説明

偏光素子ユニットおよびこの偏光素子ユニットを用いた光照射装置並びに偏光素子ユニットの透過率設定方法

【課題】複数のワイヤーグリッド偏光素子を並べて構成した偏光素子ユニットにおいて、各偏光素子の透過率に個体差があっても、光照射領域の照度分布を均一にすること。
【解決手段】複数のワイヤーグリッド偏光素子55a〜55dを、各々の端部が光源からの光が通過する方向に重なるように枠体52内に一方向に並べて配置し、上記枠体52に、個々の偏光素子55a〜55dに対応させて、各偏光素子を通過する光を遮光する遮光手段80を設ける。遮光手段80は複数の遮光板81から構成され、各遮光板81は、各偏光素子55a〜55d上への突出量が可変であり、遮光板81の突出量を変えることにより、各偏光素子を透過する光の透過量を調整する。これにより、各ワイヤーグリッド偏光素子55a〜55dの透過率に個体差があっても、各偏光素子55a〜55dを透過する光の量を同じにすることができ、光照射領域の照度分布を均一にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の偏光素子を並べた偏光素子ユニット、およびこの偏光素子ユニットを使用して、液晶表示素子の配向膜や、紫外線硬化型液晶を用いた視野角補償フィルムの配向層の光配向、あるいは3D映像表示装置に使用される位相差フィルムを製造するための光照射装置、並びにその偏光素子ユニッ卜の透過率が全体として一定になるように設定する透過率の設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルなどの液晶表示素子の配向膜や、3D映像を現出させる3D映像表示装置に使用される位相差フィルム(以下3D用フィルム)の配向層の配向処理に関し、配向膜に紫外線領域の偏光光を照射することにより配向を行う、光配向と呼ばれる技術が採用されるようになってきている。以下、光により配向を行う配向膜や配向層を設けたフィルムのことを、総称して光配向膜と呼ぶ。光配向膜は、液晶パネルの大型化につれて大面積化しており、それとともに、光配向膜に紫外線領域の偏光光を照射する偏光光照射装置も大型化している。
【0003】
上記光配向膜において、例えば3D用フィルムは、幅が1000mm〜1500mmの帯状で長尺のワークであり、配向処理後所望の長さに切断して使用する。このような帯状の長い光配向膜に対して光配向を行うために、棒状の紫外線ランプとワイヤーグリッド偏光素子を組み合せた偏光光照射装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1にも記載されているように、ワイヤーグリッド偏光素子は大型のものが作れない。そのため、このような偏光光照射装置においては、複数のワイヤーグリッド偏光素子を保持枠体(フレーム)内に一方向に並べて配置した偏光素子ユニットを使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4506412号公報
【特許文献2】特表2010−501085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紫外線を偏光するワイヤーグリッド偏光素子の製作は、半導体製造に用いられるリソグラフイ装置やエッチング装置、蒸着装置などを使って行う。詳しい製作方法については、例えば特許文献2に記載されている。このようにして作られたワイヤーグリッド偏光素子の透過率は約30%であるが、透過率には数%の個体差が生じる。
上記したように、偏光素子ユニットは、複数のワイヤーグリッド偏光素子を並べて構成している。しかし、各偏光素子の透過率に数%の差があると、仮にこの偏光素子ユニットの全体に均一な照度の光が入射したとしても、偏光素子を通過した光により作られる光照射領域の照度分布は均一にならない。
本発明は上記問題点を解決するものであって、複数のワイヤーグリッド偏光素子を並べて構成する偏光素子ユニットにおいて、各ワイヤーグリッド偏光素子の透過率に個体差があっても、光照射領域の照度分布が均一になるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明においては、偏光素子ユニットに、各ワイヤーグリッド偏光素子から出射する光を遮光(減光)する遮光手段を設ける。この遮光手段により光照射領域の照度分布を調整する。
遮光手段は、偏光素子を保持する枠体(フレーム)に取付けた遮光板を備え、偏光素子から出射する光束の中にこの遮光板を挿入して減光する。遮光板は、光束の中に挿入する長さが変えられるようにして、偏光素子を保持する枠体(フレーム)に取り付ける。
また、上記遮光手段は、1枚のワイヤーグリッド偏光素子につき少なくとも1個設けることが必要であるが、光照射領域における照度分布の微妙な調整を行うためには、1枚の偏光素子につき複数個設けることが望ましい。
偏光素子ユニットの全体の透過率を一定して、光照射領域における照度分布を均一にするための、遮光手段の遮光板による遮光量の調整手順としては、偏光素子ユニットに並べて配置する全てのワイヤーグリッド偏光素子の透過率をあらかじめ測定しておき、その値が最も低い偏光素子の透過率に合せるように、各偏光素子を通過する光を、それぞれに対応して設けた遮光手段の遮光板により遮光して減光する。
すなわち、本発明においては、上記課題を次のように解決する。
(1)光源からの光を偏光する偏光素子ユニットを以下のように構成する。
複数のワイヤーグリッド偏光素子を、各々の端部が光源からの光が通過する方向に重なるように枠体内に一方向に並べて配置し、上記枠体に、並べて配置した個々の偏光素子に対応して、各偏光素子を通過する光を遮光する遮光手段を設ける。この遮光手段は、上記一方向に沿って並べて配置され、各遮光手段は上記一方向に対して交差する方向に上記枠体から上記偏光素子上への突出量が可変であるように構成されている。
(2)上記(1)において、上記遮光手段を、1枚の偏光素子に対して複数設ける。
(3)複数の光源素子を一方向に並べた光出射部と、該光出射部から出射する光を反射して、前記一方向に伸びる線状に集光する反射ミラーと、前記反射ミラーの光出射側に設けられ、該反射ミラーにより反射された光を偏光する偏光素子を備えた偏光素子ユニットとを備え、前記一方向に対して直交する方向に搬送されるワークに対して、上記偏光素子ユニットにより偏光した偏光光を照射する光照射装置に、上記(1)(2)の偏光素子ユニットを用いる。
(4)複数の偏光素子を、各々の端部が光源からの光が通過する方向に重なるように枠体内に一方向に並べて配置し、該枠体に、並べて配置した個々の偏光素子に対応して、各偏光素子を通過する光を遮光する遮光手段が設けられた偏光素子ユニットにおいて、各偏光素子の透過率を以下のように設定する。
第1の工程:上記複数の偏光素子のそれぞれの透過率を測定する。
第2の工程:第1の工程と、該第1の工程において測定した複数の偏光素子のうち、最も低い透過率を示した偏光素子の透過率と同じになるように、その他の偏光素子の透過率を対応する遮光手段により遮光することで低下させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)偏光素子ユニットに遮光手段を設け、この遮光手段の遮光板により、各ワイヤーグリッド偏光素子から出射する光の量を調整できるようにしたので、各ワイヤーグリッド偏光素子の透過率に個体差があっても、各ワイヤーグリッド偏光素子の透過率を同じにすることができる。このため、偏光素子ユニットの全体の透過率が一定になり、したがって光照射領域の照度分布を均一にすることができる。
(2)遮光手段を、1枚の偏光素子に対して複数設けることにより、偏光素子ユニットから出射する光の量を、偏光素子ユニットの長手方向に関して細かく調整することができる。これにより、光照射領域の照度分布について、細かく微妙な照度の調整が可能となる。
特に、ワイヤーグリッド偏光素子の端部を重ね合わせた各境界部分に対応して、遮光板を設けることにより、透過率が低下する該境界部分の透過率を、他の位置における透過率と独立して調整することができる。このため、光照射領域における照度分布をより均一にすることができる。
(3)上記偏光素子ユニットを前記構成の光照射ユニットに適用することにより、一方向において平行で、照度分布が均一な偏光光を被照射物に照射することができる。このため、本発明の光照射装置を液晶表示素子等の配向膜や、3D映像表示装置に使用される位相差フィルムの製造に用いることより、解像度の高く照度分布が均一なパターンを形成することができる。
(4)上記(1)(2)の偏光素子ユニットにおいて、第1の工程で複数の偏光素子のそれぞれの透過率を測定し、第2の工程で、第1の工程において測定した複数の偏光素子のうち、最も低い透過率を示した偏光素子の透過率と同じになるように、その他の偏光素子の透過率を対応する遮光手段により遮光して低下させて、複数の偏光素子の透過率を調整するようにしたので、それぞれ透過率の異なる複数の偏光素子の透過率をそろえて、光照射領域における照度分布を均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施例の光照射装置の全体の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す光照射装置のA−A断面図である。
【図3】光照射領域におけるX方向の照度分布を示す曲線図である。
【図4】本実施例における偏光素子ユニットの構成例を示す図である。
【図5】図4(a)のB−B断面図である。
【図6】遮光板と、偏光素子ユニットを通過する光束との関係を示す図である。
【図7】第1の実施例において、遮光手段を一方の辺のみに設けた場合の光照射領域におけるX方向の照度分布例を示す図である。
【図8】偏光素子ユニットの変形例を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施例の光照射装置の全体の概略構成を示す図である。
【図10】図9に示す光照射装置のA−A断面図である。
【図11】第2の実施例に適用される偏光素子ユニットの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は本発明の第1の実施例の光照射装置の全体の概略構成を示す図であり、図2は図1(a)に示す光照射装置のA−A断面図である。図1(a)は光照射装置の全体の概略構成を示し、図1(b)は光出射部を光出射側から見た図を示す。
図1(a)に示すように、光照射装置は、光出射部10と、光出射部10からの光を反射して線状に集光する反射ミラー40と、反射ミラー40により反射した光を偏光光にする偏光素子ユニット55と、偏光素子ユニット55からの偏光光を縞状に整形するマスク45と、光出射部10のランプに電力を供給する電源部70と、この電源部70を始めとして光照射装置全体の動作を制御する制御部60を備える。
マスク45の下側には、図2に示すように、被照射物(以下ワークともいう)Wを搬送する搬送手段50が設けられている。ワークWは、帯状の長尺のフィルムであり、搬送手段50のローラー51が回転することにより、ワークWの長手方向(図2の左右方向であり、以下この方向をY方向と呼ぶ)に搬送され、ワークWにはマスク45により縞状に整形された偏光光が照射される。
光出射部10は、複数の光源素子21よりなる光源素子列20a,20bにより構成されている。反射ミラー40は、光源素子列20a,20bからの光を、光源素子21が並ぶ一方向(図2の紙面手前奥方向であり、以下X方向と呼ぶ)に伸びるように線状に集光する。
【0010】
光出射部10は、光源素子21が一方向(X方向)に並ぶように配置された光源素子列20a、20bを有し、この光源素子列20a、20bが上下方向(上記X方向に直交する方向、以下Z方向と呼ぶ)に並んで配列され、これらにより光源素子列20が構成される。
光源素子列20における光源素子21は、ショートアーク型放電ランプ30と、この放電ランプ30を取り囲むように配置した、当該ランプからの光(紫外光)を反射するリフレクタ22とを有する。放電ランプ30としては、例えば、波長270nm〜450nmの紫外光を効率良く放射する超高圧水銀ランプを用いることができる。この放電ランプ30は、発光部およびこの発光部の両端に連続するロッド状の封止部を有する発光管を備え、発行管内には、一対の電極が対向して配置されているとともに、水銀、希ガスおよびハロゲンガスが封入されている。このような放電ランプ30においては、一対の電極間の距離が、例えば0.5mm〜2.0mm、水銀の封入量が例えば0.08mg/mm3〜0.30mg/mm3である。
【0011】
リフレクタ22は、その光軸Cを中心とする回転放物面状の光反射面23を有するパラボラミラーにより構成されている。放電ランプ30は、管軸(対向する電極を結ぶ直線)がリフレクタ22の光軸Cと一致するように、かつ、電極間の輝点が、リフレクタ22の焦点Fの位置になるように配置される。また、リフレクタ22の光軸Cは図2の左右方向(Y方向)に平行になるように配列され、各光源素子12から出射する光は、図2に示すように平行光となり、反射ミラー40に入射する。
反射ミラー40は、X方向に垂直な断面が放物線状の光反射面を有するシリンドリカル・パラボラミラーにより構成されており、その長手方向はX方向に沿って伸び、その焦点fが被照射物Wの表面上に位置するように配置されている。
リフレクタ22と反射ミラー40は、ワークWへの光照射(露光)に必要な波長の紫外光のみを反射し、不要な可視光や赤外光を透過するように、波長選択コーティングが施されたミラーである。
マスク45は、X方向に長い矩形の板状のものであり、反射ミラー40の光出射側において、反射ミラー40による反射光の光軸Lに対して垂直な平面に沿って配置されている。このマスク45は、被照射物Wの搬送方向(図面左右方向:Y方向)に沿って伸びる、透光部と遮光部が交互に並ぶ縞状のパターンが形成されている。
【0012】
光源素子列20aにおける光源素子21と、光源素子列20bにおける光源素子21は、図1(b)に示すように、上記Z方向に対して斜め方向に配置されている。すなわち、各光源素子21は、光源素子列20aの光源素子21における放電ランプ30の電極間中心点と、当該光源素子21に最も接近する、他の光源素子列20bの光源素子21における放電ランプ30の電極間中心点とを結ぶ直線Tが、上記X方向に伸びる直線Xと斜交するように配置されている。このため、被照射領域において、均一な照度分布が得られる。
【0013】
図3は、光照射領域におけるX方向の照度分布を示す曲線図である。この図において、縦軸は相対照度、横軸はX方向における相対的な位置を示し、実線は一方の光源素子列20aからの光による光照射領域の照度分布曲線、点線は他方の光源素子列20bからの光による光照射領域の照度分布曲線を示す。
光源素子列20aにおける光源素子21と、光源素子列20bにおける光源素子21が上記Z方向に対して斜め方向に配置されているため、図3に示すように、一の光源素子列20aに係る光源素子21からの光の照射領域の照度のボトム位置に対して、当該光源素子に最も接近する、他の光源素子列20bに係る光源素子21からの光の照射領域の照度のピーク位置が重畳すると共に、光源素子列20bに係る光源素子21からの光の照射領域の照度のボトム位置に対して、光源素子列20aに係る光源素子21からの光の照射領域のピーク位置が重畳する結果、均一な照度分布が得られる。
すなわち、反射ミラー40により集光された光照射領域では、各光源素子列20a,20bにおける各光源素子21からの出射光の照度ピークの山および谷が、各光源素子列毎に、光源素子21が並ぶ一方向において異なる位置に表れ、1方の光源素子列20aの各光源素子21の照度ピークの谷の部分が、他方の光源素子列20bにおける各光源素子21の照度ピークの山の部分によって補償されることにより、照度分布が均一になる。
【0014】
図1、図2に示す光照射装置において、光出射部10の各光源素子21の放電ランプ30から放射された光は、リフレクタ22の光反射面によって反射されて、リフレクタ22の光軸Cに沿った平行光とされて反射ミラー40に向かって出射される。
この光出射部10から出射する平行光は、反射ミラー40における光反射面により下方に向かって反射されて、X方向に伸びる線状に集光され、偏光素子ユニット55を介してマスク45に入射する。マスク45に入射される光は、X方向において互いに平行な平行光である。
マスク45に入射した光は、マスク45の遮光部および透光部によってストライプ状に整形され、被照射物Wに照射されることにより、被照射物Wにおけるローラー51が接する箇所の表面には、マスク45における遮光部および透光部のパターンに対応するストライプ状の光照射領域が形成される。そして、被照射物Wが搬送手段50によってY方向に搬送されることにより、当該被照射物Wに対して、所要の光照射処理が達成される。
【0015】
図4、図5、図6に本実施例における偏光素子ユニット55の構成例を示す。
図4(a)は、偏光素子ユニット55を光出射側から見た平面図、図4(b)は、図4(a)のA−A断面図、図5は、図4(a)のB−B断面図である。なお、図4では偏光素子が4枚の場合を示している。
偏光素子ユニット55は、底板52bと側板52aから構成された枠体52内に、複数(本図では4枚)の平行四辺形状のワイヤーグリッド偏光素子(以下WG偏光素子)55a,55b,55c,55dを一方向に並べて構成したものであり、偏光素子ユニット55のWG偏光素子55a,55b,55c,55dは、反射ミラー40による反射光の光軸に対して垂直な平面に沿って配置されている。
WG偏光素子55a,55b,55c,55dのそれぞれは平行四辺形であり、対向する二辺を、断面がL字形状の偏光素子支持部材53により支持されて、枠体52の底板52bに取り付けられている。
【0016】
隣り合う2枚のWG偏光素子55a〜55dは、隙間から無偏光光が漏れないように、入射する光が通過する方向(光軸方向)に対して、周辺部(端部)が上下に重なり合うように設けられている。そのため、偏光素子支持部材53は、隣の偏光素子支持部材53とWG偏光素子55a〜55dを固定する高さが異なる。
なお、偏光素子支持部材53には、各WG偏光素子55a〜55dを、光軸方向に対して垂直な平面内で回転させる機構が設けられるが、本図では省略して示している。各WG偏光素子55a〜55dは、回転移動時に隣の素子とこすれることがないように、光が通過する方向に関して数ミリの間隔を有して設けられている。
WG偏光素子55a〜55dの形状が平行四辺形であるのは、この形状にすると、WG偏光素子55a〜55dの上下に重なり合った境界部分が、ワークWの搬送方向に対して斜めになるため、境界部分による照度の低い部分がその前後の光照射により照度が補われるので、ワークWに照射する偏光光の照度分布の悪化の影響を小さくすることができるからである。
【0017】
偏光素子ユニット55の各WG偏光素子55a〜55dの光出射側には、並べて配置された個々の各WG偏光素子55a〜55dから出射する光を遮光する遮光手段80が設けられている。
遮光手段80は、遮光板81と、遮光板81とを支持する支持板82から構成され、遮光板81は各WG偏光素子55a〜55dを並べた方向に沿って、並べて配置されている。遮光板81は支持板82に取り付けられ、支持板82は、枠体52の側板52aに取り付けられている。
支持板82には長孔83が形成されており、この長孔83を介して遮光板81が支持体82に、ねじ84により固定される。支持体82に固定された遮光板81は、WG偏光素子55a〜55dの光出射側を覆い、WG偏光素子55a〜55dから出射する光を遮る。
【0018】
図6は、遮光手段80の遮光板81と偏光素子ユニットを通過する光束との関係を示す図である。なお、本実施例においては、遮光手段80を偏光素子ユニット55の光出射側に設け、偏光素子から出射する光を遮光するようにしているが、遮光手段を光入射側に設け、偏光素子に入射する光を遮光するようにしても良い。
ねじ84を緩めれば、遮光板81は支持板82に対して長孔83の伸びる方向に移動させることができ、遮光板81によりWG偏光素子55a〜55dの光出射側を覆う量、即ち遮光量を調整できる。すなわち、各遮光板81は、各WG偏光素子55a〜55dを並べた方向に対して交差する方向に上記枠体52から上記WG偏光素子55a〜55d上への突出量が可変である。
【0019】
本実施例において、遮光手段80は、各WG偏光素子55a〜55dの上下両側(偏光素子支持部材53により支持されている対向する二辺、すなわち偏光素子55a〜55dを並べた方向に平行な対向する二辺)に、1枚のWG偏光素子につき片側4枚、両側合計して8枚取り付けられている。なお、片側4枚の遮光手段80うち1枚は、WG偏光素子の上下に重なり合った境界部分に対応して設けている。
各遮光手段80の遮光板81の長さはそれぞれ単独で設定できる。したがって、偏光素子ユニットから出射する光の量を、偏光素子ユニットの長手方向に関して細かく調整することができる。これにより、光照射領域の照度分布について、細かく微妙な照度の調整ができる。
なお、遮光手段80を上記のように各WG偏光素子55a〜55dの両側に設けることにより、前記図1に示した光源素子列20a及び光源素子列20bのそれぞれの光源素子21からの光を、それぞれ遮光することができ、光照射領域におけるX方向の照度分布を均一化することができる。
遮光手段80を各WG偏光素子55a〜55dの両側の辺に設けず、一方の辺のみに設けた場合、光源素子列20aまたは光源素子列20bの内のいずれかの光源素子21からの光が遮光される割合が大きくなり、光照射領域におけるX方向の照度分布は、必ずしも前記図3に示したように均一にならない。
図7は、遮光手段80を一方の辺のみに設けた場合の、光照射領域におけるX方向の照度分布例を示したものであり、図3と同様、光照射領域におけるX方向の照度分布を示したものである。この場合には、同図に示すように、照度の高いところと低いところが交互に現れ、照度分布を均一にすることができない。
【0020】
遮光子段80の遮光量、即ち遮光板81の長さの設定の手順について説明する。
サンプルとして、偏光素子ユニット55に取り付けるWG偏光素子を一つ取り出し、遮光手段80の遮光板81を使用しない(伸ばさない)状態で、ワークWに照射する紫外線の透過率(以下透過率)を測定する。この例では30%透過率であったとする。
次に、遮光手段80の遮光板81を8枚全て最大限(例えば20mm)に伸ばした状態で、同様に透過率を測定する。その場合の透過率が22%であったとする。遮光板81を伸ばさない場合30%の透過率であったものが、22%になったのであるから、遮光板81を8枚全て最大限に伸ばすことで、透過率は22/30=0.73、即ち約27%透過率が低下したことになる。
同様に、遮光板81を8枚全て15mm伸ばしたときの透過率、10mm伸ばしたときの透過率、5mm伸ばしたときの透過率を測定する。それらの透過率が、それぞれ、25%、27%、29%であったとすると、遮光板81の長さが15mmの場合は透過率が約17%、10mmの場合は透過率が約10%、5mmの場合は透過率が約3%、それぞれ低下することになる。
【0021】
このようにして、遮光板81を伸ばした量(遮光板81の長さ)と低下する透過率との関係をあらかじめ求める。この関係が求められたら、次に偏光素子ユニット55に使用する全ての偏光素子について、遮光手段80を使用しない状態での透過率を測定する。
図4において示した偏光素子ユニットは、4枚の偏光素子55a〜55dを使用しているので、ここでは4枚の偏光素子55a〜55dについて透過率を測定する。その結果、偏光素子55aの透過率は35%、偏光素子55bの透過率は30%偏光素子55cの透過率は33%、偏光素子55dの透過率は40%であったとする。
各偏光素子の透過率がわかったところで、全ての偏光素子の透過率が、最も低い値を示した偏光素子の透過率になるように、遮光手段80の遮光板81の長さを設定する。この場合は偏光素子55bの透過率30%なるように、他の偏光素子55a,55c,55dの遮光板81の長さを調整する。
【0022】
偏光素子55aの透過率は35%である。この透過率を30%にするためには、30/35=0.86、約14%透過率を低下させればよい。あらかじめ求めている遮光板81の長さと透過率の関係により、遮光板81の長さが15mmの場合は透過率が約17%低下し、10mmの場合は透過率が約10%低下することがわかっている。そのため、約14%透過率を低下させるためには、遮光板81の長さを10mmから15mmの間に設定すればよい。
また、透過率33%の偏光素子55cの透過率を30%にするためには、約9%透過率を低下させればよいので、遮光板81の長さを約10mmに設定する。同様に、透過率は40%の偏光素子55dの透過率を30%にするためには、約25%透過率を低下させればよいので、遮光板81の長さを20mm弱に設定する。
このようにして、遮光手段80の遮光量、即ち遮光板81の長さの設定し、実際にランプ30を点灯し、光照射領域での照度分布を測定する。微妙な照度分布の調整が必要な場合は、各遮光手段80の遮光板81の長さを調整して行う。
このように、遮光手段は、それぞれ透過率の異なる複数の偏光素子の透過率を(最も透過率の低い偏光板の透過率に)そろえることにより、光照射領域における照度分布を均一にするものである。したがって、遮光手段は、各偏光素子に少なくとも1個必要である。そして、各々の遮光手段による遮光量、具体的には遮光板の長さは、他の遮光手段に対して独立して調整設定ができなければならない。
【0023】
本実施例においては、1枚のWG偏光素子につき4個の遮光手段80を設けている。その理由は以下の通りである。
WG偏光素子の周辺部(境界部分)は隣のWG偏光子と、光が透過する方向に対して重なっている。そのため、その部分は他の部分に比べて透過率が低下する。そのため、光照射領域全体の照度分布を均一にするためには、WG偏光素子の周辺部については、遮光板の長さを短くして、遮光する量を少なくしなければならない場合がある。したがって、WG偏光素子の周辺部に対応する遮光板については、他の位置の遮光手段と独立して遮光板の長さを調整できるようにしておく必要がある。
また、本実施例においては、光出射部10は複数の光源素子21より構成されている。個々の光源素子21はそれぞれ照度分布を有している。そのため、光照射領域の照度分布に、個々の光源素子21の照度分布が影響する場合がある。
そのため、遮光手段は、WG偏光素子の透過率の個体差を調整するだけでなく、個々の光源素子21の照度分布を均一にできるようにすることが望ましい。そのためには、遮光手段の数を増やして、各部分を通過する光量の調整を行えるようにしておく。
【0024】
図4、図5に示した実施例では、支持板82に長孔83を形成し、この長孔83を介して遮光板81を支持体82にねじ84により固定し、ねじ84を緩めて遮光板81を長孔83に沿って移動させ、遮光量を調整できるように構成したが、遮光量の調整はその他の方法でも行うことができる。
図8は上記実施例の変形例を示す図であり、図8(a)は、偏光素子ユニット55を光出射側から見た平面図、図8(b)は、図8(a)のA−A断面図であり、図8(a)のB−B断面図は、前記図5と同様であるので省略している。
図8に示す変形例は、遮光板81を交換することにより、遮光量を調整できるようにしたものである。すなわち、同図(c)に示すように、長さの異なる遮光板81を予め複数用意しておき、この複数の遮光板81の中から適切な長さの遮光板81を選択して、上記支持板82にねじ84等で取り付け、遮光量を調整する。
【0025】
図9は本発明の第2の実施例の光照射装置の全体の概略構成を示す図であり、図10は図9(a)に示す光照射装置のA−A断面図である。
本実施例の光照射装置は、前記図1,図2において、光出射部10を一列の光源素子列20から構成したものであり、その他の構成は図1、図2に示したものと同様である。
すなわち、図9に示すように、光照射装置は、光出射部10と、光出射部10からの光を反射して線状に集光する反射ミラー40と、偏光素子ユニット55と、マスク45と、光出射部10のランプに電力を供給する電源部70と、この電源部70を始めとして光照射装置全体の動作を制御する制御部60を備える。
マスク45の下側には、図2に示すように、被照射物(以下ワークともいう)Wを搬送する搬送手段50が設けられ、搬送手段50のローラー51が回転することにより、ワークWの長手方向(Y方向)に搬送され、ワークWにはマスク45により縞状に整形された偏光光が照射される。
【0026】
光源素子列20における光源素子21は、前記した超高圧水銀ランプ等のショートアーク型放電ランプ30と、回転放物面状の光反射面23を有するパラボラミラーにより構成されるリフレクタ22とを有する。
放電ランプ30は、管軸がリフレクタ22の光軸Cと一致するように、かつ、電極間の輝点が、リフレクタ22の焦点Fの位置になるように配置され、各光源素子12から出射する光は、図2に示すように平行光となり、反射ミラー40に入射する。
反射ミラー40は、X方向に垂直な断面が放物線状の光反射面41を有するシリンドリカル・パラボラミラーにより構成されており、その長手方向はX方向に沿って伸び、その焦点fが被照射物Wの表面上に位置するように配置されている。
【0027】
図9、図10の光照射装置の動作は前記図1、図2に示したものと同じであり、前記したように、光出射部10の各光源素子21の放電ランプ30から放射された光は、リフレクタ22の光反射面によって反射されて、リフレクタ22の光軸Cに沿った平行光とされて反射ミラー40に向かって出射され、反射ミラー40における光反射面により下方に向かって反射されて、X方向に伸びる線状に集光され、偏光素子ユニット55を介してマスク45に入射する。
マスク45に入射した光は、マスク45の遮光部および透光部によってストライプ状に整形され、被照射物Wに照射されることにより、被照射物Wにおけるローラー51が接する箇所の表面には、マスク45における遮光部および透光部のパターンに対応するストライプ状の光照射領域が形成される。そして、被照射物Wが搬送手段50によってY方向に搬送されることにより、当該被照射物Wに対して、所要の光照射処理が達成される。
【0028】
図11は、図9、図10に示した光照射装置に適用される偏光素子ユニットの構成例を示す図である。図11(a)は、偏光素子ユニット55を光出射側から見た平面図、図11(b)は、図11(a)のA−A断面図であり、図11(a)のB−B断面図は、遮光手段が片側のみに設けられている点を除き前記図5と同様であるので省略している。
本実施例の偏光素子ユニット55は、前記遮光手段80を各WG偏光素子55a〜55dの片側(偏光素子支持部材53により支持されている対向する二辺の内の一辺)に設けたものであり、その他の構成は図4、図5に示したものと同様である。
すなわち、底板52bと側板52aから構成された枠体52内に、複数の平行四辺形状のWG偏光素子55a,55b,55c,55dが一方向に並べて配置される。WG偏光素子55a,55b,55c,55dのそれぞれは平行四辺形であり、対向する二辺を、断面がL字形状の偏光素子支持部材53により支持されて、枠体52の底板52bに取り付けられている。
【0029】
隣り合う2枚のWG偏光素子55a〜55dは、隙間から無偏光光が漏れないように、入射する光が通過する方向(光軸方向)に対して、周辺部(端部)が上下に重なり合うように設けられている。
偏光素子ユニット55の各WG偏光素子55a〜55dの光出射側の片側には、遮光手段80が設けられている。
遮光手段80は、前記したように遮光板81と、遮光板81とを支持する支持板82から構成され、遮光板81は各WG偏光素子55a〜55dを並べた方向に沿って、並べて配置されている。遮光板81は支持板82に取り付けられ、支持板82は、枠体52の側板52aに取り付けられている。
支持板82には長孔83が形成されており、この長孔83を介して遮光板81が支持体82に、ねじ84により固定される。ねじ84を緩めれば、遮光板81は支持板82に対して長孔83の伸びる方向に移動させることができ、遮光板81によりWG偏光素子55a〜55dの光出射側を覆う量、即ち遮光量を調整できる。
【0030】
本実施例においては、図9、図10に示したように、光出射部10の光源素子列20は一列であるので、遮光手段80を図4に示したように両側に設ける必要はなく、上記のように片側に設けることで、光の均一度を損なうことなく、遮光量を調整し、光照射領域の照度分布を細かく微妙に調整することができる。
なお、本実施例においても、前記図8に示したように、遮光板81を交換することにより、遮光量を調整するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
10 光出射部
20,20a,20b 光源素子列
21 光源素子
22 リフレクタ
30 放電ランプ
40 反射ミラー
45 マスク
50 搬送手段
51 ローラー
52 枠体
52a 側板
52b 底板
53 偏光素子支持部材
55 偏光素子ユニット
55a,55b,55c,55d 偏光素子
60 制御部
70 電源部
80 遮光手段
81 遮光板
82 支持板
W 被照射物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を偏光する偏光素子ユニットであって、
複数のワイヤーグリッド偏光素子を、各々の端部が光源からの光が通過する方向に重なるように枠体内に一方向に並べて配置し、
上記枠体には、並べて配置した個々の偏光素子に対応して、各偏光素子を通過する光を遮光する遮光手段が設けられ、
上記遮光手段は、上記一方向に沿って並べて配置され、各遮光手段は上記一方向に対して交差する方向に上記枠体から上記偏光素子上への突出量が可変である
ことを特徴とする偏光素子ユニット。
【請求項2】
上記遮光手段は、1枚の偏光素子に対して複数設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の偏光素子ユニット。
【請求項3】
複数の光源素子を一方向に並べた光出射部と、
該光出射部から出射する光を反射して、前記一方向に伸びる線状に集光する反射ミラーと、
前記反射ミラーの光出射側に設けられ、該反射ミラーにより反射された光を偏光する偏光素子を備えた偏光素子ユニットとを備え、
前記一方向に対して直交する方向に搬送されるワークに対して、上記偏光素子ユニットにより偏光した偏光光を照射する光照射装置において、
上記偏光素子ユニットとして、請求項1または請求項2の偏光素子ユニットを用いた
ことを特徴とする光照射装置。
【請求項4】
複数の偏光素子を、各々の端部が光源からの光が通過する方向に重なるように枠体内に一方向に並べて配置し、該枠体に、並べて配置した個々の偏光素子に対応して、各偏光素子を通過する光を遮光する遮光手段が設けられた偏光素子ユニットにおける透過率の設定方法であって、
上記複数の偏光素子のそれぞれの透過率を測定する第1の工程と、
上記第1の工程において測定した複数の偏光素子のうち、最も低い透過率を示した偏光素子の透過率と同じになるように、その他の偏光素子の透過率を対応する遮光手段により遮光することで低下させる第2の工程とを含む
ことを特徴とする偏光素子ユニットの透過率の設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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