説明

偽造識別装置、及び、偽造識別方法

【課題】 部品点数が少なく、小型とすることができ、且つ、精度の高い偽造識別装置を提供すること。
【解決手段】 430〜470nm、510〜550nm、及び、620〜680nm以外の波長範囲にピーク波長を有する1又は複数の単色光を照射する光源装置と、光源装置から照射され、対象物を透過した又は対象物に反射した光の吸収を波長帯域ごとに夫々検出する複数の検出素子を備えた検出装置と、各検出素子が検出した光の吸収により対象物の真偽を判定する判定装置とを備える偽造識別装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造識別装置、及び、偽造識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙幣等の印刷には、偽造をし難くするために、一般的に使用されている市販のプリンタやカラーコピー機で使用されているようなCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)のインクは用いられず、特殊なインクが用いられている。このような特殊なインクには、上述したようなCMYKのインクに使用されている顔料や染料とは異なるものが用いられている。
【0003】
CMYKのインクを用いても、自然光の下で観察する限りにおいては真性なものと同様の色を有する紙幣を印刷することはできる。しかしながら、顔料や染料等の色素は、夫々に分光吸収特性が異なるため、CMYKのインクで印刷されたものと、特殊なインク(CMYKのインクに含まれる色素とは異なる色素を用いたインク)で印刷されたものとをすべての波長領域で観察した場合には、両者の分光吸収特性が一致することはない。このように、分光スペクトル分布の異なる2つの光が特定の条件(例えば、太陽光の元)では同じ色に見えることを条件等色(メタメリズム)という。
【0004】
従来、このような分光吸収特性の違いを用いて紙幣等の偽造を識別することが可能な装置や方法が存在する(例えば、特許文献1〜4参照)。特許文献1には、紙幣に光源から光を照射し、透過した光を分光計やフォトセンサにより検出する紙幣判別装置が記載されている。また、特許文献2には、対象物に光を照射し、その反射光より得られる像を読み取って、対象物の真偽を判定することが記載されている。また、特許文献3には、複数の波長帯域の光を夫々発生する複数の発光素子を直線上に配列し、紙幣を透過した各発光素子からの光を該波長帯域ごとに検出する紙幣識別装置が記載されている。また、特許文献2及び特許文献4には、磁気センサを設けて、磁気による検出と光による検出とを併用することが記載されている。磁気センサは、インクに含まれている磁性体の磁性の有無/強弱を読み取ることができる。特許文献2及び特許文献4では、このインクによる磁性の違いと、光吸収の違いとを併用することにより、精度を確保している。
【0005】
【特許文献1】特開平10−63915号公報
【特許文献2】特開平6−333128号公報
【特許文献3】特開平9−54848号公報
【特許文献4】特開平9−54850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような従来の偽造識別装置では、幅広い波長領域で吸収を測定する分光計を用いる構成とした場合、精度は向上するものの、装置が大型となるばかりか、高価なものとなってしまうといった問題があった。
【0007】
また、従来の偽造識別装置では、フォトセンサを用いる場合、三原色のうちの1つの色である赤色(620〜680nmにピーク波長を有する赤色)を発する赤色LEDや、緑色(510〜550nmにピーク波長を有する緑色)を発する緑色LEDを光源として用いている。しかしながら、真性な紙幣と偽物の紙幣との吸収特性とは、三原色の波長(430〜470nm、510〜550nm、620〜680nm)においては、吸収特性が近似してしまうため、汚れによるばらつきを許容すると、真性な紙幣と偽物の紙幣との差異を検出することは極めて困難となるといった問題があった。そのため、引用文献2及び引用文献4に記載されているように、磁気センサを設ける等して、光センサによる検出と併用することにより、精度を確保しなければならなかった。このように従来の偽造識別装置では、光センサと磁気センサとを併用しなければならず、部品点数の増加によるコスト増大や、装置の大型化といった問題があった。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数が少なく、小型とすることができ、且つ、精度の高い偽造識別装置、及び、精度の高い偽造識別方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上のような目的を達成するために、本発明は、以下のようなものを提供する。
(1) 430〜470nm、510〜550nm、及び、620〜680nm以外の波長範囲にピーク波長を有する1又は複数の単色光を照射する光源装置と、
上記光源装置から照射され、対象物を透過した又は上記対象物に反射した光の吸収を波長帯域ごとに夫々検出する複数の検出素子を備えた検出装置と、
各上記検出素子が検出した光の吸収により上記対象物の真偽を判定する判定装置と
を備える偽造識別装置。
【0010】
(1)の発明によれば、430〜470nm、510〜550nm、及び、620〜680nm以外の波長範囲にピーク波長を有する単色光(以下、非三原色単色光ともいう)を対象物に照射し、対象物(例えば、紙幣、有価証券、パスポート、免許証)を透過した又は上記対象物に反射した光の吸収を波長帯域ごとに夫々検出する複数の検出素子により検出する。そして、検出した光の吸収により上記対象物の真偽を判定する。非三原色単色光、すなわち、対象物に応じて吸収強度の差のなるべく大きい波長の光を用いて対象物の真偽を判定するため、真偽判定結果の精度を高く保つことができる。また、対象物を透過又は反射した光の吸収を、波長帯域ごとに夫々の検出素子により検出するため、幅広い波長領域で吸収を測定する分光計を用いる構成とするよりも小型にすることができるとともに、コストを低くすることができる。
【0011】
さらに、本発明は、以下のようなものを提供する。
(2) 上記(1)の偽造識別装置であって、
上記光源装置は、470nmより大きく510nmより小さい波長範囲にピーク波長を有する第1の単色光を照射する第1光源素子、及び、550nmより大きく620nmより小さい波長範囲にピーク波長を有する第2の単色光を照射する第2光源素子を有しており、上記検出装置は、上記第1光源素子から照射される上記第1の単色光の吸収と上記第2光源素子から照射される上記第2の単色光の吸収とを上記検出素子により夫々検出することを特徴とする。
【0012】
(2)の発明によれば、対象物に応じて吸収強度の差が大きくなり得る2つの光、すなわち、470nmより大きく510nmより小さい波長範囲にピーク波長を有する第1の単色光(青緑色の光)と、550nmより大きく620nmより小さい波長範囲にピーク波長を有する第2の単色光(黄色の光)とを用いて、対象物の真偽を判定する。上記第1の単色光、及び、上記第2の単色光の下では、真性な紙幣と偽物の紙幣との吸収特性が大きく異なることが多い。その結果、真偽判定結果の精度をより高く保つことができる。
【0013】
さらに、本発明は、以下のようなものを提供する。
(3) 上記(1)又は(2)の偽造識別装置であって、
上記検出装置は、上記対象物上の各点における吸収を検出し、
上記判定装置は、上記検出装置により検出された上記対象物上の上記各点における上記吸収に基づいて、吸収パターンを生成し、記憶装置に記憶されている比較対象用の吸収パターンと比較することにより、上記対象物の真偽を判定することを特徴とする。
【0014】
(3)の発明によれば、対象物上の各点における吸収を検出し、検出された上記対象物上の上記各点における上記吸収に基づいて、吸収パターンを生成し、記憶装置に記憶されている比較対象用の吸収パターンと比較することにより、上記対象物の真偽を判定する。吸収パターンにより対象物の真偽を判定するため、吸収強度が同一と判定される点が相対的に少なくなり、真偽判定結果の精度をさらに高く保つことができる。
【0015】
さらに、本発明は、以下のようなものを提供する。
(4) 430〜470nm、510〜550nm、及び、620〜680nm以外の波長範囲にピーク波長を有する単色光を対象物に照射する照射ステップと、
上記対象物を透過した又は上記対象物に反射した光の吸収を波長帯域ごとに検出する検出ステップと、
上記検出ステップにより検出した光の吸収により上記対象物の真偽を判定する判定ステップと
を有する偽造識別方法。
【0016】
(4)の発明によれば、430〜470nm、510〜550nm、及び、620〜680nm以外の波長範囲にピーク波長を有する1又は複数の単色光(非三原色単色光)を対象物に照射し、対象物(例えば、紙幣、有価証券、パスポート、免許証)を透過した又は上記対象物に反射した光の吸収を波長帯域ごとに夫々検出する複数の検出素子により検出する。そして、検出した光の吸収により上記対象物の真偽を判定する。非三原色単色光、すなわち、対象物に応じて吸収強度の差のなるべく大きい波長の光を用いて対象物の真偽を判定するため、真偽判定結果の精度を高く保つことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、部品点数が少なく、小型とすることができ、且つ、精度の高い偽造識別装置、及び、精度の高い偽造識別方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る紙幣識別装置を模式的に示す概略図である。
図1に示すように、紙幣識別装置10は、紙幣100を挿入口11から内部に引き込むための引き込みローラ12と、内部に引き込まれた紙幣100が通過する紙幣通過経路14の下側に設けられた光源装置15と、紙幣通過経路14の上側に設けられた検出装置16とを備える。
【0019】
光源装置15には、470nmより大きく510nmより小さい波長範囲にピーク波長を有する第1の単色光を照射する第1光源素子17と、550nmより大きく620nmより小さい波長範囲にピーク波長を有する第2の単色光を照射する第2光源素子18とが備られている。
【0020】
本実施形態では、第1光源素子17として、白色ランプ19aと、470nm以下及び510nm以上の光をカットするカラーフィルタ20aとを組み合わせたものを用いる。また、第2光源素子18として、白色ランプ19bと、550nm以下及び620nm以上の光をカットするカラーフィルタ20bとを組み合わせたものを用いる。
白色ランプとしては、特に限定されず、タングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、水銀ランプ等の連続スペクトルを有するランプを挙げることができる。また、白色ランプとして、赤色・緑色・青色の発光ダイオード(LED)を1つの発光源とした白色LEDを用いることとしてもよい。
【0021】
図2は、光源素子が発する光を説明するための図である。
図2に示すように、第1光源素子17は、波長λ1にピークを有する波長の光を発生させる。また、第2光源素子18は、波長λ2にピークを有する波長の光を発生させる。波長λ1は、470nmより大きく510nmより小さい波長範囲にあり、波長λ2は、550nmより大きく620nmより小さい波長範囲にある。本実施形態では、波長λ1=500nm、波長λ2=575nmとなるようにカラーフィルタ20(カラーフィルタ20a、カラーフィルタ20b)を選択している。
【0022】
本実施形態では、光源装置が単色光を発する光源素子を2種類、すなわち、第1光源素子17と第2光源素子18とを備える場合について説明する。しかし、本発明において光源装置はこの例に限定されず、光源素子を白色光を発する1種類とし、分光プリズムを用いて、特定の波長の光(単色光)を取り出す構成としてもよい。
【0023】
また、本実施形態では、カラーフィルタを用いることにより、波長λ1=500nmにピークを有する波長の光、及び、波長λ2=575nmを発生させる場合について説明する。しかし、本発明においては、この例に限定されず、例えば、波長λ1にピークを有する発光ダイオードや、波長λ2にピークを有する発光ダイオードを用いることとしてもよい。波長λ1=500nmにピークを有する波長の発光ダイオードとしては、例えば、特開2000−082845号公報に開示されているような、460〜510nmで発光するZnSe系LEDを挙げることができる。また、波長λ1=575nmにピークを有する波長の発光ダイオードとしては、例えば、特許第3593658号公報に開示されているような、InGaAlP/GaAs又はInGaAlP/GaPの黄色LEDを挙げることができる。
【0024】
検出装置16には、検出素子としての2つのフォトダイオード21(フォトダイオード21a及びフォトダイオード21b)が設けられている。フォトダイオード21aは、第1光源素子17に対向する位置に設けられており、第1光源素子17から照射され、紙幣100を透過した光を電流に変換することにより、光の有無や強弱を検出する。また、フォトダイオード21bは、第2光源素子18に対向する位置に設けられており、第2光源素子18から照射され、紙幣100を透過した光を電流に変換することにより、光の有無や強弱を検出する。
【0025】
第1光源素子17に対応するフォトダイオード21aには、500nmに感度を持つものを使用し、第2光源素子18に対応するフォトダイオード21bには、575nmに感度を持つものを使用する。このようなフォトダイオードとしては、例えば、シリコンフォトダイオードを挙げることができる。なお、光源を変更する場合には、フォトダイオード21には、各光源素子に対応する波長領域に感度を持つものを使用すればよい。また、フォトダイオードの手前に、検出対象となる波長範囲のみを透過させ、他を透過させないカラーフィルタを設ける構成としてもよい。
【0026】
引き込みローラ12には、モータ56から動力が供給され、図示しないギアで連動されることにより挿入口11から紙幣100を内部に引き込む。
【0027】
図3は、図1に示した紙幣識別装置の内部構成を示すブロック図である。
紙幣識別装置10は、CPU51、記憶装置としてのROM52、RAM53、判定装置54、第1光源素子17、第2光源素子18、モータ駆動回路55を介して接続されたモータ56、及び、紙幣検出素子57を備える。判定装置54は、フォトダイオード21(フォトダイオード21a、フォトダイオード21b)と判定回路58とを備える。
【0028】
紙幣検出素子57は、赤外領域の波長を使用するフォトカプラであり、紙幣が挿入口11に挿入されたことを検出する。CPU51は、紙幣検出素子57から紙幣100が挿入されたことを検出したことを受けて、モータ駆動回路55に駆動信号を制御する。CPU51は、駆動信号を送信してからの経過時間、又は、モータに送信した駆動パルス数により紙幣の位置を特定する。
【0029】
ROM52には、紙幣識別装置10の全体の動作を制御するための制御プログラムや、基準データ等が記憶されている。基準データとしては、例えば、各フォトダイオード21が対応する光を検出したか否かを判断するためのしきい値、真偽判定対象の紙幣と比較するための比較対象用吸収パターンデータ、比較対象用吸収パターンとの一致度の基準を規定する規定データが記憶されている。しきい値としては、フォトダイオード21aが500nmの光を検出したか否かを判断するためのしきい値や、フォトダイオード21bが575nmの光を検出したか否かを判断するためのしきい値を挙げることができる。なお、これらのしきい値は、真偽を判定する紙幣の種類に応じて適宜設定することができる。真偽判定対象の紙幣と比較するための比較対象用吸収パターンデータは、真性な紙幣より得たデータであり、真性な紙幣における紙幣上の位置と該当位置における光の吸収の有無とが対応付けられている。
また、RAM53は、CPU51の一時記憶領域として種々の変数や、真偽判定対象となる紙幣から取得した吸収パターンを記憶する機能を有する。
【0030】
図4は、比較対象用吸収パターンを説明するための図である。
吸収パターン61、吸収パターン62は、真性な紙幣101上の特定のライン上の各点における吸収の有無を示しており、点有り(図中、黒色部分)は、吸収有り、点なしは吸収無しを示している。吸収パターン61は、フォトダイオード21aから検出される吸収と比較するためのものであり、フォトダイオード21aが設置される位置、及び、紙幣が移動する経路に基づいた吸収パターンである。吸収パターン62は、フォトダイオード21bから検出される吸収と比較するためのものであり、フォトダイオード21bが設置される位置、及び、紙幣が移動する経路に基づいた吸収パターンである。
【0031】
判定回路58は、CPU51の制御の下、真偽判定対象の紙幣100について、各フォトダイオード21により検出した検出光量に基づいて吸収パターンを取得し、ROM52に記憶されている比較対象用吸収パターンと比較する。そして、吸収パターンの一致の度合いが所定の基準を満たすか否かにより、紙幣100が真性か否かを判定する。
【0032】
図5は、紙幣識別装置において実行される処理を示すフローチャートである。
まず、CPU51は、紙幣検出素子57から紙幣が挿入されたことを示す検出信号を受信したか否かにより、紙幣を検出したか否かを判断する(ステップS10)。紙幣を検出していないと判断した場合、処理をステップS10に戻す。
【0033】
紙幣を検出したと判断した場合、ステップS12において、CPU51は、光源装置15からの光の照射を開始する。ステップS12は、本発明の照射ステップに相当する。
【0034】
次に、CPU51は、モータ56を駆動させて挿入された紙幣100を移動させながら(ステップS14)、検出装置54により紙幣100上の各点の吸収を検出し、吸収パターンを取得する(ステップS16)。ステップS16は、本発明の検出ステップに相当する。
【0035】
次に、CPU51は、ROM52に記憶されている比較対象用吸収パターンとステップS16において取得した吸収パターンとを比較し(ステップS18)、ROM52に記憶されている規定データに基づいて、一致度が所定の基準を満たすか否かを判断する(ステップS20)。
【0036】
ステップS20において一致度が所定の基準を満たすと判断した場合、CPU51は、紙幣100が真性であると判定する(ステップS22)一方、所定の基準を満たさないと判断した場合、CPU51は、偽物であると判定する(ステップS24)。ステップS18、ステップS20、ステップS22及びステップS24は、本発明の判定ステップに相当する。その後、紙幣識別装置10の用途に応じて、判定結果に応じた信号を外部に出力する処理や、紙幣を紙幣識別装置10の内部に格納する処理又は紙幣を外部に返却する処理等を実行した後、本サブルーチンを終了する。
【0037】
ステップS12の照射ステップと、ステップS16の検出ステップと、ステップS18、ステップS20、ステップS22及びステップS24の判定ステップとを有する紙幣識別方法は、本発明の偽造識別方法に相当する。
【0038】
以上、本実施形態に係る紙幣識別装置10及び紙幣識別方法によれば、430〜470nm、510〜550nm、及び、620〜680nm以外の波長範囲にピーク波長を有する単色光(非三原色単色光)を紙幣100に照射し、紙幣100を透過した光の吸収を波長帯域ごとに検出する。そして、検出した光の吸収により紙幣100の真偽を判定する。非三原色単色光、すなわち、吸収強度の差のなるべく大きい波長の光を用いて紙幣100の真偽を判定するため、真偽判定結果の精度を高く保つことができる。
【0039】
また、紙幣識別装置10によれば、紙幣100を透過した光の吸収を、波長帯域ごとに夫々のフォトダイオード21により検出するため、幅広い波長領域で吸収を測定する分光計を用いる構成とするよりも小型にすることができるとともに、コストを低くすることができる。
【0040】
また、紙幣識別装置10によれば、対象物(紙幣100)に応じて吸収強度の差が大きくなり得る2つの光、すなわち、470nmより大きく510nmより小さい波長範囲にピーク波長を有する第1の単色光(青緑色の光)と、550nmより大きく620nmより小さい波長範囲にピーク波長を有する第2の単色光(黄色の光)とを用いて、紙幣100の真偽を判定する。上記第1の単色光、及び、上記第2の単色光の下では、本物の紙幣と偽物の紙幣との吸収特性が大きく異なることが多い。その結果、真偽判定結果の精度をより高く保つことができる。
【0041】
また、紙幣識別装置10によれば、紙幣上の各点における吸収を検出し、検出された紙幣上の上記各点における吸収に基づいて、吸収パターンを生成し、ROM52に記憶されている比較対象用の吸収パターンと比較することにより、紙幣の真偽を判定する。吸収パターンにより紙幣の真偽を判定するため、吸収強度が同一と判定される点が相対的に少なくなり、真偽判定結果の精度をさらに高く保つことができる。
【0042】
本発明において、光源装置から照射する単色光は、430〜470nm、510〜550nm、及び、620〜680nm以外の波長範囲にピーク波長を有する1又は複数の単色光である。本発明において、光源装置から照射する単色光は、430〜480nm、510〜555nm、及び、600〜700nm以外の波長範囲にピーク波長を有する1又は複数の単色光であることが望ましく、430〜490nm、510〜560nm、及び、580〜700nm以外の波長範囲にピーク波長を有する1又は複数の単色光であることがより望ましい。また、380〜490nm、510〜560nm、及び、580〜780nm以外の波長範囲にピーク波長を有する1又は複数の単色光であることがさらに望ましい。また、本発明では、光源から照射する光を可視光(波長380〜780nm)とすることが望ましい。
【0043】
本実施形態では、紙幣100を透過する光の吸収を検出する場合について説明したが、本発明においては、対象物上で光源装置からの光を反射させ、反射した光の吸収を検出することとしてもよい。
【0044】
本実施形態では、吸収パターンが、ライン状(1次元)である場合について説明したが、本発明における吸収パターンは、面状(2次元)であってもよい。面状とする場合、対象物上にマトリックス状に検出対象となる点を設定し、各点における吸収を吸収パターンとすればよい。
【0045】
本実施形態では、光源装置15から、2つの単色光(波長λ1=500nmにピークを有する波長の光と、波長λ2=575nmにピークを有する波長の光)を照射するとともに、これら2つの光を検出する場合について説明したが、本発明においては、光源装置から1の単色光(例えば、波長λ1=500nmにピークを有する波長の光のみ)を照射し、この光を検出することとしてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、470nmより大きく510nmより小さい波長範囲にピーク波長を有する第1の単色光と、550nmより大きく620nmより小さい波長範囲にピーク波長を有する第2の単色光とを、夫々、1種類ずつ照射する場合について説明した。しかし、本発明においては、470nmより大きく510nmより小さい波長範囲にピーク波長を有する第1の単色光を複数、例えば、ピーク波長495nmの光と、ピーク波長500nmの光を照射することとしてもよい。また、550nmより大きく620nmより小さい波長範囲にピーク波長を有する第2の単色光を複数、例えば、ピーク波長565nmの光と、ピーク波長575nmの光を照射することとしてもよい。
【0047】
本実施形態では、紙幣識別装置10及び紙幣識別方法、すなわち、紙幣の真偽を識別する場合について説明したが、本発明における偽造識別装置及び偽造識別方法は、この例に限定されず、有価証券や、パスポート、免許証等の証明書類等の真偽を識別する装置及び方法であってもよい。なお、有価証券や、パスポート、免許証等の証明書類等の真偽を識別する場合には、識別の対象物に応じて、光源装置、検出装置、しきい値等を適宜選択すればよい。
【0048】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、各手段等の具体的構成は、適宜設計変更可能である。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係る紙幣識別装置を模式的に示す概略図である。
【図2】光源素子が発する光を説明するための図である。
【図3】図1に示した紙幣識別装置の内部構成を示すブロック図である。
【図4】比較対象用吸収パターンを説明するための図である。
【図5】紙幣識別装置において実行される処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
10 紙幣識別装置
15 光源装置
16 検出装置
17 第1光源素子
18 第2光源素子
19(19a、19b) 白色ランプ
20(20a、20b) カラーフィルタ
21(21a、21b) フォトダイオード
51 CPU
52 ROM
53 RAM
54 判定装置
61、62 吸収パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
430〜470nm、510〜550nm、及び、620〜680nm以外の波長範囲にピーク波長を有する1又は複数の単色光を照射する光源装置と、
前記光源装置から照射され、対象物を透過した又は前記対象物に反射した光の吸収を波長帯域ごとに夫々検出する複数の検出素子を備えた検出装置と、
各前記検出素子が検出した光の吸収により前記対象物の真偽を判定する判定装置と
を備える偽造識別装置。
【請求項2】
前記光源装置は、470nmより大きく510nmより小さい波長範囲にピーク波長を有する第1の単色光を照射する第1光源素子、及び、550nmより大きく620nmより小さい波長範囲にピーク波長を有する第2の単色光を照射する第2光源素子を有しており、
前記検出装置は、前記第1光源素子から照射される前記第1の単色光の吸収と前記第2光源素子から照射される前記第2の単色光の吸収とを前記検出素子により夫々検出することを特徴とする請求項1に記載の偽造識別装置。
【請求項3】
前記検出装置は、前記対象物上の各点における吸収を検出し、
前記判定装置は、前記検出装置により検出された前記対象物上の前記各点における前記吸収に基づいて、吸収パターンを生成し、記憶装置に記憶されている比較対象用の吸収パターンと比較することにより、前記対象物の真偽を判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の偽造識別装置。
【請求項4】
430〜470nm、510〜550nm、及び、620〜680nm以外の波長範囲にピーク波長を有する1又は複数の単色光を対象物に照射する照射ステップと、
前記対象物を透過した又は前記対象物に反射した光の吸収を波長帯域ごとに検出する検出ステップと、
前記検出ステップにより検出した光の吸収により前記対象物の真偽を判定する判定ステップと
を有する偽造識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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