説明

側部がシクロアルキルで置換されたフェノールを有する、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびカーボネート

本発明は、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステルにおける、o−および/またはm−置換基を有するフェノール化合物の連鎖停止剤としての使用;o−および/またはm−置換フェノールから誘導された末端基を有する、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステル;これらのポリマーから製造される成形品および押出物;ポリマーの製造方法;および成形品および押出物の製造方法;に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステルにおける、o−および/またはm−置換基を有するフェノール化合物の、連鎖停止剤としての使用;o−および/またはm−置換フェノール由来の末端基を有する、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステル;これらのポリマーから製造された成形品および押出物;ポリマーの製造方法;そして成形品および押出物の製造方法;に関する。
【0002】
例えばフェノール、4-アルキルフェノールおよび4-クミルフェノールなどの単官能フェノールベースの化合物は、ポリカーボネートの製造において連鎖停止剤としてしばしば用いられる(Kunststoff-Handbuch 3; L. Bottenbruch, Hanser, Munich 1992, 第127頁;欧州特許出願公開第0353594号明細書)。
【0003】
シクロアルキルで置換されたフェノール由来の末端基を有するポリカーボネートは、米国特許第4699971号明細書および米国特許第4788276号明細書に、一般的な形で既に記載されている。しかしながら、米国特許第4699971号明細書および米国特許第4788276号明細書は、p位が置換されたシクロアルキルフェノールのみが明確に開示されており、そして特に好ましいとして挙げられている。
【0004】
ポリカーボネートにおけるエステル官能化された末端基は、カナダ特許明細書第1331669号に、一般的な形で既に同様に記載されている。しかしながら、ここにはp−またはp,m−カルボン酸エステル置換フェノールのみが選択的に明記されている。日本特許出願公開 昭63−215714号公報には、OHおよびCOOH基などの反応性末端基を有するポリカーボネートが記載されている。
【0005】
下記構造を有する連鎖停止剤が、欧州特許出願公開第0976772明細書に、溶融エステル交換工程において明確に記載されている:
【0006】
【化1】

【0007】
式中、
は、塩素、メトキシまたはエトキシカルボニルを表し、および
は、アルキルまたはアルコキシ基、あるいは必要に応じて置換されたアリールまたはアリールオキシ基を表す。
【0008】
溶融エステル交換方法に関する欧州特許出願公開第0980861号明細書については、下記構造を有するサリチル酸誘導体が記載されている:
【0009】
【化2】

【0010】
式中、
は、メチルまたはエチル基を表し、および
は、アルキル、アルコキシ、アリールまたはアリールオキシ基を表し、ここでこれらは必要に応じて置換されていてもよい。
【0011】
直鎖アルキルで置換されたおよび分枝状アルキルで置換された末端基もまた、例えば米国特許第4269964号に記載されており、知られている。アルキルアミノ末端基を有するポリカーボネートが、米国特許第3085992号明細書に記載されている。ベンゾトリアゾールで置換された末端基を有するポリカーボネートは、日本特許出願公開2000−063508号公報から知られている。
【0012】
米国特許第3166606号および第3173891号からは、例えばp−フェニルフェノールがポリカーボネートの連鎖停止剤として知られている。米国特許第4330663号からは、ポリエステルカーボネートにおいて、4−ブチル安息香酸クロライドが連鎖停止剤として用いられることが知られている。
【0013】
国際公開第00/50488号には、連鎖停止剤としてのジ-tert-アルキルフェノールの使用が記載されている。
【0014】
末端基としてフェニルプロピルフェノール、アルキルフェノールまたはナフトール基によって修飾されたポリカーボネートは、日本特許出願公開昭57−133149号から知られている。
【0015】
トリチルフェノール、クミルフェノール、フェノキシフェノールおよびペンタデシルフェノールは、国際公開第01/05866において、ポリカーボネートの連鎖停止剤として記載されている。
【0016】
欧州特許出願公開第1048684号および国際公開第99/36458号からは、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールおよび例えば他の分枝状アルキルフェノールによって修飾されたポリカーボネートが知られている。
【0017】
ドイツ出願公開第3803939号においては、下記式を有する連鎖停止剤が用いられている:
【0018】
【化3】

【0019】
式中、R、R、Rは、同じであっても異なっていてもよく、C〜C12アルキルまたはC〜C20アラルキルであり、RまたはRの少なくとも1つはC〜C20アラルキル基であり、および「n」は0.5〜1の値を表す。
【0020】
脂環基を有するフェノールは記載されていない。2,4−または2,4,6−置換フェノールは好適であるといわれている。純粋な物質よりむしろフェノールの技術的混合物が用いられている。ポリカーボネートの性質における純粋な物質の効果は記載されていない。
【0021】
欧州特許出願公開第0794209号は、イソオクチルフェノールおよびクミルフェノール末端基を有するポリカーボネートについて記載している。日本特許出願公開 平06−256499号公報は、ヒドロキシアリール−末端ポリカーボネートについて記載している。
【0022】
しかしながら、既知の末端基を有するポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステルは、一般に、ゼロせん断速度粘度(zero shear-rate viscosity)が比較的高いという不利益、および/または熱負荷によって分子量低下または材料変色が生じる傾向にある。
【0023】
先行技術から鑑みて、本発明の目的は、末端基を有するポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステル、またはこの末端基の製造に適したフェノール化合物を提供するものであり、そしてそれは、ゼロせん断速度粘度が高いという不利益を有さず、そしてそれ故に良好な加工特性を有する。これらの末端基は、例えば押出工程または射出成形など、あるいは例えば溶融エステル交換法による製造工程などにおける熱負荷によって分解に至らず、そして例えば溶融エステル交換法においても使用することができることもまた望ましい。
【0024】
驚くべきことに、オルト位および/またはメタ位に置換基を有する、とりわけオルト位および/またはメタ位においてシクロアルキル置換基を有する、連鎖停止剤(これらは非置換であるか、またはパラ位においてメチルのみで置換されている。)を使用することによって、本目的が達成されることが見いだされた。これらの連鎖停止剤またはこれらから産生される末端基は、驚くべきことにポリカーボネートのゼロせん断速度粘度に対して好ましい影響を有している。すなわち、分子量分布において対応するポリカーボネートと比較して、低いゼロせん断速度粘度を示し、そしてそのため良好な流動性を示し、さらにそれ故に、通常使用される末端基を有するポリカーボネートよりもより容易に加工することができる。驚くべきことに、この連鎖停止剤によって誘導された、o−および/またはm−置換の末端基のポリカーボネート、すなわち末端基として例えばo−および/またはm−置換シクロアルキルヒドロキシ安息香酸エステルそしてo−および/またはm−置換シクロアルキルフェノールを有するポリカーボネートは、対応するパラ-置換化合物と比較して、より低い溶融粘度を示す。溶融粘度の改善についても、例えばp−tert-ブチルフェノールまたはフェノールなどの通常使用される末端基と比較して、同様に達成される。
【0025】
シクロアルキルエステルによって置換された、ポリカーボネート用のフェノール性連鎖停止剤は、これまでは知られていない。
【0026】
シクロアルキル基を有するフェノールは既知であることは事実である(米国特許第4699971号および米国特許第4788276号)。しかしながら、米国特許第4699971号および米国特許第4788276号においては、本発明の目的に特に適しているとして、p−誘導体のみが明確に記載されている。これに対して、本発明にかかる、o−および/またはm−置換誘導体は、先行技術のp−誘導体よりも明らかに優れている。
【0027】
従って本発明は、o−および/またはm−置換、すなわち、特にo−および/またはm−シクロアルキル置換フェノール、であって、そしてこれはパラ位において置換されていないかまたはメチルで置換されている、に基づく、あるいは対応するo−またはm−結合エステルに基づく、フェノール性末端基を有するポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステル;このようなポリカーボネート等の使用;そして本発明のポリカーボネート等における使用に適した特定のフェノール性末端基;を提供する。
【0028】
従って本発明はまた、末端基修飾ポリマーの調製のための、式(1)のフェノール化合物の使用も提供する。
【0029】
式(1)を有するフェノール化合物は以下の通り定義される:
【0030】
【化4】

【0031】
式中、
は、HまたはCH基の何れかであり、好ましくはHであり、;
は、H、直鎖もしくは分枝状のC〜C18アルキルまたはアルコキシ、ClもしくはBr、または必要に応じて置換されたアリールもしくはアラルキル基を表し、好ましくはHまたは直鎖もしくは分枝状のC〜C12アルキルを表し、特に好ましくはHまたはC〜Cアルキル基を表し、最も好ましくはHを表し、
Zは、炭素数1〜30のアルキルスペーサーまたは単結合を表し、好ましくは炭素数1〜10のアルキルスペーサーまたは単結合を表し、最も好ましくは単結合を表し、
Xは、単結合または−O−、−CO−、CH−、−COO−もしくは−OCO−などの2価の基を表し、
Yは、必要に応じて置換された脂環式の基または必要に応じて置換された多環式の脂肪族基(アダマンチルまたはノルボルニル基など)または必要に応じて置換された芳香族基を表し、好ましくは必要に応じて置換された脂環式のC〜C12基または必要に応じて置換された多環式脂肪族基(アダマンチルまたはノルボルニル基など)または必要に応じて置換された芳香族基を表し、特に好ましくは必要に応じて置換された脂環式のC〜C12基または必要に応じて置換されたアダマンチルもしくはノルボルニル基または必要に応じて置換された芳香族基を表し、最も好ましくは必要に応じて置換された脂環式のC〜C12基または必要に応じて置換されたアダマンチルもしくはノルボルニル基を表し、および
nは1,2,3または4、そしてmは0,1,2または3であってよく、但しn+mの和が4であることを条件とし、ここでm=3でありn=1である化合物が特に好ましい。
【0032】
より厳密には下記式(2)、(3)または(4)で規定される、式(1)を有するフェノール化合物が好ましい。
【0033】
式(2)を有する化合物:
【0034】
【化5】

【0035】
式中、
Zは、炭素数1〜30のアルキルスペーサーまたは単結合を表し、好ましくは炭素数1〜10のアルキルスペーサーまたは単結合を表し、最も好ましくは単結合を表し、
は、Hまたはメチル基を表し、好ましくはHを表し、
は、H、直鎖もしくは分枝状のC〜C18アルキルもしくはアルコキシ、ClもしくはBrまたは必要に応じて置換されたアリールもしくはアラルキル基を表し、好ましくはHまたは直鎖もしくは分枝状のC〜C12アルキルを表し、特に好ましくはHまたはC〜Cアルキル基を表し、最も好ましくはHを表し、
Yは、必要に応じて置換された脂環式のC〜C18基または必要に応じて置換された多環式脂肪族基(アダマンチルまたはノルボルニル基など)または必要に応じて置換された芳香族基を表し、好ましくは必要に応じて置換された脂環式のC〜C12基または必要に応じて置換された多環式脂肪族基(アダマンチルまたはノルボルニル基など)または必要に応じて置換された芳香族基を表し、特に好ましくは必要に応じて置換された脂環式のC〜C12基または必要に応じて置換されたアダマンチルもしくはノルボルニル基または必要に応じて置換された芳香族基を表し、最も好ましくは必要に応じて置換された脂環式のC〜C12基または必要に応じて置換されたアダマンチルもしくはノルボルニル基を表し、および
nは1,2,3または4、そしてmは0,1,2または3であってよく、但しn+mの和が4であることを条件とし、ここでm=3でありn=1である化合物が特に好ましい。
【0036】
式(3)を有する化合物:
【0037】
【化6】

【0038】
式中、
Zは、炭素数1〜30のアルキルスペーサーまたは単結合を表し、好ましくは炭素数1〜10のアルキルスペーサーまたは単結合を表し、最も好ましくは単結合を表し、
は、Hまたはメチル基を表し、好ましくはHを表し、
は、H、直鎖もしくは分枝状のC〜C18アルキルもしくはアルコキシ、ClもしくはBrまたは必要に応じて置換されたアリールもしくはアラルキル基を表し、好ましくはHまたは直鎖もしくは分枝状のC〜C12アルキルを表し、特に好ましくはHまたはC〜Cアルキル基を表し、最も好ましくはHを表し、
Yは、必要に応じて置換された脂環式のC〜C18基または必要に応じて置換された多環式脂肪族基(アダマンチルまたはノルボルニル基など)または必要に応じて置換された芳香族基を表し、好ましくは必要に応じて置換された脂環式のC〜C12基または必要に応じて置換された多環式脂肪族基(アダマンチルまたはノルボルニル基など)または必要に応じて置換された芳香族基を表し、特に好ましくは必要に応じて置換された脂環式のC〜C12基または必要に応じて置換されたアダマンチルもしくはノルボルニル基または必要に応じて置換された芳香族基を表し、最も好ましくは必要に応じて置換された脂環式のC〜C12基または必要に応じて置換されたアダマンチルもしくはノルボルニル基を表し、および
nは1,2,3または4、そしてmは0,1,2または3であってよく、但しn+mの和が4であることを条件とし、ここでm=3でありn=1である化合物が特に好ましい。
【0039】
式(4)を有する化合物:
【0040】
【化7】

【0041】
式中、Z、Y、RおよびRは上記意味を有し、および
nは1,2,3または4、そしてmは0,1,2または3であってよく、但しn+mの和が4であることを条件とし、ここでm=3でありn=1である化合物が特に好ましい。
【0042】
最も好ましくは、互いに独立した、式(2a)、(2b)、(3a)、(3b)、(4a)および(4b)に対応する、フェノール化合物である:
【0043】
【化8】

【0044】
【化9】

【0045】
(2a)、(2b)、(3a)、(3b)、(4a)および(4b)中の、R、RおよびYは、上記の意味を有する。
【0046】
式(1)〜(4)を有するフェノール化合物から誘導される、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステルの修飾に適した末端基は、式(5)で表される:
【0047】
【化10】

【0048】
式中、上記式(1)で定義された基および置換パターンが適用される。
【0049】
式(5a)〜(5f)を有する末端基が特に適している:
【0050】
【化11】

【0051】
【化12】

【0052】
式中、Y、RおよびRの基は、上記の意味を有する。
【0053】
互いに独立して最も適したものは、式(2a)、(2b)、(3a)、(3b)、(4a)および(4b)を有するフェノール化合物に対応する末端基である。
【0054】
好ましい、特に好ましい、最も好ましいまたはとりわけ好ましいなどは、好ましい、最も好ましいまたはとりわけ好ましいなどで挙げられた置換基を有する化合物であってよい。
【0055】
しかしながら、上記の一般的な基の定義または説明、または選択的な範囲で挙げられたものは、何れの形式においても互いに組み合わせることができ、言い換えれば、個別の範囲および選択的範囲の間で組み合わせることができる。これらは、最終生成物および中間生成物または中間物質に適用される。
【0056】
従って本発明はまた、式(1)、(2)、(3)および(4)を有するフェノール化合物に対応する末端基を有する、熱可塑性ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステルカーボネートおよび熱可塑性ポリエステルも提供する。
【0057】
式(1)を有するフェノール化合物の例は、o−シクロドデシルフェノール、o−シクロオクチルフェノール、o−シクロヘキシルフェノール、m−シクロドデシルフェノール、m−シクロオクチルフェノール、m−シクロヘキシルフェノール、3-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシベンゾフェノン、3-ヒドロキシ安息香酸フェニルエステル、2-ヒドロキシ安息香酸フェニルエステル、3-ヒドロキシ安息香酸(4-tert-ブチルフェニル)エステル、2-ヒドロキシ安息香酸(4-tert-ブチルフェニル)エステル、3-ヒドロキシ安息香酸(4-メチルフェニル)エステル、2-ヒドロキシ安息香酸(4-メチルフェニル)エステル、3-ヒドロキシ安息香酸シクロヘキシルエステル、2-ヒドロキシ安息香酸シクロヘキシルエステル、3-ヒドロキシ安息香酸シクロオクチルエステル、2-ヒドロキシ安息香酸シクロオクチルエステル、3-ヒドロキシ安息香酸シクロドデシルエステルおよび2-ヒドロキシ安息香酸シクロドデシルエステルである。
【0058】
シクロアルキルフェノールは、文献などにおいて一般的に知られている(例えば、フランス特許出願公開第1580640号、米国特許第4699971号および米国特許第4788276号など)。ヒドロキシベンゾフェノン類(例えば欧州特許出願公開第32275号)およびヒドロキシ安息香酸アルキルエステル類(ドイツ特許出願公開第3400342号)もまた知られている。ヒドロキシ安息香酸シクロアルキルエステル類も同様に知られており、そして例えばドイツ特許出願公開第3400342号、日本特許出願公開 昭60−145882号および日本特許出願公開 平06−001913号に記載されている。
【0059】
本発明にかかる化合物は、原則として、有機化学の知られた方法によって調製することができる。
【0060】
例えば、式(5a)を有する、o−シクロアルキルエステル置換フェノールは、例えば、塩基(例えば炭酸カリウムまたはナトリウムメトキシドなど)またはエステル交換触媒(例えばテトライソプロピレートチタンなど)の存在下における、サリチル酸メチルなどのサリチル酸エステルと、対応するアルコールとの反応によって、調製することができる。式(5b)を有する、対応するm−置換化合物は、対応するm−ヒドロキシ安息香酸メチルエステルの使用を必要とする。これらの反応において、反応中に、低沸点アルコールを蒸留によって除去するのが望ましい(ドイツ特許出願公開第3400342号参照)。
【0061】
式(5c)または(5d)を有する化合物は、例えばFeClまたはAlClなどの金属塩の存在下における、必要に応じて置換されたアニソール誘導体と酸クロライドとの反応といった、フリーデル−クラフツのアシル化反応によって得ることができる。第2工程において、フェノール性のOH基は、メチルエーテルの切断によって放出される。これは、例えばBBrまたはHBrを用いて行うことができる。(エーテル開裂は、例えばA. Kamai, N. L. Gayatri, Tetrahedron Lett. 1996, 37, 3359に記載されており、フリーデル−クラフツ反応は、例えばH. Heaney, Comprehensive Organic Chemistry; Ed.: B. M. Trost; Pergamon Press Oxford 1991, Vol. 2, p. 753に記載されている)。
【0062】
式(5e)または(5f)を有する化合物は、原則的には、フェノールと、例えばシクロヘキセンまたはシクロオクテンなどのシクロアルケンとの反応であって、温度250〜350℃、必要に応じて例えば硫酸またはBFなどの酸の存在下における反応によって調製することができる(これらの反応は、例えばW. Jones, J. Org. Chem. 1953, 4156またはKolka et al., J. Org. Chem. 1957, 22, 642に記載されている)。
【0063】
式(1)、(2)、(3)および(4)を有するフェノール化合物に加えて、他のフェノール類を、各ケースの連鎖停止剤の総量に対して50モル%までの量で、追加的に使用してもよく、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステルを調製することができる。
【0064】
従って本発明は、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステルカーボネートおよび芳香族ポリエステルの調製における、連鎖停止剤としての、式(1)を有するフェノール化合物と、必要に応じて他のフェノール類とを組み合わせた使用も提供し、ここで他のフェノール類は、各ケースで用いられる連鎖停止剤の総モル量に対して、50モル%までの量、好ましくは25モル%までの量で用いられる。
【0065】
従って本発明は、限定するものではないが、例えば式(6)を有するポリマーとして表される、式(1)、(2)、(3)および(4)を有するフェノール化合物から誘導された末端基を有する熱可塑性ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステルカーボネートおよび熱可塑性ポリエステルも提供する:
【0066】
【化13】

式中、
【0067】
【化14】

【0068】
は、芳香族ジカルボン酸の基であり、
−O−B−Oは、ビスフェノレート基であり、
「p」は25〜700の整数であり、
「x」および「y」は、0/p、1/p、2/p〜p/pの級数からの分数であり、ここでx+y=1であり、および
「z」は0または1であり、および
式(6)中の基Eの少なくとも50モル%は、式(1)、(2)、(3)および(4)を有するフェノール化合物に対応するフェノレート基に相当し、および
式(6)中の基Eの最大50モル%は、式(1)、(2)、(3)または(4)を有するフェノール化合物に対応するもの以外のフェノレート基に相当する。
【0069】
ドイツ特許出願公開第2119799号によると、ポリカーボネートは、フェノール性末端基を使用して、界面重縮合方法によって、および均一相方法によって、製造することができる。
【0070】
界面重縮合方法におけるポリカーボネートの製造において、参考資料として、一例としてH. Schnell, Chemistry and Physics of Polycarbonates, Polymer Reviews, Vol. 9, Interscience Publishers, New York 1964 p. 33〜、およびPolymer Reviews, Vol. 10, 「Condensation Polymers by Interfacial and Solution Methods」 Paul W. Morgan, Interscience Publishers, New York 1965, chapter VIII, p. 325が挙げられる。
【0071】
さらに、本発明のポリカーボネートは、例えば国際公開WO01/05866号およびWO01/05867号に記載される、溶融エステル交換方法として知られる既知の溶融ポリカーボネート方法によって、ジアリールカーボネートおよびジフェノールからも製造することができる。エステル交換方法(アセテート方法およびフェニルエステル方法)もまた、例えば米国特許第3494885号、第4386186号、第4661580号、第4680371号および第4680372号、欧州特許出願公開第26120号、第26121号、第26684号、第28030号、第39845号、第39845号、第91602号、第97970号、第79075号、第146887号、第156103号、第234913号および第240301号、およびドイツ特許出願公開第1495626号および第2232977号に記載されている。これらの方法においても、本発明の方法により、o−および/またはm−置換基を有するフェノール化合物を、連鎖停止剤として使用することができる。
【0072】
ジアリールカーボネートは、式(7)および式(8)を有する炭酸ジエステルなどである:
【0073】
【化15】

【0074】
【化16】

【0075】
式中、R、R'およびR''は、互いに独立してH、必要に応じて分枝状のC〜C34アルキル/シクロアルキル、C〜C34アルカリール(alkaryl)またはC〜C34アリールまたはC〜C34アリールオキシを表し、
例えば
ジフェニルカーボネート、ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジブチルフェニルカーボネート、イソブチルフェニルフェニルカーボネート、ジイソブチルフェニルカーボネート、tert-ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ-tert-ブチルフェニルカーボネート、n-ペンチルフェニルフェニルカーボネート、ジ-(n-ペンチルフェニル)カーボネート、n-ヘキシルフェニルフェニルカーボネート、ジ-(n-ヘキシルフェニル)カーボネート、シクロヘキシルフェニルフェニルカーボネート、ジ-シクロヘキシルフェニルカーボネート、フェニルフェノールフェニルカーボネート、ジフェニルフェノールカーボネート、イソオクチルフェニルフェニルカーボネート、ジイソオクチルフェニルカーボネート、n-ノニルフェニルフェニルカーボネート、ジ-(n-ノニルフェニル)カーボネート、クミルフェニルフェニルカーボネート、ジクミルフェニルカーボネート、ナフチルフェニルフェニルカーボネート、ジナフチルフェニルカーボネート、ジ-tert-ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ-(ジ-tert-ブチルフェニル)カーボネート、ジクミルフェニルフェニルカーボネート、ジ-(ジクミルフェニル)カーボネート、4-フェノキシフェニルフェニルカーボネート、ジ-(4-フェノキシフェニル)カーボネート、3-ペンタデシルフェニルフェニルカーボネート、ジ-(3-ペンタデシルフェニル)カーボネート、トリチルフェニルフェニルカーボネート、ジトリチルフェニルカーボネート、であり、
好ましくは、
ジフェニルカーボネート、tert-ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ-tert-ブチルフェニルカーボネート、フェニルフェノールフェニルカーボネート、ジフェニルフェノールカーボネート、クミルフェニルフェニルカーボネート、ジクミルフェニルカーボネート、であり、
特に好ましくはジフェニルカーボネートである。
【0076】
本発明にかかるポリカーボネートのためのジフェノールは、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシビフェニル類、ビス-(ヒドロキシフェニル)アルカン類、ビス-(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン類、ビス-(ヒドロキシフェニル)スルフィド類、ビス-(ヒドロキシフェニル)エーテル類、ビス-(ヒドロキシフェニル)ケトン類、ビス-(ヒドロキシフェニル)スルホン類、ビス-(ヒドロキシフェニル)スルホキシド類、α,α'-ビス-(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン類、同様にこれらの環アルキル化および環ハロゲン化化合物そしてα,ω-ビス-(ヒドロキシフェニル)ポリシロキサン類であってよい。
【0077】
好ましいジフェノールは、例えば4,4'-ジヒドロキシビフェニル(DOD)、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,4-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-p−ジイソプロピルベンゼン、1,3-ビス-[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2-ビス-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス-(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4-ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、2,2-ビス-(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンおよび2,2-ビス-(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンである。
【0078】
特に好ましいジフェノールは、例えば2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、1,3-ビス-[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2-ビス-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス-(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス-(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンおよび1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0079】
最も好ましいものは、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、1,3-ビス-[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)および1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0080】
ジフェノールは単独で用いてもよく、互いに組み合わせて用いてもよい;これにはホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートの両方が含まれる。
ジフェノールは文献などにおいて知られており、また文献記載の方法によって製造することができる(例えば H. J. Buysch et al., Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, VCH, New York 1991, 5th Ed., Vol. 19, p. 348参照。)。
【0081】
使用するジフェノールのモル量に対して、少量の、好ましくは0.05〜2.0モル%量の3官能または多官能化合物を、とりわけ、いわゆる枝分かれ剤といわれる3つまたは3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を、追加的に用いてもよい。記載した構造DおよびBよりむしろ枝分かれ構造が形成されるため、これは必然的に理想的な式(6)からの逸脱に至り、これを例示としてのみ記載する。
【0082】
使用できる、3または3以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物は、例えばフロログルシノール、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプテ-2-エン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリ-(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス-[4,4-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4-ビス-(4-ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、2,6-ビス-(2-ヒドロキシ-5'-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン、ヘキサ-[4-(4-ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェニル]オルトテレフタル酸エステル、テトラ-[4-(4-ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノキシ]メタン、テトラ-(4-ヒドロキシフェニル)メタンおよび1,4-ビス-(4',4''-ジヒドロキシトリフェニル)メチルベンゼンである。
【0083】
他の使用可能な枝分かれ剤は、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌルおよび3,3-ビス-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロインドールである。
【0084】
必要に応じて追加的に用いることができる、使用するジフェノールに対して0.05〜2モル%の枝分かれ剤は、本発明にかかるジフェノール自体および分子量レギュレーターと併せて、水性アルカリ相に導入してもよく、または、ホスゲン化の前に、有機溶媒中に溶かしてもよい。
【0085】
本発明にかかる芳香族ポリカーボネートは、重量平均分子量M(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定、ポリスチレン標準を用いて較正)5,000〜200,000、好ましくは10,000〜80,000、特に好ましくは15,000〜40,000を有する。
【0086】
比較溶液粘度は、1.10〜1.60程であり、メチレンクロライド中で測定する(23℃、メチレンクロライド100ml中、0.5gポリカーボネート)。
【0087】
本発明にかかるポリエステルカーボネートは、少なくとも1種のジフェノール、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸および炭酸から作成される。
【0088】
適した芳香族ジカルボン酸は、例えばオルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、tert-ブチルイソフタル酸、3,3'-ジフェニルジカルボン酸、4,4'-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'-ジフェニルスルホンジカルボン酸、3,4'-ベンゾフェノンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、トリメチル-3-フェニルインダン-4,5-ジカルボン酸である。
【0089】
芳香族ジカルボン酸、テレフタル酸および/またはイソフタル酸が特に好ましく用いられる。
【0090】
適したジフェノールは、ポリカーボネートの製造で記載したものである。炭酸は、製造方法の選択によって、ホスゲン経由によって、またはジフェニルカーボネート経由によって、ポリエステルカーボネートに導入することができ、すなわち界面重縮合または溶融エステル交換が、ポリエステルカーボネートの製造に用いられる。
【0091】
同様のことが、芳香族ジカルボン酸に適用される;これらは、界面重縮合方法において芳香族ジカルボン酸ジクロライドとして、または溶融エステル交換方法においてジカルボン酸ジエステルとして、用いられる。
【0092】
本発明にかかるポリエステルカーボネートは、知られた製造方法によって、すなわち例えば上記の界面重縮合方法または溶融エステル交換方法によって、製造することができる。
【0093】
本発明にかかるポリエステルカーボネートは、知られた手段による直鎖であってもよく、分枝状であってもよい。本発明にかかる芳香族ポリエステルカーボネートは、平均重量分子量M(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定、ポリスチレン標準を用いて較正)好ましくは10,000〜250,000を有する。
【0094】
本発明にかかるポリエステルカーボネートにおける、芳香族ジカルボン酸ユニットに対するカーボネートユニットのモル比は、好ましくは95:5〜5:95、特に好ましくは90:10〜10:90、とりわけ好ましくは80:20〜20:80および最も好ましくは60:40〜40:60である。
【0095】
本発明にかかるポリエステル(6)において、「z」は0であっても1であってもよい。
【0096】
本発明にかかる芳香族ポリエステルは、少なくとも1種のジフェノールおよび少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸から構成される。
【0097】
適したジフェノールおよびジカルボン酸は、ポリエステルカーボネートの製造で記載したものである。
【0098】
本発明にかかる芳香族ポリエステルは、知られた製造方法によって製造される(例えばKunststoff-Handbuch, Vol. VIII, p. 695〜, Carl-Hanser-Verlag, Munich, 1973参照)。
【0099】
本発明にかかる芳香族ポリエステルは、知られた手段による、直鎖であってもよく、分枝状であってもよい。
【0100】
本発明にかかる芳香族ポリエステルは、平均重量分子量M(光散乱方法により測定)好ましくは25,000〜70,000である;これは、式(6)の重合度「p」約80〜270に対応し、ここで「x」=1、「y」=0およびZ=1である。
【0101】
本発明にかかるポリカーボネート、ポリエステルカーボネートまたはポリエステルの製造に用いられる、式(1)、(2)または(3)を有する、本発明のモノフェノールの量は、各事例において用いられるジフェノールに対して0.5モル%〜8モル%であり、好ましくは2モル%〜6モル%である。
【0102】
例えばフェノール、4-アルキルフェノール類および4-クミルフェノールなどの、通常用いられるモノフェノールが、他の連鎖停止剤として適している。
【0103】
従って本発明は、よく知られている処理条件によるジフェノール、モノフェノール、炭酸誘導体および/またはジカルボン酸誘導体からの、本発明にかかるポリカーボネート、ポリエステルカーボネートまたはポリエステルの製造方法であって、
式(1)、(2)、(3)または(4)を有するモノフェノールを、連鎖停止剤として、各事例におけるジフェノールのモル量に対して0.5モル%〜8モル%、好ましくは2モル%〜6モル%の量で用い、ここで各事例における連鎖停止剤の総量に対してモル%まで、好ましくは25モル%までを、他のモノフェノールに置き換えることができる、ことを特徴とする製造方法も提供する。
【0104】
界面重縮合方法を使用する場合は、式(1)、(2)、(3)または(4)を有する連鎖停止剤を、ホスゲン化の前に、その途中に、またはその後に、溶液に加えることができる。式(1)、(2)、(3)または(4)を有する連鎖停止剤を溶かすのに適した溶媒は、例えばメチレンクロライド、クロロベンゼンまたはアセトニトリル、並びにこれらの溶媒の混合物である。
【0105】
溶融エステル交換方法を用いる場合は、式(1)、(2)、(3)または(4)を有する連鎖停止剤を、本発明の方法において、反応中の何れの時点において加えてもよい;この添加は数回に分けてもよい。
【0106】
本発明はまた、本発明の方法により得られるポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステルも提供する。
【0107】
本発明にかかるポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステルの製造に用いられるジフェノールは、ブロック構造を有するポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートまたはポリエステルといった、フェノール性末端基を有するポリマーまたは縮合物であってもよい。
【0108】
本発明にかかるポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステルは、知られた手段による後処理を行ってもよく、また例えば押出成形または射出成形などによる、任意の形態の成形品に処理してもよい。
【0109】
他の芳香族ポリカーボネートおよび/または他の芳香族ポリエステルカーボネートおよび/または他の芳香族ポリエステルを、本発明にかかるポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステルに、知られた手段によって加えてもよい。
【0110】
例えばフィラー、UV安定剤、熱安定剤、帯電防止剤および顔料などの、これらの熱可塑性物質に通常使用される添加剤を、本発明にかかるポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステルに、通常使用される量で加えてもよい;外部離型剤、流量調整剤および/または難燃剤(例えばアルキルおよびアリールホスファイト、ホスフェート、ホスファン、低分子量カルボン酸エステル、ハロ化合物、塩、白亜、シリカフラワー、ガラスおよび炭素繊維、顔料およびこれらの組み合わせなど。このような化合物は、例えば国際公開WO99/55772、15〜25頁および「Plastics Additives」、R. GachterおよびH. Muller, Hanser Publishers 1983に記載されている。)を加えることによって、離型挙動、流動性および/または難燃性を、必要に応じて改善することができる。
【0111】
任意のタイプの成形品/押出物に加工する場合において、知られたポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステルが既に用いられている場合であっても、必要に応じて他の熱可塑性物質および/または通常使用される添加剤をブレンドした、本発明にかかるポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステルを使用することができる。これらの性能範囲は、これらの材料を、例えばCD、CD−R、DVDまたはDVD−Rなどの光学データ記録媒体に適した基板物質とするのに特に適しているが、例えば電気部門におけるフィルムとして、車両構成における成型物として、および安全部門におけるカバー用のシートとしても使用することができる。本発明にかかるポリカーボネートにおける他の可能な用途は:
【0112】
1. 建築、車両および飛行機など多くの場所で知られ、必要とされる、安全/保護パネル、そしてヘルメットのシールド
2. フィルム、特にスキー用のフィルムの製造
3. 例えば1〜5ガロンの採水器などのブロー成型物の製造(例えば米国特許2964794参照。)
4. 駅、温室および照明装置などの建造物カバーリング用の、半透明シート、とりわけ2重壁シートの製造
5. 光学データ記録媒体の製造
6. 信号機ハウジングまたは交通標識の製造用
7. フォームの製造用(例えばドイツ特許第1031507参照。)
8. 糸およびワイヤーの製造用(例えばドイツ特許第1137167号及びドイツ出願公開第1785137号参照。)
9. 照明用途用の半透明プラスチック含有ガラスファイバーとして(例えばドイツ出願公開第1554020号参照。)
10. 半透明および光散乱成形品の製造における、硫酸バリウム、二酸化チタンおよび/または酸化ジルコニウムまたは有機重合性アクリレートラバー(欧州特許出願公開第634445号、欧州特許出願公開第269324号参照。)を含む半透明プラスチックとして
11. 例えばレンズホルダーなどの精密射出成形品の製造用。ガラスファイバーおよび必要に応じてさらに約1〜10重量%のMoS(総重量に対して)を含むポリカーボネートが、この目的に使用される。
12. 光学デバイス部品の、とりわけ写真用およびフィルムカメラ用のレンズの製造用(例えばドイツ出願公開第2701173号参照。)
13. 光キャリアー、とりわけ光学ケーブルなど(例えば欧州特許出願公開第0089801号参照。)
14. 電気ケーブル用およびコネクタ・シェルおよびプラグインコネクタ用の電気絶縁材料として
15. 香料、アフターシェーブおよび汗に対する耐性が改善された携帯電話ハウジングの製造用
16. ネットワークインターフェースデバイス
17. 有機光伝導体の支持体として
18. 例えばヘッドランプ、散乱器または内部レンズなどの照明の製造用
19. 例えば人工肺、透析機などの医療用途用
20. 例えばボトル、陶器およびチョコレートの型などの食品用途用
21. 例えば燃料および潤滑油と接触する部分など(例えばバンパーなど)における、自動車産業部門における用途用、必要によりABSまたは適したゴムなどとの適したブレンド形態であってよい
22. 例えばスラロームポールまたはスキーブーツのクリップなどの、スポーツ物品用
23. 例えばキッチンシンクおよび郵便受けなどの家庭用品用
24. 例えば電気分配キャビネットなどのハウジング用
25. 電気歯ブラシおよびヘアドライヤーハウジングなどのハウジニング
26. 洗浄液に対する耐性が改善された、洗浄機の透明な丸窓
27. 保護用ゴーグル、光学補正メガネ
28. キッチンの蒸気、特に油蒸気に対する耐性が改善されたキッチン用ランプカバー
29. 製剤用パッケージフィルム
30. チップボックスおよびチップキャリア
31. 例えば家畜小屋のドアまたは動物のおりなどの他の用途用
【0113】
この用途もまた、本発明にかかるポリマーから製造される成形品および押出物に供される。
【実施例】
【0114】
実施例1
4−ヒドロキシ安息香酸シクロオクチルエステルの調製
p−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル 22.82g(0.15mol)、シクロオクタノール 38.47g(0.30mol)およびテトライソプロピルオルトチタネート 26mg(0.1mmol)を、アルゴン雰囲気下で、蒸留ブリッジを有する丸底フラスコ中に入れた。この混合物を撹拌し、180℃で45分間加熱した。圧力を800mbarまで下げ、さらに650mbarで蒸留した。さらに15分後、圧力を900mbarまで上げ、反応混合物をさらに2時間撹拌し、この間にメタノールを蒸留により取り除いていった。シクロオクタノール 9.62g(0.075mol)およびテトライソプロピルオルトチタネート 2滴を、反応溶液にさらに加え、180℃でさらに4時間撹拌した。冷却し、そして残渣を酢酸エチル 100mlに溶かし、蒸留水で繰り返し洗浄した。有機相を集めて小容量に濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで、n−ヘキサン/アセトン混合物(3:1)を用いて精製した(シリカゲル60、0040〜0.063mm、Merck社)。得られた生成物から、付着するシクロオクタノールを高真空下で取り除いた。白色結晶の残渣をアセトン中で再結晶化させた。無色の結晶4.70g(12%)が得られた。
【0115】
融点:109〜111℃
1H-NMR (400 MHz, CDCl3)δ=7.94 (d, 2 H), 6.87 (d, 2 H), 6.15 (s, 1 H), 5.21-5.13 (m, 1H), 2.00-1.72 (m, 6 H), 1.70-1.45 (m, 8 H)
【0116】
実施例2
4-ヒドロキシ安息香酸シクロドデシルエステルの調製
p−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル 22.82g(0.15mol)、シクロドデカノール 55.30g(0.30mol)およびテトライソプロピルオルトチタネート 28mg(0.1mmol)を、アルゴン雰囲気下で、蒸留ブリッジを有する丸底フラスコ中に入れた。この混合物を撹拌し、160℃で1時間加熱した。この温度で圧力を900mbarまで下げて、800mbarでさらに反応を行い、この間にメタノールを蒸留により取り除いた。この温度で5時間撹拌した。さらにテトライソプロピルオルトチタネート 0.05mlを加え、反応混合物を、常圧下、170℃でさらに20時間撹拌した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、0040〜0.063mm、Merck社)にかけた。n−ヘキサン/アセトン混合物(5:1)を溶離液として用いた。この方法により得られた生成物から、付着するシクロドデカノールを、140℃、高真空下で取り除いた。残渣をアセトン中で再結晶化させた。無色の結晶5.9g(13%)が得られた。
【0117】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3)δ=7.94 (d, 2H), 6.86 (d, 2 H), 6.08 (s, 1 H), 5.27-5.19 (m, 1 H), 1.89-1.75 (m, 2 H), 1.68-1.55 (m, 2 H), 1.53-1.25 (m, 18 H)
【0118】
実施例3
3−ヒドロキシ安息香酸シクロオクチルエステルの調製
m−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル 15.22g(0.10mol)、シクロオクタノール 25.64g(0.20mol)およびテトライソプロピルオルトチタネート 15mg(0.05mmol)を、アルゴン雰囲気下で、蒸留ブリッジを有する丸底フラスコ中に入れた。混合物を撹拌し、170〜180℃に加熱した。3.5時間撹拌を続け、次いでシクロオクタノール 12.82g(0.10mol)をさらに加えた。170〜180℃でさらに5時間撹拌した後、シクロオクタノール 12.8gおよびテトライソプロピルオルトチタネート 15mgを、溶液にさらに加え、190〜210℃の間でさらに7時間撹拌した。
【0119】
冷却し、そして反応溶液に、蒸留水 約500mlを加えた。ジエチルエーテルを用いて抽出を繰り返し行った。併せた有機相を飽和NaCl溶液で洗浄した。硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた後、溶剤を減圧下で取り除いた。粗生成物を、シリカゲル上(シリカゲル 60, 0040−0.063mm,Merck)にて、n−ヘキサンおよび酢酸エチルの混合物(5:1)を用いて、クロマトグラフにかけた。生成物を高真空下で加熱し、残りのシクロオクタノールを取り除いた。褐色粘調オイル16.03g(65%)が得られた。
【0120】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3)δ=7.68-7.65 (m, 1 H), 7.61-7.55 (m, 1 H), 7.32-7.23 (m, 1 H), 7.12-7.05 (m, 1 H), 6.96 (s, 1 H), 5.24-5.12 (m, 1 H), 1.77-1.45 (m, 14 H)
【0121】
実施例4
3−ヒドロキシ安息香酸シクロドデシルエステルの調製
m−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル 15.22g(0.10mol)、シクロドデカノール 38.86g(0.20mol)およびテトライソプロピルオルトチタネート 19mg(0.07mmol)を、アルゴン雰囲気下で、蒸留ブリッジを有する丸底フラスコ中に入れた。反応混合物を175℃に加熱し、圧力を800mbarまで下げた。圧力を、2時間の間、500mbarに持続的に減圧した。4時間後、テトライソプロピルオルトチタネート 3滴をさらに加えた。圧力を800mbarまで上げた。撹拌を170〜200℃でさらに24時間続けた。冷却し、残渣を、n−ヘキサン/アセトン混合物(5:1)を用いて、シリカゲル上(シリカゲル60、0040〜0.063mm、Merck社)カラムクロマトグラフィーで精製した。得られた生成物から、付着するシクロドデカノールを、高真空下で取り除き、そしてジクロロメタンを用いて再度シリカゲル(シリカゲル60、0040〜0.063 mm、Merck社)上クロマトグラフにかけた。褐黄色の固体5.2g(17%)が得られた。
【0122】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3)δ=7.61-7.52 (m, 2 H), 7.35-7.22 (m, 1 H), 7.08-7.00 (m, 1 H), 5.56 (s, 1 H), 5.32-5.28 (m, 1 H), 1.90-1.75 (m, 2 H), 1.74-1.56 (m, 2 H), 1.54-1.22 (m, 18 H)
【0123】
実施例5
本発明にかかる末端基を有するポリカーボネートの調製
2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 17.12g(0.075mol)およびNaOH 6.60g(ビスフェノール化合物に対して220モル%)を、フラスコ中、窒素雰囲気下で、水 273mlに溶かした。ジクロロメタン 273mlに溶かした、3−ヒドロキシ安息香酸シクロオクチルエステル(実施例3参照)1.12g(ビスフェノール化合物に対して6モル%)を、混合物に加えた。5分間撹拌した。ホスゲン 14.73g(ビスフェノール化合物に対して200モル%)を、室温(25℃)で導入し、激しく撹拌した。この工程中、40%NaOH溶液を用いて、pHを12.5〜13.5に保った。導入終了後、装置を窒素で5分間すすいだ。ジクロロメタン 10mlに溶かしたN−エチルピペリジン 0.085g(1モル%)を、反応混合物に加えた。さらに45分間撹拌した。ジクロロメタンで希釈し、有機相を取り出した。同体積の10%塩酸を用いて有機相を抽出した後、有機相を分離し、次いで、電解質がなくなるまで、水でさらに5回洗浄した。有機相に溶解したポリマーをメタノール中で沈殿させ、減圧乾燥させた。
【0124】
収率:18.90g(精製前)
=10005g/mol
=19163g/mol
D=1.92
=147℃
【0125】
実施例6
本発明にかかる末端基を有するポリカーボネートの調製
実験手順は、実施例5における説明に対応する。相違点は、3−ヒドロキシ安息香酸シクロオクチルエステルの代わりに、3−ヒドロキシ安息香酸シクロドデシルエステル 6モル%(ビスフェノール化合物に対して)(実施例4参照)を、連鎖停止剤として用いたことである。
【0126】
=8384
=20423
D=2.44
=142℃
【0127】
実施例7
比較例
実験手順は、実施例5における説明に対応する。相違点は、連鎖停止剤をホスゲン化の前に、2相システムにおいて溶かした。3-ヒドロキシ安息香酸シクロオクチルエステルの代わりに、4-tert-ブチルフェノール 6モル%(ビスフェノール化合物に対して)を、連鎖停止剤として使用した。
【0128】
=10238
=19431
D=1.90
=148℃
【0129】
実施例8
比較例
実験手順は、実施例5における説明に対応する。相違点は、3−ヒドロキシ安息香酸シクロオクチルエステルの代わりに、4−ヒドロキシ安息香酸シクロオクチルエステル 5モル%(ビスフェノール化合物に対して)を、連鎖停止剤として用いたことである。
【0130】
=11679
=22793
D=1.95
=149℃
【0131】
本発明にかかる末端基:
【0132】
【表1】

【0133】
比較例:
【0134】
【表2】


【0135】
上記の表から、p−置換フェノールを有するポリカーボネート(例えばtert-ブチルフェノールなどの通常使用される末端基を有するもの)と比べて、本発明にかかるポリカーボネートは、実質的に同程度の分子量を有しながら、驚くほど低いゼロせん断速度粘度を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

[式中、
は、HまたはCH基の何れかであり、
は、H、直鎖もしくは分枝状のC〜C18アルキルもしくはアルコキシ、ClもしくはBrまたは必要に応じて置換されたアリールもしくはアラルキル基を表し、
Zは、炭素数1〜30のアルキルスペーサーまたは単結合を表し、
Xは、単結合または、−O−、−CO−、CH−、−COO−もしくは−OCO−などの2価の基を表し、
Yは、必要に応じて置換された脂環式基または、アダマンチルもしくはノルボルニル基などの必要に応じて置換された多環式脂肪族基または必要に応じて置換された芳香族基を表し、および
nは1,2,3または4、そしてmは0,1,2または3であってよく、但しn+mの和が4であることを条件とする。]
を有する化合物の使用であって、
対応する末端基を有するポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステルの製造における連鎖停止剤としての使用。
【請求項2】
o−および/またはm−置換フェノールに基づく末端基を有する、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステル。
【請求項3】
成形品および押出物の製造用の、請求項2記載のポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステル。
【請求項4】
請求項2記載のポリカーボネートから作成された、押出物および成形品。
【請求項5】
式(1)を有する化合物。
【化2】

[式中、
は、HまたはCH基の何れかであり、
は、H、直鎖もしくは分枝状のC〜C18アルキルもしくはアルコキシ、ClもしくはBrまたは必要に応じて置換されたアリールもしくはアラルキル基を表し、
Zは、炭素数1〜30のアルキルスペーサーまたは単結合を表し、
Xは、単結合または、−O−、−CO−、CH−、−COO−もしくは−OCO−などの2価の基を表し、
Yは、必要に応じて置換された脂環式基または、アダマンチルもしくはノルボルニル基などの必要に応じて置換された多環式脂肪族基または必要に応じて置換された芳香族基を表し、および
nは1,2,3または4、そしてmは0,1,2または3であってよく、但しn+mの和が4であることを条件とする。]
【請求項6】
o−および/またはm−シクロアルキル置換フェノールまたは対応するo−またはm−結合エステルが連鎖停止剤として使用されることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項7】
請求項5記載の式(1)を有する化合物が連鎖停止剤として使用されることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項8】
請求項5記載の式(1)を有する化合物に基づく末端基を有することを特徴とする、請求項2記載のポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステル。
【請求項9】
原則的に知られた方法において、請求項5記載の式(1)を有する化合物が、ジフェノールの総モル量に対して0.5〜8モル%使用されることを特徴とする、請求項8記載のポリカーボネート、ポリエステルカーボネートおよびポリエステルの製造方法。
【請求項10】
請求項5記載の式(1)を有する化合物が、ジフェノールの総モル量に対して2〜6モル%使用されることを特徴とする、請求項9記載の製造方法。

【公表番号】特表2006−503942(P2006−503942A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−545812(P2004−545812)
【出願日】平成15年10月8日(2003.10.8)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011108
【国際公開番号】WO2004/037893
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】