説明

偏光板及び偏光板形成用光硬化性接着剤

【課題】保護フィルムと偏光子との接着性および打ち抜き加工性に優れ、耐水性にも優れる偏光板を提供する。
【解決手段】ポリビニルアルコール系偏光子の両面が、ラジカル重合性化合物(a):60〜99.8質量%と、カチオン重合性の官能基を有し(メタ)アクリロイル基を有しないカチオン重合性化合物(c):0.02〜40質量%と、光ラジカル重合開始剤(d)と光カチオン重合開始剤(e)とを含む光硬化性接着剤を硬化してなる接着層を介して保護フィルムでそれぞれ被覆されてなる偏光板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等に用いられる偏光板及び該偏光板形成用の光硬化性接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
時計、携帯電話、個人用の携帯情報端末(PDA)、ノートパソコン、パソコン用モニタ、DVDプレーヤー、TVなどでは液晶表示装置が急速に市場に広まっている。液晶表示装置は、液晶のスイッチングによる偏光状態を可視化させたものであり、その表示原理から、偏光子が用いられる。特に、TV等の用途では、ますます高輝度、高コントラスト、広い視野角が求められ、偏光板においてもますます高透過率、高偏光度、高い色再現性などが求められている。
【0003】
液晶表示関連分野などに用いられる偏光子は、通常ポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素や染料を吸着させたものを一軸延伸して製造される。このポリビニルアルコール系偏光子は、熱や水分により収縮し、偏光性能の低下をきたす。そこで、PVA系偏光子の表面に保護フィルムを貼合せたものが偏光板として用いられる。
【0004】
偏光子に保護フィルムを貼着するための接着剤としては、従来からポリビニルアルコール系樹脂の水溶液(PVA系接着剤)が広く使用されている(特許文献1、2参照)。
また、特許文献3には、水性ウレタン系接着剤を用いてなる偏光板が開示されている。
【0005】
ところで、特にTVで代表されるように、近年、画像表示装置の大画面化が進むにつれ、偏光板に対しても大型化の要求が高まり、重要な課題になっている。
しかし、前述の水系接着剤を用いた偏光板では、バックライトの熱により偏光板の寸法が変化し、その寸法変化に起因するひずみが画面の一部に局在化し、その結果、本来画面全体が黒く表示されるべき場合に、部分的に光がもれてしまう、いわゆる光抜け(ムラ)が顕著になってくるという問題がある。
【0006】
上記のような理由から、水系接着剤の代わりに、カチオン重合性紫外線硬化型接着剤を使用することが提案されている(特許文献4参照)。
しかし、カチオン重合性紫外線硬化型接着剤では、紫外線照射後に暗反応(後重合)が生じるので、長尺の硬化物を巻取りロール状にした場合、保管時に巻き癖がつきやすいという問題がある。しかも、カチオン重合性紫外線硬化型接着剤は、硬化時の湿度の影響を受けやすく、硬化状態がバラつきやすいという問題がある。そこで、均一な硬化状態を発現するためには、環境湿度は言うに及ばず、PVA系偏光子の含水率を厳しく管理する必要がある。
ラジカル重合性紫外線硬化型接着剤には、このような問題が比較的少ないという点で優れる。
【0007】
ところで、液晶表示装置は、その用途が拡大するにつれて、さまざまな環境で使用されるようになり、液晶表示装置を構成する偏光板には高い耐環境性が要求されている。
例えば、携帯電話に代表されるモバイル用途の液晶表示装置では、高い耐湿熱耐久性が要求されている。
【0008】
上記したように、ラジカル重合性紫外線硬化型接着剤はカチオン重合性硬化型接着剤に比して、種々の点で優れる。
しかし、ラジカル重合性紫外線硬化型接着剤を用いた場合、湿熱環境下に長時間暴露されると、偏光性能が低下しやすく、切断端部ではヨウ素や染料で着色した偏光子の色抜けが発生しやすいという問題がある。
また、湿熱環境下よりもさらに過酷な条件(例えば、60℃の温水に浸漬)においては、偏光子の色抜けが顕著に発生する。
すなわち、偏光板の使用環境がさらに過酷になっている今日、従来の偏光板を更に上回る耐湿熱性を持った偏光板が望まれているのが実情である。
【0009】
さらに、偏光板ポリビニルアルコール系フィルムとプラスチックフィルムとを簡便に充分な強度で接着するために、(メタ)アクリル系のラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物を併用する接着性組成物も提案されている(特許文献5)。しかし、この技術では、打ち抜き加工性においてさらなる改善が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平09−258023号公報
【特許文献2】特開2005−208456号公報
【特許文献3】特開2004−37841号公報
【特許文献4】特開2008−233874号公報
【特許文献5】特開2008−260879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ポリビニルアルコール系偏光子と保護フィルムとを構成層とし、保護フィルムと偏光子との接着性および打ち抜き加工性に優れ、耐水性にも優れる偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す偏光板により前記目標達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、 ポリビニルアルコール系偏光子と、光硬化性接着剤を硬化してなる接着層と、保護フィルムとを含み、前記偏光子の両面が前記接着層を介して保護フィルムでそれぞれ被覆されてなる偏光板であって、
前記光硬化性接着剤は、ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物からなる主剤と、光ラジカル重合開始剤と、光カチオン重合開始剤とを含み、
前記ラジカル重合性化合物として、ガラス転移温度が−80℃〜0℃のホモポリマーを形成するラジカル重合性化合物(a)を前記主剤中に60〜99.8質量%含み、
前記カチオン重合性化合物として、(メタ)アクリロイル基を有しないカチオン重合性化合物(c)を前記主剤中に0.02〜40質量%含み、
前記主剤100質量部に対して、前記光ラジカル重合開始剤を1〜10質量部、前記光カチオン重合開始剤を0.5〜5質量部の範囲でそれぞれ含むことを特徴とする偏光板に関する。
【0013】
さらに、本発明は、ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物からなる主剤と、光ラジカル重合開始剤と、光カチオン重合開始剤とを含み、
前記ラジカル重合性化合物として、ガラス転移温度が−80℃〜0℃のホモポリマーを形成するラジカル重合性化合物(a)を前記主剤中に60〜99.8質量%含み、
前記カチオン重合性化合物として、(メタ)アクリロイル基を有しないカチオン重合性化合物(c)を前記主剤中に0.02〜40質量%含み、
前記主剤100質量部に対して、前記光ラジカル重合開始剤を1〜10質量部、前記光カチオン重合開始剤を0.5〜5質量部の範囲でそれぞれ含むことを特徴とする、偏光板形成用光硬化性接着剤に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ポリビニルアルコール系偏光子と保護フィルムとを構成層とする偏光板であって、接着性、打ち抜き加工性、及び耐水性に優れる偏光板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の偏光板の一例を示す断面図(イメージ)である。
【図2】本発明の偏光板の製造方法の一例を示すフロー図(イメージ)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
[接着層]
以下、本発明の偏光板を構成する接着層(または接着剤層)について説明する。
接着層(図1および2において符号2,4)は、光硬化性接着剤を硬化してなるものである。
光硬化性接着剤は、光硬化性化合物からなる主剤と、重合開始剤とを含む。主剤は、ラジカル重合性成分(ラジカル重合性化合物)とカチオン重合性成分(カチオン重合性化合物)を含む。
ラジカル重合性成分は、ガラス転移温度が−80℃〜0℃のホモポリマーを形成し得るラジカル重合性化合物(a)(以下、これを「ラジカル重合性化合物(a)」または「低Tgラジカル重合性化合物(a)」とも記す。)を必須成分とし、さらにガラス転移温度が60℃〜250℃のホモポリマーを形成し得るラジカル重合性化合物(b)(以下、これを「ラジカル重合性化合物(b)」または「高Tgラジカル重合性化合物(b)」とも記す。)を含有し得る。すなわち、ラジカル重合性成分として、ホモポリマーのガラス転移温度が−80℃〜0℃であるラジカル重合性化合物(a)を含み、ホモポリマーのガラス転移温度が60℃〜250℃であるラジカル重合性化合物(b)を任意に含む。
【0017】
低Tgラジカル重合性化合物(a)のうち、単官能のものとしては、例えば、
2−ヒドロキシエチルアクリレート(ホモポリマーのTg:−9℃、以下同様)、
2−ヒドロキシプロピルアクリレート(−7℃)、および
4−ヒドロキシブチルアクリレート(−55℃)、
に代表される水酸基末端アルキル(メタ)アクリレート;
2−メトキシエチルアクリレート(−43℃)、
3−メトキシブチルアクリレート(−47℃)、
トリデシルアクリレート(−65℃)、および
トリデシルメタアクリレート(−37℃)、
に代表されるアルキル基末端アルキル(メタ)アクリレート;
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート(−54℃)、
エトキシジエチレングリコールアクリレート(−51℃)、
メトキシポリエチレングリコール(n=9)アクリレート(−71℃)、および
メトキシトリプロピレングリコールアクリレート(−75℃)、
に代表されるアルキル基末端(ポリ)アルキレングリコール系(メタ)アクリレート;
フェノキシエチルアクリレート(−15℃)、
トリフルオロエチルアクリレート(−10℃)、
ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンアクリレート(−46℃)、などが挙げられる。
【0018】
また、低Tgラジカル重合性化合物(a)のうち、多官能のものとしては、
ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート(−28℃)、
ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート(−42℃)、
トリエチレングリコールジメタクリレート(−5℃)、
エトキシ化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート(−19℃)、などが挙げられる。
【0019】
本発明における光硬化性接着剤は、これらの材料を適宜組み合わせて使うことができる。
低Tgラジカル重合性化合物(a)としては、単官能のものが好ましい。低Tgラジカル重合性化合物(a)ではあっても、多官能のものだけを使用することは、後述するカッター試験性能の点で好ましくない場合がある。そこで、このカッター試験性能も良好なものとするためには、低Tgラジカル重合性化合物(a)として多官能のものを併用する場合に、低Tgラジカル重合性化合物(a)(100質量%とする)中に40質量%未満程度、好ましくは10質量%未満程度に抑えることが好ましい。
【0020】
さらに、後述する高Tgラジカル重合性化合物(b)を用いる場合は、この高Tgラジカル重合性化合物(b)も、多官能ではなく単官能であることが好ましい。換言すると、ラジカル重合性化合物((a)または(a)+(b))として多官能ラジカル重合性化合物を用いる場合、その割合は主剤(100質量%とする)中に40質量%未満程度、好ましくは10質量%未満程度であることが好ましい。
あるいは、ラジカル重合性化合物中の単官能ラジカル重合性化合物(単官能のラジカル重合性化合物(a)、または、単官能のラジカル重合性化合物(a)および(b)の合計)の割合は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが一層好ましい。
【0021】
このラジカル重合性化合物(a)は、ホモポリマーのガラス転移温度が−60℃〜−20℃のものがより好ましく、ホモポリマーのガラス転移温度が−60℃〜−40℃のものが一層好ましい。
【0022】
これら低Tgラジカル重合性化合物(a)のうち、PVA系偏光子との接着性向上の点から、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有するものが好ましく、なかでも4−ヒドロキシブチルアクリレートが好ましい。硬化物のTgを低くしにくいという点では、水酸基を有してはいても、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートは使用しないことが好ましい。すなわち、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、4〜40程度であることが好ましい。
【0023】
また、硬化後の接着剤層の凝集力を高め、接着力を向上させる点で、低Tgラジカル重合性化合物(a)として、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートをさらに用いることが好ましい。但し、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートは硬化性があまり良くないので、ラジカル重合開始剤の種類や量を適宜選択したり、紫外線照射装置のランプを適宜選択したり、照射強度や照射線量等の硬化条件を適宜選択したり、保護フィルムの種類や厚み等を適宜選択したりすることによって、硬化性を補うことができる。ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートのカプロラクトンの重合度(n)は特に限定されないが、n=2〜20程度であることが好ましい。
【0024】
たとえば、主剤の合計を100質量%として60〜99.8質量%であるラジカル重合性化合物(a)は、4−ヒドロキシブチルアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを10〜99.8質量%、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートを0〜50質量%の各範囲で組み合わせることが好ましい。
また、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートを配合する場合は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを10〜99.7質量%、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートを0.01〜50質量%の範囲で用いることがさらに好ましい。
【0025】
任意で配合される高Tgラジカル重合性化合物(b)としては、例えば、
ジシクロペンタニルメタクリレート(ホモポリマーのTg:180℃、以下同様)、
トリフルオロエチルメタクリレート(81℃)、
t−ブチルメタクリレート(113℃)、
エチルメタクリレート(65℃)、
テトラヒドロフルフリルメタクリレート(68℃)、
イソボルニルアクリレート(85℃)、および
アクリロイルモルホリン(106℃)等が挙げられる。なかでも、耐熱性の観点からイソボルニルアクリレート、アクリロイルモルホリンを使用することが好ましい。
このラジカル重合性化合物(b)は、ホモポリマーのガラス転移温度が60℃〜200℃のものがより好ましく、ホモポリマーのガラス転移温度が80℃〜150℃のものが一層好ましい。
本発明における光硬化性接着剤は、これらの材料を適宜組み合わせて使うことができる。
【0026】
なお、前記の低Tgラジカル重合性化合物(a)、高Tgラジカル重合性化合物(b)から形成され得る各ホモポリマーのTgは、以下のようにして求められる値である。
各化合物と開始剤とを適当量プラスチック製の容器に入れ、紫外線を照射し、硬化させたもの、10mgを測定用試料とし、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分又は20℃/分の昇温速度で測定した。
【0027】
(メタ)アクリロイル基を有しないカチオン重合性化合物(c)(以下、これを「カチオン重合性化合物(c)」とも記す。)は、カチオン重合性の官能基を有し且つ(メタ)アクリロイル基を有しない化合物であり、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド 1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサンなどの、1分子中に1個以上の脂環式エポキシ基を有する化合物やオキセタニル基を有する化合物が挙げられる。カチオン重合性化合物(c)は、硬化した接着層の耐水性向上の役割を担う。
脂環式エポキシ基を有する化合物のうち、反応性の点から、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを使用することが好ましい。
【0028】
本発明においては、カチオン重合性化合物(c)は、接着力を確保し且つ打ち抜き加工性を良好なものとする観点から、(メタ)アクリロイル基を有しないものを選択する。(メタ)アクリロイル基を有するカチオン重合性化合物を上記(c)と併用することもできるが、その場合の(メタ)アクリロイル基を有するカチオン重合性化合物の配合量は、主剤100質量%中に20質量%未満程度、好ましくは10質量%未満程度に抑える必要がある。
あるいは、カチオン重合性化合物全体に占める(メタ)アクリロイル基を有しないカチオン重合性化合物(c)の割合は50質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。
【0029】
光硬化性接着剤の主剤は、ラジカル重合性化合物(a)を60〜99.8質量%、カチオン重合性化合物(c)を0.02〜40質量%の範囲で含み、ラジカル重合性化合物(a):60〜99質量%、カチオン重合性化合物(c):1〜40質量%であることが好ましく、ラジカル重合性化合物(a):90〜99質量%、カチオン重合性化合物(c):1〜10質量%であることがより好ましい。
低Tgラジカル重合性化合物(a)が60質量%よりも少ないと、形成される接着層が固くなりすぎて、接着力を確保できないばかりでなく、打ち抜き加工性が悪化してしまう。
一方、低Tgラジカル重合性化合物(a)が99.8質量%よりも多い、つまり、カチオン重合性化合物(c)がほとんど含まれない場合、形成される接着層の耐水性が悪くなり、偏光板を温水に浸漬するとPVA偏光子の色が抜けてしまう。
【0030】
高Tgラジカル重合性化合物(b)は、保護フィルムとして、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂フィルムを用いる場合に、接着力向上に寄与する。
高Tgラジカル重合性化合物(b)を用いる場合には、低Tgラジカル重合性化合物(a):60〜75質量%、高Tgラジカル重合性化合物(b):0.01〜39.98質量%、カチオン重合性化合物(c):0.02〜24.99質量%であることが好ましく、低Tgラジカル重合性化合物(a):60〜70質量%、高Tgラジカル重合性化合物(b):10〜35質量%、カチオン重合性化合物(c):5〜20質量%であることがより好ましい。
【0031】
あるいは、好ましい一実施形態における光硬化性接着剤は、主剤として、ガラス転移温度が−80℃〜0℃のホモポリマーを形成する単官能のラジカル重合性化合物(a):60〜99.8質量%と、
ガラス転移温度が60℃〜250℃のホモポリマーを形成する単官能のラジカル重合性化合物(b):0〜39.98質量%と、
カチオン重合性の官能基を有し(メタ)アクリロイル基を有しないカチオン重合性化合物(c):0.02〜40質量%(但し、前記(a)〜(c)の合計を100質量%とする)とを含み、
重合開始剤として、光ラジカル重合開始剤(d):1〜10質量部(前記(a)〜(c)の合計100質量部に対して)と、
光カチオン重合開始剤(e):0.5〜5質量部(前記(a)〜(c)の合計100質量部に対して)とを含むものである。
さらに好ましくは、低Tgラジカル重合性化合物(a):60〜99質量%、高Tgラジカル重合性化合物(b):0〜39質量%、及びカチオン重合性化合物(c):1〜40質量%を含む。
【0032】
本発明における光硬化性接着剤には、低Tgラジカル重合性化合物(a)や高Tgラジカル重合性化合物(b)の他に、さらに別のラジカル重合性化合物を添加してもよい。その他のラジカル重合性化合物としてはウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレートが挙げられる。しかし、上述のように、ラジカル重合性化合物は、限られた配合範囲で用いることが好ましい。
また、本発明における光硬化性接着剤には、必要であれば適宜添加剤を添加してもよい。添加剤としては、保護フィルムとの接着力を大きくでき、偏光板の収縮を抑制できるという点で、シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤としては、アクリロイル基を有するものが好ましい。
【0033】
本発明における光硬化性接着剤は、光ラジカル重合開始剤(d)を含む。
光ラジカル重合開始剤(d)としては特に制限はなく、例えばイルガキュアー184,907,651,1700,1800,819,369,261、DAROCUR-TPO(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ダロキュア-1173(メルク社製)、エザキュアーKIP150、TZT(日本シイベルヘグナー社製)、カヤキュアBMS、カヤキュアDMBI、(日本化薬製)等が挙げられる。
これらの中でも、光硬化後の接着剤層の透明性を高める点で、フォトブリーチするDAROCUR-TPOを使用することが好ましい。
光ラジカル重合開始剤(d)の配合割合は、前記ラジカル重合性化合物(a)、(b)及びカチオン重合性化合物(c)の合計100質量部に対して、1〜10質量部であり、1〜5質量部であることが好ましい。
【0034】
本発明における光硬化性接着剤は、光カチオン重合開始剤(e)を含む。
光カチオン重合開始剤(e)としては、例えばUVACURE1590(ダイセル・サイテック製)、CPI−110P(サンアプロ製)、などのスルホニウム塩やIRGACURE250(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、WPI−113(和光純薬製)、Rp−2074(ローディア・ジャパン製)等のヨードニウム塩が挙げられる。
光カチオン重合開始剤(e)の配合割合は、前記ラジカル重合性化合物(a)、(b)及びカチオン重合性化合物(c)の合計100質量部に対して、0.5〜10質量部であり、0.5〜5質量部であることが好ましい。
【0035】
光硬化性接着剤は、上記主剤および重合開始剤に加え、重合禁止剤、重合開始助剤、紫外線吸収剤、可塑剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、可塑剤等の各種の公知の添加剤を、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲内で含むことができる。
【0036】
[偏光子]
本発明の偏光板に用いられるポリビニルアルコール系偏光子(図1、2において符号3)について説明する。
偏光子を形成する、すなわち偏光子の基材となるポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体などが挙げられるが、耐水性の点から、エチレン・ビニルアルコール共重合体が好ましい。ポリビニルアルコールとしては、酢酸基が数十%残存している部分ケン化ポリビニルアルコールや、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールや、水酸基が変性された変性ポリビニルアルコールなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。ポリビニルアルコール系樹脂は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を併用することもできる。
【0037】
上記ポリビニルアルコールの具体例としては、(株)クラレ製のRSポリマーであるRS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)、同社製のクラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)、日本合成化学工業(株)製のゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1.400)などが挙げられる。ポリビニルアルコールは、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステルの重合体を、アルカリ触媒等を用いてケン化して得られる。
【0038】
上記エチレン・ビニルアルコール共重合体は、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものであり、酢酸基が数十モル%残存している部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないかまたは酢酸基が残存しない完全ケン化物まで含み、特に限定されない。
【0039】
偏光子は、公知の方法に従い、上述のポリビニルアルコール系樹脂をキャスティング成形法等の方法によってフィルム化し、ヨウ素または二色染料(二色性色素)を吸着配向させることにより得られる。前記偏光子は、ホウ酸等による架橋や、延伸をされたものであってもよい。延伸を行なう場合、染色の前・染色と同時・染色の後の、いずれの段階で行なってもよい、偏光子の形状としては、特に限定されないが、例えば、フィルム等が挙げられる。なお、本明細書において、「フィルム」の語は、厚みが小さいもの(厚みが1mm未満のもの)の他、厚手のシート(例えば、厚みが1〜5mmのもの)も含むものとする。偏光子の厚さは、特に限定されないが、例えば、10〜40μm程度が好ましい。
【0040】
[保護フィルム]
本発明の偏光板に用いられる保護フィルム(図1、2において符号1,5)について説明する。
保護フィルムは特に限定されず、具体的には、現在偏光板の保護フィルムとして最も広く用いられているトリアセチルセルロース(TAC)等のアセチルセルロース系樹脂フィルムや、トリアセチルセルロースよりも透湿度の低い透明樹脂フィルムを用いることができる。
トリアセチルセルロースよりも透湿度の低い保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、シクロオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂が挙げられる。
【0041】
シクロオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称である。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびに、それらの水素化物などが挙げられ、ノルボルネン系樹脂が好ましい。ノルボルネン系樹脂フィルムは、特開2005−164632号公報、特開2006−201736号公報、特開2008−233279号公報等に記載された公知の方法により得ることができる。
【0042】
シクロオレフィン系樹脂としては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオノア」、JSR株式会社製の商品名「アートン」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学株式会社製の商品名「APEL」が挙げられる。
【0043】
アクリル系樹脂は、ポリメチルメタクリレートをはじめ、メチルメタクリレートやブチルメタクリレート等のアルキルエステル類の(メタ)アクリレートを主成分とする樹脂(=共重合体)である。場合によっては、他の樹脂とブレンドされて、フィルム化される。
アクリル系フィルムは、特開2002−361712号公報等に記載された公知の方法により得ることができる。
アクリル系フィルムは、種々の製品が市販されている。具体例としては、三菱レイヨン社製の商品名「アクリプレン」や、カネカ社製の商品名「サンデュレン」が挙げられる。
【0044】
本発明の偏光板に使用される保護フィルムは、(1)、(5)の両面とも同一組成であっても異なっていても良い。例えば、(1)にシクロオレフィン系樹脂フィルムを使用し、(5)に、アクリル系樹脂フィルムを使用しても何ら差し支えは無い。
【0045】
保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。保護フィルム(1)と(5)の厚みは、同一であっても異なっていてもよい。
なお、偏光子の両側に保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いてもよい。たとえば、偏光子の両面にアクリル系フィルムを使用する場合でも、アクリル系ポリマーの種類が互いに異なっていてもよいし、配合する添加剤が互いに異なっていてもよく、何ら限定はされない。
【0046】
本発明の偏光板は、以下のようにして得ることができる。
即ち、第1の保護フィルム(1)の一方の面に、第1の光硬化性接着剤を塗工し、第1の硬化性接着剤層(2’)を形成し、
第2の保護フィルム(5)の一方の面に、第2の光硬化性接着剤を塗工し、第2の硬化性接着剤層(4’)を形成し、
次いで、ポリビニルアルコール系偏光子(3)の各面に、第1の硬化性接着剤層(2’)及び第2の硬化性接着剤層(4’)を、同時に/または順番に重ね合わせ、
第2の保護フィルム(5)の側から活性エネルギー線を照射し、第1の硬化性接着剤層(2’)及び第2の硬化性接着剤層(4’)を硬化することによって製造することが好ましい。
【0047】
上記硬化性接着剤層(2’)および(4’)、保護フィルム(1)および(5)は、それぞれ、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、硬化性接着剤層(2’)と硬化性接着剤層(4’)(換言すると第1の光硬化性接着剤と第2の光硬化性接着剤)は、同一組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。形成される接着剤層(2)および(4)の厚みは、互いに同一でも異なっていてもよく、特に限定されないが、一般に、0.1μm〜50μmであることが好ましく、より好ましくは0.5μm〜20μmである。
【0048】
以下、図2に基づいて、工程ごとに説明する。
[工程(a)]
工程(a)は、図2の(a)に示されるように、保護フィルム(1)および(5)のそれぞれ片面に、接着剤層形成用の光硬化性接着剤を塗布し、必要に応じて乾燥等を行って、硬化性接着剤層(2’)、(4’)を具備する積層体(1’)、(5’)を得る工程である。
光硬化性接着剤の塗布方法としては、特に限定されないが、例えばダイコート法、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法などが挙げられる。
【0049】
[工程(b)]
工程(b)は、図2の(b)に示されるように、ポリビニルアルコール系偏光子(3)の一方の面(図では上面)に、保護フィルム(1)と硬化性接着剤層(2’)とを具備する積層体(1’)を、
ポリビニルアルコール系偏光子(3)の他方の面(図では下面)に、保護フィルム(5)と硬化性接着剤層(4’)とを具備する積層体(5’)を、それぞれ重ね合わせる工程である。
【0050】
[工程(c)]
工程(c)は、図2の(c)に示されるように、活性エネルギー線(6)を照射することにより、保護フィルム(1)、(5)とポリビニルアルコール系偏光子(3)とに挟まれた硬化性接着剤層(2’)、(4’)を硬化させ、接着剤層(2),(4)を形成させる工程である。
図では、保護フィルム(5)の側から活性エネルギー線(6)を照射する場合を示すが、保護フィルム(1)の側から活性エネルギー線(6)を照射してもよいし、両側から同時に、または両側から順次、活性エネルギー線(6)を照射してもよい。
【0051】
活性エネルギー線の照射量は、特に限定されるものではないが、波長200〜450nm、照度1〜500mW/cm2の光を、照射量が10〜5000mJ/cm2となるように照射して露光することが好ましい。照射量が10mJ/cmより低い場合、紫外線硬化性組成物の硬化が促進せず、欲する性能が発揮できないことがあり、照射量が5000mJ/cmより高い場合は、照射時間が非常に長くなり、生産性に問題がある。照射する活性エネルギー線の種類としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等が挙げられるが、特に紫外線が好ましい。光の照射装置としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプ等を用いることが好ましい。
活性エネルギー線(6)照射後、室温で1週間程度エージングすることもできる。
工程(c)を経ることにより、硬化性接着剤層(2’)、(4’)を硬化させて接着剤層(2),(4)とし、偏光子(3)と保護フィルム(1)および(5)とが接着剤層(2),(4)を介して接着されてなる偏光板が完成する(図1、図2中の(d)参照)。
【0052】
また、本発明の偏光板は、ポリビニルアルコール系偏光子(3)の一方の面に、光硬化性接着剤を塗工し、第1の硬化性接着剤層(2’)を形成し、形成された第1の硬化性接着剤層(2’)の表面を第1の保護フィルム(1)で覆い、次いでポリビニルアルコール系偏光子(3)の他方の面に、光硬化性接着剤を塗工し、第2の硬化性接着剤層(4’)を形成し、形成された第2の硬化性接着剤層(4’)の表面を第2の保護フィルム(5)で覆い、それから、第2の保護フィルム(5)の側から活性エネルギー線を照射し、第1の硬化性接着剤層(2’)及び第2の硬化性接着剤層(4’)を硬化することによって製造することもできる。
【0053】
偏光板は、上記のように、偏光子と接着層と保護フィルムとを必須の構成として含むものであるが、その他の任意の構成を含んでいてもよい。たとえば、任意の位置に必要に応じて反射層、反射防止層、ハードコート層、防汚層、防曇層、スティッキング防止層等を含むことができる。
【実施例】
【0054】
[ポリビニルアルコール系偏光子]の製造例
ホウ酸20質量部、ヨウ素0.2質量部、ヨウ化カリウム0.5質量部を水480質量部に溶解させて染色液を調整した。この染色液にPVAフィルム(ビニロンフィルム#40、アイセロ社製)を、30秒浸漬した後、フィルムを一方向に2倍に延伸し、乾燥させて、膜厚30μmのPVA偏光子を得た。
【0055】
[実施例1]
保護フィルム(1)として、三菱レイヨン(株)製の紫外線吸収剤を含有するアクリルフィルム:HBD−002(50μm)を用い、保護フィルム(5)として、日本ゼオン社製の紫外線吸収剤を含有しないシクロオレフィンフィルム、ゼオノアフィルム「ZF−14」(100μm)を使用し、それぞれその表面に300W・min/mの放電量でコロナ処理を行った。表面処理後1時間以内に、保護フィルム(1)と(5)のそれぞれに、表1に示す光重合組成物をワイヤーバーコーター#3を用いて塗工し、硬化性接着剤層(2’)、(4’)を形成し、その硬化性接着剤層(2’)と(4’)との間に上記のPVA偏光子を挟み、保護フィルム(1)/硬化性接着剤層(2’)/PVA系偏光子(3)/硬化性接着剤層(4’)/保護フィルム(5)からなる積層体を得た。
保護フィルム(1)がブリキ板に接するように、この積層体の四方をセロハンテープで固定し、ブリキ板に固定した。
UV照射装置(東芝社製 高圧水銀灯)で最大照度500mW/cm2、積算光量800mJ/cmの紫外線を保護フィルム(5)側から照射して、偏光板を作製した。形成された各接着剤層の厚みは、3〜4μmであった。
【0056】
[実施例2〜8、比較例1〜7]
光硬化性重合組成物を表1および表2のように変えた以外は実施例1と同様にして偏光板を作製し、後述する方法に従って、その性能を評価した。
【0057】
[実施例9および10]
実施例9では、保護フィルム(1)を富士フィルム(株)製の紫外線吸収剤含有トリアセチルセルロース系フィルム:商品名「フジタック」(80μm)に、実施例10では保護フィルム(1)を日本ゼオン社製の紫外線吸収剤を含有しないシクロオレフィンフィルム、ゼオノアフィルム「ZF−14」(100μm)にそれぞれ代えた以外は、実施例3と同様にして偏光板を得、同様に評価した。
【0058】
[実施例11]
保護フィルム(1)を富士フィルム(株)製の紫外線吸収剤含有トリアセチルセルロース系フィルム:商品名「フジタック」(80μm)に代え、保護フィルム(5)を、紫外線吸収剤を含まないトリアセチルセルロース系フィルム:商品名「TACPHAN N882GL」(80μm)に代えた以外は、実施例3と同様にして偏光板を得、同様に評価した。
【0059】
[実施例12]
保護フィルム(1)、(5)を実施例11と同様にし、表1に示すように高Tgラジカル重合性化合物(b)を含む光硬化性接着剤を用い、実施例3と同様にして偏光板を得、同様に評価した。
【0060】
[実施例13]
保護フィルム(1)、(5)を日本ゼオン社製の紫外線吸収剤を含有しないシクロオレフィンフィルム、ゼオノアフィルム「ZF−14」(100μm)にした以外は、実施例12と同様の光硬化性接着剤を用い、偏光板を得、同様に評価した。
【0061】
[実施例14および15]
保護フィルム(1)、(5)を実施例13と同様にし、表1に示すように多官能アクリレート(b)又はアクリロイル基を有するカチオン重合性化合物(x)を含む光硬化性接着剤を用い、実施例13と同様にして偏光板を得、同様に評価した。
【0062】
[比較例8〜11]
保護フィルム(1)、(5)を日本ゼオン社製の紫外線吸収剤を含有しないシクロオレフィンフィルム、ゼオノアフィルム「ZF−14」(100μm)にし、表2に記載の光硬化性接着剤を用い、偏光板を得、同様に評価した。
【0063】
<接着力(剥離強度)>
得られた偏光板を、25mm×150mmのサイズにカッターを用いて裁断してサンプルとした。サンプルを両面粘着テープ(東洋インキ製造株式会社製DF8712S)により金属板上に貼り付けた。サンプル(偏光板)には、保護フィルムと偏光子の間に予め剥離のキッカケを設けておき、23℃、50%RH環境下で、ピール速度:300mm/minにて接着力を測定した。表中の接着力は、以下の基準に従って評価した。
2.5(N/25mm)以上・・・◎
1.5(N/25mm)以上〜2.5(N/25mm)未満・・・○
1.0(N/25mm)以上〜1.5(N/25mm)未満・・・△
1.0(N/25mm)未満・・・×
【0064】
<カッター試験(密着力試験)>
得られた偏光板の、保護フィルムと偏光子の間にカッターの刃を入れ、刃を押し進めたときの刃の入り方を以下の基準で評価した。
カッターの刃がフィルム間に容易に入らない・・・◎
カッターの刃を押し進めたときに、刃がフィルム間に4〜5mm入ったところで止まる・・・○
カッターの刃がフィルム間に無理なく入る・・・×
【0065】
<打ち抜き加工性>
ダンベル社製の100mm×100mmの刃を用い、作製した偏光板を保護フィルム(1)側から打ち抜いた。
打ち抜いた偏光板の周辺の剥がれ状態を目視で観察した。
偏光板の面積(100cm)に対して剥がれた面積の割合(%)が0〜1%未満のものを◎、1〜2%未満のものを○、2〜3%未満のものを△、剥離面積が3%以上のものを×とした。
【0066】
<温水浸漬試験(耐水性)>
得られた偏光板を、25mm×50mmのサイズにカッターを用いて裁断してサンプルとし、これを恒温水(60℃)中に24時間、及び72時間それぞれ浸漬させた後、サンプル(偏光板)の色抜け度合いを目視で観察した。
偏光板の面積に対して色抜けした面積の割合(%)が、0〜10%未満のものを◎、10〜30%未満のものを○、30%以上のものを×とした。
評価結果を表1および表2に示す。使用した化合物および保護フィルムについては、表1の下にその詳細を記載した。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
表1に示すように、いずれの実施例でも、接着性、打ち抜き加工性、および耐水性に優れた偏光子を形成することができた。
実施例3と実施例6はいずれも、高Tgラジカル重合性化合物(b)を含まず、低Tgラジカル重合性化合物(a)の含有量が90質量%の光硬化性接着剤を用いる場合であり、低Tgラジカル重合性化合物(a)として、4-ヒドロキシブチルアクリレートの他にω-カルボキシ-ポリカプロラクトンアクリレートを併用する実施例3は、実施例6よりも凝集力が高く、接着力の点で優れている。
【0070】
また、実施例12は、高Tgラジカル重合性化合物(b)を含む光硬化性接着剤を用いる場合であり、高Tgラジカル重合性化合物(b)を含まない実施例11に比して、保護フィルムのトリアセチルセルロース系フィルムに対する接着性の点で優れているので、接着力及び耐水性の点で優れている。
【0071】
さらに、実施例13は、実施例12に比して、保護フィルムに透湿性の低いシクロオレフィンフィルムを用いた場合であり、耐水性の点でより優れている。
【0072】
一方、カチオン重合性化合物(c)を含有しない光硬化性接着剤を用いる比較例1は、24時間の耐水性すらも不良である。
また、低Tgラジカル重合性化合物(a)の含有量の少ない比較例2〜5および10は、いずれも硬化した接着層が固くなりすぎるためか、接着力が小さく、打ち抜き加工性も良くない。
【0073】
さらに、比較例6、7は、低Tgラジカル重合性化合物(a)の含有量が少なく、単官能高Tgラジカル重合性化合物(b)の代わりに3官能のラジカル重合性化合物と、カチオン重合性化合物(c)の代わりにカチオン重合性官能基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いた場合であり、接着力が極めて小さかった。
【0074】
比較例8および9は、低Tgラジカル重合性化合物(a)の含有量は十分ではあるが、カチオン重合性化合物(c)の代わりにカチオン重合性官能基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いた場合であり、接着力が極めて小さかった。
なお、比較例4〜9は、接着力が極めて小さかったにも関わらず、耐水性が良好だったのは、カッター試験による密着性が良好であったことが原因の1つと考察される。
【符号の説明】
【0075】
1,5 保護フィルム
2 第1の接着剤層
3 ポリビニルアルコール系偏光子
4 第2の接着剤層
1’ 保護フィルム(1)と硬化性組成物からなる層(2’)との積層体
5’ 保護フィルム(5)と硬化性組成物からなる層(4’)との積層体
6 活性エネルギー線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系偏光子と、光硬化性接着剤を硬化してなる接着層と、保護フィルムとを含み、前記偏光子の両面が前記接着層を介して保護フィルムでそれぞれ被覆されてなる偏光板であって、
前記光硬化性接着剤は、ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物からなる主剤と、光ラジカル重合開始剤と、光カチオン重合開始剤とを含み、
前記ラジカル重合性化合物として、ガラス転移温度が−80℃〜0℃のホモポリマーを形成するラジカル重合性化合物(a)を前記主剤中に60〜99.8質量%含み、
前記カチオン重合性化合物として、(メタ)アクリロイル基を有しないカチオン重合性化合物(c)を前記主剤中に0.02〜40質量%含み、
前記主剤100質量部に対して、前記光ラジカル重合開始剤を1〜10質量部、前記光カチオン重合開始剤を0.5〜5質量部の範囲でそれぞれ含む、
ことを特徴とする偏光板。
【請求項2】
前記ラジカル重合性化合物(a)が、単官能である、請求項1記載の偏光板。
【請求項3】
前記光硬化性接着剤が、前記カチオン重合性化合物(c)として脂環式エポキシ基を有する化合物を含有する、請求項1または2記載の偏光板。
【請求項4】
前記光硬化性接着剤が、前記ラジカル重合性化合物(a)として4−ヒドロキシブチルアクリレートを含有する、請求項2または3記載の偏光板。
【請求項5】
前記光硬化性接着剤が、前記ラジカル重合性化合物(a)としてω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートをさらに含有する、請求項4記載の偏光板。
【請求項6】
前記ラジカル重合性化合物(a)として前記主剤中に、4−ヒドロキシブチルアクリレート:10〜99.8質量%と、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート:0〜50質量%とを含有する、請求項4又は5記載の偏光板。
【請求項7】
前記光硬化性接着剤が、ガラス転移温度が60℃〜250℃のホモポリマーを形成するラジカル重合性化合物(b)をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項記載の偏光板。
【請求項8】
前記カチオン重合性化合物中に占める前記カチオン重合性化合物(c)の割合が75質量%以上である、請求項1〜7のいずれか1項記載の偏光板。
【請求項9】
ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物からなる主剤と、光ラジカル重合開始剤と、光カチオン重合開始剤とを含み、
前記ラジカル重合性化合物として、ガラス転移温度が−80℃〜0℃のホモポリマーを形成するラジカル重合性化合物(a)を前記主剤中に60〜99.8質量%含み、
前記カチオン重合性化合物として、(メタ)アクリロイル基を有しないカチオン重合性化合物(c)を前記主剤中に0.02〜40質量%含み、
前記主剤100質量部に対して、前記光ラジカル重合開始剤を1〜10質量部、前記光カチオン重合開始剤を0.5〜5質量部の範囲でそれぞれ含むことを特徴とする、偏光板形成用光硬化性接着剤。
【請求項10】
前記ラジカル重合性化合物(a)が、単官能である、請求項9記載の偏光板形成用光硬化性接着剤。
【請求項11】
前記ラジカル重合性化合物(a)として4−ヒドロキシブチルアクリレート:10〜99.8質量%と、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート:0〜50質量%とを含有する、請求項10記載の偏光板形成用光硬化性接着剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−76067(P2011−76067A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164200(P2010−164200)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【分割の表示】特願2010−95020(P2010−95020)の分割
【原出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】