説明

偏向装置および粒子線治療装置

【課題】患者体軸周りの複数の方向から照射可能な粒子線治療装置およびその偏向装置のコスト低減を図る。
【解決手段】偏向装置は上流から第1偏向電磁石3と第2偏向電磁石4と第3偏向電磁石(スプリット式トンネル型電磁石)5とを配置する。第3電磁石装置5はトンネル形状の電磁石を間隙部15を設けて患者体軸方向に連設するように構成される。トンネル形状は患者体軸が貫通可能な空洞部16を有する。間隙部15はスプリットを形成する。制御装置40が適切な偏向装置3〜5の励磁電流量を指令すると、粒子線ビーム1は偏向電磁石3,4により略平行にオフセットされ、第3偏向電磁石5による磁場空間において、円軌道を描きながら、患部に照射される。これにより患者体軸周りの複数の方向から照射が可能となる。偏向装置は、患者2と同じ程度の高さに固定して据え付けられ、空間的な移動を伴わない。これによりコスト低減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者体軸周りの複数の方向から照射可能な粒子線治療装置の偏向装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子線治療においては、患部に必要な照射量の粒子線を照射する際、複数の方向から患部に向かって照射を行うことにより、照射が必要でない健全組織の照射密度を軽減する、いわゆる多方向照射が一般に行われている。
【0003】
従来、この多方向照射を実現する装置には、照射系のビームラインごと、患者の体軸周りに回転させる回転ガントリを用いるものがある(例えば、特許文献1参照)。また、偏向磁石装置を患者の体軸に対して半径方向に動かす、あるいは半径方向に長い磁極をもつ偏向磁石を利用して、一旦半径方向に大きくビームを逸らせ、患者の方向に向かわせることで患者への照射角度を変えるものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−47287号公報
【特許文献2】特開平6−214100号公報(図9、図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように、多くの粒子線治療装置の照射系では、多方向照射を行うために、照射系のビームラインごと、患者の体軸周りに回転させる回転ガントリが用いられてきた。しかし回転ガントリは、その回転アーム内に複数の鉄心磁極付き偏向電磁石等の重量物を有する為、重力によるたわみが生じる。このたわみにより、粒子線の方向はわずかに変化する。一方、粒子線治療では、極めて高精度な照射が要求されるため、このたわみによる粒子軌道の誤差を極力小さくすることが求められる。そこで、このたわみによる悪影響を極力少なくするには、回転ガントリの支持部材を高剛性なものにせざるを得ない。またアームの回転角によって、重力の作用する方向が異なってくるため、その曲げ剛性を確保すべき方向は多方向に及ぶ。そのため、極めて剛性の高い支持部材を多数用いることになって重量が増し、その結果軸受けや土台に掛かる荷重も増すことになる。これにより軸受けや土台の高剛性化が必要になって、全体の物量と重量はさらに増加する。これが回転ガントリを有する粒子線治療装置を高コストなものにしている要因である。
【0006】
また回転ガントリは、アームの最大半径の部分を360度納めるような円筒形または円筒の籠状のものとなり、その空間に占める体積は非常に大きく、これを施設内に収めるために巨大な建屋が必要となる。その結果、施設全体の建設費の増大を招く。これらが、粒子線治療装置の施設建設を高コストなものとしている大きな要因であり、これまで、粒子線治療装置を普及させていく上での障害となっていた。
【0007】
このように、特許文献1記載の回転ガントリを有する粒子線治療装置はコストに係る課題があった。
【0008】
一方、特許文献2の図7〜18には、回転ガントリを用いないで、ビームの照射方向をある程度変えることのできる粒子線治療装置が開示されている。通常、粒子線治療を行う場合、患者を水平なベッドの上に寝かせ、水平に寝かせた患者の体軸の直交方向からビームを照射する。このとき特許文献2の図7では、水平方向からビームを照射する場合には、患者と同じ高さからビームを照射し、患者に対して垂直方向、即ち患者の上部側からビームを照射する場合には、患者の上部の方向に偏向用の電磁石を移動する。その場合、重量物である偏向電磁石を上部に移動するためには、頑丈な支持構造物や移動させる機構が必要となり、また、非常に高い天井高さの建屋が必要となる。
【0009】
また特許文献2の図9では、磁極が極めて長い固定式の電磁石を用いて照射方向を切り替える粒子線治療装置も提案されている。しかしこれらにおいても、高い天井高さの建屋が必要になる。また、極めて長い磁極の電磁石を作成することは大幅なコスト増となる。
【0010】
このように、特許文献2記載の粒子線治療装置は、回転ガントリを有する粒子線治療装置と同様に、コストに係る課題があった。
【0011】
さらに、特許文献2記載の粒子線治療装置のような機構の場合、偏向電磁石を固定する位置、偏向電磁石を動かせる範囲、偏向電磁石の長い磁極がカバーできる範囲の制約により、ビームを照射できる角度に制約が生じ、必ずしも任意の角度から照射できるという訳ではない。
【0012】
本発明の目的は、コスト低減を図りつつ、患者体軸周りの複数の方向から照射可能な粒子線治療装置およびその偏向装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、荷電粒子線ビームを患者の患部に照射する粒子線治療装置の偏向装置であって、この偏向装置は、入射した荷電粒子線ビームを、一の方向へビームを曲げて位置をずらすように偏向する第1電磁石装置と、この第1電磁石装置より下流側に設けられ、前記第1電磁石装置で偏向された荷電粒子線ビームを、前記一の方向と逆の方向へ位置をずらすように偏向する第2電磁石装置と、この第2電磁石装置より下流側に設けられ、患者体軸が貫通可能なトンネル形状の電磁石を間隙部を設けて患者体軸方向に連設して構成されるスプリット式の第3電磁石装置と、患者体軸を中心とした任意の角度から照射できるよう前記第1電磁石装置、第2電磁石装置、第3電磁石装置の励磁量を制御する制御手段と、を備える。
【0014】
本発明においては、偏向装置の第1〜3電磁石装置が荷電粒子線ビームを偏向することにより、患者体軸周りの複数の方向から照射が可能となる。
【0015】
偏向装置の第1〜3電磁石装置は、患者と同じ程度の高さに固定して据え付けられ、空間的な移動を伴わない。これにより、回転ガントリや重量物である偏向電磁石を移動させる機構やこれらに付随する構成(高剛性フレーム等)が不要になる為、粒子線治療装置自体のコスト低減を図ることができる。
【0016】
さらに、第3偏向電磁石により発生する患者体軸方向の磁場空間にて患者への照射がおこなわれる。これにより、患部直前において荷電粒子線ビームは非常に小さな円軌道を描き、患部への集中的な照射ができるとともに、健全組織への不必要な照射が軽減できる。
【0017】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記第2電磁石装置は、ビーム基軸から離れるに従って拡幅する断面形状を有する。
【0018】
これにより、エネルギー分散に起因する荷電粒子線ビームのズレを抑制し、より正確な照射ができる。
【0019】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記第1電磁石装置および第2電磁石装置は、それぞれ間隙部を有し、偏向装置は、前記第1電磁石装置の間隙部と前記第2電磁石装置の間隙部と前記第3電磁石装置の間隙部とに介挿され、その内部においてビームが通過する真空容器を備える。
【0020】
これにより、荷電粒子線ビーム1が大気中の分子に衝突して散乱されるのを避けることができる。
【0021】
(4)上記(3)において、前記真空容器は、患者体軸が貫通可能な略半円形の貫通孔を設ける。
【0022】
この貫通孔が、第3電磁石装置の患者体軸が貫通可能なトンネル形状と対応して配置されることにより、照射室が形成される。
【0023】
(5)上記(3)において、前記第1電磁石装置および第2電磁石装置は、ビーム基軸に対し対称に偏向可能であり、前記真空容器は、患者体軸が貫通可能な円形の貫通孔を設ける。
【0024】
これにより、患者体軸を中心とした360度照射を行うことができる。
【0025】
(6)上記(3)において、偏向装置は、ビームモニタと、このビームモニタを患者体軸周りに移動可能にするビームモニタ移動機構と、を更に備える。
【0026】
(7)上記(6)において、前記ビームモニタは、シンチレータである。
【0027】
(8)上記(1)において、偏向装置は、前記第1電磁石装置より上流側に設けられ、荷電粒子線ビームを走査するスキャニング電磁石を更に備える。
【0028】
(9)上記(1)において、前記荷電粒子線ビームの荷電粒子は、陽子より重い重粒子である。
【0029】
(10)本発明において、粒子線治療装置は上記(1)〜(9)の偏向装置を備える。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、スプリット式トンネル型電磁石(第3電磁石装置)による荷電粒子線ビームの偏向により、患者体軸周りの複数の方向から照射が可能となる。
【0031】
偏向装置の第1〜3電磁石装置は、患者と同じ程度の高さに固定して据え付けられ、空間的な移動を伴わない。これにより、回転ガントリや重量物である偏向電磁石を移動させる機構やこれらに付随する構成(高剛性フレーム等)が不要になる為、粒子線治療装置自体のコスト低減を図ることができる。
【0032】
さらに、偏向装置が空間的な移動を伴わないことにより、建屋の小型化(通常の病院の治療室程の天井高さ)を図ることができ、施設建設に係るコスト低減を図ることができる。
【0033】
したがって、全体のコスト低減を図り、粒子線治療装置の普及に貢献できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態の偏向装置の概略構成を示す図である。
【図2】第1偏向電磁石3および第2偏向電磁石4の詳細構成図である。
【図3】特徴的構成であるスプリット式トンネル型電磁石(第3偏向電磁石)5の詳細構成図である。
【図4】真空容器30の詳細構成図である。
【図5】一般的な照射効果について説明する図である。
【図6】第1実施形態の照射効果について説明する図である。
【図7】第2実施形態の偏向装置の概略構成を示す図である。
【図8】第1実施形態のエネルギー分散に係る課題を説明する図である。
【図9】第1実施形態のエネルギー分散に係る課題を更に説明する図である。
【図10】第2実施形態におけるエネルギー分散に起因するビームズレの抑制効果を説明する図である。
【図11】第2実施形態におけるエネルギー分散に起因するビームズレの抑制効果を更に説明する図である。
【図12】第3実施形態の偏向装置の概略構成を示す図である。
【図13】真空容器30Bの詳細構成図である。
【図14】第3実施形態特有の偏向装置の動作を説明する図である。
【図15】一般的な重粒子照射にかかる課題を説明する図である。
【図16】第4実施形態の飛散低減効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0036】
〜構成〜
本実施形態の粒子線治療装置の基本構成および基本動作について説明する。なお基本構成に付き図示を省略する。イオン源にて発生した荷電粒子ビームは、低エネルギービーム輸送装置を通過して主加速器であるシンクロトロンに入射され、このシンクロトロンで治療に必要とされるエネルギーまで加速される。シンクロトロンから出射された荷電粒子ビームは、ビーム輸送系を経て照射装置に達し、照射装置から出射される。本実施形態の偏向装置は、照射装置から出射された荷電粒子線ビーム1を偏向し、患者2の患部に照射する。
【0037】
図1は、本実施形態の偏向装置の概略構成を示す図である。本実施形態の偏向装置において、上流側からスキャニング電磁石6a,6bと、第1偏向電磁石3と、第2偏向電磁石4と、第3偏向電磁石5とが配置されている。
【0038】
図2は、第1偏向電磁石3および第2偏向電磁石4の詳細構成図であり、ビーム軸方向からみた断面図である。第1偏向電磁石3、第2偏向電磁石4は、鉄心ヨーク付きの2極電磁石が好適である。第1偏向電磁石3および第2偏向電磁石4は患者体軸方向(と平行な方向)の磁場を発生する。また、荷電粒子線ビーム1の軌道を含む平面に対応するようにそれぞれ、間隙部13,14が設けられている。
【0039】
図3は、本実施形態の特徴的構成であるスプリット式トンネル型電磁石(第3偏向電磁石)5の詳細構成図であり、ビーム軸方向からみた断面図である。第3偏向電磁石5は、空芯の超電導電磁石が好適であり、ドーナツ状のクライオスタット8内に納められた超電導コイル9aによる1対の電磁石を患者体軸方向に連設して構成し、それらの間には、間隙部15を設けている。第3偏向電磁石5は、患者体軸方向の磁場を発生する。2つの超電導電磁石の間には強力な電磁吸引力が作用するため、支持部材12がこれらを支持する。
【0040】
電磁石のドーナツ形状は、トンネル形状やトーラス形状と呼ぶことができ、患者体軸が貫通可能な空洞部16を有する。間隙部15は、第3偏向電磁石5のスプリットを形成する。これら形状的特徴により、第3偏向電磁石5は、スプリット式トンネル型電磁石やダブルドーナツ型電磁石と呼ばれる。
【0041】
空洞16には移動ベッド17に安置された患者2が配置され、これにより照射室18が形成される。
【0042】
クライオスタット8内には、主磁場を生成する主コイルである超電導コイル9aの他に、主磁場と逆向きの磁場を生成して漏洩磁場を低減するシールドコイル9bが収められている。シールドコイル9bにより漏洩磁場を低減した電磁石はアクティブシールド型と呼ばれ、MRI装置などにも用いられている。
【0043】
ここで、患者体軸とは、患者2の頭から足へ通る中心軸をいう。更に本明細書では、治療時に患者2が粒子線治療装置内の移動ベッド17に安置された際に、患者体軸が形成する軸線も患者体軸とよぶ。
【0044】
偏向電磁石3〜5は、それぞれ電源43〜45から供給される励磁電流により励磁される。制御装置40は、それぞれの励磁電流量を制御する(図1参照)。
【0045】
第1偏向電磁石3の間隙部13と第2偏向電磁石4の間隙部14と第3偏向電磁石5の間隙部15には、真空容器30が介挿される(図1〜3参照)。図4は、真空容器30の詳細構成図である。真空容器30は、荷電粒子線ビーム1が大気中の分子に衝突して散乱されるのを避けるため、照射室18の直前まで、ビーム経路を真空に保つ。荷電粒子線ビーム1は偏向電磁石3〜5により偏向されるため、真空容器30は、患者の体軸方向から見て、複数のビーム軌道をすべて覆うような幅広の形状となる。一方、間隙部13〜15に介挿されるように、真空容器30は、ビーム軸方向からみて幅の狭い形状となる(図2〜3参照)。
【0046】
なお、この真空容器30の幅は、後述するように荷電粒子線ビームを患者体軸方向にスキャンする範囲の大きさに応じて設計する。真空容器30の幅を広くすれば、それだけ患者体軸方向の広い範囲に荷電粒子線ビーム1をスキャンできる。しかし偏向電磁石3〜5の磁極間(間隙部13〜15)が広げられるため、同じ強さの磁場を得るためには、その分高い起磁力(通常、巻き線の巻き数と通電電流の積で表される)が必要になる。一方、患者体軸方向へのスキャンには、移動ベッド17を動かし、患者2の位置を患者体軸方向に移動させる方法を採ることも可能であるから、必ずしも真空容器30の幅を大きく広げる必要はない。
【0047】
真空容器30は、空洞部17(照射室18)に対応する位置に、患者体軸が貫通可能な略半円形の貫通孔31を設ける。貫通孔31を形成する曲面には、空気の流入を遮断しかつ高エネルギーの荷電粒子線ビーム1を透過させる薄い膜(図示せず)が貼られ、開口部32が形成される。
【0048】
真空容器30の開口部32外側(大気側)付近には、モニタ系33が設置される。モニタ系33は、ビーム強度や位置・形状を測定するビームモニタと位置決め用の検出器から成る。従来は電離式の位置検出器の性能を持たせたプロファイルモニタが用いられてきたが、本発明では照射室に強磁場が印加されるため、電離式の位置検出器を用いることができない。しかしシンチレータを用いた検出器が開発されており、位置検出できるファイバシンチレータも存在する。これらは位置検出を目的とする場合、従来のマルチアノード型などの光電子増倍管を用いる必要はなく、CCDなどのカメラやセンサを用いることができ、これらは磁場中でも使用できる。
【0049】
真空容器30は、貫通孔31の周状に沿ってモニタ系33を患者体軸周りに移動可能にするモニタ移動機構34を設ける。モニタ移動機構33は、貫通孔31の周状に沿って設けてられたレールとモータを有する。また、貫通孔31の周状に沿って動くアームでもよい。これにより、開口部32の任意の位置から大気に出射された荷電粒子線ビーム1を捉え、その位置をモニタできる。
【0050】
スキャニング電磁石6a,6b(図1参照)について説明する。粒子線治療では、患部の広がりに応じて荷電粒子線ビームを照射する必要がある一方、患部以外の健全組織にはできるだけ荷電粒子線ビームを照射しないことが求められる。従来の装置では、患者の手前でウォブラ電磁石と呼ぶもので一旦ビームを広げ、患部の形状に合わせて荷電粒子線ビームを透過させるボーラスと呼ばれる器具に通すことで、この要件を満足させていた。しかし近年、より進んだ方法として、ペンシルビームと呼ぶ細い荷電粒子線ビームを、患部に沿ってスキャンしていくスポットスキャニング方式が開発され、用いられるようになってきた。
【0051】
本実施形態においては、患者の手前にウォブラ電磁石やボーラスを設置する必要のないスポットスキャニング方式が好適である。スキャニング磁石6a,6bは、荷電粒子線ビームを微小に偏向させ、患者に到達する荷電粒子線ビームの位置を移動させる。スキャニング磁石6a,6bは偏向電磁石3〜5の上流に配置され、スキャニング磁石6a,6bにより偏向された荷電粒子線ビームは患者に照射されるまで長い距離を飛行する。これにより、スキャニング磁石6a,6bは僅かな偏向角で大きなスキャン幅を得ることができる。そのためスキャニング磁石6a,6bは偏向電磁石3〜5と比較して小型化することができる。その結果、スキャニング磁石6a,6bのインダクタンスは小さく、高速なスキャニングが可能になる。
【0052】
スキャニング磁石6aは、偏向電磁石3〜5と同様に患者体軸方向の磁場を発生し、患者周方向にスキャンする。スキャニング磁石6bは、上下方向の磁場を発生し、患者体軸方向にスキャンする。これにより、患者周方向と患者体軸方向に広がりをもつ患部の照射部位を隈なく照射できる。なお、深さ方向(患者体軸からみて半径方向)のスキャンは、荷電粒子線ビームの加速度エネルギーを変え、後述するブラッグピークの位置を調整することにより行う。これにより3次元的な患部の広がりを正確に捉えて照射できる。
【0053】
なお、スキャニング電磁石6a,6bと同様の軌道の偏向は、偏向電磁石3〜5の励磁量を変化させることでも可能であるが、これらの電磁石は大型であるためにインダクタンスが大きく、励磁量を高速に変化させるには高い電源電圧が必要となり、好適ではない。
【0054】
〜動作〜
本実施形態の偏向装置の動作について図1を用いて説明する。
【0055】
制御装置40が無励磁状態(電源43〜45の励磁電流量がゼロ)になる様に制御すると、偏向電磁石3〜5は磁場を発生せず、荷電粒子線ビーム1は偏向されず、患者2の図示右側から照射される。本明細書では、このときのビーム軸をビーム基軸50とよぶ。患者体軸を中心とした照射角度は0度となる。このときの粒子線ビーム1を軌道51とする。
【0056】
制御装置40が電源43にある励磁電流量を指令すると、第1偏向電磁石3は図示表面から裏面方向へ磁場を発生する。粒子線ビーム1は図示上方へ偏向される。一方、制御装置40は電源44に同量でマイナスの励磁電流量を指令し、第2偏向電磁石4は図示裏面から表面方向へ磁場を発生する。第1偏向電磁石3により偏向された粒子線ビーム1は図示下方へ偏向される。
【0057】
これにより、粒子線ビーム1が励磁電流量に応じたオフセット量56だけビーム基軸50から上方にオフセットされる。なお、本実施形態では、説明の単純化のためビーム基軸50と略平行にオフセットされるが、必ずしも平行である必要はない。
【0058】
制御装置40は電源45に励磁電流量を指令すると、第3偏向電磁石5は図示裏面から表面方向へ磁場を発生する。オフセットされた粒子線ビーム1は図示下方へ偏向される。このとき、制御装置40は、偏向された荷電粒子線ビーム1が患者2の患部に照射するように、励磁電流量を演算する。
【0059】
偏向電磁石3〜5に供給される励磁電流量と照射角度の関係について更に説明する。
【0060】
制御装置40が低励磁状態(電源43〜44の励磁電流量が第1所定量)になる様に制御したときの粒子線ビーム1を軌道52とする。更に、制御装置40が電源45の励磁電流量が第2所定量になる様に制御すると、粒子線ビーム1は第3偏向電磁石により偏向され、患者2の図示上側から照射される。このとき照射角度は90度となる。
【0061】
制御装置40が高励磁状態(電源43〜44の励磁電流量が第1所定量より多い第3所定量)になる様に制御したときの粒子線ビーム1を軌道53とする。更に、制御装置40が電源45の励磁電流量が第2所定量より多い第4所定量になる様に制御すると、粒子線ビーム1は第3偏向電磁石により更に偏向され、患者2の図示左側から照射される。このとき照射角度は180度となる。
【0062】
上記説明では、無励磁状態時には照射角度0度になり、低励磁状態時には照射角度90度になり、高励磁状態時には照射角度180度になる旨を説明したが、励磁電流量を連続的に変化することにより、照射角度も連続的に変化する。これにより、粒子線治療装置は患者体軸周りの任意の方向から照射可能となる。
【0063】
なお、患者体軸方向については、移動ベッド17ごと患者2を移動して、照射位置を調整する。
【0064】
〜効果1〜
動作の説明で述べたとおり、本実施形態の粒子線治療装置は患者体軸周りの任意の方向から照射可能となる。本実施形態では更に下記の効果を有する。
【0065】
まず、コスト低減の効果について説明する。
【0066】
偏向装置の偏向電磁石3〜5は、患者2と同じ程度の高さに固定して据え付けられ、空間的な移動を伴わない。これにより、回転ガントリや重量物である偏向電磁石を移動させる機構やこれらに付随する構成(高剛性フレーム等)が不要になる為、粒子線治療装置自体のコスト低減を図ることができる。
【0067】
さらに、偏向装置が空間的な移動を伴わないことにより、建屋の小型化(通常の病院の治療室程の天井高さ)を図ることができ、施設建設に係るコスト低減を図ることができる。
【0068】
また、偏向電磁石3〜5の小型化により、さらにコスト低減を図ることができる。第1偏向電磁石3、第2偏向電磁石4、第3偏向電磁石5に必要となる磁束密度の大きさと偏向半径を計算する。粒子線として陽子を想定し、最大エネルギーを250MeVとする。相対論を考慮した陽子のエネルギーEと運動量pの関係式
【0069】
【数1】

【0070】
から、相対論的な運動量pは
【0071】
【数2】

【0072】
と書ける。ここで、mpは陽子の静止質量で
【0073】
【数3】

【0074】
cは光の速度で
【0075】
【数4】

【0076】
である。
陽子のエネルギーEは、運動エネルギーKと静止エネルギーmpc2の和である。陽子の運動エネルギーKは陽子の電荷qと加速電圧Vの積で表現される。したがって、250MeVの陽子のエネルギーは
【0077】
【数5】

【0078】
と計算される。数式2に数式3〜数式5の値を代入すると、250MeVの陽子の運動量pは
【0079】
【数6】

【0080】
である。
磁束密度B=2[T]中の250MeVの陽子の偏向半径Rは、
【0081】
【数7】

【0082】
と計算される。また磁束密度B=4[T]中の250MeVの陽子の偏向半径Rは、同様にR=0.61[m]と計算される。図1の人間の大きさから、第1偏向電磁石3、第2偏向電磁石5における偏向半径を1.22[m]程度とすればよく、その場合、式7から2[T]の磁場が必要である。また第3偏向電磁石5の偏向半径は0.61[m]程度とすれば良く、その場合4[T]の磁場が必要である。これらの磁場は超電導コイルを用いることで実現可能である。
【0083】
〜効果2〜
本実施形態では更に照射効果集中に係る効果を有する。
【0084】
図5は、一般的な照射効果について説明する図である。
【0085】
従来の一般的な照射は無磁場空間にておこなわれる。図5(a)に示すように、無磁場空間において、荷電粒子線ビーム1は体表面23から体内24の深部へと入射していく。荷電粒子は、体表面23に入射してから体組織を構成する原子と衝突し、徐々にエネルギーを失う。しかし体表面付近では高いエネルギーを保持しているため、体組織の原子との非弾性散乱の断面積は相対的に小さく、この領域で失うエネルギーは少ない。これは体組織側から見れば照射によるダメージが少ないことを意味する。しかし体内の深部に侵入していくにつれ、荷電粒子のエネルギーは徐々に低下していく。荷電粒子のエネルギーがある程度小さくなると、体組織を構成する原子との非弾性散乱の断面積は急激に大きくなる。その段階では、体組織側から見た照射によるダメージ、即ち照射効果が急激に増加するようになる。その後、さらにエネルギーを失って荷電粒子が停止すると照射効果はゼロになる。
【0086】
図5(b)は粒子の体表面23からの侵入深さ25に対する照射効果26の大きさの変化を示す。このように照射効果はある所でピーク27を形成し、このピーク27をブラッグピークと呼ぶ。粒子線治療では、このブラッグピークが患部の位置に合致するように粒子のエネルギーを調整する。
【0087】
図5(a)に示すように、無磁場空間においては、荷電粒子線ビーム1の軌道は直線軌道になる。また、図5(b)に示すように、ブラッグピークは深部方向にある程度の幅28を持つ。このピーク幅28はより小さい方が、より患部領域に集中的な照射ができるようになり望ましい。例えば、内臓の表皮にできる扁平上皮癌の治療においては、患部領域が深部方向に狭く、より集中的な照射が求められる。
【0088】
図6は、本実施形態の照射効果について説明する図である。
【0089】
本実施形態の照射は、第3偏向電磁石5により発生する患者体軸方向の磁場空間にておこなわれる。図6(a)に示すように、磁場空間において、円軌道を形成しながら荷電粒子線ビーム1は体表面23から体内24の深部へと入射していく。体表面23に入射した荷電粒子は徐々にエネルギーを失うため、数式7が示すように円軌道の半径が縮小していく。このため、エネルギーを完全に失う直前では、非常に小さな円軌道を描くようになる。このため、ある侵入深さ25において照射効果の集中が起こる。
【0090】
図6(b)は本実施形態の照射効果26を示す。照射効果の集中により、ピーク幅28が狭く非常に鋭いブラッグピーク27が形成される。
【0091】
これにより、患部への集中的な照射ができるとともに、健全組織への不必要な照射が軽減できる。
【0092】
〜効果3〜
前述のように、深さ方向のスキャンは、荷電粒子線ビームの加速度エネルギーを変え、ブラッグピークの位置を調整することにより行う。しかし、磁場空間にておこなわれる照射では、荷電粒子線ビームの加速度エネルギーを変えると偏向半径が変化するため、照射角度も変化してしまう。その結果、正確な照射が難しくなる可能性もある。
【0093】
本実施形態の制御装置40は、加速度エネルギーの変化に応じて、偏向電磁石3〜5の適切な励磁量を演算する。これにより、荷電粒子線ビームは適切な偏向半径の円軌道を描き、より正確な照射ができる。
【0094】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態の偏向装置の概略構成を示す図である。第1実施形態の第2偏向電磁石4は、略矩形の断面形状を有するのに対し、第2実施形態の第2偏向電磁石4Aは、ビーム基軸50から離れるに従って拡幅する断面形状を有する。その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0095】
図8は第1実施形態のエネルギー分散に係る課題を説明する図である。
【0096】
前述のように、ブラッグピークの位置を調整して、深さ方向のスキャンをおこなうように、適切な荷電粒子線ビームの加速度エネルギーを設定する。このとき、照射装置から出射される荷電粒子線ビームの加速度エネルギーが一定であることを前提とする。しかし、実際には加速度エネルギーは高エネルギーから低エネルギーまで僅かながら分散している。
【0097】
高エネルギーの荷電粒子線ビームは、磁場の影響を受けにくく、偏向角度が小さくなる。一方、低エネルギーの荷電粒子線ビームは、磁場の影響を受けやすく、偏向角度が大きくなる。この傾向は、高磁場なほど顕著になる。
【0098】
平均的な加速度エネルギーの荷電粒子線ビームの軌道を、平均エネルギー軌道20aとし、低エネルギーの荷電粒子線ビームの軌道を低エネルギー軌道20bとし、高エネルギーの荷電粒子線ビームの軌道を高エネルギー軌道20cとし、図示する。
【0099】
前述のように、荷電粒子線ビーム1は、第1偏向電磁石3により所定の偏向角度だけ偏向され、第2偏向電磁石4により所定の偏向角度だけ逆方向に偏向され、ビーム基軸50からオフセットされる(図1参照)。このとき、低エネルギー軌道20bのオフセット量は平均エネルギー軌道20aのオフセット量より多く、高エネルギー軌道20cのオフセット量は平均エネルギー軌道20aのオフセット量より少なくなる。
【0100】
図9は第1実施形態のエネルギー分散に係る課題を更に説明する図である。第3偏向電磁石5により照射角度は180度にて照射することを想定する。荷電粒子線ビーム1は、仮想円軌道開始面22から偏向を開始し、体表面23付近に照射する。
【0101】
一般に加速度エネルギーが大きくなるほど偏向半径は大きくなる。したがって、低エネルギー軌道20bの偏向半径は平均エネルギー軌道20aの偏向半径より小さく、高エネルギー軌道20cの偏向半径は平均エネルギー軌道20aの偏向半径より大きくなる。
【0102】
低エネルギー軌道20bは、オフセット量が多く、偏向半径が小さいため、照射位置において上方にズレが生じてしまう。高エネルギー軌道20cは、オフセット量が小さく、偏向半径が大きいため、照射位置において下方にズレが生じてしまう。このようにエネルギー分散に起因して、荷電粒子線ビームにズレが生じ、正確な照射が難しくなる可能性もある。
【0103】
なお、図8および図9では説明の便宜のため、エネルギー分散によるビームズレを、実際に起きるズレよりも拡大して描いている。
【0104】
図10は本実施形態におけるエネルギー分散に起因するビームズレの抑制効果を説明する図である。説明の便宜の為、本実施形態の平均エネルギー軌道20aと第1実施形態の平均エネルギー軌道20aとは変わらないものとする。
【0105】
第2偏向電磁石4Aは、ビーム基軸50から離れるに従って拡幅する断面形状を有する。これにより、荷電粒子線ビームの経路によって、磁場領域の経路長が異なる。
【0106】
低エネルギー軌道20bにおいて、第1偏向電磁石3による偏向角度が大きく、荷電粒子線ビームはビーム基軸50からより離れた位置で第2偏向電磁石4に入射する。これにより、第2偏向電磁石4における磁場領域の経路長が長くなり、第2偏向電磁石4による偏向角度は更に大きくなる。
【0107】
高エネルギー軌道20cにおいて、第1偏向電磁石3による偏向角度が小さく、荷電粒子線ビームはビーム基軸50により近い位置で第2偏向電磁石4に入射する。これにより、第2偏向電磁石4における磁場領域の経路長が短くなり、第2偏向電磁石4による偏向角度は更に小さくなる。
【0108】
その結果、第2偏向電磁石4を出射した荷電粒子線ビームは、第1焦点21aにおいて集束する。
【0109】
図11は本実施形態におけるエネルギー分散に起因するビームズレの抑制効果を更に説明する図である。第3偏向電磁石5により照射角度は180度にて照射することを想定する。
【0110】
第1焦点21aより下流の仮想円軌道開始面22において、低エネルギー軌道20bのオフセット量は平均エネルギー軌道20aのオフセット量より少なく、高エネルギー軌道20cのオフセット量は平均エネルギー軌道20aのオフセット量より多くなる。一方、低エネルギー軌道20bの偏向半径は平均エネルギー軌道20aの偏向半径より小さく、高エネルギー軌道20cの偏向半径は平均エネルギー軌道20aの偏向半径より大きくなる。
【0111】
その結果、第3偏向電磁石5により偏向された荷電粒子線ビームは、体表面23付近の第2焦点21bにおいて集束する。
【0112】
これにより、エネルギー分散に起因する荷電粒子線ビームのズレを抑制し、より正確な照射ができる。
【0113】
<第3実施形態>
図12は、第3実施形態の偏向装置の概略構成を示す図である。第1実施形態の第1偏向電磁石3および第2偏向電磁石4は、ビーム基軸50より上方にて磁場を発生するのに対し、第3実施形態の第1偏向電磁石3Bおよび第2偏向電磁石4Bは、ビーム基軸50に対し上下対称な領域に磁場を発生する。また、第1実施形態の真空容器30は、略半円形の貫通孔31を設けているのに対し、第3実施形態の真空容器30Bは、患者体軸が貫通可能な略円形の貫通孔31Bを設けている。また、真空容器30Bは、患者の体軸方向から見て、ビーム基軸50に対し上下対称なビーム軌道をすべて覆うような更に幅広の形状となる。図13は、真空容器30Bの詳細構成図である。その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0114】
制御装置40が、第1実施形態と同じような制御をおこなうと、無励磁状態時には軌道51の照射角度は0度になり、低励磁状態時には軌道52の照射角度は90度になり、高励磁状態時には軌道53の照射角度180度になる。制御装置40が励磁電流量を連続的に変えることにより、照射角度も0度〜180度の範囲で連続的に変化する。
【0115】
図14は、本実施形態特有の偏向装置の動作を説明する図である。
【0116】
制御装置40は、偏向電磁石3〜5第1実施形態と逆向きの磁場を発生するように、励磁電流を制御する。すなわち、第1偏向電磁石3は図示裏面から表面方向へ磁場を発生し、第2偏向電磁石4は図示表面から裏面方向へ磁場を発生し、第3偏向電磁石5は図示表面から裏面方向へ磁場を発生する。
【0117】
無励磁状態時には第1実施形態と同じように軌道51の照射角度は0度(360度)になる。一方、低励磁状態時には軌道54の照射角度は270度になり、高励磁状態時には軌道53の照射角度180度になる。制御装置40が励磁電流量を連続的に変えることにより、照射角度も180度〜360度の範囲で連続的に変化する。
【0118】
第1実施形態において360度照射を行う場合、患者2を仰向け状態からうつぶせ状態に移動させる手間があった。本実施形態においては、患者2を移動することなく、360度照射を行うことができる。
【0119】
なお、第3実施形態の変形例として、第2偏向電磁石4Bの断面形状をビーム基軸50から離れるに従って拡幅(第2実施形態参照)
してもよい。
【0120】
<第4実施形態>
第1〜3実施形態においては、粒子線が陽子線であることを前提としたが、重粒子線でもよい。近年、粒子線治療では、これまでの陽子だけでなく炭素等の重粒子が用いられるようになってきた。
【0121】
図15は、一般的な重粒子照射にかかる課題を説明する図である。従来の一般的な照射は無磁場空間にておこなわれる。重粒子の高エネルギー原子核は、直線軌道を描いて体内に入射し、体内組織を構成する元素の原子核と衝突して、幾つかの軽元素の原子核29a,29bに分裂する可能性がある。その際、この分裂核29a,29bが飛散する可能性がある。
【0122】
図16は、本実施形態の飛散低減効果を説明する図である。本実施形態の照射は、第3偏向電磁石5により発生する患者体軸方向の磁場空間にておこなわれる。磁場空間において、重粒子の高エネルギー原子核は、円軌道を描いて体内に入射する。このとき、体内組織を構成する元素の原子核と衝突して、幾つかの軽元素の原子核29a,29bに分裂した場合でも、分裂核28a,28bは、強磁場に巻きつく。これにより飛散を低減できる
【符号の説明】
【0123】
1 粒子ビーム
2 患者
3 第1偏向電磁石
4 第2偏向電磁石
5 第3偏向電磁石
6aスキャニング磁石(周方向)
6bスキャニング磁石(患者体軸方向)
8 クライオスタット
9a超電導コイル
9b シールドコイル
12 支持部材
13 間隙部(第1偏向電磁石)
14 間隙部(第2偏向電磁石)
15 間隙部(第3偏向電磁石)
16 空洞部(第3偏向電磁石)
17 移動ベッド
18 照射室
20a 平均エネルギー軌道
20b 低エネルギー軌道
20c 高エネルギー軌道
21a 第1焦点
21b 第2焦点
22 円軌道開始面
23 体表面
24 体内
25 侵入深さ
26 照射効果
27 ブラッグピーク
28 ピーク幅
29a,29b 分裂核
30 真空容器
31 貫通孔
32 開口部
33 モニタ系
34 モニタ移動機構
40 制御装置
43〜45 電源
50 ビーム基軸
51 軌道(無励磁)
52 軌道(低励磁)
53 軌道(高励磁)
54 軌道(低励磁)
55 軌道(高励磁)
56 オフセット量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線ビームを患者の患部に照射する粒子線治療装置の偏向装置であって、
入射した荷電粒子線ビームを、一の方向へビームを曲げて位置をずらすように偏向する第1電磁石装置と、
この第1電磁石装置より下流側に設けられ、前記第1電磁石装置で偏向された荷電粒子線ビームを、前記一の方向と逆の方向へ位置をずらすように偏向する第2電磁石装置と、
この第2電磁石装置より下流側に設けられ、患者体軸が貫通可能なトンネル形状の電磁石を間隙部を設けて患者体軸方向に連設して構成されるスプリット式の第3電磁石装置と、
患者体軸を中心とした任意の角度から照射できるよう前記第1電磁石装置、第2電磁石装置、第3電磁石装置の励磁量を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする偏向装置。
【請求項2】
請求項1記載の偏向装置において、
前記第2電磁石装置は、ビーム基軸から離れるに従って拡幅する断面形状を有する
ことを特徴とする偏向装置。
【請求項3】
請求項1記載の偏向装置において、
前記第1電磁石装置および第2電磁石装置は、それぞれ間隙部を有し、
前記第1電磁石装置の間隙部と前記第2電磁石装置の間隙部と前記第3電磁石装置の間隙部とに介挿され、その内部においてビームが通過する真空容器を
備えることを特徴とする偏向装置。
【請求項4】
請求項3記載の偏向装置において、
前記真空容器は、患者体軸が貫通可能な略半円形の貫通孔を設ける
ことを特徴とする偏向装置。
【請求項5】
請求項3記載の偏向装置において、
前記第1電磁石装置および第2電磁石装置は、ビーム基軸に対し対称に偏向可能であり、
前記真空容器は、患者体軸が貫通可能な円形の貫通孔を設ける
ことを特徴とする偏向装置。
【請求項6】
請求項3記載の偏向装置において、
ビームモニタと、
このビームモニタを患者体軸周りに移動可能にするビームモニタ移動機構と、
を更に備えることを特徴とする偏向装置。
【請求項7】
請求項6記載の偏向装置において、
前記ビームモニタは、シンチレータである
ことを特徴とする偏向装置。
【請求項8】
請求項1記載の偏向装置において、
前記第1電磁石装置より上流側に設けられ、荷電粒子線ビームを走査するスキャニング電磁石
を更に備えることを特徴とする偏向装置。
【請求項9】
請求項1記載の偏向装置において、
前記荷電粒子線ビームの荷電粒子は、陽子より重い重粒子である
ことを特徴とする偏向装置。
【請求項10】
前記請求項1〜9のいずれか1項記載の偏向装置を備える
ことを特徴とする粒子線治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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