説明

偏光板及び液晶表示装置

【課題】耐久性に優れた偏光板及び液晶表示装置の提供。
【解決手段】粘着剤層を有する偏光板であって、上下左右の少なくとも一つの端面の少なくとも一部を含む面内周辺部(P2)の粘着剤層の平均厚みが、面内中央部(P1)の粘着剤層の平均厚みよりも薄いことを特徴とする偏光板、及び該偏光板を有する液晶表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板及びそれを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に用いられる偏光板は、通常、粘着剤層を介して液晶セル等の他の部材に貼り合わせられる。また、偏光板は、液晶表示装置に用いられる前に、信頼性試験を受けるのが一般的である。この信頼性試験では、偏光板を、粘着剤層を介して液晶セルのガラス基板等に貼り合わせ、その状態で、高温度・高湿度の条件にある程度の時間放置する。かかる試験を行った後の偏光板の特性が低下し、それを利用した液晶表示装置の表示特性にも影響を与えることが問題となっている。例えば、特許文献1には、信頼性試験を施されると、偏光板の特性が低下することについて記載があり、ならびにその特性の低下を軽減するのに寄与する光学用粘着剤組成物、及び該組成物の層を有する偏光板が提案されている。
また、粘着剤層を有する光学フィルムであって、耐熱性及び耐湿性等の耐久性に優れる光学フィルムとして、応力緩和時間の異なる複数の粘着剤層を有し、最長の応力緩和時間を有する粘着剤層が最外かつ厚みが粘着剤層全厚の80%以下である光学フィルムが提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平9−137143号公報
【特許文献2】特開平9−189906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、耐久性に優れ、高温・高湿下に置かれた後(例えば信頼性試験を受けた後)も、特性の変動が少ない偏光板を提供することを課題とする。
また、本発明は、偏光板の特性の変動に起因して生じる光学特性の低下、例えば黒表示時の光漏れ、が少ない液晶表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者が鋭意検討した結果、偏光板を高温・高湿の雰囲気(例えば信頼性試験の条件下)にある程度の時間放置した後、室温に戻すと、その過程で、セル基板等との間にある偏光板の粘着剤層が、中央部に向かって応力を受けること、及びそのため粘着剤層の厚みが不均一となって、端面を含む周辺部の厚みが中央部と比較して厚くなってしまい、このことが液晶表示装置の表示特性に悪影響を与えているとの知見を得た。この知見に基づいてさらに検討を重ねた結果、粘着剤層の厚みについて、端面を含む周辺部を、中央部より薄くしておくことで、室温に戻る際の応力による粘着剤層の厚みの不均一性を軽減し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
即ち、前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 粘着剤層を有する偏光板であって、上下左右の少なくとも一つの端面の少なくとも一部を含む面内周辺部の粘着剤層の平均厚みが、面内中央部の粘着剤層の平均厚みよりも薄いことを特徴とする偏光板。
[2] 面内左右及び/又は面内上下の各端面をそれぞれ含む周辺部の粘着剤層の平均厚みが、面内中央部の粘着剤層の平均厚みよりも薄いことを特徴とする[1]の偏光板。
[3] 面内左右及び/又は面内上下の各端面を含み、各端面から該端面に垂直な各辺長の2〜8%の範囲の粘着剤層の平均厚みが、面内中央部の粘着剤層の平均厚みよりも薄いことを特徴とする[1]又は[2]の偏光板。
[4] 前記偏光子が、面内左右方向又は面内上下方向と平行な延伸方向を有し、前記面内中央部の粘着剤層よりも平均厚みが薄い前記面内周辺部の粘着剤層が、該延伸方向に垂直な端面を含んでいることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかの偏光板。
[5] 前記面内周辺部の粘着剤層の平均厚みが、前記面内中央部の粘着剤層の平均厚みの60〜80%であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの偏光板。
[6] 粘着剤層を有する偏光板であって、上下左右の各端面から該端面に垂直な各辺長の2〜8%の範囲の面内周辺部の粘着剤層の平均厚みが、面内中央部の粘着剤層の平均厚みの60〜80%であることを特徴とする偏光板。
[7] 前記粘着剤層が、応力緩和型粘着剤を含有することを特徴とする[1]〜[6]のいずれかの偏光板。
[8] 前記粘着剤層の光弾性係数が、−400〜+800(×10-12Pa-1)であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかの偏光板。
[9] [1]〜[8]のいずれかの偏光板を少なくとも有する画像表示装置。
[10] 透過軸を互いに直交して配置された一対の偏光板と、該一対の偏光板の間に配置された液晶セルとを有し、前記一対の偏光板のうち少なくとも一方が、[1]〜[8]のいずれかの偏光板であることを特徴する液晶表示装置。
[11] 前記液晶セルの表示モードが、IPS(In−Plane Switching)モード、又はVA(Vertically Aligned)モードであることを特徴とする[10]の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、耐久性に優れ、高温・高湿の雰囲気に置かれた後(例えば信頼性試験を受けた後)も、特性の変動が少ない偏光板を提供することができる。
また、本発明によれば、偏光板の特性の変動に起因して生じる光学特性の低下、例えば黒表示時の光漏れ、が少ない液晶表示装置を提供することができる。
【発明の実施の形態】
【0006】
以下、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0007】
本発明は、粘着剤層を有する偏光板であって、上下左右の少なくとも一つの端面の少なくとも一部を含む面内周辺部の粘着剤層の平均厚みが、面内中央部の粘着剤層の平均厚みよりも薄いことを特徴とする偏光板に関する。本発明では、周辺部の粘着剤層の厚みを、中央部の粘着剤層の厚みより薄くしておくことで、高温・高湿の雰囲気(例えば信頼性試験の条件下)にある程度の時間放置した後、室温に戻る過程で、粘着剤層の厚みが不均一化するのを軽減している。その結果、本発明の偏光板は、高温・高湿の雰囲気に置かれても、それによる特性の変動が生じ難く、さらに本発明の偏光板を有する液晶表示装置も、高温・高湿の雰囲気に置かれても、表示特性の低下(例えば、黒表示時の光漏れ)が生じ難い。
【0008】
図1に本発明の偏光板の一例の上面模式図を示す。図1の偏光板は、L−Rの方向を画面の水平方向(L:左側、R:右側)にして、T−Bの方向を画面上下方向(T:上側、B:下側)にして、液晶表示装置内に組み込まれる。図2に、図1の偏光板の破線(L−R)の断面模式図を示す。図2に示すとおり、偏光板は、延伸されたポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光子10と、その表面を保護する保護膜12A及び12Bを有し、さらに保護膜12Bの外側に粘着剤層14を有する。粘着剤層14は左右周辺部P2の厚みが、中央部P1の厚みよりも薄くなっていて、そのことによって、高温・高湿下(例えば信頼性試験の条件)にある程度の時間放置された後、室温に戻されても、その過程で、粘着剤層14の厚みが不均一化するのを軽減している。
【0009】
中央部と厚みが異なる周辺部の位置、数、及び形状については、図1の例に限定されるものではなく、本発明の効果が得られる限り、特に制限はない。前記周辺部は、左右上下の端面(図1中、上端面はTp、下端面はBp、左端面はLp及び右端面はRpである)のうち少なくとも一つの端面を含んでいる領域であればよい。図1では、中央部より厚みが薄い周辺部を、左右の各端面を含む領域P2とした例を示したが、例えば、図3に示す通り、上下の各端面を含む領域P2’であってもよいし、また、図4に示す通り、上下左右の各端面を含む全て含む領域P2”であってもよい。また、中央部より厚みが薄い前記周辺部は、左右上下の各端面の全てを含んだ領域である必要はなく、少なくとも一つの端面の少なくとも一部を含んでいればよい。例えば、図5に示す通り、上下左右の全ての端面の一部を含んだ領域P’’’であってもよい。偏光板に含まれる偏光子(図2では10)が、延伸フィルムである態様では、粘着剤層は、延伸方向と平行な方向に特に前記応力を受けるので、偏光子の延伸方向が左右方向である場合は、前記周辺部を、左右の各端面(即ち延伸方向と垂直な方向の端面)を含む領域(図1のP2や図4のP”など)とするのが好ましい。一方、延伸方向が上下方向である場合は、前記周辺部を、上下の各端面(即ち延伸方向と垂直な方向の端面)を含む領域(図3のP2’や図4のP”など)とするのが好ましい。
【0010】
粘着剤層の厚みが薄くなっている領域の形状についても、上記した通り、特に制限はない。形成し易い等の観点では、図に示した領域P2、P2’及びP2”のように、左右上下の各端面を含む矩形状の領域とするのが好ましい。本発明者が、環境湿度や環境温度の変化によって生じる粘着剤層の変形が起こり易く、且つ粘着剤層に厚みの違いを形成しても表示特性に影響を与えない範囲を検討した結果、端面から、該端面に垂直な方向の辺長の2〜8%程度(特に好ましくは3〜5%程度)の範囲の粘着剤層を、中央部よりも薄くすることにより、表示特性に影響を与えることなく、本発明の効果が得られることを見出した。より具体的には、図1の偏光板では、粘着剤層の左右の端面を含む矩形状の領域P2の厚みを薄くしているので、その幅LP2を、左右端面に垂直な辺長LHの2〜8%程度とするのが好ましく、及び図3の偏光板では、粘着剤層の上下の端面を含む矩形状の領域P2’の厚みを薄くしているので、その幅LP2'は、LVの2〜8%程度とするのが好ましい。
【0011】
また、本発明において、粘着剤層に形成された厚みの差(図1ではP1とP2の厚み差)は、本発明の効果が得られる限り、特に制限されるものではない。一般的には、粘着剤層の厚み差が、偏光板の特性や、液晶表示装置の表示特性に影響を与えないためには、粘着剤層の面内全体の厚み差の最大値Δdmaxは、粘着剤層の最大厚みdmaxの40%以下であるのが好ましく、35%以下であるのがより好ましく、32.5%以下であるのがさらに好ましい。一方、本発明の効果を確実に得るためには、Δdmaxは、dmaxの20%以上であるのが好ましく、25%以上であるのが好ましく、27.5%以上であるのがさらに好ましい。より具体的には、例えば、各図中の領域P2、P2’、P2”及びP2’’’が、その領域内ではそれぞれ厚みが一様であって、及び領域P1、P1’、P1”及びP1’’’も、その領域内ではそれぞれ厚みが一様である場合は、領域P2、P2’、P2”及びP2’’’の厚みはそれぞれ、領域P1、P1’、P1”及びP1’’’の厚みの60〜80%であるのが好ましく、65〜75%であるのがより好ましく、67.5〜72.5%であるのがさらに好ましい。
【0012】
本発明において粘着剤層の中央部より厚みが薄い周辺部は、厚みが一様ではなく、傾斜していてもよい。例えば、前記周辺部のより中央部に近い程厚くし、より端面に近い程薄くしてもよい。粘着層の中央部に対して左右端面を含む領域P2の厚みを薄くした図1の偏光板についてより具体的に示せば、図6(a)に示す通り、領域P2の厚みが傾斜して、中央部から端面へと厚みが連続して減少している粘着剤層14’であってもよいし、また、図6(b)に示す通り、不連続に減少している粘着剤層14”であってもよい。その場合は、周辺部の平均厚みが、中央部の厚みの60〜80%程度とするのが好ましい。なお、粘着剤層の中央部の厚みの変動は、表示特性に大きく影響を与えるので、周辺部以外の中央部の厚みは、一様であるのが好ましい。
【0013】
本発明において、粘着剤層の材料については特に制限はない。種々の粘着剤、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、及びセルロース系粘着剤などがを用いることができる。中でも、アクリル系粘着剤が、透明性や耐候性や耐熱性などに優れているので好ましい。使用可能なアクリル系粘着剤の例には、特開平9−189906号公報の[0026]〜[0041]に記載の例;特開平9−137143号公報の[0006]〜[0010]に記載の例;及び特開平9−188863号公報の[0008]〜[0020]の記載の例;が含まれる。また、応力緩和型の粘着剤を含有する粘着剤層は軟らかく、高温・高湿条件下にある程度の時間放置された後、室温状態に戻る際にかかる応力によって変形し易いので、本発明が有効である。応力緩和型の粘着剤の例には、特開2004−263165号公報の[0026]〜[0050]に記載の例;及び特開2005−42061号公報の[0029]〜[0065]の記載の例;等が含まれる。
【0014】
粘着剤層の周辺部を中央部と比較して薄くするために、種々の方法を利用することができる。例えば、一様の厚さの粘着剤層を形成した後、端部から所定の範囲の周辺部をプレス加工、重合性粘着剤との組合せにより紫外線や電子線などの放射線照射等で処理して、該周辺部の厚みを、中心部と比較して薄くすることができる。また、粘着剤層を塗布により形成する場合は、周辺部の塗布量を中央部と比較して少なくすることで、周辺部の厚みを薄くすることができる。塗布量を領域ごとに変えるために、塗布工程を複数回行ってもよい。なお、粘着剤層は、偏光板の他の部材、例えば保護膜等の表面に、直接形成してもよいし、また一旦セパレートフィルム等の上に形成した後、それを偏光板の他の部材、例えば保護膜等の表面に、転写してもよい。
【0015】
また、本発明では、粘着剤層の光弾性係数は、−400〜+800(×10-12Pa-1)であるのが好ましく、−200〜+600(×10-12Pa-1)であるのがより好ましい。光弾性係数とは、応力(σ)をかけたときに発生する複屈折(Δn)として定義され、下記式
光弾性係数(C)=Δn/σ 式(1−1)
厚み方向の光弾性係数(Cth)=Δnth/σ 式(1−2)
で定義される。本明細書では、「光弾性係数」は、上記式(1−2)のCthが、該当する。粘着剤層の光弾性係数が、前記範囲未満であったり、前記範囲を超える場合には、高温・高湿の雰囲気に置かれた後の光漏れが顕著になる(悪化する)。
粘着剤層の光弾性係数を調整する方法としては、単独で正の固有複屈折を有する化合物を少なくとも一種含有する粘着剤と、単独で負の固有複屈折を有する化合物を少なくとも一種含有する粘着剤との混合物を用いる方法がある。各化合物の種類を選択することによって、及びその混合比率や混合物の使用量等を調整することによって、光弾性係数を所望の範囲とすることができる。また、単独で正の固有複屈折を持つモノマーと、単独で負の固有複屈折を持つモノマーとの共重合体を、粘着剤として用いて、粘着剤層の光弾性係数を所望の範囲に調整することもできる。モノマーの種類を選択することによって、及び共重合比率や共重合体の使用量を調整することによって、光弾性係数を所望の範囲とすることができる。
なお、光弾性係数は、25℃60%の環境において日本分光製エリプソメーターM−220を用い、2cm角のサンプルに0〜10Nの範囲で引っ張り力をかけつつ、波長630nmで測定する。サンプルが変形により荷重面積が変化した場合には面積の補正を行って正確な応力を算出することにより求めることができる。
厚み方向の光弾性係数(Cth)は、粘着剤が1軸または2軸の屈折率楕円で表現できると仮定し、引っ張り力をかけた時の粘着剤層について、0度方向(層面に対して法線方向)と±40度(該法線方向から層面方向に±40度)傾斜方向でレタデーションを測定した値に基づき、下記の式(2)、(3)及び前記式(1−2)により算出することができる。より具体的には、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には層面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレタデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、式(1−2)、(2)及び(3)よりCthを算出することができる。
【0016】
【数1】

上記式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレタデーション値である。nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは層厚みである。
【0017】
前記粘着剤層は、偏光板を液晶表示装置等の他の部材に貼り合わせるのに利用されるため、最外層として形成するのが好ましいが、保管・搬送の際には、粘着剤層を保護するために、セパレートフィルムを粘着剤層の表面に配置するのが好ましい。
【0018】
本発明の偏光板は、上記要件を満足する粘着剤層を有する限り、他の構成部材及びその材料については、特に制限はない。図2に示したとおり、偏光板は、一般的に、偏光子と該偏光子を保護する保護膜をその表面に有する。以下、これらの部材について説明する。
偏光子:
用いる偏光子の種類について特に制限はない。例えば、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、二色性を有するヨウ素又は二色性染料で染色し、延伸して配向させた後に架橋、乾燥させて製造した直線偏光膜などを用いることができる。偏光子として、光透過率や偏光度に優れるものを用いるのが好ましい。光透過率は30%〜50%が好ましく、35%〜50%がさらに好ましく、40%〜50%であることがよりさらに好ましい。偏光度は90%以上であることが好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、99%以上であることがよりさらに好ましい。30%未満の過率、及び/又は90%未満の偏光度の偏光子を用いると、画像表示装置の輝度やコントラストが低く、表示品位が低下する。偏光子の厚みは1〜50μmが好ましく、1〜30μmがさらに好ましく、8〜25μmであることがよりさらに好ましい。
【0019】
保護膜:
保護膜を形成する材料としては、光学性能透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるポリマーが好ましい。例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマーも例として挙げられる。また本発明に用いられる保護膜は、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。また、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を好ましく用いることができる。熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン、積水化学工業(株)製のエスシーナ等が挙げられる。
また、保護膜を形成する材料として、偏光子との貼合性に優れ、従来から偏光板の透明保護膜として用いられてきた、トリアセチルセルロースに代表されるセルロースアシレート等のセルロース系ポリマーを好ましく用いることもできる。
【0020】
その他の機能層:
本発明の偏光板は、その他の機能層、例えば、光拡散層、反射防止層、輝度向上層、
光学補償層、静電防止層等を有していてもよい。
これらの層は、前記粘着剤層の反対側、表示面側偏光板では、より表示面側に、バックライト側偏光板では、よりバックライト側に配置される。
【0021】
本発明の偏光板は、種々のモード、例えば、IPS(In-Plane Switching)、VA(Vertical Aligned)、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensated Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti-ferroelectric Liquid Crystal)、及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)等の液晶表示装置に用いることができる。中でも、一対の偏光板を、それぞれの透過軸を左右方向と上下方向に一致させて90度で交差させて配置する表示モード(例えば、VA及びIPSモード)では、偏光子として延伸フィルムを用いた場合、その延伸方向が左右方向又は上下方向となるので、図1、図3及び図4にそれぞれ示した態様が、特に有効である。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を下記の実施例及び比較例に基づいて具体的に説明する。しかし、これらの例は本発明を例示するためのものであって、本発明がこれに限られるわけではない。また、特に断らない限り、含量は質量部又は質量%で表記する。
【0023】
<粘着剤Aの調製>
冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル90部、アクリル酸メチル30部、アクリル酸3部、2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル0.3部を酢酸エチルと共に加えて固形分濃度35%とし、窒素ガス気流下、60℃で5時間反応させ、アクリル系重合体溶液を得た。
上記で得られたアクリル系重合体溶液の固形分100部あたり5部のトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製、コロネートL)を加えて、粘着剤Aを調製した。
【0024】
<偏光子の作製>
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、沃化カリウム2質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液に浸漬し、50℃で4倍に延伸し、偏光子を作製した。
【0025】
<位相差フィルム>
位相差フィルムとして、市販のWVフィルム(富士フイルム(株)製)、WVBZ438フィルム(富士フイルム(株)製)、又はZ−TACフィルム(富士フイルム(株)製)を使用した。
【0026】
<保護フィルム>
偏光子の保護フィルムとして、市販のTACフィルム、TD80(富士フイルム(株)製)、又はTF80(富士フイルム(株)製)を使用した。
【0027】
[実施例1:VAモードLCD]
<偏光板の作製>
フロント偏光板−1
TD80を、濃度1.5モル/Lで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、濃度0.005モル/Lで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
TF80についても同様の処理を行った。
【0028】
以上のように鹸化処理を行ったTACフィルムを、偏光子を挟んでポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合せた。
次に、粘着剤Aをシリコーン系剥離剤で表面処理したセパレートフィルムにダイコーターを用いて塗布した後、150℃で3分間加熱して、乾燥後の厚さが25μmの粘着剤層Aを形成した。
最後に、この粘着剤層Aを、TD80/偏光子/TF80/上記粘着剤層Aの順になるよう貼合した後、25℃、60%RHで7日間熟成させ、フロント偏光板−1を作製した。
【0029】
リア偏光板−1
TF80をWVBZ438に変更したこと以外は、フロント偏光板−1と同様にしてリア偏光板−1を作製した。
【0030】
フロント偏光板−2〜6
上記で作製した均一な厚さ25μmの粘着剤層Aを、評価TVの画面サイズに裁断した時に、偏光板の各辺長に対して、表1に記載の範囲を加圧プレス機でプレス加工し、20μmの厚さにした以外は、フロント偏光板−1と同様にしてフロント偏光板−2〜6を作製した。即ち、プレス加工によって図4に示す領域P2”を形成した。
【0031】
リア偏光板−2〜6
上記で作製した均一な厚さ25μmの粘着剤層Aを、評価TVの画面サイズに裁断した時に、偏光板の各辺長に対して、表1に記載の範囲を加圧プレス機でプレス加工し、20μmの厚さにした以外は、リア偏光板−1と同様にしてリア偏光板−2〜6を作製した。即ち、プレス加工によって図4に示す領域P2”を形成した。
【0032】
フロント偏光板−7〜9
上記で作製した均一な厚さ25μmの粘着剤層Aを、評価TVの画面サイズに裁断した時に、偏光板の光学フィルムの各辺長に対して、表1に記載の範囲を加圧プレス機でプレス加工し、表1に記載の厚さにした以外は、フロント偏光板−1と同様にしてフロント偏光板−7〜9を作製した。即ち、プレス加工によって図4に示す領域P2”を形成した。
【0033】
リア偏光板−7〜9
上記で作製した均一な厚さ25μmの粘着剤層Aを、評価TVの画面サイズに裁断した時に、偏光板の各辺長に対して、表1に記載の範囲を加圧プレス機でプレス加工し、表1に記載の厚さにした以外は、リア偏光板−1と同様にしてリア偏光板−7〜9を作製した。即ち、プレス加工によって図4に示す領域P2”を形成した。
【0034】
<評価用液晶TV>
市販のVAモード液晶TVの偏光板を剥離し評価用TVとした。
具体的には、作製した偏光板をそれぞれの画面サイズにカットし、図7(b)に示す通り、フロント偏光板の透過軸が0°、リア偏光板の透過軸が90°とし、透過軸を直交させてパネルの両面に、粘着剤層Aを介して貼り合わせた。なお、図7中、矢印は偏光板の透過軸方向を示し、実線はフロント偏光板の透過軸方向、点線はリア偏光板の透過軸方向を示す。
【0035】
<光漏れの評価>
温度50℃、0.5MPaの圧力で30分間オートクレーブ処理を行った。その後、温度80℃dry雰囲気、及び60℃90%RHの雰囲気にて、それぞれ500時間保存した後、25℃、55%RHで1時間保存して評価用サンプルを得た。
【0036】
<評価基準>
各サンプルの偏光板周辺部の光漏れの有無を、目視にて観察評価した。結果を下記表1に示す。
5:光漏れの発生が認められなかった。
4:光漏れの発生がわずかに認められるが実用上問題がない程度であった。
3:光漏れの発生が弱く認められるが実用上問題のない程度であった。
2:光漏れの発生が強く認められるが実用上問題のない程度であった。
1:実用上問題のあるレベルで光漏れの発生が認められた。
【0037】
<光漏れ評価結果>
【表1】

【0038】
上記結果から、周辺部の粘着剤層厚を中央部より薄層化することにより、光漏れが格段に軽減できたことが理解できる。特に、本実施例では、薄層化した領域が、左右上下の各端面から、各辺長の2〜8%の範囲であるか、及び/又は薄層化された周辺部の厚みが中央部の厚みの60〜80%である、試料No.3〜8が、特に効果が大きいことが理解できる。
なお、プレス部の幅を広げていくと、端面から辺長10%程度の範囲のところで、光漏れが顕著になった。ただし、厚み差を減少したり、粘着剤等の成分が代わること等で、光漏れが顕著になる境界線は若干変動するものと思われる。
【0039】
[実施例2:IPSモードLCD]
フロント偏光板
TF80に代えて、Z−TACフィルムを使用したこと以外は実施例1と同様にして偏光板を得た。
【0040】
リア偏光板
WVBZ438に代えてZ−TACフィルムを使用したこと以外は実施例1と同様にして偏光板を得た。
【0041】
市販のIPSモード液晶TVを準備し、偏光板を剥離し評価用TVとした。
具体的には、作製した偏光板をそれぞれの画面サイズにカットし、偏光板の透過軸が図7(b)に示す通り、フロント偏光板の透過軸が0°、リア偏光板の透過軸が90°とし、透過軸を直交させてパネルの両面に、粘着剤層Aを介して貼り合わせた。
実施例1と同様にして、粘着剤層のプレス範囲、中央部に対する厚みを比較評価した結果、表1と同様の結果を得た。
【0042】
[実施例3:TNモードLCD]
フロント偏光板
TF80に代えてWVフィルムを使用したこと以外は実施例1と同様にして偏光板を得た。
【0043】
リア偏光板
WVBZ438に代えてWVフィルムを使用したこと以外は実施例1と同様にして偏光板を得た。
【0044】
市販のTNモード液晶TVを準備し、偏光板を剥離し評価用TVとした。
具体的には、作製した偏光板をそれぞれの画面サイズにカットし、偏光板の透過軸が図7(a)に示す通り、フロント偏光板の透過軸が45°、リア偏光板の透過軸が135°とし、透過軸を直交させてパネルの両面に、粘着剤層Aを介して貼り合わせた。
実施例1と同様にして、粘着剤層のプレス範囲、中央部に対する厚みを比較評価した結果、表1と同様の結果を得た。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の偏光板の一例の上面模式図である。
【図2】本発明の偏光板の一例の断面模式図である。
【図3】本発明の偏光板の他の例の上面模式図である。
【図4】本発明の偏光板の他の例の上面模式図である。
【図5】本発明の偏光板の他の例の上面模式図である。
【図6】本発明の偏光板の他の例の断面模式図である。
【図7】実施例で作製した評価用TVにおける偏光板の透過軸の方向を示した模式図である。
【符号の説明】
【0046】
10 偏光子
12A、12B 保護膜
14 粘着剤層
P1、P1’、P1”、P1’’’ 中央部
P2、P2’、P2”、P2’’’ 周辺部
Tp 上端面
Bp 下端面
Lp 左端面
Rp 右端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層を有する偏光板であって、上下左右の少なくとも一つの端面の少なくとも一部を含む面内周辺部の粘着剤層の平均厚みが、面内中央部の粘着剤層の平均厚みよりも薄いことを特徴とする偏光板。
【請求項2】
面内左右及び/又は面内上下の各端面をそれぞれ含む周辺部の粘着剤層の平均厚みが、面内中央部の粘着剤層の平均厚みよりも薄いことを特徴とする請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
面内左右及び/又は面内上下の各端面を含み、各端面から該端面に垂直な各辺長の2〜8%の範囲の粘着剤層の平均厚みが、面内中央部の粘着剤層の平均厚みよりも薄いことを特徴とする請求項1又は2に記載の偏光板。
【請求項4】
前記偏光子が、面内左右方向又は面内上下方向と平行な延伸方向を有し、前記面内中央部の粘着剤層よりも平均厚みが薄い前記面内周辺部の粘着剤層が、該延伸方向に垂直な端面を含んでいることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項5】
前記面内周辺部の粘着剤層の平均厚みが、前記面内中央部の粘着剤層の平均厚みの60〜80%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項6】
粘着剤層を有する偏光板であって、上下左右の各端面から該端面に垂直な各辺長の2〜8%の範囲の面内周辺部の粘着剤層の平均厚みが、面内中央部の粘着剤層の平均厚みの60〜80%であることを特徴とする偏光板。
【請求項7】
前記粘着剤層が、応力緩和型粘着剤を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項8】
前記粘着剤層の光弾性係数が、−400〜+800(×10-12Pa-1)であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の偏光板を少なくとも有する画像表示装置。
【請求項10】
透過軸を互いに直交して配置された一対の偏光板と、該一対の偏光板の間に配置された液晶セルとを有し、前記一対の偏光板のうち少なくとも一方が、請求項1〜8のいずれか1項に記載の偏光板であることを特徴する液晶表示装置。
【請求項11】
前記液晶セルの表示モードが、IPS(In−Plane Switching)モード、又はVA(Vertically Aligned)モードであることを特徴とする請求項10に記載の液晶表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−86003(P2009−86003A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251970(P2007−251970)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】