説明

個別の液滴の形の液体試料を扱い、これによって液滴の化学的および生物学的処理を実施可能とするためのレーザ放射脱離デバイス

本発明は、液体試料準備手段(100)を含む液体試料のマイクロ流体分析のための統合システムであって、液体試料準備手段(100)は、前記試料と試薬を導入し、次にこれらを前記液体試料の液滴を化学的または生化学的処理するための第2の手段(200)に移動させる移動手段(101)を備え、前記処理手段は液滴分析用の手段(300)に試料液滴を移動させるための手段(201)も含む、統合システムに関する。本発明は、1つまたはいくつかの装荷ポストと、交互嵌合電極からなる1つまたはいくつかの搬送経路と、1つまたはいくつかの化学的または生化学的処理区域と、上でレーザ放射脱離を実施することができる導電性ポストに切り替えるための少なくとも1つのシステムとを備えた、液滴の形の試料および試薬を取り扱うためのシステムを含む、レーザ放射脱離デバイスに特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個別の液滴の形の液体試料を取り扱ってその化学的および生物学的処理を可能にするレーザ放射脱離に、特に用途を有するがこれに限定されるものではない、液体試料のマイクロ流体分析のための統合システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ放射による脱離は、表面に存在する物質の蒸発を可能にする。この効果は表面に存在するイオン化分子と結び付く。この現象は、MALDI(マトリックス支援レーザ脱離イオン化法)の名の下で質量分析において使用されており、この場合、レーザ光線のエネルギーが、たいていの場合は有機物であるがレーザ光線の波長範囲内に吸収されるナノ粒子を含有することもできる基質によって蓄積され、次いで復元される。
【0003】
MALDI質量分析において満足な結果を達成するためには、試料は極めて少量の無機塩、一般的には1000分の1未満程度の濃度を含む必要がある。したがって、試料は一般的にMALDI質量分析によるその分析の前に脱塩され、この試料は次の段階に移り、この方法の鋭敏性を低下させる。現在最も使用されている技法は、グラフト化アルキル鎖形式の疎水性カラムにおける脱塩である。カチオン樹脂またはアニオン樹脂を使用する特殊な脱塩も使用することができる。
【0004】
次いで、さらに一般には湿潤化添加剤または親水性添加剤のいずれかを、あらゆる液体に関して湿潤性を作り出すために、およびあらゆる液体に関して非湿潤性を作り出すために非湿潤化添加剤または疎水性添加剤を使用することができる。
【0005】
その上、大部分のバイオ試料は複雑であり、数百またはさらには数千の異なる分子を含む。一般的に、組織の中に含まれるタンパク質のトリプシン消化スラリーは1万から10万の異なるペプチドを含む。これが、ICAT技法(同位体コードアフィニティタグ)におけるようなアフィニティカラムを使用して、これらの試料を事前分別にかける理由であり、これはその複雑性に加えて、この方法の鋭敏性を著しく低下させる。さらにこれらのバイオ試料は非常に少ない量だけ入手可能であり、したがって、プロテオミックス分析を実行するためには、生体組織検査グラムを所有することが必要であり、これではヒトの試料についてはこれらの分析は不可能になる。
【0006】
MALDI技法は金属表面の上で極めてしばしば使用される。先に述べた欠点を最小限に抑えるために、これらの金属表面のさまざまな配置が記載されている。これらの解決策は、これらの目的として鋭敏性を向上させなければならなかった。第1に、表面または小さなゾーンのみが金属であり、これは試料の局部的濃縮をもたらす。塩を除去するために、表面はブラシ形式のポリマから作られ、これは元の位置での試料の脱塩を可能にする。分別を実施するために、カチオンまたはアニオン樹脂形式の表面は、反対極性の単一複合物群の固定化を可能にする。最後に、表面をバイオ複合物(ビオチン、アビジン、抗体)と合体し、複雑な混合物のアフィニティによって浄化を可能にする。
【0007】
これらの表面のすべては静的であり、プレート上の試料の移動と処理を可能にする流体システムは含まない。沈着は、手動かまたは、外部液体の吸引沈着を行うためのヘッドを含む自動制御システムのいずれかによって行われる。
【0008】
マイクロ流体技法は現在非常に普及しており、例えば生物学、分析化学、および化学工学の分野における新しい分析方法による革新的な解決策の導入を図るものである。システムの寸法の減少は、容積の減少、より短い反応時間またはより短い交換時間、および例えば単一シリコンウェハ上の移動、処理、および分析モジュールなどの、さまざまな機能を有するいくつかのモジュールの統合などの、多くの肯定的な態様を発生させている。
【0009】
2形式の流体移動、すなわち連続流のポンプ輸送と液体の較正微小容積移動が可能である。較正微小容積のポンプ輸送が必要とする液体の容積は、連続流ポンプ輸送より少なく、流れのより容易な制御を可能にする。したがって時定数の制御によって、例えば液体の混合を実施することが容易になる。この形式のいくつかのポンプ輸送方法は文献に記載されており、これらの方法は、空気圧作用または弾性表面波によるポンプ輸送、誘電泳動効果によるポンプ輸送、および電気濡れおよび誘電体に対する電気濡れによるポンプ輸送を使用する。この最後のポンプ輸送方法は単純な技術的プロセスを使用し、マイクロチャネル網における液体の流れと循環の制御を可能にする。
【0010】
現在、電気濡れの原理を使用する移動デバイスは、互いに対向する2つの基板、または単一の基板を必要とする(非特許文献1参照)。
【0011】
互いに対向する2つの基板を有するシステムは、2つの基板の少なくとも1つの上の交互嵌合電極と、2つの基板の1つの上の非金属、金属、遷移金属、重合体の無機酸化物、またはこれらの異なる物質の組合せから構成される少なくとも1つの絶縁層と、各基板上の疎水層とを必要とする。単一の基板を有するシステムは、交互嵌合電極と、非金属、金属、遷移金属、重合体の無機酸化物、またはこれらの異なる物質の組合せから構成される絶縁層と、接地線を有するか有しない疎水層とを必要とする。疎水層は移動の鍵であり、これがなければ移動は上述の論文に記載されているように不可能である(非特許文献2参照)。
【0012】
疎水層は、低い表面エネルギーと優れた化学的耐性を有する材料である。その結果、この疎水層の表面全体を変化および/または損害を与えることなく、疎水層の上で局部的な化学的表面処理、沈着、またはグラフトを実施することは非常に困難であり、これは、液体の移動に関する電気濡れの有効性を下げるかまたは抹殺する。したがって、疎水層によって覆われるこのシステムの使用は、主として液体の移動のみに制限される。
【0013】
したがって、例えばバイオ試料の処理を可能にするシステムを実現するためには、液体と相互作用する機能的にされたゾーンを有することが必要である。ここで、疎水層は、液体と接触することもあるゾーンのあらゆる従来の機能化を禁止する。これを回復するために、提案される解決策は、疎水材料の中に親水開口部を作ることからなる。次に、開放ゾーンまたは開放開口部としても知られているこれらの親水開口部を化学的に処理することができ、液体はこの表面と相互作用することができる。
【非特許文献1】Sung Kwon Cho、Hyejin MoonおよびChang-Jin Kim、「Creating, Transporting, Cutting, and Merging Liquid Droplets by Electrowetting-Based Actuation for Digital Microfluidic Circuits」、Journal of Microelectromechanical Systems、第12巻、第1号、2003年2月、第70〜80頁
【非特許文献2】C.Y. Chen, E.F. Fabrizio, A. NadimおよびJ.D. Sterling、「Electrowetting-based microfluidic devices: design issues」、Summer Bioengineering Conference 2003、第1241〜1242頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、個別の液滴の形の液体試料を取り扱い、化学的および生物学的処理を可能にするレーザ放射による脱離用デバイスに関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
レーザ放射による脱離用デバイスは、液体試料を装荷するための少なくとも1つのパッドと、交互嵌合電極から構成される少なくとも1つの搬送トラックと、少なくとも1つの化学的または生化学的処理ゾーンと、レーザ放射による脱離プロセスが実施可能な少なくとも1つの導通パッドに経路指定するためのシステムを含む。
【0016】
本発明は、絶縁基板であって、上に交互嵌合電極が置かれて、非金属、金属、遷移金属、または重合体の無機酸化物、またはこれらの異なる物質の組合せから構成される絶縁性の、機能化可能な上部層を介して移動される試料から隔離された絶縁基板の形をとる。次に、濡れゾーンの出現を可能にする非濡れ層を付着させる。この層は、部分的に濡れていると言われ、機能化可能な絶縁層の出現を可能にする。処理の後に、非濡れ層におけるこれらの開口部は処理モジュールの機能化ゾーンを構成する。
【0017】
このシステムは、互いに対向する2つの基板の形にすることができる。基板の1つの上には、試料または試薬のための搬送トラックが置かれる。機能化ゾーンは第2基板の上に置かれる。2つの基板の全体は1つの空間によって分離されており、この空間は、搬送される液体に関して混和性ではない電気的に絶縁性の流体で充填されるようになっている。
【0018】
処理モジュールに加えて、システムはさらに、
バイオ試料、ならびに分析のために必要な液体(洗浄溶液など)の導入を可能にするモジュールと、
液体をいくつかの液滴に区分するために使用されるモジュールと、
1つまたは複数の生化学的相互作用モジュール(タンパク質の分析の例としてはアフィニティ、消化、脱塩モジュール)と、
処理ゾーンと分析ゾーンの間の遷移モジュールと、
例えば分析しようとする試料を、基質を加えることができるパッドの上に置く分析モジュールであって、この上ではMALDI形式の質量分析による、または実際には光学的検出もしくは蛍光による分析が可能である分析モジュールと、を含むことができる。
【0019】
さらに一般には、本発明は、液体試料を準備するための少なくとも1つの手段(100)を含む液体試料のマイクロ流体分析のための統合システムであって、前記準備手段(100)は、前記試料と試薬を導入し、次にこれらを前記液体試料の液滴を化学的または生化学的処理するための少なくとも1つの手段(200)に移動させるための移動手段(101)を含み、前記処理手段(200)は、前記液体試料の前記液滴を移動させ、次にこれらを前記液体試料の前記液滴を分析するための少なくとも1つの手段(300)に移動させるための手段(201)を含む統合システムであり、前記分析手段(300)がレーザ放射脱離による分析のための手段であり、第1に試料の液滴を移動するための手段(301)と、第2に液滴を独立した分析パッドに経路指定するための少なくとも1つの手段を含むことを特徴とする、統合システムに関する。
【0020】
液体試料を準備するための手段(100)は、少なくとも1つの液体装荷ドックを含むことができる。
【0021】
準備手段(100)は、液体を沈着させるための少なくとも1つのゾーン(102)を含むことができる。
【0022】
移動手段(101,201,301)の少なくとも1つは、少なくとも1つの導通パッドを含むことができ、この導通パッドは、当該導通パッドに面する少なくとも1つの濡れゾーンを含む部分濡れ層によって覆われている。
【0023】
このシステムはまた、導通パッドと部分濡れ層との間に挿入された絶縁層も含むことができる。
【0024】
濡れゾーンを化学的または生化学的に機能化させることもできる。
【0025】
化学的または生化学的処理手段(200)において移動させるための手段(201)は、互いに対向する2つの基板、および/またはいくつかの液滴から一液滴を区分するための少なくとも1つの手段、および/または過剰なもしくは排出された試薬を除去するための少なくとも1つの手段を含むことができる。
【0026】
移動手段(101,201,301)の少なくとも1つは、誘電体型に対する電気濡れによる移動の手段である。
【0027】
化学的または生化学的に機能化されたゾーンは、移動した液体と相互作用するための親水ゾーンである。
【0028】
分析手段(300)は、脱離イオン化を伴うレーザ放射によるMALDI形式および/または光学的検出形式の分析用手段を含む。
【0029】
本発明はさらに、レーザ放射脱離による液体試料を分析するためのデバイス(300)であって、試料の液滴を搬送するための手段(301)と、液滴を独立した分析パッドに経路指定するための少なくとも1つの手段とを含むことを特徴とするデバイス(300)に関する。
【0030】
移動手段(301)は、あるいは少なくとも1つの導通パッドを含むことができ、この導通パッドは、前記導通パッドに対向する少なくとも1つの濡れゾーンを含む部分濡れ層によって覆われている。
【0031】
デバイスは、導通パッドと前記部分濡れ層との間に挿入された絶縁層を含むことが好ましい。
【0032】
おそらく、濡れゾーンは化学的または生化学的に機能化される。これらのゾーンは、移動される液体との相互作用のために親水ゾーンにすることができる。
【0033】
さらに、移動手段(301)は誘電型に対する電気濡れによる移動の手段であることが好ましい。デバイスは最終的に、レーザ放射脱離イオン化によるMALDI形式および/または光学的検出形式の分析手段をあるいは含むことができる。
【0034】
本発明の他の特徴および利点は、限定されない例としておよび添付の図面を参照して挙げる方法の実施とデバイスの作製のための好ましい実施変形例に従う説明を読むことによって、さらに明らかにかつさらに完全なものとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1aから図1cは、図1aと図1bではそれぞれ斜視図で、図1cでは液滴を移動させる方向に直角の断面図で、MALDIターゲットを有するバイオ試料分析用デバイスを概略的に示す。
【0036】
これらの図1a〜図1cでは、デバイスは基板1を有するトラックを含む。交互嵌合電極2はこの基板1の上に位置している。
【0037】
これらの電極2の上には、例えば酸化物または重合体からなる絶縁誘電体層3がある。この電気絶縁層3の上には非濡れ層4がある。層3と層4との間では、導電線5が対向電極として作用する。
【0038】
第1トラックに対向して、部分濡れ層6から形成される第2トラックが置かれ、部分濡れ層6自体は上部層7によって覆われ、上部層7の上には生化学的機能8をグラフト化することができる。層7は、対向電極として使用することができる基板9の上にある。スペーサ10の使用によって、移動空間11を、搬送される液滴に対して非混和性である電気的絶縁流体によって充填するように維持することができる。この基板の上で、パッド12は導体であり、MALDI分析用の基質沈着の前に分析しようとする物質を搬送する液滴を固定するために使用される。
【0039】
液体(例えば試料または試薬の液滴)はパッド13の上に沈着される。次に液体は、基板1および9の間の化学的または生化学的処理ゾーンの中に入り、機能化されたゾーン8と相互作用する。次に移動パッド2は、各個別の液滴(14)がパッド12の1つにまで搬送されることを可能にする。次に、基質沈着の段階は晶析とMALDI分析に続く。
【0040】
図2は、移動方向の断面で見て、2つのトラックの間における液滴の移動を概略的に示す。デバイスは、層1,2,3および4からなる第1トラックと、層7からなる第2トラックと、基板9と、非濡れ層15とを含む。電極2bと基板9との間に電位差を置くことによって、液滴は電極2bと基板9との間に包含され、この結果は、電極2aから電極2bへの液滴の移動となる。
【0041】
図3は、移動方向の断面で見て、上部トラックの機能化されたゾーンを有する2つのトラックの間で液滴14を移動させるためのデバイスを概略的に示す。デバイスは、層1,2,3および4からなる第1トラックと、層6および7からなる第2トラックと、基板9と、機能化されたゾーン8a〜8dとを含む。電極2bと基板9との間に電位差を置くことによって、液滴は電極2bと基板9との間に包含され、この結果は、電極2aから電極2bへの液滴の移動となる。次に、液滴は機能化されたゾーン8cおよび8dと相互作用する。
【0042】
図4は、トラックの上で液滴を移動させるためのデバイスを概略的に示す。図4aは液滴の移動方向に直角の断面で見たもので、図4bはデバイスの上面図である。デバイスは、層1,2,3,4および5からなるトラックを含む。電極2cと線5との間に電位差を置くことによって、この結果は、電極2bから電極2cへの液滴(14)の移動となる。
【0043】
図5は、MALDY質量分析によるバイオ試料分析用のデバイスの概略斜視図である。電極2a〜2hと線5との間に連続的に電位差を加えることによって、液滴14を移動させて、これをパッド12a〜12fの1つの上に固定させることが可能である。次に、基質沈着の段階は晶析とMALDI分析に続く。
【0044】
図6a〜図6cでは、分析前の3つの化学的または生化学的処理(濃縮、消化および脱塩)を伴う、統合ターゲットを有するバイオ試料のタンパク質分析のためのデバイスが、概略的に図6aおよび図6bでは斜視図として、図6cでは液滴の移動方向に直角な断面図として示されている。
【0045】
デバイスは、層1,2,3,4および5からなる第1トラックと、層6および7からなる第2トラックと、基板9と、スペーサ10とを含む。このデバイスは、過剰または排出された試薬の除去を可能にするパッド16と、MALDI分析のためのパッド12と、3つの機能化されたゾーンすなわちアフニティ用のゾーン8a、消化用のゾーン8b、脱塩用のゾーン8cとを含む。
【0046】
液体(例えば試料、試薬または洗浄液滴)がパッド13の上に沈着させられる。次に液体は、電位差を加えた結果として基板1および9の間の生化学的処理ゾーンの中に入る。パッド17aおよび17bの間の遷移によって、導入された液体をいくつかの液滴に区分することが可能である。それから、これらの液滴は第1アフィニティパッド8aに経路指定され、ここに問題とされるタンパク質が固定される。次に液滴はパッド16まで導かれる。次に洗浄溶液は、前述と同じ移動原理を用いてパッド8aを洗浄するために使用される。それから、(変性バッファ混合物などの)特殊な溶液が問題の分子を遊離させるために使用され、タンパク質はタンパク質消化パッド8bに運ばれる。消化段階の後に、液滴は、MALDI形式の分析のためにパッドの1つに導かれる前に、脱塩パッド8cの上に経路指定される。
【0047】
次の実施例は、先に説明したデバイスの機能化と使用を例証するものである。
【0048】
[実施例1. バイオ試料の処理に使用されるアフィニティ反応器]
デバイスにおいては、疎水層によって覆われていないゾーンが表面処理を受け、例えばストレプタビジンが上にグラフト化されるアミノ基(NH2)を含む表面支持物を使用してそのゾーンを反応性表面に変換する。こうして、処理されたゾーンにおける電極経路を移動する液体の液滴は固定され、グラフト化された表面のためのアフィニティを有する問題とされる分子(例えばタンパク質)は、これらの表面の上に固定されることになる。化学反応が終了すると、液滴はデバイスにおいてこの方式を続ける。次に、このゾーンの上の特殊な混合物(例えば変性バッファ混合物)の通過が、(例えば非共有性反応の破壊によって)問題とされる分子を遊離させ、これらの分子をこの混合物とともに引き出す。こうして、このデバイスを使用して問題の分子を隔離する。
【0049】
[実施例2. バイオ試料の処理のために使用される消化反応器]
デバイスにおいては、疎水層によって覆われていないゾーンが表面処理を受け、例えばトリプシンが上にグラフト化されているアミノ基(NH2)を含む表面支持物を使用してそのゾーンを反応性表面に変換する。こうして、処理されたゾーンにおける電極経路を移動する液体の液滴は固定され、問題とされる分子(例えばタンパク質)は、分子を分断するグラフト化された表面と反応し、こうして例えばトリプシンによる消化の場合にはペプチドを得る。次に、液滴はデバイスにおいてこの方式を続ける。このデバイスを使用して、例えば、質量分析による特殊な酵素を使用する従来の分断により長鎖分子を分析することができる。
【0050】
[実施例3. バイオ試料の処理‐脱塩モジュール]
デバイスにおいては、疎水層によって覆われていないゾーンが表面処理を受け、この表面処理は炭素数18の炭化水素鎖のグラフト化によってそのゾーンを反応性表面に変換し、C18として知られる逆相クロマトグラフィの等価物へ導く。こうして、処理されたゾーンにおける電極経路を移動する液体の液滴は固定され、問題とされる分子(例えばタンパク質)は、分子を分断するグラフト化された表面と反応する。次いで、液滴はデバイスにおいてこの方式を続ける。このデバイスを例えば、MALDI質量分析による分析の前に脱塩を実施するために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1a】統合MALDIターゲットを伴う、バイオ試料を分析するためのデバイスの概略図である。
【図1b】統合MALDIターゲットを伴う、バイオ試料を分析するためのデバイスの概略図である。
【図1c】統合MALDIターゲットを伴う、バイオ試料を分析するためのデバイスの概略図である。
【図2】2つのトラックの間で液滴を移動させるためのデバイスの概略図である。
【図3】上部トラックの上に機能化ゾーンを有する、2つのトラックの間で液滴を移動させるためのデバイスの概略図である。
【図4a】1つのトラックの上で液滴を移動させるためのデバイスの概略図である。
【図4b】1つのトラックの上で液滴を移動させるためのデバイスの概略図である。
【図5】MALDI質量分析によるバイオ試料分析用のデバイスの概略図である。
【図6a】分析前の3つの生化学的処理(濃縮、消化および脱塩)と統合されたMALDIターゲットを伴う、バイオ試料からタンパク質を分析するデバイスの概略図である。
【図6b】分析前の3つの生化学的処理(濃縮、消化および脱塩)と統合されたMALDIターゲットを伴う、バイオ試料からタンパク質を分析するデバイスの概略図である。
【図6c】分析前の3つの生化学的処理(濃縮、消化および脱塩)と統合されたMALDIターゲットを伴う、バイオ試料からタンパク質を分析するデバイスの概略図である。
【符号の説明】
【0052】
1 基板
2 交互嵌合電極
3 電気絶縁層
4 非濡れ層
5 導電線
6 部分濡れ層
7 上部層
8 生化学的機能
8a 第1アフィニティパッド
8b タンパク質消化パッド
8c 脱塩パッド
9 基板
10 スペーサ
11 移動空間
12,13 パッド
14 液滴
15 非濡れ層
16,17 パッド
100 液体試料準備手段
101 移動手段
200 化学的または生化学的処理手段
201 移動手段
300 分析手段
301 移動手段
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料のレーザ放射脱離分析のためのデバイス(300)であって、前記試料の液滴を移動させるための手段(301)と、前記液滴を独立した分析パッドに経路指定するための少なくとも1つの手段とを含むことを特徴とするデバイス(300)。
【請求項2】
前記移動手段(301)が、部分濡れ層によって覆われた少なくとも1つの導電パッドを含み、前記部分濡れ層は前記導電パッドに対向する少なくとも1つの濡れゾーンを含むことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記導通パッドと前記部分濡れ層との間に挿入された絶縁層を有することを特徴とする請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記濡れゾーンが化学的または生化学的に機能化させられることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
化学的または生化学的に機能化させられたゾーンが、移動させた液体と相互作用する親水ゾーンであることを特徴とする請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記移動手段(301)が誘電体型に対する電気濡れによる移動手段であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
レーザ放射脱離イオン化によるMALDI形式の、および/または光学的検出形式の分析手段を含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
液体試料を準備するための少なくとも1つの手段(100)を含む前記液体試料のマイクロ流体分析のための統合システムであって、前記準備手段(100)は、前記試料と試薬を導入し、次にこれらを前記液体試料の液滴を化学的または生化学的処理するための少なくとも1つの手段(200)に移動させるための移動手段(101)を含み、前記処理手段(200)は、前記液体試料の前記液滴を移動させ、次にこれらを前記液体試料の前記液滴を分析するための少なくとも1つの手段(300)に移動させるための手段(201)を含み、前記分析手段(300)がレーザ放射脱離による分析のための手段であり、第1に前記試料の前記液滴を移動させるための手段(301)と、第2に前記液滴を独立した分析パッドに経路指定するための少なくとも1つの手段とを含むことを特徴とする統合システム。
【請求項9】
液体試料を準備するための前記手段(100)が少なくとも1つの液体装荷ドックを含むことを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記準備手段(100)が液体を沈着するための少なくとも1つのゾーン(102)を含むことを特徴とする請求項8または請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記移動手段(101,201,301)の少なくとも1つが、少なくとも1つの導通パッドを含み、前記導通パッドは、前記導通パッドに対向する少なくとも1つの濡れゾーンを含む部分濡れ層によって覆われていることを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記導通パッドと前記部分濡れ層との間に挿入された絶縁層も含むことを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記濡れゾーンが化学的または生化学的に機能化させられることを特徴とする請求項11または請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
化学的または生化学的処理手段(200)において移動させるための前記手段(201)が、互いに対向する2つの基板、および/またはいくつかの液滴から一液滴を区分するための少なくとも1つの手段、および/または過剰なもしくは排出された試薬を除去するための少なくとも1つの手段を含むことを特徴とする請求項8から請求項13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記移動手段(101,201,301)の少なくとも1つが、誘電体型に対する電気濡れによる移動の手段であることを特徴とする請求項8から請求項14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
化学的または生化学的に機能化させられたゾーンが、転置した液体と相互作用するための親水ゾーンであることを特徴とする請求項13から請求項15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記分析手段(300)が、レーザ放射脱離イオン化によるMALDI形式および/または光学的検出形式の分析手段を含むことを特徴とする請求項1から請求項16のいずれか1項に記載のシステム。

【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公表番号】特表2008−501944(P2008−501944A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514032(P2007−514032)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001384
【国際公開番号】WO2006/003292
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(595139163)ユニベールシテ・デ・スジャンス・エ・テクノロジー・ドゥ・リル (3)
【出願人】(500174661)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス− (54)
【出願人】(506400775)
【Fターム(参考)】