側面通気用の蓋を含む培養プレート
【課題】本発明は、側面通気用の蓋を含む培養プレートであって、細胞及び培養物の無菌培養を簡素化する培養プレートを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、培養プレート、特に、蓋の周囲側壁がフィルター材料から作られている少なくとも１つのフィルター要素から少なくとも部分的に形成されている蓋を含む培養プレートに関する。これは、培養プレートの積層された配置でさえも、培養プレートの側面の均一な通気を可能にし、同時に、蒸発による培地の重大な喪失を避ける。
【解決手段】本発明は、培養プレート、特に、蓋の周囲側壁がフィルター材料から作られている少なくとも１つのフィルター要素から少なくとも部分的に形成されている蓋を含む培養プレートに関する。これは、培養プレートの積層された配置でさえも、培養プレートの側面の均一な通気を可能にし、同時に、蒸発による培地の重大な喪失を避ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、培養プレート、特に、培養プレートの側面通気を可能にする蓋を含む培養プレートに関する。
【背景技術】
【０００２】
細胞の培養、細胞及び組織培養は、例えば生物学的及び製剤的研究及び開発の分野において、共通の手段を示す。培養される有機体に依存して、特定の増殖条件、例えば、光及び温度処方、好気的又は嫌気的条件などが適用されなければならない。しかしながら、これらの培養の純度を維持するために、一般には、無菌条件下で細胞を増殖させるか又は培養することが必要である。
【０００３】
培養の問題に関して、種々の材料から作られている培養容器は、当業者に知られている。これらの容器は、平らな丸いディッシュ又はマルチウェルプレートなどの種々の形状を有することができる。
【０００４】
培養容器の内部と好気性培養条件のための周辺雰囲気との間でガス交換を可能にすることによって無菌培養条件を提供するために、培養容器用に密閉組立部品の一部としてのフィルター又はフィルター要素を用いてもよい。
【０００５】
歴史的に見れば、綿又はガーゼで形成された栓は、ボトル又はフラスコなどの容器の開口に挿入されていた。さらに、培養容器の蓋に挿入されるフィルターフィルム又はフィルター要素を用いることが知られている。
【０００６】
例えば、米国特許第４，６７０，３９８号では、容器の内部と周辺雰囲気との間のガス交換率を調節可能に設定するための手段を含む、基部及び蓋を有する植物組織培養容器を開示している。無菌条件を提供するために、追加の要素として、フィルターは、蓋のチャネルを受け入れる輪状フィルターにはめ込まれる。
【０００７】
米国特許出願公開第２００５／０１７８０５４Ａ１号は、フィルターの蓋を有する培養瓶に関し、この蓋は、積層されている又は積層されていないフィルターの蓋として設計され得る。これらの両方の蓋において、フィルター材料（ｍａｔｅｒｉａｌ）を受け入れ、保持するための内部空間で覆うフィルターが蓋の上部に提供され、それは、ペーパー若しくはファイバーフィルター、又は微小孔フィルターメンブレンであり得る。
【０００８】
容器及び蓋を含む組織培養用装置がＷＯ９６／２９８５６に開示されている。該装置の蓋には、ポート、ポート壁及び滅菌フィルターパッドを含むガス交換装置が開示され、そこでは、滅菌フィルターパッドは、典型的には、ポート壁にシールされたメンブレンフィルターである。
【０００９】
細胞の培養、細胞及び組織培養はまた、多くの場合、ペトリディッシュ又はマルチウェルで行われる。とりわけ、マルチウェルの使用は、例えば、スペースを節約し、並行して、例えばハイスループットプロセスのための多くの培養を提供及び操作するために有利である。
【００１０】
このようなプレートを用いる場合、例えば、フィルターフィルムは、培養中に任意の汚染作用物質の侵入を阻害するために、プレートに与えられた空洞を覆うために用いられてもよい。さらに、また、この蓋に挿入されたフィルター要素を用いて、マルチウェルプレートに対する密閉組立部品が知られている。
【００１１】
ＥＰ１０６９１８１Ａ２は、マルチウェル容器の複数の壁をシールするための密閉組立部品を提供する。この密閉組立部品は、シーリング関与（ｅｎｇａｇｅｍｅｎｔ）のためにウェルに配置されている枠組みに与えられているシーリング要素を含む。このシーリング要素は、そこを通じて伸長している通路、実質的に滅菌したガス交換を可能にするための該通路に与えられているフィルター媒体を含む。
【００１２】
米国特許第５，８６３，７９２号は、底部要素と、ガス透過性メンブレンを含む蓋の上部側に与えられ、培養プレートの空洞とともに直接的な配列で配置されている開口部を有する蓋とを含む組織培養用のマルチプレートを開示している。
【００１３】
要約すると、既知の培養容器は、追加のフィルター要素、例えばフィルターフィルム若しくはシーリングリングの使用を必要とし、及び／又は無菌培養をより困難にする複雑な設計を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【００１４】
このようにして、本発明の課題は、細胞及び培養物の無菌培養を簡素化する培養プレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１５】
上述した課題は、培養プレート、及び該培養プレートを製造する方法を提供することによって解決される。
【００１６】
本発明の培養プレートは、底部要素、及び該底部要素を覆うための蓋を含む。この培養プレートの底部要素は、底部側、少なくとも１つの側壁、及び上部側を含む基板を含み、ここで、少なくとも１つの空洞が該基板に配置され、この空洞は、該空洞を取り囲む少なくとも１つの側壁、底部壁、及び、該空洞に保持されるように物質を受け入れ、基板の上部側から接近可能にするための開口部を含む。
【００１７】
蓋は、上部及び周囲側壁を含み、蓋の少なくとも周囲側壁は、フィルター材料から作られている少なくとも１つのフィルター要素から少なくとも部分的に形成されることによって特徴付けられ、ここで、培養プレートの内部容積と周囲環境との間のガス交換は、少なくとも１つのフィルター要素を介して達成される。
【００１８】
本発明者らは、少なくとも１つのフィルター要素が蓋の側壁で形成される本発明の培養プレートを提供することによって、適切なガス交換が、例えば、培養チャンバー内で積層された配置においてでさえも得られることを見出した。この蓋の側壁への少なくとも１つのフィルター要素の配置は、例えば、汚染物の侵入を同時に避けるユーザーによってプレートの更なる保持／維持を可能にする。蓋の側壁への少なくとも１つのフィルター要素の位置は、プレートの均一な通気を与え、同時に、蒸発による培地の重大な喪失を避ける。
【図面の簡単な説明】
【００１９】
【図１】本発明による培養プレートの好ましい態様を示す。側壁（２２）を有する培養プレート（１０）の底部要素（２０）は、９６ウェル又は空洞（２４）を呈する。フィルター要素（４０）は、蓋（３０）の側壁（３２）の部分を形成する。
【発明を実施するための形態】
【００２０】
本発明の主要な態様によれば、培養プレートは、底部側、少なくとも１つの側壁、及び上部側を含む基板を含む底部要素；並びに、該基板に配列された空洞であって、該空洞の周囲の少なくとも１つの側壁、底部壁及び空洞内に保持するように物質を受け入れ、基板の上部側から接近可能なようにするための開口部を含む前記少なくとも１つの空洞を含む。主要な態様に係る培養プレートは、さらに、上部及び周囲側壁を含む底部要素を覆うための蓋を含み、ここで、該培養プレートは、該蓋の少なくとも１つの周囲側壁が、フィルター材料で作られている少なくとも１つのフィルター要素から少なくとも部分的に形成され、ここで、該培養プレートの内部体積と周囲環境との間のガス交換は、少なくとも１つのフィルター要素を介して達成される。
【００２１】
本発明の培養プレートは、培養目的、例えば、ウイルス、微生物、真菌、組織細胞及び／又は細胞若しくは組織培養用に用いられてもよく、あるいはアッセイに用いられてもよい。
【００２２】
培養プレートは、種々の形状及び寸法を有してもよい。適切な形状には、円形、長方形、二次的（ｑｕａｄｒａｔｉｃ）又は他の形状が含まれる。好ましくは、培養プレートは、平らな丸いディッシュ、又は多角形、好ましくは、実質的に長方形のプレートとして形成される。
【００２３】
培養プレートの底部要素及び蓋は、フィルター要素を除いて、当業者に知られている任意の適切な材料、例えば、ガラス又は適切なプラスチック、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、及びポリビニル熱可塑性レジンから、従来の射出成形又は熱成形法を用いて製造することができる。使用の目的に従って、同時に、実験湿及び安全性のガイドラインに従って、適切な材料を選択することは、当業者の知識の範囲内である。例えば、蓋または蓋と底部要素は、光の透過を可能にする材料から作製されてもよく、あるいは、培養プレートの透過性を減少させるために色素を添加されもよい。
【００２４】
培養プレートの底部要素及び蓋、並びに、底部要素の一部及び蓋の一部は、種々の材料から作られてもよいが、ただし、該蓋の少なくとも周囲側壁は、少なくとも部分的に、フィルター材料で作られている少なくとも１つのフィルター要素で形成されている。
【００２５】
底部要素に含まれる少なくとも１つの空洞は、種々の断面を有してもよく、ここで、実質的に円形又は実質的に長方形の断面が好ましい。少なくとも１つの空洞の開口端の任意の適切な直径又は寸法、並びに少なくとも１つの空洞の任意の適切な深さが選択され、その結果、種々の容積が少なくとも１つの空洞内に保持され得る。該少なくとも１つの空洞の開口部の直径又は寸法及び深さは、該底部要素の寸法及び該底部要素に与えられている空洞の数によって制限される。
【００２６】
該少なくとも１つの空洞の底部壁は様々な形状を有することができる。好ましくは、底部壁は、平面、Ｕ型、Ｖ型（即ち、先細の底部壁）、又は僅かに丸い端（単数又は複数）を有する本質的には平面であってもよい。
【００２７】
培養プレートの蓋は、底部要素の上部側を完全に覆うことができ、該蓋の少なくとも１つの側壁が底部要素の少なくとも１つの側壁の上方に少なくとも部分的に伸びているように設計される。このようにして、培養プレートの密着配置では、蓋は、底部要素を覆うようにその上に設置され、蓋の少なくとも１つの側壁の内面が底部要素の少なくとも１つの側壁の外面に対して面する。好ましくは、底部要素の少なくとも１つの側壁は、蓋の少なくとも１つの側壁によって完全に覆われ、即ち、上部側から底部要素の底部側に至る少なくとも１つの側壁の完全な距離が蓋の少なくとも１つの側壁によって覆われる。
【００２８】
蓋の上部は基板の上部側又は少なくともその部分から隔ててあけられるように配置されていることがさらに好ましく、その結果、蓋の上部の内面と基板の上部側との間の通路が、少なくとも１つのフィルター要素を介して、少なくとも１つの空洞と培養プレートを取り囲む環境との間のガス交換を可能にするように形成される。いずれの場合においても、培養プレートの蓋と底部要素は、培養プレートの内部と周囲環境との間のガス交換が少なくとも１つのフィルター要素を介して達成されるように設計される。
【００２９】
好ましくは、培養プレート及び少なくとも１つの空洞は、該培養プレートが自動ステーションによって操作可能なように、即ち、プレートが、例えばピペッティング機械及びロボットシステムと互換性があるように設計及び寸法を決定してもよい。
【００３０】
少なくとも１つのフィルター要素は、容器内部への任意の汚染物質、例えばウイルス、微生物、真菌、及び他の粒子、例えばダスト粒子の侵入を防ぐが、培養プレートと周囲雰囲気との間でのガス交換を可能にするのに適切な、当業者に知られている任意のフィルター材料から作られてもよい。さらに、少なくとも１つのフィルター要素は、培養プレートを取り囲む環境への胞子形成する微生物によって生成される胞子の進出（ｅｘｉｔ）を妨げる。好ましくは、少なくとも１つのフィルター要素は、培養プレートの内部と周辺雰囲気との間の水及び／又は他の液体の交換を妨げるか又は少なくとも減少させるフィルター材料からできており、その結果、培養物は、無菌条件下で長期間、容積の重大な減少なしに培養プレートに貯蔵され得る。フィルター要素は、例えば、焼結されたポリカーボネート、好ましくは焼結されたポリエチレンから作られてもよい。フィルター要素に関する他の代替物は、当業者に周知である。
【００３１】
蓋が１以上のフィルター要素を含む場合において、該フィルター要素は種々の材料から作られてもよいことは理解されるべきである。
【００３２】
培養プレートの蓋の少なくとも１つの側壁に少なくとも１つのフィルター要素を含むことによって、培養プレートの内部、即ち、少なくとも１つの空洞を有するものと、培養プレートを取り囲む雰囲気との間でのガス交換は、例えば、培養部屋又はチャンバーに培養プレートを積層された配置においてでさえも可能である。周囲雰囲気とのガス交換が少なくとも１つのフィルター要素を介して達成されるので、培養プレートの任意の汚染、例えば、該少なくとも１つの空洞に含まれる液体培養物又は溶液の任意の汚染が妨げられる。
【００３３】
本明細書中で使用するとき、用語であるガス交換は、用語である通気と互換可能に使用される。
【００３４】
培養プレートの内部と周囲雰囲気との間のガス交換は、少なくとも１つのフィルター要素だけを介して達成される。これは、例えば、培養プレートの蓋及び／又は底部要素上に任意のシーリング要素又は手段を提供することによって確実としてもよく、この場合、密着した位置において、実質的に密接なクローザー（ｃｌｏｓｅｒ）が達成され、ガス交換が、少なくとも１つのフィルター要素を介してのみ可能である。例えば、底部要素の少なくとも１つの側壁は先細りになってもよく、その結果、基板の断面は、底部側から底部要素の上部側に向けて減少されている。先細りになった形状は、底部要素上の蓋の配置を促進し、蓋の少なくとも１つの側壁のより低い端は、密閉した条件で底部要素の少なくとも１つの側壁のより低い部分と直接接触され得る。
【００３５】
それに加えて又はそれに代えて、好ましくは、蓋の少なくとも１つの側壁の内部側での突出は、底部要素の側壁と直接的に接触して、シーリングを提供するように、該側壁のより低い端に近接するように提供されてもよい。培養プレートの内部と周囲雰囲気との間のガス交換が少なくとも１つの要素だけを介して達成される培養プレートのシーリングを得る代替の方法が多数存在していることは当業者に明らかである。
【００３６】
したがって、本発明の一態様によれば、培養プレートは、蓋の少なくとも１つの側壁の底部側（即ち、伸長方法に面する側）が培養プレートの密着した配置で支えられている伸長を提供するように、基板の少なくとも１つの側壁の上方にのびる基板の底部側を含む。
【００３７】
好ましくは、蓋の少なくとも１つの側壁は、基板の少なくとも１つの側壁の高さよりも高い寸法／伸長を有する。したがって、培養プレートの密着した配置において、蓋の上部は、基板の上部側又はその少なくとも一部から隔てて配列され、少なくとも１つの空洞と周囲環境との間のガス交換を改善する。
【００３８】
それに加えて又はそれに代えて、底部要素の伸長に向かって対面している蓋の少なくとも１つの側壁の壁は、密着した配列において伸長の表面に適合するように設計されることが好ましく、その結果、空気の通路が妨げられる。
【００３９】
好ましくは、より低い境界側壁及び外側面を受け入れるように適合される蓋に向かって対面している基板の底部側の伸長に溝が提供されもよい。それに代えて又はそれに加えて、底部要素上に蓋の密接／直接の適合をさらに強化するシーリング要素を提供してもよい。
【００４０】
本発明の別の態様によれば、少なくとも１つのフィルター要素は、機械的に安定な要素である。
【００４１】
本明細書中で使用するとき、機械的に安定とは、たとえ更なる培養プレートが、例えば慣用的な培養チャンバー内で蓋上に積層されたとしても、少なくとも１つのフィルター要素が、実質的に変形せずに、蓋の上部を支えることができるこのような安定性を有することを意味することが意図される。このようにして、追加の支持要素が、したがって、その上部を支えるために、蓋の少なくとも側面に提供されなくてもよい。
【００４２】
機械的に安定なフィルター要素は、２つの機能を提供し、一方は、それは壁材料を利用し、他方では、それは、培養プレート内に又はその内面から汚染物質の侵入及び／又は進出を妨げるフィルターを提供する。
【００４３】
したがって、機械的に安定なフィルター要素を提要することは、２つの別々の要素、即ち、壁材料及び／又は蓋の上部と少なくとも１つの追加のフィルター要素を支持するための支持材料の使用の必要性を妨げるこのような培養プレートに対する生産費を減少させる。さらに、例えば、追加のフィルター要素はプレートの製造中に挿入される必要はなく、プレートの実験室操作中に用いられなくてもよいため、このような培養プレートを生産及び操作することが容易である。
【００４４】
本発明の別の態様によれば、蓋の少なくとも１つの側壁は、フィルター要素に完全に存在する。したがって、培養プレートの内部と培養プレートを取り囲む環境との間のガス交換を可能にする表面が増加する。さらに、フィルター要素に完全に存在する側壁は容易に生産すれ、それは、完全な側壁が、好ましくは、一体化して形成され得るためであり、次に、少なくとも１つの側壁が蓋の上部で連結される。好ましくは、蓋の全ての側壁が、底に位置した各フィルター要素を用いて提供される。より好ましくは、蓋の全ての側壁は、フィルター材料からなる。
【００４５】
本発明の更なる態様によれば、蓋の上部は、少なくとも１つのフィルター要素を含み、又は完全にフィルター要素からなっていてもよい。この追加の少なくとも１つのフィルター要素は、さらに、培養物の内部空間と培養プレートを取り囲む環境との間のガス交換を改善する。
【００４６】
本発明の一態様によれば、フィルター要素は、０．１〜１μｍの範囲の孔サイズを有する。好ましくは、孔サイズは、０．２〜０．５μｍの範囲である。より好ましくは、孔サイズは、０．２〜０．２５μｍの範囲であり、さらにより好ましくは、孔サイズは０．２２μｍである。
【００４７】
本発明の別の態様によれば、フィルター要素は、焼結されたポリエチレン（ＰＥ）で作られている。焼結は、圧縮された粉末粒子が互いに接着するまで、それらの融点温度未満の加熱温度に晒される方法である。したがって、材料を通じてガス交換を可能にする適切な孔を有する機械的に安定な材料が提供される。焼結されたポリエチレンの表面は、さらに、ＰＥ系本体の孔を浸透し、微小孔であり、付着のない表面を形成する、ポリテトラフルオロエチレン（ＰＴＦＥ）コートで部分的に提供されてもよい。組み合わせた材料は、化学的な耐性の増加を提示し、湿気によって影響されない。
【００４８】
あるいは、フィルター要素は、焼結されたポリカーボネートから作られている。当業者に周知であるフィルター要素に適した多数の材料があることは承認される。
【００４９】
上述されるように、本発明に係る培養プレートの底部要素は、少なくとも１つの空洞を含む。たった１つの空洞を提供する場合、培養プレートは、好ましくは、円形又は長方形の断面を有する慣用的に知られているペトリディッシュに設計されてもよいが、ただし、蓋の少なくとも１つの側壁は、少なくとも１つのフィルター要素を含み、ここで、ガス交換は、フィルター要素を介して達成される。好ましくは、また、底部要素の側壁は、１つの空洞の側壁を提供してもよい。
【００５０】
本発明の別の態様によれば、底部要素は、所定のパターンで配置された複数の空洞を含んでもよく、これらの空洞は、互いに分離されている。いくつかの空洞は、種々の断面及び／又は寸法を有することができる。しかしながら、円形及び長方形の断面が好ましい。複数の空洞の少なくとも１つは、互いに連結される、１を超える部分から構成されていることがさらに好ましい。
【００５１】
好ましくは、空洞の各々は、例えば、文字、ローマ数字、及び／又はアルファベット及び数値の記号によってマークされ、各空洞の特定を容易にする。
【００５２】
本発明の１つの好ましい態様によれば、複数の空洞は、行及び列に配列される。
【００５３】
本発明のさらにより好ましい態様によれば、底部要素は、慣用的なマイクロタイタープレートに一致して、寸法及びレイアウトを有する。
【００５４】
本発明の一態様によれば、マイクロタイタープレートは、プレート当たり４、６、８、１２、２４、４８、９６、３８４又は１５３６個の空洞を含む。とりわけ、それに限定されないが、９６ウェル又は３８４ウェルフォーマットを有するマイクロタイタープレートでは、空洞の底壁のＵ型又はＶ型の形状が好ましい。それは、これらの形状が、最小の静止体積のピペッティングさえも可能にするためである。
【００５５】
１つの空洞によって受け入れ可能な最大体積は、底部要素、そこに配置された空洞の数、空洞の高さに依存する。マイクロタイタープレートのサイズ、及びそこに含まれる少なくとも１つの空洞の寸法は、当業者に周知である。好ましくは、各々の空洞は、同じ容積を受け入れるように適合される。さらにより好ましい９６ウェルプレートの各空洞は、最大約５０００μｌ、さらにより好ましくは５００μｌ〜約２５００μｌの範囲で受け入れるように適合されてもよい。３８４ウェルプレートでは、各空洞は、好ましくは、最大約５００μｌ、さらにより好ましくは約２０μｌ〜約２５０μｌの範囲で受け入れるように適合されてもよい。
【００５６】
本発明に係る培養プレートは、無菌であり、ＤＮａｓｅ、ＲＮａｓｅ、若しくは発熱物質を含まず、又はそれらのいずれかの組み合わせであってもよい。
【００５７】
別の局面によれば、本発明は、前述する請求項のいずれかに係る培養プレートを製造する方法を提供し、該方法は、（ａ）少なくとも１つの空洞を有する底部要素を提供し、（ｂ）フィルター材料でできている少なくとも１つのフィルター要素を用意し、（ｃ）上部のみ又は上部から伸びている少なくとも１つの周囲側壁を有する上部からなり、少なくとも１つのフィルター要素を受け入れるように適合された少なくとも１つの凹所を有する蓋を用意し、（ｄ）少なくとも１つのフィルター要素と蓋とを連結する工程を含む。
【００５８】
底部要素及び蓋は、例えば、当該技術分野において知られている従来の射出成形又は熱成形法を用いて製造することができる。可能であれば、また、例えば、ペトリディッシュ又はマイクロタイタープレートから培養プレートの従来の底部要素を用いてもよい。
【００５９】
上述されているフィルター要素から作製されている少なくとも１つのフィルター要素は、それが蓋と密接に連結されるように寸法を決定しなければならない。
【００６０】
本発明の方法の一態様によれば、工程ｂ）において、蓋の完全な側壁を形成するフィルター要素が提供される。
【００６１】
これは、ふたの製造を促進し、例えば、生産費を減らすことができるように製造工程の数を減少させる。
【００６２】
本発明の方法の好ましい態様によれば、該フィルター要素の提供は、鋳型にポリエチレン粉末を充填し、それを焼結過程に供することによって該フィルター要素の製造を含む。
【００６３】
本発明の方法の一態様によれば、フィルター要素は、留め（ｓｎａｐｐｉｎｇ）、接着を伴う固着、又は超音波溶着によって蓋に連結される。
【００６４】
留めとは、蓋と少なくとも１つの要素が、それらを機械的に閉じ込めることによって互いに密接に連結されることを意味することが意図される。少なくとも１つのフィルター要素と蓋との連結に有用な接着は、当業者に周知である。また、適切な接着の選択は、蓋と少なくとも１つのフィルター要素を作っている材料に依存することは承認されるべきである。
【００６５】
続く添付の図面において、及びそれを参照にして、本発明の好ましい態様は、本発明をそれに限定することなしに、単に例示によって説明される。
【００６６】
図１は、開封状態における９６個の空洞を有するマルチウェルプレート（９６ウェルフォーマット）として設計された本発明に係る培養プレートを示す。各々の空洞は、同じである、実質的に円形の断面を有し、これらの空洞は、１２列と８行を有する従来の所定のパターンにおいて配置されている。
【００６７】
底部要素及び蓋はともに、実質的に長方形の断面を有し、ここで、両方の部分において、左上部の角は傾斜され、したがって、方向付けマークとして利用される。例えば、この方向付けは、蓋もマルチウェルプレートの底部要素上に同じ方向付けで設置されるのを確実にするのを手助け、その結果、例えば、種々の空洞間の二次汚染を妨げる。
【００６８】
底部要素の基板の底部側は、基板の側壁情報に伸び、蓋の側壁の底部側が培養プレートの密接した配置で支えるようにする伸張を与える。蓋の側壁の最大部分は、フィルター要素から作られている。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、培養プレート、特に、培養プレートの側面通気を可能にする蓋を含む培養プレートに関する。
【背景技術】
【０００２】
細胞の培養、細胞及び組織培養は、例えば生物学的及び製剤的研究及び開発の分野において、共通の手段を示す。培養される有機体に依存して、特定の増殖条件、例えば、光及び温度処方、好気的又は嫌気的条件などが適用されなければならない。しかしながら、これらの培養の純度を維持するために、一般には、無菌条件下で細胞を増殖させるか又は培養することが必要である。
【０００３】
培養の問題に関して、種々の材料から作られている培養容器は、当業者に知られている。これらの容器は、平らな丸いディッシュ又はマルチウェルプレートなどの種々の形状を有することができる。
【０００４】
培養容器の内部と好気性培養条件のための周辺雰囲気との間でガス交換を可能にすることによって無菌培養条件を提供するために、培養容器用に密閉組立部品の一部としてのフィルター又はフィルター要素を用いてもよい。
【０００５】
歴史的に見れば、綿又はガーゼで形成された栓は、ボトル又はフラスコなどの容器の開口に挿入されていた。さらに、培養容器の蓋に挿入されるフィルターフィルム又はフィルター要素を用いることが知られている。
【０００６】
例えば、米国特許第４，６７０，３９８号では、容器の内部と周辺雰囲気との間のガス交換率を調節可能に設定するための手段を含む、基部及び蓋を有する植物組織培養容器を開示している。無菌条件を提供するために、追加の要素として、フィルターは、蓋のチャネルを受け入れる輪状フィルターにはめ込まれる。
【０００７】
米国特許出願公開第２００５／０１７８０５４Ａ１号は、フィルターの蓋を有する培養瓶に関し、この蓋は、積層されている又は積層されていないフィルターの蓋として設計され得る。これらの両方の蓋において、フィルター材料（ｍａｔｅｒｉａｌ）を受け入れ、保持するための内部空間で覆うフィルターが蓋の上部に提供され、それは、ペーパー若しくはファイバーフィルター、又は微小孔フィルターメンブレンであり得る。
【０００８】
容器及び蓋を含む組織培養用装置がＷＯ９６／２９８５６に開示されている。該装置の蓋には、ポート、ポート壁及び滅菌フィルターパッドを含むガス交換装置が開示され、そこでは、滅菌フィルターパッドは、典型的には、ポート壁にシールされたメンブレンフィルターである。
【０００９】
細胞の培養、細胞及び組織培養はまた、多くの場合、ペトリディッシュ又はマルチウェルで行われる。とりわけ、マルチウェルの使用は、例えば、スペースを節約し、並行して、例えばハイスループットプロセスのための多くの培養を提供及び操作するために有利である。
【００１０】
このようなプレートを用いる場合、例えば、フィルターフィルムは、培養中に任意の汚染作用物質の侵入を阻害するために、プレートに与えられた空洞を覆うために用いられてもよい。さらに、また、この蓋に挿入されたフィルター要素を用いて、マルチウェルプレートに対する密閉組立部品が知られている。
【００１１】
ＥＰ１０６９１８１Ａ２は、マルチウェル容器の複数の壁をシールするための密閉組立部品を提供する。この密閉組立部品は、シーリング関与（ｅｎｇａｇｅｍｅｎｔ）のためにウェルに配置されている枠組みに与えられているシーリング要素を含む。このシーリング要素は、そこを通じて伸長している通路、実質的に滅菌したガス交換を可能にするための該通路に与えられているフィルター媒体を含む。
【００１２】
米国特許第５，８６３，７９２号は、底部要素と、ガス透過性メンブレンを含む蓋の上部側に与えられ、培養プレートの空洞とともに直接的な配列で配置されている開口部を有する蓋とを含む組織培養用のマルチプレートを開示している。
【００１３】
要約すると、既知の培養容器は、追加のフィルター要素、例えばフィルターフィルム若しくはシーリングリングの使用を必要とし、及び／又は無菌培養をより困難にする複雑な設計を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【００１４】
このようにして、本発明の課題は、細胞及び培養物の無菌培養を簡素化する培養プレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１５】
上述した課題は、培養プレート、及び該培養プレートを製造する方法を提供することによって解決される。
【００１６】
本発明の培養プレートは、底部要素、及び該底部要素を覆うための蓋を含む。この培養プレートの底部要素は、底部側、少なくとも１つの側壁、及び上部側を含む基板を含み、ここで、少なくとも１つの空洞が該基板に配置され、この空洞は、該空洞を取り囲む少なくとも１つの側壁、底部壁、及び、該空洞に保持されるように物質を受け入れ、基板の上部側から接近可能にするための開口部を含む。
【００１７】
蓋は、上部及び周囲側壁を含み、蓋の少なくとも周囲側壁は、フィルター材料から作られている少なくとも１つのフィルター要素から少なくとも部分的に形成されることによって特徴付けられ、ここで、培養プレートの内部容積と周囲環境との間のガス交換は、少なくとも１つのフィルター要素を介して達成される。
【００１８】
本発明者らは、少なくとも１つのフィルター要素が蓋の側壁で形成される本発明の培養プレートを提供することによって、適切なガス交換が、例えば、培養チャンバー内で積層された配置においてでさえも得られることを見出した。この蓋の側壁への少なくとも１つのフィルター要素の配置は、例えば、汚染物の侵入を同時に避けるユーザーによってプレートの更なる保持／維持を可能にする。蓋の側壁への少なくとも１つのフィルター要素の位置は、プレートの均一な通気を与え、同時に、蒸発による培地の重大な喪失を避ける。
【図面の簡単な説明】
【００１９】
【図１】本発明による培養プレートの好ましい態様を示す。側壁（２２）を有する培養プレート（１０）の底部要素（２０）は、９６ウェル又は空洞（２４）を呈する。フィルター要素（４０）は、蓋（３０）の側壁（３２）の部分を形成する。
【発明を実施するための形態】
【００２０】
本発明の主要な態様によれば、培養プレートは、底部側、少なくとも１つの側壁、及び上部側を含む基板を含む底部要素；並びに、該基板に配列された空洞であって、該空洞の周囲の少なくとも１つの側壁、底部壁及び空洞内に保持するように物質を受け入れ、基板の上部側から接近可能なようにするための開口部を含む前記少なくとも１つの空洞を含む。主要な態様に係る培養プレートは、さらに、上部及び周囲側壁を含む底部要素を覆うための蓋を含み、ここで、該培養プレートは、該蓋の少なくとも１つの周囲側壁が、フィルター材料で作られている少なくとも１つのフィルター要素から少なくとも部分的に形成され、ここで、該培養プレートの内部体積と周囲環境との間のガス交換は、少なくとも１つのフィルター要素を介して達成される。
【００２１】
本発明の培養プレートは、培養目的、例えば、ウイルス、微生物、真菌、組織細胞及び／又は細胞若しくは組織培養用に用いられてもよく、あるいはアッセイに用いられてもよい。
【００２２】
培養プレートは、種々の形状及び寸法を有してもよい。適切な形状には、円形、長方形、二次的（ｑｕａｄｒａｔｉｃ）又は他の形状が含まれる。好ましくは、培養プレートは、平らな丸いディッシュ、又は多角形、好ましくは、実質的に長方形のプレートとして形成される。
【００２３】
培養プレートの底部要素及び蓋は、フィルター要素を除いて、当業者に知られている任意の適切な材料、例えば、ガラス又は適切なプラスチック、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、及びポリビニル熱可塑性レジンから、従来の射出成形又は熱成形法を用いて製造することができる。使用の目的に従って、同時に、実験湿及び安全性のガイドラインに従って、適切な材料を選択することは、当業者の知識の範囲内である。例えば、蓋または蓋と底部要素は、光の透過を可能にする材料から作製されてもよく、あるいは、培養プレートの透過性を減少させるために色素を添加されもよい。
【００２４】
培養プレートの底部要素及び蓋、並びに、底部要素の一部及び蓋の一部は、種々の材料から作られてもよいが、ただし、該蓋の少なくとも周囲側壁は、少なくとも部分的に、フィルター材料で作られている少なくとも１つのフィルター要素で形成されている。
【００２５】
底部要素に含まれる少なくとも１つの空洞は、種々の断面を有してもよく、ここで、実質的に円形又は実質的に長方形の断面が好ましい。少なくとも１つの空洞の開口端の任意の適切な直径又は寸法、並びに少なくとも１つの空洞の任意の適切な深さが選択され、その結果、種々の容積が少なくとも１つの空洞内に保持され得る。該少なくとも１つの空洞の開口部の直径又は寸法及び深さは、該底部要素の寸法及び該底部要素に与えられている空洞の数によって制限される。
【００２６】
該少なくとも１つの空洞の底部壁は様々な形状を有することができる。好ましくは、底部壁は、平面、Ｕ型、Ｖ型（即ち、先細の底部壁）、又は僅かに丸い端（単数又は複数）を有する本質的には平面であってもよい。
【００２７】
培養プレートの蓋は、底部要素の上部側を完全に覆うことができ、該蓋の少なくとも１つの側壁が底部要素の少なくとも１つの側壁の上方に少なくとも部分的に伸びているように設計される。このようにして、培養プレートの密着配置では、蓋は、底部要素を覆うようにその上に設置され、蓋の少なくとも１つの側壁の内面が底部要素の少なくとも１つの側壁の外面に対して面する。好ましくは、底部要素の少なくとも１つの側壁は、蓋の少なくとも１つの側壁によって完全に覆われ、即ち、上部側から底部要素の底部側に至る少なくとも１つの側壁の完全な距離が蓋の少なくとも１つの側壁によって覆われる。
【００２８】
蓋の上部は基板の上部側又は少なくともその部分から隔ててあけられるように配置されていることがさらに好ましく、その結果、蓋の上部の内面と基板の上部側との間の通路が、少なくとも１つのフィルター要素を介して、少なくとも１つの空洞と培養プレートを取り囲む環境との間のガス交換を可能にするように形成される。いずれの場合においても、培養プレートの蓋と底部要素は、培養プレートの内部と周囲環境との間のガス交換が少なくとも１つのフィルター要素を介して達成されるように設計される。
【００２９】
好ましくは、培養プレート及び少なくとも１つの空洞は、該培養プレートが自動ステーションによって操作可能なように、即ち、プレートが、例えばピペッティング機械及びロボットシステムと互換性があるように設計及び寸法を決定してもよい。
【００３０】
少なくとも１つのフィルター要素は、容器内部への任意の汚染物質、例えばウイルス、微生物、真菌、及び他の粒子、例えばダスト粒子の侵入を防ぐが、培養プレートと周囲雰囲気との間でのガス交換を可能にするのに適切な、当業者に知られている任意のフィルター材料から作られてもよい。さらに、少なくとも１つのフィルター要素は、培養プレートを取り囲む環境への胞子形成する微生物によって生成される胞子の進出（ｅｘｉｔ）を妨げる。好ましくは、少なくとも１つのフィルター要素は、培養プレートの内部と周辺雰囲気との間の水及び／又は他の液体の交換を妨げるか又は少なくとも減少させるフィルター材料からできており、その結果、培養物は、無菌条件下で長期間、容積の重大な減少なしに培養プレートに貯蔵され得る。フィルター要素は、例えば、焼結されたポリカーボネート、好ましくは焼結されたポリエチレンから作られてもよい。フィルター要素に関する他の代替物は、当業者に周知である。
【００３１】
蓋が１以上のフィルター要素を含む場合において、該フィルター要素は種々の材料から作られてもよいことは理解されるべきである。
【００３２】
培養プレートの蓋の少なくとも１つの側壁に少なくとも１つのフィルター要素を含むことによって、培養プレートの内部、即ち、少なくとも１つの空洞を有するものと、培養プレートを取り囲む雰囲気との間でのガス交換は、例えば、培養部屋又はチャンバーに培養プレートを積層された配置においてでさえも可能である。周囲雰囲気とのガス交換が少なくとも１つのフィルター要素を介して達成されるので、培養プレートの任意の汚染、例えば、該少なくとも１つの空洞に含まれる液体培養物又は溶液の任意の汚染が妨げられる。
【００３３】
本明細書中で使用するとき、用語であるガス交換は、用語である通気と互換可能に使用される。
【００３４】
培養プレートの内部と周囲雰囲気との間のガス交換は、少なくとも１つのフィルター要素だけを介して達成される。これは、例えば、培養プレートの蓋及び／又は底部要素上に任意のシーリング要素又は手段を提供することによって確実としてもよく、この場合、密着した位置において、実質的に密接なクローザー（ｃｌｏｓｅｒ）が達成され、ガス交換が、少なくとも１つのフィルター要素を介してのみ可能である。例えば、底部要素の少なくとも１つの側壁は先細りになってもよく、その結果、基板の断面は、底部側から底部要素の上部側に向けて減少されている。先細りになった形状は、底部要素上の蓋の配置を促進し、蓋の少なくとも１つの側壁のより低い端は、密閉した条件で底部要素の少なくとも１つの側壁のより低い部分と直接接触され得る。
【００３５】
それに加えて又はそれに代えて、好ましくは、蓋の少なくとも１つの側壁の内部側での突出は、底部要素の側壁と直接的に接触して、シーリングを提供するように、該側壁のより低い端に近接するように提供されてもよい。培養プレートの内部と周囲雰囲気との間のガス交換が少なくとも１つの要素だけを介して達成される培養プレートのシーリングを得る代替の方法が多数存在していることは当業者に明らかである。
【００３６】
したがって、本発明の一態様によれば、培養プレートは、蓋の少なくとも１つの側壁の底部側（即ち、伸長方法に面する側）が培養プレートの密着した配置で支えられている伸長を提供するように、基板の少なくとも１つの側壁の上方にのびる基板の底部側を含む。
【００３７】
好ましくは、蓋の少なくとも１つの側壁は、基板の少なくとも１つの側壁の高さよりも高い寸法／伸長を有する。したがって、培養プレートの密着した配置において、蓋の上部は、基板の上部側又はその少なくとも一部から隔てて配列され、少なくとも１つの空洞と周囲環境との間のガス交換を改善する。
【００３８】
それに加えて又はそれに代えて、底部要素の伸長に向かって対面している蓋の少なくとも１つの側壁の壁は、密着した配列において伸長の表面に適合するように設計されることが好ましく、その結果、空気の通路が妨げられる。
【００３９】
好ましくは、より低い境界側壁及び外側面を受け入れるように適合される蓋に向かって対面している基板の底部側の伸長に溝が提供されもよい。それに代えて又はそれに加えて、底部要素上に蓋の密接／直接の適合をさらに強化するシーリング要素を提供してもよい。
【００４０】
本発明の別の態様によれば、少なくとも１つのフィルター要素は、機械的に安定な要素である。
【００４１】
本明細書中で使用するとき、機械的に安定とは、たとえ更なる培養プレートが、例えば慣用的な培養チャンバー内で蓋上に積層されたとしても、少なくとも１つのフィルター要素が、実質的に変形せずに、蓋の上部を支えることができるこのような安定性を有することを意味することが意図される。このようにして、追加の支持要素が、したがって、その上部を支えるために、蓋の少なくとも側面に提供されなくてもよい。
【００４２】
機械的に安定なフィルター要素は、２つの機能を提供し、一方は、それは壁材料を利用し、他方では、それは、培養プレート内に又はその内面から汚染物質の侵入及び／又は進出を妨げるフィルターを提供する。
【００４３】
したがって、機械的に安定なフィルター要素を提要することは、２つの別々の要素、即ち、壁材料及び／又は蓋の上部と少なくとも１つの追加のフィルター要素を支持するための支持材料の使用の必要性を妨げるこのような培養プレートに対する生産費を減少させる。さらに、例えば、追加のフィルター要素はプレートの製造中に挿入される必要はなく、プレートの実験室操作中に用いられなくてもよいため、このような培養プレートを生産及び操作することが容易である。
【００４４】
本発明の別の態様によれば、蓋の少なくとも１つの側壁は、フィルター要素に完全に存在する。したがって、培養プレートの内部と培養プレートを取り囲む環境との間のガス交換を可能にする表面が増加する。さらに、フィルター要素に完全に存在する側壁は容易に生産すれ、それは、完全な側壁が、好ましくは、一体化して形成され得るためであり、次に、少なくとも１つの側壁が蓋の上部で連結される。好ましくは、蓋の全ての側壁が、底に位置した各フィルター要素を用いて提供される。より好ましくは、蓋の全ての側壁は、フィルター材料からなる。
【００４５】
本発明の更なる態様によれば、蓋の上部は、少なくとも１つのフィルター要素を含み、又は完全にフィルター要素からなっていてもよい。この追加の少なくとも１つのフィルター要素は、さらに、培養物の内部空間と培養プレートを取り囲む環境との間のガス交換を改善する。
【００４６】
本発明の一態様によれば、フィルター要素は、０．１〜１μｍの範囲の孔サイズを有する。好ましくは、孔サイズは、０．２〜０．５μｍの範囲である。より好ましくは、孔サイズは、０．２〜０．２５μｍの範囲であり、さらにより好ましくは、孔サイズは０．２２μｍである。
【００４７】
本発明の別の態様によれば、フィルター要素は、焼結されたポリエチレン（ＰＥ）で作られている。焼結は、圧縮された粉末粒子が互いに接着するまで、それらの融点温度未満の加熱温度に晒される方法である。したがって、材料を通じてガス交換を可能にする適切な孔を有する機械的に安定な材料が提供される。焼結されたポリエチレンの表面は、さらに、ＰＥ系本体の孔を浸透し、微小孔であり、付着のない表面を形成する、ポリテトラフルオロエチレン（ＰＴＦＥ）コートで部分的に提供されてもよい。組み合わせた材料は、化学的な耐性の増加を提示し、湿気によって影響されない。
【００４８】
あるいは、フィルター要素は、焼結されたポリカーボネートから作られている。当業者に周知であるフィルター要素に適した多数の材料があることは承認される。
【００４９】
上述されるように、本発明に係る培養プレートの底部要素は、少なくとも１つの空洞を含む。たった１つの空洞を提供する場合、培養プレートは、好ましくは、円形又は長方形の断面を有する慣用的に知られているペトリディッシュに設計されてもよいが、ただし、蓋の少なくとも１つの側壁は、少なくとも１つのフィルター要素を含み、ここで、ガス交換は、フィルター要素を介して達成される。好ましくは、また、底部要素の側壁は、１つの空洞の側壁を提供してもよい。
【００５０】
本発明の別の態様によれば、底部要素は、所定のパターンで配置された複数の空洞を含んでもよく、これらの空洞は、互いに分離されている。いくつかの空洞は、種々の断面及び／又は寸法を有することができる。しかしながら、円形及び長方形の断面が好ましい。複数の空洞の少なくとも１つは、互いに連結される、１を超える部分から構成されていることがさらに好ましい。
【００５１】
好ましくは、空洞の各々は、例えば、文字、ローマ数字、及び／又はアルファベット及び数値の記号によってマークされ、各空洞の特定を容易にする。
【００５２】
本発明の１つの好ましい態様によれば、複数の空洞は、行及び列に配列される。
【００５３】
本発明のさらにより好ましい態様によれば、底部要素は、慣用的なマイクロタイタープレートに一致して、寸法及びレイアウトを有する。
【００５４】
本発明の一態様によれば、マイクロタイタープレートは、プレート当たり４、６、８、１２、２４、４８、９６、３８４又は１５３６個の空洞を含む。とりわけ、それに限定されないが、９６ウェル又は３８４ウェルフォーマットを有するマイクロタイタープレートでは、空洞の底壁のＵ型又はＶ型の形状が好ましい。それは、これらの形状が、最小の静止体積のピペッティングさえも可能にするためである。
【００５５】
１つの空洞によって受け入れ可能な最大体積は、底部要素、そこに配置された空洞の数、空洞の高さに依存する。マイクロタイタープレートのサイズ、及びそこに含まれる少なくとも１つの空洞の寸法は、当業者に周知である。好ましくは、各々の空洞は、同じ容積を受け入れるように適合される。さらにより好ましい９６ウェルプレートの各空洞は、最大約５０００μｌ、さらにより好ましくは５００μｌ〜約２５００μｌの範囲で受け入れるように適合されてもよい。３８４ウェルプレートでは、各空洞は、好ましくは、最大約５００μｌ、さらにより好ましくは約２０μｌ〜約２５０μｌの範囲で受け入れるように適合されてもよい。
【００５６】
本発明に係る培養プレートは、無菌であり、ＤＮａｓｅ、ＲＮａｓｅ、若しくは発熱物質を含まず、又はそれらのいずれかの組み合わせであってもよい。
【００５７】
別の局面によれば、本発明は、前述する請求項のいずれかに係る培養プレートを製造する方法を提供し、該方法は、（ａ）少なくとも１つの空洞を有する底部要素を提供し、（ｂ）フィルター材料でできている少なくとも１つのフィルター要素を用意し、（ｃ）上部のみ又は上部から伸びている少なくとも１つの周囲側壁を有する上部からなり、少なくとも１つのフィルター要素を受け入れるように適合された少なくとも１つの凹所を有する蓋を用意し、（ｄ）少なくとも１つのフィルター要素と蓋とを連結する工程を含む。
【００５８】
底部要素及び蓋は、例えば、当該技術分野において知られている従来の射出成形又は熱成形法を用いて製造することができる。可能であれば、また、例えば、ペトリディッシュ又はマイクロタイタープレートから培養プレートの従来の底部要素を用いてもよい。
【００５９】
上述されているフィルター要素から作製されている少なくとも１つのフィルター要素は、それが蓋と密接に連結されるように寸法を決定しなければならない。
【００６０】
本発明の方法の一態様によれば、工程ｂ）において、蓋の完全な側壁を形成するフィルター要素が提供される。
【００６１】
これは、ふたの製造を促進し、例えば、生産費を減らすことができるように製造工程の数を減少させる。
【００６２】
本発明の方法の好ましい態様によれば、該フィルター要素の提供は、鋳型にポリエチレン粉末を充填し、それを焼結過程に供することによって該フィルター要素の製造を含む。
【００６３】
本発明の方法の一態様によれば、フィルター要素は、留め（ｓｎａｐｐｉｎｇ）、接着を伴う固着、又は超音波溶着によって蓋に連結される。
【００６４】
留めとは、蓋と少なくとも１つの要素が、それらを機械的に閉じ込めることによって互いに密接に連結されることを意味することが意図される。少なくとも１つのフィルター要素と蓋との連結に有用な接着は、当業者に周知である。また、適切な接着の選択は、蓋と少なくとも１つのフィルター要素を作っている材料に依存することは承認されるべきである。
【００６５】
続く添付の図面において、及びそれを参照にして、本発明の好ましい態様は、本発明をそれに限定することなしに、単に例示によって説明される。
【００６６】
図１は、開封状態における９６個の空洞を有するマルチウェルプレート（９６ウェルフォーマット）として設計された本発明に係る培養プレートを示す。各々の空洞は、同じである、実質的に円形の断面を有し、これらの空洞は、１２列と８行を有する従来の所定のパターンにおいて配置されている。
【００６７】
底部要素及び蓋はともに、実質的に長方形の断面を有し、ここで、両方の部分において、左上部の角は傾斜され、したがって、方向付けマークとして利用される。例えば、この方向付けは、蓋もマルチウェルプレートの底部要素上に同じ方向付けで設置されるのを確実にするのを手助け、その結果、例えば、種々の空洞間の二次汚染を妨げる。
【００６８】
底部要素の基板の底部側は、基板の側壁情報に伸び、蓋の側壁の底部側が培養プレートの密接した配置で支えるようにする伸張を与える。蓋の側壁の最大部分は、フィルター要素から作られている。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ａ）底部側、少なくとも１つの側壁、及び上部側を含む基板、及び該基板に配置された少なくとも１つの空洞、並びに該空洞を取り囲む少なくとも１つの側壁を含む底部要素；底部壁；並びに物質（ｍａｔｅｒｉａｌ）を該空洞に保持されるように受け入れ、及び該基板の上部側から接近可能とするための開口；
ｂ）上部及び周囲側壁を含む前記底部要素を覆うための蓋であって、少なくとも該蓋の周辺側壁が、フィルター材料で作られている少なくとも１つのフィルター要素から少なくとも部分的に形成されていることによって特徴付けられる蓋であって、ここで、培養プレートの内部体積と周辺環境との間のガス交換が該少なくとも１つのフィルター要素を介して達成される前記蓋
を含む培養プレート。
【請求項２】
前記基板の底部側が、該基板の少なくとも１つの側壁の上方に伸びて、蓋の少なくとも１つの側壁の底部側が培養プレートの密着した配置で支えられている伸長を提供する、請求項１に記載の培養プレート。
【請求項３】
前記少なくとも１つのフィルター要素が、機械的に安定な要素である、請求項１又は２に記載の培養プレート。
【請求項４】
前記蓋の少なくとも１つの側壁がフィルター要素で完全に存在している、請求項１〜３のいずれか１項に記載の培養プレート。
【請求項５】
さらに、前記蓋の上部は、少なくとも１つの作製されたフィルター要素を含み、完全にフィルター要素からなる、請求項１〜４のいずれか１項に記載の培養プレート。
【請求項６】
前記フィルター要素が、０．１〜１μｍの範囲の孔サイズを有する、請求項１〜５のいずれか１項に記載の培養プレート。
【請求項７】
前記フィルター要素が焼結されたポリエチレンから作られている、請求項１〜６のいずれか１項に記載の培養プレート。
【請求項８】
前記底部要素が、所定のパターンで配置された複数の空洞を含み、該空洞が互いに分離している、請求項１〜７のいずれか１項に記載の培養プレート。
【請求項９】
前記空洞が、行及び列で配置されている、請求項８に記載の培養プレート。
【請求項１０】
前記底部要素が、従来のマイクロタイタープレートに基づいた寸法及びレイアウトを有する、請求項９に記載の培養プレート。
【請求項１１】
前記マイクロタイタープレートが、プレート当たり４、６、８、１２、２４、４８、９６、３８４又は１５３６個の空洞を含む、請求項１０に記載の培養プレート。
【請求項１２】
請求項１〜１１のいずれか１項に記載の培養プレートを製造する方法であって、
ａ）少なくとも１つの空洞を有する底部要素を用意し、
ｂ）フィルター材料で作られている少なくとも１つのフィルター要素を用意し、
ｃ）上部のみ又は上部から伸びている少なくとも１つの周囲の側壁を有する上部からなり、少なくとも１つのフィルター要素を受け入れるように適合された少なくとも１つの凹所を有する蓋を提供し、そして
ｄ）該少なくとも１つのフィルター要素と該蓋とを連結する
工程を含む前記方法。
【請求項１３】
工程ｂ）において、蓋の完全な側壁を形成するフィルター要素が提供される、請求項１２に記載の方法。
【請求項１４】
前記フィルター要素の提供が、ポリエチレン粉末を鋳型に充填し、それを焼結過程に供することによる該フィルター要素の製造を含む、請求項１３に記載の方法。
【請求項１５】
前記フィルター要素が、留め（ｓｎａｐｐｉｎｇ）、接着を伴う固着、又は超音波溶着によって前記蓋に連結される、請求項１２〜１４のいずれか１項に記載の方法。
【請求項１】
ａ）底部側、少なくとも１つの側壁、及び上部側を含む基板、及び該基板に配置された少なくとも１つの空洞、並びに該空洞を取り囲む少なくとも１つの側壁を含む底部要素；底部壁；並びに物質（ｍａｔｅｒｉａｌ）を該空洞に保持されるように受け入れ、及び該基板の上部側から接近可能とするための開口；
ｂ）上部及び周囲側壁を含む前記底部要素を覆うための蓋であって、少なくとも該蓋の周辺側壁が、フィルター材料で作られている少なくとも１つのフィルター要素から少なくとも部分的に形成されていることによって特徴付けられる蓋であって、ここで、培養プレートの内部体積と周辺環境との間のガス交換が該少なくとも１つのフィルター要素を介して達成される前記蓋
を含む培養プレート。
【請求項２】
前記基板の底部側が、該基板の少なくとも１つの側壁の上方に伸びて、蓋の少なくとも１つの側壁の底部側が培養プレートの密着した配置で支えられている伸長を提供する、請求項１に記載の培養プレート。
【請求項３】
前記少なくとも１つのフィルター要素が、機械的に安定な要素である、請求項１又は２に記載の培養プレート。
【請求項４】
前記蓋の少なくとも１つの側壁がフィルター要素で完全に存在している、請求項１〜３のいずれか１項に記載の培養プレート。
【請求項５】
さらに、前記蓋の上部は、少なくとも１つの作製されたフィルター要素を含み、完全にフィルター要素からなる、請求項１〜４のいずれか１項に記載の培養プレート。
【請求項６】
前記フィルター要素が、０．１〜１μｍの範囲の孔サイズを有する、請求項１〜５のいずれか１項に記載の培養プレート。
【請求項７】
前記フィルター要素が焼結されたポリエチレンから作られている、請求項１〜６のいずれか１項に記載の培養プレート。
【請求項８】
前記底部要素が、所定のパターンで配置された複数の空洞を含み、該空洞が互いに分離している、請求項１〜７のいずれか１項に記載の培養プレート。
【請求項９】
前記空洞が、行及び列で配置されている、請求項８に記載の培養プレート。
【請求項１０】
前記底部要素が、従来のマイクロタイタープレートに基づいた寸法及びレイアウトを有する、請求項９に記載の培養プレート。
【請求項１１】
前記マイクロタイタープレートが、プレート当たり４、６、８、１２、２４、４８、９６、３８４又は１５３６個の空洞を含む、請求項１０に記載の培養プレート。
【請求項１２】
請求項１〜１１のいずれか１項に記載の培養プレートを製造する方法であって、
ａ）少なくとも１つの空洞を有する底部要素を用意し、
ｂ）フィルター材料で作られている少なくとも１つのフィルター要素を用意し、
ｃ）上部のみ又は上部から伸びている少なくとも１つの周囲の側壁を有する上部からなり、少なくとも１つのフィルター要素を受け入れるように適合された少なくとも１つの凹所を有する蓋を提供し、そして
ｄ）該少なくとも１つのフィルター要素と該蓋とを連結する
工程を含む前記方法。
【請求項１３】
工程ｂ）において、蓋の完全な側壁を形成するフィルター要素が提供される、請求項１２に記載の方法。
【請求項１４】
前記フィルター要素の提供が、ポリエチレン粉末を鋳型に充填し、それを焼結過程に供することによる該フィルター要素の製造を含む、請求項１３に記載の方法。
【請求項１５】
前記フィルター要素が、留め（ｓｎａｐｐｉｎｇ）、接着を伴う固着、又は超音波溶着によって前記蓋に連結される、請求項１２〜１４のいずれか１項に記載の方法。
【図１】
【公開番号】特開２００９−１８３２８８（Ｐ２００９−１８３２８８Ａ）
【公開日】平成２１年８月２０日（２００９．８．２０）
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願２００９−２２００５（Ｐ２００９−２２００５）
【出願日】平成２１年２月２日（２００９．２．２）
【出願人】（５０１１８６６４５）エッペンドルフ アクチェンゲゼルシャフト (9)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年８月２０日（２００９．８．２０）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−２２００５（Ｐ２００９−２２００５）
【出願日】平成２１年２月２日（２００９．２．２）
【出願人】（５０１１８６６４５）エッペンドルフ アクチェンゲゼルシャフト (9)
【Ｆターム（参考）】
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