説明

偏光板用接着剤、偏光板、光学フィルム、及び画像表示装置

【課題】接着力に優れ、偏光板の光透過率の低下を防止でき、かつ液安定性に優れる偏光板用接着剤、さらに前記特性に加えて、加湿環境下でも偏光板の光透過率が低下しにくい偏光板用接着剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の偏光板用接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂、珪酸塩、及び1つ以上のアミノ基と1つ以上の酸性基とを有するアミノ酸及び/又は含硫アミノ酸を含有する樹脂溶液である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板用接着剤に関する。また本発明は当該偏光板用接着剤を用いた偏光板およびその製造方法に関する。当該偏光板はこれ単独で、またはこれを積層した光学フィルムとして液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置を形成しうる。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、その画像形成方式から液晶パネル表面を形成するガラス基板の両側に偏光子を配置することが必要不可欠である。偏光子は、一般的には、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素などの二色性材料で染色した後、架橋剤を用いて架橋を行い、一軸延伸をすることにより製膜することにより得られる。前記偏光子は延伸により作成されるため、収縮し易い。またポリビニルアルコール系フィルムは親水性ポリマーを使用していることから、特に加湿条件下においては非常に変形し易い。またフィルム自体の機械的強度が弱いため、フィルムが裂けたりする問題がある。そのため、偏光子の両側または片側にトリアセチルセルロースなどの透明保護フィルムを貼り合わせて、強度を補った偏光板が用いられている。前記偏光板は、偏光子と透明保護フィルムを接着剤で貼り合わせることにより製造されている。
【0003】
近年の液晶表示装置は用途が拡大し、携帯端末から家庭用の大型TVまで幅広く展開が進んできており、各用途に応じて、それぞれの規格が設けられるようになってきている。特に携帯端末用途では、使用者が持ち歩くことが前提であるため、耐久性に対する要求は非常に厳しい。例えば、偏光板には、結露が生じるような加湿条件下においても特性、形状が変化しない耐水性が求められている。
【0004】
前記の通り偏光子は、透明保護フィルムにより強度を補強した偏光板として使用される。前記偏光子と透明保護フィルムの接着に用いる偏光板用接着剤としては、水系接着剤が好ましく、例えば、ポリビニルアルコール水溶液に架橋剤を混合したポリビニルアルコール系接着剤が使用されている。しかし、ポリビニルアルコール系接着剤は、加湿条件下では、偏光子と透明保護フィルムとの界面で剥がれが生じる場合がある。これは、前記接着剤の主成分であるポリビニルアルコール系樹脂が水溶性高分子であり、結露した状況下では接着剤の溶解が起こっている可能性が考えられる。上記問題に対して、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤を含有する偏光板用接着剤が提案されている(特許文献1)。
【0005】
ポリビニルアルコール系樹脂の架橋剤としては種々の化合物が知られているが、その中でもアセトアセチル基との反応性に優れるアミノ−ホルムアルデヒド樹脂が耐水性の観点から好適に用いられている。
【0006】
しかし、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂はホルムアルデヒドを含有しているため、強い刺激臭による作業環境への影響や製品中に残存することによる安全性が懸念されてきた。また、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂はアセトアセチル基との反応性が高いため、室温で架橋反応が進行しやすく、保存時に増粘して作業性が低下したり、最終的にゲル化して使用できなくなったり、ポットライフが短くなるなどの問題を有していた。
【0007】
上記問題を解決するために、架橋剤として金属塩を用いることが検討されているが、金属塩を過剰に添加すると接着剤層の屈折率が高くなり、偏光子と接着剤層の間および透明保護フィルムと接着剤層の間の各層間で光の界面反射が起こりやすくなり、偏光板の光透過率が低下するおそれがある。近年、液晶パネルの高コントラスト化にともない、偏光板の光学特性の向上がより求められている。
【0008】
一方、特許文献2には、偏光芯層と外層とをケイ酸塩層を用いて接着した積層柔軟性偏光子が提案されており、当該積層柔軟性偏光子は熱的安定性及び柔軟性を有することが記載されている。また、特許文献3には、偏光コア層と被覆層とをシリケート層で接着した積層偏光子が提案されており、当該積層偏光子は熱的安定性及び柔軟性を有することが記載されている。
【0009】
しかし、ケイ酸塩の水溶液から形成されるケイ酸塩層又はシリケート層は、接着力に劣るため、偏光子と透明保護フィルムとの界面で剥がれが生じやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−198945号公報
【特許文献2】特開平8−68908号公報
【特許文献3】特開平9−178944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、接着力に優れ、偏光板の光透過率の低下を防止でき、かつ液安定性に優れる偏光板用接着剤、さらに前記特性に加えて、加湿環境下でも偏光板の光透過率が低下しにくい偏光板用接着剤を提供することを目的とする。
【0012】
また本発明は当該偏光板用接着剤を用いた偏光板およびその製造方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、当該偏光板を積層した光学フィルムを提供すること、さらには、当該偏光板、光学フィルムを用いた液晶表示装置等の画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す偏光板用接着剤により前記目的に達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明は、偏光子の少なくとも片面に透明保護フィルムを設けるために用いる偏光板用接着剤において、
前記偏光板用接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂、珪酸塩、及び1つ以上のアミノ基と1つ以上の酸性基とを有するアミノ酸及び/又は含硫アミノ酸を含有する樹脂溶液であることを特徴とする偏光板用接着剤、に関する。
【0015】
架橋剤として、1つ以上のアミノ基と1つ以上の酸性基とを有するアミノ酸及び/又は含硫アミノ酸を用いることにより、接着力に優れる偏光板用接着剤が得られる。本発明の偏光板用接着剤を用いると、温水に浸漬した場合でも偏光子と透明保護フィルムとの界面で剥がれが生じ難い接着剤層を形成することができる。また、接着剤層の屈折率の上昇を抑制できるため、偏光子と接着剤層の間および透明保護フィルムと接着剤層の間の各層間で光の界面反射が生じ難くなり、偏光板の光透過率の低下を抑制できる。
【0016】
前記アミノ酸及び/又は含硫アミノ酸の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、5〜50重量部であることが好ましい。5重量部未満の場合には接着剤層の耐水性が低下し、50重量部を超える場合には接着剤層の接着力が低下する傾向にある。
【0017】
前記酸性基は、カルボキシル基又はスルホ基であることが好ましい。
【0018】
また、ポリビニルアルコール系樹脂は、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂であることが好ましい。それにより耐水性に優れる接着剤層を形成することができる。
【0019】
珪酸塩は、水溶性珪酸リチウム、水溶性珪酸ナトリウム、及び水溶性珪酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。水溶性珪酸リチウムは、SiO/LiOのモル比が2〜8であることが好ましい。前記モル比が2未満の場合には接着剤層のアルカリ性が高くなり、加湿環境下において偏光板の光透過率が低下する傾向にある。一方、前記モル比が8を超える場合には水溶性の珪酸塩にならない。また、水溶性珪酸ナトリウムは、SiO/NaOのモル比が2〜5であることが好ましい。水溶性珪酸カリウムは、SiO/KOのモル比が2〜5であることが好ましい。前記モル比が2未満の場合には接着剤層のアルカリ性が高くなり、加湿環境下において偏光板の光透過率が低下する傾向にある。一方、前記モル比が5を超える場合には水溶性の珪酸塩にならない。
【0020】
また本発明は、偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板において、前記接着剤層が前記偏光板用接着剤により形成されていることを特徴とする偏光板、に関する。かかる本発明の偏光板は、加湿環境下において光透過率が低下しにくい。
【0021】
前記偏光板において、接着剤層の厚みは10〜300nmであることが好ましい。接着剤層の厚みが10nm未満の場合には接着力が十分でなく、300nmを超える場合には光学信頼性及び耐湿接着力が低下する傾向にある。
【0022】
また、接着剤層の屈折率は1.47〜1.55であることが好ましい。接着剤層の屈折率が1.47〜1.55の範囲外の場合には、接着剤層の屈折率が低く又は高くなりすぎるため偏光子と接着剤層の間および透明保護フィルムと接着剤層の間の各層間で光の界面反射が起こりやすくなり、偏光板の光透過率が低下する傾向にある。
【0023】
また本発明は、偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板を製造する方法において、
前記偏光板用接着剤を調製する工程、偏光子の前記接着剤層を形成する面及び/又は透明保護フィルムの前記接着剤層を形成する面に前記偏光板用接着剤を塗布する工程、及び偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせる工程を含むことを特徴とする偏光板の製造方法、に関する。
【0024】
また本発明は、前記偏光板が、少なくとも1枚積層されている光学フィルム、に関する。
【0025】
さらに本発明は、前記偏光板又は前記光学フィルムを含む画像表示装置、に関する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の偏光板用接着剤により形成される接着剤層は、接着力及び耐水性に優れており、偏光子と透明保護フィルムとの界面で剥がれが生じ難い接着剤層である。また、当該接着剤層の屈折率は、偏光子および透明保護フィルムの屈折率との差が小さいため、偏光子と接着剤層の間および透明保護フィルムと接着剤層の間の各層間で光の界面反射が生じ難く、偏光板の光透過率が低下し難い。さらに、本発明の偏光板用接着剤は、室温下において反応性が低いため液安定性に優れるだけでなく、ホルムアルデヒドを含有していないため作業環境が向上し、製品の安全性も高まるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の偏光板用接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂、珪酸塩、及び1つ以上のアミノ基と1つ以上の酸性基とを有するアミノ酸及び/又は含硫アミノ酸を含有する樹脂溶液である。
【0028】
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコール樹脂や、アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール樹脂があげられる。アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール樹脂は、反応性の高い官能基を有するポリビニルアルコール系接着剤であり、偏光板の耐久性が向上し好ましい。
【0029】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコール;その誘導体;更に酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のケン化物;ポリビニルアルコールをアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化等した変性ポリビニルアルコールがあげられる。前記単量体としては、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体等があげられる。これらは一種単独でまたは二種以上を併用することができる。
【0030】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は特に限定されないが、接着性の点からは、平均重合度100〜5000程度、好ましくは1000〜4000、平均ケン化度85〜100モル%程度、好ましくは90〜100モル%である。
【0031】
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂とジケテンとを公知の方法で反応して得られる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を酢酸等の溶媒中に分散させておき、これにジケテンを添加する方法、ポリビニルアルコール系樹脂をジメチルホルムアミドまたはジオキサン等の溶媒にあらかじめ溶解しておき、これにジケテンを添加する方法等があげられる。またポリビニルアルコールにジケテンガスまたは液状ジケテンを直接接触させる方法があげられる。
【0032】
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂のアセトアセチル基変性度は、0.1モル%以上であれば特に制限はなない。0.1モル%未満では接着剤層の耐水性が不充分であり不適当である。アセトアセチル基変性度は、好ましくは0.1〜40モル%程度、さらに好ましくは1〜20モル%、特に好ましくは2〜7モル%である。アセトアセチル基変性度が40モル%を超えると、耐水性の向上効果が小さい。アセトアセチル基変性度はNMRにより測定した値である。
【0033】
本発明においては、架橋剤として、1つ以上のアミノ基と1つ以上の酸性基とを有するアミノ酸又は含硫アミノ酸を用いる。なお、これらは併用することもできる。酸性基は、カルボキシル基又はスルホ基であることが好ましい。
【0034】
前記アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、リシン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、チロシン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、アスパルテーム、グルタミン、グルタミン酸、及びこれらアミノ酸と(メタ)アクリル酸との共重合体などが挙げられる。これらは一種単独でまたは二種以上を併用することができる。
【0035】
前記含硫アミノ酸としては、例えば、メチオニン、システイン、シスチン、及びタウリンなどが挙げられる。これらは一種単独でまたは二種以上を併用することができる。これらのなかでも特に、タウリンなどのスルホ基を有する含硫アミノ酸を用いることが好ましい。
【0036】
前記アミノ酸及び/又は含硫アミノ酸の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、5〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは10〜40重量部である。ただし、アミノ酸と含硫アミノ酸を併用する場合は合計量を意味する。
【0037】
樹脂溶液中には他の架橋剤を添加してもよい。ただし、他の架橋剤を添加する場合、その添加量は架橋剤全体に対して50重量%以下である。他の架橋剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤に用いられているものを特に制限なく使用できる。前記ポリビニルアルコール系樹脂と反応性を有する官能基を少なくとも2つ有する化合物を使用できる。例えば、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレン基とアミノ基を2個有するアルキレンジアミン類;トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタントリイソシアネート)、イソホロンジイソシアネートおよびこれらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物等のイソシアネート類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジまたはトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等のエポキシ類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等のモノアルデヒド類;グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒド等のジアルデヒド類;メチロール尿素、メチロールメラミン、アルキル化メチロール尿素、アルキル化メチロール化メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物等のアミノ−ホルムアルデヒド樹脂;酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸塩化ジルコニウム等のジルコニウム化合物;グリオキシル酸金属塩(金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅などの遷移金属、亜鉛、アルミニウムなどが挙げられる。)、グリオキシル酸アミン塩(アミンとしては、例えば、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミンなどが挙げられる。)などのグリオキシル酸塩;ジメトキシエタナール、ジエトキシエタナール、ジアルコキシエタナール等のアセタール化合物;更にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル等の二価金属、又は三価金属の塩及びその酸化物があげられる。これらは一種単独で又は二種以上を併用することができる。また、架橋剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤を用いることができる。
【0038】
耐久性を向上させるには、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂を用いる。この場合にも、架橋剤の配合量は前記と同様である。架橋剤の配合量が多くなりすぎると、液安定性が低下し、接着剤としての可使時間(ポットライフ)が短くなり、工業的な使用が困難になる。
【0039】
珪酸塩は、一般式MO・nSiOで表わされる化合物であり、Mは、アルカリ金属、有機塩基などである。アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム、及びカリウムなどが挙げられ、有機塩基としては、例えば第3級アンモニウム、第4級アンモニウム、及びグアニジウムなどが挙げられる。nは2〜8であることが好ましい。
【0040】
本発明においては、珪酸塩として、水溶性珪酸リチウム、水溶性珪酸ナトリウム、及び水溶性珪酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。水溶性珪酸リチウムは、SiO/LiOのモル比が2〜8であることが好ましい。水溶性珪酸ナトリウムは、SiO/NaOのモル比が2〜5であることが好ましく、より好ましくは2.5〜5である。水溶性珪酸カリウムは、SiO/KOのモル比が2〜5であることが好ましく、より好ましくは2.5〜5である。
【0041】
珪酸塩の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、1〜100重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜50重量部であり、さらに好ましくは1〜30重量部である。珪酸塩の配合量が1重量部未満の場合には、接着剤層の屈折率が高くなりすぎるため偏光子と接着剤層の間および透明保護フィルムと接着剤層の間の各層間で光の界面反射が起こりやすくなり、偏光板の光透過率が低下する傾向にある。一方、100重量部を超える場合には、接着剤層の接着力が低下したり、接着剤層の屈折率が低くなりすぎるため偏光子と接着剤層の間および透明保護フィルムと接着剤層の間の各層間で光の界面反射が起こりやすくなり、偏光板の光透過率が低下する傾向にある。
【0042】
本発明の偏光板用接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂、珪酸塩、及び1つ以上のアミノ基と1つ以上の酸性基とを有するアミノ酸及び/又は含硫アミノ酸を含有する樹脂溶液であり、通常、水溶液として用いられる。樹脂溶液濃度は特に制限されないが、塗工性や放置安定性等を考慮すると0.1〜15重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%である。
【0043】
樹脂溶液の粘度は特に制限されないが、通常1〜50mPa・sの範囲のものが用いられる。
【0044】
偏光板用接着剤である樹脂溶液の調製法は特に制限されない。通常は、ポリビニルアルコール系樹脂および架橋剤を混合し、適宜に濃度を調製したものに、珪酸塩を配合して樹脂溶液を調製する。また、ポリビニルアルコール系樹脂として、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂を用いたり、架橋剤の配合量が多い場合には、溶液の安定性を考慮して、ポリビニルアルコール系樹脂と珪酸塩を混合した後に、得られる樹脂溶液の使用時期等を考慮しながら架橋剤を混合してもよい。なお、偏光板用接着剤である樹脂溶液の濃度は、樹脂溶液を調製した後に適宜に調整することもできる。
【0045】
なお、偏光板用接着剤には、各種粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤などの安定剤等を配合することもできる。
【0046】
本発明の偏光板は、透明保護フィルムと偏光子を、前記接着剤を用いて貼り合わせることにより製造する。得られた偏光板は、偏光子の片側または両側に、前記偏光板接着剤により形成された接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている。
【0047】
前記接着剤の塗布は、透明保護フィルム、偏光子のいずれに行ってもよく、両者に行ってもよい。前記接着剤の塗布は、乾燥後の接着剤層の厚みが10〜300nm程度になるように行なうのが好ましい。接着剤層の厚みは、均一な面内厚みを得ることと、十分な接着力を得る観点から10〜200nmであることがより好ましく、特に好ましくは20〜150nmである。
【0048】
接着剤層の厚みを調整する方法としては、特に制限されるものではないないが、例えば、接着剤溶液の固形分濃度や接着剤の塗布装置を調整する方法があげられる。このような接着剤層厚みの測定方法としては、特に制限されるものではないが、SEM(Scanning Electron Microscopy)や、TEM(Transmission Electron Microscopy)による断面観察測定が好ましく用いられる。接着剤の塗布操作は特に制限されず、ロール法、噴霧法、浸漬法等の各種手段を採用できる。
【0049】
接着剤を塗布した後は、偏光子と透明保護フィルムをロールラミネーター等により貼り合わせる。貼り合わせ後には、乾燥工程を施し、塗布乾燥層からなる接着剤層を形成する。乾燥温度は5〜150℃程度、好ましくは30〜120℃であり、乾燥時間は120秒間以上、好ましくは300秒間以上である。
【0050】
偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性材料を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0051】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0052】
前記偏光子の片面または両面に設けられる透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーのブレンド物なども前記透明保護フィルムを形成するポリマーの例としてあげられる。なお、偏光子には、通常、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされるが、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などがあげられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0053】
また、透明保護フィルムとしては、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、例えば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。これらのフィルムは位相差が小さく、光弾性係数が小さいため偏光板の歪みによるムラなどの不具合を解消することができ、また透湿度が小さいため、加湿耐久性に優れる。
【0054】
透明保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。クニックは、透明保護フィルムが、薄型化するほど生じやすくなる。したがって、透明保護フィルムが、5〜100μmの場合に特に好適である。
【0055】
なお、偏光子の両側に透明保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いてもよい。
【0056】
本発明の透明保護フィルムとしては、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂および(メタ)アクリル樹脂から選ばれるいずれか少なくとも1つを用いるのが好ましい。
【0057】
セルロース樹脂は、セルロースと脂肪酸のエステルである。このようセルロースエステル系樹脂の具体例としでは、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネート等があげられる。これらのなかでも、セルローストリアセテートが特に好ましい。セルローストリアセテートは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。セルローストリアセテートの市販品の例としては、富士フイルム社製の商品名「UV−50」、「UV−80」、「SH−80」、「TD−80U」、「TD−TAC」、「UZ−TAC」や、コニカ社製の「KCシリーズ」等があげられる。一般的にこれらセルローストリアセテートは、面内位相差(Re)はほぼゼロであるが、厚み方向位相差(Rth)は、〜60nm程度を有している。
【0058】
なお、厚み方向位相差が小さいセルロース樹脂フィルムは、例えば、上記セルロース樹脂を処理することにより得られる。例えばシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤を塗工したポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ステンレスなどの基材フィルムを、一般的なセルロース系フィルムに貼り合わせ、加熱乾燥(例えば80〜150℃で3〜10分間程度)した後、基材フィルムを剥離する方法;ノルボルネン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂などをシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤に溶解した溶液を一般的なセルロース樹脂フィルムに塗工し加熱乾燥(例えば80〜150℃で3〜10分間程度)した後、塗工フィルムを剥離する方法などがあげられる。
【0059】
また、厚み方向位相差が小さいセルロース樹脂フィルムとしては、脂肪置換度を制御した脂肪酸セルロース系樹脂フィルムを用いることができる。一般的に用いられるトリアセチルセルロースでは酢酸置換度が2.8程度であるが、好ましくは酢酸置換度を1.8〜2.7に制御することによってRthを小さくすることができる。上記脂肪酸置換セルロース系樹脂に、ジブチルフタレート、p−トルエンスルホンアニリド、クエン酸アセチルトリエチル等の可塑剤を添加することにより、Rthを小さく制御することができる。可塑剤の添加量は、脂肪酸セルロース系樹脂100重量部に対して、好ましくは40重量部以下、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部である。
【0060】
環状ポリオレフィン樹脂の具体例としては、好ましくはノルボルネン系樹脂である。環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂があげられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびに、それらの水素化物などがあげられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーがあげられる。
【0061】
環状ポリオレフィン樹脂としては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR株式会社製の商品名「アートン」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学株式会社製の商品名「APEL」があげられる。
【0062】
(メタ)アクリル系樹脂としては、Tg(ガラス転移温度)が好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。Tgが115℃以上であることにより、偏光板の耐久性に優れたものとなりうる。上記(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定きれないが、成形性当の観点から、好ましくは170℃以下である。(メタ)アクリル系樹脂からは、面内位相差(Re)、厚み方向位相差(Rth)がほぼゼロものフィルムを得ることができる。
【0063】
(メタ)アクリル系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)があげられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルがあげられる。より好ましくはメタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂があげられる。
【0064】
(メタ)アクリル系樹脂の具体例として、例えば、三菱レイヨン株式会社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル樹脂系があげられる。
【0065】
(メタ)アクリル系樹脂として、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いることもできる。高い耐熱性、高い透明性、二軸延伸することにより高い機械的強度を有するからである。
【0066】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂があげられる。
【0067】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、好ましくは下記一般式(化1)で表される環擬構造を有する。
【0068】
【化1】

【0069】
式中、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜20の有機残基を示す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
【0070】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(化1)で表されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(化1)で表されるラクトン環構造の含有割合が5重量%よりも少ないと、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が不十分になるおそれがある。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(化1)で表されるラクトン環構造の含有割合が90重量%より多いと、成形加工性に乏しくなるおそれがある。
【0071】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、質量平均分子量(重量平均分子量と称することも有る)が、好ましくは1000〜2000000、より好ましくは5000〜1000000、さらに好ましくは10000〜500000、特に好ましくは50000〜500000である。質量平均分子量が上記範囲から外れると、成型加工性の点から好ましくない。
【0072】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、Tgが好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。Tgが115℃以上であることから、例えば、透明保護フィルムとして偏光板に組み入れた場合に、耐久性に優れたものとなる。上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定されないが、成形性などの観点から、好ましくは170℃以下である。
【0073】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、射出成形により得られる成形品の、ASTM−D−1003に準じた方法で測定される全光線透過率が、高ければ高いほど好ましく、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率は透明性の目安であり、全光線透過率が85%未満であると、透明性が低下するおそれがある。
【0074】
前記透明保護フィルムは、正面位相差が40nm未満、かつ、厚み方向位相差が80nm未満であるものが、通常、用いられる。正面位相差Reは、Re=(nx−ny)×d、で表わされる。厚み方向位相差Rthは、Rth=(nx−nz)×d、で表される。また、Nz係数は、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)、で表される。[ただし、フィルムの遅相軸方向、進相軸方向及び厚さ方向の屈折率をそれぞれnx、ny、nzとし、d(nm)はフィルムの厚みとする。遅相軸方向は、フィルム面内の屈折率の最大となる方向とする。]。なお、透明保護フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。厚み方向の位相差値が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、透明保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向位相差値(Rth)は、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
【0075】
一方、前記透明保護フィルムとして、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有する位相差板を用いることができる。正面位相差は、通常、40〜200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80〜300nmの範囲に制御される。透明保護フィルムとして位相差板を用いる場合には、当該位相差板が透明保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
【0076】
透明保護フィルムは、適用される液晶表示装置に応じて適宜に選択できる。例えば、VA(Vertical Alignment,MVA,PVA含む)の場合は、偏光板の少なくとも片方(セル側)の透明保護フィルムが位相差を有している方が望ましい。具体的な位相差として、Re=0〜240nm、Rth=0〜500nmの範囲である事が望ましい。三次元屈折率で言うと、nx>ny=nz、nx>ny>nz、nx>nz>ny、nx=ny>nz(一軸,二軸,Z化,ネガティブCプレート)の場合が望ましい。液晶セルの上下に偏光板を使用する際、液晶セルの上下共に、位相差を有している、または上下いずれかの透明保護フィルムが位相差を有していてもよい。
【0077】
例えば、IPS(In−Plane Switching,FFS含む)の場合、偏光板の片方の透明保護フィルムが位相差を有している場合、有していない場合のいずれも使用できる。例えば、位相差を有していない場合は、液晶セルの上下(セル側)ともに位相差を有していない場合が望ましい。位相差を有している場合は、液晶セルの上下ともに位相差を有している場合、上下のいずれかが位相差を有している場合が望ましい(例えば、上側にZ化、下側に位相差なしの場合や、上側にAプレート、下側にポジティブCプレートの場合)。位相差を有している場合、Re=−500〜500nm、Rth=−500〜500nmの範囲が望ましい。三次元屈折率で言うと、nx>ny=nz、nx>nz>ny、nz>nx=ny、nz>nx>ny(一軸,Z化,ポジティブCプレート、ポジティブAプレート)が望ましい。
【0078】
なお、前記位相差を有するフィルムは、位相差を有しない透明保護フィルムに、別途、貼り合せて上記機能を付与することができる。
【0079】
透明保護フィルムの偏光子と接着する面には、易接着処理を施すことができる。易接着処理としては、プラズマ処理、コロナ処理等のドライ処理、アルカリ処理(ケン化処理)等の化学処理、易接着剤層を形成するコーティング処理等があげられる。これらのなかでも、易接着剤層を形成するコーティング処理やアルカリ処理が好適である。易接着剤層の形成には、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、ポリエステル樹脂等の各種の易接着材料を使用することができる。なお、易接着剤層の厚みは、通常、0.001〜10μm程度、さらには0.001〜5μm程度、特に0.001〜1μm程度とするのが好ましい。
【0080】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
【0081】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0082】
本発明の偏光板は、実用に際して他の光学層と積層した光学フィルムとして用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、本発明の偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【0083】
本発明の偏光板または光学フィルムは液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光板または光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による偏光板または光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0084】
液晶セルの片側又は両側に偏光板または光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による偏光板または光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に偏光板または光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【実施例】
【0085】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、各例中、部および%は特記ない限り重量基準である。
【0086】
実施例1
(偏光子)
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%の厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に60秒間浸漬し膨潤させた。次いで、ヨウ素/ヨウ化カリウム(重量比=0.5/8)の濃度0.3%の水溶液に浸漬し、3.5倍まで延伸させながらフィルムを染色した。その後、65℃のホウ酸エステル水溶液中で、トータルの延伸倍率が6倍となるように延伸を行った。延伸後に、40℃のオーブンにて3分間乾燥を行い、偏光子を得た。分光光度計(日本分光製、V7100)を用いて、単体透過率Tsを測定したところ、光透過率は42.50%であった。
【0087】
(透明保護フィルム)
厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを用いた。
【0088】
(接着剤水溶液の調製)
アセトアセチル(AA)基を含有するポリビニルアルコール(PVA)系樹脂(平均重合度:1200,ケン化度:98.5モル%,アセトアセチル化度:5モル%)100部、珪酸ナトリウム(SiO/NaOのモル比:4)10部、タウリン50部を30℃の温度条件下で純水に溶解して接着剤水溶液(粘度9mPa・s)を得た。
【0089】
(偏光板の作成)
上記透明保護フィルムの片面に、上記接着剤水溶液を乾燥後の接着剤層の厚みが80nmとなるように塗布した。次いで、23℃の温度条件下で偏光子の両面に接着剤付きの透明保護フィルムをロール機で貼り合せ、その後55℃で6分間乾燥して偏光板を作成した。
【0090】
実施例2〜7及び比較例1〜5
表1記載の配合で実施例1と同様の方法で接着剤水溶液を調製した。調製した接着剤水溶液を用いて、実施例1と同様にして偏光板を作成した。
【0091】
〔測定、評価〕
(接着剤層の屈折率)
調製した接着剤水溶液を透明フィルムの上にアプリケーターで塗布し、70度で10分間乾燥して接着剤層を形成した。その後、接着剤層(5μm)を透明フィルムから剥離し、当該接着剤層の屈折率をプリズムカプラー(Sairon Technology,Inc.、SPA-4000)を用いて測定した。
【0092】
(密着性)
偏光板の端部において、偏光子と透明保護フィルムとの間にカッターの刃先を挿入した。当該挿入部において、偏光子と透明保護フィルムとを掴み、それぞれ反対方向に引っ張った。このとき、偏光子および/または透明保護フィルムが破断して剥離できなかった場合は、密着性が良好:「○」と判断し、偏光子と透明保護フィルムとの間で一部剥離した場合は、密着性にやや乏しい:「△」と判断し、偏光子と透明保護フィルムとの間で全部剥離した場合は、密着性に乏しい:「×」と判断した。
【0093】
(剥がれ)
偏光板を、偏光子の吸収軸方向に50mm、吸収軸に直交する方向に25mmになるように切り出してサンプルを調製した。当該サンプルを60℃の温水に浸漬し、5時間経過後のサンプルの端部の剥がれ量(mm)をノギスで測定した。
【0094】
(加温加湿試験)
偏光子の吸収軸方向に50mm、吸収軸に直交する方向に25mmになるように切り出した偏光板を粘着剤を介してガラス板に接着してサンプルを調製し、当該サンプルの光透過率を分光光度計(日本分光製、V7100)を用いて測定した。その後、当該サンプルを60℃、95%RHの加温加湿雰囲気下に200時間放置し、同様に光透過率を測定した。加温加湿試験前後の光透過率の変化量(差)を表1に示す。
【0095】
(ポットライフ)
調製した接着剤水溶液の粘度を、レオメーターRS1(Haake社製)、共軸円筒として型式222−1267及び222−1549を用いて、23℃の液温及び気温にて測定し、接着剤水溶液の粘度が50cpsを超えるまでの時間を測定した。
【0096】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の偏光板用接着剤は、偏光子の少なくとも片面に透明保護フィルムを接着するために用いられる。得られた偏光板又はこれを積層した光学フィルムは、液晶表示装置、有機EL表示装置、及びPDP等の画像表示装置に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子の少なくとも片面に透明保護フィルムを設けるために用いる偏光板用接着剤において、
前記偏光板用接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂、珪酸塩、及び1つ以上のアミノ基と1つ以上の酸性基とを有するアミノ酸及び/又は含硫アミノ酸を含有する樹脂溶液であることを特徴とする偏光板用接着剤。
【請求項2】
アミノ酸及び/又は含硫アミノ酸の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、5〜50重量部である請求項1記載の偏光板用接着剤。
【請求項3】
酸性基は、カルボキシル基又はスルホ基である請求項1又は2記載の偏光板用接着剤。
【請求項4】
ポリビニルアルコール系樹脂が、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の偏光板用接着剤。
【請求項5】
珪酸塩が、水溶性珪酸リチウム、水溶性珪酸ナトリウム、及び水溶性珪酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の偏光板用接着剤。
【請求項6】
偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板において、前記接着剤層が請求項1〜5のいずれかに記載の偏光板用接着剤により形成されていることを特徴とする偏光板。
【請求項7】
接着剤層の厚みが、10〜300nmである請求項6記載の偏光板。
【請求項8】
接着剤層の屈折率が、1.47〜1.55である請求項6又は7記載の偏光板。
【請求項9】
偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板を製造する方法において、
請求項1〜5のいずれかに記載の偏光板用接着剤を調製する工程、偏光子の前記接着剤層を形成する面及び/又は透明保護フィルムの前記接着剤層を形成する面に前記偏光板用接着剤を塗布する工程、及び偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせる工程を含むことを特徴とする偏光板の製造方法。
【請求項10】
請求項6〜8のいずれかに記載の偏光板が、少なくとも1枚積層されている光学フィルム。
【請求項11】
請求項6〜8のいずれかに記載の偏光板、又は請求項10記載の光学フィルムを含む画像表示装置。


【公開番号】特開2012−78511(P2012−78511A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222791(P2010−222791)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】