説明

偏光子、画像表示装置、及び偏光子の製造方法

【課題】 本発明は、耐擦傷性に優れた偏光子を提供する。
【解決手段】 本発明の偏光子は、一般式(I)で表されるアゾベンゼン化合物と、ポリアクリルアミドと、を含んでいる。
【化1】


一般式(I)において、Rは、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Rは、置換若しくは無置換のアリーレン基を表し、Rは、独立して、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアセチル基、置換若しくは無置換のベンゾイル基、置換若しくは無置換のフェニル基などを表し、Mは、対イオンを表し、mは、1又は2の整数を表し、nは、1〜3の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐擦傷性に優れた偏光子、及び該偏光子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光子は、偏光又は自然光から特定の直線偏光を透過させる機能を有する光学部材である。偏光子は、例えば、液晶表示装置の構成部材や、偏光サングラスのレンズなどに使用されている。
汎用的な偏光子は、例えば、ヨウ素で染色したポリビニルアルコールフィルムを延伸することにより得られる。
また、リオトロピック液晶性化合物を含む溶液を基材上に塗工する方法(溶液流延法)により得られる偏光子も知られている。
例えば、特許文献1には、特定構造のアゾベンゼン化合物を含む溶液を、基材上に塗工することにより得られた偏光子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−126628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の偏光子は、耐熱性に優れ、且つ吸収二色性を有する。さらに、上記偏光子は、溶液流延法で形成できるので、ヨウ素で染色したポリビニルアルコールフィルムからなる偏光子と比べて、格段に薄い。
しかしながら、上記特許文献1の偏光子は、耐擦傷性に劣るため、その改善が求められている。
【0005】
本発明の第1の目的は、アゾベンゼン化合物を含み、耐擦傷性に優れた偏光子及び該偏光子を有する画像表示装置を提供することである。
本発明の第2の目的は、耐擦傷性に優れた偏光子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、次のような検討を行い、本発明を完成した。
水系溶媒に溶解させたアゾベンゼン化合物はπ−π相互作用によって積層し、これらが超分子会合体を形成することによって、液晶相が発現する。前記アゾベンゼン化合物を溶媒に溶解させた溶液を基材上に塗工し、必要に応じて磁場のような外場を加えて、アゾベンゼン化合物の超分子会合体を配向させることによって、偏光子が得られる。
しかしながら、前記溶液中の超分子会合体は、水系溶媒のようなマトリックス中で形成されているため、超分子会合体は、応力に対して不安定である。そして、前記偏光子中には、水系溶媒が僅かに残存しているので、前記偏光子に含まれる超分子会合体も、応力に対して不安定な状態となっている。そのため、従来の偏光子は、その表面に摩擦力などが加わると、傷が付き易いと推定される。そこで、前記マトリックスとして、水と相溶し得る剛直な成分を存在させることにより、マトリクスの応力に対して、前記超分子会合体の安定性を高めることができると考えられる。かかる知見の下、本発明者は、アゾベンゼン化合物の配向を阻害せず且つ水に相溶し得る様々な化合物を検討し、本発明を完成した。
【0007】
本発明の偏光子は、下記一般式(I)で表されるアゾベンゼン化合物と、ポリアクリルアミドと、を含む。
【0008】
【化1】

【0009】
は、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Rは、置換若しくは無置換のアリーレン基を表し、Rは、独立して、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアセチル基、置換若しくは無置換のベンゾイル基、置換若しくは無置換のフェニル基、又は下記一般式(II)で表される基を表し、Mは、対イオンを表し、mは、1又は2の整数を表し、nは、1〜3の整数を表す。
【0010】
【化2】

【0011】
Xは、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜18のアルキル基(隣接しない炭素原子が酸素原子に置換されているアルキル基を含む)、メタクリル基、又はアクリル基を表す。
【0012】
本発明の偏光子は、例えば、アゾベンゼン化合物とポリアクリルアミドと水系溶媒とを含む塗工液を基材上に塗工する、溶液流延法によって得られる。
本発明の偏光子は、アゾベンゼン化合物が超分子会合体を形成し、これが所定方向に配向しているので、良好な偏光特性を有する。
さらに、本発明の偏光子は、ポリアクリルアミドを含んでいる。ポリアクリルアミドは、高い極性を有する比較的剛直なポリマーである。このポリアクリルアミドは、マトリックスとして存在し、その高極性及び剛直性によって、アゾベンゼン化合物の超分子会合体の配向を保持する。
このため、前記超分子会合体の安定性が高まり、本発明の偏光子に摩擦力などが加わっても、偏光子の表面が傷付き難い。
【0013】
本発明の好ましい偏光子は、前記ポリアクリルアミドが、前記アゾベンゼン化合物100質量部に対し、25質量部〜900質量部含まれている。
本発明の他の好ましい偏光子は、前記ポリアクリルアミドが、ノニオン性ポリアクリルアミドを含む。
本発明の他の好ましい偏光子は、前記アゾベンゼン化合物が、水溶性を有する。
【0014】
本発明の別の局面によれば、画像表示装置を提供する。
本発明の画像表示装置は、その構成部材として、前記いずれかの偏光子を有する。
【0015】
本発明の別の局面によれば、偏光子の製造方法を提供する。
本発明の偏光子の製造方法は、前記一般式(I)で表されるアゾベンゼン化合物とポリアクリルアミドと水系溶媒とを含む塗工液を、基材上に塗工する工程を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の偏光子は、耐擦傷性に優れており、又、所定の偏光特性を有する。
本発明の偏光子の製造方法によれば、溶液流延法により、耐擦傷性に優れた偏光子を容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】1つの実施形態に係る偏光子を示す部分断面図。
【図2】1つの実施形態に係る偏光板を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(アゾベンゼン化合物)
本発明の偏光子は、下記一般式(I)で表されるアゾベンゼン化合物と、ポリアクリルアミドと、を含む。
なお、本明細書において、「Y〜Z」という表示は、「Y以上Z以下」を意味する。
【0019】
【化3】

【0020】
一般式(I)において、Rは、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Rは、置換若しくは無置換のアリーレン基を表し、Rは、独立して、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアセチル基、置換若しくは無置換のベンゾイル基、置換若しくは無置換のフェニル基、又は下記一般式(II)で表される基を表し、Mは、対イオンを表し、mは、1又は2の整数を表し、nは、1〜3の整数を表す。前記mが、2である場合、各Rは、独立して、同一又は異なる。
【化4】

【0021】
一般式(II)において、Xは、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜18のアルキル基(アルキル基中の隣接しない炭素原子が酸素原子に置換されているアルキル基を含む)、メタクリル基、又はアクリル基を表す。前記アルキル基中の隣接しない炭素原子が酸素原子に置換されている炭素数1〜18のアルキル基としては、例えば、炭素数1〜18のアルキルエーテル基などが挙げられる。
なお、本明細書において、「置換若しくは無置換」とは、「置換基で置換されている、又は、置換基で置換されていない」ことを意味する。
【0022】
前記一般式(I)のナフチル基(式(I)において右側に表されたナフチル基)とアゾ基(−N=N−)の結合位置は、特に限定されない。好ましくは、前記ナフチル基とアゾ基は、前記ナフチル基の1位又は2位で結合されている。
一般式(I)のナフチル基の具体例としては、例えば、下記式(a)乃至式(l)などが挙げられる。
【0023】
【化5】

【0024】
前記一般式(I)のRは、好ましくは、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアセチル基、又は上記一般式(II)で表される基のいずれかであり、より好ましくは水素原子又は上記一般式(II)で表される基である。
前記Rの置換若しくは無置換のアルキル基としては、置換若しくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。
前記Rのアルキル基、アセチル基、ベンゾイル基、又はフェニル基が置換基を有する場合、その置換基としては、下記アリール基又はアリーレン基において例示する、各置換基が挙げられる。
【0025】
前記一般式(I)のM(対イオン)は、好ましくは、水素原子;Li、Na、K、Csなどのアルカリ金属原子;Ca、Sr、Baなどのアルカリ土類金属原子;金属イオン;アルキル基若しくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩;有機アミンの塩などが挙げられる。前記金属イオンとしては、例えば、Ni2+、Fe3+、Cu2+、Ag、Zn2+、Al3+、Pd2+、Cd2+、Sn2+、Co2+、Mn2+、Ce3+などが挙げられる。有機アミンとしては、炭素数1〜6のアルキルアミン、ヒドロキシル基を有する炭素数1〜6のアルキルアミン、カルボキシル基を有する炭素数1〜6のアルキルアミンなどが挙げられる。上記Mで表される対イオンは、1種単独で、又は2種以上混在していてもよい。
【0026】
前記一般式(I)のmは、好ましくは1である。また、一般式(I)のnは、好ましくは1又は2である。
【0027】
前記一般式(II)のXが、炭素数1〜18のアルキル基である場合、その炭素数は、好ましくは1〜12であり、より好ましくは2〜8である。前記炭素数1〜18のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状でもよい。好ましくは、前記アルキル基は、直鎖状である。前記炭素数1〜18のアルキル基としては、メチル基、エチル基 、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
前記一般式(II)のXが、置換基を有する炭素数1〜18のアルキル基である場合、その置換基としては、例えば、フェニル基、フッ素などのハロゲノ基、水酸基、グリシジル基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基などが挙げられる。好ましくは、前記置換基は、フェニル基、フッ素などのハロゲノ基、水酸基、及びグリシジル基から選ばれる1つである。前記Xのアルキル基は、これらから選ばれる1種又は2種以上の置換基で置換されていてもよい。
【0028】
前記一般式(I)において、前記Rで表されるアリール基は、フェニル基の他、ナフチル基などのようなベンゼン環が2以上縮合した縮合環基が挙げられる。
前記Rで表されるアリーレン基は、フェニレン基の他、ナフチレン基などのようなベンゼン環が2以上縮合した縮合環基が挙げられる。
【0029】
又はRのアリール基又はアリーレン基は、置換基を有していてもよいし、又は、置換基を有していなくてもよい。前記アリール基又はアリーレン基が、置換若しくは無置換のいずれの場合でも、−SOM基などを有するアゾベンゼン化合物の溶媒溶解性は殆ど変わらない。前記アゾベンゼン化合物は、水溶性を有し、良好なリオトロピック液晶相を形成し得る。
【0030】
前記アリール基又はアリーレン基が置換基を有する場合、その置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、炭素数1〜6のアシルアミノ基、ジヒドロキシプロピル基等の炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、−SOM基などのスルホン酸基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲノ基などが挙げられる。好ましくは、前記置換基は、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、スルホン酸基、及びニトロ基から選ばれる1つである。このような置換基を有するアゾベンゼン化合物は、特に水溶性に優れている。これらの置換基は、1種又は2種以上置換されていてもよい。また、前記置換基は、任意の比率で置換されていてもよい。
【0031】
前記一般式(I)のRは、好ましくは置換若しくは無置換のフェニル基であり、より好ましくは前記置換基を有するフェニル基である。
前記Rは、好ましくは置換若しくは無置換のナフチレン基であり、より好ましくは前記置換基を有するナフチレン基であり、特に好ましくは前記置換基を有する1,4−ナフチレン基である。
【0032】
一般式(I)のRが置換若しくは無置換のフェニル基で、且つRが置換若しくは無置換の1,4−ナフチレン基であるアゾベンゼン化合物は、下記一般式(III)で表される。
【0033】
【化6】

【0034】
一般式(III)において、R、M、m及びnは、上記一般式(I)と同じである。
【0035】
一般式(III)において、A及びBは、置換基を表し、a及びbは、その置換数を表す。前記A及びBは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、炭素数1〜6のアシルアミノ基、ジヒドロキシプロピル基等の炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、−SOM基などのスルホン酸基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲノ基などであり、好ましくは、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、スルホン酸基、及びニトロ基から選ばれる1つである。前記a及びbは、0〜5の整数であり、好ましくは1又は2である。前記aが2以上の場合、前記置換基Aは、同じでもよいし、又は、異なっていてもよい。前記bが2以上の場合、前記置換基Bは、同じでもよいし、又は、異なっていてもよい。
【0036】
上記一般式(I)で表されるアゾ化合物は、例えば、細田豊著「理論製造 染料化学(5版)」(昭和43年7月15日技報堂発行、135頁〜152頁)に従って合成できる。
【0037】
(ポリアクリルアミド)
本発明の偏光子に含まれるポリアクリルアミドは、水溶性のポリマーである。
ポリアクリルアミドは、アクリルアミドモノマー類の重合体又は共重合体を主成分とする直鎖状のポリマーである。
前記アクリルアミドモノマー類としては、アクリルアミドモノマー、メタアクリルアミドモノマー、N−エチルアクリルアミドモノマーなどのN置換低級アルキルアクリルアミドモノマーなどが挙げられ、好ましくは、アクリルアミドモノマー及び/又はメタアクリルアミドモノマーである。
【0038】
本発明で用いられるポリアクリルアミドは、前記アゾベンゼン化合物と相溶し且つ水溶性を有していれば、特に制限されない。
例えば、本発明では、ノニオン性、カチオン性、アニオン性、又は両性のポリアクリルアミドを使用できる。
ノニオン性ポリアクリルアミドとしては、アクリルアミドモノマー類の重合体又は共重合体、或いは、アクリルアミドモノマー類とノニオン性モノマーの共重合体などが挙げられる。
カチオン性ポリアクリルアミドとしては、アクリルアミドモノマー類とカチオン性モノマーの共重合体などが挙げられる。カチオン性モノマーとしては、アリルアミンなどの3級アミン系モノマー又はそれらの塩、4級アンモニウム塩系モノマーなどを挙げることができる
アニオン性ポリアクリルアミドとしては、アクリルアミドモノマー類とアニオン性モノマーの共重合体などが挙げられる。アニオン性モノマーとしては、カルボキシル基を有するモノマー、スルホン酸基を有するモノマーなどが挙げられる。
本発明では、ノニオン性ポリアクリルアミドを用いることが好ましい。上記アゾベンゼン化合物は、スルホン酸基のようなアニオン性基を有する。このため、カチオン性ポリアクリルアミドを用いた場合、前記アゾベンゼン化合物と前記カチオン性ポリアクリルアミドがイオン結合することによって、両者が凝集する可能性がある。アニオン性ポリアクリルアミドを用いた場合、前記アゾベンゼン化合物と前記アニオン性ポリアクリルアミドが相溶することによって、アゾベンゼン化合物が液晶状態とならない可能性がある。ノニオン性ポリアクリルアミドを用いた場合には、このような問題を生じない。
【0039】
前記ポリアクリルアミドの重量平均分子量は、塗工液の粘度が著しく粘調とならないようにするため、比較的小さいことが好ましい。具体的には、前記ポリアクリルアミドの重量平均分子量は、500〜10万が好ましい。
ただし、前記重量平均分子量は、テトラヒドロフラン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法(ポリスチレン標準)に準じて測定できる。
前記ポリアクリルアミドの含有量は、特に限定されず、適宜設定できる。例えば、前記ポリアクリルアミドの含有量は、前記アゾベンゼン化合物100質量部に対し、好ましくは25質量部〜900質量部であり、より好ましくは50質量部〜400質量部であり、特に好ましくは、80質量部〜200質量部である。ポリアクリルアミドの含有量が25質量部未満であると、偏光子の耐擦傷性を十分に高めることができないおそれがある。一方、ポリアクリルアミドの含有量が900質量部を超えると、偏光子の偏光度が低下するおそれがある。なお、ポリアクリルアミドの含有量が、80質量部〜200質量部であれば、高い偏光度を有する偏光子が得られ得る。
【0040】
本発明の偏光子には、本発明の効果を損なわない範囲で、他のポリマー、添加剤などが含まれていてもよい。
【0041】
本発明の偏光子は、前記アゾベンゼン化合物の超分子会合体が所定方向に配向しているため、波長380nm〜780nmの間の少なくとも一部で吸収二色性を示す。
さらに、前記偏光子は、ポリアクリルアミドを含んでいるので、耐擦傷性に優れている。
前記ポリアクリルアミドは、高い極性を有し、更に、剛直である。その高極性及び剛直性によって、ポリアクリルアミドは、アゾベンゼン化合物の配向を阻害することなく、その配向を保持する作用を有する。
このため、偏光子に摩擦力などが加わっても、前記アゾベンゼン化合物の超分子会合体の配向が乱れ難く、その結果、偏光子の表面に傷が付き難くなる。
なお、偏光子中に水系溶媒が比較的多く残存している場合でも、前記ポリアクリルアミドの存在によってアゾベンゼン化合物の安定性が保たれるので、該偏光子の表面には、傷が付き難い。
また、本発明の偏光子は、従来のアゾベンゼン化合物で形成された偏光子と同様に、耐熱性も良好である。
【0042】
前記偏光子の偏光度は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上であり、特に好ましくは92%以上である。ポリアクリルアミドの含有量を適宜設定することにより、偏光度が92%以上の偏光子を得ることもできる。
ただし、前記偏光度は、下記実施例に記載の方法によって測定できる。
偏光子の透過率(T[550])は、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上である。ただし、前記透過率は、例えば、分光光度計(日本分光株式会社製、製品名「V−7100」)を用いて測定できる。
【0043】
前記偏光子の厚みは、特に限定されない。本発明の偏光子は、後述するように溶液流延法によって形成できるので、より薄く形成できる。具体的には、偏光子の厚みは、好ましくは0.05μm〜5μmであり、より好ましくは0.1μm〜1.0μmである。
【0044】
(本発明の偏光子の製造方法)
本発明の偏光子は、例えば、前記アゾベンゼン化合物と前記ポリアクリルアミドを含む塗工液を適当な基材上に薄膜状に塗工し、乾燥することによって得られる。
【0045】
本発明の偏光子は、好ましくは下記工程A及び工程Bを経て製造でき、必要に応じて、工程Bの後、下記工程Cを行ってもよい。
工程A:前記アゾベンゼン化合物と前記ポリアクリルアミドを含む塗工液を、基材上に塗工し、塗膜を形成する工程。
工程B:前記塗膜を乾燥する工程。
工程C:工程Bで乾燥させた塗膜の表面に、耐水化処理を施す工程。
前記基材は、塗工液を塗工する面側に配向規制力が付与されていてもよい。
【0046】
<工程A>
工程Aは、上記塗工液を、基材上に塗工し、塗膜を形成する工程である。
本発明の塗工液は、前記一般式(I)で表されるアゾベンゼン化合物と、前記ポリアクリルアミドと、前記アゾベンゼン化合物及びポリアクリルアミドを溶解させる溶媒と、を含む。
【0047】
前記溶媒は、特に限定されず、従来公知の溶媒を用いることができるが、水系溶媒が好ましい。水系溶媒は、水、親水性溶媒、及び、水と親水性溶媒の混合溶媒を含む。前記親水性溶媒は、水と略均一に溶解させることができる溶媒である。親水性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、メチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのグリコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;などが挙げられる。上記水系溶媒は、好ましくは、水、又は、水と親水性溶媒の混合溶媒が用いられる。
前記アゾベンゼン化合物は、−NHR基及び−SOM基を有するので、水に可溶であり、特に前記水系溶媒に対する溶解性に優れている。
【0048】
上記塗工液は、液温やアゾベンゼン化合物の濃度などを変化させることにより、液晶相を示す。
この液晶相は、アゾベンゼン化合物が液中で超分子会合体を形成することによって発現する。液晶相は、特に限定されず、ネマチック液晶相、ミドル相、スメクチック液晶相、コレステリック液晶相、又はヘキサゴナル液晶相等が挙げられる。液晶相は、偏光顕微鏡で観察される光学模様によって、確認、識別できる。
【0049】
塗工液中におけるアゾベンゼン化合物の濃度は、アゾベンゼン化合物が液晶相を示すように調製することが好ましい。前記塗工液中におけるアゾベンゼン化合物の濃度は、0.1質量%〜30質量%であり、好ましくは1質量%〜30質量%であり、より好ましくは2質量%〜20質量%である。
また、塗工液中におけるポリアクリルアミドの濃度は、0.5質量%〜50質量%であり、好ましくは1質量%〜40質量%であり、より好ましくは3質量%〜30質量%である。
塗工液の調製方法は、特に限定されず、例えば、溶媒を入れた容器にアゾベンゼン化合物及びポリアクリルアミドを加えてもよいし、或いは、アゾベンゼン化合物及びポリアクリルアミドを入れた容器に溶媒を加えてもよい。
【0050】
また、塗工液は、適切なpHに調整される。塗工液のpHは、好ましくはpH2〜10程度、より好ましくはpH6〜8程度である。
さらに、塗工液の温度は、好ましくは10℃〜40℃、より好ましくは15℃〜30℃の調整される。
【0051】
さらに、上記塗工液には、添加剤が添加されていてもよい。該添加剤としては、例えば、相溶化剤、界面活性剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、増粘剤などが挙げられる。塗工液中における添加剤の濃度は、好ましくは0を超え10質量%以下である。
【0052】
基材は、塗工液を均一に展開するために用いられる。この目的に適していれば基材の種類は特に限定されず、例えば、ポリマーフィルム(フィルムとは、一般にシートと呼ばれているものを含む)、ガラス板などを用いることができる。好ましい実施形態においては、前記基材として、ポリマーフィルムが用いられる。好ましい他の実施形態においては、前記基材として、配向基材が用いられる。前記配向基材は、少なくとも表面に配向規制力を有する基材である。前記配向基材を用いれば、これに塗工液を塗工することにより、アゾベンゼン化合物を容易に配向させることができる。
【0053】
上記ポリマーフィルムとしては、特に限定されないが、透明性に優れているフィルム(例えば、ヘイズ値3%以下)が好ましい。
上記ポリマーフィルムの材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系;ポリカーボネート系;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系;ポリエチレン、ポリプロピレン、環状又はノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系などが挙げられる。前記アゾベンゼン化合物を良好に配向させるためには、オレフィン系フィルムを用いることが好ましく、さらに、ノルボルネン系フィルムを用いることがより好ましい。前記ノルボルネン系フィルムとしては、例えば、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオノア」が挙げられる。
【0054】
前記配向基材は、基材(例えばポリマーフィルム)の表面又は前記基材上に形成された表面層に配向規制力を付与することによって得られる。
前記配向規制力を付与する方法は、特に限定されない。前記方法としては、前記基材の表面にラビング処理を施す方法、前記基材上にポリイミドなどの表面層を形成し、この表面層にラビング処理を施す方法、前記基材上に光反応(光異性化、光二量化又は光分解など)を起こす化合物を含む表面層を形成し、前記表面層に光照射を行うことによって表面層に方向性を付与する方法、などが挙げられる。
【0055】
上記基材の厚みは、強度等に応じて適宜に設計し得る。薄型軽量化の観点から、基材の厚みは、好ましくは300μm以下、より好ましくは5μm〜200μm、特に好ましくは10μm〜100μmである。
前記塗工液を基材の一面に塗工する方法としては、適切なコータを用いた塗工方法が採用され得る。該コータとしては、例えば、バーコータ、リバースロールコータ、正回転ロールコータ、グラビアコータ、ロッドコータ、スロットダイコータ、スロットオリフィスコータ、カーテンコータ、ファウンテンコータなどが挙げられる。
【0056】
液晶相状態の塗工液を基材上に塗工すると、塗工液の流動過程でアゾベンゼン化合物の超分子会合体に剪断応力が加わる。よって、アゾベンゼン化合物の超分子会合体が所定方向に配向した塗膜を基材上に形成できる。また、基材が配向基材である場合、その方向性に従ってアゾベンゼン化合物が配向する。
なお、アゾベンゼン化合物の配向を高めるため、必要に応じて、前記塗膜を形成した後、磁場又は電場などを印加してもよい。
【0057】
<工程B>
工程Bは、前記塗膜を乾燥する工程である。
基材上に、塗工液を塗工して塗膜を形成した後、これを乾燥する。
乾燥は、自然乾燥、強制的な乾燥などで実施できる。強制的な乾燥としては、減圧乾燥、加熱乾燥、減圧加熱乾燥などが挙げられる。好ましくは、自然乾燥である。
乾燥時間は、乾燥温度や溶媒の種類によって、適宜、選択され得る。例えば、自然乾燥の場合には、乾燥時間は、好ましくは1秒〜120分であり、より好ましくは10秒〜5分である。
【0058】
上記塗膜は、乾燥する過程で濃度が上昇し、配向したアゾベンゼン化合物が固定される。塗膜中のアゾベンゼン化合物の配向が固定されることによって、偏光子の特性である、吸収二色性を生じる。得られた乾燥塗膜は、偏光子として使用できる。
得られた乾燥塗膜の厚みは、好ましくは0.05μm〜5μmである。
【0059】
<工程C>
工程Cは、前記乾燥塗膜の表面(基材の接合面と反対面)に、耐水性を付与する工程である。
具体的には、上記工程Bで形成された乾燥塗膜の表面に、アルミニウム塩、バリウム塩、鉛塩、クロム塩、ストロンチウム塩、セリウム塩、ランタン塩、サマリウム塩、イットリウム塩、銅塩、鉄塩、及び分子内に2個以上のアミノ基を有する化合物塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物塩を含む溶液を接触させる。
【0060】
工程Cを行うことにより、前記化合物塩を含む層が前記乾燥塗膜の表面に形成される。かかる層を形成することにより、乾燥塗膜の表面を水に対して不溶化又は難溶化させることができる。よって、乾燥塗膜(偏光子)に、耐水性を付与できる。
なお、必要に応じて、得られた偏光子の表面を水又は洗浄液で洗浄してもよい。
【0061】
(本発明の偏光子の用途等)
上記塗工液を基材上に塗工することによって得られた偏光子1は、図1に示すように、基材2上に積層されている。
本発明の偏光子1は、通常、基材2上に積層された状態で使用される。もっとも、前記偏光子1は、上記基材2から剥離して使用することもできる。
本発明の偏光子1には、さらに、他の光学フィルムを積層してもよい。他の光学フィルムとしては、保護フィルム、位相差フィルムなどが挙げられる。本発明の偏光子に、保護フィルム及び/又は位相差フィルムを積層することにより、偏光板を構成できる。
図2に、本発明の偏光子1に保護フィルム3が積層された偏光板5を示す。この偏光板5は、基材2と、前記基材2上に積層された偏光子1と、前記偏光子1上に積層された保護フィルム3と、を有する。基材2は、偏光子1を保護する機能を有する。このため、前記偏光板5は、偏光子1の一方の面にのみ保護フィルム3が積層されている。
また、特に図示しないが、この偏光板5には、位相差フィルムなどの他の光学フィルムが積層されていてもよい。
【0062】
偏光子に他の光学フィルムを積層する場合、実用的には、これらの間には任意の適切な接着層が設けられる。接着層を形成する材料としては、例えば、接着剤、粘着剤、アンカーコート剤等が挙げられる。
【0063】
本発明の偏光子の用途は、特に限定されない。本発明の偏光子は、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置などの画像表示装置の構成部材として使用される。
前記画像表示装置が液晶表示装置の場合、その好ましい用途は、テレビ、携帯機器、ビデオカメラなどである。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに説明する。ただし、本発明は、下記実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた各分析方法は、以下の通りである。
【0065】
[偏光子の厚みの測定方法]
偏光子の厚みは、ノルボルネン系ポリマーフィルム上に形成された偏光子の一部を剥離し、3次元非接触表面形状計測システム((株)菱化システム製、製品名「Micromap MM5200」)を用い、前記フィルムと偏光子の段差を測定した。
[偏光子の表面観察]
偏光子の表面は、偏光顕微鏡(オリンパス(株)製、製品名「OPTIPHOT−POL」)を用い、倍率20倍で、クロスニコル状態にして観察した。
[偏光度の測定方法]
グラントムソン偏光子を備える分光光度計(日本分光(株)製、製品名「V−7100」)を用いて、波長380nm〜780nmの直線偏光を偏光子に入射させ、偏光透過スペクトルを測定した。このスペクトルから視感度補正を行い、Y1及びY2を求めた。このY1及びY2を下記式に代入することにより、偏光度を求めた。
式:偏光度=(Y1−Y2)/(Y1+Y2)
なお、Y1は、最大透過率方向の直線偏光の透過率を表し、Y2は、最大透過率方向に直交する方向の直線偏光の透過率を表す。
【0066】
[実施例1]
p−アニシジンと8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸とを、下記文献に記載の方法に従って、ジアゾ化及びカップリング反応させて、モノアゾ化合物を得た。このモノアゾ化合物を、同文献に記載の方法に従って、ジアゾ化した後、さらに、3−アミノ−5−ナフトール−2,7−ジスルホン酸ナトリウム塩とカップリング反応させた。得られた粗生成物を塩化リチウムで塩析することにより、下記構造式(IV)で表されるアゾベンゼン化合物を得た。
文献:細田豊著「理論製造 染料化学(5版)」(昭和43年7月15日技報堂発行の135頁〜152頁)。
【0067】
【化7】

【0068】
前記構造式(IV)のアゾベンゼン化合物を100質量部、ポリアクリルアミドの50%水溶液(アルドリッチ社製。ポリアクリルアミドの重量平均分子量:1500)を200質量部、及びイオン交換水を1900質量部混合し、塗工液を調製した。なお、ポリアクリルアミドの50%水溶液を200質量部混合したので、塗工液中のポリアクリルアミド固形分の量は、100質量部である。この塗工液を、ラビング処理及びコロナ処理が施されたノルボルネン系ポリマーフィルム(日本ゼオン社製、商品名「ゼオノア」)の前記処理面上に、バーコータ(BUSHMAN社製、製品名「Mayer rot HS4」)を用いて塗工し、室温下で、60秒間自然乾燥した。乾燥後の塗膜が、偏光子である。
得られた偏光子の厚みは、0.4μmであった。前記偏光子の偏光度は、94%であった。
【0069】
前記偏光子の表面を、偏光顕微鏡で観察したところ、欠陥は無かった。
次に、この偏光子の表面を、薬包紙(博愛社製、商品名「純白模造」)を用いて、約5往復擦った。その後、前記偏光子の表面(擦られた面)を、偏光顕微鏡で観察したところ、欠陥は発生していなかった。
【0070】
[実施例2]
ポリアクリルアミドの50%水溶液の量を800質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして偏光子を作製した。なお、ポリアクリルアミドの50%水溶液を800質量部混合したので、ポリアクリルアミドの量は、400質量部である。
【0071】
実施例2の偏光子の厚みは、0.4μmであった。前記偏光子の偏光度は、85%であった。
前記偏光子の表面を、偏光顕微鏡で観察したところ、欠陥は無かった。
次に、この偏光子の表面を、実施例1と同様にして薬包紙で擦った後、その表面を、偏光顕微鏡で観察したところ、欠陥は発生していなかった。
【0072】
[比較例1]
ポリアクリルアミドの50%水溶液を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして偏光子を作製した。
比較例1の偏光子の厚みは、0.4μmであった。前記偏光子の偏光度は、96%であった。
前記偏光子の表面を、偏光顕微鏡で観察したところ、欠陥は無かった。
次に、この偏光子の表面を、実施例1と同様にして薬包紙で擦った後、その表面を、偏光顕微鏡で観察したところ、該偏光子の異方性は消失し、さらに、その表面に欠陥(無数の傷)が発生していた。
【0073】
[実施例3]
4−ニトロアニリンと8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸とを、上記文献に記載の方法に従って、ジアゾ化及びカップリング反応させて、モノアゾ化合物を得た。このモノアゾ化合物を、同文献に記載の方法に従って、ジアゾ化した後、さらに、1−アミノ−8−ナフトール−2,4−ジスルホン酸ナトリウム塩とカップリング反応させた。得られた粗生成物を塩化リチウムで塩析することにより、下記構造式(V)で表されるアゾベンゼン化合物を得た。
【0074】
【化8】

【0075】
前記構造式(IV)のアゾベンゼン化合物に代えて、前記構造式(V)のアゾベンゼン化合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、偏光子を作製した。
実施例3の偏光子の厚みは、0.4μmであった。前記偏光子の偏光度は、98%であった。
前記偏光子の表面を、偏光顕微鏡で観察したところ、欠陥は無かった。
次に、この偏光子の表面を、実施例1と同様にして薬包紙で擦った後、その表面を、偏光顕微鏡で観察したところ、欠陥は発生していなかった。
【0076】
[実施例4]
ポリアクリルアミドの50%水溶液の量を800質量部に変更したこと以外は、実施例3と同様にして偏光子を作製した。なお、ポリアクリルアミドの50%水溶液を800質量部混合したので、ポリアクリルアミドの量は、400質量部である。
【0077】
実施例4の偏光子の厚みは、0.4μmであった。前記偏光子の偏光度は、86%であった。
前記偏光子の表面を、偏光顕微鏡で観察したところ、欠陥は無かった。
次に、この偏光子の表面を、実施例1と同様にして薬包紙で擦った後、その表面を、偏光顕微鏡で観察したところ、欠陥は発生していなかった。
【0078】
[比較例2]
ポリアクリルアミドの50%水溶液を加えなかったこと以外は、実施例3と同様にして偏光子を作製した。
比較例2の偏光子の厚みは、0.4μmであった。前記偏光子の偏光度は、98%であった。
前記偏光子の表面を、偏光顕微鏡で観察したところ、欠陥は無かった。
次に、この偏光子の表面を、実施例1と同様にして薬包紙で擦った後、その表面を、偏光顕微鏡で観察したところ、該偏光子の異方性は消失し、さらに、その表面に欠陥(無数の傷)が発生していた。
【0079】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の偏光子は、例えば、液晶表示装置の構成部材、偏光サングラスなどに利用できる。
本発明の偏光子の製造方法は、耐擦傷性に優れた偏光子を容易に製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるアゾベンゼン化合物と、ポリアクリルアミドと、を含む偏光子。
【化1】

は、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Rは、置換若しくは無置換のアリーレン基を表し、Rは、独立して、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアセチル基、置換若しくは無置換のベンゾイル基、置換若しくは無置換のフェニル基、又は下記一般式(II)で表される基を表し、Mは、対イオンを表し、mは、1又は2の整数を表し、nは、1〜3の整数を表す。
【化2】

Xは、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜18のアルキル基(隣接しない炭素原子が酸素原子に置換されているアルキル基を含む)、メタクリル基、又はアクリル基を表す。
【請求項2】
前記ポリアクリルアミドが、前記アゾベンゼン化合物100質量部に対し、25質量部〜900質量部含まれている請求項1に記載の偏光子。
【請求項3】
前記ポリアクリルアミドが、ノニオン性ポリアクリルアミドを含む請求項1または2に記載の偏光子。
【請求項4】
前記アゾベンゼン化合物が、水溶性を有する請求項1〜3のいずれかに記載の偏光子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の偏光子を有する画像表示装置。
【請求項6】
下記一般式(I)で表されるアゾベンゼン化合物とポリアクリルアミドと水系溶媒とを含む塗工液を、基材上に塗工する工程を有する偏光子の製造方法。
【化3】

は、置換若しくは無置換のアリール基を表し、Rは、置換若しくは無置換のアリーレン基を表し、Rは、独立して、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアセチル基、置換若しくは無置換のベンゾイル基、置換若しくは無置換のフェニル基、又は下記一般式(II)で表される基を表し、Mは、対イオンを表し、mは、1又は2の整数を表し、nは、1〜3の整数を表す。
【化4】

Xは、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜18のアルキル基(隣接しない炭素原子が酸素原子に置換されているアルキル基を含む)、メタクリル基、又はアクリル基を表す。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−204527(P2010−204527A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51818(P2009−51818)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】