、免疫調節活性を示す)
上記実施例9及び10に記載のデータの裏付けとして、本発明者らは、可動ループとβ−ヘアピンルーフループの双方を欠くヒトAla−Cpn10変異体を作製した(「Ala−Cpn10−β−バレル」、配列番号28、実施例6参照)。興味深いことに、Ala−Cpn10−β−バレル変異体は、Ala−Cpn10とAla−Cpn10−Δml変異体に比較し、ゲル濾過クロマトグラフィーにおいて若干大きい分子として溶出された。このことから、当該ルーフがサブユニットを強固に結合した高次構造中に保持することを助長すると示唆される。一方、可動ループは7量体を不安定にしてその分解を促進するが、それにもかかわらず当該7量体は分解された個々のモノマーよりもエネルギー的に安定である。
【0217】
Ala−Cpn10−β−バレルのポリペプチドを、Ala−Cpn10及び大腸菌GroESとの比較において、LPSの存在下で、RAW264.7−HIV−LTR−LUC阻害アッセイにおいて試験した。図7に示すように、この変異体は、TLR4シグナリングの調節において、Ala−Cpn10の活性に対して約50%の活性を示し、すなわち当該免疫調節活性は、β−ヘアピンルーフループに部分的に寄与するか、又は7量体の安定性に起因することが示唆された。なお、得られた結果は2つの独立した実験結果に基づくものである。
【0218】
(実施例12:N末端Cpn10変異体の免疫調節活性)
Cpn10のN末端は、(サイトゾル中での合成後の)ミトコンドリアマトリクスのターゲティングを補助することが知られている。しかしながら、殆どのミトコンドリアマトリクスのタンパク質は、切断可能なN末端のターゲティング配列を有するものの、Cpn10のN末端は切断されず、さらなる機能を有することを示唆する。
【0219】
本発明者らは、インビトロにおける免疫反応を調節するヒトCpn10のN末端変異体の性能を検討した。試験した変異体(本願明細書において「Cpn10−NtermES」と称する)は、ヒトN末端配列「MAGQAFRKFL」の位置において、大腸菌GroESからのN末端配列「MNIR」を有する。Cpn10−NtermESのアミノ酸配列を配列番号14に示す。
【0220】
Cpn10−NtermESは、シャペロン媒介によるロダネーゼのリフォールディングにおいて、Ala−Cpn10の活性に対してわずか約12%の活性を示した(GroELと協働、表3参照)。しかしながら、ゲル濾過クロマトグラフィーを行った結果、GroEL(Cpn60)との結合時には、Cpn10−NtermESは可動ループを備えた無傷の7量体であることが確認された(データ示さず)。
【0221】
図8A及び8Bに示すように、Cpn10−NtermES変異体は、Ala−Cpn10で観察される活性と対照的に、HIV−TLRのLPS誘発による活性を免疫学的に調節する機能を喪失していた。このことは、TLR4を伴うCpn10の免疫調節活性にとり、Cpn10のN末端が必要であることを示唆する。従って、大腸菌(GroES)のように、ES−Nterm−Cpn10は、LPSによって誘発されるNF−kB(すなわちTLR4調節)を抑制できなかった(図8B参照)。
【0222】
(実施例13:X−Cpn10における、HIV LTRのLPS誘発による活性化阻害能の低下)
X−Cpn10を、Ala−Cpn10との比較において、RAW264.7−HIV−LTR−LUC阻害アッセイを用いて試験した。実施例6で議論したように、X−Cpn10は、追加的なN末端アラニン残基及び天然ヒトCpn10に存在するアセチル基を欠く。このアッセイにおいて、ルシフェラーゼレポーターを、NFkBシグナル伝達と間接的にリンクさせた。NFkBは、LPSによって誘発される一次転写因子である。ルシフェラーゼ活性は、使用した測定方法に応じて、相対光単位(RLU)又はカウント/秒(CPS)として測定した。図9A及び9Bに示すように、X−Cpn10は、HIV−LTRのLPS誘発活性を部分的に阻害した(Ala−又はGly−Cpn10活性の約50%)。このデータセットにおいて、アラニン等のCpn10のN末端上の付加的な残基は、TLR4シグナリングの免疫調節活性に関与しうることが観察された。
【0223】
(実施例14:Gly−Cpn10はHIV LTRのLPS誘発による活性化を阻害する)
Gly−Cpn10を、Ala−Cpn10との比較において、RAW264.7−HIV−LTR−LUC阻害アッセイを用いて試験した。実施例6で議論したように、Gly−Cpn10は、Ala−Cpn10の追加的なN末端アラニン残基をグリシン残基で置換している。このアッセイにおいて、ルシフェラーゼレポーターを、NFkBシグナル伝達と間接的にリンクさせた。NFkBは、LPSによって誘発される一次転写因子である。ルシフェラーゼ活性は、使用した測定方法に応じて、相対光単位(RLU)又はカウント/秒(CPS)として測定した。図10A及び10Bに示すように、Gly−Cpn10は、HIV−LTRのLPS誘発による活性化を、Ala−Cpn10よりも大きい規模で阻害した。
【0224】
図16に示すように、アセチル基は構造的にアラニン残基よりもグリシン残基と類似する。従って、アセチルCpn10ポリペプチド(すなわち、天然のCpn10)の活性はGly−Cpn10の活性と同程度であると考察される。
【0225】
(実施例15:RAW264.7−HIV−LTR−LUC阻害アッセイにおける超高純度LPSの使用)
図5−7及び10に示すデータは、上記のRAW264.7−HIV−LTR−LUC阻害アッセイにおいて、粗LPSを用いることによって得た。図11−14では、TLR4に特異的な超高純度LPSを使用した結果を示す。図11(Ala−Cpn10Δml)、図12(Ala−Cpn10Δroof)、図13(Ala−Cpn10−β−バレル)、及び図14(Gly−Cpn10)の結果は、図5−7、及び10において示した対応するデータと非常に類似するものである。このことは、Cpn10による免疫調節活性を解析するために本願明細書において使用され開示されたアッセイデータが、TLR4に特異的に由来するデータであることを示す。
【0226】
(実施例16:マウス内毒血症の試験)
種々のCpn10ポリペプチド(すなわち、Ala−Cpn10−Δml、Ala−Cpn10−Δroof、及びX−Cpn10)のインビトロ免疫調節活性が、インビボ活性を反映するか否かを解析するため、敗血症モデルマウスを用い、内毒血症の試験を行った。
【0227】
Cpn10分子の仮定された活性領域を系統的に変異又は欠失させることにより、かつ多数の生物から得たCpn10のホモログを試験することにより、最適な活性にとり必要となる最小限の構造領域及び/又は配列モチーフを解明することができ、最終的に、治療用途により有力な分子の設計が可能となる。これまで、免疫調節活性についてのこれらの領域の重要性を調査するため、Cpn10におけるいくつかのバリエーション又は変異体を作製した(図1参照)。
【0228】
上記のインビトロの試験から、Ala−Cpn10に対して、Cpn10の可動ループ又はルーフループ領域に欠失のあるコンストラクト(すなわちそれぞれAla−Cpn10−ΔmlとAla−Cpn10−Δroof)は、TLR4とLPSとの結合に応答したNFkB活性の低下に関して、同程度の活性を示すことが観察されている。他方で、非アセチル化Cpn10(X−Cpn10)では、このインビトロ活性評価を用いた場合、NFkB活性を下方調節する性能が顕著に低下していた。
【0229】
本試験において、多数のCpn10変異体が、炎症(すなわち内毒血症)のインビボモデルにおいて、Ala−Cpn10に対して同様な活性を有することが見出された。マウスの内毒血症モデルを用いて、LPS誘発による炎症性サイトカインの産生を低下させるCpn10の能力を測定した。
【0230】
(実施例16a:マウス内毒血症試験に用いた材料及び方法)
以下のマウス内毒血症の試験に使用した材料及び方法を、下記の実施例17a(1)〜17(a)2に記載する。
【0231】
(実施例16a(1):内毒血症の試験に使用したマウス)
本試験は、84匹のメスBalb/cマウスを用いて行った。いずれも成体であり(>9週齢、平均体重約20g(0.02kg))、1つの群あたり7匹のマウスとして、12群に分けた(表5参照)。マウスを12/12の明/暗サイクル条件下において収容し、標準的な実験動物用飼料(Specialty Feeds、Glen Forrest、オーストラリア)及び水を自由に摂取させた。各マウスの体重を注射の前に測定した。下記に示す要領(表5参照)で、尾静脈からの静脈(IV)ルートを経て注射を行った。
【0232】
(実施例16a(2) マウス内毒血症の試験に用いて薬剤/溶液)
実施例16a(1)マウス内毒血症の試験に使用した薬剤/溶液を以下((A)から(H)に掲げる)に示す。(A)タンパク質製剤バッファ(FB):このバッファは、本試験のネガティブコントロールであり、50mMのトリスHCl(pH7.6)と150mM NaClを含む(<0.02EU/ml)。このバッファは、試験物質として、またポジティブコントロール及び試験サンプルの希釈用液として使用する。(B)Ala−Cpn10:このCpn10ポリペプチドは、本試験のポジティブコントロールであり、5mg/mlのストック濃度を有する(<0.01EU/mg)。400μlのタンパク質溶液を1.6mlの製剤バッファ中に希釈することによって、1mg/mlの試験用溶液を調製した。(C)Ala−Cpn10−Δml:このCpn10ポリペプチドは、3.5mg/ml(<0.03EU/mg)のストック濃度を有する。571μlのタンパク質溶液を1.429mlの製剤バッファ中に希釈することによって、1mg/mlの試験用溶液を調製した。(D)Ala−Cpn10−Δroof:このCpn10ポリペプチドは、4.2mg/mlのストック濃度を有する(<0.1EU/mg)。タンパク質溶液477μlを1.523mlの製剤バッファ中に希釈することによって、1mg/mlの試験用溶液を調製した。(F)X−Cpn10:このCpn10ポリペプチドのストック濃度は5mg/mlである(<0.04EU/mg)。400μlのタンパク質溶液を1.6mlの製剤バッファ中に希釈することにより、1mg/mlの試験用溶液を調製した。(G)エンドトキシン:リポ多糖(LPS)をSigma Chemical Company(Cat.No.L6529)から入手した。使用の直前に、バイアルの内容物(1mg)を1mlの無菌の生理食塩水中で再調製した。各群への注射の前に、当該内容物を無菌の生理食塩水中に100μg/mlまでさらに希釈(1/10)した。(H)エンドトキシンコントロール:注射用の無菌生理食塩水を、900mg/ml(0.9%)の濃度で、Pfizer、オーストラリア(Cat. No. DW−SC0010)から入手した(<0.01EU/ml)。
【0233】
(実施例16b:マウス内毒血症の試験において行った薬剤投与及び採血)
マウスの異なる群における薬剤投与の手順は、表5に示す通りである(下記参照)。投与はいずれも、ある拘束したマウスに対する意識下での100μlの尾静脈注射により行った。LPS用量はいずれも10μg/マウスとした。Cpn10変異体はいずれも100μg/マウス(体積100μL)で注射した。
【0234】
下記表5に採血の手順を概説する。血液サンプルは、ハロタン麻酔(Zeneca Ltd.、Macclesfield、イギリス)(SOP ET−011)下における心臓穿刺又は死後の心臓切開による出血から採取した。抗凝固剤(血塊活性剤)を含まない小児科用血清チューブ(Greiner−bio−one、USA、Cat# 450401)中に血液を採取した。サンプルを室温に約5分間放置して凝集させ、室温にて5分間、12000rpmの遠心分離(Biofuge 13、Heraeus Instruments)を行った。血清を新しいチューブに移し、−20℃に置き、ドライアイス上へ移した。
【0235】
全ての薬剤投与と採血の時間を臨床記録シート(Form IMVS 2061/A)に記録した。同じ記録シートを使用し、実験の全体を通した一般的条件をモニターした。
【0236】
表5.Cpn10内毒血症の試験手順
【0237】
【表5】
【0238】
(実施例16c:サイトメトリックビーズアレイ(CBA)分析)
炎症関連のサイトカインのレベルにおける変化を評価するため、血清サンプルについてマウスの炎症CBA分析(Cat#552364、BD Biosdences)を行った。すなわち、LPS投与マウス(表5、群1、3、5、7、9、及び11)又は生理食塩水対照マウス(表5、群2、4、6、8、10、及び12)から調製したTNFα、IL6、IL−10、MCP−1、IL12p70、IFN−γ血清を、必要により、分析前にアッセイ希釈剤に希釈した(LPS処理群について5倍、生理食塩水対照について2倍)。各サンプルを、CBAソフトウェアを備えたBD FACS−Array装置を用い、メーカーの使用説明書に従って、2回試験した。
【0239】
(実施例16d:サイトカインレベルの低下率の測定)
下記の式を使用し、LPS感作マウスに及ぼすCpn10処理の効果を測定した。Cpn10変異体で予備処理したマウス(すなわち試験群)の予備処理していないマウス(すなわち対照群)に対するLPS誘発サイトカインの低下率を、次の式に従って計算した。
低下%=100−[(試験群の平均サイトカインレベル/対照群の平均サイトカインレベル)×100]
【0240】
(実施例16e:ELISA分析)
CBA分析を裏付けるため、メーカーの使用説明書に従ってR&D Systems Duoset ELISAキット(Cat#DY410)を用い、マウスTNF−α ELISAを行った。希釈剤としてPBS+10%FCSを用い、サンプルとスタンダードを希釈(3倍希釈)した。サンプルを2回試験した。
【0241】
(実施例16f:臨床的観察)
表5に記載の種々の群のマウスの挙動を、LPS又は生理食塩水の注射後90分間以内又は心臓穿刺による出血の前に解析した。表6に全ての観察を記録してまとめた。観察は、LPS/生理食塩水の注射の直後と心臓穿刺(C.P.)によるマウスの出血の前に行った。臨床的観察の比較は、群1、2、又は3に関して行った。通常、LPSのみで処理したマウス(群1)は、注射後15分間以内にLPS誘発による敗血症を示した。LPS処理のマウスでは移動性の低下を示し、刺激(例えば騒音又は接触)に対する応答が少なかった。下痢や毛の乱れのようなLPS感作によるいくつかの典型的な悪影響は、本試験においてはいずれのマウスにも観察されなかった。このことは、この試験に使用したLPSのロットが相対的に高い効果を有することを反映していると考えられる。生理食塩水処理の対照マウス(群2)は、刺激に対する応答が大きく、通常の応答性と移動性を示した。
【0242】
Cpn10と種々のCpn10変異体で予備処理したマウスは、未処理のLPS対照群と比較し、LPS感作に応答して、若干異なる挙動を示した。Ala−Cpn10とAla−Cpn10−Δroofで予備処理したマウス(群3と7)は落ち着きが少なく、刺激に対して若干敏感に反応するが、観察した期間全体にわたり群がり続けた。興味深いことに、Ala−Cpn10−Δmlで予備処理したマウス(群5)は、若干活発であり、観察期間の全体を通してそれ程群がらなかった。また、Acetyl−Cpn10で予備処理したマウス(群9)のLPS感作の効果は、他の群で観察されたものと異なるように見受けられた。これらのマウスを観察したところ、LPS注射後の最初の30〜45分間に、群3と類似の挙動を示したが、これらのマウスは、観察期間の終わりに向かうにつれて回復し、移動性と俊敏さが向上した。これに対し、X−Cpn10で予備処理したマウスは、群1と非常に似た挙動を示した。これらのマウスは極度に不活発であり、刺激に対する応答が少なく、殆どの観察期間において群れをなした。Cpn10変異体の生理食塩水による各対照群(すなわち、群4、6、8、10、及び12)では、未処理の生理食塩水群(群2)における対照動物に類似の有害な臨床症状が存在しないことが示された。
【0243】
LPSで感作されたマウスでは、一般に血圧が降下する(敗血症に関連する症状)典型的な症状を示すため、出血が困難となる。これらのマウスでは、心臓穿刺による出血は遅く、LPSを投与されなかったマウスと比較して血液の回収量が少なくなる。直接の心臓穿刺によって出血させることができなかったマウスについては、死後の心臓切開による出血を行った。LPS投与マウスに対してCpn10処理を行った場合、Cpn10処理マウスにおける血液回収への影響や改良が見られなかったが、LPS対照動物と比較し、Cpn10処理マウスからの血液は、一般に、心臓切開による出血を行うことなく、直接の心臓穿刺によって回収することができると認められた。本試験において、各マウスから少なくとも血液400μLを回収した。通常の出血と回収からの逸脱はいずれも、該当する臨床的記録シートに記録した。
【0244】
表6.種々のCpn10で予備処理した後にLPS/生理食塩水の注射をしたマウスの臨床的観察
【0245】
【表6】
【0246】
(実施例16g:マウスにおけるサイトカインの減少)
LPS感作マウス(図15参照)におけるTNF−α、IL−6、及びIL−10サイトカインの平均レベルを示す。Cpn10で処理しなかった動物に対して炎症促進性サイトカインの低下において統計的有意性を示すCpn10処理群を星印で表示する。予備処理しなかったマウス(表5に示す)と比較した、種々のCpn10で予備処理したマウスにおいて分析した種々のサイトカインの低下率を括弧内に表示する。
【0247】
表7.種々のCpn10変異体で処理したLPS感作マウスにおけるLPS誘発による炎症促進性サイトカインレベルの平均と低下率
【0248】
【表7】
【0249】
(血清のサイトカインレベルについてのCBA分析)
各マウスからの血清サンプルを、循環炎症促進性サイトカインの検出用のBD Mouse炎症CBAアッセイを用いて分析した。このアッセイは、試験サンプル中のTNFα、IL−6、IL−10、IL−12p70、MCP−1、及びIFN−γサイトカインを検出する。分析は、アッセイの限界内での最適な検出のために、連続的に希釈したサンプル(実施例16a参照)について行った。全てのサンプルを2回試験した。
【0250】
サイトカインTNF−α、IL−6、及びIL−10の相対的発現をこのマウスの敗血症モデルにおける炎症の指標とし、対照郡に対するCpn10処理群のそれらのレベルを解析した。この内毒血症の試験の時間枠(90分間のLPS投与)において、IFNγ、MCP−1、及びIL−12p70サイトカインのレベルは、一般にこのアッセイの検出限界外にあるため、データをここには示さない。ゆえにこれらのサイトカインは、本試験において検討しなかった。CBAの結果を解析する前に、本発明者らは、反復の間の一貫性に基づくデータの有意性が、標準曲線の線形範囲のどの部分に該当するかを評価した。極端な異常値は、分析から除外した。
【0251】
本試験における種々の群のマウスでの循環TNF−α、IL−6、及びIL−10の絶対値と平均を図15に示す。予想通り、TNF−α、IL−6、及びIL−10サイトカインの平均レベルは、それらの生理食塩水の対照と比較し、LPSで感作されたマウス血清中で誘発された数値よりも高かった(それぞれ図15A、C、E対B、E、F)。このことは、本試験において使用した量のLPSが、炎症反応を誘発し、これらのサイトカインのバックグラウンドレベルが、これらのマウスにおいて十分に低かったことを示す。いくつかの生理食塩水の対照サンプル(図15F、「X−Cpn10+生理食塩水」)において検出されたIL−10のレベルは、LPS感作の対照(すなわち、群1の「FB+LPS」)と同等に高かった。これらのサンプルでは、より濃縮した形態で分析を行ったため、内在性の血清因子がアッセイの読み取りを妨害し、ゆえにこのデータの不正確の原因となったことが考えられる。データはまた、LPSで感作されたマウスをCpn10タンパク質で処理したとき、Cpn10で予備処理されていないマウスに比較して、血清TNF−α、IL−6、及びIL−10サイトカインのレベルを低下させることを示した(それぞれ図15A、C、及びE)。各サイトカインプロフィールについて、一方向のANOVA分析(Tukeyのpost−hoc試験)を行った。この分析により、種々の群におけるIL−10サイトカインレベルではないTNF−α及びIL−6レベルの平均のいくつかが、統計的に異なることを見出した(図15A、C、及びE)。プロット上に示された平均サイトカインレベルの明らかな低下にもかかわらず、IL−10サイトカインレベルにおいて、統計的差異がないことは、対照群のみにおけるIL−10サイトカインの大きな変動によるものと考えられる(図15E、「FB+LPS」)。サンプリング集団を増やして試験結果の統計的有意性を改良するのが今後の課題である。
【0252】
Tukeyのpost−hoc試験は、Ala−Cpn10−Δroof又はX−Cpn10のいずれかで予備処理した群(すなわち、群7と11)における平均のTNF−α及びIL−6サイトカインのレベルが、未処理群(すなわち、群1)に対して統計的に低いことを示した(表7)。しかしながら、いくつかの群において、炎症促進性サイトカインにおける統計的に有意な低下(未処理群に対する)は、1つのサイトカインのプロフィールにおいてのみ観察された。例えば、Ala−Cpn10−Δml予備処理群では平均TNF−αが低下したが、未処理群に対するIL−6サイトカインレベルの低下は観察されず、Ala−Cpn10予備処理群(表7)についてその逆であった。さらに、統計分析では、Cpn10変異体の予備処理した群の平均サイトカインレベルが相互に異なることは見出されなかった。
【0253】
いくつかのCpn10変異体による予備処理群でのみ、統計的に有意な低下を示したが、全体的な傾向としては、全てのCpn10変異体において、LPS感作マウスにおける炎症関連のサイトカインのレベルが低下したことを示した。これらのマウスにおいて、TNF−α、IL−6、及びIL−10サイトカインのレベルが全体として約30〜50%低下した(表7)。
【0254】
(議論及び結論)
本試験は、種々のCpn10ポリペプチド(すなわち、Ala−Cpn10、Ala−Cpn10−Δml、Ala−Cpn10−Δroof、及びX−Cpn10)によるマウスの予備処理が、LPS誘発による内毒血症の臨床的効果を低下することを示した。LPSのみを投与されたマウスでは、内毒血症の典型的な症状(すなわち活動、応答、及び俊敏さの低下)を示した。他方で、いずれかのCpn10タンパク質で予備処理したマウスではLPS感作による影響が少ない(すなわち刺激に対する高い応答性、及び機動性)ことが観察された(表6)。
【0255】
炎症関連のサイトカインについてのCBA分析は、LPS注射前の全てのCpn10変異体予備処理マウスの血清中においては、LPSのみを投与されたマウスの血清と比較し、TNF−α、IL−6、及びIL−10サイトカインレベルが低いことを示した。予想通り、Ala−Cpn10で予備処理したマウスは、本発明者らの先の結果(Johnsonら、2005)と一致し、TNF−α及びIL−6サイトカインのレベル低下を示した。本はつめいの結果は、Ala−Cpn10により、全てのTLRアゴニストに応答したIL−10産生が低下することを示唆する。本発明者らはさらに、多数のCpn10変異体(表7)で予備処理したマウスにおけるこれらの炎症関連のサイトカインのレベルが、同様に低下することを確認した。統計分析は、未処理群と比較し、TNF−αとIL−6サイトカインのレベルの低下が、いくつかのCpn10変異体予備処理群においてのみ有意であることを示したが(図15A及びC、表7)、全体の傾向としては、本試験において使用した全てのCpn10タンパク質が、LPS炎症反応を下方調節することを示した。
【0256】
インビボの内毒血症の結果は、検討した全てのCpn10ポリペプチド(すなわち、Ala−Cpn10、Ala−Cpn10−Δml、Ala−Cpn10−Δroof、及びX−Cpn10)がAla−Cpn10に対して同様な活性を示した。このことは、Cpn10の可動ループ又はルーフループ領域が、TLR4−LPSの結合に応答する調節にとって必要ではないことを裏付けるものである。X−Cpn10のインビトロ活性において観察される変動は、Cpn10変異体で予備処理した群の間の平均サイトカインレベルが統計的に有意差を示さなかったため、内毒血症の試験において評価できなかった。
【0257】
(実施例17:大腸菌バッチ培養液からのCpn10の精製)
Cpn10ポリペプチド調製用のバイオプロセスを開発した。下記に示すように、このプロセスを用いて、100Lの大腸菌培養液から約20gの組換え型ヒトCpn10(>99%純度、≦0.03EU/mgのエンドトキシン、及び≦155.3pg/mgのDNA)を調製した。このプロセスを以下に概説する。
【0258】
(発酵)
AlaCpn10_pPL550プラスミドを有する大腸菌XL1−Blue株を含むバイアルを、マスターセルバンク(上記の「一般的方法」参照)から取り出し、30℃にて抗生物質を添加せずにSoya Brothで一晩「前培養」した。次に、上記の培地と成長温度のパラメータに設定した100Lのバイオリアクター用の種培養液を調製した。この種アリコートを、動物由来の生成物を含まず、かつ抗生物質を添加しない、大豆ベースのペプトンリッチな最少培地(BresaGen、SA、オーストラリア)100Lを仕込んだバイオリアクター中に添加した。バイオリアクターの培養ではバッチのフィードを必要とせず、培養温度を増殖期全体にわたり30±1℃に維持した。アンモニアを添加してpHを7.0±0.2に維持した。Cpn10の誘導は、温度を42℃にシフトさせてOD600値=10の時点で行い、42±0.1℃でさらに3時間インキュベートし、OD600値が20〜25に到達した時に終了させた。
【0259】
(細胞の溶解及び可溶化液の調製)
培養終了後3時間以内に、細菌細胞(約3.5kgの湿重量)を遠心分離(5,000×g)してペレットを調製し、25mM トリスHCl(pH8.0)中に再懸濁し、APV Gaulin Model 30CD圧力ホモジナイザー(APV、USA)を48.2MPa(7000psi)で3回通すことによって溶解させた。細胞残渣を沈殿させた後、細菌可溶化液に含まれる可溶性Cpn10を、フロースルーWestfalia MSB−7遠心分離機を用いて回収した。約20Lの透明な可溶化液を4℃で一晩保存した。
【0260】
(Cpn10の精製)
Big Bead Sulfopropyl−Sepharose(BBSP)カチオン交換、Q−Sepharose Fast Flow(QFF)アニオン交換、及びHigh Performance Sepharose SP(HPSP)カチオン交換クロマトグラフィーを含んでなる3つの後続プロセスを行い、Cpn10を精製した。K−prime 40−II Bioprocess Unit (Millipore)を用い、クロマトグラフィーを行った。
【0261】
(クロマトグラフィーカラム、容器、及びバッファの脱パイロジェン化)
全てのイオン交換クロマトグラフィーのカラムを1M NaOHで洗浄して脱パイロジェンし、溶出液が所定のバッファのpHと伝導率となるまでバッファで平衡化した。バッファの保存、及び種々の精製工程におけるカラム溶出液の貯留に使用した全ての容器はパイロジェンを含有しなかった。精製に使用した全てのバッファは、注射用蒸留水(WFI)を用いて調製した。
【0262】
(Big Bead Sulfopropyl−Sepharoseクロマトグラフィー)
25mM トリスHCl(pH8.0)(バッファA)を用い、毎時75cmの一定流速、樹脂1Lあたり10g以下のCpn10のローディング速度で、予め平衡化したBBSPカチオン交換カラム(BPG300/500、8.6LBBSP SP−Sepharose resin、GE Biosciences)に20〜40分間かけて可溶化液を添加した。バッファAで洗浄した後、捕捉されたCpn10を150mM NaClを含むバッファAを用いて溶出し、1Lの画分を回収した。SDS−PAGE分析は、BBSPプールが95%超の純度であることを示した。
【0263】
(Q−Sepharose Fast Flowクロマトグラフィー)
BBSP溶出液を、室温にて15倍容のバッファAで2回バッファ交換して脱塩した。第1の透析工程を2〜3時間実施した後、新たなバッファAのタンクに移し、一晩透析を行った。透析バッグからタンクバッファへのNaClの再分配は、較正済のスタンダードに対する透析液の導電率を測定することによってモニターした(Cyberscan 100、Eutech Instruments、シンガポール)。透析したBBSPプールは、毎時75cmの線流速、1Lの樹脂あたり15g以下のCpn10の負荷割合で、バッファAの中で予め平衡化した4.7LのQFFアニオン交換樹脂(GE Biosciences)を充填したBPG 200/500カラムに添加した。Cpn10を含有するQFFアニオン交換のフロースルー画分を回収した。ローディング条件下では、大腸菌細胞タンパク質、核酸、及びエンドトキシンの大部分はマトリクスに依然結合していた。
【0264】
(Sulfopropyl−Sepharose高性能クロマトグラフィー)
QFFフロースルーを、1.67LのSPHP樹脂(GE Biosciences)を充填したBPG100/500カラム(50mMトリスHCl(pH7.6)(バッファB)で予め平衡化)を用い、樹脂1Lあたり15〜20gのCpn10を添加した。結合したCpn10を、15Lの0〜120mMのNaCl(直線勾配)で溶出し、0.5Lの画分を回収した。この画分を、限外濾過クロマトグラフィー(SEC)、HPLC、及びSDS−PAGE分析に従ってプールした。Cpn10タンパク質とNaClイオンの濃度を、それぞれ、280nmでのUV吸光度とイオン選択電極法(IDEXX、オーストラリア)によって測定した。
【0265】
(調製)
プールしたSPHP画分の伝導率測定とNa+及びCl−イオン測定の組み合わせに基づいて、バッファを150mM NaClを含む50mMのトリスHCl(pH7.6)となるように最終調整した。調製したCpn10を、無菌条件下で0.2μmのフィルタを通して濾過した。濾過した溶液を、パイロジェンを含まない500mlプラスチックボトル中に、各ボトルあたり500mlずつ、合計2.5gのCpn10となるように分配した。
【0266】
(SDS−PAGE分析)
大腸菌細胞の可溶化液とクロマトグラフィーの画分のSDS PAGE分析を、メーカーの手順書に従いNuPAGE 4−12% Bis−Tris勾配ゲル(Invitrogen、Carlsbad、米国カリフォルニア州)を用いて行った。ゲルをクーマシーブリリアントブルー染色し、各ゲル中にCpn10タンパク質と分子量マーカーが含まれるようにした。
【0267】
(分光測定による精製Cpn10の定量化)
精製Cpn10の濃度を、0.353mg−1mL−1cm−1の吸光係数を用い、280nmにおいてUV吸光度(BioRad SmartSpec−3000分光光度計)により測定した。BioRad SmartSpec−3000は通常、ウシ血清アルブミン(Pierce)に基づいた場合に0.59のA280nm値を示すが、文献値は0.67である(Pierce technical resource No.TR0006.0)ことに留意すべきである。
【0268】
表8に、上記精製プロセス全体を通じてのCpn10純度及び収率を示す。(A)において、全体のタンパク質濃度はBCAタンパク質アッセイ(Sigma)によって測定し、Cpn10純度は、各精製工程後の細胞可溶化液とCpn10含有画分の濃度測定によって測定した。(B)3つのCpn10精製からの最終的な純度及び収率の比較を示す。各精製物は、大腸菌バッチ培養液100Lから調製した。全ての調製物をクーマシー染色によるSDS−PAGEで解析した結果、99%超の最終的なCpn10純度であった。エンドトキシン単位(EU)は、1mgのCpn10あたりのEUとして表し、DNA濃度は1mgのCpn10あたりのpgとして表す。
【0269】
【表8】
【0270】
【表9】
【0271】
(実施例18:組成物)
本発明に係る分子及び薬剤、並びに本発明の方法により同定される物質を用いて、種々の疾病の状態及び症状の治療又は予防を行ってもよい。かかる分子及び薬剤は、単独で投与してもよいが、典型的にはそれらは医薬組成物として投与する。
【0272】
本願明細書に記載の本発明を実施する最良の態様に従い具体的な好ましい組成物を以下に記載する。以下は、組成物の単なる説明に役立つ例示的多様であると解釈すべきであって、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0273】
(実施例18(a):非経口投与用の組成物)
無菌緩衝水1mL及び適切な薬剤又は分子1mgを含む態様で筋肉内注射用の組成物を調製した。
【0274】
同様に、点滴用の組成物の場合は、無菌リンガー溶液250ml及び適切な薬剤又は分子5mgを含有してもよい。
【0275】
(実施例18(b):注射可能な非経口組成物)
10体積%のポリエチレングリコール及び水に、1重量%の適切な薬剤又は分子を混合することにより、注射投与に適する組成物を調製した。この溶液は、濾過滅菌することができる。
【0276】
(実施例18(c):カプセル組成物)
カプセル形態に適切な薬剤又は分子の組成物を、標準的な2片の硬ゼラチンカプセル内に、粉末の形態の薬剤又は分子50mg、ラクトース100mg、タルク35mg、及びステアリン酸マグネシウム10mgを充填して調製した。
【0277】
(実施例18(d):点眼用組成物)
点眼薬として輸送される典型的な組成物を下記に概説する。
適切な薬剤又は組成物 0.3g
ヒドロキシ安息香酸メチル 0.005g
ヒドロキシ安息香酸プロピル 0.06g
純水 約100.00mlまで
【0278】
ヒドロキシ安息香酸メチル及びヒドロキシ安息香酸プロピルを75℃で70mlの純水に溶解し、得られた溶液を冷却した。次いで、適切な薬剤又は分子を添加し、膜フィルター(0.22μmの気孔サイズ)で濾過して溶液を滅菌し、無菌容器中に無菌でパックした。
【0279】
(実施例18(e):吸入投与用の組成物)
容積20〜30mlのエアロゾル容器に、適切な薬剤又は化合物10mg及びポリソルベート85又はオレイン酸等、0.5〜0.8重量%の潤滑剤との混合物を、フレオン等の噴霧剤中に分散させ、鼻腔内又は経口吸入のいずれかの投与に適切なエアロゾル容器に注入した。
【0280】
(実施例18(f):軟膏組成物)
軟膏として輸送するための典型的な組成物を、適切な薬剤又は分子1.0gを白色軟パラフィン100.0g中に添加して調製し、分散され、滑らかで、かつ均一な生成物を得た。
【0281】
(実施例18(g):局所用クリーム組成物)
局所用クリームとしての輸送用の典型的な組成物を以下に概説する。
適切な薬剤又は分子 1.0g
Polawax GP 200 25.0g
無水ラノリン 3.0g
白ロウ 4.5g
ヒドロキシ安息香酸メチル 0.1g
脱イオン水又は無菌水を添加して 100.0g
【0282】
ポーラワックス、ビーズワックス、及びラノリンを共に60℃に加熱し、ヒドロキシ安息香酸メチルの溶液を添加し、高速で撹拌してホモジナイズした。次いで温度を50℃まで低下させた。次いで薬剤又は分子を添加して全体的に分散させ、遅い速度で撹拌しながら組成物を冷却した。
【0283】
(実施例18(h):局所用ローション組成物)
局所ローションとしての輸送用の典型的な組成物を以下に概説する。
適切な薬剤又は分子 1.2g
ソルビタンモノラウレート 0.8g
ポリソルベート20 0.7g
セトステアリルアルコール 1.5g
グリセリン 7.0g
ヒドロキシ安息香酸メチル 0.4g
無菌水を添加して 約100.00ml
【0284】
ヒドロキシ安息香酸メチル及びグリセリンを、75℃の70mlの水に溶解させた。ソルビタンモノラウレート、ポリソルベート20、及びセトステアリルアルコールを共に75℃で溶解し、水溶液に添加した。得られたエマルジョンをホモジナイズし、連続的に撹拌しながら冷却し、残りの水の中に薬剤と分子を添加し、懸濁液とした。全ての懸濁液を撹拌してホモジナイズした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する野生型シャペロニン10ポリペプチドと比較して、ルーフβ−ヘアピン領域に1つ以上のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加を含み、免疫調節活性を有する、単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項2】
対応する野生型シャペロニン10ポリペプチドのルーフβ−ヘアピン領域を実質的に欠く、免疫調節活性を有する、請求項1に記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項3】
前記ルーフβ−ヘアピン領域が配列番号13で示されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項1又は2に記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項4】
前記シャペロニン10ポリペプチドが、配列番号26又は6で示されるアミノ酸配列を含んでなるルーフβ−ヘアピン領域を実質的に欠く、請求項3に記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項5】
ルーフβ−ヘアピン領域を実質的に欠くシャペロニン10ポリペプチドが、配列番号7、8又は27で示されるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項3に記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項6】
対応する野生型シャペロニン10ポリペプチドと比較して、可動ループ領域及びルーフβ−ヘアピン領域に、1つ以上のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加を含み、免疫調節活性を有する、請求項1に記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項7】
前記シャペロニン10ポリペプチドが、対応する野生型シャペロニン10ポリペプチドの可動ループ領域及びルーフβ−ヘアピン領域の両方を実質的に欠く、免疫調節活性を有する、請求項1に記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項8】
配列番号9又は28で示されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項7に記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項9】
配列番号10又は29で示されるヌクレオチド酸配列によってコードされる、請求項7に記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項10】
対応する野生型シャペロニン10ポリペプチドと比較して、グリシン残基が前記ポリペプチドの追加的なN末端アラニン残基を置換する、単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項11】
前記野生型シャペロニン10ポリペプチドは、ヒト野生型シャペロニン10ポリペプチドである、請求項10に記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項12】
配列番号30で示されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項10又は11に記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項13】
配列番号31で示されるヌクレオチド酸配列によってコードされる、請求項12に記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項14】
対応する野生型シャペロニン10ポリペプチドの免疫調節活性のレベルと少なくとも同等の免疫調節活性を示す、請求項1から請求項13のいずれか1項記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか1項記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチドをコード化する、単離された核酸。
【請求項16】
請求項1から請求項14のいずれかの単離されたシャペロニン10ポリペプチドを含んでなる、医薬組成物。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれかの単離されたシャペロニン10ポリペプチドと選択的に結合する抗体。
【請求項18】
被検者の疾患もしくは症状の治療又は予防のための薬剤の製造のための、請求項1から請求項14のいずれかの単離されたシャペロニン10ポリペプチドの使用であって、前記疾患又は症状が、急性又は慢性炎症性疾患、喘息、アレルギー、多発性硬化症、GVHD、自己免疫疾患及び感染症から選択される、使用。
【請求項19】
前記感染症が細菌又はウィルス性の感染症である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
請求項1から請求項14のいずれかの単離されたシャペロニン10ポリペプチドに結合する化合物を同定する方法であって、
(a)候補化合物を前記ポリペプチドに接触させるステップ、及び
(b)前記候補化合物及び前記ポリペプチドの複合体形成を試験するステップ、を含んでなる方法。
【請求項1】
対応する野生型シャペロニン10ポリペプチドと比較して、ルーフβ−ヘアピン領域に1つ以上のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加を含み、免疫調節活性を有する、単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項2】
対応する野生型シャペロニン10ポリペプチドのルーフβ−ヘアピン領域を実質的に欠く、免疫調節活性を有する、請求項1に記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項3】
前記ルーフβ−ヘアピン領域が配列番号13で示されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項1又は2に記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項4】
前記シャペロニン10ポリペプチドが、配列番号26又は6で示されるアミノ酸配列を含んでなるルーフβ−ヘアピン領域を実質的に欠く、請求項3に記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項5】
ルーフβ−ヘアピン領域を実質的に欠くシャペロニン10ポリペプチドが、配列番号7、8又は27で示されるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項3に記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項6】
対応する野生型シャペロニン10ポリペプチドと比較して、可動ループ領域及びルーフβ−ヘアピン領域に、1つ以上のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加を含み、免疫調節活性を有する、請求項1に記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項7】
前記シャペロニン10ポリペプチドが、対応する野生型シャペロニン10ポリペプチドの可動ループ領域及びルーフβ−ヘアピン領域の両方を実質的に欠く、免疫調節活性を有する、請求項1に記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項8】
配列番号9又は28で示されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項7に記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項9】
配列番号10又は29で示されるヌクレオチド酸配列によってコードされる、請求項7に記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項10】
対応する野生型シャペロニン10ポリペプチドと比較して、グリシン残基が前記ポリペプチドの追加的なN末端アラニン残基を置換する、単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項11】
前記野生型シャペロニン10ポリペプチドは、ヒト野生型シャペロニン10ポリペプチドである、請求項10に記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項12】
配列番号30で示されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項10又は11に記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項13】
配列番号31で示されるヌクレオチド酸配列によってコードされる、請求項12に記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項14】
対応する野生型シャペロニン10ポリペプチドの免疫調節活性のレベルと少なくとも同等の免疫調節活性を示す、請求項1から請求項13のいずれか1項記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチド。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか1項記載の単離されたシャペロニン10ポリペプチドをコード化する、単離された核酸。
【請求項16】
請求項1から請求項14のいずれかの単離されたシャペロニン10ポリペプチドを含んでなる、医薬組成物。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれかの単離されたシャペロニン10ポリペプチドと選択的に結合する抗体。
【請求項18】
被検者の疾患もしくは症状の治療又は予防のための薬剤の製造のための、請求項1から請求項14のいずれかの単離されたシャペロニン10ポリペプチドの使用であって、前記疾患又は症状が、急性又は慢性炎症性疾患、喘息、アレルギー、多発性硬化症、GVHD、自己免疫疾患及び感染症から選択される、使用。
【請求項19】
前記感染症が細菌又はウィルス性の感染症である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
請求項1から請求項14のいずれかの単離されたシャペロニン10ポリペプチドに結合する化合物を同定する方法であって、
(a)候補化合物を前記ポリペプチドに接触させるステップ、及び
(b)前記候補化合物及び前記ポリペプチドの複合体形成を試験するステップ、を含んでなる方法。
【図1】
【図2】
【図3−1】
【図3−2】
【図3−3】
【図4−1】
【図4−2】
【図4−3】
【図4−4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15−1】
【図15−2】
【図15−3】
【図16】
【図2】
【図3−1】
【図3−2】
【図3−3】
【図4−1】
【図4−2】
【図4−3】
【図4−4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15−1】
【図15−2】
【図15−3】
【図16】
【公開番号】特開2012−196210(P2012−196210A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−88841(P2012−88841)
【出願日】平成24年4月9日(2012.4.9)
【分割の表示】特願2008−528295(P2008−528295)の分割
【原出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(505165000)シーバイオ リミテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月9日(2012.4.9)
【分割の表示】特願2008−528295(P2008−528295)の分割
【原出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(505165000)シーバイオ リミテッド (5)
【Fターム(参考)】
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