説明

倉庫管理システムと倉庫デザイン装置及び倉庫デザインプログラム

【構成】 上位コントローラは独立した倉庫デザイン装置で、フロアの物理形状を入力し、各フロアにエリアを指定し、エリアをゾーンに分割する。エリアにパレットラックなどの倉庫設備を配置すると共に、エリアやゾーン保管場所に物品を割り付ける。入庫や出庫などの作業動線をフロアに配置し、入出庫作業をシミュレーションして、満足な結果が得られると、倉庫を運用する上位コントローラへ移植する。
【効果】 上位コントローラと独立して倉庫のレイアウトや作業動線をデザインできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は倉庫のレイアウトのデザインに関する。
【背景技術】
【0002】
倉庫を管理するシステムが知られている。例えば特許文献1では、入庫品の保管ロケーションを倉庫管理システムで決定することを開示している。実用化されている倉庫管理システムは、倉庫のレイアウトの入力画面を備え、棚や平置きスペース等を保管物品に割り当て、入庫や出庫に対して作業リストを発行し、在庫を管理する。このような倉庫管理システムは倉庫設備のメーカーから提供され、倉庫のレイアウトをシステムとは独立してデザインすることは困難であった。またシステム上で倉庫レイアウトを変更すると、変更結果が直ちに実際のレイアウトとして使用されるため、試行錯誤的に倉庫レイアウトを変更することが困難であった。なお以下では、倉庫の運用を管理するコントローラを上位コントローラと呼ぶ。
【特許文献1】特開2005−89069
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の課題は、倉庫のレイアウトや作業動線を、上位のコントローラとは独立して、簡便にデザインできるようにすることにある。
請求項2の発明での追加の課題は、デザインしたレイアウトや作業動線が妥当なものかどうか、容易に検証できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、倉庫のレイアウトと作業動線とを記憶する手段と、在庫の記憶手段と、入出庫の要求に対して作業者もしくは入出庫装置への作業指示を発行するための作業指示手段とを備えた上位コントローラと、倉庫のレイアウトのデザイン手段と、作業者もしくは入出庫装置の作業動線のデザイン手段と、デザインしたレイアウトと作業動線とを前記上位コントローラへ送出するための手段とを備えた倉庫デザイン装置とを設けて、倉庫デザイン装置でデザインしたレイアウトと作業動線を前記上位コントローラへ移植するようにした、倉庫管理システムにある。
【0005】
またこの発明は、倉庫のレイアウトのデザイン手段と、作業者もしくは入出庫装置の作業動線のデザイン手段と、デザインしたレイアウトと作業動線を外部のコントローラへ送出するための手段、とを備えた倉庫デザイン装置にある。この倉庫デザイン装置は、適宜のパーソナルコンピュータなどで実現でき、好ましくは上位コントローラとは物理的に独立したものとするが、上位コントローラの資源を利用して同一コンピュータ内に設けても良い。
【0006】
この発明は更に、通信手段を備えたコンピュータにより実行するためのプログラムであって、倉庫のレイアウトをデザインするための命令と、作業者もしくは入出庫装置の作業動線をデザインするための命令、及びデザインしたレイアウトと作業動線を外部のコントローラへ送出するための命令、とを備えた倉庫デザインプログラムにある。
【0007】
好ましくは、前記倉庫デザイン装置に、上位コントローラからの作業指示もしくは入出庫の指示を受け付ける手段と、デザインしたレイアウトと作業動線とにより、受け付けた作業指示もしくは入出庫の指示をシミュレーションする手段、とを更に設ける。
【発明の効果】
【0008】
この発明では、上位コントローラとは独立した倉庫デザイン装置で、倉庫のレイアウトと作業動線をデザインできる。このため、
・ 上位コントローラでのレイアウトや作業動線の入力方法の制約を受けない、
・ 満足し得る結果が得られるまで上位コントローラへデザイン結果が反映されない、
・ 遠隔地で倉庫のレイアウトや作業動線をデザインできる、
等の効果が得られる。
【0009】
ここで、上位コントローラからの作業指示や入出庫の指示を用いて、デザインしたレイアウトと作業動線での作業結果をシミュレーションすると、上位コントローラへの移植前にデザイン性能を評価できる。またシミュレーションには、実際の入出庫作業に近い作業指示や入出庫の指示を用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0011】
図1〜図7に、実施例の倉庫管理システムを示す。図において2は倉庫デザイン装置で、適宜のパーソナルコンピュータなどを用いて実現され、4は上位コントローラで、図示しない平置き倉庫などの倉庫を運用する。倉庫デザイン装置2は入出力6を備えて、LANやインターネット,ファクシミリ回線などにより上位コントローラ4との間でデータを入出力し、8はモニタで、デザインデータをカラー画面で表示する。9はキーボード、10はマウスで、デザインデータの入力に用い、デザインしたデータはデザインデータ記憶部11に記憶し、デザイン過程での様々な一時的データは一時データ記憶部12に記憶する。
【0012】
フロア形状デザイン部15は倉庫のフロア形状をデザインし、エリアゾーンデザイン部16は倉庫のフロアをエリアに分割する。フロア形状は物理的な形状で、エリアはフロアを分割して平置き、パレットラックなどの保管場所としての属性を追加したものである。そしてエリアをさらにゾーンに分割し、ゾーンはエリアに更に分割した概念で、そのまま保管場所の単位として用いても良く、あるいはゾーンを更に細分化したものを保管場所の単位としても良い。設備デザイン部17は、デザインしたフロアにパレットラックや流動棚などの倉庫設備を配置する。
【0013】
作業動線デザイン部20は、フロア内の作業動線をデザインし、作業動線は入庫や出庫、補充などで作業者や作業装置が移動するルートである。シミュレーション部22は、デザインした倉庫設備と作業動線とを用い、上位コントローラ4から提供される作業位置(棚番地など)に基づいて、入庫や出庫あるいは補充などの作業をシミュレーションする。
【0014】
シミュレーションでは、例えば上位コントローラ4から実際の作業位置と所要時間とを受け取り、デザインしたレイアウトと作業動線とに対する作業位置に変換し、作業者の数や歩行速度、1回のピッキングや補充に要する時間などを仮定して、作業をシミュレーションする。シミュレーションで得られた結果を上位コントローラ4からの実績値と比較し、またシミュレーションの状況はモニタ8に表示する。
【0015】
実施例ではエリアやゾーンの配置、倉庫設備の配置を総称してレイアウトデータと呼び、作業動線のデータとレイアウトデータとで、倉庫のデザインが成されている。確定した倉庫のデザインは入出力6を介して上位コントローラ4の入出力26へ送信し、レイアウトデータ記憶部31に移植する。
【0016】
上位コントローラ4は倉庫の設備メーカなどにより提供され、倉庫の設備メーカの仕様に従っている。28はモニタ、29はキーボード、30はマウスで、レイアウトデータ記憶部31は倉庫デザイン装置2から受信した倉庫のレイアウトデータを記憶し、作業動線記憶部32は倉庫デザイン装置2から受信した作業動線を記憶する。
【0017】
34は在庫データ記憶部で、35は入出庫予約データ記憶部、36は入出庫実績データ記憶部で、例えば出庫の予約があると、入出庫予約データ記憶部35に記憶して、在庫データ記憶部34から出庫する物品を出庫予約に引き当てる。また入庫予約があると、入出庫予約データ記憶部35に記憶して、保管場所のうちの空き場所を、例えば在庫データ記憶部34から求めて、入庫予約に引き当てる。検品データ処理部37は、入庫時の検品データあるいは出庫時の検品データを入出庫の予約データと比較し、検品データによって在庫データを増減し、また入出庫実績データに追加する。作業リスト作成部38は、作業者に対する入庫や出庫あるいは補充などの作業のリストを発行し、これはプリンタ40でプリントしたリストでも、あるいは作業者の携帯端末へ送信するデータでも良い。
【0018】
図2に倉庫のデザインプロセスを示す。倉庫デザイン装置のフロア形状デザイン部15はフロアの物理的形状の入力を処理し、物理的形状には例えばフロアの高さや幅、奥行きなどのサイズ、柱の位置とそのサイズ、事務所のスペース、エレベータの位置、バースの位置、階段の位置などがある。次にエリアゾーンデザイン部16を用いて、各フロアにエリアを指定する。エリアには平置きエリアやパレットラックエリア、流動棚エリアなどの種別(属性)があり、これ以外に循環棚や自動倉庫などのエリアを設けても良い。エリアは作業場所としての大きな単位であり、これを例えば平面内と高さ方向とにそれぞれ分割してゾーンとする。ゾーンは作業場所としてのエリア内において、作業範囲や作業方法を更に分割する場合に用いる。なお高さ方向への分割は省略しても良い。
【0019】
次に設備デザイン部17を用いて、フロア内にパレットラックや流動棚などの倉庫設備を配置し、配置された各倉庫設備に対してエリア、あるいはゾーンをその属性として追加する。これらの保管設備以外に、バーコードリーダや作業指示用のモニタ、帳票のプリンタなども設備と見なして、その配置を記憶する。保管場所は、例えば1つのゾーンが1つの保管場所となる場合もあれば、1つのゾーンをさらに細分化して複数の保管場所とする場合もある。入出庫頻度の高い物品は、作業動線に面した位置に広い範囲に分散させて割り付けることが好ましい。このようにすると多数の作業者が一斉に同じ物品をピッキングする場合でも、作業者間の干渉が少ない。保管場所に対する物品の割付は経験を要する作業なので人手で行うが、作業者の経験をルール化して、自動的に割り付けても良い。
【0020】
作業動線デザイン部20を用い、入庫や出庫、補充などの作業動線を入力する。作業動線は、例えば出庫A,出庫B,…,などのように、入庫や出庫、補充などの個々の作業や運用に合わせて複数設けても良い。また高所での入出庫と低所や中所での入出庫で、作業動線を異ならせても良い。以上により、レイアウトと作業動線のデザインを終えると、上位コントローラから作業の実績データを取得する。これは上位コントローラが実際に発行した棚番などの作業位置とその位置での作業の所要時間のデータである。取得した入庫や出庫あるいは補充する作業位置を、デザインしたレイアウトと作業動線とに対する新たな作業ルート(作業順序)に変換し、作業者の数や歩行速度、1回の物品の出し入れに必要な時間などのパラメータに従い、入出庫作業をシミュレーションする。
【0021】
シミュレーションの状況は、例えばデザインしたレイアウト上を作業者が移動するかのようにモニタ8に表示し、シミュレーションを完了すると所要時間などのデータを出力する。これによってデザインしたレイアウトと作業動線とを評価し、満足すべき結果が得られた場合、デザインしたレイアウトと作業動線を上位コントローラへ移植する。満足すべき結果が得られなかった場合、図2の所望のステップに戻り、レイアウトや作業動線のデザインを変更する。
【0022】
図3〜図6はレイアウトや作業動線のデザイン過程でのモニタ8への表示を示し、図3はフロアのデザインを完了した状態を示し、柱や物流事務所の配置、エレベータやエレベータの隣の階段の配置が記載されている。図4は、図3のフロアに対してエリアを指定した画面を示し、例えば上部に平置きエリアが設けられ、画面の左側にパレットラックエリアがパレットラック4列分設けられている。図5は平置きエリアのゾーンへの分割例を示し、平置きエリアに対してゾーンの番号が記載されている。エリアは平面的に分割しても、これに高所/中所/低所などの高さ方向の分割を加えて、立体的に分割しても良い。
【0023】
図6は作業動線のデザイン画面を示し、例えば画面右上の出発点から平置きエリアでピッキングし、パレットラックエリアでのピッキングを完了して、画面中央下部から出庫する。作業動線は入庫と出庫並びに補充とに対してそれぞれ別のものをデザインし、入庫等の同種の作業に対して複数の作業動線をデザインしても良い。
【0024】
図7に実施例の倉庫デザインプログラムを示し、CD−ROMなどの記憶媒体に記憶させ、あるいは通信回線からデザインプログラムをパーソナルコンピュータなどに供給しても良い。倉庫デザインプログラムは適宜のパーソナルコンピュータなどに記憶され、図1の倉庫デザイン装置2を実現する。71は倉庫レイアウトデザイン命令で、図1のフロア形状デザイン部15,エリアゾーンデザイン部16、設備デザイン部17を実現するための命令で、デザイン部15〜17の機能に対応した個別命令を備えている。72は作業動線デザイン命令で、作業動線デザイン部20とその機能を実現するための命令から成る。送出命令73は、デザインデータ記憶部11に記憶したデザインデータを上位コントローラ4へ通信手段を介して送出するための命令である。シミュレーション命令74は、シミュレーション部22とその機能を実現するための命令である。倉庫デザイン装置2や倉庫デザイン方法に関する明細書の記載は全て、倉庫デザインプログラムにもそのまま当てはまる。
【0025】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) 上位コントローラ4とは独立して、倉庫デザイン装置2で、倉庫のレイアウトや作業動線をデザインできる。このため、入出庫や補充などの実際の作業が行われている場合はデザインできない、などの制約がなく、また上位コントローラ毎のデザイン上のルールの制約も受けない。
(2) 倉庫のレイアウトや作業動線を上位コントローラ4で変更すると、変更結果が直ちに使用されるため、不便なことがある。シミュレーションにより満足のいく結果が得られるまでは、上位コントローラ4へ移植する必要がないので、このような問題は生じない。
(3) 倉庫デザイン装置2は上位コントローラ4から独立しているので、遠隔地で倉庫のレイアウトや作業動線をデザインできる。また複数の倉庫のレイアウトや作業動線を同じ倉庫デザイン装置2に記憶し、参考にすることができる。
(4) 上位コントローラ4では、移植された倉庫のレイアウトや作業動線を元に、作業リストを作成し、在庫位置を記憶する。
(5) 以上により、簡便に倉庫のレイアウトや作業動線をデザインし、また変更できる。
【0026】
実施例では入出庫や補充などを人手で行う例を示したが、無人走行のフォークリフトなどの移載装置により、無人で入出庫作業を行うようにしても良い。またシミュレーションには上位コントローラ4で作成した作業指示を用いたが、その上位のデータである入庫指示や出庫指示を用いて、倉庫デザイン装置2でデザインした倉庫のレイアウトや作業動線に従って、作業指示に変換しても良い。

【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例の倉庫管理システムのブロック図
【図2】実施例での倉庫のレイアウトや作業動線のデザインアルゴリズムを示すフローチャート
【図3】実施例での、フロアのデザイン画面を模式的に示す図
【図4】実施例での、エリアのデザイン画面を模式的に示す図
【図5】実施例での、エリアのゾーンへの分割を模式的に示す図
【図6】実施例での、作業動線のデザイン画面を模式的に示す図
【図7】実施例の倉庫管理デザインプログラムのブロック図
【符号の説明】
【0028】
2 倉庫デザイン装置
4 上位コントローラ
6,26 入出力
8,28 モニタ
9,29 キーボード
10,30 マウス
11 デザインデータ記憶部
12 一時データ記憶部
15 フロア形状デザイン部
16 エリアゾーンデザイン部
17 設備デザイン部
20 作業動線デザイン部
22 シミュレーション部
31 レイアウトデータ記憶部
32 作業動線記憶部
34 在庫データ記憶部
35 入出庫予約データ記憶部
36 入出庫実績データ記憶部
37 検品データ処理部
38 作業リスト作成部
40 プリンタ
71 倉庫レイアウトデザイン命令
72 作業動線デザイン命令
73 送出命令
74 シミュレーション命令

【特許請求の範囲】
【請求項1】
倉庫のレイアウトと作業動線とを記憶する手段と、在庫の記憶手段と、入出庫の要求に対して作業者もしくは入出庫装置への作業指示を発行するための作業指示手段とを備えた上位コントローラと、
倉庫のレイアウトのデザイン手段と、作業者もしくは入出庫装置の作業動線のデザイン手段と、デザインしたレイアウトと作業動線とを前記上位コントローラへ送出するための手段とを備えた倉庫デザイン装置とを設けて、
倉庫デザイン装置でデザインしたレイアウトと作業動線を前記上位コントローラへ移植するようにした、倉庫管理システム。
【請求項2】
前記倉庫デザイン装置に、前記上位コントローラからの作業指示もしくは入出庫の指示を受け付ける手段と、デザインしたレイアウトと作業動線とにより、受け付けた作業指示もしくは入出庫の指示をシミュレーションする手段、とを更に設けたことを特徴とする、請求項1の倉庫管理システム。
【請求項3】
倉庫のレイアウトのデザイン手段と、作業者もしくは入出庫装置の作業動線のデザイン手段と、デザインしたレイアウトと作業動線を外部のコントローラへ送出するための手段、とを備えた倉庫デザイン装置。
【請求項4】
通信手段を備えたコンピュータにより実行するためのプログラムであって、
倉庫のレイアウトをデザインするための命令と、作業者もしくは入出庫装置の作業動線をデザインするための命令、及びデザインしたレイアウトと作業動線を外部のコントローラへ送出するための命令、とを備えた倉庫デザインプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−94553(P2008−94553A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278547(P2006−278547)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】