説明

偏光板形成用光硬化性接着剤及び偏光板

【課題】ポリビニルアルコール系偏光子と種々の保護フィルムとを同一の光硬化型接着剤で簡便かつ強固に接着でき、有機溶剤を実質的に含まず、低粘度で薄膜塗工性に優れる光硬化型接着剤、及びそれを用いて、従来の偏光板に比して打抜き加工性及び湿熱耐久性に優れた偏光板を提供する。
【解決手段】偏光板形成用光硬化性接着剤が、カチオン重合性成分及び光重合開始剤を含有し、前記カチオン重合性成分100重量%中に、オキセタン化合物(A)を40〜90重量%、芳香環および2個以上のエポキシ基を有し、エポキシ当量が100〜1000(g/eq)のエポキシ化合物(B)を10〜60重量%含み、実質的に有機溶剤を含有せず、粘度が1〜150mPa・sである、偏光板形成用光硬化性接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等に用いられる偏光板及び該偏光板形成用の光硬化性接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
時計、携帯電話、個人用の携帯情報端末(PDA)、ノートパソコン、パソコン用モニタ、DVDプレーヤー、TVなどでは液晶表示装置が急激に市場展開している。液晶表示装置は、液晶のスイッチングによる偏光状態を可視化させたものであり、その表示原理から、偏光板が用いられる。特に、TV等の用途では、ますます高輝度、高コントラスト、広い視野角が求められ、偏光板においてもますます高透過率、高偏光度、高い色再現性などが求められている。
【0003】
液晶表示関連分野などに用いられる偏光板は、ポリビニルアルコール(PVA)系偏光フィルムの両面にトリアセチルセルロース(TAC)系フィルムを水系接着剤で貼り合せるか、又はポリビニルアルコール(PVA)系偏光フィルムの片面に保護フィルムもしくは光学補償フィルムとしてシクロオレフィン系樹脂等を、もう片面にTAC系フィルムを水系接着剤で貼り合せて製造されるのが一般的である。
【0004】
TAC系フィルムは、透湿度が高いことから、水系接着剤を使用し、水分を揮発させることなくそのままPVA系偏光子フィルムに重ねた状態で、水を乾燥させつつ、接着できる。
【0005】
保護フィルムとしてはTAC系フィルムの代わりに、低コストであったり、透明性などの光学特性に優れたりするポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、非結晶性ポリオレフィン系樹脂やシクロオレフィン系樹脂などが提案されている(特許文献1,2,3)。これらの保護フィルムは、TACよりも疎水性であることや、透湿度が低いため、PVA系偏光子フィルムに重ねる前に水を十分乾燥する必要があるが、水が残り易く、水が残ると、接着強度不足や外観不良などの問題があった。
【0006】
そこで、ポリビニルアルコール(PVA)系偏光フィルムと疎水性保護フィルムとを貼り合わせるために、水系接着剤の代わりに紫外線硬化型接着剤を使用することが提案されている。
【0007】
ところで、液晶表示装置用の偏光板は粘着剤層を介して液晶セルに貼られる。このとき異物混入等の貼り合せミスが合った場合、偏光板を剥離し液晶セルを再利用する。PVA系偏光子と保護フィルムの接着力が十分でないと、偏光板の剥離時にPVA系偏光子と保護フィルムの間で剥離し、液晶セルに保護フィルムが残ってしまい液晶セルの再利用ができなくなる。そのため、PVA系偏光子と保護フィルムの間の接着力は、偏光板と液晶セルを貼り合わせるための粘着剤の粘着力より高いことが求められ、さらにはPVA系偏光子と保護フィルムが剥離不可になることがより好ましい。
【0008】
また、液晶表示装置は高温下や高湿度下などの様々な環境で使用されるため、偏光板にも非常に厳しい湿熱耐性が求められる。PVA系偏光子と保護フィルムの接着力が十分でない場合、高温高湿度下に長時間曝される(湿熱暴露)とPVA系偏光子の寸法変化により、PVA系偏光子と保護フィルムの間で剥離が発生する。
【0009】
特開2004−245925(特許文献4)には、芳香環を含まないエポキシ樹脂として水素化(水添ともいう)ビスフェノール型エポキシ樹脂を主成分とする接着剤が開示されており、加熱または活性エネルギー線の照射によるカチオン重合による接着法が提案されている。
しかし、特許文献4記載の接着剤は極めて高粘度であり、塗工性に難がある。
さらに、特許文献4記載の接着剤のように水素化ビスフェノール型エポキシ化合物を主成分とすると、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂等の保護フィルムを用いた場合、これらの保護フィルムには全く接着しないという問題があった。
【0010】
ところで、PVA系偏光子と保護フィルムを貼り合わせる接着剤層の厚みは、光の透過率を上げるためや、コストを下げるためにできるだけ薄いことが求められる。具体的には接着剤層は、0.1〜6μmの厚みで平滑であることが求められる。
このような薄膜の接着剤層を工業的に設けるには、光学接着剤を塗工する際マイクログラビアコーターを用いることが好ましい。小径グラビアコーターは、より細かい凹版を用いることによって薄膜を形成できる。しかし、接着剤の粘度が高いと、可能な限り細かい凹版(例えば500線/インチ)を用いても、0.1〜6μmの厚みの接着剤層を形成できない。
従って、0.1〜6μmの厚みの接着剤層を形成するためには接着剤の粘度を1〜150mPa・sにする必要がある。
【0011】
特開2008−63397号公報(特許文献5)には、脂肪族エポキシ化合物を主成分とする比較的低粘度の接着剤が開示されており、加熱または活性エネルギー線の照射によるカチオン重合による接着法が提案されている。
特許文献5記載の接着剤を用いると、湿熱暴露しない状態ではPVA系偏光子とTAC系フィルム、PVA系偏光子とシクロオレフィン系フィルムとを十分な強度で接着できる。
しかし、特許文献5記載の接着剤を用いた場合、湿熱暴露するとPVA系偏光子といずれか一方の保護フィルムとの間、もしくはPVA系偏光子と両保護フィルムとの間で剥離が発生する。
さらに、特許文献5記載の接着剤のように脂肪族エポキシ化合物を主成分とすると、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂等の保護フィルムを用いた場合、これらの保護フィルムには全く接着しないという問題があった。
【0012】
特開2008−257199号公報(特許文献6)には、分子内に1個以上の脂環式エポキシ基を有する多官能のエポキシ樹脂と、分子内に脂環式エポキシ基を有さない多官能のエポキシ樹脂を含む接着剤が開示されている。
一般的に脂環式エポキシ樹脂は、光硬化性が良いが粘度が200mPa・s以上と高い。一方、脂環式エポキシ基を有しない多官能エポキシ樹脂は、光硬化性は低いが100mPa・s以下という低粘度のものがある。そのため薄膜塗工をするために接着剤粘度を下げようとすると、脂環式エポキシ基を有しない多官能エポキシ樹脂含有量を増やさざるを得ない。しかし、その結果、硬化性が低下し、密着性不良や湿熱暴露するとPVA系偏光子と保護フィルムの間で剥離が発生する。
一方、硬化性を維持しようとすると、脂環式エポキシ樹脂を増やさざるを得ず、接着剤粘度が上がり、その結果薄膜塗工ができなくなる。
さらには、脂環式エポキシ樹脂を増やすと、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂等の保護フィルムを用いた場合、これらの保護フィルムには全く接着しないという問題があった。
【0013】
なお、接着剤の粘度を低下させるために、有機溶剤を用いて希釈するという方法がある。しかし、有機溶剤を用いると、塗工設備を防爆仕様にしたり、特別な溶剤回収装置を設置したりしなければならなくなる。
そこで、偏光板形成用の光硬化性接着剤には、実質的に有機溶剤を含有しない状態で低粘度であることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2001−324616号公報
【特許文献2】特開2009−300768号公報
【特許文献3】特開2007−140092号公報
【特許文献4】特開2004−245925号公報
【特許文献5】特開2008−63397号公報
【特許文献6】特開2008−257199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、ポリビニルアルコール系偏光子と、TAC系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、非結晶性ポリオレフィン系樹脂やシクロオレフィン系樹脂等、異なる種類の保護フィルムとを同一の光硬化型接着剤で簡便かつ強固に接着でき、有機溶剤を実質的に含まず、低粘度で薄膜塗工性に優れる光硬化型接着剤、及びそれを用いて、従来の偏光板に比して打抜き加工性及び湿熱耐久性に優れた偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す光硬化性接着性組成物により前記目標達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ポリビニルアルコール系偏光子と保護フィルムとを貼り合わせるための偏光板形成用光硬化性接着剤であって、
前記偏光板形成用光硬化性接着剤が、カチオン重合性成分及び光重合開始剤を含有し、
前記カチオン重合性成分100重量%中に、
オキセタン化合物(A)を40〜90重量%、
芳香環および2個以上のエポキシ基を有し、エポキシ当量が100〜1000(g/eq)のエポキシ化合物(B)を10〜60重量%含み、
実質的に有機溶剤を含有せず、粘度が1〜150mPa・sである、ことを特徴とする偏光板形成用光硬化性接着剤に関する。
【0017】
本発明の偏光板形成用光硬化性接着剤において、芳香環および2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)は、ビスフェノール型エポキシ化合物(B1)であることが好ましく、ビスフェノール型エポキシ化合物(B1)は、ビスフェノールF型エポキシ化合物(B2)であることがより好ましい。
【0018】
また、本発明の偏光板形成用光硬化性接着剤において、オキセタン化合物(A)は、2個以上のオキセタン環を有する化合物(A1)、及びオキセタン環1個と芳香環とを有するオキセタン化合物(A2)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0019】
また、本発明の偏光板形成用光硬化性接着剤は、カチオン重合性成分が、脂環式エポキシ化合物(C)をさらに含み、
オキセタン化合物(A):40〜89重量%、
芳香環および2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B):10〜59重量%、
脂環式エポキシ化合物(C):1〜50重量%である、ことが好ましく、
脂環式エポキシ化合物(C)は、2個以上の脂環式エポキシ基を有することがより好ましい。
【0020】
さらに、本発明は、ポリビニルアルコール系偏光子の両面が、偏光板形成用光硬化性接着剤を硬化してなる接着層を介して保護フィルムでそれぞれ被覆されてなる偏光板であって、前記偏光板形成用光硬化性接着剤の少なくとも一方が、前記いずれかに記載の本発明の偏光板形成用光硬化性接着剤である偏光板に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、ポリビニルアルコール系偏光子と保護フィルムとを簡便かつ強固に接着できる低粘度の活性エネルギー線硬化型接着性組成物、及びそれを用いて、従来の偏光板に比して打抜き加工性及び湿熱耐性に優れた偏光板を工業的に提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の偏光板の一例を示す断面図(イメージ)である。
【図2】本発明の偏光板の製造方法の一例を示すフロー図(イメージ)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の偏光板を構成する接着層について説明する。
接着層は、偏光板形成用光硬化性接着剤を硬化してなるものである。
偏光板形成用光硬化性接着剤は、カチオン重合性成分及び偏光板形成用光重合開始剤を含有し、実質的に有機溶剤を含有せず、粘度が1〜150mPa・sである。
カチオン重合性成分は、オキセタン化合物(A)と、芳香環および2個以上のエポキシ基を有し、エポキシ当量が100〜1000(g/eq)のエポキシ化合物(B)とを含み、
前記カチオン重合性成分100重量%中に、
前記オキセタン化合物(A)を40〜90重量%、
前記芳香環および2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)を10〜60重量%含むものであり、
前記オキセタン化合物(A)及び前記エポキシ化合物(B)以外のカチオン重合性成分を50重量%以下の範囲で含み得る。
【0024】
オキセタン化合物(A)は、分子内に4員環エーテル、すなわちオキセタン環を有する化合物である。オキセタン化合物(A)としては、粘度が300mPa・s以下のものが好ましく、1〜200mPa・sのものが好ましい。
本発明に用いるオキセタン化合物(A)としては、例えば、
3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテル、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタン、3−エチル−{(3−トリエトキシシリルプロポキシ)メチル}オキセタン、などが挙げられる。オキセタン化合物(A)は単独で用いてもよいし2種類以上を併用してもよい。
【0025】
オキセタン化合物(A)として、2個以上のオキセタン環を有するオキセタン化合物(A1)は、単官能のものに比してより密で、凝集力に富む接着剤層を形成できるので、接着力向上、打抜き加工性向上の点で好ましい。さらに、オキセタン化合物(A)として、2個以上のオキセタン環を有するオキセタン化合物(A1)は、単官能のものに比して光硬化時の湿度による反応阻害の影響が小さいため、より好ましい。
また、単官能ではあっても、芳香環を有するオキセタン化合物(A2)は、芳香環を有しないものに比して、接着力向上、打抜き加工性向上の点で好ましい。その理由は明確ではないが、芳香環を有するが故に、オキセタン化合物(A2)は、後述する芳香環を有するエポキシ化合物(B)との相溶性に富み、その結果、凝集力に富む接着剤層を形成できるようになると考察している。
オキセタン化合物(A)としては、2個以上のオキセタン環を有するオキセタン化合物(A1)、芳香環を有するオキセタン化合物(A2)をそれぞれ単独で用いてもよいし、併用してもよいが、併用することがより好ましい。併用する場合には、(A1)/(A2)=20〜80/80〜20(重量比)であることが好ましく、40/60〜60/40であることがより好ましい。
【0026】
オキセタン化合物(A)はオキセタン基以外の光硬化性官能基を有していてもよい。オキセタン基以外の光硬化性官能基としてはエポキシ基やビニル基などが挙げられる。
【0027】
芳香環を有するエポキシ化合物(B)について説明する。
芳香環および2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)としては、フェノール性またはアルコール性水酸基を有する芳香族化合物のグリシジルエーテルやカルボン酸を有する芳香族化合物のグリシジルエステルなどが挙げられる。
芳香環および2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)のエポキシ当量は、100〜1000(g/eq)であり、105〜500(g/eq)であることが好ましく、110〜300(g/eq)であることがより好ましい。
エポキシ当量が100(g/eq)より小さいと反応性が高すぎて接着剤の経時安定性に欠けてしまう。また、エポキシ当量が1000g/eqより大きいと反応性が劣るので、接着力が発現できない。
【0028】
具体的には芳香環を1個有するエポキシ化合物として、レゾルシノールやハイドロキノン、カテコール等の2個以上のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物のグリシジルエーテル、フェニルジメタノールやフェニルジエタノール、フェニルジブタノール等のアルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のグリシジルエーテル、フタル酸、トリメリット酸等の2個以上のカルボン酸を有する芳香族化合物のグリシジルエステル等がある。
【0029】
芳香環を2個以上有するエポキシ化合物としは、ビスフェノール型エポキシ化合物(B1)やビフェニル型フェノールのグリシジルエーテルやノボラック型エポキシ化合物等が挙げられ、ビスフェノール型エポキシ化合物(B1)が好ましい。
ビスフェノール型エポキシ化合物(B1)としては、式(1)〜(5)に示すようにビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールM、ビスフェノールP等のビスフェノール化合物のジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0030】
【化1】

【0031】
これらビスフェノール型エポキシ化合物(B1)の中でも、工業的に入手しやすい点からビスフェノールA型エポキシ化合物又はビスフェノールF型エポキシ化合物が好ましい。更に、加工性が良好であること及び粘度が低い点から、ビスフェノールF型エポキシ化合物(B2)がより好ましい。
【0032】
なお、芳香環および2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)の粘度は、200mPa・s以上のものが多く、ビスフェノール型エポキシ化合物(B1)の粘度は5000mPa・s以上のものが多く、固形のものが多い。
【0033】
本発明における光硬化性接着剤は、前記オキセタン化合物(A)及び前記エポキシ化合物(B)以外のカチオン重合性成分を50重量%以下の範囲で含み得る。
(A)及び(B)以外のカチオン重合性成分としては、脂環式エポキシ化合物(C)を含むことが好ましい。脂環式エポキシ化合物(C)とは脂環構造に直接エポキシ基が結合している脂環式エポキシ基を有する化合物である。脂環式エポキシ化合物(C)としては、粘度が150〜2000mPa・sのものが好ましく、170〜1000mPa・sのものが好ましい。このような脂環式エポキシ化合物(C)を用いることによって、芳香環および2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)に起因する接着剤の高粘度化を抑制し、薄膜塗工性を改良しつつ、光硬化性を維持するとともに、接着力や加工性を維持することができる。
【0034】
脂環式エポキシ化合物(C)としては、例えば、
1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、1,2:8,9ジエポキシリモネン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペートなどが挙げられる。
本発明における光硬化性接着剤は、これらの材料を適宜組み合わせて使うことができる。
脂環式エポキシ化合物(C)としては、2個以上の脂環式エポキシ基を有することが好ましい。2個以上の脂環式エポキシ基を有することで光硬化性が更に向上し、接着力が良好になる。
【0035】
本発明における光硬化性接着剤は、カチオン重合性成分100重量%中に、前記オキセタン化合物(A)を40〜90重量%、芳香環および2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)を10〜60重量%、脂環式エポキシ化合物(C)を0〜50重量%含み、(A):40〜89重量%、(B):10〜59重量%、(C):1〜50重量であることが好ましく、(A):40〜70重量%、(B):20〜50重量%、(C):10〜40重量%
であることがより好ましい。
【0036】
オキセタン化合物(A)が90重量%よりも多いと、接着力を確保できなくなってしまう。一方、オキセタン化合物(A)が40%より少ないと、光硬化性接着剤が高粘度となり、薄膜塗工性が確保できない。
【0037】
芳香環および2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)が10重量%より少ないと接着力が確保できなくなり、60重量%より多くなると接着剤が著しく高粘度となり、薄膜塗工性を確保できない。
【0038】
脂環式エポキシ化合物(C)が、50重量%より多いと接着剤が高粘度となり、薄膜塗工性を確保できなくなる場合や、接着力が確保できなくなる場合がある。
【0039】
本発明における光硬化性接着剤は、光カチオン重合開始剤(E)を含む。
光カチオン重合開始剤(E)としては、例えば、UVACURE1590(ダイセル・サイテック製)、CPI−110P(サンアプロ製)、などのスルホニウム塩やIRGACURE250(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、WPI−113(和光純薬製)、Rp−2074(ローディア・ジャパン製)等のヨードニウム塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
光カチオン重合開始剤(E)の配合割合は、カチオン重合性成分、即ち、脂環式エポキシ化合物(C)を用いない場合には、オキセタン化合物(A)と芳香環および2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)との合計100重量部に対して、脂環式エポキシ化合物(C)を用いる場合には、オキセタン化合物(A)と芳香環および2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)及び脂環式エポキシ化合物(C)の合計100重量部に対して、0.5〜20重量部であり、0.5〜10重量部であることが好ましい。
【0040】
更に、本発明においては上記光カチオン重合開始剤(E)の性能を向上させるために、光増感剤(F)を併用しても良い。光増感剤としては、アントラセン系やベンゾフェノン系、チオキサントン系やペリレン、フェノチアジン、ローズベンガル等が挙げられる。
【0041】
本発明における光硬化性接着剤は、更に酸化防止剤、光安定剤(G)を含んでも良い。
酸化防止剤、光安定剤(G)を含むことによって、光硬化後の接着剤層の経時での着色を抑制することができる。
酸化防止剤、光安定剤(G)としては、例えば、アデカスタブAO‐50、アデカスタブAO‐80(旭電化工業製)、などのフェノール系酸化防止剤や、IRGANOX‐PS‐800FD(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、などのイオウ系酸化防止剤、TINUBIN622LD、TINUBIN144、TINUBIN765等のヒンダードアミン系の光安定剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
酸化防止剤、光安定剤(G)の配合割合は、カチオン重合性成分100重量部に対して、0〜5重量部であり、0.01〜3重量部であることが好ましい。
【0042】
光硬化性接着剤は、上記カチオン重合性成分及び酸化防止剤、光安定剤、重合開始剤に加え、オキセタン基およびエポキシ基以外の脂環式エーテル構造やビニルエーテル等のカチオン重合性光硬化性化合物やアクリル系モノマーやアクリル系オリゴマー、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等のラジカル重合性光硬化性化合物、重合禁止剤、重合開始助剤、紫外線吸収剤、可塑剤、着色剤、消泡剤、可塑剤等の各種の公知の添加剤を、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲内で含むことができる。
【0043】
本発明における光硬化性接着剤は、実質的に有機溶剤を含まず粘度は1〜150mPa・sであることが重要であり、好ましくは10〜130mPa・sであり、20〜100mPa・sであることがより好ましい。粘度が150mPa・sより高いと保護フィルムに塗工した場合、0.1〜6μmの薄膜塗工ができず、透過率等の光学的特性が悪化してしまう。一方、粘度が1mPa・sより低いと接着剤層の膜厚制御が困難になる。
【0044】
なお、前記の光硬化性接着剤の粘度は、以下のようにして求められる値である。 光硬化性接着剤1.2mlを測定用試料とし、E型粘度計を用いて、回転速度100〜0.5rpm、25℃で測定した。
【0045】
本発明の光硬化性接着剤は、実質的に有機溶剤を含まない。有機溶剤を全く含まないほうが好ましいが、光重合開始剤はカチオン重合性成分に難溶性のことが多い。そのため光重合開始剤を溶解するため少量の有機溶剤は含んでもよい。光硬化性接着剤中の有機溶剤の含有量は5重量%以内である。
【0046】
光硬化性接着剤を硬化してなる接着層の厚みは0.1〜6μmが好ましく、0.5〜4μmがより好ましい。0.1μmよりも薄くなると接着力が低くなる。6μmよりも厚くなると光の透過率等の光学特性が悪化する。
【0047】
光硬化性接着剤の塗布方法としては、特に限定されないが、例えばダイコート法、ロールコート法、グラビアコート法、小径グラビアコート法、スピンコート法などが挙げられ、薄膜塗工の点からグラビアコート法が好ましい。更に、グラビアコート法の中でも小径グラビアコート法が好ましい。
【0048】
本発明の光硬化性接着剤は実質的に有機溶剤を含有していないため、塗工膜厚が硬化後の膜厚になる。
接着層の膜厚を制御する方法として、機械的方法としては、
・グラビア方式:使用する版のセル(凹部)容積を小さくする、
・ダイコート方式:塗工機のヘッド部(接着剤の塗出部)と基材フィルムのギャップを狭くする、
・スピンコート方式:回転数を上げる、
等の方法が挙げられるが、いずれの方式も塗工膜厚と接着剤粘度は密接な関係があり、0.1〜6μmのような薄膜を得るためには接着剤の粘度が150mPa・s以下である必要がある。接着剤の粘度が150mPa・sより高くなるとどのような機械的方法を施しても膜厚は6μmより厚くなる。
【0049】
[偏光子]
本発明の偏光板に用いられるポリビニルアルコール系偏光子について説明する。
偏光子を形成するポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体などが挙げられるが、耐水性の点から、エチレン・ビニルアルコール共重合体が好ましい。ポリビニルアルコールとしては、酢酸基が数十%残存している部分ケン化ポリビニルアルコールや、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールや、水酸基が変性された変性ポリビニルアルコールなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。ポリビニルアルコール系樹脂は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を併用することもできる。
【0050】
上記ポリビニルアルコールの具体例としては、(株)クラレ製のRSポリマーであるRS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)、同社製のクラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)、日本合成化学工業(株)製のゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1.400)などが挙げられる。ポリビニルアルコールは、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステルの重合体を、アルカリ触媒等を用いてケン化して得られる。
【0051】
上記エチレン・ビニルアルコール共重合体は、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものであり、酢酸基が数十モル%残存している部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないかまたは酢酸基が残存しない完全ケン化物まで含み、特に限定されない。
【0052】
偏光子は、上述のポリビニルアルコール系樹脂をキャスティング成形法等の方法によって、成形することにより得られる。前記偏光子は、ホウ酸等による架橋や、延伸をされたものであってもよい。偏光子の形状としては、特に限定されないが、例えば、フィルム等が挙げられる。なお、本明細書において、「フィルム」の語は、厚みが小さいもの(厚みが1mm未満のもの)の他、厚手のシート(例えば、厚みが1〜5mmのもの)も含むものとする。偏光子の厚さは、特に限定されないが、例えば、10〜40μm程度が好ましい。
【0053】
[保護フィルム]
本発明の偏光板に用いられる保護フィルムについて説明する。
保護フィルムは特に限定されず、具体的には、現在偏光板の保護フィルムとして最も広く用いられているトリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂フィルムや、トリアセチルセルロースよりも透湿度の低い透明樹脂フィルムを用いることができる。
トリアセチルセルロースよりも透湿度の低い保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、シクロオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0054】
シクロオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称である。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、及び、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびに、それらの水素化物等が挙げられ、ノルボルネン系樹脂が好ましい。ノルボルネン系樹脂フィルムは、特開2005−164632号公報、特開2006−201736号公報、特開2008−233279号公報等に記載された公知の方法により得ることができる。
【0055】
シクロオレフィン系樹脂としては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオノア」、JSR株式会社製の商品名「アートン」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学株式会社製の商品名「APEL」が挙げられる。
【0056】
アクリル系樹脂は、ポリメチルメタクリレートをはじめ、メチルメタクリレートやブチルメタクリレート等のアルキルエステル類の(メタ)アクリレートを主成分とする樹脂(=共重合体)である。場合によっては、他の樹脂とブレンドされて、フィルム化される。
アクリル系フィルムは、特開2002−361712号公報等に記載された公知の方法により得ることができる。
アクリル系フィルムは、種々の製品が市販されている。具体例としては、三菱レイヨン社製の商品名「アクリプレン」や、カネカ社製の商品名「サンデュレン」が挙げられる。
【0057】
本発明の偏光板に使用される保護フィルムは、(1)、(5)の両面とも同一組成であっても異なっていても良い。例えば、(1)にシクロオレフィン系樹脂フィルムを使用し、(5)に、アクリル系樹脂フィルムを使用しても何ら差し支えは無い。
【0058】
保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性等の点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。透明保護フィルムは、5〜150μmの場合に特に好適である。
なお、偏光子の両側に保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いてもよい。
【0059】
本発明の偏光板は、以下のようにして得ることができる。
(I)第1の保護フィルム(1)の一方の面に、光硬化性接着剤を塗工し、第1の硬化性接着剤層(2’)を形成し、
第2の保護フィルム(5)の一方の面に、光硬化性接着剤を塗工し、第2の硬化性接着剤層(4’)を形成し、
次いで、ポリビニルアルコール系偏光子(3)の各面に、第1の硬化性接着剤層(2’)及び第2の硬化性接着剤層(4’)を、同時に/または順番に重ね合わせた後、活性エネルギー線を照射し、第1の硬化性接着剤層(2’)及び第2の硬化性接着剤層(4’)を硬化することによって製造する方法。
(II)ポリビニルアルコール系偏光子(3)の一方の面に、光硬化性接着剤を塗工し、第1の硬化性接着剤層(2’)を形成し、形成された第1の硬化性接着剤層(2’)の表面を第1の保護フィルム(1)で覆い、次いでポリビニルアルコール系偏光子(3)の他方の面に、光硬化性接着剤を塗工し、第2の硬化性接着剤層(4’)を形成し、形成された第2の硬化性接着剤層(4’)の表面を第2の保護フィルム(2)で覆い、活性エネルギー線を照射し、第1の硬化性接着剤層(2’)及び第2の硬化性接着剤層(4’)を硬化することによって製造する方法。
(III)第1の保護フィルム(1)とポリビニルアルコール系偏光子(3)を重ねた端部および、ポリビニルアルコール系偏光子(3)の第1の保護フィルム(1)がない面に重ねた第2の保護フィルム(5)の端部に接着剤をたらした後、ロールの間を通過させ各層間に接着剤を広げる。次に活性エネルギー線を照射し、接着剤を硬化させることによって製造する方法。
【0060】
偏光板の製造方法(I)について、図2に基づいて、工程ごとに説明する。
[工程(a)]
工程(a)は、図2の(a)に示されるように、保護フィルム(1)及び(5)のそれぞれ片面に、接着剤層形成用の光硬化性接着剤を塗布し、必要に応じて乾燥等を行って、硬化性接着剤層(2’)、(4’)を具備する積層体(1’)、(5’)を得る工程である。
【0061】
[工程(b)]
工程(b)は、図2の(b)に示されるように、ポリビニルアルコール系偏光子(3)の一方の面(図では上面)に、保護フィルム(1)と硬化性接着剤層(2’)とを具備する積層体(1’)を、
ポリビニルアルコール系偏光子(3)の他方の面(図では下面)に、保護フィルム(5)と硬化性接着剤層(4’)とを具備する積層体(5’)を、それぞれ重ね合わせる工程である。
【0062】
[工程(c)]
工程(c)は、図2の(c)に示されるように、活性エネルギー線(6)を照射することにより、保護フィルム(1)、(5)とポリビニルアルコール系偏光子(3)とに挟まれた硬化性接着剤層(2’)、(4’)を硬化させ、接着剤層(2),(4)を形成させる工程である。
図では、保護フィルム(5)の側から活性エネルギー線(6)を照射する場合を示すが、保護フィルム(1)の側から活性エネルギー線(6)を照射してもよいし、両側から同時に、または順次活性エネルギー線(6)を照射してもよい。
活性エネルギー線の照射量は、特に限定されるものではないが、波長200〜450nm、照度1〜500mW/cm2の光を、照射量が10〜1000mJ/cm2となるように照射して露光することが好ましい。照射する活性エネルギー線の種類としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等を用いることができるが、特に紫外線が好ましい。光の照射装置としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプ等を用いることが好ましい。
活性エネルギー線(6)照射後、室温で1週間程度エージングすることもできる。
工程(c)を経ることにより、硬化性接着剤層(2’)、(4’)を硬化させて接着剤層(2),(4)とし、偏光子(3)と保護フィルム(1)及び(5)とが接着剤層(2),(4)を介して接着されてなる偏光板が完成する(図1、図2中の(d)参照)。
【実施例】
【0063】
[ポリビニルアルコール系偏光子]の製造例
ホウ酸20重量部、ヨウ素0.2重量部、ヨウ化カリウム0.5重量部を水480重量部に溶解させて染色液を調整した。この染色液にPVAフィルム(ビニロンフィルム#40、アイセロ社製)を、30秒浸漬した後、フィルムを一方向に2倍に延伸し、乾燥させて、膜厚30μmのPVA偏光子を得た。
【0064】
[実施例1]
表1に示す組成にて光硬化性接着剤を得、後述する方法に従い、粘度、及び薄膜塗工性を評価した。
保護フィルム(1)として、三菱レイヨン(株)製の紫外線吸収剤を含有するアクリルフィルム:HBD−002(50μm)を用い、保護フィルム(5)として、富士フィルム(株)製の紫外線吸収剤を含有しないトリアセチルセルロース系フィルム:商品名「フジタック」:80μm」を使用し、それぞれその表面に60W・min/mの放電量でコロナ処理を行い、表面処理後1時間以内に、表1に示す光硬化性接着剤を、ワイヤーバーコーターを用いて塗工し、硬化性接着剤層(2’)、(4’)を形成し、前記硬化性接着剤層(2’)と(4’)との間に上記のPVA偏光子を挟み、保護フィルム(1)/硬化性接着剤層(2’)/PVA系偏光子/硬化性接着剤層(4’)/保護フィルム(5)からなる積層体を得た。
保護フィルム(1)がブリキ板に接するように、この積層体の四方をセロハンテープで固定し、ブリキ板に固定した。
UV照射装置(東芝社製 高圧水銀灯)で最大照度500mW/cm2、積算光量800mJ/cmの紫外線を保護フィルム(5)側から照射して、偏光板を作製した。
なお、各接着剤層の厚みが、3μmとなるように適宜バーコーターを選択した。
【0065】
[実施例2〜28、比較例1〜11]
保護フィルム(1)および接着剤組成を表1,2,3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製し、後述する方法に従って、その性能を評価した。
【0066】
<粘度>
各光硬化性接着剤1.2mlを測定用試料とし、E型粘度計を用いて、回転速度100〜0.5rpm、25℃で測定した。
【0067】
<薄膜塗工性>
光硬化性接着剤を小径グラビアコーター(版:550線/インチ、ピラミッド型彫刻版)を用いて50μmポリエステルフィルムに塗工した後、UV照射装置(東芝社製 高圧水銀灯)で最大照度500mW/cm2、積算光量800mJ/cmの紫外線を照射し接着剤を硬化させた。膜厚計を用いて接着剤層の膜厚を測定し以下に示す基準で評価した。
2μm未満:◎
2μm以上〜4μm未満:○
4μm以上〜6μm未満:△
6μm以上:×
【0068】
<剥離強度>
接着力は、JIS K6 854−4 接着剤−剥離接着強さ試験方法−第4部:浮動ローラー法に準拠して測定した。
即ち、得られた偏光板を、25mm×150mmのサイズにカッターを用いて裁断してサンプルとした。サンプルを両面粘着テープ(東洋インキ製造株式会社製DF8712S)により金属板上に貼り付けた。サンプル(偏光板)には、保護フィルム(1)と偏光子の間に予め剥離のキッカケを設けておき、23℃、50%RH環境下で、ピール速度:300mm/minにて測定した。表中の接着力は、
剥離不可:◎
10(N/25mm)以上〜20(N/25mm)未満:○
5.0(N/25mm)以上〜10(N/25mm)未満:△
5.0(N/25mm)未満:×
【0069】
<打ち抜き加工性>
ダンベル社製の100mm×100mmの刃を用い、作製した偏光板を保護フィルム(1)側から打ち抜いた。
打ち抜いた偏光板の、周辺の剥離距離を定規で測定した。
0mm:◎
1mm以下:○
1〜3mm:△
3mm以上:×
【0070】
<湿熱耐性>
得られた偏光板を、50mm×40mmのサイズに切断し、60℃−90%RHで1000時間暴露した。暴露後偏光板の端部の剥がれの有無を目視評価した。
剥がれ無し:○
剥がれあり:×
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】

表1,2に示すように、いずれの実施例でも、粘度が150mPa・sであり薄膜塗工性に優れ、接着力、打ち抜き加工性、湿熱耐性に優れた偏光板を形成することができた。
【0074】
実施例1〜5は、オキセタン化合物(A)と、芳香環及び2個以上のエポキシ基を有する化合物(B)としてビスフェノールF型エポキシ樹脂とからなる同一の接着剤を用いて、保護フィルム(1)が異なる偏光板を作成した場合である。保護フィルムの種類に関係なく、いずれの性能も良好であった。
脂環式エポキシ化合物(C)を併用した実施例16〜20の場合も、実施例1〜5と同様に保護フィルムの種類に関係なく、いずれの性能も良好であった。
なお、脂環式エポキシ化合物(C)を併用する実施例16〜20は、脂環式エポキシ化合物(C)を併用しない実施例1〜5に比して接着剤が低粘度になり、薄膜塗工性が向上する。
【0075】
実施例1、6、7は、オキセタン化合物(A)の種類を変えた場合である。2官能のオキセタン化合物を用いる実施例1は、単官能のオキセタン化合物を用いる実施例6に比して、接着力、打抜き加工性の点でより優れる。
また、単官能であっても芳香環を有するオキセタン化合物を用いる実施例7は、芳香環を有しない単官能のオキセタン化合物を用いる実施例6に比して、接着力、打抜き加工性の点でより優れる。
脂環式エポキシ化合物(C)を併用した実施例16、21、22の場合も、実施例1、6、7の場合と同様に、2官能のオキセタン化合物を用いる実施例16、単官能であっても芳香環を有するオキセタン化合物を用いる実施例22は、芳香環を有しない単官能のオキセタン化合物を用いる実施例21に比して、接着力、打抜き加工性の点でより優れる。
なお、脂環式エポキシ化合物(C)を併用する実施例16、21,22は、脂環式エポキシ化合物(C)を併用しない実施例1、6、7に比して接着剤が低粘度になり、薄膜塗工性が向上する。
【0076】
実施例8〜10は、2官能のオキセタン化合物と、単官能であっても芳香環を有するオキセタン化合物とを併用する場合であって、両者の比を変更した場合であり、実施例1、7と同様、接着力、打抜き加工性の点で優れる。
【0077】
実施例9、11、12は、芳香環および2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)の種類を変えた場合である。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いた実施例9は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた実施例11に比して、接着剤が低粘度になり、薄膜塗工性が向上することに加えて、接着力、打抜き加工性の点でより優れる。
ビスフェノールエポキシ樹脂を用いた実施例9は、ビスフェノール型ではないが芳香環を有しエポキシ基を2個有する化合物を用いた実施例12に比して、接着力、打抜き加工性の点でより優れる。
【0078】
実施例16、25、26も、芳香環および2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)の種類を変えた場合である。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いた実施例16は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた実施例25に比して、接着力、打抜き加工性の点でより優れる。なお、実施例16、25は、脂環式エポキシ化合物(C)の併用により接着剤が低粘度になるので、ビスフェノールF型選択による接着剤が低粘度化効果は、実施例9と11の場合よりも小さい。 実施例16と26は、いずれもビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いた場合であるが、エポキシ当量の低い実施例16の方が、接着力、打ち抜き加工性の点でより優れている。
【0079】
実施例1は、実施例13よりも芳香環および2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)の量が多いので、接着剤が高粘度化するものの、接着力及び抜き打ち加工性がより優れている。
【0080】
実施例14,15,27,28のように酸化防止剤、光安定剤や増感剤を含む場合も、いずれの性能についても良好であった。
【0081】
実施例16、23,24は、オキセタン化合物(A)、芳香環および2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)、脂環式エポキシ化合物(C)の量を変えた場合であり、いずれの性能も良好であった。
【0082】
一方、芳香環および2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)を全く含有しない光硬化性接着剤を用いる比較例1,2,8〜11、また、芳香環および2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)の量が少ない比較例3は、アクリルフィルムに対する接着力が非常に弱いため抜き打ち加工性および湿熱耐性が悪い。
【0083】
また、オキセタン化合物(A)の量が少ない比較例4,5さらにオキセタン化合物(A)を使用していない比較例7は、粘度が著しく高く、薄膜塗工性が不良である。
【0084】
さらに、比較例6は、芳香環および2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物ではあるが、エポキシ当量が1000(g/eq)より大きい化合物を用いる場合であり、光硬化性が悪いため接着力、打ち抜き加工性及び湿熱耐性が不良だった。
【符号の説明】
【0085】
・ 保護フィルム
(1’)保護フィルム(1)と硬化性組成物からなる層(2’)との積層体
(2)第一の接着剤層
(2’)硬化性組成物からなる層
・ ポリビニルアルコール系偏光子
・ 第二の接着剤層
(4’)硬化性組成物からなる層
・ 保護フィルム
(5’)保護フィルム(5)と硬化性組成物からなる層(4’)との積層体
(6)活性エネルギー線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系偏光子と保護フィルムとを貼り合わせるための偏光板形成用光硬化性接着剤であって、
前記偏光板形成用光硬化性接着剤が、カチオン重合性成分及び光重合開始剤を含有し、
前記カチオン重合性成分100重量%中に、
オキセタン化合物(A)を40〜90重量%、
芳香環および2個以上のエポキシ基を有し、エポキシ当量が100〜1000(g/eq)のエポキシ化合物(B)を10〜60重量%含み、
実質的に有機溶剤を含有せず、粘度が1〜150mPa・sである、ことを特徴とする偏光板形成用光硬化性接着剤。
【請求項2】
芳香環および2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)がビスフェノール型エポキシ化合物(B1)であることを特徴とする請求項1記載の偏光板形成用光硬化性接着剤。
【請求項3】
ビスフェノール型エポキシ化合物(B1)がビスフェノールF型エポキシ化合物(B2)であることを特徴とする請求項2記載の偏光板形成用光硬化性接着剤。
【請求項4】
オキセタン化合物(A)が、2個以上のオキセタン環を有する化合物(A1)、及びオキセタン環1個と芳香環とを有するオキセタン化合物(A2)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の偏光板形成用光硬化性接着剤。
【請求項5】
カチオン重合性成分が、脂環式エポキシ化合物(C)をさらに含み、
オキセタン化合物(A):40〜89重量%、
芳香環および2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B):10〜59重量%、
脂環式エポキシ化合物(C):1〜50重量%である、請求項1〜4いずれか記載の偏光板形成用光硬化性接着剤。
【請求項6】
脂環式エポキシ化合物(C)が、2個以上の脂環式エポキシ基を有することを特徴とする請求項5記載の偏光板形成用光硬化性接着剤。
【請求項7】
ポリビニルアルコール系偏光子の両面が、偏光板形成用光硬化性接着剤を硬化してなる接着層を介して保護フィルムでそれぞれ被覆されてなる偏光板であって、前記偏光板形成用光硬化性接着剤の少なくとも一方が、請求項1〜6いずれか記載の偏光板形成用光硬化性接着剤である偏光板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−236389(P2011−236389A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111181(P2010−111181)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】