説明

個食トレイおこげ米飯の製造方法

【目的】 電子レンジ調理において、おこげの食感、風味のある個食トレイおこげ米飯を提供する。
【解決手段】 耐熱樹脂トレイ10に浸漬した生米及び水を充填した後、加熱調理した野菜及び調味液を投入する。耐熱樹脂トレイの下部から伝熱手段としてのIH鉄板加熱装置で加熱する。IH鉄板加熱装置20は、鉄板21と、鉄板21の下方に設けられた誘導加熱コイル22からなっている。鉄板21上に耐熱樹脂トレイ10を載置し、誘導加熱コイル22に通電して鉄板21を加熱する。耐熱樹脂トレイ10は鉄板21により下部が加熱され、充填された生米は炊飯されるとともに、下方に充填された生米がおこげとなる。炊飯が完了した後、凍結させ、さらにトップシールを施して和風米飯の個食トレイおこげ米飯が完成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱トレイに生米、水等を加え、赤外線ヒーターや誘導加熱用コイルを用いてスチールコンベア等を介して耐熱トレイの下部より加熱することにより炊飯を行い、耐熱トレイの底面におこげを作る事が出来るようにした個食トレイおこげ米飯の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、炊飯した米飯を個食トレイに収納した個食トレイ米飯を製造するには、蒸気炊飯又は釜炊飯等により一旦炊飯した米飯を個食トレイに充填する方法や、生米、水等を個食トレイに充填後、蒸し加熱により直接炊飯する方法があった。
【0003】
ところで、個食トレイ米飯におこげを入れて欲しいという要望があるが、生米、水等を個食トレイに充填して直接炊飯する方法では、蒸気炊飯であるのでおこげを作ることが出来ず、また、一旦炊飯した米飯を個食トレイに充填する方法においても、蒸気炊飯の場合はおこげを作ることは出来ない。
【0004】
したがって、従来、おこげ米飯を収納した個食トレイおこげ米飯を製造するには、釜炊飯により釜の側面におこげを意図的に作り、この釜炊飯で作ったおこげを個食トレイに充填することにより行っていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したように、釜の側面で意図的におこげを作り、このおこげを個食トレイに充填する方法では、個食トレイにおこげを充填する際、おこげの風味が逃げてしまうととともに、食感も損なうものであった。また、おこげを定量的に個食トレイに充填することが困難であった。
【0006】
本発明は以上の問題点を解決し、風味及び食感が良好で、かつ、おこげの量を正確に調整することができ、さらに電子レンジで調理できる個食トレイおこげ米飯の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討し、電子レンジで使用可能な耐熱トレイに生米等を充填し、耐熱トレイの下部より加熱することにより、トレイにおいて直接おこげを作ることができことを見出し、本発明を完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明による個食トレイおこげ米飯の製造方法は、電子レンジで使用可能な耐熱トレイに生米及び水を充填し、該耐熱トレイの下部より伝熱手段により加熱して炊飯することを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐熱トレイで直接炊飯することによりおこげを作るので、おこげの風味及び食感が損なわれることが無く、また、おこげの質及び量を生米、伝熱手段による加熱等を制御することにより所望の範囲に調整することができ、さらに、電子レンジにより調理することができる。したがって、和風炊き込みご飯、釜飯風ご飯、石焼ビビンバ風ご飯のように、おこげを含んでいる各種米飯を極めて美味しい状態で提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の個食トレイおこげ米飯の製造方法においては、電子レンジで使用可能な耐熱トレイを用いており、この耐熱トレイは200℃に耐え得るトレイであれば特に限定されるものでなく、例えば、耐熱樹脂性トレイ、陶器製トレイ、耐水性紙トレイ等を用いることができ、耐熱樹脂性トレイとしては、耐熱PET(C−PET等)、陶器製トレイとしてはセラミック、耐水性紙トレイは内部にポリエステル加工等されたものを用いることができる。
【0011】
耐熱トレイの下部よりを加熱する伝熱手段は特に限定されないが、スチールベルトコンベア又は鉄板を赤外線ヒーター又は誘導加熱用コイルを用いて加熱するものであることが好ましい。スチールベルトコンベアは、鋼帯を輪状に加工し、両端をプーリーで引っ張って駆動する形式のものをいう。スチールベルトとして用いられる鋼材の厚みは、ベルトの強度と駆動性から決定されるが、一般に、0.8〜1.5mmの鋼帯を用いることが好ましい。スチールベルトの材質は、スチールという表現にこだわらず、赤外線ヒーター加熱、電磁誘導によって渦電流が発生する材質のもの用いることができ、熱伝導率、必要な機械的強度、加工性、耐蝕性、経済性等を考慮して選択する。鉄板も、鉄という表現にこだわらず、赤外線ヒーター加熱、電磁誘導によって渦電流が発生する材質のもの用いることができ、熱伝導率、必要な機械的強度、加工性、耐蝕性、経済性等を考慮して選択する。
【0012】
赤外線ヒーターは、近赤外線、遠赤外線のいずれでも良く、材質についても一般的に使用されている発熱線と絶縁材で構成されているもので良い。
【0013】
誘導加熱用コイルは、一般的な材料、例えば平角銅線を渦巻き状に配置したものであり、円形、長円形、長方形等に巻かれたものであるが、コイルの材質、巻き数等は、広く一般に誘導加熱用コイルとして使用される方法に従う。具体的には、特開2003−9756号公報、特開2003−290046号公報で開示されている加熱装置を用いることができる。
【0014】
耐熱トレイの加熱は、熱伝達の効率を上げるために、鉄板プレート等に蓋をして密閉状態でトレイ底面より加熱することが好ましい。加熱温度は160℃〜190℃の範囲で、20分〜35分程度の加熱時間によるものが、米の炊きあがりの品質(食感、風味、香り)が良い。
【0015】
本発明の個食トレイおこげ米飯の製造方法においては、生米及び水を耐熱トレイに充填して加熱炊飯するが、目的とするご飯に応じて各種具材及び調味液を充填することができる。すなわち、本発明におけるおこげ米飯は、おこげが含まれている米飯を含むもので、最も簡単な態様として白ご飯におこげが含まれているもので、その他、和風炊き込みご飯、釜飯風ご飯、石焼ビビンバ風ご飯等の態様とすることができる。したがって、各種態様により各種具材、調味液等を加えることができる。
【0016】
次に、本発明による個食トレイおこげ米飯の製造方法について図面を参照して説明する。図1は個食トレイおこげ米飯の製造方法により和風米飯を製造する工程を示す図である。
【0017】
まず、生米を浸漬タンクに浸漬させて充分に水を含ませる。一方、具材となる野菜等を前処理し、さらにこの前処理した野菜を加熱調理しておく。次に、耐熱樹脂トレイ10に浸漬した生米及び水を充填した後、前記加熱調理した野菜及び調味液を投入する。この状態で、耐熱樹脂トレイの下部から伝熱手段としてのIH鉄板加熱装置で加熱する。このIH鉄板加熱装置20は、鉄板21と、この鉄板21の下方に設けられた誘導加熱コイル22からなっている。そして、鉄板21上に耐熱樹脂トレイ10を載置し、誘導加熱コイル22に通電して鉄板21を加熱する。したがって、耐熱樹脂トレイ10は鉄板21により下部が加熱され、充填された生米は炊飯されるとともに、下方に充填された生米がおこげとなる。こうして炊飯が完了した後、凍結させ、さらにトップシールを施して和風米飯の個食トレイおこげ米飯が完成する。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の一実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
[実施例1]
0.5合の生米に水(80g)、調味料(17g)、鶏肉(20g)、野菜等(20g)の原料を耐熱トレイに充填して赤外線ヒーターの鉄板プレートにて加熱炊飯し、包装・凍結後、−18℃冷凍庫に30日間保管した。耐熱トレイとしては、耐熱性のあるC−PETを使用し、容量580cc、厚み0.5mmであり、包装フィルムには透明PPフィルムを使用した。赤外線ヒーターは、鉄板表面温度が180℃となるように設定し、トレイをプレートに乗せた後、プレートに蓋をして30分間、加熱した。鉄板プレートは、厚さ2mmのものを使用した。
【0020】
[従来例1]
2合の生米に水(240g)、調味料(68g)、鶏肉(80g)、野菜等(80g)の原料を加えて釜にて炊飯し、トレイに0.5合分を詰め替えて包装・凍結後、−18℃冷凍庫に30日間保管した。トレイは実施例1と同一である。
【0021】
[従来例2]
0.5合の生米に水(80g)、調味料(17g)、鶏肉(20g)、野菜等(20g)の原料をトレイに入れて蒸器にて炊飯し、包装・凍結後、−18℃冷凍庫に30日間保管した。トレイは実施例1と同一である。
【0022】
[官能試験]
おこげの見栄え、食感、風味、米飯としての総合評価の4点について官能評価を実施した。官能評価は、5段階評価で、点数が高いほど良い評価とした。評価人数は10人で実施した。
【0023】
結果を表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
[評価]
試験の結果、実施例1は、従来例1及び2と比較して、全ての評価項目において優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の個食トレイおこげ米飯の製造方法により製造した和風米飯の製造工程を示す図。
【符号の説明】
【0027】
10 耐熱トレイ
20 伝熱手段
21 鉄板
22 誘導加熱コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジで使用可能な耐熱トレイに生米及び水を充填し、該耐熱トレイの下部より伝熱手段により加熱して炊飯することを特徴とする個食トレイおこげ米飯の製造方法。
【請求項2】
前記耐熱トレイが耐熱性樹脂トレイであることを特徴とする請求項1記載の個食トレイおこげ米飯の製造方法。
【請求項3】
前記伝熱手段が、スチールベルトコンベア又は鉄板を赤外線ヒーターを用いて加熱するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の個食トレイおこげ米飯の製造方法。
【請求項4】
前記伝熱手段が、スチールベルトコンベア又は鉄板を誘導加熱用コイルを用いて加熱するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の個食トレイおこげ米飯の製造方法。
【請求項5】
前記生米及び水と同時に炊き込み米飯の具材及び調味液を耐熱トレイに充填することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の個食トレイおこげ米飯の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−333819(P2006−333819A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164205(P2005−164205)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】